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子どもの考えていることがわからない!

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子どもの考えていることがわからない!
茂小時報
№20
2014.3.24
茂原市立茂原小学校
子どもの考えていることがわからない!
~教育ジャーナリスト青木悦先生の講演から~
平成25年度も児童全員が無事全課程を修了することができ
ました。1年間で1年生から6年生まで、それぞれに一回り逞
しく成長しました。子どもの成長は、うれしいことに間違いは
ありませんが、また、それにともなって心配事も出てきますね。
子育ては本当に大変です。
子育ての何かのヒントになればと考え、茂原小のホームペー
ジに子育てに関する「親力アップ!いきいき子育て広場」という千葉県教育委員会のサイトのリンク
を作ってあります。何かヒントになることが見つかるかも知れません。
また、子育てに関する講演が一昨年度の2月に東部台文化会館で行われました。講師は教育ジャー
ナリスト青木悦先生で、子どもの反抗期や子どもが自立していく中で超えなければならない親子関係
等について自らの子育て体験をもとに講演をしてくださいました。私もその講演会を聞きましたので、
今回は、子育ての一つの参考にしていただこうと思い講演の概要を掲載致します。ご一読ください。
演題「なぜ本音を言わないの?子どもたちと親の関係を考える。」
うちの子育ては本当に大変でした。一人息子が、言うことを全く聞かず、思い通り育てることはで
きませんでした。子どもが何人もいれば、一人くらいはいいやという気持ちになったかもしれません
が、一人しかいませんでしたので何とか理想の子どもに育てようとしましたが全く言うことを聞かず
反抗ばかりしていました。それでも今はその息子も理学療法士になり結婚もしています。今後、息子
がどんな顔して子育てをしていくのかが楽しみです。
私は、今は本を執筆したり、講演をしてまわったりして仕事をしているのですが、私のところに子
育ての相談に来る人が何人もいるんです。それは仕事にはしていません。つまり、お金は一切いただ
かず無料で行っています。だいたい常に10人くらいの相談者を抱えています。
そこで、見えてきていることは、「今の子どもたちは本音を言えなくなっている。親にも友達にも
本音を言えなくなってきている。」ということです。
小さな幼児を持つお母さんが、よくいじめにあっているという相談に来るんです。私は「2~3歳
までは、いじめでなく喧嘩なんですよ。喧嘩は大切です。ちょっとのケガをすることによって、この
くらいやれば、このくらいの血が出て、このくらい痛いんだというように限度を知ることになる。ま
た、同じことをしても、すぐに怒る子、怒らない子、その場では怒らなくてもいつまでも根に持つ子
がいるんだな。など人によってさまざまな違いがあることも、喧嘩によって知ることができるんです
よ。」と話をするんです。
そういうことを今の若いお母さんに話すとすぐに「その論拠は何ですか。」とくる。
今の親は異様にトラブルを恐れる。したがって子どもたちも、もつれあいの体験がない。様々な体
験をしないで入学してくるので1~2年は大変である。本当は小さいトラブルが大切であり、それは
いじめではないんですよ。いじめは出てくるとしたら小学校の2~3年生くらいから出てくる。子ど
もの間の役割が変わるようであればそれはいじめではありません。やられる子がいつも決まっている
ような固定化をしてくればそれはいじめです。
いじめられる子は「親には絶対に知られたくない。がっかりさせたくない。悲しませたくない。」
と思っている。
うちの息子も何かを問いかけてもだんだん「知らない、別に、うっせーな」というようになってき
た。子どもはだんだん何でもないことはしゃべるが大事なことは言わなくなってくる。こんな事では
いけない。こちらからも声をかけなくてはと思い、あるとき思い切って息子が家に帰ってくるのを待
ち構えて「お帰りなさい」と言ったんです。そうしたら、息子は何と言ったかというと「何で無駄な
ことを言うの」と言われた。この頃から、本当に我が子がわからなくなった。
あるお母さんの相談を受けているときに我が子の考えていることがわからないというので何歳かと
聞いたら3歳だという。3歳の子なんて何も考えているわけがない。お母さん方は母親は何でも知っ
ていなければならないという世の中の情報に惑わされているんですね。
- 1 -
私はよくお母さん方を相手に紙を2つに折って右と左にわけてまず左側に自分の子どもの腹の立つ
ことを書かせるんです。そして、右側にその反対の理想の子ども像を書かせるんです。
(腹の立つこと)
(理想の子ども像)
・朝は寝坊をして、いくら起こしてもおきない。 ・朝は起こさなくてもさっと起きて、「お早う
あげくに「なぜ、起こさなかった」と言って、
ございます」というさわやかな挨拶をして、
あわてて忘れ物をして出ていく。
自分でしたくをさっと行う。
・学校では、授業中に落ち着きがなく、先生の ・学校では、先生の話に落ち着いて静かに耳を
話も全然聞かず、成績もまったくふるわない。
傾け、元気よく「はい」と手をあげて授業に
取り組む。
・いつも家の中に閉じこもり、ゲームばかりし ・みんなの先頭に立って元気よく遊び、いつも
ている。
明るくさわやかである。
・テレビのお笑い番組ばかり見ていて、読書や ・本をよく読み、感受性豊かで道に咲く草花に
勉強はいくら言ってもやらない。
感動する。
・よく外で暴れたり、けんかをして汚れたり、 ・友達誰とも優しく仲良くしてあげる。
切れたりした服を放り投げっぱなしにする。
・だまって帰ってきて、何もしゃべらず、身の ・家に「ただいま」と明るく帰ってきて何も言
回りのものは投げっぱなしで、夕飯も好き嫌
わなくてもさっとお手伝いをしてくれる。
いを言って好きなものしか食べない。
・夕飯は好き嫌いは言わず、何でもおいしいと
いってきれいに食べる。
・ゲームをやったり、テレビを見ていて夜遅く ・夜はテレビを見ず、家庭学習をよくしてすす
まで起きている。
んで風呂に入り、さっと寝る。
こんな親が満足するような文句のつけどころのない理想の子はあり得ないんです。今日のみなさん
は理想の子ども像で笑ってくれたけど、今どきの聴衆は、笑わない人が増えてきている。非常にやり
にくいんです。それが幻であり得ないという論拠はなんですかとなる。だから、最近は論拠はという
人には細かく論拠を言って対応することにしているんです。私があり得ないと言った論拠は、「2つ
の異なった感性が同時に発露はない」ということです。
うちの子どもは何でも先頭に並ぶのが好きだったんです。運動会のときなど前に先に並んだ子を押
しのけて先頭に並んでるんです。私は恥ずかしくてうちの子じゃないような顔をしてるんですけど、
こっち向いて自慢げにピースなんかしてるんですよ。私はそういうのが大嫌いなんです。
ところが、あるお母さんはうちの息子のようなのがうらやましいって言うんですよ。そのお母さん
の息子さんは、地面に咲いてる花や虫が大好きで見つけると地面にうずくまってジーっと見つめちゃ
うんですね。そんなの両方できる子なんていないんですね。地に咲く花に感動してジーっと見つめて
いたかと思うといきなり走り出して友達を押しのけて先頭に並んじゃう子なんてね。
親が幻の子ども像を追いかけ過ぎてしまうと子どもが幻の子ども像に近づこうとするんですね。弱
さをさらけ出さない。こんな小さな時から強くなくてはならないというふうにね。
少年犯罪は最近ずうーっと減ってるんですね。ところが70%の人が増えてると思ってるんですね。
情報の出され方にも問題がある。家庭や地域や先生方の努力のおかげで今は少年犯罪は減っているん
です。しかし、凶悪な犯罪ほど報道されてしまう。
ただし、少年犯罪の高年齢化が今は問題なんです。20歳以上になってから爆発してしまうんです。
1999年7月、28歳の若者が羽田でハイジャック事件を起こしました。機長が刺され死亡してい
ます。その2週間後23歳の男が池袋で無差別殺人を起こし、2人死亡。その3週間後に35歳の男
が下関駅で5人を殺しています。2000年には17歳がバスジャックで一人を殺人。2006年に
はセレブと言われる妻が夫を殺し、バラバラ事件を起こしました。同じ年、奈良で16歳が自宅に放
火し家族3人を殺しました。2007年会津で切断した母の首を持って警察に出頭。そして、200
8年にあの秋葉原の無差別殺人事件が起き、7人が殺されています。これらの事件に共通しているの
は、すべて「自分がやりました。」と認めていること。さらに、みんな地元のその地域で偏差値がト
ップの進学校に入っている。しかし、大学には思うような進学ができなかっ
たり高校を卒業できなかったりしているのです。みんな15、16歳までは
うまくいっていたんですが、その後挫折をしています。
多くの子は、挫折を小3、4、5くらいで味わう。大多数の子は10歳前
後で幻を降りるんです。その時「うちの子は悪くなった」となるんですね。
それまでは、お母様なんて言ってくれてたのが、クソババアとなる。でもこ
れは早ければ早い方がいいんです。悪い姿をさらけ出すんです。いい姿を演
じ続けていてはいけないんです。
- 2 -
あの秋葉原の犯人の場合は、しつけではなくあれは虐待と言っていいです。
母親は青森高校にどうしても息子を入れたかった。ところがこの子はやることが遅くご飯を食べるの
も遅かったんですね。それで母親はあるとき床に広げた新聞広告にごはんと味噌汁をぶちまけて、そ
れを食べろと言ったんですね。母親はいつまでも幻の子ども像を追いかけてしまったんですね。家庭
が安心して生きられるところになっていない。私は幻という言い方をよく使って話をするんです。幻
の嫁、幻の教師、幻の母親像ってのもある。学校は下手をすると幻の教師像と幻の母親像の求め合い
になってしまっている。
現代は、「仲良し」「友達」も変化してきてしまっている。友達と本音を言い合うのではなく、友
達をつくっただけで安心しているんです。
私が相談をうけている不登校児で小4でおもらしをしてしまった女の子がいる。小4でおもらしを
してしまうと、ちょっときついかも知れない。私はズケズケ聞く方なので、その子に「おもらしをし
た授業の前の休み時間に、どうしてトイレに行っておかなかったのか。」って聞いたんですね。そう
したら涙をこぼしながら言うんです。「ひとりぼっちでトイレに行くところを見られたくなかっ
た。」って言うんですね。「友達がいないという姿」を見られるのが怖いんです。
今の子は、ある年代から自分を殺して、自分を人に合わせてつきあうんですね。昔だったら、いや
な事を言う子がいたら、「そんな子と友達にならなくていい」と言うのが母親だった。ところがある
子がお母さんに「友だちとうまく合わせられない」って言ったら、「どじ、うまく付き合え」って、
お母さんに言われたって言うんですね。
また、最近では学校から子どもが帰ると母親が「今日は、誰と話したの?」「お友達はできたの?
何人くらいお友達がいるの?」という風に、『お友達プレッシャー』をかけるっていうんですね。
学校家庭地域の連携は大切ですが、それぞれ価値観の違いがあっていいのではないですかね。そう
しないといつでもどこでもよい子を求められると、子どもは逃げ場がなくなってしまうんですね。
最後に「家庭と社会で何ができるか。」という2点についてお話をします。
まず、家庭です。子どもが休める場になって欲しい。学校や地域が舞台だとしたら家庭は楽屋にな
ってほしい。学校は活躍する場所。地域は例えばスイミングとか何かの大会などで活躍する場と考え
たときに家庭は一休みのできる楽屋になってほしい。いじめにあった時に「つらい」という弱音をは
ける場所になってほしい。
いろいろな幻の情報に踊らされず、幻から早く降りた方がいい。今はそれを邪魔をする幻の情報が
多い。たとえば子育てに関する情報など。いい母、いい妻、いい嫁。そういう幻からは早く降りた方
がいいんです。私は、一番降りやすかった「いい妻」から降りました。
子育てを邪魔する幻の情報に「3歳くらいまでは母親に育てられるべきだ」なんてのもある。あれ
、、、、、
は、「3歳くらいまでは母親なる者の手で育てられるべきだ」です。そうでなければ母親がノイロー
ゼになってしまう。夫婦いっしょに子育てをするんです。シングルのお母さんは大変ですが、この後
お話をする社会や地域も力になってくれます。
私はスポ根てのも嫌いです。うちの主人は大学まで野球をやっておりバリバリのスポ根人間だった。
私は勉強をさせたかったのにね。息子の子育てでもよくぶつかったものです。息子が高校で野球部に
入るのをやめようとしたときも意見がぶつかりました。主人は「お前はフラフラし過ぎる。」と言っ
たんですが、私は自分で決めることが大切で野球だけやっていればいいってもんではないって言った
んです。ある時は、「私が受験勉強をもっとがんばれ」と言っていると、主人が「気晴らしにラーメ
ン食いに行こう」なんて連れていっちゃうんです。でも、息子は今までを振り返って「僕は、その
時々で、親子3人の中で2対1の2の方にいられてよかった。」と言っているんです。
次に社会的に何ができるかというと子どもはいろいろな人に育てられるということです。
私は、四万十川の近くで生まれ育ち、父は元職業軍人、母は教員であった。その父が酔って私をす
ごく殴るんです。殴られて殴られていつも怖い思いをして、私は自分が嫌いになり、私はここにいて
はいけないと思うようになりました。中1、13歳の時に自殺を考えました。そのとき、中学校の先
生で吃音のあるたどたどしくしゃべる先生が私に近寄って来て「よう、が
んばりゆ」と言ってくれた。しばらくすると、また「よう、がんばりゆ」
と言ってくれる。この「ゆ」は、「よくがんばってるなあ」という意味な
んです。「がんばれよ」ではないんです。その言葉で私は救われた。生き
のびることができたんです。子どもは、いろいろな人によって育てられる
んです。その後、その先生が生きているうちには、会うことはできず、感
謝の気持ちを伝えることはできませんでした。でも、その感謝の気持ちを
胸に秘めながら、今のこのような仕事をがんばっているんです。
(校長 内田 達也)
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