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kabuマシーン チャート活用術 [第6回]

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kabuマシーン チャート活用術 [第6回]
2006 年 11 月 6 日(月)執筆者:小沢文雄
第6回「行動心理とテクニカル分析の活用法」(最終回)
こんにちは。「チャート活用術」シリーズは今回が最終回となりました。今まで、チャート分析の基
本である「移動平均線の活用法」(第1回)、移動平均線の遅れを補う「MACDの活用法」(第2回)、売
買シグナルを3段階で発する「一目均衡表の活用法」(第3回)、売買シグナルを数値であらわす「オシ
レーター系チャートの活用法」(第4回)、「売買高系分析の活用法」(第5回)を説明してきました。
最終回は、損を最小にして利益を最大にする「行動心理とテクニカル分析の活用法」として前回まで
の説明をまとめます。
(1)行動心理について
株式投資家はなぜ株式を売ったり買ったりするのでしょうか。何を今さらと思われるかもしれません
が、このことをしっかりと理解しているかによって投資の結果は異なってきます。「株価が安いと思う
から買い、高いと思うから売る」はその答えではありません。株価の変動要因は数多くあるのです。そ
れをまとめると図表-1 のようになります。まず市場に影響を与える政治的・経済的・社会的要因を知
る必要があります。次に規制、需給、信用取引・デリバティブ取引動向などの市場要因を把握しておく
ことも重要です。その上で、銘柄要因(業績、将来性、経営権、他の銘柄・過去との比較など)を確認
して、株式を買うか否かを決めるのです。
経済学の父と呼ばれているケインズ(John Maynard Keynes・英国・1883-1946 年)氏は、株式市
場では美人投票と同じように株価は変動するとの「美人投票論」を唱えました。ケインズ氏は株式投資
の名人とも呼ばれ、「株式投資で成功するには、自分が美人と思う人ではなく、他人がそう思うであろ
う人に投票せよ」と言っています。株式投資が一種の投票であるのは事実であり、多くの投票を集めた
(買い)銘柄の株価は上がるのです。
クォンタム・ファンドで一世を風靡したヘッジファンドの帝王ジョージ・ソロス(George Soros・米
国・1930 年生まれ)氏は、1990 年代の証券・外国為替市場を動かしたビッグプレーヤーです。投資家
心理の動きを重視することで富を築きました。株価を動かすのは市場参加者自身であるところに着目し、
「投資家が市場に参加して買わなければ株価は動かない、少数の投資家が買い始めると株価は次第に上
がり始め、それを見た他の投資家も買うと、さらに株価は上がっていく。それを見た他の投資家が新た
に買うと株価はもっと上がるという正の循環になる」と言っています。
「株価が天井を付けたところ(過
熱)、底を打ったところ(悲観)で傾きは最大になり、投資家の心理が買うほうに傾きすぎたら売り、
売るほうに傾きすぎたら買い」がソロス氏の投資原理であると言われています。
全米一のファンドマネージャーと称されたピーター・リンチ(Peter Lynch・米国・1944 年生まれ)
氏は、1977~1990 年の 13 年間、投信会社のフィデリティ・インベストメンツでマゼランファンドを運
用して総資産規模を 700 倍にした人です。彼は、「市場は投資家の心理で動く、市場に参加している投
資家の心理を無視すると大損する目にあう、市場心理のメカニズムは複雑である」と言っています。
市場での心理の表れを可能な限り集め、分析することで、投資収益率がアップする確率は高まります。
行動心理(市場で投資家がどのような心理状態で行動しているか)は大変重要な情報なのです。
1
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図表-1 株価変動の要因
定量・定性的要因
市場外的要因
市場内的要因
政治的要因
市場要因
◎政局
◎規制
・・・緩和・強化
◎国内政策・・・公定歩合、公共投資、国債発行等
◎需給動向
・・・マネーフローの増減
◎証券政策・・・規則改正、株価対策等
◎税制
・・・直接税・間接税の税率変動等
◎投資家動向
・・・外人・年金・投信・生損保等の動向
・・・政権、国内政策、外交政策、選挙結果等
◎信用取引動向・・・取組の増減
◎デリバティブ取引動向・・・先物・オプションの変動等
経済的要因
銘柄要因
◎国内経済・・・景気動向、物価、国際収支、
外国為替動向、債券・金利動向等
◎業績
・・・売上、利益、配当、新商品等
◎海外経済・・・景気動向、物価、国際収支、
株式動向、債券・金利動向、商品市況等
◎資本異動
・・・増資、減資
◎将来性
・・・経営者資質、新技術、競争力等
社会的要因
◎経営権変化・・・株主異動、M&A 等
◎戦争、革命
◎大流行
◎社会的大事件
◎歴史的発明
◎株式流動性・・・安定株主増減、信用取組、仕手戦等
◎大災害
◎大発見 等
◎比較
・・・指数比較、他銘柄比較、過去比較等
センチメント(心理的)要因
市場内的要因
市場外的要因
明るさの要因
◎安定
◎強気
楽観要因
◎活気
等
◎沈滞
等
◎熱気
暗さの要因
◎不安定
◎弱気
◎活況
◎好評
等
◎悪評
等
警戒要因
◎過熱
◎閑散
(2)株価の暴落に対する備え
行動心理で最も重要な局面は株価が暴落したときです。株価の暴落は、地震と同じようにある日突然
やってきます。しかし、地震と比較すれば予知することはある程度可能です。それは、地震に比べて発
生頻度が高く、前兆があるからです。チャートの売買シグナルを見てセンチメント要因を分析している
とその前兆が見えてきます。暗さの要因、警戒要因が複数出没し、マーケット全体がまだまだ大丈夫と
思い始めたら、それは暴落の前兆なのです。
図表-2 をご覧下さい。1949 年 5 月に戦後の株式市場が再開された後の日経平均の歴代下落率上位
20 です。暴落の1ヵ月後、3ヵ月後の終値を調べてみました。1ヵ月後に上昇した回数は 11 回、3ヵ
月後は 16 回ありました。3ヵ月経過後は暴落時の終値を 80%の確率で上回っていることになります。
ただ、政治・経済的に長期間景気の低迷が続いたスターリンショック、ニクソンショック、ITバブル
崩壊、阪神淡路大震災では上昇していません。
暴落する前に株を手放すのが理想です。暴落時に株を保有していた場合には、決してあわてずに、そ
の暴落が一時的なものか、継続するものかを見極めて売買することが肝要なのです。
2
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図表-2 日経平均 歴代下落率上位 20
(1949 年 5 月~2006 年 10 月)
順位
暴落時の終値
1 ヵ月後の終値
3 ヵ月後の終値
備考
年月日
日経平均
下落率
日経平均
騰落率
日経平均
騰落率
1
87/10/20
21,910.08
-14.90%
22705.56
+3.63%
22843.14
+4.26%
ブラックマンデー
2
53/03/05
340.41
-10.00%
317.60
-6.70%
324.15
-4.78%
スターリン(死去)ショック
3
70/04/30
2,114.32
-8.69%
2072.46
-1.98%
2140.50
+1.24%
IOS ショック
4
71/08/16
2,530.48
-7.68%
2347.35
-7.24%
2326.54
-8.06%
ニクソンショック(ドル防衛)
5
00/04/17
19,008.64
-6.98%
17404.03
-8.44%
17286.83
-9.06%
IT バブル崩壊
6
49/12/14
98.50
-6.97%
96.89
-1.63%
102.21
+3.77%
7
53/03/30
318.96
-6.73%
339.37
+6.40%
346.27
+8.56%
8
01/09/12
9,610.10
-6.63%
10632.35
+10.64%
10801.52
+12.40%
9
72/06/24
3,421.02
-6.61%
3815.31
+11.53%
4254.61
+24.37%
10
90/04/02
28,002.07
-6.60%
30173.64
+7.76%
32160.23
+14.85%
11
91/08/19
21,456.78
-5.95%
23332.31
+8.74%
23326.86
+8.72%
12
71/08/19
2,190.16
-5.93%
2377.05
+8.53%
2378.79
+8.61%
13
90/08/23
23,737.63
-5.84%
23359.32
-1.59%
23762.86
+0.11%
14
98/10/08
13,026.06
-5.78%
14194.54
+8.97%
13391.81
+2.81%
15
95/01/23
17,785.49
-5.60%
17830.02
+0.25%
16804.05
-5.52%
16
74/10/09
3,355.13
-5.41%
3662.42
+9.16%
3652.53
+8.86%
17
97/11/19
15,842.46
-5.29%
15314.89
-3.33%
16616.48
+4.89%
18
97/12/19
15,314.89
-5.24%
16262.04
+6.18%
16679.02
+8.91%
19
97/11/25
15,867.53
-5.11%
15300.10
-3.58%
16360.64
+3.11%
20
98/09/11
13,916.98
-5.11%
13555.01
-2.60%
14405.64
+3.51%
-6.85%
11 騰 9 落
+2.24%
16 騰 4 落
+4.58%
平
<注>
均
アメリカ同時多発テロ
ボンドショック
ゴルバチョフ失脚
1.17 阪神淡路大震災
11.17 拓銀破綻
11.24 山一證券廃業
1 ヵ月後、3ヵ月後が休日の場合はその後の直近終値を採用。下落率、騰落率は、小数点第 3 位を四捨五入。
網掛けは、3ヵ月後の終値ベースの騰落率がマイナスのケース。
(3)テクニカル分析の活用法のまとめ
前回まで説明した、移動平均線(第1回)、MACD(第2回)、一目均衡表(第3回)、オシレーター系
(RSI、ストキャスティクス、サイコロジカルライン)(第4回)、売買高系(ボリュームレシオ)(第5回)
について、トレンドが有効に作用するタイミングをまとめてみました。図表-3 をご覧ください。
各チャート分析のポイントを申し上げますと、移動平均線は売買シグナルにやや遅れるという欠点が
ありますが一方向の上昇・下降トレンドに強く、MACDには売買シグナルの遅れはありませんが、ダ
マシがでるという弱点があります。一目均衡表はトレンドの変化を的確に示唆する分析手法といえます。
また、RSI、ストキャスティクスは短期間で上がったり下がったりするもみ合い(横ばい)場面に強
く、サイコロジカルライン、ボリュームレシオはトレンドの変化点を教えてくれます。
トレンドが上昇しているのか下降しているのか状況を見極めて、チャートを使い分けることができた
ら、損を最小にして利益を最大にすることが出来るのです。
何ごとも、
「迅速果断」(じんそくかだん、ものごとを速やかに大胆に決断しておこなうこと)、万が一
「進退両難」(しんたいりょうなん、進むことも退くことも難しい状態のこと)となった場合は、潔く撤
退することが肝要ではないでしょうか。
3
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図表-3
項
番
1
2
3
分類
トレ
ンド
分析
体系
化さ
れた
理論
4
5
名
移動平均
線
MACD
一目均衡
表
RSI
オシ
レー
ター
系
6
7
「kabu マシーン チャート活用術」シリーズで説明したチャートの有効性
トレンドの変化
横ばい
上昇
天井圏
下降
底値圏
チャート
売買
高系
分析
ストキャ
スティク
ス
サイコロ
ジカルラ
イン
ボリュー
ムレシオ
備考
株価に追随
(×)
-
(×)
株価に追随
(○)
マイナス圏
(○)
株価に追随
(△)
プラス圏
(○)
株価に追随
(○)
プラス圏
(○)
株価に追随
(△)
マイナス圏
(○)
(△)
(○)
(○)
(○)
(○)
売買シグナルは
3段階
50%前後
(○)
30~70%
(○)
70~100%
(×)
70~30%
(○)
30~0%
(×)
天井・底値圏
でダマシあり
50%前後
(○)
30~70%
(○)
70~100%
(×)
70~30%
(○)
30~0%
(×)
天井・底値圏
でダマシあり
-
(×)
-
(×)
75%
(○)
-
(×)
25%
(○)
-
(×)
30~70%
先行上昇
(○)
70~100%
先行下降
(○)
70~30%
先行下降
(○)
30~0%
先行上昇
(○)
売買シグナルが
遅れる
売買シグナルで
ダマシあり
<注> ○:有効に作用 △:ある程度有効に作用 ×:有効に作用せず
表中の%の数字は、各々のチャートにおける売買シグナルの値であり、有効性を表す値ではない。
4
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それでは、第6回(最終回)についてまとめます。
まとめ:第6回「行動心理とテクニカル分析の活用法」で学んだこと
◎行動心理について
①株価の変動要因は数多くある。
・定量・定性的要因
・市場外的要因(政治的要因、経済的要因、社会的要因)
・市場内的要因(市場要因、銘柄要因)
・センチメント(心理的)要因
・市場外的要因(明るさの要因、暗さの要因)
・市場内的要因(楽観要因、警戒要因)
②株式投資で成功するには、自分が美人と思う人ではなく、他人がそう思うであろう人に投
票せよ。(経済学の父と呼ばれているケインズ氏)
③株価を動かすのは市場参加者自身である。投資家が市場に参加して買わなければ株価は動
かない、少数の投資家が買い始めると株価は次第に上がり始め、それを見た他の投資家も
買うと、さらに株価は上がっていく。それを見た他の投資家が新たに買うと株価はもっと
上がるという正の循環になる。(ヘッジファンドの帝王ジョージ・ソロス氏)
④市場は投資家の心理で動く、市場に参加している投資家の心理を無視すると大損する目に
あう、市場心理のメカニズムは複雑である。
(全米一のファンドマネージャーと称されたピ
ーター・リンチ氏)
⑤市場での心理の表れを可能な限り集め、分析することで投資収益率がアップする確率は高
まる。
◎株価の暴落に対する備え
①株価の暴落はある日突然やってくるが、予知することはある程度可能。地震に比べて発生
頻度が高くその前兆がある。チャートの売買シグナルを見てセンチメント要因を分析する
とその前兆が見える。暗さの要因、警戒要因が複数出没し、マーケット全体がまだまだ大
丈夫と思い始めたら、それは暴落の前兆。
②暴落する前に株を手放すのが理想。暴落時に株を保有していた場合は、決してあわてず、
その暴落が一時的なものか、継続するものかを見極めて売買することが肝要。
◎テクニカル分析の活用法のまとめ
①トレンドが上昇しているのか下降しているのか状況を見極めて、チャートを使い分けるこ
とで損を最小、利益を最大にすることが出来る。
②「迅速果断」(じんそくかだん、ものごとを速やかに大胆に決断しておこなうこと)、万が
一「進退両難」(しんたいりょうなん、進むことも退くことも難しい状態のこと)となった
場合は潔く撤退する。
6ヵ月間にわたり、本シリーズをお読み戴き、誠にありがとうございました。
(完)
5
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