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山ふる解説員通信 - 山のふるさと村

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山ふる解説員通信 - 山のふるさと村
 都立奥多摩湖畔公園
山ふる解説員通信
No.74 2011 年 10 月 C E S
今できる最善を
各地に大きな被害をもたらせた 9 月の大型台風
は、御岳の御神木が倒れるなど、西多摩地区に
も深い傷跡を残していきました。 山のふるさと村
の園内に関しては目立った被害はありませんでした
が、園内に面する奥多摩湖やサイグチ沢の景観は台
風後、激変しており、自然の力を強く感じる事とな
りました。
また、台風と直接の関係は無いようですが、園内
のキャンプ場の電気ケーブルの破損により、9 月 17
日より大規模な停電が発生し、宿泊の受け入れが困
難な状態となっております。宿泊をご検討されてい
た来園者の皆様に大変ご迷惑をお掛けしております
が、私たちに今できる最善を常に検討し、復旧に向
け、柔軟に対応していきたいと思います。今後とも
ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。
MENU
P1
はじめに
P2
1.2011 年夏期のトピックス
天候不順、入館者減少、
節電への取り組み
P3
2. 夏期の活動報告
P12
3. 秋期の活動への取り組み
P14 4. つながりコラム vol.10
P16
インタープリターの視点 No.62
はじめに
今夏は全国的(特に関東以北)に節電を実施する意識が高まり、クーラーには頼らずに
暑さと闘いながら過ごす年となりました。電気を使わずに夏を乗り切る方法は、テレビな
どのメディアでも多く紹介されていました。山のふるさと村ビジターセンターでも、暑く
なり始めた 6 月後半頃から、そのような相談をみんなでよく行いました。すべてではあり
ませんが、その結果がこの夏の活動に反映されています。活動を通して、普段の電気の使
用量と、昔からの生活の知恵、自然の持っている「暑」と「涼」の力に改めて気付くこと
もできました。
また、この夏は山のふるさと村へ徒歩で来所するための遊歩道が 2 箇所も通行止めとなっ
てしまい、それは入園者数に大きく響くことになりました。ビジターセンターでは、少な
い来園者にどのような対応をすることができるかを考え、
それを実施し、改善するという繰り返しを行いました。
その活動の結果と対応による効果などについて、次頁より
ご報告させていただきます。最後までお読みいただけます
と幸いです。
−1−
山ふる解説員通信 No.74 1. 2011 年夏期のトピックス
天候不順
~プログラムや宿泊のキャンセルが相次ぐ~
今夏は台風の影響も含め、夏休み期間中 20 日間も雨
天日となり、天候不順が続く夏休みとなりました。午後
からの激しい夕立や雷雨を受け、宿泊者限定プログラム
のキャンセルや、宿泊自体を見合わす来園者も多く、園
内全体の入園者数に大きな影響を与えました。しかし、
雨宿りのため来館し、ビジターセンター館内に長時間
滞在する来館者の姿も多く、展示解説や短時間の自然
体験プログラムの対応数は伸びる結果ともなりました。
(詳しくは 3 ページを参照)
図 1. ビジターセンター館内での展示解説の様子
徒歩での入園者が大幅減
~最寄りの遊歩道が通行止めに~
小河内ダムから山のふるさと村を結ぶ、森林セラピーロードとしても人気の高い遊歩道「奥多摩湖い
こいの路」は、6 月よりツキノワグマの目撃情報が続き、通行止めとなっていました。その後、糞など
の痕跡も継続して見つかっている事から、夏休み期間も引き続き通行止めとなりました。また、奥多
摩湖の水位低下を受けて、最寄りのバス停と遊歩道を結ぶ「麦山の浮橋(通称:ドラム缶橋)」も取り
外されてしまい、徒歩で来所するには、通常の遊歩道の距離の倍となる約 5 キロもの距離を歩く事となっ
てしまいました。そのため、土日祝日に運行している、山のふるさと村から最寄りのバス停まで送る
無料送迎バスを利用するハイキング客の姿もほとんど見られませんでした。
また、麦山の浮橋からの遊歩道を利用するケースが多い子ども会などの団体の利用も、減少したよ
うに感じられました。
節電への取り組み
~積極的な取り組みと避難場所としての視点も~
上記に示した通り、天候不順が続いた今夏は、昨年
のように猛暑に苦しむ事は少なかったように思えます。
ビジターセンターでは冷房をほとんどつける事もなく、
前回お伝えした「節電プロジェクト」による打ち水や
うちわ、レストラン屋根及びビジターセンターベラン
ダ脇から水を流し、室内に入り込む風を涼しくする
「水のカーテン」などの、電気を使わない工夫で涼を
得る事が出来ました。
しかし、ビジターセンターの緊急避難場所としての
位置づけの観点から、熱中症になりうる「気温 28℃/
図 2. 好評だった打ち水体験プログラム
湿度 60%以上」を超えたら冷房をつけるという、明確な基準を設定し、闇雲に節電を行うのではなく、
施設の求められている意味を常に意識しながら、柔軟な取り組みを実施しました。
−2−
山ふる解説員通信 No.74
2. 夏期の活動報告
解説業務結果
~徒歩による入園経路の通行止めが、プログラム対応数にも響く~
<解説数について>
本来、夏期はキャンプや川遊び等で利用者の滞在時間も長いため、プログラムが成立しやすい季節
です。しかし、今夏は「はじめに」や「2011 年夏期のトピックス」で述べた天候不順の影響が大きく
出ました。特に、ガイドウォーク(以下 GW)をはじめ野外で過ごす時間が長いプログラムは一時的で
も強い雨が降ると申込みの躊躇や、キャンセルがあり、実施回数や対応数が大きく減少しました。雨
の日とは反対に、晴れた日は 30℃を超す真夏日になる事が多く、レンタル BOX は水辺で過ごすセット
や避暑が出来るセットに人気がありました。加えて、ミニトークでも解説を交えた打ち水を行う等、
節電や避暑を織り込んだプログラムを行う事で対応数の増加に繋げました。しかし、8 月の天候不順が
足を引っ張った形となり、これらも全体数は大幅な増加にはなりませんでした。また、雨や日差しを
避けてビジターセンターに来た人々に対しては、意識して展示解説を行った事で、展示解説者数は昨
年と同水準を保ち、入園者や入館者に対する解説人数の割合を大幅に増やす事が出来ました。
<プログラム時間について>
プログラムの時間割は、スライドショーを午後の GW の直前に行い、GW への参加を促す効果を持たせ
ました。また、宿泊の翌日に自然体験プログラムを楽しんでいただくため、チェックアウト後の時間
帯に人気の高い GW とちびっこあーとを配置しました。更に、熱中症予防のため、昨年から日差しの強
い 12 時から 14 時には野外プログラムを避ける方策を実施しています。結果、特に遠方から来た人々
は昼前のちびっこあーとや午後のスライドショ―から参加し、午後の GW を受ける傾向にありました。
また、午前の GW は宿泊者の参加が多く、その後のちびっこあーとの同時申込みも目立ちました。これ
らの事から、多くの人がプログラムに参加し易い時間割だったのではないかと思います。
<今後の課題>
全体として、雨天の場合は、申込んだ後のキャンセルや申込み渋りが目立ち、成立した場合でも少
人数になる事が多かった様に思います。今後の課題として、雨天でもプログラムを安心して楽しめる
事や、雨天ならではの魅力の案内を行う等して、天候不順な時でもなるべく多くの参加者を確保する
事だと思います。これは、夏期以外でも課題となる事項なので、是非早急に対応したいと思います。
表 1.2009 年から 2011 年の夏期の解説業務数
2009 年度
2010 年度
36435
37593
入園者
入館者
プログラム
21088
回数
26987
参加人数
展示解説
回数
参加人数
13423
12439
スライドショー
43
421
58
406
ガイドウォーク
97
997
124
861
ちびっこあ~と
45
333
70
519
ミニトーク
165
1213
197
775
Jr. レンジャー特別活動
13
18
18
18
セルフガイド
17
337
21
204
キャンパーズプログラム
112
1400
150
1201
レンタル BOX
17
337
47
160
解説総数
509
18479
685
16583
入園者に対する解説人数の割合
50.7%
44.1%
入館者に対する解説人数の割合
87.6%
61.4%
2011 年度
30373
20481
回数
参加人数
12418
48
487
88
781
48
435
164
805
22
25
15
105
79
822
51
206
512
16083
53.0%
78.5%
※数字は団体対応も含む
−3−
山ふる解説員通信 No.74 宿泊者限定プログラム
~連日の長時間による雷雨の影響を受ける~
<結果>
今年度は、夏休み期間の午後の雷雨に悩まされました。雨天日の多くが夏特有の通り雨(一時の雷雨)
ではなく、夜まで続く長時間の雷雨でした。雷雨の激しさに驚いた参加希望者から翌朝のプログラム
も含めてキャンセルの入ることは珍しくなく、プログラムの成立しない日が度々ありました(キャン
セルした方の殆どは初参加者)。よって、プログラム参加者は昨年に比べ大幅に減少してしまいました。
<近年の傾向と分析>
表 2 を見ていただきますと、ここ 5 年間の結果で、雨天日と宿泊者限定プログラムの参加者数は比
例していることがわかりました。それも一時的なものではなく、長時間の雨が参加者数に影響を与え
ていました。ここ 5 年間で最も参加者の多かった 2010 年度は、一見、雨天の日数は今年と変わりません。
しかし、その降り方が、2010 年度は「午後一番に通り雨が降った」、2011 年度は「午後から夜に掛け
て雷雨となった 」、と大きく異なったため、結果も大きく異なったものと推測されます。今年度と同様
の天候状況であった 2008 年度も、やはり参加者数が大幅に減少しています。
2007 年は雨天日が多い割に参加者数が多いのですが、これは雨天日が夏休み前の平日と夏休みの終
わりに集中していたことによるものと考えられます。そういう意味では、今年度は夏休み中の繁忙期
に雷雨があったため、より参加者減少につながったものと思われます。
<課題>
午後にやってくる雷雨についてはどうすることもできないため、ナイトプログラムのキャンセルは
多少、止むを得ない状況ではあります。しかし、翌日の朝に実施するおはようウォークに関しては、
前日のイメージだけでキャンセルしている場合が多いので、こちらの声掛けやチラシの表記の仕方次
第では、もっと参加希望者を募れるのではないかと感じています。朝までには雨のやむ可能性が高い
こと等の情報提供=「安心感」、ただ参加を促すだけでなく参加者の不安を解消するような促し=「誠
実な勧誘・対応」を、できるだけ多くの人々に地道に伝えていく必要がありそうです。
表 2. 2007 年度から 2011 年度の夏期の宿泊者限定プログラム対応数と雨日数
7月
8月
2011 年度
夏期合計
2010 年度
夏期合計
2009 年度
夏期合計
2008 年度
夏期合計
2007 年度
夏期合計
おはようウォーク
ナイトプログラム
全降雨日数降 雨 日 数
実施回数 参加者数 初参加率 実施回数 参加者数 初参加率 (一時の降雨も(一時の降雨を
含める)
含めない)
(回)
(人)
(回)
(人)
7
58
77.4%
12
104
48.1%
6日
4日
16
118
67.8%
26
263
66.2%
14 日
11 日
23
171
72.6%
38
378
57.2%
20 日
15 日
39
289
65.6%
68
652
60.1%
19 日
5日
35
288
―
48
518
―
14 日
10 日
22
146
―
32
300
―
28 日
14 日
33
309
―
42
484
―
23 日
14 日
−4−
山ふる解説員通信 No.74
展 示
~展示の対象年齢層の設定を意識~
●メイン展示「木の成長をキにしてみよう!」
<展示概要>
国際森林年である今年は、ビジターセンターでも 1 年を通して「森林」をテーマとした展示作成を進
めています。その中で、夏期のメイン展示は、「樹木の成長の仕方」や「生き残るための工夫」を絞り、
作製しました。対象年齢は小学校 3 年生~中学生までとし、来館者が展示を見終わった時、身の回りの
森林を意識して見られるようになっている事をねらいとして、作製を進めました。
<展示成果報告>
来館者の反応としては、対象年齢の子どもの来館者が興味を持って立ち止まる様子は、残念ながらあ
まり確認されませんでした。その反面、大人は立ち止まる人がいて、熱心に解説を聞いている人を見受
けました。対象年齢の来館者に好まれなかった原因としては、展示全体の情報が多かったため、内容が
難しくなっていた事が要因の一つだと考えました。さらに、インタープリター間のふりかえりの中で、
展示解説をする側として「展示解説のための声掛けがしにくい」という声がありました。これらのふり
かえりを踏まえ、もう少し内容を絞り込むことで、全体の内容が来館者に伝わりやすくなり、より内容
を深めるための展示解説のための、インタープリターが関わる余地が生まれるのではないかと考えまし
た。次回展示作成の時には、これらを意識し作成していきたいと思います。
図 3. 成長段階の様子を解説した展示の外観(左)と樹高の測り方(右上)と実際に樹高計測する事を促す解説(右下)
● 調査展示「クワガタレンジャー募集中」 ~自ら守りたいという気持ちを促す仕掛け~
<展示概要>
過去5年間のクワガタムシの調査数を折れ線グラフで表記し、今夏の発見数の記録や大きさを測れ
るコーナーを設置しました。「動植物の採取の禁止」を大きく取り上げるのではなく、クワガタムシ
がおかれている現状を伝えて、クワガタムシ減少を食い止めるにはどうしたらいいかを、自分自身で
考えられるようになる事を目的として作成しました。
<展示成果報告>
折れ線グラフという小学生でも判りやすい表記にしたため、クワガタムシの減少傾向を一目で理解
する事ができ、足を止めて展示を眺める来館者の姿が良く見られました。また、グラフ内の 2011 年度(今
年度)の記録を書き込み式にした事により、発見を報告する参加者の積極的な姿が目立ちました。
夏期に多い昆虫採集を目的とした家族への声かけの機会として、非常に効果のある展示でしたが、
動植物の採取は禁止などの自然公園のルールやマナーは、来館者にはまだまだ浸透していないという
現状も強く感じる結果ともなりました。ビジターセンターとして伝えるべきメッセージをねらいとし
ている展示として、今夏の成果を生かし、継続して今後も作成していきたいと思います。
−5−
山ふる解説員通信 No.74 ● パネル展示「木が育つには苦労がたくさん」 ~遊びながら木の成長を知る形態が人気~
<展示概要>
夏期のサブ展示は、「木が育つには苦労がたくさん」というタイトルで、カードを捲りながらパネル
で出来た樹木を育てて行くゲーム型の展示です。対象年齢は、小学校高学年に設定しました。
カードには、生物、気象、人間による樹木の生長に有利、不利に働く要因が書いてあります。パネ
ルは、一本の木が八等分されており、根元から順番に壁に貼り付けて繋げて行きます。カードに書い
てある事項としては、例えば、「剪定をした」というカードは、剪定により弱った枝葉が取り除かれ、
光の当たりが良くなる事から成長に利益がある為、「1つのびる」としています。また、「大雪が降っ
て一番太い枝が折れてしまった」というカードは、枝が折れる事でその成長に大きな影響があるので、
「1つちぢむ」としています。この数字に合わせて木のパネルを掛け外ししながら、一本の木を完成させ、
その中で外的な要因の影響を知る事をゴールとします。
<展示成果報告>
カードをめくって内容を読み、木を成長させるという行為を繰り返す事によって、樹木の生長を阻
害する要因が自然界に数多く存在する事を知り、一本の木が生長して大木になるのは非常に難しいと
いう事を実感して貰う事が出来たと思います。特に、夏休みの間に訪れた親子や小学生の兄弟で楽し
んでいる様子が目立ちました。また、子どもがインタープリターを呼びに来て、より効果的な解説が
出来た場合もありました。この場合は、 カードに書かれた解説文を、より簡単な言葉で置き換え、要
因と結果を丁寧に説明する事が出来ます。その為、対象年齢の小学校高学年より幼い子どもでも、展
示のねらいを達成する事が出来たと思います。
一度遊び始めると熱中して何度も繰り返し遊び続ける子どもが多かったものの、始めにインタープ
リターの声掛けがないと、なかなか手に取って貰えないというのが展示の課題でした。これについて
は、「きぐろうゲーム」という副題を出す事で改善を図りました。これにより、ゲームとして気軽に遊
べるという印象を与え、副題がなかったときよりも自分達で遊び始める子ども達が多かったと感じま
す。この様なタイトルやキャッチフレーズの効果を意識した展示作製を今後も意識していきたいと思
います。
図 4. パネルで出来た樹木を貼り付けている様子(左)とカードを出し合うテーブル面(右)
−6−
山ふる解説員通信 No.74
キャンプ
~年齢層に合った内容とバリエーションを意識~
『Jr. レンジャーキャンプ 2011』
2011 年 8 月 8 日(月)〜 11 日(木)・3 泊 4 日 対象:小学 4 年~中学 3 年生(Jr. レンジャー登録者は小学 3 年生から)
参加者 19 名(申込者 22 名) / 担当:加藤・原島 他 3 名
講師:東京都自然保護員 田畑真悠氏 / 環境 NPO 環境・樹木ネットワーク協会 後藤洋一氏
<キャンプのねらい>
ビジターセンターで取り組んでいる「Jr. レンジャープログラム」のステップアップ版の位置づけと
して、例年行っているキャンプですが、今年は、Jr. レンジャープログラムの基本的な概念「自然に詳
しく、自然にやさしい」を基盤とし、「自分自身が愛着をもった自然を守るために出来る事を、他者に
伝えられるようになる」事をねらいとしました。
<キャンプの成果>
キャンプの具体的な内容としては、まず 1 日目から 2 日
目にかけて山のふるさと村の環境や生息する生きものの存
在を知り、その生きものに愛着や興味を持った後、ゲスト
による対談、スライドを通して、生きものに降りかかって
いる環境問題とその危機について理解する時間を取りまし
た。それにより、好きになった生きものを「守りたい」と
いう気持ちを「人に伝える」ためにはどうすればいいのか
という工夫を自分たちで行い、最終的に「自分自身が自然
を守るためにできること」を誓いのパネルへ形にしてもら
図 5. 参加者自身が考えた誓いのパネル
いました。体験を通して段階的に学ばせる事は、日数に余裕のある長期キャンプならではの手法です
が、最終日の自分たちのできることの発表の際には、「インタープリターになって自然の事を人に伝え
る」
「できるだけそのままの自然を大事にする」などの実現可能かつ具体的な内容が聞かれた事からも、
効果的なプログラムの構成であったと考えられました。
また、キャンプ活動中の「人に伝える」活動の一環とし
て、自然の置かれている現状についてのアンケートを園内
スタッフや来園者を対象として行った事で、キャンプ参加
者以外にも山ふるの自然が置かれている現状の情報提供を
行う事ができました。アンケート回答者からは「こんなキ
レイな森で危機が起こっているなんて知らなかった」など
の声が聞かれ、自然公園が伝えたいメッセージとして、大
変意味のある活動であったと考えます。
図 6. 園内スタッフへの聞き取り調査の様子
ゲストの皆さんや園内スタッフには大変お世話になり、貴重な時間を割いていただいて、本行事は
無事終了することができました。今後も、周辺地域の施設や団体、人材との協同を進めていく上での
一つのモデルとなる行事を目指していきたいと思います。
−7−
山ふる解説員通信 No.74 『子ども 「火・水・石」3つの力キャンプ』 2011 年 8 月 17 日(水)〜 19 日(金)・2 泊 3 日
対象:小学校 3 ~ 4 年生 参加費:18,000 円
参加者 23 名(申込者 37 名) 担当:小川・加藤 他 4 名
<キャンプのねらい>
今回のキャンプでは、「奥多摩で昔から利用されてきた火・水・石の役割や特性を知る。」というこ
とを目的に企画しました。そして、そのための達成目標を次の 3 つにし、それに併せてスケジュール
を組みました。
①火のおこし方と火の扱い方を実践できるようになり、火の用途を実感できるようになる。 ②上流の水がきれいであることを水生昆虫や周りの環境から確かめ、その水で作った料理の味を感
じられるようになる。
③園内で採れる石の特徴を知り、石釜を作ることができるようになる。
<キャンプの効果>
今回は企画当初に「3 ~ 4 年生の年代は、目標が明確なことでやる気が起こり、活動がスムーズにい
くのではないか」と考え、子ども達が好きな「たき火」を取り入れた 3 つの力に重点をおいて企画し
ました。タイトル決定時には、体験する内容を明確にすること、親御さんから見て子どもに体験して
欲しい要素を盛り込むことを意識しました。その結果、内容・タイトル共にねらい達成の効果を見る
ことができました。内容では、3 つの力をわかりやすく活動に盛り込んだため、子ども達も力を手に入
れていることを実感することができたようです。そのため、ふりかえりの様子からも殆どの子どもが
目標を達成していると評価しています。また、タイトルについては、初参加の保護者から「タイトル
に魅かれて申し込んだ」とのコメントをいくつかいただくことができました。このタイトルのキャン
プに多くの効果を実感したため、今回、3 つの力を学ぶプログラムで出た改善点を検討し直し、また次
回も同タイトルで実施したいと考えています。
図 7. 班に分かれ、「火の力」を学んでいる様子
−8−
山ふる解説員通信 No.74
『ちびっこ 夏の森へぼうけんキャンプ』
2011 年 8 月 25 日(木)〜 27 日(土)・2 泊 3 日 対象:小学 1、2 年生 /参加費:18,000 円
参加者 24 名(申込者 45 名)
担当:坂田・小川 他 4 名
<キャンプのねらい>
今回のキャンプでは、ねらいを「朝昼夜の森の変化
を意識する事で、お気に入りの過ごし方や、お気に入
りの自然を見付け、それを人に伝える。」ことに設定し
ました。また、1、2 年生は親元を離れて野外宿泊をす
る体験が初めてという参加者が殆どです。従って、親
と離れて過ごす不安感が慣れない森に対する不安感と
結び付いてしまわない様に、色々な発見を通じて森遊
びを楽しんでもらい、森への親しみを育むという事を
スタッフ間の共通意識として持ちました。
図 8. 森の中での一場面
<キャンプの効果>
今回は、キャンプ中に雨が降る時間帯もあり、当初予定していた活動を変更する場面もありました。
しかし、メインの活動であった日中のネイチャートレイル散策は無事に行う事が出来、様々な昆虫、
キノコ、葉っぱや木の実を数多く観察して歩きました。更に、その中のお気に入りの逸品を選び出し
て、絵に描いて記録する事が出来ました。また、夜や朝の散策では、土や葉の匂い、森の明るさの変
化、セミの鳴き出しや沢のせせらぎの音といった感覚を大切にした森の捉え方を意識する事も出来ま
した。最終日の朝の森歩きの際に、3 日間の印象を尋ねると、見付けた物や楽しかった体験について、
多くの答えが返って来て、人に沢山伝えられる様になりました。
キャンプの仕上げには、見付けた自然物の記録や、一日毎に印象に残った事を書いた絵日記をまと
めたアルバムを作りました。それを、木の実や落ち葉で飾り、持って帰って家族に報告出来る様にし
ました。その後の、親御さんとのやり取りでは、活動の様子や、楽しんでいた事が分かって良かった
という声が聞かれました。今後もキャンプに参加した子どもだけでなく、その家族にも体験が伝わる
様な内容を意識して行きたいと思います。
キャンプの来年度の展望
~子どもキャンプの需要を再認識した今夏~
今年度は、3 月 11 日に発生した東日本大震災を受け、キャンプ内容や実施そのもの検討し、計 9
本という例年より少ないキャンプ数とさせていただきました。例年は 7 月、8 月に 1 本ずつ、夏休み
期間に計 2 本実施していた小学 1 ~ 2 年対象キャンプと小学 3 ~ 4 年対象キャンプの実施回数を減
らした事により、これまで分散していた申込みが一つのキャンプに殺到してしまい、結果、多くの
方に落選のご連絡をさせていただく事となってしまいました。この結果をスタッフ一同重く受け止
めつつも、他のキャンプとのバランスを考えながら、来年度のキャンプ実施数を再検討していきた
いと思います。
−9−
山ふる解説員通信 No.74 シーズナルレンジャー活動
~双方の益になる充実した内容に~
園内で行われたインタープリター・トレーニング・セミナー(日本インタープリテーション協会主催)
修了生を対象に、実地研修の受け入れを春期から秋期にかけて行っています。研修生として活動する
方をシーズナルレンジャーとし、プログラム企画から実施をはじめ、入園者への対応を経験していき
ます。私たちビジターセンターの職員は、活動がより良い内容かつ適切な対応として行われるように、
オリエンテーションの実施やプログラム企画の相談、プログラム実施後のフィードバック等、活動の
サポートに努めています。今夏も、7 月から 8 月にかけて 11 名のべ 56 人/日の実地研修が行われました。
シーズナルレンジャー活動では、プログラム実施に向けて、入館者へのインフォメーションや展示
解説の経験を重ねることで、山のふるさと村の自然公園施設としての特徴や入園者の特徴を理解する
ことから活動が始まります。これらの活動が活発に行われることは、繁忙期で館内が混み合う夏期に
は入園者サービスの充実にも大きく繋がりました、様々な要因により、入園者数が大幅に減少しつつ
も対応者人数はさほど減少しなかった今夏は、シーズナルレンジャー活動の力によるものも大きいと
考えます。今後も活動の受け入れを継続し、山のふるさと村とシーズナルレンジャー、その双方共が
より充実した結果が残せる活動を展開していきたいと思います。
団体対応
~無料プログラムが大幅増加~
<結果と課題>
結果は表 3 のように無料プログラムが増え、有料プログラムが減少となりました。有料対応が大幅
に減少した要因は、過去 10 年ほど毎年校外学習で来所していた都内の女子中学生 200 名が、学校の方
針の変更で来所しなくなったことにあります。学校の先生へコンタクトをとり、対応につながるよう
努めましたが、今年度は実りませんでした。以上を受け、新たな大型団体の獲得を目指す必要がある
と感じています。
<来訪者の反応>
表 4 の「利用のきっかけ」からもわかるように、毎年利用する団体が多いです。また、家族で来所
した際に自然体験プログラムを気に入り、その方の関係する団体での利用に発展した例も 2 つあります。
これは、毎回の対応が適当であり、好評を得ている結果だと考えています。
<安全管理マニュアルの作成と夏期の目標>
団体対応中の起こりうる事故をシチュエーションごとに想定し、その際の対応方法について、改め
てとりまとめました。スタッフ間の経験を元に何度も話し合いを持ち、また外部の方にも見ていただ
きました。これから夏期に入り、連日団体対応がある中で、常にマニュアルを意識しておくこと、団
体の代表者と直前打合せで確認することなどを、徹底していきたいと思います。
表 3. 夏期の団体対応数結果表
無料プログラム
有料プログラム
実施回数 参加者数 実施 1 回あたりの 実施回数 参加者数 実施 1 回あたりの
(回)
(人)
平均参加者数
(回)
(人)
平均参加者数
(人)
(人)
合 計
実施回数 参加者数
(回)
(人)
2011 年度
11
204
18.5
36
541
15.3
47
745
2010 年度
2009 年度
2008 年度
16
8
11
623
338
378
39
42
34
54
54
97
933
1172
2347
17
22
24
70
62
108
1556
1510
2725
− 10 −
山ふる解説員通信 No.74
表 4. 夏期の団体対応一覧
プログラム
無料プログラム
セルフガイド
スライドショー
ミニトーク
ガイドウォーク
有料プログラム
ナイトプログラム
利用の
きっかけ
団体名
氷川・古里小学校
六踏園皐月
東大和地区交通少年団
臨港消防少年団
吉田小学校 6 年グループ
ガールスカウト千葉 60 団
東邦大学実習
東邦大学実習
昭島ナオミ保育園
本駒込育成室
グレートベアー
立正佼成会
多摩キリスト教会
東邦大学実習
東邦大学実習
都立多摩工業高校
ガールスカウト千葉 60 団
三鷹青年会議所
ボーイスカウト墨田 10 団
西東京消防少年団
臨港消防少年団
東邦大学実習
東邦大学実習
雲柱社きょうだいの会ライオンクラブ
ガールスカウト東京 30 団
ガールスカウト埼玉 29 団
六踏園皐月
ガールスカウト埼玉 78 団
国際ロータリー 2770 地区
西東京消防少年団
東邦大学実習
おはようウォーク 東邦大学実習
六踏園皐月
国際ロータリー 2770 地区
ちびっこあーと 多摩キリスト教会
レクチャー
立正佼成会
合 計
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− 11 −
実施回数 参加者数
( 回)
( 人)
1
1
1
2
1
1
2
2
1
1
2
1
1
2
2
1
2
2
1
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
47
36
13
38
56
18
16
14
13
24
30
51
15
12
14
13
12
19
42
16
28
56
14
13
15
13
15
13
9
13
24
14
13
13
13
12
15
745
実施日
7月 1日
8 月 11 日
7 月 24 日
7 月 29 日
7 月 30 日
8 月 21 日
8月 3日
8月 5日
7 月 15 日
7 月 24 日
7 月 31 日
8月 1日
8月 3日
8月 3日
8月 5日
8月 8日
8 月 20 日
8 月 28 日
7 月 17 日
7 月 25 日
7 月 29 日
8月 3日
8月 5日
8月 4日
8月 5日
8月 7日
8 月 11 日
8 月 13 日
8 月 27 日
7 月 26 日
8月 4日
8月 6日
8 月 11 日
8 月 28 日
8月 3日
8月 1日
山ふる解説員通信 No.74 3. 秋期の活動への取り組み
~継続調査によって実施時間帯の傾向を読み取る~
秋期のアクティビティ
秋期の自然体験プログラムは、9 月 1 日(木)から 11 月 30 日(水)の期間中、土日、祝祭日は下表
の時間帯で実施します。平日は申込みが入り次第、随時実施します。
秋期は紅葉目当ての観光客が多数、奥多摩地域へ訪れる時期です。山のふるさと村も例外ではなく、
例年 11 月に年間最多の入園者数を記録しています。
秋期の入園者の傾向として、紅葉目的のドライブ途中での立ち寄りや、観光バスツアーの参加者な
ど日帰りの短時間の利用者が多いこと、初入園者の割合が高いことがあげられます。また、自然環境
夏期の新展示
に着目すると、残暑の厳しい 9 月は日中の野外活動において参加者の体力消耗が厳しいことや、9 月~
11 月の三ヶ月で、1 時間半も日没時刻が早くなってしまうことも、秋の特徴です。これらの特徴をふまえ、
昨秋、短時間の滞在でも気軽に参加いただけるように検討した実施時間をもとに、参加者がより過ご
しやすいプログラムの時間帯を検討しました。
まず、9 月の残暑に備え「ガイドウォーク」の時間帯を 30 分遅らせ、園内散策の参加を促進したい
と考えています。次に、「ちびっこあーと」と「ミニスライドショー」の実施時間を入れ替え、午後に
ドライブで到着された方々の体験型のプログラムへの参加を促していく予定です。初入園者の割合が
高い秋期の利用状況を踏まえ、入園者の状況に合わせ柔軟な対応をしていきたいと考えています。
宿泊者限定プログラムは日没、日の出時間の変化を考慮し、春期実施時間と同じく実施します。
今期も引き続き入園者の方々と積極的にコミュニケーションをはかり、再来訪を促すとともに、聞
き取り調査を充実させてニーズの把握に努めていきたいと思います。
表 5. 秋期の自然体験プログラム一覧
●日中の自然体験プログラム(無料)
プログラム
ガイドウォーク
開始時間 所要時間 定員
10:30
14:30
内容
45 分
15 名
インタープリター(自然解説員)が、山ふるの自然やその楽しみ方
をご紹介します。
ミニスライドショー
11:30
15 分
30 名
山のふるさと村園内の様子や季節の移り変わりをオリジナルスライ
ドでご紹介します。
ちびっこあーと
13:15
30 分
15 名
木の実や葉っぱなどの自然素材を使った、子ども向けのクラフトで
す。ご家族の方や大人の方もご参加いただけます。
ミニトーク
随時
15 分
30 名
周辺の自然や歴史などをテーマにした、ちょっと短めの体験プログ
ラム。山ふるの様々なトピックスに触れることができます。 ●宿泊者限定プログラム(有料)※山のふるさと村キャンプ場宿泊者のみ対象。参加費:500 円(3 歳児未満は無料)
プログラム
内容
開始時間 所要時間 定員
ナイトプログラム
18:30
60 分
15 名
アニマルウォッチング、暗闇体験など、夜ならではの自然体験を楽
しむことができます。
おはようウォーク
7:00
60 分
15 名
早起きは三文の徳!ちょっと早起きして自然散策。朝にしか味わえ
ない自然を満喫できます。
− 12 −
山ふる解説員通信 No.74
秋の新展示
~年間テーマと秋期の来館者層を意識~
2011 年度は年間を通して「国際森林年」をテーマとした展示作成を進めています。秋期は紅葉目当
ての中高年の方など、来園者の年齢層が高くなる傾向があります。それを受け、メイン展示ではメイ
ンターゲットの年齢層を少し高く設定し、パネル展示では、小学生以下の来館者にも楽しめる参加体
験型要素を含めた内容とする予定です。
また、秋期は短時間滞在者が増える時期でもあるため、じっくりと見て楽しむものではなく、シン
プルな仕掛けや写真の多用などの目を惹く工夫も取り入れていきたいと思います。
それぞれの取り組みは次回、成果報告としてご報告したいと思います。
生物多様性保全秋の取り組み
~冬期の取りまとめを視野に入れ、調査を実施~
前号で紹介した今年度の重点取り組み事項である生物多様性保全について、この秋の具体的な取り
組み内容を、「調査」「管理」「教育普及」に分けて紹介していきます。
●調査
今年度は、昆虫と木本の生息種や生息場所、フェノロジーについて重点的に調査しています。特に、
これからの季節は樹木の結実や紅葉が本格化するので、その時期や程度を記録していきたいと思いま
す。
加えて、秋から冬の始まりにかけては、冬鳥の飛来日も重要な調査事項の一つです。毎日の自然情
報調査の折に、野鳥の姿や鳴き声に注意を払う様にスタッフ間で確認しています。
●管理
先ずは、秋の開花結実に行われる園内の草刈り作業に向けて、奥多摩町との意思の疎通が、優先事
項です。草刈りが行われる範囲のレッドリストデータ掲載種としては、フシグロセンノウ、ヤマホロシ、
フジアザミが確認されています。これらの写真を撮り、奥多摩町へ伝達しました。公園の共有財産と
して、希少種の保護を協力して推し進めていく様にしたいと思います。
また、昨年度の草本類と、今年度の木本類の調査結果を元に、開花結実時期とその場所をまとめた
地図を今冬に作成し、来年度以降の管理計画に活かしていく事を予定しています。
●教育普及
今冬に利用者向けの自然情報地図や出現種リストといった印刷物の更新を予定しています。現在は、
まだそれに向けて生物相や環境の把握といった調査を行なっている段階ですが、今から徐々に情報の
整理と効果的な印刷物にする為のアイディア出しを行なっていきたいと思います。
また、夏期には園内で確認されているクワガタムシの個体数が減少傾向にある
事を示した展示を作成しましたが、印刷物だけでなく、展示物やプログラムで
も多様性保全に関する普及啓発やビジターセンターの取り組み紹介を行なって
いきたいと思います。
− 13 −
山ふる解説員通信 No.74 4. 山ふるつながりコラム vol.10
山のふるさと村ビジターセンターでは、シーズナルレンジャーとしてインタープリター養
成講座(C E S インタープリター・トレーニング・セミナー)の受講修了者を対象に実地研修
の受け入れを行っています。当コラムでは、現在、様々な場所で活動するシーズナルレン
ジャーと、山ふるとの間に生まれたつながりを紹介します。記念すべき第 10 回目は、シギ・
チドリの聖地として名高い谷津干潟より、椎名明日香さんです!
1. 現在の私の活動
私がレンジャーとして勤務する谷津干潟自然観察センター(以下センター)は、千葉県習志野市の
住宅街の中にある、埋め立てをまぬがれて残された干潟「谷津干潟」を一望できる場所にあります。
仕事内容は、来館者への水鳥を中心とした観察案内から始まり、イベントの企画実施、学校教育の支援、
展示の作成、草刈など環境管理、ボランティアのコーディネートと多岐に渡ります。
センターには自然愛好者だけでなく、ご近所の方や放課後を過ごす子どもたちもやってきます。そん
な時、センターは地域の憩いの場や児童館に変身します。そのように地域に根ざした施設である一方、
谷津干潟は国際的な湿地保全のための条約「ラムサール条約」に登録されているため、業務の上で国
内外の湿地関係者と交流する機会もあります。「Think Globaly、Act Localy」という言葉を肌で感じな
がら、老若男女さまざまな人たちと関わる刺激的な日々を過ごしています。
2.ITS を受講したきっかけ
私がインタープリター・トレーニング・セミナー(以下、ITS)を受講したのは、ズバリ、オンザジョ
ブトレーニング(以下、OJT)目当てだったと言っても過言ではありません。というのも当時勤務して
いた NPO で主催する自然解説入門講座で、なんと模範プログラムを担当させてもらえることになった
のです!それまでの私はなんと、自分 1 人ではプログラムの企画も実施もしたことがなく…おまけに
ひどいあがり症で、人前で話すなんてとんでもない!といった状態。「急いでどこかで場数を踏まなく
ては、とても乗り切れない!」ということで、ITS を受講することにしたのです。 谷津干潟と観察センター(右端)
お仕事1.校外学習での水鳥観察
− 14 −
山ふる解説員通信 No.74
3.OJT、ここがオススメ
そんなわけで始まった OJT 活動の日々。古い記憶を紐解きながらふりかえり、これから OJT を始め
る方にオススメのポイントを自分なりに挙げてみました。
○場数が踏める
…なんと言ってもこれが大事!成功体験から得られる自信も、失敗体験から得られる教訓も、す
べてが自分の経験値になります。自分としても、もっともっと時間の許す限り OJT に行けば良かっ
た、という小さな後悔もあります。
○他の人のプログラムを見られる、見てもらえる
…現場では自分 1 人でプログラムの実施・ふりかえりをしなくてはいけないこともざらにあります。
人のプログラムを見て参考にしたり、ふりかえりで仲間から忌憚のない意見がもらえるのも、 OJT ならでの特権。
○自由に、自分の好奇心や想いを主体にプログラムを実施できる
…現場ではそれぞれの施設や団体に、特色や求められるものがあり、それらに合わないプログラ
ムを行うことは難しいこともあります。自分が「おもしろい!」と思ったものを即、プログラ
ムにできるのは、OJT のおいしい所ではないでしょうか。
○自分のペースで様々なことを試したり、吸収できる
…仕事となると当然、締切があり、時間との闘いもうまれます。その点、OJT 活動はマイペースで
進めることが出来、のんびり屋の私にはこれもありがたかったです(笑)
現場にいる今になって OJT 活動を振り返ると、あ
んな素人の自分にスタッフの一員として様々な経験
を積める場を作って頂けたなんて…「山ふるって、
なんて太っ腹なんだろう!」と、感謝を飛び越えて
脱帽の思いです。こういった場があること自体、本
当に、ほんっっとうに貴重!なことなので、これか
ら OJT 活動に取り組む方には、できるだけたくさん
山ふるに通い、色々なことにトライしてもらえると
いいな、と思います。
お仕事2.ボランティア入門講座
椎名 明日香(キャンプネーム:あすか)
ITS28 回受講。学生の頃より、ボランティアで子ども向け自然観察会や
長期の子どもキャンプのスタッフとして活動。2007 年よりボランティ
ア先であった谷津干潟自然観察センターにて、指定管理者「社団法人
アーバンネイチャーマネジメントサービス」のレンジャーとして勤務。
最近は、幼児とその保護者向けのプログラム開発に奮闘中!
− 15 −
インタープリターの視点 62
日本インタープリテーション協会 小林 毅(2011 年 10 月)
インタープリターのリスクマネジメント
インタープリテーションにおける危険管理(安全管理)について整理してみよう。IP の場合、参加者(並びに本人)の怪我や事故か
らの回避だけでなく、学びや気づきに対する障害も「リスク」
、と考える必要がある。以上の両方のリスクマネジメントを考える時、
心理学者マズローの欲求五段階説をベースに整理するとよい。この説は、上方の欲求は下方の欲求がクリアされて発生する、というも
ので、最上段の「自己実現(気づきや学び)
」が達成される条件が整うには「整理・安全・親和・自我」の四つの欲求をクリアしている
ことが基本的に必要、という考え方だ。
まず第一段階は、
「生理的欲求」だ。インタープリテーションの現場では、参加者が感じる暑さ、寒さ、風の強さなどの天候の条件
や、雑音、空腹や喉の渇き、参加者の立っている場所(斜めだったり軟らかすぎたり草を踏んでいたり、など不安になる要素がないか)
、
などが考えられる。更に、インタープリターの立ち位置や対応の仕方も関係する。太陽に向かって立つこと、騒音を参加者の後ろに置
くこと、参加者全員の見える位置にたつこと、話しながら移動しないこと、声の大きさ、スピード、間合い、滑舌などが聞き取りやす
い適度さを保つこと、などが考えられる。
第二段階は「安全の欲求」である。身体的な安全については、一般的なリスクマネジメントでのとらえ方と同様で、
「事前、プログ
ラム時、事後」の3つの段階において整理することができる。
「事前」:下見の実施(危険箇所や危険生物の把握:時間帯、対象者層への配慮)、携帯電話が使用可かどうか(並びに緊急時の連絡方法の明確化)、救急病
院の所在確認、危険の予測(KYT:危険予知トレーニング)、救急法の技術取得、保険加入など。
「プログラム時」:プログラム前後の参加者数の確認、参加者への危険周知、直前の声かけ(活動の範囲、集合時間、危険内容など:経験度合いごとの配慮)、
現場で発見した危険の回避など。事故が発生してしまったら、けが人の救急対応、けが人以外の動きの支持、必要な箇所(病院、プログラムの主催者、けが
人の家族)等への連絡などがあろう。
「事後」:事故があった場合、けが人(並びに家族など)への誠意ある対応、保険対応に加えて、事故原因を明確にした事故報告書を作成し、次回事故が起きな
いようにフィードバックしておくことが重要である。事故がなかった場合でも、ハインリッヒの法則(1:29:300/1件の事故の前に 29 の小さな事故があり、その
前に 300 のヒヤリハットがある)を意識し、ヒヤリハットについて関係者が共有しておくとよい。組織で活動している場合は、安全管理マニュアル、安全管理マ
ネージャーを設定すべきだ。
第三段階は「親和の欲求」
。共通の目的を持って活動しているグループであることの確認、個々の感じたことや意見が共有されるこ
と、参加者に丁寧に対応すること(ホスピタリティー・マインド)などがある。全員が輪状になってお互いの顔が見え、やりとりでき
る体型をとることも重要だ。
第四段階は「自我の欲求」
。活動しているグループの中で自分の存在が大切にされている、と感じてもらえるようにすることを大切
にしよう。個々の意見が尊重される、という雰囲気も大切である。参加者の発言や行動に対してリアクションすること、受け止めるこ
と、平等に対応することが参加者の自己肯定感につながる。
以上の欲求が満たされることを経て第五段階の「自己実現の欲求」に到達する。この段階になって自発性や学びや気づきへの準備が
整う、と考えて良い。この状況を作らずに情報を伝えているだけでは、参加者に学びをもたらすことは少ない。学への「リスク」を上
手にクリアすることが、効果的なIPにつながっていくと考えてよいだろう。
Safety Needs
親和の欲求
安全の欲求
・身体の安全・安心
・雇用(社会的安定) 等
Physiological Needs
物質的欲求
・愛・所属・友好・家族・性的親密性
・社会性 等
間接的欲求
Social Needs
自我の欲求
生命として基本的な欲求
・自己肯定(尊厳)・信頼・達成
・他者による敬い 等
直接的欲求
Esteem Needs
下方の欲求が満たされると
自己実現の欲求
精神的欲求
・モラル・創造性・問題解決・自発性
・事実認識 等
出現する欲求
Self Actualization Needs
生理的欲求
・呼吸・食・水・性的・睡眠・排泄
・ホメオスタシス 等
図.マズローの欲求五段階説(ヒエラルキー)
発行:東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村ビジターセンター
〒 198-0225 東京都西多摩郡奥多摩町川野 1740
TEL:0428-86-2551 FAX:0428-86-2316
E-mail:[email protected] URL:http://www.yamafuru.com
企画・編集:自然教育研究センター 2011 年 10 月発行
− 16 −
< 編 集 後 記 >
記録的な台風の後、ふと気付けば森の中は少しずつ
秋の装いとなっていました。吹く風もひんやりとして、
日差しも穏やかです。そう思えば、10 月というのにツ
クツクボウシの鳴き声が…。色々な出来事が起こって
いる今年は、昆虫も困惑してるのでしょうか? ( 原島 )
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