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新興国ものしりコラム

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新興国ものしりコラム
新興国ものしりコラム
2015 年 2 月 15 日
整備されるデリーの都市環境
2014 年 11 月に 7 泊 9 日でインド旅行に出かけましたが、6 年振りにデリーを訪れてインフラ整備
が急速に進展したことに驚きました。当時は、公共交通や幹線道路などのインフラが不足していたこ
とに加えて、至る所に野良牛が寝そべり、旧型三輪車タクシーやバス、バイクが道を占拠していたた
め、交通渋滞と大気汚染が慢性化していました。
このようなデリーの劣悪なインフラを改善する機運を高めることになった要因の一つは、2008 年か
ら 2010 年にかけて、国際的なスポーツ・文化ビッグイベントが新興国で相次いで開催されたことです。
中国では 2008 年北京オリンピックと 2010 年上海万博、南アフリカでは 2010 年サッカーワールドカ
ップ、そしてインドでは 2010 年 10 月に、第 19 回コモンウェルスゲームが首都デリーで開催されまし
た。コモンウェルスゲームは英連邦に属する 71 ヶ国・地域のオリンピックで、インドでの開催は初め
て、アジアでは 1998 年のマレーシア(クアラルンプール)に続き 2 回目です。インド政府が他の新興
国に負けないような立派な大会にしたいと意気込んだのも当然のことです。
国際的なイベントは新興国にとって、インフラの整備を中心に都市環境の近代化を図る良い機会
となると共に、海外から参加者や観光客が大挙して訪れることから、市民ボランティアへの参加やマ
ナーの向上などを通じ国民の意識を高めることに繋がっています。
インド政府も今回のイベントを通じ都市環境を整備し、夏季オリンピックなど次の国際的なイベント
の開催に繋げたいと意気込んだものと見られます。2016 年のオリンピックが BRICsの一ヶ国のブラ
ジルで開催されることになったことから、BRICs の中で唯一オリンピック開催国となっていないインド
にとって、オリンピック誘致は悲願と言えます。
そのような意気込みは、コモンウェルスゲームに向けて大規模なインフラ整備が図られたことに表
れています。2010 年 7 月にはデリー国際空港(正式名称はインディラガンジー国際空港)の新ターミ
ナルが完成しています。新ターミナルは施工費 30 億米ドル、面積は 164 万平方メートルと巨大なも
のです。更に、コモンウェルスゲームが始まる 10 月までには、突貫工事でデリー市内と空港を結ぶ
メトロ(地下鉄)を開通させました。中国政府が、2008 年北京オリンピックに向けて北京国際空港に
巨大な第 3 ターミナルビルを完成させ、市内を 16 分で結ぶエアポートエクスプレスを開通させたこと
を想起させます。
メトロのネットワークについては、2010 年までに 6 ヶ所のコモンウェルスゲームの主要競技会場と
選手村やデリー中心部を結ぶためメトロを次々と開通させ、2014 年現在、デリーには 6 本のメトロが
通じ、デリー中心部の地下鉄整備は一部の新駅の建設を除いて一段落しています。今後は、内環
状線、外環状線の整備と郊外への延伸が計画されています。なお、6 年前に工事中だったデリー郊
外の衛星都市ハリヤナ州グルガオンとデリー中心部を結ぶメトロは既に開通していました。
ハイウェイについては、既存のハイウェイの立体交差増設や内環状線の整備はなされてきていま
す。しかし、デリーには 5 本の国道が集中し、デリーを抜けるための迂回路がないことが渋滞の原因
になっており、これを解消するため、外環状線の計画が予てよりありますが、土地収用や建設コスト
負担を巡って難航していました。これも、漸く、6 車線の高速国道として整備されることが決定し(西側
はハリヤナ州が担当、東側は国道庁が担当)、見通しが立ってきました。なお、北京では 20 年で 6
環状線を整備したことに比べるとインドでの進捗度の遅さが目立ちます。
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かつては、デリーの中心部に行くと路上生活者に付きまとわれて往生しましたが、コモンウェルス
ゲームを契機にこれらの住人を強制的に排除するなどした結果、少なくとも市中心部では路上生活
者を見かけることが少なくなり、環境美化も進んでいます。デリー中心部では野良牛の姿も見られな
くなりました。モディ首相が打ち出した「クリーン・インディア・イニシアティブ」もあって、道路のゴミの
散乱は随分少なくなった様に思います。
しかし、インフラがいくら整い、景観が良くなっても都市貧困層の問題が改善されなくては本来の
社会の進歩はありません。インドも国際的イベントを主催することによりインフラの整備や都市環境
の美化を図ると共に、社会の底辺に住む住民に対する抜本的な対策を進め、真の近代化を成し遂
げてもらいたいものです。
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HSBC 投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 308 号
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