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肝臓はカラダの中で最も大きい臓器です。アルコールや薬などの有害
肝臓はカラダの中で最も大きい臓器です。アルコールや薬などの有害物質の解毒、食べ物から摂取した栄養素の合成・代謝・貯蔵、食べ物の消化に欠かせない胆 汁の合成・代謝などの働きをしており、生命維持のために非常に重要な臓器の 1 つです。再生能力に優れ、多少ダメージを受けてもしばらくすると元に戻ること ができるのも特徴です。しかし炎症が慢性化すると元に戻らなくなるため、日頃からいたわりと注意が必要です。健康診断等で定期的に検査を受け、常に肝臓の 状態を知っておきましょう。 項目 基準値および基準範囲 アスパラギン酸アミノ トランスフェラーゼ (AST、GOT) 10~40 U/L アラニンアミノ トランスフェラーゼ (ALT、GPT) 5~45 U/L アルカリホスファターゼ (ALP) 100~325 U/L 乳酸脱水素酵素(LDH、LD) 120~240 U/L γ-グルタミルトランスペプチ ダーゼ(γ-GT、γ-GTP) 男:80U/L 以下 女:30U/L 以下 コリンエステラーゼ(ChE) 100~240 U/L アンモニア(NH3) 30~80 μg/dL 疑われる疾患 等 《高値》 AST<ALT 急性肝炎、慢性肝炎 AST>ALT 肝硬変、肝癌、脂肪 肝、アルコール性肝 障害、閉塞性黄疸 AST>>ALT 心筋梗塞 など 知っ得!簡単解説 AST、ALT はさまざまな細胞中に存在する酵素で、細胞が破壊さ れたり壊死すると血液中に漏れ出てきます。特に肝臓に多く存在 するため、肝疾患の指標として日常広く利用されています。AST は肝臓のほか、心臓や骨格筋、赤血球にも含まれるため、これら の障害でも高値を示します。 <一喜一憂してしまう、この数値> ミニ情報 慢性肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患では「値が 高いほど病気が重い」という誤解があります。疾患の重さは むしろ、肝細胞の繊維化(コラーゲンなどの繊維質が増えて 硬くなること)の程度により決まります。繊維化の程度は肝 繊維化マーカー(Ⅳ型コラーゲン、ヒアルロン酸、血小板数) などの検査で推測することができます。 《高値》 肝疾患、胆道疾患、 骨疾患(骨腫瘍など) 、 甲状腺機能亢進症 など 全身の細胞膜に広く分布し、アルカリ側の pH でさまざまなリン 酸化合物を分解する酵素です。主に肝臓から胆道へ排出されるた め、肝胆道系の疾患により胆道が詰まったり狭くなると、ALP が 血液中に漏れ出て高値を示します。 《高値》 肝疾患(肝炎、肝癌など) 心筋梗塞、悪性腫瘍、 溶血性貧血 など 全身の組織に分布している酵素です。臓器特異性が低いため、高 値を示した場合、アイソザイムを測定し損傷臓器を推定します。 アイソザイムは 1~5 に分けられ、肝臓には 5 型が多く存在しま す。 《高値》 アルコール性肝障害、胆 汁うっ滞、肝炎、肝硬変、 肝癌、脂肪肝 など 肝細胞に多く含まれる酵素で、肝胆道系が塞がって胆汁の排泄が 阻害されると高値を示します。また飲酒や薬物服用などによって も肝臓でγ-GT が誘導され高値になります。アルコール性肝障害 で著しい上昇を示すのが特徴です。 《高値》 脂肪肝、ネフローゼ症候群 《低値》 肝障害(慢性肝炎、肝硬変、 肝癌など) 、栄養失調 など 《高値》 劇症肝炎、肝硬変、 肝性昏睡 など 肝臓で作られ血中に放出される酵素です。肝機能が低下すると肝 臓での合成能が低下するため低値を示します。肝疾患の重症度の 指標にもなります。 有機リン系農薬の中毒では顕著に低値となります。 アンモニアは身体にとって有害なため、肝臓で毒性の弱い尿素と なり腎から排泄されます。劇症肝炎や肝硬変など高度の肝障害で は解毒されず血中濃度が上昇します。 便秘や運動、食事(たんぱく質)摂取により上昇します。 ※検査値は検査方法や測定条件等により異なる場合もあります。あくまで参考値としてご利用ください。 肝機能が低下してい るときに強い運動を 行なうと、かえって肝 臓の状態が悪化する ことがあります。適度 な運動は患者さんの AST や ALT の値によっ て異なります。 高 AST ALT 低 200~ 安静 100~200 軽い運動 50~100 ~100 (ウォーキング・体操) 疲れない運動 制限なし たんぱく質は分解される過程で副産物として「アンモニ ア」ができます。このアンモニアを解毒するのが肝臓。 そのためたんぱく質をとりすぎると肝臓の負担が増え てしまいます。また、塩分や脂質の摂りすぎにも注意し ましょう。 大量の飲酒や肝炎ウイルスが肝臓病につながることは よく知られています。しかし近年、お酒をほとんど飲ま ないにもかかわらず、脂肪肝から肝炎になる人が増えて きています。これを『非アルコール性脂肪肝炎(NASH/ ナッシュ)』といいます。肝炎から肝硬変、肝がんへ進 行するケースもあるため、あなどれない病気です。 脂肪肝を早期発見し、食事や運動などの生活習慣を改善 することが NASH の予防にもつながります。 《NASHと関連する主な因子》 メタボリックシンドローム(肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧) 急激なダイエット 薬剤(タモキシフェン、ステロイド、アミオダロンなど) 項目 基準値および基準範囲 総ビリルビン(TB、T-Bil) 0.2~1.2 mg/dL 直接ビリルビン 0.4 mg/dL 以下 アルブミン(Alb) 3.9~4.9 g/dL インドシアニングリーン試験 (ICG-test) 15 分停滞率(R15):10%以下 消失率(k):0.168~0.206 最大除去率(Rmax) :1.56~4.80mg/kg/min 疑われる疾患 等 知っ得!簡単解説 《高値》 肝炎、肝硬変、肝癌、 胆道疾患、黄疸 など ビリルビンのほとんどがヘモグロビンの分解産物で、胆汁として 肝臓から胆管を通り十二指腸へ排泄されます。ビリルビン生成か ら排泄の過程に異常があると、血中ビリルビンが高値となり、黄 疸になります。 《低値》 ネフローゼ症候群、肝疾患、 栄養失調 など 血液中に含まれるたんぱく質のうち最も量の多い成分です。肝臓 で合成されるため、肝機能が低下すると低値となります。また、 アルブミンは食事で摂取するたんぱく質を利用して合成されるの で、低栄養が持続しても低値となります。 《高値》 慢性肝炎、肝硬変、 体質性黄疸 など インドシアニングリーン(ICG)は緑色の色素で、これを注射する と肝臓に取り込まれ、そのまま胆汁中に排泄されます。ICG の血 液中の停滞率は肝臓の機能を反映しています。 ※検査値は検査方法や測定条件等により異なる場合もあります。あくまで参考値としてご利用ください。 ★血小板数と肝硬変の関係★ 肝細胞が線維化してくると、肝硬変や肝がんへ移行する確率が高いた め、線維化の程度を知ることは非常に重要です。 線維化の程度を知る検査(肝線維化マーカー)のひとつとして、「血小 板数」があり、慢性肝炎や肝硬変の進展度を知る際に利用されます。 線維化が進むと、 ①門脈を通る血液が脾臓(血液を分解する場所)に逆流し、脾臓が肥 大して血小板の破壊が増加する。 ②肝臓内の血小板産生を促進するホルモンが減少する などの理由で、血小板数が減少します。 繊維化の 程度 軽度 血小板数 約18万 重度 肝 硬 変 約13万 約10 万 以 下 中度 約15万 【コラム】 「沈黙の臓器」肝臓に休息を! 数ある臓器の中でもっとも温度が高いのは肝臓です。その温度は通常 41℃以上で、他の臓器より 5℃程 度高い温度を維持しています。肝臓は、消化吸収された栄養をエネルギーに替える「代謝」や、体内に取 ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスの感染が原因で肝臓に 炎症が起こる病気です。肝炎ウイルスは、これまでに、A 型、B 型、C 型、D 型、E 型の少なくとも 5 種類が見つかっ ています。特に注意が必要なのは、B 型肝炎ウイルスが感 染して起こる「B 型肝炎」と、C 型肝炎ウイルスによって 起こる「C 型肝炎」です。この 2 つは肝硬変の大きな原因 で、両者をあわせると肝硬変の 80%近くを占めます。 ●出産時に母から子へ感染する「母子感染」か、乳幼児 期に父母などから子に感染する「乳幼児期の感染」が ほとんど。 ●感染から慢性肝炎・肝硬変を発症する人は 10~20% ●残りの 80~90%の人は症状のないまま一生を過ごす。 ●症状がなくてもB型肝炎は突然肝がんを発症するこ とがある。 ●60 歳以上に感染率が高い傾向が見られる。 ●輸血や血液製剤からの感染がほとんど。 ●性交渉や体液で感染することはほとんどない。 ●感染後、10~20 年かけて肝硬変・肝がんへ進行する。 項目 基準値 解 説 HBs 抗原 陰性(-) HBs 抗原が陽性の場合、現在 B 型肝炎ウ イルスに感染していることを意味します。 HCV 抗体 陰性(-) HCV 抗体が陽性の場合、C 型肝炎ウイル スへの感染(既往も含む)を意味します。 り込まれた有害物質の「分解」など、人体にとって欠かすことのできない作業を司る臓器。その他、細か い作業を含めると、実に 500 以上もの仕事をしているため、その過程で発生する熱も多いのです。 「血の巡 り」も活発で、体全体の血液量の 10~15%も臓器内に含んでいます。 肝臓は大量の仕事をこなす優秀な臓器で、多少のことでは音を上げません。多少肝機能が弱ったとして も顕著な症状として現れないことから「沈黙の臓器」と呼ばれているほどです。 【参考資料】 今日の臨床検査 2011-2012 ㈱南江堂 2011 薬の影響を考える臨床検査値ハンドブック ㈱じほう 2012 きょうの健康 2013 年 2 月号 NHK 出版 脂肪肝といわれたら 田辺三菱製薬㈱ 気がつかないうちに肝がんに!? 広島大学肝炎・肝癌対策プロジェクト研究センター など 株式会社エバルス 薬事情報室 2013 年 7 月作成