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第2回「MACDの活用法」

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第2回「MACDの活用法」
2006 年 7 月 3 日(月)執筆者:小沢文雄
第2回「MACDの活用法」
こんにちは。前回の第1回では「移動平均線の活用法」について説明しました。その冒頭の「転換点
の確認」では、「安値の転換点を確認して買いを入れ、高値の転換点を確認して売る」が基本と記述し
ました。最安値で買い、最高値で売ろうとする考えは止め、チャートからトレンドを掴み、自然体で
売買をすれば、利益は結果として付いてくるものです。移動平均の算出方法は、一定期間の価格データ
の和を対象期間(日数)で除するという等価平均でした。
さて、株式投資で成功するには、2つの基本的な意思決定が必要です。①何を売買するか(銘柄の
選定)、②いつ売買するか(タイミング)です。そして、大事なのはいくら利益をあげるかではなく、
損失をいかに最小限におさえるかなのです。例えば、100 万円の資産が 75 万円に下がったら資産価値は
25%失ったことになります。これを元に戻すには 33%の利益を上げる必要があります。同様に 50%の
損失なら元に戻すには 100%の利益を得る必要があるのです。さらに、75%の損失なら 300%の利益を
上げないと損を取り戻せません。「利益は大きく、損失は小さく」が株式投資を成功させる秘訣なので
す。
それでは、第2回「MACD(「マックディー」と読みます)の活用法」について説明します。
(1)MACDとの出会い
(1)MACDとの出会い
MACDの存在を知ったのは 1990 年 3 月のことでした。ニューヨークの日系大手証券会社ディーリ
ングルームでのディーラーからの一言でした。「よくあたるチャートがある、移動平均線よりはやく売
買信号が出る、見て欲しい」と言われ、ビデオ端末機の画面を見ました。それがMACDでした。信頼
性が高いチャートだということで興味を持ち、日本に戻ってからMACDについて、特徴、計算式など
を調べ、検証しました。
MACDについて私が初めて講演したのは、2002 年 10 月 31 日の日本テクニカルアナリスト協会主催
の名古屋でのセミナー「株式テクニカル分析
MACDでの検証の一例」でした。参加者からは、
初めて見たけれどわかりやすいチャートだ、検証結果を見ると信頼性が高そうだなどのコメントがあり、
相当驚いていたことを覚えています。その後、東京、大阪でMACDの講演を数多く行なってきました。
MACDは、1960 年代にジェラルド・アペル(Gerald Appel)氏によって開発されました。1973 年
にシグナラート・コーポレーションを設立、現在 5 億ドル以上の顧客資産を運用、定期レポート「シス
テム・アンド・フォーキャスト」を発行しています。また、アペル・アセットマネージメントの社長で
もあります。2005 年 3 月に「Technical Analysis : Power Tools for Active Investors」を執筆、
発行、本年 5 月に日本語訳(「アペル流テクニカル売買のコツ」)がパンローリング社から出版されて
います。
彼は「ジェリー」と呼ばれています。来年(2007 年)結婚 50 年目を迎えるとのことです。
1
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(2)MACD
(2)MACDとは
MACDとは
「移動平均収束拡散法」と
MACDは、Moving Average Convergence and Divergence の略であり、
呼ばれています。MACDは、期間の異なる 2 本の指数平滑移動平均線の価格差(ギャップ)の伸縮を
見て、トレンドの方向性と変化を見ようというものです。指数平滑移動平均は、直近の価格に重みを
つける分析手法であるため、MACDは移動平均線より早めに転換点を示唆します。
指数平滑移動平均線のx日(例えば 5 日)とy日(例えば 20 日)の差がMACDです。MACDの
z日(例えば 9 日)の指数平滑移動平均線をシグナルラインと呼びます。このMACDラインとシグナ
ルラインという 2 本の線の水準(プラスであれば高値圏、マイナスであれば安値圏)と、その交差を
見て株価の転換点を予測します。さらに、MACDオシレータ(OSCI)で収束と拡散を見るのも重要
なポイントになります。
算出方法:①まず、指数平滑移動平均を計算。
→
EMA(n,t)=Y+α(Xt-Y)
※Xt:直近終値 Y:直前のEMA α:平滑化定数 0≦α≦1
α=2/(n+1)
n:平滑化する期間(日数)
EMA(n,t)の短期をEMA1、長期をEMA2とする。
②次に、MACDを計算。 → MACD=EMA1-EMA2
③続いて、シグナルを計算。 → SL=MACDのz日(通常 9 日)指数平滑移動平均
④最後に、MACDオシレータ(OSCI)を計算。 → OSCI = MACD - SL
(3)採用期間の考え方
(3)採用期間の考え方
MACDで使用する指数平滑移動平均の期間について、ジェリーは明確なルールはないと言ってい
ます。一般的なルールとして短期指数平滑移動平均線(EMA1)の 2 倍から 4 倍を長期指数平滑移動
平均線(EMA2)にします。EMA1を短くすればするほど、MACDは短期の価格変動に対してより
敏感になります。米国ではEMA1=12 日(週)とEMA2=26 日(週)が広く活用されています。
相場のトレンドがかなり強気のときは買いを素早く、売りを遅くするようです。買いシグナルはEMA
1=6 日とEMA2=19 日で見て、売りシグナルは同様に 19 日と 39 日で見ています。シグナルライン
はいずれも 9 日(週)です。トレンドがかなり弱気のときは、もみ合い場面と同様に 12 日と 26 日で
見ます。
しかし、これは絶対ではありません。私は日本の株式市場では流動性の高い銘柄については、早めに
売買シグナルがでるEMA1=5 日とEMA2=20 日(EMA2はEMA1の 4 倍)がよいと思って
います。また、シグナルラインは 9 日でよいと思います。
(4)MACDの見方
(4)MACDの見方
株価がトレンドを形成しながら上昇(下降)する時、それに追随してまず短期のEMA1が動き、
遅れて長期のEMA2が動きます。このとき、両者の期間の違いにより価格差(ギャップ)が拡大しま
す。この価格差がMACDとなります。上昇トレンドが始まれば、MACDの値はゼロ付近から急速に
上昇し、プラスの圏内で推移します(下降トレンドの場合はその逆となります)
。また、トレンドの
転換点では、短期の指数のEMA1が横這いになりやがて反転しますが、長期のEMA2は依然として
それまでのトレンドを維持するため、急速にギャップが縮小し、やがてゼロに近づきます。MACDの
ピーク(ボトム)アウトによってトレンド反転の売買シグナルが出ます。さらに、プラス、マイナスの
符号の変化によってトレンドの反転が確認できます。
2
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売買シグナルは、①MACDラインの方向性の変化、ゼロラインとの交差、②シグナルラインの方向
性の変化、③OSCIの数値、④MACDラインとシグナルラインという 2 本の線の水準(プラスで
あれば高値圏、マイナスであれば安値圏)と 2 線の交差(いわゆるゴールデンクロス、デッドクロス)
で見ます。
MACD分析に適する銘柄は、流動性が高く(日々の出来高が継続して売買単位の 100 倍以上ある)、
価格変動率が高い(大体、年間の高値が安値の 1.5 倍くらいある)銘柄であり、転換点確認の確率を
高めるには、株価の大きな波を捉える、すなわち急騰・急落の後、底値圏・天井圏のもみ合い後を捉え
るとよいでしょう。
MACDの売買シグナルをまとめると図表 1 になります。
項番
対象
1
MACD
ライン
2
シグナル
ライン
3
OSCI
4
MACD
ラインと
シグナル
ライン
図表 1 MACDの売買シグナル
買いシグナル
売りシグナル
売りシグナル
・株価下降時、MACDラインが上昇を ・株価上昇時、MACDラインが下降を
始めたとき(株価が底となる)
始めたとき(株価が天井となる)
さらに、MACDラインがゼロライン
さらに、MACDラインがゼロライン
を上回れば本格上昇と見る
を下回れば本格下降と見る
・シグナルラインがマイナスエリアに ・シグナルラインがプラスエリアに
あり、底値圏で反転を確認したとき
あり、天井圏で反転を確認したとき
・OSCIがマイナスエリアで乖離が ・OSCIがプラスエリアで乖離が
拡大した後ゼロになったとき
拡大した後ゼロになったとき
・マイナスエリアで、シグナルラインを
MACDラインが下から上に突き抜
けたとき
・プラスエリアで、シグナルラインを
MACDラインが上から下に突き抜
けたとき
それでは、日経平均のMACDについて見てみましょう。対象期間は本年上半期(2006 年1月~6 月)、
選択日数はEMA1=5 日、EMA2=20 日、シグナルライン=9 日とします。
図表 1 の項番 4 の売買シグナルを図表 2 に、買いシグナルは
で、売りシグナルは
で示します。
ご覧になって如何でしょうか。MACDの売買シグナルは、かなりの確率で的確であることがおわか
りいただけるでしょう。
3
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図表 2 MACD 日経平均 2006 年 1 月~6
月~6 月
<上段>ローソク足:移動平均線=
<上段>ローソク足:移動平均線
= 5 日、25
日、25 日 <下段>MACD
<下段>MACD:
MACD:EMA1= 5 日、EMA2=
日、EMA2= 20 日、シグナルライン
日、シグナルライン=
ライン= 9 日
MACD ライン
プラスエリア
マイナスエリア
OSCI
シグナルライン
出所:kabu マシーン
次に、この期間の売買の検証をしてみましょう。検証条件は、①常に買いシグナルから開始、②シグ
ナルが出た翌日始値で売買、③6 月末日の終値で強制売買、④小数点以下は切り捨てとします。
結果を図表 3 に示します。結果は3勝3敗、累計損益は+2,191 円となりました。最初の検証買い値の
16,615 円と比較すると 13%の利益が出たことになります。都合 6 回の売買は、「利益は大きく損失は
小さく」という結果になっています。
図表 3 MACD 日経平均 2006 年 1 月~6
月~6 月の売買シグナル検証結果
検証買い
項
買い
番
シグナル日
(買いシグ
ナルの翌日
始値価格)
始値価格)
検証売り
売り
シグナル日
①
(売りシグ
ナルの翌日
始値価格)
始値価格)
検証損益
検証
勝(○
勝(○)
(②-①)
②-①)
累計損益
負(×
負(×)
備考
②
1
06/01/27
16,615
06/02/08
16,444
-171
2
06/02/24
16,156
06/04/12
17,232
+1,076
+905
○
3
06/03/09
16,007
06/04/12
17,232
+1,225
+2,130
○
4
06/05/29
15,920
強制売り
15,505
-415
+1,715
×
5
06/06/02
15,719
強制売り
15,505
-214
+1,501
×
6
06/06/16
14,815
強制売り
15,505
+690
+2,191
○
4
×
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それでは、第2回についてまとめます。
まとめ:第2回「MACDの活用法」で学んだこと
◎MACDとは
・MACDは、Moving Average Convergence and Divergence の略であり、移動平均収束拡散法
と呼ばれている。
・MACDは移動平均線より早めに転換点を示唆する。
◎採用期間
区分
米国
日本
MACDの指数平滑移動平均の採用期間
トレンドが
トレンドが
トレンドが
もみ合いのとき
強気のとき
弱気のとき
買いシグナルには
売り・買いシグナル
売り・買いシグナル
6 日・19 日
ともに
ともに
売りシグナルには
12 日・26 日
12 日・26 日
19 日・39 日
5 日・20 日(EMA2はEMA1の 4 倍)がよい、
早めに売買シグナルが出るメリットがある
◎MACDの見方
項番
対象
1
MACD
ライン
2
シグナル
ライン
3
OSCI
4
MACD
ラインと
シグナル
ライン
シグナルライン
9日
9日
買いシグナル
・株価下降時、MACDラインが上昇を
始めたとき(株価が底となる)
さらに、MACDラインがゼロライン
を上回れば本格上昇と見る
・シグナルラインがマイナスエリアに
あり、底値圏で反転を確認したとき
・OSCIがマイナスエリアで乖離が
拡大した後ゼロになったとき
売りシグナル
売りシグナル
・株価上昇時、MACDラインが下降を
始めたとき(株価が天井となる)
さらに、MACDラインがゼロライン
を下回れば本格下降と見る
・シグナルラインがプラスエリアに
あり、天井圏で反転を確認したとき
・OSCIがプラスエリアで乖離が
拡大した後ゼロになったとき
・マイナスエリアで、シグナルラインを
MACDラインが下から上に突き抜
けたとき
・プラスエリアで、シグナルラインを
MACDラインが上から下に突き抜
けたとき
・・・①何を売買するか(銘柄の選定)
②いつ売買するか(タイミング)
株式投資を成功させる秘訣・・・「利益は大きく、損失は小さく」
株式投資で成功するには
の的確な意思決定
<参考文献>
・
シグナラート・コーポレーション(Signalert Corporation) ホームページ:
http://www.technicalanalysisbygeraldappel.com/
・
「The Encyclopedia of Technical Market Indicators」 Robert W. Colby、 Thomas A. Meyers 著
1988 年 3 月 McGraw-Hill 社刊行
・
「Momentum Explained」 Martin J. Pring 著 2002 年 5 月 McGraw-Hill 社刊行
・
「アペル流テクニカル売買のコツ」 ジェラルド・アペル著 2006 年 5 月 パンローリング社刊行
以上
5
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