Comments
Description
Transcript
博士学位論文 - 広島県大学共同リポジトリ
博士学位論文 情動がコミュニケーション力に及ぼす影響 - CEFR と 外 国 語 学 習 者 の 情 動 に つ い て の 国際比較- 2012 年 7 月 広島女学院大学大学院 言語文化研究科 英米言語文化(英語教育) 特別研究生 荒木史子 謝辞 第2の人生として心に決めた目標を抱き、およそ半世紀ぶりに母校へ 戻って来た。季節の移ろいに合わせ、咲き乱れる野草に彩られたキャンパ ス・ロードを辿るにつけ、自身の若かりし日々とロバート・フロストの描 い た T h e R o a d N o t Ta k e n の 光 景 を 重 ね 合 わ せ 、 歩 ん で き た 5 年 半 を 振 り 返る。 まず、本学大学院言語文化研究科、林桂子教授に衷心より感謝申し上 げる。林教授の幅広い経験と知見へ親しく接することができたお蔭で、教 育分野では経験も知識も皆無に近い筆者でありながら、無謀とも思える本 研究への取り組みに踏み切ることができた。その上、研究計画から最後の 修正にいたるまで、林教授には懇切丁寧なご指導を頂いた。林教授の献身 的なご指導がなければ、本博士論文は完成を見なかったであろう。林教授 に出会えた幸に感謝する。 次に、本博士論文の要である調査にご協力頂いたトーストマスターズ の 仲 間 、 広 島 YMCA 日 本 語 専 門 学 校 、 広 島 修 道 大 学 他 に 在 学 中 の 留 学 生 、 広島女学院大学言語文化英米言語科学生他、広島広陵高等学校、広島市立 早稲田中学校、広島市立早稲田小学校の生徒・児童の方々に心より感謝す る。これら調査実施にあたり、趣旨をご理解頂き、ご協力頂いた諸先生方 へ深く感謝の意を表する。留学生に対する調査にあたり、様々なご助言と 情 報 を 頂 い た 広 島 YMCA 日 本 語 専 門 学 校 の 末 田 朝 子 先 生 へ 心 よ り 感 謝 申 し 上げる。 最後に、本博士論文へ取り組んできたさなか、何度となく挫けそうに なった筆者を叱り励ましてくれた友人や知人に心より感謝する。 2012年7月 荒木史子 追 記 : 現 慶 応 義 塾 大 学 及 び 明 海 大 学 名 誉 教 授 、大 学 英 語 教 育 学 会 (JACET)前 会 長・現 特 別 顧 問 * の 小 池 生 夫 先 生 に よ る 本 博 士 論 文 の 外 部 審 査 を 受 け る と いう大変貴重な機会に恵まれ、今後の研究に向け極めて有益な指針となる ご指導・ご助言を賜わることができた。心より感謝の意を表したい。 *注 2012 年 9 月 1 日 付 で 名 誉 会 長 i 目次 第1章 序 論 …………………………………………………………………………1 1.1 研 究 の 目 的 と 意 義 ……………………………………………………….5 1.2 日 本 人 学 習 者 の 現 状 …………………………………………………….6 1.3 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 不 得 手 な 背 景 ……………………………….9 1.4 こ れ ま で の 研 究 …………………………………………………………11 1.5 調 査 方 法 ………………………………………………………………….12 1.5.1 国 際 比 較 調 査 ……………………………………………………………16 1.6 第2章 調 査 結 果 ………………………………………………………………….18 理 論 的 背 景 ………………………….……………………………………23 2.1 情 動 と は 何 か ………………………….………………………………..23 2.2 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は 何 か ………………………….……………27 2.3 情 動 に 関 す る 先 行 研 究 ……………….……………………………….31 2.3.1 第 二 言 語 習 得 と 情 動 と の 関 係 ……………….………………………32 2.3.2 社 会 心 理 学 的 観 点 か ら 捉 え た 情 動 …………………………………34 2.3.3 認 知 的 観 点 か ら 捉 え た 情 動 と 第 二 言 語 習 得 と の 関 係 …………41 2.3.4 個 人 差 の 観 点 か ら 情 動 と 第 二 言 語 習 得 と の 関 係 ……………….43 2.4 8 つ の 情 動 要 素 の 特 徴 と 定 義 ………………………….……………46 2.5 CEFR と は 何 か ………………………….………………………………55 2.6 ま と め ………………………….………………………………………….61 第3章 3.1 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 関 す る 事 例 研 究 ……………….63 グ ロ ー バ ル 社 会 で 必 要 と さ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 ………63 ・ 事 例 1 ……………………….………………………………………..66 ・ 事 例 2 ……………………….………………………………………..68 3.2 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と 情 動 と の 関 係 …………………………..70 3.3 情 動 、 態 度 、 動 機 づ け の 関 係 ……………………………………….72 ・ 事 例 ……………………….……………………………………………72 3.4 外 国 語 学 習 に お け る 情 動 と 年 齢 の 視 点 か ら ……………………..77 3.5 小 学 校 英 語 教 育 に お け る 情 動 と 年 齢 の 視 点 か ら ……………….81 3.6 ま と め ………………………….………………………………………….85 ii 第4章 情 動 と 外 国 語 学 習 の 関 連 性 に つ い て の 調 査 ……………………..86 4.1 本 調 査 の 目 的 ………………….…………………………………………86 4.2 情 動 と 外 国 語 学 習 の 関 連 性 に つ い て の 国 際 比 較 調 査 ………….87 4.3 調 査 方 法 ……………………….…………………………………………89 4.4 調 査 対 象 者 ………………..….………………………………………….91 4.5 調 査 手 順 ……………………….…………………………………………97 4.6 分 析 方 法 ……………………….………………………………………..101 4.7 ま と め ………………………….………………………………………..103 第5章 調 査 結 果 …………………………………………………………………107 5.1 調 査 の 概 要 …………………….……………………………………….107 5.2 調 査 結 果 …………………………………………………………………110 5.2.1 学 習 者 が 抱 く 心 理 状 態 の 量 的 な 考 察 : 情 動 要 素 レ ベ ル の 平 均 値 ( Mean) と 標 準 偏 差 ( SD) ……..110 5.2.2 学 習 者 が 有 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 量 的 な 考 察 : C E F R 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 ( M e a n ) と 標 準 偏 差 ( S D ) … … . 11 2 5.2.3 心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 に つ い て の 統 計 的 考 察 : 情 動 要 素 と CEFR 技 能 の 関 連 性 ……………………115 5.3 調 査 結 果 に 対 す る 考 察 ……….………………………………………155 5.3.1 仮 説 1 の 検 証 …………………………………………………………..161 5.3.2 仮 説 2 の 検 証 …………………………………………………………..163 5.3.3 仮 説 3 の 検 証 …………………………………………………………..168 5.3.4 調 査 結 果 が 示 唆 す る 日 本 の 英 語 教 育 の 在 り 方 …………………171 5.4 調 査 結 果 の 補 足 ………………………………………………………..173 5.4.1 CEFR と TOEIC 及 び C-Test と の 相 関 性 …………………………..173 5.4.2 目 標 言 語 や 学 習 環 境 に よ る 影 響 …………………………………..177 5.5 第6章 ま と め ………………………….………………………………………..182 結 論 ………………………….…………………………………………..187 6.1 本 研 究 の 成 果 ……………….………………………………………….190 6.2 ま と め ………………………….………………………………………..194 6.3 日 本 の 英 語 教 育 へ の 示 唆 ……………………………………………196 6.4 今 後 の 課 題 …………………….……………………………………….203 iii 参 考 文 献 …………………………………………………………………………..205 付 録 ………………………………………………………. ……………………….215 付 録 1 (社 会 人 ・ 大 学 学 部 1 回 生 用 ) …………………. …………………..215 I アンケート:英語学習に関する設問(選択&自由記述) II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 III CEFR〔 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 〕 自 己 評 価 表 付 録 2 ( 留 学 経 験 あ り の 学 部 3 回 生 用 ). . … … … … … … … … … … … … … … 2 2 0 I アンケート:英語学習に関する設問(選択&自由記述) II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 ( 留 学 前 & 留 学 後 ) III CEFR〔 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 〕 自 己 評 価 表 ( 留 学 前 & 留学後) 付 録 3 (高 校 2 年 生 用 ). …………………. …………………………………….225 I アンケート:英語学習に関する設問(選択&自由記述) II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 III CEFR〔 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 〕 自 己 評 価 表 付 録 4 ( 中 学 2 年 生 用 ). … … … … … … … … … … … … . … … … … … … … … … 2 3 0 I アンケート:英語学習に関する設問(選択&自由記述) II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 ( 初 級 学 習 者 用 に 調 整 ) III CEFR を 基 に 初 級 学 習 者 用 に 再 編 集 自 己 評 価 表 ( 到 達 最 高 レ ベ ル A2 用 ) 付 録 5 ( 小 学 6 年 生 用 ). … … … … … … … … … … … … . … … … … … … … … … 2 3 4 I ア ン ケ ー ト : 英 語 学 習 に 関 す る 設 問 ( 中 学 生 と は 多 少 変 更 )( 選 択 &自由記述) II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 ( 初 級 学 習 者 用 に 調 整 ) III CEFR を 基 に 初 級 学 習 者 用 に 再 編 集 自 己 評 価 表 ( 到 達 最 高 レ ベ ル A2 用 ) 付 録 6( 在 日 外 国 人 留 学 生 用 )… … … … … … … … … … … … . … … … … … … . 2 3 8 I アンケート:日本語学習に関する設問(選択&自由記述) iv II 8 つ の 情 動 要 素 に 関 連 す る 40 の 設 問 III CEFR〔 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 〕 自 己 評 価 表 論文中の表・図のリスト (表・図の番号の一桁目は含まれる章を、ハイフンに続く番号は章内で の追番を示す) 表 1-1 情 動 の 構 成 要 素 と 設 問 項 目 数 ………………. ………………………14 表 1-2 CEFR の 4 + 1 技 能 ………………. …………………………………… 15 図 2-1 動 機 づ け を 高 め る 指 導 実 践 ……………………………………………36 表 2-1 CEFR 自 己 評 価 に 用 い ら れ る 尺 度 ……………………………………..56 表 3-1 CEFR、 TOEIC、 実 用 英 語 技 能 検 定 、 TOEFL-PBT の レ ベ ル 比 較 ….69 表 3-2 CEFR、 実 用 英 語 技 能 検 定 の レ ベ ル 比 較 …………………………….69 表 4-1 日 本 語 専 門 学 校 の カ リ キ ュ ラ ム ……………………………………..96 表 4-2 相 関 性 の 強 さ ……………………………………………………………103 表 5-1 調 査 対 象 者 の グ ル ー プ 構 成 …. ……………………………………..108 表 5-2 情 動 の 構 成 要 素 ………………. ……………………………………….109 表 5-3 CEFR の 4 + 1 技 能 ( 一 般 4 技 能 と の 比 較 ) ……………………110 表 5-4 情 動 要 素 レ ベ ル の 平 均 値 と 標 準 偏 差 ………………………………111 表 5-5 CEFR 技 能 の 段 階 ……………. ………………………………………….113 表 5-6 CEFR 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 と 標 準 偏 差 ………………………………114 表 5-7 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 社 会 人 英 語 上 級 者 ) ………………………………………………118 表 5-8 情 動 (SE&AN)関 連 事 項 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ………. …………………………………………………….120 表 5-9 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 留 学 経 験 あ り の 学 部 3 回 生 ) 留 学 後 …………………………123 表 5-10 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 大 学 学 部 1 回 生 ) …………. ……………………………………130 表 5-11 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 高 校 2 年 生 ) …………. …………………………………………..136 表 5-12 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 中 学 2 年 生 ) ……. ………………………………………………140 表 5-13 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 小 学 6 年 生 ) …………. …………………………………………146 v 表 5-14 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 在 日 中 国 人 留 学 生 ) …. …………………………………………150 表 5-15 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 ) ………………………………………….154 表 5-16 情 動 要 素 と 有 意 な 相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 個 数 集 計 ………..156 表 5-17 CEFR 技 能 と 有 意 な 相 関 性 の あ る 情 動 要 素 の 個 数 集 計 …………158 表 5-18 CEFR 技 能 へ よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 の 順 位 …………159 表 5-19 情 動 要 素 か ら よ り 多 く の 影 響 を 受 け る CEFR 技 能 の 順 位 ……..159 表 5-20 上 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 及 び CEFR 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力 の 平 均 値 …………………………………………………….160 表 5-21 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 留 学 経 験 あ り の 学 部 3 回 生 )留 学 前 … … … … … … … … … … … 1 6 4 表 5-22 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と TOEIC の 相 関 係 数 ( 社 会 人 英 語 上 級 者 ) …. ………………………………………..175 表 5-23 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と C-Test の 相 関 係 数 ( 大 学 学 部 1 回 生 ) …. ……………………………………………176 表 5-24 目 標 言 語 ・ 学 習 環 境 の 違 い に よ る 各 情 動 要 素 レ ベ ル お よ び CEFR 各 技 能 レ ベ ル の 比 較 ………………………………….179 表 5-25 英 語 学 習 に 関 す る 各 情 動 要 素 レ ベ ル お よ び CEFR 各 技 能 レ ベ ル の 比 較 ……………………………………………180 vi 第1章 序論 外 国 語 学 習 1 ) に 関 し 、さ ま ざ ま な 分 野 で 多 岐 に わ た る 研 究 が 、 数 え き れ な い ほ ど の 研 究 者 に よ っ て 長 年 行 わ れ て き た 。そ の 中 で 、 学習者の心理的な側面に焦点を当てた研究はいまだ十分に開拓 さ れ て い る と は 言 い 難 い 分 野 で あ る 。人 は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 手 段 と し て 言 葉 を 持 ち 、人 間 の 気 持 ち 、心 理 学 で い う 情 動 2 ) を 根 幹 と し て 言 葉 が 発 信 さ れ る と 考 え ら れ る 。つ ま り 、言 葉 は 、人 間 の 内 面 で あ る 精 神 状 態 、心 の 状 態 を 反 映 し て 発 信 さ れ る と 言 え よ う 。そ の 意 味 で 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と 、情 動 が ど の よ う に 影 響 し 合 っ て い る の か を 解 明 す る こ と は 、逆 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 高 め る に は 、情 動 が ど う あ れ ば 効 果 が 高 ま る の か を 明 ら か に で き る 。そ の 意 味 で 、外 国 語 学 習 に 関 し て 学 習 者 の 情 動 に 焦 点 をあてた研究の意義があると言えよう。 この数十年、政治、経済、文化、教育、科学、医療など多様 な 分 野 に お い て 、グ ロ ー バ ル 化 と ボ ー ダ ー レ ス 化 が 、嘗 て な い ほ ど 急 速 に 進 ん だ 。そ れ に 連 れ 、世 界 中 の 人 々 が 互 い に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 る 必 要 性 が 今 日 ほ ど 高 ま っ た こ と は な く 、我 が 国 に おいても国際的に通用する高いレベルのコミュニケーターの育 成は緊急の課題となっている。 世界的にコミュニケーションに用いられるツールの第一位 は 、言 う ま で も な く 英 語 で あ り 、日 本 に お け る 外 国 語 学 習 も ほ ぼ 英 語 で あ る 。そ の た め 、殆 ど の 日 本 人 は 高 等 学 校 ま で に 短 く と も 6 年 間 は 英 語 教 育 を 受 け て き た 。そ れ で い な が ら「 日 本 人 は 一 般 的 に 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 不 得 手 」と い う 不 名 誉 な レ ッテルを貼られてしまっている。 その要因として英語と日本語の言語距離の問題は根底にあ る も の の 、こ れ ま で 問 題 視 さ れ て き た の は 、文 法 や 訳 読 に 重 点 を 1 置 い た 英 語 指 導 、英 語 で 指 導 し な い 英 語 教 育 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン力向上の訓練になるはずのディベートなど臨機応変な遣り取 りをあまり取り入れていない英語指導などといった視点であっ た。 言 語 運 用 面 の 育 成 の 重 要 性 が 盛 ん に 指 摘 さ れ る 中 、結 局 は 受 験 な ど へ の 対 応 が 優 先 し 、も っ ぱ ら 言 語 知 識 に 重 点 が 置 か れ て い る の が 現 実 で あ ろ う 。英 語 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の ツ ー ル と し て 使 え る か ど う か と い う 言 語 運 用 の 視 点 か ら す る と 、学 習 者 の 感 情 的 あ る い 心 理 的 側 面 は 考 慮 す べ き 重 要 な 要 素 で あ る 。し か し な が ら 、学 習 者 の 性 格 的 特 徴 や 心 の あ り 様 へ の 対 応 な ど と い っ た 心 理 的側面はほとんど軽視されてきた。 M a c I n t y r e ( 2 0 0 2 ) は 、第 二 言 語 習 得 3 ) に は 学 習 者 の 心 の あ り 方 、性 格 的 な 特 徴 な ど が 深 く 関 係 し て い る と の 研 究 を 発 表 し て お り 、学 習 者 の 心 理 的 な 面 が 過 小 評 価 さ れ て い る と 論 じ て い る 。日 本人は英語によるコミュニケーションが不得意という要因を探 る 上 で 、 MacIntyre の こ の 指 摘 は 示 唆 に 富 む も の で あ る 。 本 論 文 で は 、こ れ ま で 日 本 の 英 語 指 導 で 軽 視 さ れ て き た 学 習 者 の 感 情 的 あ る い は 心 理 的 側 面 、心 理 状 態 に 焦 点 を 当 て 、そ れ と 外国語習得との間にどのように重大な関連性があるかを明らか にする。この視点での研究は国内外においてさほど多くはなく、 し か も 実 証 的 な 研 究 に 至 っ て は 極 め て 少 な い 。そ の た め 、調 査 手 法を新たに考案し、試みることとした。 そ の 一 つ 目 は 、学 習 者 の「 心 理 状 態 を 数 値 化 し 量 的 に 評 価 す る 」事 で あ る 。二 つ 目 は 、外 国 語 習 得 の 総 合 的 な 成 果 と し て の「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」を 数 値 化 し 量 的 に 評 価 す る 事 で あ る 。三 つ 目 は 、学 習 者 の「 心 理 状 態 」と「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」と の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る か を 統 計 的 に 評 価 す る 事 で あ る 。そ れ ら の 試 み に よ り 、年 代 、学 習 歴 、目 標 言 語 な ど 前 提 条 件 の 異 な る 学習者あるいは学習者グループ間の比較対比を客観的に行うこ 2 とが可能になると考える。 一 つ 目 の 心 理 状 態 の 評 価 に は 、 心 理 学 で 言 う 「 情 動 ( e m o t i o n )」を 尺 度 と し て 用 い る こ と と し た 。 先行研究によれ ば 、人 間 の 情 動 、感 情 や 心 理 全 般 を 外 部 か ら 観 察 す る の は 極 め て 困 難 で は あ る が 、表 情 や 反 応 、動 作 な ど の 具 体 的 な 行 動 を 通 じ て 、 客 観 的 な 観 察 が 可 能 と さ れ る 。そ れ が 、情 動 を 採 用 し た 理 由 で あ る 。情 動 の 調 査 方 法 と し て は 、個 々 の 学 習 者 の 心 理 状 態 プ ロ フ ィ ー ル を 引 き 出 し 、総 合 的 に 評 価 す る た め の 設 問 リ ス ト を 用 意 す る こ と と し た 。 す な わ ち 、 ま ず 情 動 を 、 自 尊 心 ( s e l f - e s t e e m )、 危 険 負 担 ( r i s k - t a k i n g )、 不 安 ( a n x i e t y )、 共 感 ( e m p a t h y )、 抑 制 ( i n h i b i t i o n )、外 向 性( e x t r o v e r s i o n )、内 向 性( i n t r o v e r s i o n )、 寛 容 性 ( tolerance) と い う 八 つ の 要 素 に 分 け る 。 次 い で 、 そ れ ぞれの要素の持つ意味が正しく伝わるための具体的な記述文を 要 素 ご と に 5 個 ず つ 用 意 す る 。 そ の よ う に 用 意 し た 全 部 で 40 項 目 か ら な る 記 述 文 に 対 し て 一 つ ず つ 、学 習 者 は 自 分 の 抱 く 気 持 ち のレベルを 4 件法で回答する形態をとる。 二 つ 目 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 評 価 に は 、 Common European Framework of Reference for Languages( 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 、 以 降 C E F R と 称 す 。 詳 細 は 2 章 5 節 で 述 べ る 。) を 尺 度として用いることとした。 Wi d d o w s o n ( 1 9 7 8 ) が 指 摘 す る よ う に 、 一 般 的 に は 、 外 国 語 学 習 は 、 受 容 的 ・ 受 動 的 技 能 で あ る 聞 く ( l i s t e n i n g )、 読 む ( r e a d i n g ) と 、 産 出 的 ・ 能 動 的 技 能 で あ る 話 す ( s p e a k i n g )、 書 く ( writing) と い う 4 技 能 に よ り 表 わ さ れ て い る が 、 CEFR で は 、 話 す ( speaking) を 更 に 、 や り と り ( spoken interaction) と 表 現 ( spoken production) と に 細 区 分 し て い る 。 CEFR の 5 つ の 技 能 を 、 一 般 の 4 技 能 と 区 別 し 、 本 論 文 で は 4 + 1 4)技 能 と 称 す る こ と と し た 。相 手 と の 当 意 即 妙 な「 や り と り 」や 臨 機 応 変 の「 表 現 」は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の プ ロ セ ス に 一 層 即 し た も の 3 と な っ て お り 、同 時 に 、心 理 状 態 に 左 右 さ れ 易 く 、正 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 中 核 を 成 す も の で あ る 。 CEFR は 、 元 来 、 目 標 言 語学習者のコミュニケーション力到達度を示す指標として開発 さ れ て い る 。 そ れ が 、 CEFR を 採 用 し た 理 由 で あ る 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 調 査 方 法 と し て は 、 CEFR 英 語 版 オ リ ジ ナ ル と CEFR 日 本 語 版 ( 吉 島 ・ 大 橋 訳 ・ 編 , 2004) を 基 に 、 調 査 対 象 と する学習者の特性を考慮して筆者が微調整した調査表に対して、 学 習 者 が オ リ ジ ナ ル 同 様 自 己 評 価 す る 形 態 を と る 。 な お 、 CEFR は 多 言 語 主 義 、複 言 語 主 義 に 対 応 し て 開 発 さ れ て お り 、欧 州 言 語 の み な ら ず 、あ ら ゆ る 言 語 学 習 の 到 達 尺 度 と し て 活 用 可 能 で あ る た め 、E F L と し て の 日 本 人 学 習 者 、在 日 外 国 人 留 学 生 が 日 本 で 日 本語を学習しているグループを調査対象とする本論文の場合に も適用可能と考える。 三 つ 目 の 関 連 性 の 評 価 に つ い て は 、学 習 者 の 心 理 状 態 と コ ミ ュニケーション力のそれぞれを数値化し統計的に表わすことに よ り 、両 者 の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る の か 統 計 的 に 評 価 す る こ と が 可 能 と な る 。更 に 、心 理 状 態 の 尺 度 と し た 情 動 を 構 成 す る 各要素およびコミュニケーション力を構成する各技能について も 、要 素 間 相 互 、技 能 間 相 互 、要 素 対 技 能 な ど あ ら ゆ る 組 合 せ で の統計的な評価を行うこととした。 以 上 の こ と か ら 、こ れ ら は 本 研 究 を 実 証 的 な も の へ 導 く 手 法 になるものと確信する。 な お 、統 計 的 な 量 的 研 究 に 加 え て 、補 足 的 に 、調 査 対 象 者 に よる自由記述等を基に、質的研究もおこなう。 本論文の構成は、次の通りである。1 章では、本論文の総括 と し て 、研 究 の 目 的 と 意 義 を 示 し 、E F L 環 境 で の 日 本 人 学 習 者 の 現 状 を 押 え た 上 で 、多 面 的 に 捉 え た 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 に つ い て 、仮 説 を 立 て 調 査 分 析 す る こ と の 必 要 性 を 論 じ る 。加 え て 調 査 手 法 、調 査 対 象 、調 査 結 果 に つ い て の 概 要 を 述 4 べる。2 章では、理論的背景として、情動と第二言語習得に関す る 内 外 の 主 た る 論 争 を 中 心 に 、情 動 の 定 義 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 定 義 、 CEFR の 意 義 、 歴 史 的 背 景 、 国 際 指 標 と し て の 流 れ 、 本 論 文 の 調 査 指 標 に C E F R を 使 用 し た 理 由 な ど に つ い て 述 べ る 。3 章では、情動とコミュニケーション力について、事例を中心に、 現 状 と 課 題 に つ い て 述 べ る 。4 章 で は 、仮 説 を 基 に 、調 査 の 必 要 性 、調 査 方 法 、手 順 、調 査 対 象 者 、分 析 方 法 に つ い て 述 べ る 。5 章 で は 、調 査 結 果 に つ い て 、デ ー タ を 基 に 分 析 し 、仮 説 を 検 証 す る。6章は、結論とする。 1.1 研究の目的と意義 本 研 究 は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 最 も 根 幹 と な る 学 習 者 の 心 理状態とコミュニケーション力との間にどのように重大な関連 性があるのか明らかにすることを目的とする。 学習者の心理状態にも様々な要素とその度合いがあると考 え ら れ る が 、そ れ ら の 要 素 、度 合 い と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 そ れ ぞ れ の 関 連 性 に つ い て 、可 能 な 限 り 量 的 に 表 現 し 、実 証 的 な 研 究 へ 取 り 組 む 。し か し な が ら 、心 理 状 態 を 幅 広 く 捉 え た 上 で 、心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 に つ い て 、両 者 を 数 値 化 し 量 的 に 検 証 す る 研 究 手 法 な ど の 前 例 は 皆 無 と 言 っ て よ い 。そ の よ う に 前 例 の 希 少 な 実 証 的 ア プ ロ ー チ へ チ ャ レ ン ジ す る こ と 、そ し て 、そ の 成 果 を こ れ か ら の 英 語 教 育 へ い か に 活 か し て い く べ き か、探求することに本研究の意義がある。 車 に 譬 え れ ば 、英 語 力 と い う 車 が 効 率 よ く 前 に 進 む た め に は 、 こ れ ま で 指 導 上 重 視 さ れ て き た 技 術 的 側 面 の 前 輪 だ け で な く 、後 輪を担うものとして学習者の感情的あるいは心理的側面を加え ることが必須と考える。 本 研 究 は 、学 習 者 の 心 理 状 態 、す な わ ち 、人 間 の 心 の 領 域 に 5 踏 み 込 む こ と に な る 。更 に は 、日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 不 得 手 、裏 返 せ ば 、外 国 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 上 手 と い う 現 象 の 根 底 に あ る 要 因 は 一 体 何 な の か 解 明 す る 必 要 が あ る 。言 う ま で も な く 、人 間 一 人 ひ と り の 心 の あ り 様 は 様 々 で あ り 、類 似 点 も あ れ ば 相 違 点 も あ る 。従 っ て 、可 能 な 限 り 年 代 や 学 習 経 験 な ど で 偏 る こ となく、なるべく多くの調査対象者を集めることとした。また、 外 国 人 と 比 べ て 日 本 人 の 特 性 を 鮮 明 に す る た め 、被 験 者 の 中 に 一 定の割合となるよう外国人を加え国際比較することとした。 以 上 を 踏 ま え 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 の 関 連 性 に つ い て 、以 下 の 仮 説 を 立 て 、量 的 な 統 計 手 法 を 用 い た 実 証 的 検 証を試みる。 仮 説 1 : 日 本 人 学 習 者 、外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 は 外 国 語 によるコミュニケーション力に影響を与える。 仮 説 2 :日 本 人 学 習 者 に 関 し 、情 動 と C E F R と の 関 連 性 は 発 達 段階によって異なる。 仮 説 3 : 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 ら か な 違 い が ある。 1.2 日本人学習者の現状 社 会 人 の あ る 日 本 人 女 性 は 、大 学 時 代 に 1 年 間 の 米 国 留 学 を 経 験 し た が 、 当 時 を 振 り 返 り 、「 自 分 は 人 前 に 立 つ と 英 語 で う ま く し ゃ べ れ な い 。同 じ ク ラ ス の 中 国 人 は 、間 違 い だ ら け の 英 語 な の に 、立 派 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 っ て い る 。間 違 い を す る と 馬 鹿 に さ れ る の で は と い う 不 安 か ら 、自 分 は な か な か 話 す こ と が 6 出 来 な か っ た 。間 違 い を 全 く 気 に せ ず 、言 い た い こ と を 表 現 す る 中 国 人 と 頻 繁 に 接 す る に つ け 、恐 れ る こ と は な い と 気 が つ き 、し だ い に し ゃ べ る こ と が で き る よ う に な っ た 」と 語 っ て く れ た 。現 在 彼 女 は 、英 検 準 1 級 を 取 得 し 、T O E I C は 8 6 0 点 レ ベ ル で あ り 、 英語でコミュニケーションすることについては一般的な内容で あ れ ば 、ほ ぼ 不 自 由 は な い 。キ ャ リ ア ・ ア ッ プ を め ざ し て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 向 上 の た め の 訓 練 を し て い る が 、国 際 ビ ジ ネ ス の 場で交渉するとか、相手を説得できるレベルには至っていない。 文 部 科 学 省 は 、平 成 1 4 年 改 定 の 教 育 指 導 要 領 で 、 「英語が使 える日本人」を育成するといった目標を明確に打ち出している。 平 成 20 年 改 定 の 新 学 習 指 導 要 領 に お け る 小 学 校 の 外 国 語 活 動 の 目 標 は 、「 言 語 や 文 化 を 体 験 さ せ 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 ろ う と す る 態 度 を 育 成 し 、外 国 語 の 音 声 や 基 本 的 表 現 に 慣 れ 親 し ま せ 、 中 学 校 以 降 へ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 素 地 を 養 う こ と 」と し て き た 。ま た 、中 学 校 、高 等 学 校 に お い て も コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の育成に重点を置くことを目標とするなど、日本の英語教育は、 長年コミュニケーション力育成指導を重視してきた。 実 際 に ど の 程 度 の 効 果 を 上 げ て い る か の 報 告 は 乏 し い が 、英 会 話 演 習 な ど と い う 形 で 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 指 導 が カ リ キ ュ ラ ム に 組 み 込 ま れ て き た 。少 数 で あ る が 、英 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 育 成 を 重 点 教 育 目 標 に 掲 げ る 学 校 も あ り 、 SEL-Hi な ど で の コミュニケーション指導実践成功事例が学会でも取り上げられ て い る 。 ま た 、 岩 井 ( 2 0 0 8 , 2 0 11 ) は , 英 語 の 使 え る 日 本 人 を 育 成するためには能動的方略能力を備えた学習者の育成が不可欠 であるとして、その信念に基づき、大学の授業などへ積極的に Oral presentation & performance を 取 り 入 れ 、 成 果 を 上 げ て い る。 し か し な が ら 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 指 導 の 訓 練 を 十 分 に 受 け 、 英語で授業を行うことができる指導者はさほど多くはないよう 7 で あ る 。2 0 1 2 年 5 月 2 6 英 語 教 員 セ ミ ナ ー に て 配 布 さ れ た 文 部 科 学 省 ・ 初 等 中 等 教 育 局 、向 後 の 資 料「 新 学 習 指 導 要 領 と 5 つ の 提 言 ( 2012) を 考 え る 」 に よ る と 、 2012 年 1 月 3 1 日 現 在 公 立 中 学 校 英 語 担 当 教 員 数 27,633 名 (岩 手 県 、 宮 城 県 、 福 島 県 、 仙 台 市 を 除 く )の 内 、 英 検 準 1 級 以 上 取 得 し て い る 教 員 数 は 27.7%に と ど ま っ て い る 。 更 に 、 文 部 科 学 省 「 平 成 22 年 度 公 立 高 等 学 校 に お け る 教 育 課 程 の 編 成 ・ 実 施 状 況 調 査 (B 表 )の 結 果 に つ い て 」 を 基 に 、 波 多 野 ( 2 0 11 ) は 、「 英 語 I は 4 技 能 を 総 合 的 に 扱 う 科 目 で あ り 、英 語 を 用 い て 授 業 を 行 う 必 要 が あ る に も か か わ ら ず 、英 語 の 使 用 率 が 極 め て 低 い 」と 述 べ て い る 。こ の よ う に 指 導 者 の レ ベ ルは、十分とは言い難い。 B e n e s s e 教 育 研 究 開 発 セ ン タ ー に よ る「 東 ア ジ ア 高 校 英 語 教 育 GTEC 調 査 2006」 に よ る と 、 日 本 と 韓 国 の 高 校 生 に つ い て 4 技能すべての分野で日本の高校生の英語使用経験率が韓国を大 き く 下 回 っ て い る こ と が 示 さ れ て い る 。 例 え ば 、 listening に 関 し て「 テ レ ビ ・ ラ ジ オ で の 英 語 音 声 の ニ ュ ー ス を 聞 く 」の 設 問 に 対 し て 、 韓 国 60.6%、 日 本 27.3%、 speaking に 関 し て 「 英 語 で 道 を 尋 ね ら れ て 、 英 語 で 答 え る 」 に 対 し 韓 国 は 73.8%、 日 本 は 22.5%と な っ て い る 。 国 の 政 策 の 違 い 、 英 語 教 育 時 間 数 等 の 違 い 等 は あ る も の の 、日 本 人 が 中 学 校 、高 等 学 校 を 通 し て 少 な く と も 6 年 間 英 語 教 育 を 受 け て い る わ り に は 、同 じ E F L 言 語 環 境 の ア ジ ア 圏 に お い て 運 用 面 で こ れ ほ ど の 差 が あ る 事 を 考 え る と 、「 英 語 が使える日本人」の育成からは程遠い現実である。 TOEFL の 国 際 比 較 に お い て 、 日 本 人 の 平 均 ス コ ア は ア ジ ア 諸 国 の 中 で 下 か ら 2 番 目 ( 2004- 2005 年 結 果 ) で あ っ た 。 国 際 ビ ジ ネ ス コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 協 会 の T O E I C テ ス ト D ATA & A N A LY S I S 2 0 1 0 に よ る と 、 2 0 0 6 年 か ら 2 0 1 0 年 の T O E I C I P の 日 本 で の 受 験 者 平 均 ス コ ア の 推 移 は 446 点 か ら 460 点 で あ り 、 わ ず か に 上 昇 し て は い る 。し か し な が ら 、英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ 8 ー シ ョ ン を 必 須 と す る 商 社 の 平 均 ス コ ア は 2010 年 度 で 595 点 、 企 業 の 海 外 部 門 で 686 点 , 英 語 専 攻 (大 学 、 短 大 、 専 門 学 校 )学 生 が 496 点 で あ る 。 TOEIC 主 催 元 は こ の レ ベ ル に つ い て 、 日 常 生 活 の ニ ー ズ を 充 足 し 、限 定 さ れ た 範 囲 内 で は 業 務 上 の コ ミ ュ ニ ケ ーションができる程度であるという評価ガイドラインを出して いる。 こ れ ら の 結 果 は 、日 本 人 の 英 語 運 用 能 力 が 国 際 舞 台 で 丁 々 発 止 と や り 取 り し 、相 手 を 説 得 で き る レ ベ ル に は い ま だ 至 っ て い な い 実 態 を 表 し て い る 。実 際 に 、国 際 ビ ジ ネ ス や 国 際 会 議 な ど 外 国 人 を 交 え た 公 式 の 場 へ 臨 む と 、説 得 力 に 欠 け 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン力不足を露呈する日本人が多い現実にしばしば遭遇する。 1.3 コミュニケーションが不得手な背景 長 き に 亘 っ て 英 語 教 育 の 改 革 、指 導 技 術 、指 導 教 材 の 開 発 が 進 め ら れ て い る に も か か わ ら ず 、現 実 に 日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン力に対する国際的な評価が上向いてこないという厳しい現 実 を 認 め ざ る を 得 な い 。ち な み に 、大 学 英 語 教 育 学 会 実 態 調 査 委 員 会 は 、大 学 の 英 語 教 育 教 員 8 0 0 名 に 対 し て 実 態 調 査 を 行 い 、そ の 報 告 書 で あ る「 わ が 国 の 外 国 語 ・ 英 語 教 員 に 関 す る 実 態 の 総 合 的 研 究 」 の 中 で 、「 日 本 人 は 本 来 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と し て の 外 国語学習が不得意であるという考え方をどう思いますかの設問 に 対 し て 、 40.5%の 回 答 者 が 肯 定 し て い る こ と は 注 目 す べ き で あ る 」 (2003,p.16)と 記 述 し て い る 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 適 切 に 機 能 す る た め に は 、自 分 の 意 見 や 思 い を 相 手 に 正 し く 投 げ か け る 一 方 で 、相 手 の 意 見 や 立 場 を 正 し く 受 け 止 め る 、言 う な ら ば 双 方 向 に 上 手 く 噛 み 合 っ た 、会 話 の キ ャ ッ チ ボ ー ル を 展 開 し な け れ ば な ら な い 。こ れ を 外 国 語 で 行 う と な る と 、ま し て 、場 合 に よ っ て は 初 対 面 の 外 国 人 と 直 接 対 峙 し 9 て 行 う と な る と 、外 国 語 を 単 に 話 す こ と や 聞 く こ と が 出 来 さ え す ればうまくコミュニケーションできるというほど簡単ではない。 緊 張 を 強 い ら れ る 国 際 会 議 の 場 や 、利 害 の 反 す る 相 手 と の 交 渉 の 場 な ど で は 、自 分 の 本 来 の 意 図 と は 外 れ た 発 言 や 、相 手 の 発 言 を 曲 界 す る よ う な 返 答 に よ っ て 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 心 な ら ず も 失 敗 に 終 わ ら せ て し ま う 。そ の 過 程 で は 、心 や 感 情 と い う 人 間 の 心 理 が 、習 得 し た は ず の 言 語 能 力 を 最 大 限 発 揮 で き る か ど う か の 鍵を握り、コミュニケーションの成否を左右するのである。 つ ま り 、目 標 言 語 に 関 す る 能 力 と 、人 間 の 心 理 が 車 の 両 輪 と な っ て 、会 話 の キ ャ ッ チ ボ ー ル が 上 手 く 噛 み 合 え ば 、う ま く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 図 れ る の で あ っ て 、 EFL と か ESL と い っ た 言 語 環 境 が 、絶 対 的 な 違 い と し て 決 定 的 な 影 響 を 及 ぼ す と は 限 ら な い 。な ぜ な ら 、今 日 、言 語 環 境 で さ え 、変 え る こ と が 可 能 な 時 代 で あ る 。 つ ま り 、 日 本 に お い て EFL の 学 習 者 に 対 し 、 音 声 ・ 映 像 資 料 ・ メ デ ィ ア を 駆 使 し 、E S L に 近 い 環 境 を 、生 み 出 す こ と も 物理的に可能だからである。 日 本 の 英 語 教 育 に お い て 、C LT を は じ め 、欧 米 の 様 々 な 指 導 法 が こ れ ま で 導 入 さ れ て き た 。し か し な が ら 、教 育 現 場 で は 、指 導 上 、心 理 的 側 面 に 対 し て は 軽 視 あ る い は 見 過 ご さ れ て き た よ う である。 本 研 究 で は 、人 間 の 心 理 状 態 、例 え ば 、間 違 い を し て 人 に 笑 われるのではないかと不安を覚える、あえて危険負担をしない、 抑 制 が か か る 、一 般 的 に 日 本 人 の 性 格 的 特 徴 と 言 わ れ る 内 向 的 に な る と い っ た 、心 の あ り 様 が 他 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 影 響 を 及 ぼ し て い る の で は な い か と 考 え 、情 動 と 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る か 、情 動 に 焦 点 を 当てて考察する。 10 1.4 これまでの研究 情 動 と 第 二 言 語 学 習 と の 関 連 性 に 関 す る 研 究 は 、 1970 年 代 以 降 、海 外 で 盛 ん に 行 わ れ て き た が 、実 証 的 な 研 究 と な る と 国 内 は お ろ か 海 外 で も 希 少 で あ る 。感 情 あ る い は 心 理 と い う 人 間 の 内 面 を 、外 部 か ら つ ぶ さ に 観 察 す る こ と は 極 め て 困 難 な 作 業 で あ る が 、そ の 断 片 あ る い は 結 実 が 、言 語 と な っ て 表 面 に 現 れ て く る も のと考える。 A s h e( r 1 9 8 1 ), K r a s h e n( 1 9 8 5 ), R . C . G a r d n e( r 1 9 7 2 , 1 9 9 1 , 1 9 9 4 ), H . G a r d n e r( 1 9 8 3 ), B r o w n( 2 0 0 0 , 2 0 0 1 ), L a r s e n - F r e e m a n( 1 9 9 1 ), M a c I n t y r e( 1 9 9 4 , 2 0 0 2 ), D ö r n y e i( 2 0 0 1 , 2 0 0 5 )他 多 く の 学 者 が 、 「 L 1 獲 得 さ ら に は L 2 獲 得 の 過 程 に お い て 、心 理 的 な も の 、人 間 の情動というものが影響している」と指摘している。 Krashen ( 1985,pp.3-4) は 、 第 二 言 語 習 得 の 過 程 に お け る 五 つ の イ ン プ ッ ト 仮 説 を 立 て て い る 。そ の 中 の 一 つ の 情 意 フ ィ ル タ ー 仮 説 ( A f f e c t i v e F i l t e r H y p o t h e s i s ) で 、「 学 習 場 面 に お い て 情 意 フ ィ ル タ ー が 高 い と 、言 語 入 力 や 言 語 運 用 が う ま く い か な い 場 合 が あ る 。従 っ て 、情 意 フ ィ ル タ ー を 下 げ れ ば 集 中 力 が 上 が り 、 効果がある」と述べている。 M a c I n t y r e( 2 0 0 2 , p p . 4 3 - 6 1 ) は 、「 情 動 は 言 語 学 習 に お い て もっと注目されてしかるべきである。情動と動機の関係は強く、 増 幅 器 と し て 機 能 し 、行 動 の エ ネ ル ギ ー を 促 進 し 、す べ て の 活 動 に か か わ る 。人 間 の 行 動 す べ て に 影 響 を 与 え 、情 動 が 強 け れ ば 強 い ほ ど 、そ の 影 響 は 強 い 」と 指 摘 し 、情 動 が 言 語 学 習 に 影 響 を 与 えると主張している。 つ ま り 、第 一 言 語 あ る い は 第 二 言 語 を 問 わ ず 、そ の 習 得 過 程 に お い て 、学 習 者 の 抱 く 情 動 を p o s i t i v e な 方 向 へ 導 く こ と が で き れ ば 、習 得 へ の 阻 害 要 因 を 少 な く し 、効 果 的 な 発 達 が 可 能 に な る のではなかろうか。 11 そ れ で は 、具 体 的 に ど の よ う な 情 動 が ど の よ う に 影 響 し て い る の で あ ろ う か ? R . C . G a r d n e r, Smythe, Clement and G l i c k s m a n は 、「 不 安 の 多 い 生 徒 は ス ピ ー チ 力 が 劣 る ( M o r e a n x i o u s s t u d e n t s a r e l e s s p r o f i c i e n t i n s p e e c h s k i l l s )」( 1 9 7 6 , p.202) と 述 べ て い る 。 MacIntyre と R.C.Gardner( 1994) の 共 同 研 究 で も 、「 言 語 学 習 の 研 究 に お い て 情 動 に も っ と 関 心 を 払 う べ き で あ る 。特 に 不 安 は 第 二 言 語 学 習 過 程 で 明 ら か に マ イ ナ ス の 影 響 を 与 え る 」 と 論 じ て い る 。 S c o v e l( 1 9 7 8 ) な ど は 、 心 理 学 の 視 点 か ら 、不 安 を 取 り 上 げ た 研 究 を 行 っ て い る 。日 本 に お い て は 、 K o n d o a n d Ya n g ( 2 0 0 6 ) が 情 動 の 一 要 素 で あ る 不 安 に 限 定 し た 研究を行っている。 1.5 調査方法 こ れ ま で も 、「 学 習 者 の 抱 く 情 動 が 第 二 言 語 の 効 果 的 な 習 得 へ 影 響 す る 」と い う 主 旨 の 研 究 が 、国 内 外 に お い て 僅 か な が ら 見 受 け ら れ る 。し か し な が ら 、実 証 的 な も の と な る と 極 め て 少 な い 。 し か も 、そ れ ら の ほ と ん ど は 、情 動 の 中 の ど の よ う な 要 素 が 影 響 するかといった、情動の中身にまで踏み込むまでに至らないか、 或 る い は 、例 え ば「 不 安 」と い う 情 動 の 一 要 素 に 限 定 し た 研 究 に とどまっている。 B a i l e y( 1 9 8 3 )は 、情 動 の 一 要 素 で あ る 不 安 が 学 習 者 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 査 す る 手 法 と し て Personal diaries を 用 い て い る 。し か し な が ら 、単 に d i a r i e s を ベ ー ス に 考 察 す る だ け で は 、 研 究 者 の 期 待 す る 内 容 が 必 ず し も 得 ら れ る と は 限 ら ず 、ま た 、数 値 化 し た 量 的 な 検 証 を 行 う に は 情 報 が 不 十 分 と 思 わ れ る た め 、説 得力に欠けるのではないかと考える。 従 っ て 、本 研 究 で は 以 下 の 通 り 調 査 手 法 を 新 た に 考 案 し 、実 証的な検証を試みることとした。 12 (1) 第一の要点は、外国語学習過程において学習者の抱く情 動がどのような状態であるか、量的な評価によって、明 ら か に す る こ と に あ る 。そ の 際 、対 象 と す る の は 単 に「 情 動全体」というように漠然としたものではなく、また、 例 え ば「 不 安 」と い う 情 動 の 一 要 素 に 限 る も の で も な い 。 すなわち、情動を幅広く多面的に捉え、構成しているす べての主要要素を対象にしようとするものである。具体 的 に は 、 対 象 と す る 情 動 は 、 先 行 研 究 を も と に 表 1-1 に 示す8つの要素から構成されるものとする。それぞれの 要素が具体的にどのような意味を持つかは、要素ごとに 5 項目ずつ用意した筆者オリジナルの記述文によって示 さ れ る 。 そ の 記 述 文 の 一 つ 一 つ が 設 問 と な り 、 合 計 40 項目から成る設問リストを構成する。学習者は、設問リ ストに沿って、自分がどのレベルに該当するか、4 件法 で回答することとなる。そのようにして、学習者の抱く 情動のどの要素がどのレベルにあるかを明らかにし、量 的に評価するのである。なお、今回の調査では、年代や 学習経験あるいは国籍において異なる被験者を対象と するため、被験者が理解しやすいよう微調整した情動に 関 す る 項 目 リ ス ト を 5 種 類 (① 小 学 生 ,② 中 学 生 、 ③ 高 校 生・一般大学生・社会人、④留学経験のある英語専攻大 学 生 、 ⑤ 在 日 外 国 人 留 学 生 ) 準 備 し た 。( 付 録 参 照 ) 13 表 1-1 情動の構成要素と設問項目数 構成要素 設問項目数 1 自尊心 ( self-esteem: SE) 5 2 危 険 負 担 ( risk-taking: RT) 5 3 不安 ( anxiety: AN) 5 4 共感 ( empathy: EM) 5 5 抑制 ( inhibition: IH) 5 6 外向性 ( extroversion: EX) 5 7 内向性 ( introversion: IN) 5 8 寛容性 (2) ( tolerance: TR) 5 第二の要点は、学習者のコミュニケーション力がどのレ ベルにあるか、量的な評価によって、明らかにすること にある。この際、コミュニケーション力を測定する尺度 と し て 、C E F R を 用 い る 。C E F R は 、 「多文化社会で複数 の言語を学習し相互理解の促進や共存能力を育成する」 (大 谷 他 , 2010, p.5)観 点 か ら 開 発 さ れ 、目 標 言 語 学 習 者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 到 達 度 を 示 す 指 標 と し て 、2 0 0 1 年 欧 州 評 議 会 が 公 表 し た も の で あ る 。 CEFR は 、 学 習 者 自身が到達レベルを自己評価することが特徴であり、そ の 為 、「 な に 」 を 「 ど こ ま で で き る 」 か を 示 す Can-do-statements( 到 達 レ ベ ル 記 述 文 ) が 設 定 さ れ て い る 。 CEFR で は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 生 み 出 す 言 語 技 能 を 、 表 1-2 に 示 す 5 つ の 技 能 で 示 し て い る 。 一 般 的に言語技能は、聞く、読む、話す、書く、という4技 能 か ら 構 成 さ れ る 。C E F R で は 、 「 話 す 」を 更 に「 や り と り」と「表現」とに細分化することにより、コミュニケ ーションのプロセスにより一層即したものになってい 14 る 。そ れ ぞ れ の 技 能 が「 ど こ ま で で き る 」か に つ い て は 、 その到達度合いが、最初級から最上級までの6段階レベ ルのどれに該当するかということを学習者自ら自己評 価するシステムになっている。本研究では、これらの自 己評価データを数値化し量的に評価する。なお、今回の 調 査 で は 、 CEFR 日 本 語 版 ( 吉 島 ・ 大 橋 訳 ・ 編 , 2004) と、この日本語版の基になった英語版を合わせて参照し、 更に年代、学習経験、国籍において異なる被験者の理解 を容易にする為、それぞれの被験者にあわせて微調整し た 独 自 の C E F R 自 己 評 価 を 合 計 4 種 類 ( ① 小・中 学 生 用 、 ②高校生・一般大学生・社会人、③留学経験のある英語 専 攻 大 学 生 、 ④ 在 日 外 国 人 留 学 生 )用 意 す る こ と と し た ( 付 録 参 照 )。 表 1-2 CEFR の 4 + 1 技 能 CEFR4 + 1 技 能 一般的4技能 1 聞く ( listening) 聞 く ( listening) 2 読む ( reading) 読 む ( reading) 3.1 や り と り ( spoken interaction) 3.2 表現 ( spoken production) 4 書く ( writing) (3) 話 す ( speaking) 書 く ( writing) 第三の要点は、学習者の抱く情動とコミュニケーション 力との間にどのような関連性があるか明らかにするた め、統計的な評価を行うことにある。更に、情動を構成 する各要素およびコミュニケーション力を構成する各 技能についても、要素間相互、技能間相互、要素対技能 などあらゆる組合せでの統計的な評価を行う。 15 (4) 第四の要点は、目的、動機、意欲、環境など目標言語学 習の背景を捉えるため、学習者への面接およびアンケー ト調査の自由記述などを用いた質的考察を、併せて行う ことにある。 以 上 の 試 み に よ り 、年 代 、学 習 経 験 、目 標 言 語 な ど と い っ た 前提条件の異なる学習者あるいは学習者グループ間の比較を客 観 的 に 行 う こ と が 可 能 に な る と 考 え る 。ま た 、テ ス ト に よ る 調 査 方 法 に 比 べ 被 験 者 が 抱 く 不 安 な ど が ほ と ん ど な く 、分 析 の 妨 げ と な る 無 用 の 心 理 的 負 担 を 被 験 者 へ 与 え な い も の と 考 え る 。( 調 査 方 法 に 関 す る 詳 細 に つ い て は 第 4 章 で 述 べ る 。) 1.5.1 国 際 比 較 調 査 内 向 的 で 間 違 い を す る こ と が 気 に な る 為 、危 険 を お か さ な い 等 と い っ た 日 本 人 に 特 徴 的 と 考 え ら れ る 情 動 要 素 が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に ど の よ う に 影 響 す る か 調 査 検 証 す る こ と に よ り 、英 語によるコミュニケーションを苦手とする日本人が多いといわ れる原因がどこにあるか明らかにする。その為、日本人学習者 320 名( 社 会 人 46 名 、一 般 大 学 生 47 名 、留 学 経 験 の あ る 大 学 生 35 名 、 私 立 高 等 学 校 2 年 生 50 名 、 公 立 中 学 校 2 年 生 58 名 、 公 立 小 学 校 6 年 生 8 4 名 ) に 、在 日 外 国 人 留 学 生 1 0 2 名 ( 中 国 人 6 9 名 、 ベ ト ナ ム 人 33 名 、 目 標 言 語 は 日 本 語 ) を 加 え た 総 合 計 422 名を対象とし、国際比較を行うこととした。 こ の 中 、日 本 人 学 習 者 に つ い て は 、小 学 生 か ら 社 会 人 ま で 英 語 を 第 一 外 国 語 と し て 学 習 経 験 の あ る 幅 広 い 層 に 亘 っ て お り 、合 計 3 2 0 名 と な る 。こ の た め 、調 査 結 果 は か な り 一 般 化 で き る も の と考える。 更 に 、日 本 人 と は 情 動 的 に 異 な る 特 徴 を 持 つ と 考 え ら れ る 外 16 国 人 学 習 者 を 調 査 対 象 と し て 加 え た 。在 日 中 国 人 留 学 生 、在 日 ベ トナム人留学生の2グループである。 同じアジア圏にいながら、 陳 ( 1984, p.85) に よ れ ば 「 自 己 主 張 が 強 く 説 得 を 重 視 す る 中 国 人 」、 ま た 、 実 際 に 日 本 語 指 導 に あ た っ た 複 数 名 の 教 師 に よ れ ば 「 日 本 人 に よ く 似 た マ イ ン ド を 持 つ と の 印 象 は 間 違 い で 、む し ろ 自 己 主 張 の 強 い 中 国 人 に 近 い ベ ト ナ ム 人 」で あ る と い う 。こ れ ら 外 国 人 留 学 生 の グ ル ー プ と 、人 前 で 話 す こ と が 苦 手 と さ れ る 日 本 人 学 習 者 と の 対 比 を 通 し て 、両 者 の 類 似 点 あ る い は 相 違 点 を 浮 き 彫りにできるものと考える。 これら3カ国学習者のパーソナリティー上の特徴が目標言 語 学 習 に 影 響 を お よ ぼ す の か 、さ ら に 、学 習 者 の 抱 く ど の よ う な 情動がコミュニケーション力へどのように影響をおよぼすのか 調 査 ・ 面 接 に 基 づ き 国 際 比 較 分 析 を 試 み る 。そ れ に よ り 、日 本 の 英語教育で過小評価されている学習者のメンタルな面を認識す る 必 要 性 を 明 ら か に し 、特 に 指 導 者 の 指 導 の 在 り 方 、指 導 環 境 へ の配慮を促すことを期待するものである。 国 際 比 較 対 象 で あ る 中 国 人 留 学 生 、ベ ト ナ ム 人 留 学 生 は と も に 、 母 国 で は 多 く の 日 本 人 学 習 者 と 同 様 に 英 語 は EFL の 環 境 に あ る 。 調 査 の 対 象 者 の 言 語 環 境 条 件 を す べ て EFL に そ ろ え る と い う 考 え 方 も あ る が 、本 研 究 は「 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る の か 」明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て お り 、ま ず 手 始 め に 、E F L 環 境 に あ る 日 本 人 学 習 者 と 、日 本 で日本語を第一外国語または第二外国語として学んでいる外国 人 留 学 生 、 い わ ば JFSL5) ( Japanese as a foreign or second l a n g u a g e )と も い え る 言 語 環 境 の 異 な る グ ル ー プ と の 比 較 ア プ ロ ーチを手がけることとした。 な お 、目 標 言 語 や 学 習 環 境 の 違 い に よ っ て ど の よ う な 影 響 が 見 ら れ る か を 確 認 す る た め 、調 査 対 象 の 在 日 外 国 人 留 学 生 の 中 か ら中国人留学生、ベトナム人留学生を一人ずつ無作為に選び、4 17 章 4 節、5 節、6 節で詳細に述べている調査方法、手順、分析方 法 を そ の ま ま 適 応 し 、補 完 調 査 を 行 っ た 。具 体 的 に は 、こ れ ら の 留 学 生 の 場 合 、自 国 で 第 一 外 国 語 と し て 英 語 学 習 し た 場 合 と 、第 二 外 国 語 で あ る 日 本 語 を 日 本 で 学 ぶ 場 合 と で 、情 動 お よ び コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に つ い て ど の よ う な 違 い が あ る か 調 査 し た 。 (両 者 と も 、中 国 、ベ ト ナ ム そ れ ぞ れ 自 国 で 、英 語 を 第 一 外 国 語 と し て、日本語を第二外国語として日本で学んでいる。) アンケー ト 調 査 お よ び 面 接 に お い て 、「 目 標 言 語 の 違 い に か か わ ら ず 、 言 語 学 習 に 対 す る 気 持 ち の あ り 方 、情 動 は 同 じ で あ る 」と 回 答 し て い る 。( 補 完 調 査 に 関 す る 詳 細 に つ い て は 第 5 章 4 節 2 項 「 目 標 言語や学習環境による影響」として述べる) こ の 補 完 調 査 に よ り 、 JFSL の 中 国 人 留 学 生 お よ び ベ ト ナ ム 人 留 学 生 と 、E F L の 日 本 人 学 習 者 と の 比 較 に 際 し て 、言 語 環 境 の 違いが重大な影響をもたらす可能性がさほど高くないことを確 認した。 以 上 の 調 査 概 要 に 基 づ き 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 育 成 を め ざす日本の英語教育が見落としてきた重大な視点を明らかにす る。 1.6 調査結果 量的な統計手法を用いた実証的な検証を試みることにより、 「外国語習得過程において学習者の抱く情動とコミュニケーシ ョ ン 力 と の 間 に 重 大 な 関 連 性 が あ り 、そ し て 、ど の 情 動 要 素 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ ど の 程 度 影 響 す る か 」に つ い て 明 ら か に す る と い う 、本 研 究 の 目 的 を 概 ね 達 成 で き た 。ま た 、年 代 、学 習 経 験 、国 籍 、目 標 言 語 な ど 異 な る 前 提 条 件 の 被 験 者 を グ ル ー プ 分 け し て 比 較 し た こ と に よ り 、グ ル ー プ を 超 え た 類 似 性 あ る い は グ ル ー プ 間 の 相 違 性 が 浮 き 彫 り と な り 、 本 研 究 の 副 題 で あ る 「 CEFR 18 と 外 国 語 学 習 者 の 情 動 に つ い て 国 際 比 較 」す る 上 で 、外 国 人 と 比 べた日本人の具体的な特性を明らかにすることができた。 仮 説 1 の「 日 本 人 学 習 者 、外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 は 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 影 響 を 与 え る 」に つ い て は 次 の 様 な 結 果 が 得 ら れ た 。 8 グ ル ー プ 合 計 422 名 を 対 象 と し て 、 8 つ か ら 成 る 各 情 動 要 素 の レ ベ ル と 5 つ か ら 成 る 各 CEFR 技 能 の レ ベ ル を 統 計 処 理 し 、そ の 間 の 相 関 性 に つ い て 分 析 し た と こ ろ 、全 て の グ ル ー プ に お い て 類 似 性 が 見 ら れ た 。具 体 的 に は 、 「自尊心」 と ほ と ん ど の C E F R 技 能 と の 間 に 正 の 相 関 性 が 見 ら れ 、「 不 安 」 と ほ と ん ど の C E F R 技 能 と の 間 に 負 の 相 関 性 が 見 ら れ た 。つ ま り 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ「 自 尊 心 」は プ ラ ス に 影 響 し 、逆 に「 不 安」はマイナスに影響することが明らかになった。 仮 説 2 の 「 日 本 人 学 習 者 に 関 し 、 情 動 と CEFR の 関 連 性 は 発 達 段 階 に よ っ て 異 な る 」に つ い て は 、次 の 様 に 仮 説 に 近 い 結 果 が 得 ら れ た 。す な わ ち 、年 代 や 学 習 経 歴 、留 学 経 験 な ど に お い て 異 な る 日 本 人 の 各 グ ル ー プ の 間 に 相 違 性 が 見 ら れ た 。具 体 的 に は 、 相 関 性 が 見 ら れ る 「 情 動 要 素 」 と 「 CEFR 技 能 」 と の 組 合 せ の 数 を 見 る と 、 小 学 生 が 26 個 、 中 学 生 が 19 個 、 高 校 生 が 12 個 、 大 学 1 回 生 が 11 個 、留 学 経 験 大 学 生 が 2 4 個 、社 会 人 英 語 上 級 者 が 9 個と変遷している。これらのデータは、日本人各グループの結 果を総括したものであり、その詳細については5章で述べるが、 そ の 変 遷 を 筆 者 は 次 の よ う に 解 釈 す る 。学 校 の 授 業 で 外 国 語 に 慣 れ て く る に つ れ 、自 尊 心 や 不 安 と い っ た 人 間 の 根 底 に あ る 情 動 か ら は 容 易 に 抜 け 出 せ な い も の の 、そ れ 以 外 か ら の 影 響 は 徐 々 に 薄 れ て く る 、あ る い は 耐 性 が 出 て く る こ と を 示 す 。し か し 、外 国 へ 行 っ て 現 実 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 晒 さ れ る と 、一 転 し て 多 く の 情 動 要 素 か ら の 影 響 が 再 び 蘇 っ て く る 。そ し て 、そ れ を 凌 ぐ だ け の 経 験 を 積 む こ と に よ り 、よ う や く 平 常 心 の 境 地 へ 達 す る も の と 考える。 19 仮 説 3 の「 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 ら か な 違 い が あ る 」 に つ い て は 、日 本 人 と 外 国 人 と の 間 に 相 違 性 が 見 ら れ た 。具 体 的 に は 、 自 尊 心 の レ ベ ル を 日 本 人 平 均 11 . 9 4 と 比 較 す る と 、 外 国 人 平 均 14.00 は か な り 高 く 、 逆 に 、 不 安 の レ ベ ル は 13.09 に 対 し 11 . 8 7 と か な り 低 い ( ち な み に 最 大 値 は 情 動 要 素 毎 に 2 0 で あ る ) 。 日 本 人 平 均 を 日 本 人 グ ル ー プ の 中 で も 年 代 的 に 近 く 、海 外 留 学 経 験のある大学生と社会人英語上級者の二者に限って比較すると、 自 尊 心 レ ベ ル は 12.73 に 対 し て 14.00、 不 安 レ ベ ル は 12.75 に 対 し て 11 . 8 7 と 約 1 . 1 倍 高 く 、自 尊 心 レ ベ ル は 約 0 . 9 倍 低 い 。ま た 、 C E F R 技 能 レ ベ ル を 比 較 す る と 、全 て の 技 能 に お い て 格 段 に 高 く 、 日本人平均を留学経験大学生と社会人英語上級者の二者に限っ て 比 較 し て も 、 ほ ぼ 同 等 の 「 書 く 」 を 除 く 全 て の 技 能 で 、 1.1 倍 か ら 1.2 倍 ほ ど 高 い 。 こ れ は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ 、 自 尊 心 が ど の 程 度 プ ラ ス に 影 響 し 、逆 に 、不 安 が ど の 程 度 マ イ ナ ス に 影 響 す る か に つ い て 、量 的 に 表 し た 具 体 例 と 言 え る 。ま た 、相 関 性 が 見 ら れ る 「 情 動 要 素 」 と 「 CEFR 技 能 」 と の 組 合 せ の 数 は 、 中 国 人 が 5 個 、ベ ト ナ ム 人 が 6 個 と 、日 本 人 の 各 グ ル ー プ と 比 較 し て 格 段 に 少 な く 、社 会 人 英 語 上 級 者 と 同 様 の 境 地 に 既 に 達 し て い ると見られる。 以 上 の こ と か ら 、こ れ か ら の 英 語 教 育 、と り わ け 幼 少 か ら の 英 語 教 育 に お け る 根 本 的 な 視 点 と し て 、 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 育 成 に 情 動 の 及 ぼ す 影 響 」を 取 り 上 げ 、 一 人 ひ と り の 個 性 、 と り わ け 情 動 面 の 違 い に 対 す る 配 慮 の 必 要 性 、そ れ を 踏 ま え 、国 際 社 会 に 通 用 す る 英 語 力 を 取 得 す る た め 、日 本 人 学 習 者 の ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 効 果 的 な 育 成・強 化 へ 向 け て 一 つ の 示 唆 を 与 え る も の と考える。 20 注 1)&3)本 論 文 に お け る 外 国 語 学 習 と 第 二 言 語 習 得 の 定 義 一 般 に は 、「 外 国 語 学 習 」 と 「 第 二 言 語 習 得 」 は 同 意 義 で 用 い ら れ て い る 場 合 が 多 い が 、米 国 な ど の 英 語 を 母 語 と す る 目 標言語圏で自然に英語を獲得する場合を第二言語としての 英 語 ( ESL) と し 、 日 本 の よ う に 外 国 語 圏 で 英 語 を 第 二 言 語 と し て 学 ぶ 場 合 を 外 国 語 と し て の 英 語( EFL)と し て 区 別 す る 場 合 も あ る 。本 論 文 で は 、日 本 人 学 習 者 の 場 合 に は 主 と し て 日 本 で 英 語 を 学 ぶ 環 境 か ら 外 国 語 学 習( EFL)と し 、調 査 対象として用いている日本で日本語を学んでいる在日外国 人 留 学 生 の ケ ー ス や 、 先 行 研 究 で ESL に つ い て 論 じ て い る ケ ー ス に は 第 二 言 語 習 得 と 表 現 し て い る 。 特 に EFL と 比 較 して在日外国人留学生について言語習得環境を論じる場合 に は 1 章 5 節 1 項 で 言 及 し て い る よ う に 、J F S L( J a p a n e e a s a f o r e i g n o r s e c o n d l a n g u a g e )と 筆 者 造 語 を 使 用 し て い る 。 な お 、自 然 な 言 語 環 境 下 で 第 二 言 語 に 接 す る こ と は 、無 意 識 の 過 程 を た ど る こ と に な る の で「 獲 得 」と し 、文 法 規 則 や 語 彙の説明指導や練習問題によって意識的過程をたどる言語 環 境 に つ い て は 「 学 習 」 と し て 区 別 し て 使 用 し て い る 。( 林 , 1999b, p.281 参 照 ) 2) 情動 情 動 と は 、人 間 の 行 動 、発 言 、反 応 の 根 底 に あ っ て 、そ の 動 き を 左 右 す る 心 の 動 き で あ る 。広 い 意 味 で は「 感 情 」と 同 義 。 Krashen (1985)が 唱 え る affective filter の 訳 語 で あ る 情 意 フ ィ ル タ ー の「 情 意 」が 、応 用 言 語 学 の 世 界 で は 同 様 の 意 味 で 広 く 使 わ れ て い る 。本 論 文 で は 、心 理 学 の 視 点 が 不 可 欠 と 考 え る た め 、心 理 学 の 世 界 で 広 く 使 わ れ て い る「 情 動 」を 用 21 いる。 4) CEFR4 +1 技 能 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 (Common European Framework of Reference for Languages、 CEFR)は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力到達度の尺度として開発されている。単に、従来の4技能 ( l i s t e n i n g , r e a d i n g , s p e a k i n g , w r i t i n g )の 区 分 け で は な く 、 speaking が さ ら に spoken interaction、 spoken production に細分化されている。したがって、本論文においては単純に 従 来 の 4 技 能 に 対 し て 、 CEFR4 + 1 技 能 と 称 す る こ と と す る。 5) JFSL EFL に 対 比 し た 筆 者 の 造 語 (Japanese as a Foreign or Second Language)の 略 語 と し て 本 論 文 に 便 宜 的 に 使 用 す る 。 本 研 究 で は 、E F L の 言 語 環 境 に あ る 日 本 人 と 比 較 す る た め 在 日 外 国 人 留 学 生 (中 国 人 、 ベ ト ナ ム 人 )を 調 査 対 象 に し て い る が 、在 日 中 国 人 留 学 生 の 場 合 、大 半 が 日 本 語 を 第 一 外 国 語 と し て 学 習 し 、在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の 場 合 、大 半 が 日 本 語 を 第 二 外 国 語 と し て 学 習 し て い る 。調 査 対 象 の こ れ ら 中 国 、ベ ト ナ ム か ら の 留 学 生 に つ い て 、日 本 語 学 習 期 間 は 母 国 と 来 日 後を合わせて1年から3年程度が主流である。 22 第2章 2.1 理論的背景 情動とは何か 認 知・記 憶・情 動 な ど 高 次 脳 機 能 の 脳 内 メ カ ニ ズ ム の 研 究 者 で あ る 小 野 は 、情 動 に つ い て 科 学 的 定 義 は 存 在 し な い が 、人 間 の あ ら ゆ る 行 動 の 根 底 に あ る と 論 じ て い る ( 2 0 0 5 , p p . 5 3 - 5 4 )。 心 理 学 で は 、何 ら か の 事 象 を 心 が 知 覚 す る と 、情 動 と い わ れ る 心 情 が 引 き 起 こ さ れ 、こ の 心 の 状 態 が 身 体 的 な 表 現 を 作 り 出 す と さ れ て い る 。 心 理 学 者 で あ り 脳 神 経 学 者 で も あ る LeDoux は 、 「 情 動 は 、身 体 的 な 変 化 が 刺 激 を 知 覚 し た 後 に 続 い て 直 接 的 に 起 き る も の で あ り 、そ の ま ま の 変 化 を 感 じ て 生 ま れ る 状 態 が 情 動 で あ る 」( 1 9 9 6 , p . 5 6 ) と 、 一 般 的 な 心 理 学 に お け る 情 動 の 生 ま れ る行程の説明とは逆の流れで解説している。 社 会 心 理 学 者 で あ る Goleman は 、 「人間は情動の生き物であ り 、す べ て の 思 い 、行 動 に 情 動 が 表 れ 、わ れ わ れ は 情 動 に 影 響 さ れ て い る 。情 動 は 、人 間 の 感 情 、明 確 な 思 い 、心 理 的 、生 物 学 的 状 態 、 行 動 の 性 癖 を 表 す も の で あ る 」( 1 9 9 5 , p . 2 8 9 ) と 唱 え て い る。 心理学者である鈴木は、 「情動と感情を区別するのは難しい」 と前置きしながら、 「 感 情 は 、情 動 に 比 べ 比 較 的 穏 や か な も の で 、 基 本 的 に は 快 ・ 不 快 を 両 極 と し た 心 の 状 態 を い う 。・ ・ ・ さ ま ざ ま な 知 覚 に 対 す る 主 観 的 な 意 識 を 感 情 と い う 。・ ・ ・ こ れ に 対 し て 情 動 は 、何 ら か の 情 報 を 与 え ら れ た 時 や 欲 求 が 満 た さ れ な か っ た 場 合 や 阻 止 さ れ た 時 な ど に 心 や 身 体 は 動 揺 し た 状 態 に な る 。こ う い っ た 状 態 が 情 動 で あ り 、情 動 に は 必 ず 、身 体 的 表 出 や 生 理 的 反 応 を 伴 う 」( 1 9 9 1 , p . 8 0 ) と 述 べ て い る 。 鈴 木 は 、 個 人 の 持 つ 23 独 自 の 感 情 的・情 動 的 傾 向 を 表 す 用 語 と し て「 パ ー ソ ナ リ テ ィ ー 」 を用いている。 Scovel(1978)は 、 感 情 と は 、 性 格 を 創 り 出 す 複 雑 , か つ 不 思 議な化学反応の1つの要因であると、表現している。 Krashen( 1985) が 唱 え る affective filter の 訳 語 で あ る 情 意 フ ィ ル タ ー の「 情 意 」が 、応 用 言 語 学 の 世 界 で は 、情 動 と 類 似 の 意 味 合 い で 広 く 使 わ れ て い る 。 K r a s h e n は 、「 学 習 場 面 に お い て 情 意 フ ィ ル タ ー が 高 い と 、言 語 入 力 や 言 語 運 用 が う ま く い か な い 場 合 が あ る 。従 っ て 、情 意 フ ィ ル タ ー を 下 げ れ ば 集 中 力 が 上 が り 、 効 果 が あ る 」 (pp.3-4)と 述 べ て い る 。 こ の よ う に 、研 究 者 の 間 で 、情 動 や 感 情 、情 意 な ど 、言 葉 の 使 い 方 も 異 な り 、そ れ ら の 定 義 も 、必 ず し も 一 致 し て い な い 。し か し な が ら 、注 目 す べ き は 、情 動 が 人 間 と し て の 活 動 、行 為 に 影 響 を 及 ぼ す 或 い は 反 映 さ れ る と い う 共 通 認 識 で あ る 。人 間 の 感 情 や 心 理 全 般 を 外 部 か ら 観 察 す る の は 極 め て 困 難 で あ る が 、そ の 一 部 で あ る 情 動 に つ い て は 、人 間 の 行 動 や 発 言 、反 応 の 根 底 に あ る 心 の 働 き と し て 、表 情 や 反 応 、動 作 な ど の 具 体 的 な 行 動 を 通 じ て 、 客観的な観察が可能であるとの見解である。 こ の よ う な 視 点 か ら 、情 動 が 外 国 語 学 習 と 関 連 性 が あ る の か ど う か 、関 連 が あ れ ば ど の よ う な 情 動 が ど の よ う に 影 響 を 及 ぼ す の か を 追 及 す る 事 は 、外 国 語 学 習 に つ い て こ れ ま で と は 異 な る 視 点で考察してみる機会となるものと確信する。 情動が外国語学習に及ぼす影響について実証的な研究は情 動 の 一 要 素 で あ る 不 安 に 限 定 し た も の が ほ と ん ど で あ る 。数 少 な い事例として Dörney ( 2005 ) は 、 不 安 以 外 に 自 己 効 力 感 ( Self-efficacy) を 影 響 要 素 と し て 言 及 し 、 Scovel も 、 不 安 だ け が 影 響 要 因 で は な い と 述 べ て い る 。情 動 と 第 二 言 語 習 得 の 関 係 性 に つ い て の 研 究 に は 、心 理 学 、神 経 言 語 学 、更 に は 最 近 の 先 進 技 術を駆使した脳と言語の関係を含む幅広い領域が関連しており、 24 全 体 像 を つ か み 実 証 す る の は 容 易 で は な い 。視 野 に 入 れ る べ き は 、 言 語 学 習 過 程 で 起 こ る 人 の 心 、感 情 の 動 き は 不 安 に 限 ら ず 、も っ と 多 面 的 に 捉 え る 必 要 が あ る と い う 点 で あ る 。情 動 と 第 二 言 語 と の 関 係 に つ い て の 研 究 は 海 外 で は 1950 年 代 に さ か の ぼ り 、 特 に 1970 年 以 降 盛 ん に な る が 、 日 本 で の 研 究 は さ ほ ど 多 く な い 。 人 間 に は さ ま ざ ま な 情 動 が あ る が 、具 体 的 に ど の よ う な 情 動 が 言 語 に ど の よ う に 影 響 す る の で あ ろ う か 。本 章 で は 、言 語 に 影 響 を 及 ぼす可能性のある変動因子としての情動の中身について、 Brown(2000), Larsen-Freeman and Long(1991), Skehan(1998), McLaughlin(1985), Dörney( 2001) 他 の 研 究 を 参 考 に 情 動 を 不 安以外の要素を含め多面的、包括的に捉えて考察する。 情 動 の 要 素 に つ い て は 、 主 と し て Brown( 2000) の 研 究 を 参 考 に 、数 名 の 被 験 者 と の 面 談 で 主 要 な 情 動 要 素 を 事 前 に 列 挙 し て も ら っ た 。そ の 結 果 、B r o w n( 2 0 0 0 )の 指 摘 す る s e l f - e s t e e m ( S E ) , risk-taking(RT), anxiety(AN), empathy(EM), inhibition(IH), extroversion(EX) と い う 6 つ の 情 動 に 加 え 、 Larsen–Freeman, Skehan ら が 指 摘 す る introversion(IN) と tolerance(TR)を 追 加 し 、被 験 者 に 共 通 す る 主 要 な 8 つ の 情 動 要 素( 自 尊 心 、危 険 負 担 、 不安、共感、抑制、外向性、内向性、寛容性)とした。更に、学 内 外 大 学 院 生 10 名 に 対 し 、 8 つ の 要 素 選 択 に つ い て ヒ ア リ ン グ し 、妥 当 性 を 確 認 し た 。 ( 本 論 文 で は 以 降 、そ れ ぞ れ の 要 素 を S E 、 R T 、 A N 、 E M 、 I H 、 E X 、 I N 、 T R と 略 称 す る )。 こ れ ら 8 つ の 情 動要素について特徴と定義については本章の 2 節 4 項で詳細を述 べる。 情 動 に つ い て は 、以 下 に 言 及 す る よ う に 本 研 究 に 参 考 と な る 、 視点の異なるさまざまの理論がある。それらを参考にしながら、 学習者の情動がコミュニケーション力に及ぼす影響を検証して いく。 先 ず 、学 習 を 含 め 人 間 の あ ら ゆ る 行 動 を 左 右 す る 要 素 と し て 25 G o l e m a n( 1 9 9 5 )は 情 動 を あ げ て い る 。し か し な が ら 、情 動 あ る い は 人 間 の 気 持 ち 、感 情 、心 の あ り 様 は 状 況 に よ り 変 化 し 、と ら えどころがなく、態度、表情、言語による表現などに表れるが、 そ れ が ど の レ ベ ル な の か 、ど の よ う に 人 間 の 行 動 、活 動 に ど の よ う に 影 響 し て い る か 、し か も 個 人 差 が あ る た め 、全 体 像 を 把 握 す る 事 は 難 し い 。最 近 の 科 学 の 進 歩 に よ り 、脳 波 の 動 き や 脳 内 温 度 の 変 化 な ど か ら 、人 間 の 心 の 動 き と 脳 の 反 応 、変 化 に 関 す る デ ー タを収集できるようにはなってきている。 思 考 ・ 判 断 な ど の 情 報 処 理 は 前 頭 葉 で 行 わ れ る が 、情 動 に 関 す る 情 動 処 理 は 感 情 の 中 枢 で あ る 扁 桃 体 で 行 わ れ る 。不 安 、恐 怖 、 怒 り な ど の 感 情 は 扁 桃 体 の 活 動 が 低 下 し 、海 馬 も 萎 縮 し て い る 状 態 に あ る と 考 え ら れ て い る 。情 動 を 司 る 扁 桃 体 が 記 憶 や 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 影 響 す る と い う 理 論 を も と に 、 Kagan and K a g a n は 不 安 や 恐 怖 を 与 え な い よ う な 指 導 法 を 提 唱 し て い る( 林 , 2 0 11 , p p . 9 0 - 9 1 参 照 )。 扁 桃 体 と は 、脳 内 で 情 動 を 司 る 中 枢 で あ り 、特 に 不 安 や 恐 怖 と い っ た 感 情 に 深 く か か わ っ て い る 。扁 桃 体 の 活 動 が 低 下 す れ ば 、 感情や対人コミュニケーションへの障害がおこるとされている。 脳 科 学 者 の 茂 木 は 、感 情 に つ い て「 現 代 の 脳 科 学 で は 、感 情 は 理 性 に よ っ て 抑 え 込 ま れ る べ き 単 純 で 原 始 的 な 衝 動 で は な く 、人 間 の 知 性 の も っ と も 高 度 な レ ベ ル に 至 る ま で 世 界 を 秩 序 付 け 、意 味 づ け る 際 本 質 的 な 役 割 を 果 た す 、あ る 意 味 で は 最 も 高 度 な 脳 の 働 き の 一 部 と み な さ れ る よ う に な っ て い る 」 ( 2005, p.69) と 述 べ ている。 将来的には、脳神経科学や神経言語学の進歩・融合により、 言 語 習 得 の 過 程 、情 動 と 言 語 の 関 係 な ど に つ い て も 克 明 に 解 き 明 か さ れ る 時 が 来 る で あ ろ う が 、一 朝 一 夕 に 解 決 で き る ほ ど 容 易 な 問題とは思えない。 し か し な が ら 、先 進 的 脳 科 学 技 術 を 駆 使 す る 以 前 に 調 査 の 手 26 法として何をどのように組み合わせるかで情動と言語の関係を 統 計 的 に 検 証 す る こ と は 可 能 で あ る 。何 を ど の よ う に 組 み 合 わ せ る か に つ い て 、田 中・春 原 は 、性 格・情 緒 要 因 と 対 象 と の 相 関 を 測 る 場 合 、 次 の よ う に 分 類 し て い る ( 2 0 0 6 , p . 1 2 1 )。 (1) 言 語 能 力 や 言 語 行 動 に 属 す る も の : 外 向 性 や 内 向 性 と 読 解・文法との相関 (2) 学 習 の 態 度 に 属 す る も の : 危 険 負 担 と 授 業 へ の 参 加 度 お よ び発音の正確さの相関 (3) 学 習 や 教 育 の 環 境 に か か わ る も の : 適 性 ・動 機 と 不 安 の 相 関 本 論 文 は 、第 1 章 で 述 べ た よ う に 情 動 8 つ の 要 素 と C E F R を 組 み 合 わ せ て 、学 習 者 の 心 理 的 側 面 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 関 係を統計的に分析する事例であり、上記の3つの分類に属さず、 こ れ ま で に な い 新 し い 視 点 に よ る 組 合 せ で あ る 。本 調 査 研 究 は 実 証的アプローチの一つとして試みる。 2.2 コミュニケーションとは何か 本研究が情動は第二言語によるコミュニケーション力にど の よ う に 影 響 す る の か を テ ー マ に す る に あ た り 、日 常 的 に し ば し ば使用されるコミュニケーションという用語が何を意味するの かその概念、定義を明らかにしておく。 コミュニケーションという用語は日常的に使用されると同 時 に 専 門 用 語 と し て 使 用 さ れ る 場 合 、多 様 な 意 味 が 含 ま る 。そ れ に つ い て 塚 本 ( 1985) は 15 の 概 念 群 に 整 理 統 合 し て い る 。 例 え ば 、 英 語 学 習 に 関 し 小 学 校 学 習 指 導 要 領 に 記 載 さ れ て い る 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 基 礎 と な る 云 々 」や 、 今 日 、 日 本 が 必 要 と し て 27 い る「 国 際 舞 台 で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 出 来 る 」人 材 と い う コ ン テ キ ス ト で 使 用 さ れ て い る 意 味 は 、塚 本 の 概 念 群 の う ち 、主 と し て以下の6つが単独に又は同時に含まれると考えるのが妥当で あろう。 (1) シ ン ボ ル ・ 言 語 、 会 話 を 中 心 と す る も の : コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンとは言語による思想や観念の交換である。 (2) 理 解 を 中 心 と す る も の : コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は 、 わ れ わ れ が 他 者 を 理 解 す る プ ロ セ ス で あ り 、ま た 他 者 に 理 解 さ れ ようとする試みである。 (3) 相 互 行 為 ・ 関 係 ・ 社 会 過 程 を 中 心 と す る も の : 生 物 的 レ ベ ルにおいて相互行為は一種のコミュニケーションであり、 それなしには共通の行動は生じない。 (4) 不 確 実 性 の 現 象 を 中 心 と す る も の : コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 不 確 実 さ を 減 少 さ せ て 効 果 的 に 行 動 し 、エ ゴ を 防 御 し 且 つ 強める必要性から生じる。 (5) プ ロ セ ス を 中 心 と す る も の : コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は 、 シ ンボル(言葉、絵、数字、グラフ)を使って情報、観念、 情感、技術などを伝達することである。 (6) 移 動 ・ 伝 達 ・ 交 換 を 中 心 と す る も の : こ の 考 え は 、 あ る 事 柄 の 移 動 、移 動 の 手 段 、移 動 の プ ロ セ ス に 基 づ く も の で あ る 。多 く の 場 合 、移 動 し た 情 報 は 、依 然 と し て 相 互 に 共 有 さ れ て い る 。し た が っ て 、「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 と い う 言 葉 は 、 「 共 有 す る 」 と い う 意 味 も 含 ん で い る ( p p . 9 - 1 0 )。 八 島( 2 0 0 8 ) は 、 こ れ に 対 し て 、 代 表 的 な 定 義 と し て 3 つ の キ ー ワ ー ド を 使 っ て 説 明 し て い る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 第 一 に 「 他 者 に 対 し て 存 在 す る こ と 」 で あ り 、他 者 を 意 識 し た 時 に 生 じ る 人 間 の 認 知 、行 動 、情 動 の 変 化 が 深 く か か わ る も の と し 、更 に コ 28 ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 「意 味 の 共 有 」、 あ る い は 「共 通 の 意 味 を 構 築 す る 」こ と と し て 第 二 の キ ー ワ ー ド で 解 説 し て い る 。 第 3 の キ ー ワ ー ド は 、「相 互 作 用 」で あ り 、互 い に 影 響 を 与 え あ う こ と 、相 手 の 反 応 に 合 わ せ て 自 分 の 反 応 を 変 え 、そ れ を 受 け て 相 手 も ま た 反 応するという動的に変化するプロセスであると定義している (pp.2-3)。 八 島 の 概 念 定 義 は 正 に 、 国 際 社 会 で 日 本 人 が 必 要 と す るグローバル・コミュニケーション力である。 B r o w n も 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に つ い て 上 述 の 塚 本 と 同 様 の 概 念 を 含 め た 意 味 合 い で 、 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 相 手 に 対 す る 高 度 の 共 感 が 伴 う 。効 果 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を す る に は 相 手 の 情 意 、認 知 の 状 態 に 対 す る 理 解 が 必 要 で あ る・・・特 に 口 頭 によるコミュニケーションは聞き手から即座にフィードバック が あ る た め 、と も に 共 感 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に い た る の は 比 較 的 容 易 で あ る 。書 き 言 葉 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 認 知 的 共 感 と も 言 う べ き 特 別 な も の が 必 要 で あ る 。書 き 手 は 、読 み 手 か ら の 即 座 の フ ィ ー ド バ ッ ク は な い た め 、明 確 な 共 感 的 直 感 と 読 み 手 のマインドや知識構造を判断しながら考えをコミュニケーショ ン し な け れ ば な ら な い 」(2000, p.153)と 述 べ て い る 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 ( communicative competence) に つ い て 、 Canale and Swain( 1980, pp.1-31) は 次 の 様 に 分 類 し ている。 ① 文 法 能 力 ( g r a m m a t i c a l c o m p e t e n c e ): 言 語 体 系 を 習 得 し 、 運 用 す る 能 力 で あ る 。言 語 の 語 彙 、語 形 、構 文 、音 声 を 理 解 し 、文 法 構 造 を 正 確 、か つ 迅 速 に 使 用 す る 能 力 で あ り 、流 暢 さにとって重要な要素である。 ② 社 会 言 語 能 力 (sociolinguistic competence):言 語 が 利 用 さ れ る社会的文脈を理解し、適切に言語を使用する能力である。 対 話 参 加 者 の 役 割 、共 有 す る 情 報 、相 互 交 渉 の 機 能 を 理 解 す 29 ることである。 ③ 談 話 能 力 ( discourse competence) :意 味 の あ る 全 体 を 組 み 立 て 、与 え ら れ た 文 脈 に 関 連 の あ る 一 貫 し た 話 題 を 形 成 す る た め に 、一 連 の 発 話 を 解 釈 し た り 、創 造 し た り す る 能 力 で あ る。 ④ 方 略 的 能 力( strategic competence):対 処 能 力 で あ り 、自 分 の 能 力 の 限 界 に 対 処 す る こ と 、背 景 的 知 識 を 利 用 し て 意 味 を 理 解 す る ト ッ プ ダ ウ ン 過 程 と 、単 語 、句 、文 か ら 意 味 を 理 解 していくボトムアップ過程とのふたつの方略がうまく使え る能力であるとしている。 Canale and Swain の 分 類 す る こ れ ら の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力がうまく組み合わさって十分に発揮されれば問題ないので あ る が 、そ う な ら な い 現 実 が 多 い 。そ れ に は 何 等 か の 要 因 が あ る と 思 わ れ る 。筆 者 は そ の 要 因 と し て 学 習 者 の 情 動 の 影 響 が あ る の ではないかと考える。 Wi d d o w s o n( 1 9 7 8 )は 、 「 言 語 能 力( c o m m u n i c a t i v e a b i l i t y ) に は 、 言 語 技 能 ( linguistic skills) が 含 ま れ て お り 、 後 者 の 習 得 な く し て 前 者 が 習 得 さ れ る こ と は な い が 、ど の よ う に す れ ば 技 能 が 能 力 に 関 連 づ け ら れ 、言 語 運 用 に 関 連 づ け ら れ る か が 問 題 で あ る と 指 摘 し て い る 」 (東 後 ・ 西 出 邦 訳 , 1991, p.85)。 一 方 、 S a v i g n o n は 、「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は 、 連 続 し て 表 現 し 、 理 解 し 、 交 渉 を 行 う プ ロ セ ス で あ る 」 (1983, pp.8-9 )と 定 義 し て お り 、 communicative competence と communicative performance を 理 論 的 に 区 別 し て い る 。 前 者 は “ presumed u n d e r l y i n g a b i l i t y ” で あ り 、“ C o m p e t e n c e i s w h a t o n e k n o w s . ” に 対 し 、“ P e r f o r m a n c e i s w h a t o n e d o e s . ” と し て い る 。 更 に 、 Savignon は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 言 語 に よ ら ず 、 態 度 、表 情 、口 調 な ど 人 が 表 現 す る す べ て を 含 む と し て い る が 、本 30 論文では 上 述 に 指 摘 し て い る communicative performance を 外国語によるコミュニケーション力に限定して議論していく。 本 来 、上 述 の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 定 義 は 第 二 言 語 で あ ろ う が 、母 語 で あ ろ う が 共 通 し て あ て は ま る が 、明 確 に し て お く 点 は 、本 研 究 は 情 動 と 第 二 言 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 関 連 性 に つ い て 論 じ て お り 、日 本 人 学 習 者 に と っ て は 主 と し て 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 焦 点 を 当 て る 。従 っ て 、比 較 的 自 在 に 言 葉 を 選 択 し 、表 現 で き る 母 語 の 場 合 と く ら べ て 、情 動 の 影 響 は い っ そ う 大 き い も の と 予 測 さ れ 、外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 場 合 、E F L の 言 語 環 境 で あ れ ば 、な お 一 層 乗 り 越 え る壁は高い。 学 校 教 育 で 期 待 さ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と は 、自 分 の 考 え を 明 確 な 論 旨 に 整 理 し 、そ れ を 正 し く 相 手 に 伝 え 、相 手 が 考 え て い る こ と を 正 し く 理 解 し 、さ ら に や り 取 り を 発 展 さ せ て い く 能 力 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 で あ ろ う 。情 動 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 育 成 、ひ い て は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 成 否 に 強 い 影 響 を 与 え る の で あ れ ば 、良 い 影 響 を 与 え る よ う な 情 動 を 学 習 者 か ら 上 手 に 引 き 出 せ る よ う な 学 習 環 境 と 指 導 法 を 導 入 し 、定 着 さ せ る こ と が 日本人のコミュニケーション力向上の鍵を握っているものと考 え る 。「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 素 地 を 養 う 」 こ と を 目 標 と し て い る 小 学 校 へ の 英 語 教 育 導 入 に 際 し て は 、と り わ け 、こ れ ま で 見過ごされがちであった情動に焦点を当てた指導法が必要であ ろう。 2.3 情 動 に 関 す る 先 行 研 究 情 動 に 関 す る こ れ ま で の 研 究 は 、情 動 の 一 要 素 で あ る 不 安 に 限 定 し た も の が 主 体 で あ る 。実 証 的 な 研 究 と な る と ほ と ん ど な い と 言 え よ う 。 但 し 、 D ö r n y e i( 2 0 0 5 ) は 調 査 及 び 実 際 の 授 業 体 験 31 か ら 、 不 安 だ け で な く 、 自 己 効 力 感 ( self efficacy) の 要 素 を 学 習 の 動 機 付 け を 高 め る 要 素 と し て あ げ て い る 。 Dörnyei( 2005) に よ る 情 動 と 第 二 言 語 の 関 係 に つ い て は 、第 2 章 3 節 2 項 で ふ れ る。 情 動 と 言 語 習 得 に つ い て は 、古 く は 1 9 5 0 年 代 に さ か の ぼ り 、 特 に 1970 年 代 以 降 欧 米 で 研 究 が お こ な わ れ て き た 。 今 日 主 流 と なっているのは社会心理学的視点で議論されている理論である が 、こ れ ま で の 研 究 の 論 点 を 以 下 に ま と め 、本 研 究 論 文 の 参 考 と する。 2.3.1 第二言語習得と情動との関係 社 会 心 理 学 者 で あ る Goleman は 「人 間 は 情 動 の 生 き 物 で あ る 。す べ て の 思 い 、行 動 に 情 動 が 表 れ 、わ れ わ れ は 情 動 に 影 響 さ れ て い る 」( 1 9 9 5 , p . 2 8 9 )と 述 べ て お り 、彼 は 情 動 を 人 間 の 感 情 、 明 確 な 思 い 、心 理 的 、生 物 学 的 状 態 、行 動 の 性 癖 を 表 す も の で あ ると定義している。 Asher ( 1981) は 、 第 二 言 語 習 得 に つ い て ス ト レ ス の 側 面 から、学習する行為と学習の間にはストレスが邪魔をしており、 ス ト レ ス が 少 な い ほ ど 学 習 効 果 は 上 が る と 考 え て い る 。A s h e r の こ の 考 え に 近 い も の に Krashen の 情 意 フ ィ ル タ ー 説 が あ る 。 Krashen( 1985, pp.3-4) は 、 第 二 言 語 習 得 過 程 に お い て 5 つ の イ ン プ ッ ト 仮 説 を 立 て て お り 、そ の 中 の 一 つ に 情 意 的 要 因 が 大 き く 作 用 す る と い う 情 意 フ ィ ル タ ー 仮 説 (Affective Filter Hypothesis)を 立 て て い る 。 Krashen は emotion を 情 意 フ ィ ル タ ー と い う 用 語 で 表 現 し て お り 、学 習 者 は 学 習 場 面 に お い て 情 意 フ ィ ル タ ー が 高 く 遮 断 作 用 し て い る 場 合 、言 語 入 力 や 言 語 運 用 が う ま く い か な い と し て い る 。つ ま り 、情 意 フ ィ ル タ ー を 下 げ 、遮 断 さ れ て い る 状 態 か ら 解 放 す れ ば 、集 中 力 が 上 が り 、効 果 が あ る と している。 32 K r a s h e n は 、言 語 学 習 す る 際 、情 意 フ ィ ル タ ー が 理 解 可 能 な イ ン プ ッ ト ( Comprehensible Input: CI) を 受 け 入 れ る よ う 開 い て い れ ば 、聞 く こ と も 読 ん で 理 解 す る こ と も で き る 。情 意 フ ィ ル タ ー が 開 き 、学 習 者 が 失 敗 を 気 に せ ず 、ク ラ ス の 中 で 受 け 入 れ られ、十分やっていけると感じる場合に初めて言語獲得装置 ( L a n g u a g e A c q u i s i t i o n D e v i c e : L A D )が 働 く と し て い る( 2 0 0 0 , pp. 37-39)。 K r a s h e n の 情 意 フ ィ ル タ - 説 は 、動 機 や 、自 信 、不 安 な ど を 含 む さ ま ざ ま な 要 素 は 、原 因 で は な く 、促 進 す る 働 き を す る と の 考 え 方 で あ る 。動 機 が 薄 く 、自 尊 心 が 低 く 、不 安 に 駆 ら れ て い る な ど の 状 態 で は 、フ ィ ル タ ー が 上 が り 、精 神 的 な 遮 断 を 作 り あ げ 、 そ れ に よ り 、C I が L A D に 届 か な い た め に 言 語 獲 得 が う ま く い か ない。否定的な情意の状態、つまりフィルターが高い状態では CI が う ま く 働 か な い 。 し た が っ て 、 肯 定 的 な 情 意 の 状 態 に す る ことが、第二言語習得の過程で重要であるとしている。 第二言語習得について心理的側面から調査研究している研 究 者 に Bailey (1983)が お り 、 情 動 要 素 の う ち 「 不 安 」 が ど の よ う に 影 響 す る か を 学 習 者 に Journal ま た は Diary を 描 か せ る 事 に よ り 、学 習 者 の 心 の 内 を 理 解 し 、効 果 的 な 指 導 に 結 び つ け る 質 的 研 究 を し て い る 。 し か し な が ら 、 Bailey の 研 究 は 、 学 習 者 が 記 録 す る diaries に 頼 り す ぎ て お り 、 こ の 場 合 、 必 ず し も 研 究 者 が求めている内容に一致するものではない可能性がある。逆に、 Bailey の 実 際 の 研 究 に 引 用 さ れ て い る よ う に 正 に 研 究 者 が 必 要 と す る 情 報 ば か り で あ っ て は 、 diaries 記 載 に つ い て 何 ら か の 意 図 的 な 方 向 づ け が あ っ た の で は な い か な ど 、懐 疑 的 疑 問 を 持 っ て し ま う 。 Bailey の 論 文 で あ る Competitiveness and anxiety in adult second language learning: looking at and through the diary か ら は 特 に こ の 疑 問 が 強 く 起 こ る 。 結 局 の と こ ろ 、学 習 者 に は 不 安 と 競 争 心 が あ り 、そ れ が プ ラ 33 ス に も マ イ ナ ス に も 作 用 す る と い う 指 摘 に つ い て は 、学 習 者 の 心 情 の 記 録 か ら 察 す る こ と は 出 来 る が 、研 究 と し て は 、B a i l e y の よ う に 質 的 ア プ ロ ー チ だ け で は 、説 得 性 に か け る 。こ れ に 加 え 、量 的 分 析 が 加 わ れ ば 、納 得 の い く 内 容 に な る も の と 考 え る 。し た が っ て 、本 論 文 で は 学 習 者 の 自 由 記 述 や 言 語 学 習 に 関 す る 背 景 情 報 を も と に し た 質 的 研 究 と 、数 値 化 し た 量 的 研 究 の 2 段 構 え の ア プ ロ ー チ を 取 る こ と と す る 。さ ら に 、質 的 な 側 面 に 関 し て は 、社 会 心理学的観点及び認知的側面からも合わせて検討する。 2.3.2 社会心理学的観点から捉えた情動 S c o v e l( 1 9 7 8 )も 学 習 者 の 心 理 的 側 面 か ら 研 究 し て お り 、情 動要素について次のように述べている。 Scovel は 、 不 安 は 、 第 二 言 語 習 得 と の 関 係 を 調 査 す る 場 合 、 先 ず 、学 習 者 に 内 在 す る 変 動 要 因 の 一 つ の 情 動 要 素 に 過 ぎ な い こ と を 認 識 す べ き で あ る と 指 摘 し て い る 。実 際 、こ れ ま で の 研 究 に は 不 安 だ け を 取 り 上 げ て い る 例 が 多 く み ら れ る が 、人 間 と し て 多 面的な感情、気持ち、心を持つ学習者の一面のみを限定しては、 実 態 を 捉 え て い な い も の と 考 え る 。そ の 意 味 で 、S c o v e l の 指 摘 す る外国語言語学習に影響を与える変動要因が不安だけでないと い う 視 点 は 、8 つ の 情 動 要 素 を 取 り 上 げ た 本 研 究 に 示 唆 と な る も のである。 Dörnyei (2001)は 、 単 な る 情 動 と は 異 な る 視 点 で 言 語 習 得 に 影 響 す る 要 素 を と り あ げ て い る 。 「動 機 づ け 」の 視 点 で あ り , 「動 機 づ け 」が 人 間 の 心 の 最 も 基 本 的 な 側 面 の 一 つ に 関 係 し 、 学 習 場 面での成功或いは失敗を決定づける際にきわめて重要な役割を 持 つ と 唱 え る 。こ の「 動 機 づ け 」だ け で も 研 究 テ ー マ と し て 様 々 に と り あ げ ら れ て お り 、学 習 者 の 心 の 問 題 に 関 わ る 点 で 、本 研 究 で 情 動 の 影 響 を 検 証 し て い く 際 、参 考 と な る 視 点 で あ る 。興 味 深 い 点 は 、 Dörnyei は 「 動 機 づ け 」 が 「言 語 に 関 す る 自 信 」の 上 位 シ 34 ス テ ム で あ る と い う Clément 他 (1980, 1994)の 考 え を 支 持 し 、 実際の授業経験と調査に基づき動機づけを高める指導実践を図 2-1 の 様 に ま と め て い る 。 学 習 者 の 心 の 面 を 取 り 上 げ 、 そ れ に 対 応 し た 実 践 的 な 提 言 を し て い る 数 少 な い 研 究 で あ る 。D ö r n y e i が こ こ に ま と め て い る の は 、学 習 者 の 動 機 を 高 め る た め の 根 底 に あ る肯定的な情動をもたらす為に指導者が実際の教育の現場で取 り入れるべき事例である。教室での学習環境や、指導者の態度、 指 導 法 等 が 学 習 者 自 身 の 根 底 に あ る 情 動 に 肯 定 的 に 影 響 し 、そ の 結果、動機づけを高めるとしている。 学 習 者 の 気 持 ち を 肯 定 的 に 持 っ て い く た め に 、指 導 者 の 態 度 を 含 め メ ン タ ル な 教 育 環 境 を 整 え る 方 向 で の 提 言 で あ り 、日 本 で の教育現場でもとりあげていくべき指導実践内容である。 (Dörnyei, 2001, 邦 訳 米 山 朝 二 ・ 関 昭 典 , 2005, p.32) 35 動機づけの基礎的な環境の創造 ・教師が適切な行動をとる。 ・教室内に楽しい、支持的な雰囲気を醸成する。 ・ 適 切 な 集 団 規 範 を 持 っ た 、結 束 的 学 習 集 団 を 育 て る 。 肯定的な追観 3 ) 学習開始時の動機づけの喚起 自己評価の促進 ・動機づけを高めるような追観を促進 ・L2に関連する好ましい価値観と する。 態度を強化する。 ・動機づけを高めるようなフィード ・学習の成功への期待感を高める。 バックを与える。 ・目標志向性を強化する。 ・学習者の満足感を高める。 ・教材を学習者にとって関連の深い ・動機づけを高めるような報酬を与え、 ものにする。 成績評価をする。 ・現実的な学習者信念を育てる。 動機づけの維持と保護 ・学習をワクワクして楽しいものにする。 ・動機づけを高めるようにタスクを提示する。 ・明確な学習目標を設定する。 ・学習者の自尊感情を大切にし、自信を高める。 ・肯定的的な社会的心象を維持させる。 ・学習者自立性を育む。 ・自己動機づけストラテジーを推奨する。 ・仲間同士の協力を推奨する。 図 2 -1 動機づけを高める指導実践 ( 出 典 : Dörnyei 2001, 邦 訳 米 山 朝 二 ・ 関 昭 典 , 2005) 36 2 章 4 節 に お い て 情 動 の 要 素 、特 徴 、定 義 の 詳 細 を 述 べ る が 、 基本的に情動には肯定的な情動と否定的な情動があると考える。 肯 定 的 な 情 動 と は 、概 念 的 に は 、自 尊 心 ,共 感 、外 向 性 、寛 容 性 で あ る 。否 定 的 な 情 動 と は 不 安 、抑 制 で あ り 、肯 定 と 否 定 の 両 面 を 持 っ て い る 情 動 は 危 険 負 担 、内 向 性 で あ る と 考 え る 。危 険 負 担 の 両 面 性 と は 、危 険 負 担 を し な い こ と が 、否 定 的 な 情 動 、つ ま り 、 間 違 い を す る こ と を 避 け る た め 、あ え て 、挑 戦 す る こ と を し な い こ と で あ る 。一 方 、失 敗 を 恐 れ ず 、挑 戦 し 、失 敗 か ら 学 ぶ こ と が 出 来 れ ば 、危 険 負 担 は 肯 定 的 情 動 に な る 。内 向 性 は 言 語 技 能 の 内 、 reading や writing に は 、必 ず し も 否 定 的 な 情 動 で は な い が 、相 手 と の 対 峙 を 必 要 と し 、相 手 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 欠 か せ な い speaking 、 特 に CEFR に お け る 言 語 技 能 分 類 の spoken interaction、 spoken production に お い て は 、 有 利 と は 言 え ず 、 むしろマイナスの情動と考える。林は, 内向性について次のよ う に 述 べ て い る 。「 日 本 人 は 内 向 的 で あ る と よ く い わ れ る 。 内 向 的 な 性 格 で あ っ て も 文 法 規 則 を 把 握 し た り 、語 彙 を 覚 え た り 、話 を 聞 い て 、読 ん で 理 解 す る こ と は 、出 力 よ り 入 力 を 多 く し 反 応 的 よ り 思 索 的 で 、 感 覚 的 よ り 想 像 的 で 、・ ・ ・ よ り 深 く 集 中 的 で あ るため内向的な性格が外向的性格より劣るということはない」 ( 2 0 0 4 , p . 1 5 )。 これらの要素がどのように外国語学習に影響を及ぼすかは、 調 査 結 果 を 基 に 第 5 章 で 詳 細 を 述 べ る 。動 機 づ け に つ い て は 、き わ め て 多 く の 研 究 で 取 り 上 げ ら れ て お り 、本 論 文 は 、Dörnyei の 動 機 づ け 論 の 下 位 概 念 と し て の 情 動 に 焦 点 を 当 て る た め 、動 機 づ けに関する詳細なる議論は今後の研究課題とする。 本 論 文 で 取 り 上 げ る 8 つ の 情 動 要 素( 自 尊 心 、危 険 負 担 、不 安、共感、抑制、外向性、内向性、寛容性)のうち、自尊心は上 記 の Dörnyei の 動 機 づ け を 高 め る 指 導 実 践 で は 英 語 で は self-efficacy ( 自 己 効 力 感 ) ま た は self-confidence( 自 信 ) が 37 使 用 さ れ て い る 。こ の 表 現 は 、本 研 究 で 使 用 し て い る s e l f - e s t e e m ( 自 尊 心 )、 児 童 心 理 学 で 使 用 さ れ る 自 己 肯 定 感 ( 榎 本 、 2 0 1 0 ) と 同 義 で あ る と 解 釈 す る 。 Dörnyei は 自 尊 心 を 「 建 物 の 土 台 」 の よ う な も の と 称 し て お り 、言 語 に か か わ る 不 安 や 恐 れ は 動 機 づ け と 達 成 感 を 阻 害 す る 最 重 要 な 要 因 と し て い る 。本 研 究 で 取 り 上 げ る 情 動 要 素 の う ち 、K r a s h e n ら が 指 摘 す る よ う に 、不 安 が 軽 減 さ れ、自尊心が高くなれば 上位概念としての動機づけが高まり、 結 果 と し て 、言 語 習 得 に 効 果 が あ る と い う 理 論 は 方 向 性 と し て は D ö r n y e i と 共 通 し て い る 。そ れ を ど の よ う に 実 証 す る か が 本 研 究 で取り上げるところである。 社 会 心 理 学 者 で あ る Goleman は 情 動 を 言 語 学 習 に 限 ら ず 人 間 の「 不 安 や 怒 り 、意 気 消 沈 し て い る 状 態 で は 、学 習 者 は 情 報 を 効 率 よ く 受 け 入 れ ら れ な い し 、処 理 す る こ と が 出 来 な い 」 ( 1995, p.78 ) と 述 べ て い る 。 ま た 「 情 動 は 理 性 よ り は る か に す ば や く 行 動 を 決 定 づ け る 」( 1 9 9 5 , p . 2 9 1 ) と し 、情 動 と 行 動 と の 間 に 働 く メ カ ニ ズ ム を 問 題 児 の ケ ー ス ス タ デ ィ ー に 適 用 し 、マ イ ナ ス の 情 動を制御しプラスに転じれば学習成果が上がるとしている。 Goleman は 、 IQ と 異 な り 、 日 本 で は 「心 の 知 能 指 数 」と 訳 さ れ て い る Emotional Intelligence( EI) を 提 唱 し て お り 、 EI と は 、自 分 の 本 当 の 気 持 ち を 自 覚 し 尊 重 し て 、心 か ら 納 得 で き る 決 断 を 下 す 能 力 、衝 動 を 自 制 し 、不 安 や 怒 り の よ う な ス ト レ ス の も と に な る 感 情 を コ ン ト ロ ー ル す る 能 力 、目 標 の 追 求 に 挫 折 し た 時 で も 楽 観 を 捨 て ず 、自 分 自 身 を 励 ま す 能 力 、他 人 の 気 持 ち を 感 じ 取 る 共 感 能 力 、集 団 の 中 で 調 和 を 保 ち 、協 力 し あ う 社 会 的 能 力 等 で あ る と し て い る 。 一 人 ひ と り 異 な る 情 動 に 対 応 し 、 こ の EI の 視 点 を 日 本 の 英 語 教 育 に 導 入 し 、そ れ ぞ れ の 持 て る 力 を 最 大 限 に 発揮できるようにできないものかと考える。 MacIntyre は 、 情 動 を 次 の よ う に 捉 え て い る 。 「情 動 は 動 機 づ け に 根 本 的 な 基 盤 と な り 、言 語 学 習 に と っ て 最 も 注 意 を 払 う べ 38 き も の で あ る 。動 機 づ け に 至 る 過 程 そ の も の が 情 動 で あ り 、動 機 づ け と 情 動 の 結 び つ き は 強 く 、複 雑 で 、驚 く べ き も の で あ る 。情 動がいかに動機づけの元になっているかは言語習得の文献の中 で き わ め て 過 小 評 価 さ れ て き た 。情 動 は 増 幅 器 と し て 機 能 し 、行 動 を 推 進 す る エ ネ ル ギ ー 、強 さ 、緊 急 性 を も た ら す 。情 動 は わ れ わ れ の す べ て の 活 動 を 前 向 き に 働 き か け る 。増 幅 器 と し て 機 能 す れ は 、情 動 は す べ て の 行 動 に 影 響 を 与 え る 。情 動 が 強 け れ ば 強 い ほ ど そ の 影 響 は 強 い 」 ( 2 0 0 2 , p p . 4 3 - 6 1 )。 正 に 、 こ の 視 点 で 、 情動が言語習得活動にどのように作用するかを本研究において 調査を通して検証していく。 R . C . G a r d n e r a n d L a m b e r t( 1 9 7 2 )は 第 二 言 語 学 習 の 過 程 に ついて社会心理学的視点から見ることに特別な意義があるとし、 長 年 の 研 究 を も と に 、彼 ら は 第 二 言 語 習 得 ま た は 外 国 語 学 習 に 関 す る 社 会 心 理 学 理 論 を 打 ち 立 て る 先 駆 け と な っ た 。彼 ら の 理 論 に よ る と 、学 習 す る 動 機 は 道 具 的 な も の と 、統 合 的 な も の が あ る が 、 統合的な場合の方がより一層、学習の動機は大きいとしている。 彼 ら は 、 モ ン ト リ オ ー ル の 高 校 生 ( 75 名 ) を 対 象 と し 第 二 言 語 ( フ ラ ン ス 語 )学 習 に お い て 、言 語 適 性 と 態 度 ・ 動 機 と の 関 係 性 に つ い て 調 査 し た 結 果 、新 し い 言 語 を 習 得 す べ く 長 期 間 に わ た っ て 動 機 の 高 さ を 維 持 し て い く に は 、単 に 目 の 前 の 現 実 的 な 必 要 性 か ら と か 、失 敗 す る の が 怖 い か ら だ と か と い っ た 道 具 的 動 機 で は 、 不 十 分 で あ る と の 見 解 を 出 し て い る 。し か し な が ら 、フ ィ リ ピ ン の 大 学 生 を 対 象 に し た R.C.Gardner and Lambert( 1959) の 研 究 で は 、態 度 と 動 機 が 第 二 言 語 習 得 に 大 き な 役 割 を 果 た す と 指 摘 し て お り 、こ の 調 査 で は 道 具 的 な 目 標 が 動 機 を 高 め る 強 力 な 促 進 剤 に な る と 報 告 し て い る (Larsen-Freeman and Long, 1991, 参 照 )。 結 局 の と こ ろ 、 そ の 後 の G a r d n e r の 研 究 で は 、 学 習 者 の 志 向(道具的動機か又は統合的動機)は、両親の態度に影響され、 統 合 的 動 機 は 、両 親 の 対 象 言 語 コ ミ ュ ニ テ ィ ー に 対 す る 好 意 的 態 39 度 に 育 成 さ れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。こ の 点 に つ い て は 、両 親 の 対 象 言 語 に 対 す る 態 度 や 言 語 形 式( 2 章 3 節 4 項 参 照 )だ け で な く 、今 日 で は 、更 に 広 い 意 味 で の 教 育 環 境 、経 済 を 含 む 社 会 環 境 、学 習 者 の 属 す る 社 会 の 価 値 観 な ど も 影 響 し て い る も の と 考 え る 。例 え ば 、日 本 で は 受 験 に パ ス す る と か 、一 流 企 業 に 就 職 す る と か で あ り 、ビ ジ ネ ス が グ ロ ー バ ル に 展 開 す る の に 伴 い 、ア ジ ア の 国 々 、特 に 韓 国 、中 国 、そ の ほ か 発 展 途 上 国 で は 、日 本 よ り は る か に 英 語 に 対 す る ニ ー ズ が 強 い 。英 語 が 自 由 に 使 い こ な せ な い と 、「 よ い 仕 事 に つ け な い 」 な ど の 雰 囲 気 が あ り 、 ま さ に 道 具的動機が経済中心の現代社会に浸透しているのが現実である。 韓国で は 、 国 際 的 な 競 争 力 を つ け る 上 で 、 外 国 語 、 特 に 英 語ができる人材の育成が不可欠であるという考え方から、 国家政策としての英語教育強化に取り組んでいる。韓国の 教育事情をまとめ、インターネットで発信している「韓国 の英語教育改革」によると、李明博大統領の新政権発足に 伴い、韓国では 2008 年 に 発 表 し た 英 語 教 育 改 革 を 推 し 進 めており、小・中・高で英語の授業を英語のみで行い高校 卒業段階で流暢な英語が話せるようにする計画である。そ の一環として、英語の授業を英語で行うことのできる英語 専 任 教 師 の 育 成 を 目 的 と し 、2 0 0 9 年 か ら 5 年 間 に 亘 り 、毎 年 3,000 人 ず つ 研 修 の 機 会 を 提 供 す る た め 4,800 億 ウ ォ ン ( 約 320 億 円 、 1yen=15won で 換 算 ) を 投 入 す る と い う 。 ( http://blog.goo.ne.jp/dive-gurukun/e/5827da64cf98c1e2164e27ecf e8b99cf) 実 際 、 英 語 圏 に お け る 英 語 教 育 研 修 2 ) に は 、公 費 による韓国の英語教師は参加者の約 3 分の 1 という圧倒的 な多数をしめており、しかもすでに英語運用能力、コミュ ニケーション力も極めて高い人材を派遣し磨きをかけてい る。韓国の意気込みがわかる実態である。これに対して、 「 英 語 が 使 え る 日 本 人 」 の 育 成 の た め の 戦 略 構 想 を 基 に 40 2008 年 ま で に そ の 体 制 づ く り を 目 指 し て い た 日 本 に 関 し 、 上述の韓国と対比できる数字として次のデータがある。本 年5月に開催された英語教育セミナー「新学習指導要領と 5 つ の 提 言 ( 2012) を 考 え る 」 に お け る 文 部 科 学 省 教 科 調 査官による基調講演資料によると、国の対応として英語教 員の資質向上/グローバル人材の育成のための制度として 「日本人若手英語教員米国派遣事業」を 2 0 11 年 度 か ら 開 始 し て い る 。 毎 年 100 名 を 英 語 教 員 の 指 導 力 、 英 語 に よ る コミュニケーション能力を高め、英語教育の充実を図るた め、若手英語教員を米国の大学に派遣する事業として機能 し て い る 。 た だ し 、 2012 年 度 の 予 算 額 は 2 億 4400 万 円 と なっており、前述の韓国の例とはスケールが大幅に小さい ことがわかる。 2.3.3 認 知 的 観 点 か ら 情 動 と 第 二 言 語 習 得 と の 関 係 Piaget( 1964) の 定 義 に よ る と 認 知 能 力 と は 、 知 覚 、 運 動 、 分 類 、関 連 づ け 、推 論 、適 用 な ど の 操 作 機 能 で あ る と し て い る ( 林 , 2 0 0 4 , p . 1 0 参 照 ) 。 Vy g o t s k y ( 1 9 6 2 : 柴 田 邦 訳 , 1 9 8 7 ) は 認 知 を 伝 達 、言 葉 の 意 味 づ け 、一 般 化 、理 解 、問 題 解 決 、概 念 形 成 で き る 能 力 と 定 義 し て い る 。こ れ ら の 認 知 能 力 を う ま く そ れ ぞ れ 機 能 させるための触媒の働きをするのが、情動ではないかと考える。 Vy g o t s k y の 考 え 方 か ら す る と 、「 人 は 、 模 倣 や 繰 り 返 し か ら 意 味 に 焦 点 を 当 て る よ う に な る 。社 会 的 相 互 作 用 と と も に 認 知 能 力 も 発 達 し 、状 況 に 応 じ で 判 断 や 関 連 づ け が 出 来 る よ う に な り 、徐 々 に 認 知 構 造 の 中 で 体 系 的 な 意 味 把 握 が で き る よ う に な る 」( 林 , 2 0 0 4 , p . 1 3 )。 林 は 、「 外 国 語 学 習 に お い て は 文 法 規 則 を 理 解 し て 適 用 す る 論 理 的 操 作 、 意 味 内 容 の 把 握 」( 2 0 0 2 , p . 2 9 ) 等 を 認 知 能 力 と し て い る 。こ の よ う な 認 知 能 力 に よ り 、人 は 、こ と ば を 発 達 さ せ 、思 考 能 力 を 高 め て い く 。獲 得 し た こ れ ら の 力 を 十 分 に 発 41 揮 で き る か 否 か は 、情 動 と い う 触 媒 が プ ラ ス に 働 く か マ イ ナ ス に 作 用 す る か に か か っ て お り 、指 導 上 、留 意 す べ き 点 で あ る と 考 え る 。た と え ば 、失 敗 を 恐 れ 、抑 制 や 危 険 負 担 を 避 け る 場 合 、結 局 持 て る 力 を 存 分 に 発 揮 で き な い し 、失 敗 か ら 学 ぶ 機 会 も な い た め 認 知 能 力 も 伸 び な い こ と に つ な が る 。一 方 、自 尊 心 を 高 め 学 習 に 自 信 を 持 た せ れ ば 、不 安 が 少 な く な り 、結 果 と し て 、認 知 の 働 き が 活 発 に な り 、そ の 蓄 積 は 増 え 、潜 在 的 に 持 て る 力 が 存 分 に 発 揮 できるというプラスの循環が生まれるものと考える。 Skehan(1998, pp.190-206)は 、 外 国 語 能 力 は 言 語 適 性 能 力 , 次 に 言 語 知 性 、そ し て 推 論 と い う 順 序 で 高 い 相 関 性 が あ る と し て い る 。さ ら に 、言 語 適 性 能 力 の 要 素 と し て ① 音 声 識 別 能 力 、② 言 語 分 析 能 力 、③ 記 憶 力 を 挙 げ 、中 で も 最 も 重 要 な の は 記 憶 力 で あ る と 述 べ て い る 。彼 の 理 論 で は 記 憶 は 単 純 に 言 葉 を 覚 え る 能 力 で は な く 、「 新 し い 複 雑 な 言 語 資 料 を 入 手 し た 言 語 構 造 を 検 索 し 符 号化することが出来る能力である」 ( 林 , 2 0 0 2 , p . 1 0 )と し て い る 。 言 語 知 性 と し て の 分 析 力 と 記 憶 力 の 側 面 か ら す る と 、言 語 適 性 は 認知能力に関連すると考えられる。 Khan (1969) 3 ) は、通常の学習クラスでの第二言語の塾達 度 に つ い て 調 査 し 、 そ れ を メ タ 分 析 ( meta-analysis) す る こ と に よ り 、 25~ 50%が 認 知 的 要 因 、 残 り の 25~ 50%が 感 情 、 性 格 、 その他の非認知的要因に起因するという研究を報告している ( Larsen-Freeman & Long, 1991, p.172, 牧 野 高 吉 ・ 萬 谷 隆 一 ・ 大 場 浩 正 邦 訳 , 1 9 9 5 , p . 1 8 2 )。 筆 者 と し て は 、 こ の よ う に 分 散 さ れ て い る こ と が 検 証 さ れ た こ と に 重 要 な 意 味 を 見 出 す 。単 純 に 分 散 し て い る だ け で な く 、感 情 ・ 性 格 な ど 非 認 知 的 要 因 が 認 知 能 力 に影響をあたえ、学習者の認知能力の発揮と発達を抑制または、 促 進 す る も の と 考 え る か ら で あ る 。つ ま り 、そ れ ぞ れ の 分 散 が 相 互 に 影 響 し あ っ て い る も の と 考 え る 。上 述 し た K h a n の メ タ 分 析 の 結 果 は 、認 知 要 因 と 、非 認 知 的 要 因 は 互 い に 人 間 の 言 語 と 思 考 42 の発達に密接に関連していることを間接的に証明するものと考 え る 。言 い 換 え れ ば 、い ず れ か の 要 素 の バ ラ ン ス が 崩 れ て も 言 語 と 思 考 の 発 達 に 影 響 す る と い う こ と で あ る 。加 え て 、注 目 す べ き は 、 Khan の 分 散 結 果 の 配 分 に 幅 が あ る 点 で あ り 、 そ れ が 個 人 差 につながっていると考える。 2.3.4 個 人 差 の 観 点 か ら 情 動 と 第 二 言 語 習 得 の 関 係 R . C . G a r d n e r a n d M a c I n t y r e ( 1 9 9 2 ) は 、情 意 変 数( a f f e c t i v e variabales) と し て 、 態 度 、 動 機 、 言 語 に 対 す る 不 安 、 自 信 を 挙 げ て お り 、認 知 要 素 と し て 、知 性 、言 語 学 習 に 対 す る 態 度 、言 語 学 習 方 略 を 変 数 と し て い る 。こ れ ら の 要 素 に 関 す る 個 人 差 、特 に 情 意 変 数 に つ い て は R.C.Gardner 他 の 学 者 が 焦 点 を 当 て て い る と こ ろ で あ る 。 R . C . G a r d n e r a n d M a c I n t y r e は 、「 第 二 言 語 習 得 の要素には個人差があり、個人の数だけいろいろ違いがある」 ( 1992, p.212) と 述 べ て い る 。 あ る 学 習 者 は 第 二 言 語 の 習 得 に 成 功 し 、別 の 学 習 者 は 第 二 言 語 の 学 習 が 単 に 精 神 的 苦 痛 や 失 敗 に 終 わ る 。な ぜ こ の よ う な 差 が 生 ま れ る の で あ ろ う か 。個 人 差 を 生 む 要 因 と し て 認 知 ス タ イ ル の 違 い 、知 的 レ ベ ル の 違 い 、性 格 に よ る 要 因 、学 習 ス タ イ ル の 違 い な ど 、い ろ い ろ な 説 が 研 究 さ れ て い る が 、多 く の 研 究 者 は 言 語 指 導 の 方 法 と 学 習 者 の 認 知 ス タ イ ル 、学 習 ス タ イ ル の 3 つ の 視 点 を う ま く 適 合 さ せ る こ と が 重 要 で あ る と し て い る 。 以 上 は M c L a u g h l i n ( 1 9 8 5 ) の 説 で あ る 。こ れ に 対 し て 、L a r s e n - F r e e m a n a n d L o n g( 1 9 9 1 , p . 1 5 3 )は 年 齢 、言 語 適 性 、社 会 ・ 心 理 的 要 因 、 性 格 、態 度 、認 知 ス タ イ ル 、学 習 ス ト ラ テ ジ ー な ど を 挙 げ て い る 。 個 人 差 は 、人 が 生 ま れ る 以 前 の D N A は も ち ろ ん の こ と 、誕 生 後 、 成 長 し て い く 過 程 で 接 す る あ ら ゆ る 物 理 的 事 象・環 境 、心 的 環 境 、 意識・無意識に拘わらず、さまざまな影響をうけて作り出され、 言語能力を含むあらゆる能力に様々に反映されていくものと考 43 え ら れ る 。 林 ( 2002, 2004) は 、 子 供 の 認 知 発 達 に 関 連 す る 親 子 言 語 相 互 交 渉 の 形 式 に お け る 言 語 環 境 の 側 面 か ら 研 究 し 、「 言 語 形 式 ( 親 の 話 し 方 )、 言 語 環 境 ( 親 の 態 度 ) が 子 供 の 認 知 能 力 に 影響する」 ( 2 0 11 , p . 4 6 )と し 、次 の 4 つ の 言 語 形 式 に 分 類 し て い る。 (1) 民 主 的 : 親 が 肯 定 的 な 態 度 で 子 ど も に 話 し か け た り 、 子 ど もの疑問や質問に答えたりする。 (2) 命 令 的 ・ 権 威 的 : 子 ど も に 考 え さ せ る 機 会 が 少 な く 、 親 が 命令する場合が多い。 (3) 否 定 的 ・ 非 難 的 : 子 ど も の 要 求 ・ 質 問 ・ 行 為 に 、 親 は 否 定 的・非難的で、認めない場合が多い。 (4) 放 任 ・ 無 関 心 : 親 が 忙 し さ の あ ま り 、 子 ど も と 話 し 合 う こ とが少ない。 このような言語形式は、学校での英語指導現場においては、 教 師 、 指 導 者 な ど が ど れ に 相 当 す る か が 問 題 で あ り 、「 情 動 的 お よ び 社 会 相 互 作 用 の 側 面 か ら 子 ど も の 理 解 力 や 自 尊 心 、さ ら に は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 育 成 に 大 き く 影 響 す る 」 ( 林 , 2 0 11 , p.47)と し て い る 。 こ れ ら 言 語 形 式 の 違 い が 結 果 と し て 言 語 環 境 に 違 い を も た ら し 、認 知 能 力 の 違 い 、学 習 者 の 個 人 差 に つ な が る ということである。 ひ い て は 、外 国 語 学 習 の レ ベ ル 、速 度 に お い て も 影 響 を 与 え る も の と 考 え る 。し か し な が ら 、さ ま ざ ま な 要 因 で 現 実 に 存 在 す る個人差をそのまま個人差でかたづけては、教育の意義はない。 現 実 の 個 人 差 に ど う 対 応 す る か 、最 適 な レ ベ ル で 効 果 の あ る 方 法 を 導 入 し て い く 積 み 重 ね が 指 導 者 の 使 命 と 考 え る 。行 き 届 い た 指 導 を 補 完 す る 手 段 と し て は 、例 え ば 、協 同 学 習 で あ る と か 、ポ ー ト ・ フ ォ - リ オ を 取 り 入 れ 、学 習 者 と 指 導 者 が 一 層 、一 人 ひ と り 44 に き め 細 か く 個 人 差 に 対 応 す る 教 育 が で き る も の と 信 じ る 。本 論 文において取り上げている学習者の情動とコミュニケーション 力 の 関 連 性 の 検 証 は 、学 習 者 一 人 ひ と り の 心 の あ り 様 が 外 国 語 学 習に影響するという考えを踏まえて指導にあたる必要性を示唆 す る も の で あ り 、こ の 点 に 対 す る 指 導 者 の 認 識 を 期 待 す る も の で ある。 情 動 と 第 二 言 語 習 得 の 関 連 性 に つ い て 、 Krashen や Brown な ど の 理 論 や 研 究 は 知 ら れ て い る が 、こ の 分 野 の 研 究 は 動 機 づ け や認知的視点などの研究に比べると世界的にさほど多くはない。 日 本 で は 、 K o n d o a n d Ya n g ( 2 0 0 6 ) は 言 語 に 対 す る 不 安 と 学 習 者 が 使 用 す る 5 つ の 方 略 ( Preparation, Relaxation, Positive thinking, Peer seeking, Resignation) と の 関 連 性 を 調 査 し て お り 、 結 論 と し て 、 言 語 不 安 は 準 備 (Preparation)が き ち ん と 出 来 ている事と、明確に相関性があるとしている。 Anxiety を 含 め 、 8 つ の 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 が ど う 関 連 し て い る の で あ ろ う か 。そ こ で 、具 体 的 に 情 動 と 英 語 力 が ど うかかわりあっているかを、調査する必要がある。 一 般 的 に 4 技 能 は 互 い に 相 乗 作 用 を 発 揮 し 、総 合 的 な 英 語 力 に 結 び つ く も の と 考 え る が 、本 研 究 で は CEFR4+1 技 能 の 中 で も コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 要 と な る spoken interaction, spoken production に 特 に 注 目 し 、 8 つ の 要 素 か ら な る 情 動 が 、 そ れ ら にどのような影響を及ぼすかを調査することとする。その結果、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 要 と な る spoken interaction, spoken production に マ イ ナ ス の 影 響 を 与 え る 因 子 を 示 す デ ー タ を 得 る こ と が で き れ ば 、そ の 影 響 因 子 を 少 な く す る こ と が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 伸 ば す 一 つ の 方 法 と な り 得 る も の と 考 え る 。そ れ が Krashen が 述 べ て い る 情 意 フ ィ ル タ ー を 下 げ る こ と で あ る 。 具 体的に何を下げれば効果が出るのか、その力学が明確になれば、 どうすれば下がるかの方法論を今後追求しやすくなるものと考 45 える。 次 の 節 で は 、8 つ の 情 動 要 素 の 定 義 と 特 徴 に つ い て 、B r o w n 、 Larsen-Freeman、 Skehan 他 の 見 解 を 参 考 に し て ま と め る 。 2.4 8つの情動要素の特徴と定義 Brown( 2000 ) は 、 情 動 ( emotion) に つ い て 触 れ る と き 、 自 尊 心( s e l f - e s t e e m )、抑 制( i n h i b i t i o n )、危 険 負 担( r i s k - t a k i n g )、 不 安 ( a n x i e t y )、 共 感 ( e m p a t h y )、 外 向 性 ( e x t r o v e r s i o n ) と い う6つの要素を取り上げて論じている。 本 研 究 で は 、上 記 6 つ の 要 素 に 、L a r s e n – F r e e m a n a n d L o n g ( 1 9 9 1 )ら が 指 摘 す る 内 向 性( i n t r o v e r s i o n )と Tr u s c o t t ( 1 9 9 6 ) が 論 じ る 寛 容 性 ( tolerance) と い う 2 つ の 要 素 を 加 え た 合 計 8 つ の 要 素 に よ っ て 情 動 を 定 義 す る こ と と す る 。そ の 8 つ の 情 動 要 素 へ 絞 り 込 む 最 終 的 な 選 定 に 際 し て は 、こ れ ら 研 究 者 の 見 解 に 拘 泥 す る こ と な く 、2 章 2 節 で 述 べ た 通 り 、被 験 者 の 一 部 お よ び 学 内 外 大 学 院 生 へ ヒ ア リ ン グ を 行 い 、そ の 結 果 を 参 考 に 妥 当 性 を 確 認した。 本 節 で は 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 を 明 ら か にするための基本として、まず、8 つの情動要素の特徴と定義を 以下に明確にしておく。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に は SE が 非 常 に 大 事 で あ る と よ く 言 わ れ る が 、そ の 逆 方 向 の 概 念 で あ る A N は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 否 定 的 に 作 用 す る も の と 思 わ れ る 。 K o n d o a n d Ya n g ( 2 0 0 4 ) は 、言 語 に 対 し て 不 安 が 少 な い 学 習 者 は 方 略 を う ま く 使 う こ と が 可 能 で あ り 、不 安 に 対 す る 反 応 が 低 く あ ま り 緊 張 し な い こ と か ら 自然に対応することが出来るようだとしている。 し た が っ て 、 SE と 、 そ の 逆 方 向 の 概 念 で あ る AN と の 関 係 性 に つ い て 、実 際 に 調 査 し て み る こ と は 興 味 深 い 。本 論 文 に お い 46 て 、情 動 相 互 の 関 連 性 も 分 析 す る の は そ の 為 で あ る 。人 間 の 気 持 ち は 単 一 の 要 素 で な く 、複 雑 に 影 響 し 合 っ て 行 動 、言 語 に 現 れ て いるものと考えるからである。 RT は 、 外 国 語 学 習 に 必 要 で あ る と 一 般 的 に よ く 言 わ れ て い る が 、 果 た し て 、 日 本 人 の EFL の 学 習 環 境 に と っ て コ ミ ュ ニ ケ ーション力の向上に必須の情動であるかどうかについては調査 に 基 づ い て 確 認 す る 必 要 が あ る 。 更 に 、 RT は 単 独 に で は な く 、 抑 制 、不 安 、内 向 性 と い っ た 他 要 素 と 互 い に 関 連 し 合 っ て 作 用 す るものと考える。 E M に つ い て 、G u i o r a と G o l e m a n は 次 の よ う に 述 べ て い る 。 G u i o r a は「 E M と は 、自 己 と 対 象 と の 境 界 が 一 時 的 に 溶 け 合 う 感 覚により他者の気持ちを共有することが出来る過程である」 ( 1 9 7 2 ) と 、 説 明 し て い る 。 G o l e m a n は 、「 E M と は 、 他 の 人 の 気 持 ち を 理 解 し 、他 の 人 の 視 点 に 立 ち 、人 々 が ど の よ う に 感 じ る の かその違いに対して敬意を払うといった重要な社会的能力であ る 。人 と 協 力 す る こ と を 学 び 、衝 突 を 解 決 し 、互 い に 妥 協 点 を 見 出 す こ と を 学 ぶ 要 素 で あ る 」 (1995, p.268) と 説 明 し て い る 。 Goleman の 視 点 は も と も と 問 題 児 を 矯 正 し て い く 臨 床 的 発 想 で 持 論 を 展 開 し て い る が 、こ れ は 言 語 習 得 の 過 程 で も 当 て は ま る 考 え 方 で あ る 。 EM が な け れ ば 、 学 習 者 の 社 会 性 は 鍛 え ら れ ず 、 そ の こ と は 、他 者 と の 互 い の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 阻 む こ と に な り 、 コミュニケーション力そのものの発達を阻害することにつなが る。 IH に つ い て 、Guiora 他( 1980)は 被 験 者 に ア ル コ ー ル を 飲 ま せ た 場 合 、発 音 の 良 さ に ど の よ う な 影 響 が 起 こ る か に つ い て 調 査 し て い る 。一 見 、な ぜ ア ル コ ー ル な の か と 思 う が 、ア ル コ ー ル に よ り 心 理 的 な 抑 圧 や 、不 安 が 和 ら ぐ と 想 定 し た 実 験 で あ り 、間 接 的 に 、言 語 、こ の 場 合 に は 特 に 発 音 に 情 動 が ど の よ う に 影 響 す る か を 検 証 す る も の で あ る 。実 験 で は 、ア ル コ ー ル を 飲 む 事 に よ 47 り 抑 制 を 下 げ 、自 我 の 境 界 透 過 性 を 高 め る こ と で 、結 果 的 に 発 音 の 柔 軟 性 が 高 ま る こ と を 確 認 し て い る 。ア ル コ ー ル を 飲 ま せ る こ とを活用するのは言語の学術的研究として適切ではないかもし れ な い が 、 抑 制 を 下 げ る こ と が 基 本 的 な 自 己 ID を 修 正 す る 点 を 証明する実験としては分かり易いものではある。 以 上 の こ と か ら 、 IH が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 実 際 に ど う 影響するのか、その関連性について調査することは興味深い。 I N は 、E X と は 逆 方 向 の 概 念 で あ り 、一 般 的 に 内 向 的 と い わ れ る 日 本 人 の 性 格 、そ れ に 対 し て 、自 己 主 張 型 の 中 国 人 ,さ ら に 中国人と心のあり様が似ているといわれるベトナム人を含めた 比 較 を 考 慮 す る と 、 今 回 の 調 査 に は 、 IN を 情 動 の 要 素 と し て 加 え る の が 妥 当 と 考 え る 。 日 本 人 学 習 者 の 場 合 、 IN は 人 前 で 英 語 を話すことを控える消極性となって現れると一般的に考えられ て お り 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ 否 定 的 に 作 用 す る も の と 見 ら れ るが、実際にどう影響するのか検証する価値は大いにある。 T R に つ い て 、Tr u s c o t t は 、次 の よ う に 述 べ て い る 。 「文法の 修 正 は 有 害 で あ る 。 ・・・ 学習を成功させるには、ストレスが少 な く 、リ ラ ッ ク ス し 、自 信 を 持 ち 、学 習 自 体 が 楽 し い と 思 え る よ う に す る こ と が 重 要 で あ る 。間 違 い を 修 正 す る こ と は ま さ に そ の 正 反 対 の 状 況 を 生 み だ す こ と に な る 」( 1 9 9 6 , p . 3 5 4 )。 上 述 の Tr u s c o t t の 指 摘 は 、 日 本 の 指 導 者 、 学 習 者 が 最 も 配 慮 す べ き 点 と 考 え る 。文 法 上 の 正 確 さ を 気 に し 過 ぎ る き ら い が あ り 、そ の た め 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て も 、文 法 の 間 違 い を 恐 れ る 余 り 積 極 的 に 話 し た が ら な い 傾 向 が 起 こ る 。オ ラ ン ダ の 社 会 学 者 H o f s t e d e( 1 9 9 5 , p 4 9 - 7 9 ) は 、 集 団 主 義 的 な 社 会 の 特 徴 の 一 つ と し て 、「 面 子 を 失 う こ と を 恐 れ る 」 と い う 心 理 を あ げ て い る が 、公 衆 の 面 前 で 例 え ば 、間 違 い を 指 摘 さ れ る こ と は 、特 に 集 団 主 義 的 傾 向 の 顕 著 な 日 本 人 に と っ て 、Tr u s c o t t の 見 解 に 相 通 じ る も の で あ る 。そ う し た 特 徴 は 、自 他 の 間 違 い に 対 す る 寛 容 性 と 48 し て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 作 用 す る と 考 え ら れ る こ と か ら 、E F L の 言 語 環 境 に あ る 日 本 人 学 習 者 に と っ て 、 本 研 究 の 調 査 に TR を 情動要素として加えるのは適切と考える。 以下、8 つの情動要素に関し、それらの定義について考察す る。 ① 自 尊 心 : Self- Esteem (SE) Brown に よ る と 、 「 自 尊 心( S E )は 、人 そ れ ぞ れ に 内 在 す る も の で あ り 、自 分 が 価 値 の あ る 存 在 で あ る と 感 じ ら れ る こ と で あ る 。そ れ は 態 度 に 現 れ る も の で あ る 」 ( 2000, p.145) と し て い る 。 言 語 活 動 に 当 て は め れ ば 、 SE は 自 分 の 価 値 や 能 力 に 対 す る 自 信 で あ り 、間 違 い や う っ か り ミ ス に か か わ ら ず 、お そ れ や 不 安 を 感 じ る こ と な く し ゃ べ る こ と で 自 信 や 勇 気 を あ た え る も の で あ る 。こ の 要 素 は 第 二 言 語 習 得 で 重 要 な 変 数 の 一 つ と い え る 。 Brown は さ ら に 、 SE が 弱 い 人 は 、 課 題 を 与 え ら れ た 場 合 や あ る 状 況 に お い て 、自 信 が な く 、自 分 で 弱 い と か 、脆 い と 思 っ て い る 自 我 を 守 ろ う と す る 抑 制 の 壁 をもっている。 危険を冒すことを恐れることなく挑戦し、 学習者が新しい言語体験に対して持つ障壁をこわすような 環 境 や 状 況 を 作 る の は 、 SE が 強 い 場 合 で あ る と 説 明 し て い る ( 2 0 0 0 , p . 1 4 7 )。 一 般 的 に 、 S E と I N は 相 反 す る 関 係 に あ る た め 、こ れ ら の 情 動 が ど の よ う に 互 い に 関 連 し て い る の か を調査をもとに、検証するのは意義深い。 ② 危 険 負 担 : R i s k - Ta k i n g ( R T ) RT は 、 学 習 者 に と っ て 不 愉 快 で 、 歓 迎 で き な い よ う な 何 か に 対 し て 気 持 ち が 反 応 す る こ と で あ る 。E F L 環 境 に あ る 日 本 人 学 習 者 は 危 険 を 冒 し た が ら な い と 言 わ れ て い る 。特 に 、 人 前 で 話 す よ う な 場 合 に そ う で あ る 。危 険 負 担 を 避 け る な ら 49 ば 、 練 習 や 失 敗 か ら 学 ぶ 機 会 は 少 な い 。 そ の 意 味 で 、 RT は 言 語 学 習 を う ま く 達 成 す る 為 に 重 要 な 要 素 で あ る 。 Ely (1986, p.8)は 、 RT を 次 の 4 つ の 行 動 パ タ ー ン に 分 類 し て い る。 1)初 め て 学 習 し た 言 語 要 素 を 躊 躇 せ ず に 使 用 す る 。 2 ) 複 雑 、且 つ 困 難 で あ る と 思 わ れ る 言 語 要 素 を 進 ん で 使 用 する。 3) 言 語 の 使 い 方 の 誤 り や 不 正 確 さ を 気 に し な い 寛 容 性 が ある。 4)口 に 出 す 前 に 新 し い 項 目 を 頭 の 中 で リ ハ ー サ ル す る 。 Ely に よ る こ れ ら RT の パ タ ー ン は い ず れ も 、 言 語 習 得 に プ ラ ス に 働 く も の と 、 歓 迎 す べ き 特 徴 で あ る 。 た だ し 、 3) に つ い て は 、本 論 文 で は 8 つ の 要 素 の 寛 容 性 の 範 疇 に 入 れ て いる。 一 方 、B r o w n は 次 の よ う に 言 っ て い る 。 「クラスの中で、 悪 い 点 を 取 っ た と か 、試 験 に 落 ち た と か 、き ま り の 悪 い 思 い をさせられたとか、罰を受けたとか、先生に叱られたとか、 クラスメートにバカにされた等の経験によりマイナスの気 持 ち に 陥 る 。更 に は 教 室 の 外 で も 、い ろ い ろ 間 違 い を す る こ と が 重 な れ ば 、 人 は 否 定 的 な 感 情 に 陥 る 」( 2 0 0 0 , p . 1 4 9 )。 こ の よ う に 、否 定 的 な 気 持 ち は 、そ の 後 あ え て 危 険 を 冒 さ な い と い っ た 抑 制 が 働 き 、間 違 い を し て 恥 を か か な い よ う 危 険 負 担 を 回 避 す る 傾 向 に つ な が る と 考 え ら れ る 。抑 制 や 危 険 負 担 、不 安 は 互 い に 関 連 し 、多 く の 日 本 人 学 習 者 が ス ム ー スにコミュニケーションできない要因になっているのでは ないか、この点は調査を通して、検証していく必要がある。 50 ③ 不 安 : Anxiety ( AN) S c o v e l は 、心 理 学 者 の 研 究 を か り て 情 動 の う ち 不 安 に つ い て 「不 安 と は 、 対 象 に 対 し て 間 接 的 に 抱 く 漠 然 と し た お そ れ 、 憂 慮 の 感 情 で あ る 」( 1978, p. 34 ) と 定 義 し て い る 。 AN は 、 フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン や 、 自 己 懐 疑 心 、 心 地 悪 い 状 況 な ど に か か わ る 心 配 や 不 安 を 言 う 。A N は 、S E と も 相 対 立 す る 関 係 に あ り 、 IH, IN と な ら び 、 否 定 的 情 動 に 分 類 す る 。 Oxford (1999)に よ る と 、 不 安 に も 二 つ の タ イ プ が あ る と し て い る 。有 害 な 不 安 と 役 に 立 つ 不 安 で あ る 。役 に 立 つ 不 安 と は 、課 題 を 達 成 す る こ と に 対 し て あ る 程 度 の 心 配 が 肯 定 的 に 働 く 場 合 で あ る 。し か し な が ら 、過 度 の 心 配 や 不 安 は 第 2 言 語 学 習 を 阻 害 す る 可 能 性 が あ る と 指 摘 し て い る 。 MacIntyre and R.C.Garder は 、AN と は 「緊 張 す る 気 持 ち や 憂 鬱 に 思 う 気 持 ち で あ り 、 第 二 言 語 や 外 国 語 に 関 連 し て 特 に speaking や listening な ど の 学 習 に お い て 生 ま れ る 言 語 不 安 で あ る 。 ま た 、不 安 が 起 こ る の は 厳 し い 自 己 評 価 を し た り 、失 敗 す る の で は な い か と 過 度 に 心 配 し た り 、他 者 の 意 見 を 気 に し た り す る 場 合 で あ る 」 (1994, pp.284-285 ) と 説 明 し て い る 。 Tr u s c o t t( 1 9 9 6 ) も 、 ミ ス は 誤 り を 直 さ れ た り す る 場 合 、 学 習者は再度間違いをするのではないかとの不安から学習に 対 す る 興 味 を な く し て し ま う と 述 べ て い る 。彼 の 理 論 は 文 法 に 関 連 す る も の で あ る が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 発 達 に も 当てはまる考え方である。 ④ 共 感 : Empathy (EM) EM は 、 他 者 の 気 持 ち を 共 有 し 、 自 分 を 他 者 の 立 場 に 立 た せ 、自 分 を 超 え て 他 者 が ど の よ う に 感 じ て い る か を 理 解 す る 力 で あ る 。B r o w n は 、E M に つ い て 次 の よ う に ま と め て い る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 洗 練 さ れ た レ ベ ル の 共 感 が 必 要 51 で あ る 。そ の た め に は 、他 者 の 情 意 や 認 知 の 状 態 を 理 解 す る こ と が 必 要 で 、そ れ に よ り 、効 果 的 に 人 は 他 者 と う ま く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 可 能 と な る 。口 頭 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 少 な く と も 認 知 的 に は 、聞 き 手 か ら 即 座 に フ ィ ー ド バ ッ クがあるので互いに共感するコミュニケーションがとりや す い 。し か し な が ら 、書 く こ と に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 読 み 手 の 即 座 の 反 応 が 得 ら れ な い た め 、読 み 手 の マ イ ン ド や 知 識 の 状 態 か ら 本 能 的 に 明 確 な 共 感 と 判 断 に よ り 、相 手 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン し な け れ ば な ら な い と し て い る (2000, pp. 1 5 2 - 1 5 4 ) 。そ の 意 味 で 、他 者 と う ま く や り 取 り を す る 事 が 成 否 に か か わ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 、 EM は 欠 か せ な い 情 動 要 素 と 言 え る 。例 え ば 、相 手 の 内 面 ま で 読 み 取 り な が ら 議 論を進める外交交渉や、ビジネス上の交渉には必須である。 Guiora は 、 EM を 「 客 観 視 す る 自 己 の 境 界 を 取 り 去 り 、 他者が経験する気持ちを即座に理解し、融合する過程であ る 」( 1 9 7 2 , p . 1 4 2 ) と 表 現 し て い る 。 こ れ に 対 し て 、G o l e m a n は 、問 題 児 な ど の 具 体 的 処 方 を 提 言 し て い る 社 会 心 理 学 者 の 視 点 で 、「 他 者 の 気 持 ち を 理 解 し 、人 は 物 事 に 対 し て い か に 異 な る 気 持 ち を 持 っ て い る の か 、 その違いに敬意を払うことが出来るような社会的能力の鍵 と な る も の で あ る 」 と し て い る 。 続 け て 彼 は 、「 怒 り や 活 気 が な い の と は 異 な り 、活 発 で 、他 者 と の 協 力 、問 題 解 決 、妥 協 点 を 見 い だ せ る 重 要 な 社 会 的 能 力 の 要 素 で あ る 」( 1 9 9 5 , p.268) と 述 べ て い る 。 EM が な け れ ば 、 学 習 者 の 社 会 的 技 能 は 、十 分 に 発 達 せ ず 、結 局 は 他 者 と の や り と り が う ま く い か ず 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を う ま く 図 る こ と が 出 来 な く な っ てしまうのである。 52 ⑤ 抑 制 : Inhibition (IH) IH は 、 自 分 を 意 識 し す ぎ る 故 に 、 リ ラ ッ ク ス し て 、 自 然に振舞うことが出来ないようにさせる気持ちである。 Guiora 他 ( 1980) の 実 験 に よ る と 、 IH が 低 く な る と 、 共 感する気持ちが強くなり、自我の境界の浸透性が高くなる。 別 な 研 究 で は 、催 眠 に よ り I H を 低 く す る こ と が 可 能 で あ り 、 さ ら に 、基 本 的 な 自 己 ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 抵 抗 な く 変 化 さ せ る こ と で き る と い う 仮 説 を Guiora は 立 て て い る 。 既 述 の 実 験 で Guiora は 、 ア ル コ ー ル と バ リ ウ ム を 使 っ て IH を 低 く す る 効 果 を 調 査 し た 。 重 要 な 点 は 、 IH を 低 く す る と 、 言 語 学 習 の 際 に 危 険 負 担 を い と わ ず 、学 習 者 の プ ラ ス の 態 度 を 導 き 出 し 、結 果 的 に プ ラ ス の 影 響 が 生 ま れ る こ と を 証 明 す る も の で あ る 。 B r o w n は 、「 ほ と ん ど の 学 習 者 は 、 言 語 学 習 の ク ラ ス で あ ま り に 多 く の IH を 感 じ 、 危 険 負 担 す る の を 極 力 避 け た が る 。そ の 結 果 、言 語 や そ の 他 の 学 習 に お い て 自 信 レ ベルが低くなる傾向がある」 ( 2 0 0 1 , p . 2 1 3 )と 指 摘 し て い る 。 ⑥&⑦ 外 向 性 と 内 向 性 : Extroversion and Introversion (EX and IN) RT と 同 様 に 、 EX、 IN も 第 二 言 語 習 得 に 重 要 な 要 素 で あ る 。 EX 型 の 人 は 積 極 的 で あ り 、 陽 気 で あ り 、 社 会 的 に 自 信 が あ り 、外 部 の こ と に 非 常 に 関 心 を 持 っ て い る と か 、目 的 志 向 が 強 い 。 一 方 、 IN 型 の 人 は 、 恥 か し が り 屋 で 、 あ ま り 人 と 話 さ ず 、お と な し く 、控 え め な 人 で あ る 。さ ら に 、外 部 のことより自分の内的な思いや気持ちを気にする傾向があ る 。こ れ ら の 性 格 は そ れ ぞ れ 良 い 点 、そ う で な い 点 が あ ろ う 。 一 般 的 に EX 型 は 対 人 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 有 利 で あ る と 考 え ら れ て い る 。 し か し 、 B r o w n( 2 0 0 0 ) も 指 摘 し て い るように、単にどちらが良いか悪いかという問題ではなく、 53 学 習 ス タ イ ル の 違 い で あ る と 考 え ら れ る が 、日 本 人 学 習 者 の 多 く が IN 型 で あ る こ と か ら 、 本 調 査 を 通 し 、 こ れ ら の 要 素 がコミュニケーション力にどのように作用するかを明らか にすることは興味深い。 ⑧ 寛 容 性 : To l e r a n c e ( T R ) TR は 、 自 分 が 嫌 い だ と か 、 受 け 入 れ が た い 行 動 や 意 見 が あ る こ と に 耐 え る 力 や 気 持 ち で あ る 。究 極 的 に は 、周 り の 条 件 な ど に 対 し て 、反 対 の 反 応 を せ ず 、そ れ に 服 従 す る こ と に 耐 え る 力 と も い え る 。こ れ を 言 語 学 習 の 過 程 に あ て は め て み る と 、Tr u s c o t t ( 1 9 9 6 ) が 述 べ て い る よ う に 、T R と は 、自 他 の 誤 り に 対 す る 寛 容 性 で あ り 、忍 耐 力 で あ る 。さ ら に 、少 々 の 間 違 い に 気 後 れ し な い 精 神 力 で あ る 。間 違 い に 対 し て も 寛 容で、落胆せず、言語学習に欠かせないものと考える。 Goleman の い う 自 己 制 御 能 力 に 近 い 要 素 で あ る 。 Goleman の 自 己 制 御 能 力 と は 、自 分 自 身 の 行 動 を 適 切 な 方 法 で コ ン ト ロ ー ル し 、 自 分 の 内 的 な 制 御 が で き る 能 力 で あ る と し 、「 心 の 知 能 指 数 」、 E I( e m o t i o n a l i n t e l l i g e n c e ) の 重 要 な 要 素 で あり、コミュニケーション力に影響を与えるとしている ( 2 0 0 5 , p p . 1 9 3 - 1 9 4 )。 以上の 8 つの情動をEFLの環境にある日本人に特に影響 があるものと思われる因子として実際に調査を行う際使用して いく。 次 の 節 で は 、 本 調 査 で 使 用 す る CEFR に つ い て 、 そ の 概 念 、 特性、調査に用いる理由などについて述べる。 54 2.5 CEFR と は 何 か CEFR ( Common European Framework of Reference for Languages, 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 ) は 、 第 二 次 世 界 大 戦 後 ま も な く 、欧 州 評 議 会 が 元 々 提 唱 し た も の で あ る 。国 際 社 会 に お け る 相 互理解へ有益な外国語教育を平和教育の一環と位置づけ、複言 語 ・ 複 文 化 能 力 を 身 に つ け る こ と を 背 景 と し て い る 。そ の 欧 州 評 議 会 ・ 言 語 政 策 部 門 が 発 行 し た C E F R 大 綱 、そ の 日 本 語 訳 本「 外 国 語 の 学 習 、教 授 、評 価 の た め の ヨ ー ロ ッ パ 共 通 参 照 枠 」の 冒 頭 に C E F R の 目 的 は 何 か が 次 の よ う に 明 確 に 述 べ ら れ て い る 。「 目 的 は 、ヨ ー ロ ッ パ の 言 語 教 育 の シ ラ バ ス 、カ リ キ ュ ラ ム の ガ イ ド ラ イ ン 、試 験 、教 科 書 作 成 な ど の 向 上 の た め に 一 般 的 基 盤 を 与 え る こ と で あ る 。言 語 学 習 者 が 言 語 を コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め に 使 用 す る に は 何 を 学 ぶ 必 要 が あ る か 、効 果 的 に 行 動 で き る よ う に な る た め に は 、ど ん な 知 識 と 技 能 を 身 に つ け れ ば よ い か を 総 合 的 に 記 述 す る も の で あ る 。そ こ で は 言 語 の 文 化 的 な コ ン テ キ ス ト を も 記 述 の 対 象 と す る 。C E F R は さ ら に 学 習 者 の 熟 達 度 の レ ベ ル を 明 示 的 に 記 述 し 、そ れ ぞ れ の 学 習 段 階 で 、ま た 生 涯 を 通 し て 学 習 度 が 測 れ る よ う に 考 え て あ る 」 (吉 島 ・ 大 橋 他 , 2004, p.1)。 Language Learning by Adult ( 成 人 の 現 代 語 学 習 の ヨ ー ロ ッ パ 単 位 制 度 に お け る 敷 居 レ ベ ル ) が 、 1975 年 に 公 開 さ れ た 。 そ れ を 更 に 発 展 的 に 開 発 し た 詳 細 が 、 2001 年 に 公 開 さ れ た 現 在 の C E F R で あ る 。C E F R は 、異 言 語 教 育 に お け る シ ラ バ ス 、カ リ キ ュ ラ ム 、教 材 お よ び 試 験 な ど の 作 成 や 、学 習 者 の 能 力 評 価 に 対 する共通の基準(共通参照枠)である。 「多文化社会で一人が複数の言語を学習し相互理解の促進 や 共 存 能 力 を 育 成 す る 観 点 か ら 、外 国 語 学 習 、教 育 、評 価 に 関 し て 言 語 横 断 的 に 共 通 の フ レ ー ム を 提 供 す る こ と に あ る 。・ ・ ・ 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て 重 要 な 、開 か れ た 態 度 、世 界 55 知 識 、文 化 知 識 、社 会 的 技 能 、学 習 能 力 な ど も 重 視 し 、複 合 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 捉 え る も の と な っ て い る 」( 杉 谷 、 2 0 1 0 , p.5) と し て 、 日 本 に も 今 日 紹 介 さ れ 、 日 本 の 英 語 教 育 へ の 導 入 も 検 討 さ れ て い る 。す で に 実 験 的 に 導 入 し て い る 大 学 、高 等 学 校 もある。 CEFR は 、 学 習 者 に よ る 自 己 評 価 の 尺 度 に 、 能 力 記 述 文 ( C a n - d o - s t a t e m e n t s )を 用 い る 。C a n - d o - s t a t e m e n t s は 、 「なに」 を「 ど こ ま で で き る 」と い う 形 式 を 取 っ て 簡 潔 明 瞭 に 表 現 さ れ て い る 。「 な に 」 と い う の は 、「 聞 く 」、「 読 む 」、「 や り と り ( 対 話 に 参 加 す る )」、 「 表 現( 1 人 で ま と ま っ た 話 を す る )」お よ び「 書 く 」 と い う 五 つ の 技 能( 既 述 の 通 り 、一 般 的 4 技 能 と 区 別 し て 筆 者 は 4+1 技 能 と 称 す る ) に 分 け ら れ て い る 。 な お 、 そ の 中 の 「 や り と り」と「 表現」については、一般的には「話す」とされている言 語 技 能 を 更 に 区 分 け し た も の で あ る 。 ま た 、「 ど こ ま で で き る 」 と い う の は 、 そ れ ぞ れ の 技 能 に つ い て 、 一 番 下 の レ ベ ル が A1、 そ の す ぐ 上 が A2、続 い て B1、B2、C1、一 番 上 の レ ベ ル が C2 と いうように、6段階のレベルに分けられている。つまり、 C a n - d o - s t a t e m e n t s は 、「 ど の 技 能 」 が 「 ど の レ ベ ル 」 に あ る か を 現 す 内 容 を 持 っ た 複 数 の 記 述 文 か ら 成 っ て お り 、付 録 に 示 す よ う に 、 そ れ ら の 組 合 せ の 数 ( 30 項 目 ) ほ ど 定 義 さ れ て い る 。 表 2-1 CEFR 自 己 評 価 に 用 い ら れ る 尺 度 * 技 能 話す 聞く 読む 書く やりとり 表現 レベル 「聞 く」の A1 レベルを現 「読 む」の 「やりとり」の 「表 現 」の 「書 く」の A1 レベルを現 す Can-do-statements A1 レベル A1 レベル A1 レベル す Can-do-statements ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ A1 A2 56 B1 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ B2 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ C1 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 「聞 く」の C2 レベルを現 「読 む」の 「やりとり」の 「表 現 」の 「書 く」の C2 レベルを現 す Can-do-statements C2 レベル C2 レベル C2 レベル す Can-do-statements C2 *( 注 ) 実 際 の CEFR 自 己 評 価 表 は 付 録 を 参 照 学 習 者 は 、C a n - d o - s t a t e m e n t s を 用 い て 、 自 分 の 技 能 が ど の レ ベ ル に あ る か 自 己 評 価 す る こ と が で き る 。ま た 、そ れ を 用 い て 、 ど の 技 能 を ど の レ ベ ル ま で 引 き 上 げ る か 、具 体 的 な 目 標 設 定 が や り 易 く な る 。指 導 者 は 、指 導 者 か ら 見 た 評 価 と 学 習 者 自 身 に よ る 自 己 評 価 と を 対 比 し 、学 習 者 と の 話 し 合 い を 通 し て 相 互 理 解 を 深 め る こ と が で き る 。そ れ に よ り 、指 導 者 と 学 習 者 双 方 に と っ て 納 得の行く目標設定、指導計画および進歩確認が容易となる。 今 回 の 調 査 に CEFR 自 己 評 価 を 使 っ た 理 由 は 、 第 一 に 、 EU で は オ ラ ン ダ を は じ め と し 、 既 に CEFR を 実 際 に 使 用 し て お り 、 英 語 は も ち ろ ん の こ と 、ど の よ う な 言 語 に も 適 用 で き る と い う 点 で あ る 。外 国 語 能 力 評 価 に つ い て 共 通 の 尺 度 と し て の 機 能 を も っ て い る 。 第 二 に 、 CEFR は 上 述 の よ う に 、 元 々 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 到 達 レ ベ ル を 示 す た め の 尺 度 と し て 開 発 さ れ て い る 。そ れ ゆ え 、調 査 対 象 者 の 現 実 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 到 達 レ ベ ル を 図 る に は最適の自己評価システムである。第三に、ビジネス界、学会、 外交などを中心とした世界規模の共通言語として英語は幅広く 使 用 さ れ て い る 言 語 で あ り な が ら 、 ESL ま た は EFL を 含 め グ ロ ー バ ル 時 代 に 対 応 し た 世 界 基 準 が 未 だ 確 立 さ れ て お ら ず 、世 界 基 準 た り う る も の が CEFR 以 外 他 に 見 当 た ら な い と い う 現 状 で あ る。 ち な み に Crystal( 2004) に よ る と 、 英 語 を L1 と し て 話 す 57 人 口 は 世 界 で 3.3 億 人 、 さ ら に L2 と し て 話 す 人 口 は 4.2 億 人 、 EFL と し て の 人 口 は 、 14.6 億 人 に お よ ぶ 。 日 本 で も 、 世 界 共 通 の 基 準 に よ っ て 目 標 設 定 し 、 「英 語 を 駆 使 し 国 際 的 に 活 躍 で き る 人 材 」を 育 成 す る こ と が 否 応 な し に 要 求 さ れ る 時 代 が 来 て い る 。 CEFR は 、 日 本 で も 導 入 検 討 が 論 議 さ れ て お り 、 小 池 他 (2007) の研究報告でも支持されている。 現 在 、 TOEIC や 英 検 な ど 、 い く つ か 普 及 し て い る 試 験 は あ る が 、 世 界 標 準 に は な り え な い 。 特 に TOEIC は 一 般 的 英 語 4 技 能 を ふ く む 総 合 的 な 英 語 力 を 包 含 す る と 言 わ れ て い る も の の 、実 際 の 試 験 形 態 は listening と reading か ら 成 っ て お り 、 speaking と writing は 表 向 き 含 ん で い な い 。更 に 、ビ ジ ネ ス 英 語 偏 重 の 傾 向 が あ る た め 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 総 合 評 価 と し て は 不 十 分 と言わざるを得ない。 CEFR は 、 実 際 に 英 語 が ど の レ ベ ル で 使 え る か ど う か C a n - d o - s t a t e m e n t s と し て の チ ェ ッ ク・リ ス ト で あ り 、同 時 に 学 習 者 と 指 導 者 が 共 有 で き る 目 標 リ ス ト で も あ る 。客 観 的 に 自 己 評 価 で き る か ど う か に つ い て 、例 え ば 、小 学 生 で あ れ ば 、発 達 心 理 の 視 点 で は 自 己 中 心 化 か ら 脱 中 心 化 へ の 過 渡 期 で あ り 、ま だ 社 会 化 が 完 成 し て い な い 状 態 で あ る 。 し た が っ て 、 い わ ば 「怖 い も の 知 ら ず 」の 傾 向 が あ る た め 、 自 己 を 過 大 評 価 す る 可 能 性 も あ る 。 逆 に 、自 我 に 目 覚 め 、他 者 と の 比 較 を 意 識 す る 年 頃 に な る と 過 小 評 価 す る 傾 向 が あ る 可 能 性 も あ る 。そ の た め 、正 当 に 自 己 評 価 か 出来るかどうかの懸念を指摘する人もいるのは事実である。 し か し な が ら 、 CEFR に よ る 自 己 評 価 の 妥 当 性 に つ い て は 、 長 年 専 門 家 が あ ら ゆ る 視 点 で 時 間 を か け て 開 発 し 、既 に 欧 州 で は 実 際 に 導 入 さ れ 検 証 済 み で あ る 。実 際 に 使 わ れ て い る こ と の 意 味 は 極 め て 大 き い 。妥 当 性 に 問 題 が あ れ ば 、使 用 さ れ て い な い は ず で あ る 。日 本 で も 様 々 な 研 究 が さ れ て お り 、実 際 に 導 入 へ の 検 討 が 進 ん で い る 。日 本 女 子 大 付 属 高 等 学 校 や 名 城 大 学 、大 阪 大 学 ( 旧 58 大 阪 外 国 語 大 )、 茨 木 大 学 で は 、 試 験 的 に 導 入 し て い る 。 C E F R と T O E I C や 英 検 と の 相 関 性 に つ い て も 小 池 他( 2 0 0 7 ) や 小 山( 2 0 11 )な ど が 取 り 上 げ 検 証 し て い る こ と か ら 、自 己 評 価 の 妥 当 性 に つ い て は ク リ ア さ れ て い る と 考 え る 。ち な み に 、本 研 究 の 調 査 対 象 者 か ら 得 た TOEIC と C-test の 結 果 と そ れ ぞ れ の 被 験 者 の C E F R 自 己 評 価 の 相 関 性 を 分 析 し て み た と こ ろ 、強 い 相 関 性がみられた。その詳細については 5 章 4 節「調査結果の補足」 で述べる。 日 本 へ の 導 入 に つ い て は 、欧 州 版 の C a n - d o - s t a t e m e n t s の 記 述 を 日 本 の 英 語 教 育 、文 化 背 景 に 照 ら し 、何 を ど こ ま で 記 述 し 応 用 す る か に つ い て 、実 験 的 に 試 行 錯 誤 さ れ て い る 状 況 で あ る 。小 池 に よ る と 、「 C E F R の 共 通 参 照 レ ベ ル を そ の 地 域 や 学 校 の 実 態 に 合 わ せ て 細 分 化 し た り 、組 み 替 え た り す る こ と は 欧 州 評 議 会 も 推 奨 し て い る 。そ の た め に 、具 体 性 を あ え て 捨 象 す る 形 で 構 成 さ れ 、 記 述 さ れ て い る 」 (2009,p.25)と 述 べ て い る 。 今 後 の グ ロ ー バ ル 化 の 進 展 の 方 向 か ら 考 え て 、世 界 基 準 に な り え る 尺 度 が 必 要 で あ る 事 、そ れ に は 既 に 実 際 に 使 用 さ れ て い る CEFR が 適 し て お り 、 最 も 重 要 な 点 は 、 CEFR が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 到 達 度 の 尺 度 と し て 開 発 さ れ て い る 事 を 考 慮 し た 結 果 、今 回 の 調 査 に 採 用 す る こ と と し た 。 表 2-1 に 示 す 通 り CEFR は speaking を 更 に spoken interaction と spoken production、 す な わ ち 、「 や り と り 」 と 「 表 現 」 と に 分 け 、 4 + 1 技 能 に よ り 構 成 さ れ て い る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 要 と な る の は 、言 う ま で も な く speaking で あ る が 、 相 手 と の 当 意 即 妙 な 「 や り と り 」 や 臨 機 応変な「表現」は、その場における感情や心理状態に左右され、 内 面 的 特 徴 が 出 易 い 。そ う し た 視 点 か ら も 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 を 明 ら か に す る 今 回 の 調 査 に 、C E F R を 採 用 するのが最適と考えた。 な お 、国 際 的 に 導 入 さ れ つ つ あ る と は い う も の の 、オ リ ジ ナ 59 ルのままでは現状の日本における外国語学習者初級段階へその ま ま 適 用 す る の は 困 難 と 考 え 、4 章 5 節 で 詳 細 に 述 べ る が 、実 際 に使われている英語教科書・テキスト等を参考にしながら、小・ 中 学 生 向 け の 簡 易 版 C a n - d o - s t a t e m e n t s を 独 自 に 作 成 し 、使 用 す ることとした。 今回の調査は、被験者を小学生、中学生、高校生、大学生、 社 会 人 、在 日 外 国 人 留 学 生 と い う よ う に 、年 代 や 学 習 経 験 、国 籍 に お い て 満 遍 な く 範 囲 を 広 げ る と 共 に 、被 験 者 の 学 習 状 況 や 意 識 、 環 境 な ど の 情 報 、情 動 に 関 す る 自 己 申 告 、CEFR 自 己 評 価 な ど 多 岐 に 亘 る デ ー タ を 集 め る こ と に な る 。そ の た め 、CEFR 自 己 評 価 に つ い て も 被 験 者 へ 過 度 の 負 担 と な ら な い よ う 配 慮 し た 。す な わ ち 、吉 島 ・ 大 橋 の 翻 訳 に よ る C E F R 日 本 語 版 を ベ ー ス に 、英 語 版 オ リ ジ ナ ル を あ わ せ て 参 照 し な が ら 、被 験 者 が 分 か り 易 い こ と を 主眼として許容範囲内と考えられる程度に僅かな修正を加えた。 そ れ を 一 般 用 C E F R 自 己 評 価 と し 、高 校 生 、大 学 生 お よ び 社 会 人 に適用した。 な お 、小 学 生 お よ び 中 学 生 に 対 し て は 、小 ・ 中 学 生 が 到 達 で き る 最 高 レ ベ ル を 考 慮 す る と 、一 般 C E F R 自 己 評 価 を そ の ま ま 適 用 す る の は 適 切 で な い と 考 え た 。何 故 な ら 、小 ・ 中 学 校 で 現 在 使 用 さ れ て い る 英 語 教 科 書・テ キ ス ト お よ び 授 業 内 容 な ど を 参 照 す る と 、小 ・ 中 学 生 が 到 達 で き る 最 高 レ ベ ル は 、最 大 限 で も 一 般 用 CEFR 自 己 評 価 に お け る A2 レ ベ ル で あ ろ う と 判 断 し た か ら で あ る 。従 っ て 、一 般 用 CEFR 自 己 評 価 の A2 レ ベ ル を 最 高 点 と し た 小 ・ 中 学 生 用 CEFR 自 己 評 価 を 独 自 に 作 成 し 、 適 用 し た 。 な お 、 小 学 6 年 生 で A2 の レ ベ ル は 現 実 的 で は な い と い う 見 方 も 承 知 し て い る が 、小 学 6 年 生 の 内 か な り の 割 合 の 生 徒 が す で に 塾 で 勉 強 し て い る こ と が 事 前 に わ か っ て い た 為 、あ え て 、中 学 生 と 同 じ 自 己 評 価 表 を 用 い た 。小 学 生 、中 学 生 に 対 し 共 通 の 自 己 評 価 軸 を 使 用 す る 理 由 は 、全 体 8 グ ル ー プ を 比 較 す る 際 、評 価 軸 の 種 類 を 最 60 小 限 に お さ え る 為 で も あ る 。そ の 上 で 、大 人 と の 評 価 結 果 数 値 比 較 を 公 平 に す る た め 調 整 を 行 っ て い る 。( 作 成 方 法 及 び 調 整 方 法 詳 細 に 関 し て は 、 本 論 文 4 章 5 節 、「 日 本 人 学 習 者 小 学 6 年 生 ・ 中学 2 年生用調査方法について」を参照) ま た 、在 日 外 国 人 留 学 生 に 対 し て は 、記 述 文 の 内 容 は 変 え ず 、 一 般 用 CEFR 自 己 評 価 表 の 日 本 語 が 外 国 人 に 分 か り に く い 単 語 や 表 現 部 分 を 、日 本 語 専 門 学 校 の 指 導 者 の 助 言 に 基 づ き 微 修 正 し 、 外 国 人 留 学 生 用 C E F R 自 己 評 価 と し て 適 用 し た 。( 付 録 を 参 照 ) 2.6 ま と め 人間の内部にある心、感情は見えないものの、その表れが、 言 葉 に な る 。L 1 の 獲 得 に お い て も 、さ ら に L 2 の 獲 得 に お い て も そ の 過 程 で 心 理 的 な も の 、人 間 の 情 動 と い う も の が 影 響 し て い る こ と は A s h e r, H . G a r d n e r, R . C . G a r d n e r, K r a s h e n , B r o w n , Larsen-Freeman, MacIntyre 他 多 く の 学 者 が 指 摘 し て い る 所 で あ る 。端 的 に い え ば 特 に 外 国 語 学 習 の 場 合 、情 動 を 前 向 き に プ ラ ス の 方 向 へ 開 放 す れ ば 、そ の 発 達 を 阻 害 す る 状 態 が 少 な く な る も の と 考 え る 。M a c I n t y r e が 述 べ て い る「 言 語 学 習 に お い て 肯 定 的 な 経 験 は 、目 標 と す る 言 語 能 力 を 高 め る こ と に 貢 献 す る だ け で な く 、と り わ け 動 機 づ け を 高 め 、肯 定 的 な 態 度 を 促 す 」 ( 2 0 0 2 , P. 4 9 ) としているのは言語習得と情動との関係を明確に表すものであ る。このことを指導者は根底に理解しておかねばならない。 注: 1) 追観評価 Dörnyei ( 2001 ) の 著 書 Motivational Strageties in the 61 Language Classroom の 翻 訳 書 で あ る 『 動 機 づ け を 高 ま る 英 語 指 導 ス ト ラ テ ジ ー 35 』 (2005, p.32) で 翻 訳 者 米 山 ・ 関 は 「 retrospective self-evaluation」 を 追 観 自 己 評 価 と 翻 訳 し て い る 。意 味 と し て は 、学 習 者 が 自 ら 気 づ き 、学 習 し 、自 ら 設定した目標を達成すべく自己管理する過程のことである。 2) 英 語 教 育 研 修 : 筆 者 が 参 加 し た 2009 年 ハ ワ イ 大 学 に おける夏期研修の例である。 3) K h a n( 1 9 6 9 )の 引 用 部 分 は 、直 接 的 に は L a r s e n - F r e e m a n & Long の 著 書 An introduction to second language acquisition research( 1991) を 牧 野 高 吉 ・ 萬 谷 隆 一 ・ 大 場 浩 正 等 が 邦 訳 し た 「 第 2 言 語 習 得 へ の 招 待 」( 1 9 9 5 , p . 1 8 2 ) を 引 用 し て い る 。 念 の た め Larsen-Freeman and Long が 彼 ら 自 身 の 上 記 英 語 版 オ リ ジ ナ ル で 参 照 し て い る Khan (1969) の 論 文 Affective correlates of academic achievement, Journal of Educational Psychology (60:216-22)を 確 認 し た と こ ろ 、該 当 す る 内 容 部 分 の 記 述 は な い 。牧 野 他 に よ る 邦 訳 に は 誤 り は な く 、 Larsen-Freeman and Long の 著 書 の 中 で 何 ら か の 手 違 い に よ る も の と 考 え ら れ る 。し か し な が ら 、興 味深い部分なので、本論文に使用した。 62 第 3 章 情動とコミュニケーション力に関する事例研究 3.1 グ ロ ー バ ル 社 会 で 必 要 と さ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 多 く の 外 国 人 と 比 べ 、日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 国 際 的 に ど こ に 出 て も 対 応 で き る レ ベ ル と は 言 い が た い 。『 企 業 が 求 め る 英 語 力 調 査 報 告 書 』( 小 池 他 , 2 0 0 7 ) で は 7 , 3 0 0 人 を 超 え る 国 際 的 に 活 躍 す る 日 本 人 ビ ジ ネ ス パ ー ソ ン を 対 象 に 53 項 目 に お よ ぶ ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た と こ ろ 、日 本 人 の 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 弱 さ を 裏 付 け る か の よ う に 、次 の よ う な 興 味 深 い点が報告されている。 外 国 人 と の 職 務 上 の 討 論 に つ い て の 経 験 に 対 し て 、「 1 0 回 中 5 回以上討論についていくのが精一杯で積極的に貢献できない」 と の 回 答 者 が 40% を 超 え て い る 。 TOEIC の 得 点 で コ ミ ュ ニ ケ ー ション力を評価することが必ずしも最適な方法であると筆者は 考 え な い が 、 国 際 ビ ジ ネ ス コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 協 会 の TOEIC テ ス ト D ATA & A N A LY S I S 2 0 1 0 に よ る と 、 日 本 の 商 社 の 平 均 ス コ ア は 2 0 1 0 年 度 で 5 9 5 点 、企 業 の 海 外 部 門 で 6 8 6 点 と 決 し て 高 い と は 言 え ず 、上 記 回 答 と 無 関 係 と は 思 え な い 。ま た 、上 記 報 告 書 に よ れ ば 、「 国 際 的 な ビ ジ ネ ス に は 英 語 に よ る 交 渉 力 、 説 得 力 を 含 む コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 が 必 要 な の は 言 う ま で も な い が 、こ の ほ か に も 要 求 さ れ る 能 力 は 何 か 」 と の 設 問 に 対 し 、「 国 際 的 な 交 渉 力 を 備 え た プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 能 力 」が「 非 常 に 必 要 」と「 か な り 必 要 」 と の 回 答 を あ わ せ る と 85% を 超 え て い る 。 国 際 競 争 に耐えうる日本人の英語コミュニケーション力向上にあげられ て い る 解 決 策 を 選 択 さ せ る 設 問 に 対 し 、「 デ ィ ベ ー ト と ス ピ ー チ の 向 上 を 目 指 し 相 手 を 説 得 で き る 教 育 体 制 を 整 え る 」 が 80% を 超えている。 63 つ ま り 、ビ ジ ネ ス 社 会 に お い て 求 め ら れ る 能 力 と し て 、プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 力 や 英 語 に よ る 交 渉 力 、説 得 力 な ど の デ ィ ベ ー ト やスピーキング力が求められていることが明確に示されている。 と こ ろ が 、日 本 の 学 校 に お け る 英 語 教 育 と い え ば 、入 試 に そ な え 主とし読解力を付ける為文法や語彙に焦点をあてた逐語訳の指 導 法 が い ま だ に 多 く 行 わ れ て い る 。日 本 の 学 生 側 も 、外 国 語 学 習 の動機は、大抵は上級学校への入試に合格する為であり、また、 一部は大学卒業間際になってからの就職試験の為等にとどまり、 そ の 先 の 進 路 を 見 据 え た も の で な い の が 実 情 で あ る 。教 え る 側 も 、 教 え ら れ る 側 も 共 に 、今 日 の 国 際 ビ ジ ネ ス の ニ ー ズ に あ ま り に 疎 いのではないだろうか。 今 日 、英 語 教 育 に 対 す る 関 心 の 高 さ か ら 開 発 さ れ た さ ま ざ ま な 豊 富 な 教 材 は 、視 聴 覚 機 器 の 発 達 に よ り 選 択 に 困 る ほ ど 市 場 に 出 回 っ て い る 。そ れ で も 一 向 に 、日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 期 待 す る ほ ど 顕 著 な 上 達 が 感 じ ら れ な い 。日 本 人 の 英 語 に よ る 表現能力を高める効率的な指導法とはどのようにすればよいの であろうか。 筆 者 が 接 し た 複 数 の 米 国 人 経 営 幹 部 は 一 様 に「 子 供 の 頃 か ら 、 自 分 の 意 見 や 主 張 を は っ き り 表 現 す る 訓 練 を 受 け て き た 。子 供 心 に さ ほ ど 好 き で は な か っ た こ う い っ た 訓 練 が 、将 来 必 ず 必 要 と な る こ と を た た き こ ま れ た 」と 語 る 。彼 ら の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 聞 く も の の 共 感 を 得 た 。そ こ か ら 見 え て き た の は 、彼 ら は 、自 分 の 狙 い 通 り に 相 手 に 分 か っ て も ら う に は ど う 話 せ ば よ い か 、戦 略 的 に 計 算 し 尽 く し て 、話 を 組 み 立 て て い る の で あ る 。つ ま り 、自 分 の 狙 い 通 り に 相 手 に メ ッ セ ー ジ が 伝 わ っ て い る か 、聞 く 者 の 反 応 に 終 始 気 を 配 り 、自 在 に 話 を コ ン ト ロ ー ル す る 。こ の あ た り が 実に巧みなのである。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 、対 峙 す る 両 者 が 交 互 に 、自 分 の 意 思 を 相 手 に 話 し 、同 時 に 相 手 の 意 思 を 聞 く こ と に よ り 成 立 す る 。筆 64 者 は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 す る 認 識 が 、洋 の 東 西 で 歴 史 的 に 大 き く 異 な っ て い た と 考 え て い る 。 す な わ ち 、 西 洋 で は 「自 己 主 張 は 良 い 」と い う 価 値 観 に 支 え ら れ 、 東 洋 で は 以 心 伝 心 つ ま り 沈 黙 を 尊 ぶ こ と か ら 、「 自 己 主 張 は 良 く な い 」 と い う 価 値 観 に 支 え ら れてきた。現代のグローバル化社会とりわけ国際ビジネスでは、 西洋型のコミュニケーションが主流となっているのは周知の通 り で あ る 。そ こ で は 、考 え は 主 張 さ れ る べ き で あ り 、沈 黙 は 考 え が な い も の と み な さ れ る 。い き お い 自 己 主 張 の 得 意 な 者 が 勝 者 と な り 苦 手 な 者 は 敗 者 と な る 。自 分 の 考 え を は っ き り と 相 手 に 伝 え る こ と は 在 る べ き 姿 で あ り 、そ れ 自 体 に 何 ら 問 題 は な い 。同 時 に 、 い か に し て 相 手 の 考 え を 理 解 す る か は 、互 い の や り 取 り を 成 功 さ せ る 重 要 な 点 で あ る 。人 の 考 え は 、育 っ た 環 境 、文 化 、社 会 、風 土 な ど が 違 え ば 異 な る の が 当 然 で あ り 、お 互 い の 違 い を 理 解 し て おかなければコミュニケーションは正しく成立しない。 筆 者 は 、 「自 分 の 考 え を 明 確 な 論 旨 に 整 理 し 、 そ れ を 正 し く 相手に伝え、相手が考えていることを正しく理解するための能 力 」こ そ が 、 双 方 向 に 成 り 立 つ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 で あ る と 考 え る 。 脳 科 学 者 の 茂 木 は 、 1996 年 に イ タ リ ア の 研 究 グ ル ー プ に よ っ て 報 告 さ れ た ミ ラ ー ニ ュ ー ロ ン の 報 告 を 基 に 、「 他 人 の 心 の 状 態 と 、自 分 の 心 の 状 態 を あ た か も 鏡 に 映 し た よ う に 共 通 の プ ロ セ ス で 処 理 す る こ と に よ っ て 、他 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 可 能 に し て い る 」 ( 2 0 0 5 , p p . 11 0 - 111 ) と し て い る 。 日 本 の 長 い 歴 史 の 中 で 、 最 高 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 「以 心 伝 心 」で あ る と さ れ 、 「自 己 主 張 は 避 け た ほ う が よ い 」と い う 価 値 観 が 、日 本 社 会 の 隅 々 ま で 浸 透 し て き た 。日 本 の 学 校 教 育 に つ い て 茂 木 は 、「 他 人 と か か わ り な が ら 、 何 か 新 し い も の を 生 み 出 す と い う 創 造 の 力 を 育 む こ と が 、 重 視 さ れ て こ な か っ た 」( 2 0 0 5 , p.108) と 述 べ て い る 。 こ れ で は 厳 し い 競 争 の グ ロ ー バ ル 社 会 に は 通 用 し な い 。相 手 の 真 意 を お 互 い に 汲 み 取 っ た 上 で 、自 分 の 考 65 えをはっきりと相手に伝えるという日本型と西洋型の双方の長 所 を 組 み 合 わ せ た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、そ れ が 理 想 の 姿 で は な い かと考える。 そ の 為 に は 、ま ず 、自 分 の 考 え を 明 確 な 論 旨 に 整 理 し な け れ ばならない。考えてみると、それらは外国語以前の問題である。 つ ま り 、日 本 人 を 相 手 に 日 本 語 で も 正 し く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で き な け れ ば 、外 国 人 を 相 手 に 英 語 で ま と も に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で き る は ず が な い 。「 不 安 」 や 「 抑 制 」 か ら 開 放 さ れ た 、能 動 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 開 発 と 、そ の 場 に 即 し た 英 語 表 現 能 力 の 開 発 を 両 輪 と し た 「 グ ロ ー バ ル・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 教 育 」 の 確 立 が 必要である。 サ ッ カ ー の 元 全 日 本 チ ー ム 監 督 イ ビ チ ャ・オ シ ム( 2 0 0 7 )は 、 そ の 語 録 で 、国 際 試 合 の 場 で 日 本 チ ー ム に 欠 け る も の と し て 次 の 点を指摘している。 ① 意見を明確にもち、自己主張すること ② 日本人らしさを大事にすること:相手への思いやり、相手 を理解する感性を発揮せよ こ の 指 摘 は 、国 際 的 な ビ ジ ネ ス の 場 に お い て 、グ ロ ー バ ル な コミュニケーション能力に見劣りする日本人の姿を言い表して い る と 言 え よ う 。元 来 、相 手 を 理 解 す る こ と に 長 じ た 日 本 人 の 特 性 を 最 大 限 に 生 か す 一 方 、自 分 の 意 見 を 明 確 に 主 張 す る こ と 、そ れが国際舞台でも通用する力となる。 以 下 の 事 例 1, 事 例 2 は 荒 木( 2 0 11 a )を 基 に ま と め て い る 。 事例1 自 動 車 メ ー カ ー で 23 年 間 、 グ ロ ー バ ル ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 部 門 で 国 際 広 報 業 務 に 従 事 し た 筆 者 の 経 験 を 通 し 、自 分 を 含 め 66 日 本 人 社 員 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 下 手 を 実 感 し た 。そ れ は 米 自 動 車 メ ー カ ー が 経 営 参 画 し た 1996 年 以 来 特 に 顕 著 と な っ た 。 社 内 資 料 の 殆 ど に つ い て 、日 本 語 版 と 英 語 版 を 同 時 に 準 備 し 、英 語 で 説 明 す る こ と が 求 め ら れ た 。米 国 メ ー カ ー か ら の 出 向 組 は 、必 ず し も 英 語 を 母 語 と し て い な い が 、資 料 を 頭 に 叩 き 込 ん だ 上 で 、自 分 の 考 え や 意 見 を 強 烈 に ア ピ ー ル し 、企 画 を 実 現 し て い く 。米 国 で は 小 学 校 1 年 生 の 時 か ら public speaking の 授 業 が あ り 、 訓 練 さ れ て い る と 聞 く 。こ れ に 対 し て 、日 本 人 社 員 の ほ と ん ど は 、英 文版の翻訳原稿を棒読みするだけで、その差は歴然としていた。 国際社会で英語をツールとしてビジネスを遂行していくた めには、バランスよく発達した4技能が必要となる。小池他 ( 2 0 0 7 ) に よ る と 、「 日 本 人 が 国 際 交 渉 を 第 1 線 で 行 う の に 必 要 な 英 語 力 は ど の く ら い な い と 役 に 立 た な い と 思 い ま す か 」と い う 設 問 に 対 し て 総 数 7,354 名 の 回 答 者 の 7 割 以 上 が TOEIC800 点 以 上 、 英 検 で い う と 、 83.6%が 準 1 級 以 上 必 要 と 回 答 し て い る 。 しかしながら、実際にビジネスの現場における筆者の経験上、 T O E I C 9 0 0 点 以 上 で も 十 分 と は 言 え な い 。小 池 の 調 査 結 果 に よ る と、 「高度で複雑な場合の対応力は、 ・・・総 じ て い え ば 、読 む 力 、 聞 く 力 の 受 容 力 、書 く 力 、話 す 力 の 発 表 力 の 順 に 難 し い と 言 え よ う 」( 2 0 0 7 , p . 1 3 2 ) と し て い る 。 さ ら に 、「 国 際 的 な ビ ジ ネ ス の 交 渉 の 場 で 、積 極 的 な 外 国 人 に 先 を 越 さ れ 、交 渉 事 で 引 け を 取 り 、 マ イ ナ ス の 影 響 を 被 る と い う の は 、英 語 能 力 の 低 さ と 学 校 教 育 で コミュニケーションの技能を修練していない日本の教育政策の 貧 困 さ 、ま た 、日 本 人 の メ ン タ リ テ ィ 、穏 や か さ 、性 格 的 に 弱 い と こ ろ が あ る か ら で あ ろ う 」( 2 0 0 7 , p . 1 3 3 ) と 報 告 書 に ま と め て い る の は 、国 際 ビ ジ ネ ス の 現 場 経 験 者 と し て 同 感 で あ る 。本 論 文 で は 、調 査 に 基 づ い て 、日 本 人 学 習 者 の 何 が 弱 点 な の か を 検 証 し ていく。 67 事例2 広 島 市 留 学 生 会 館 在 職 中 、中 国 、韓 国 、タ イ 、日 本 の 大 学 生 を 対 象 に 2003 年 度 青 少 年 国 際 文 化 交 流 プ ロ グ ラ ム の 実 施 を 教 育 委 員 会 の 依 頼 で 手 伝 っ た と き の 体 験 で あ る 。最 終 日 、各 国 の 学 生 が平和や環境などについて 2 週間に及ぶフィールドワークの結 果 を 英 語 で 発 表 し た 。日 本 チ ー ム は 、準 備 し た チ ャ ー ト や 聴 衆 に は 目 も く れ ず 、緊 張 で 手 や 声 を 震 わ せ な が ら ニ コ リ と も せ ず 、メ モ を 読 み 上 げ る だ け の 発 表 で あ っ た 。海 外 組 は 全 員 、英 語 を 母 語 と し な い に も 拘 ら ず 、聴 衆 を 見 て 、チ ャ ー ト を 自 在 に 操 り 、に こ やかに英語で説明し自分達をアピールした。 これらの事例から見えてくるのは、事例 1 の社会人、事例 2 の 大 学 生 の 場 合 、最 低 で も 中 学 、高 校 で 6 年 以 上 、社 会 人 と な る と 、 10 年 以 上 英 語 を 学 ん で き た に も か か わ ら ず 、 英 語 を 使 っ て 特に口頭で表現するということがいかに不得手であるかを示し て い る 。現 時 点 で 社 会 人 、大 学 生 と い う こ と は 、こ れ ま で 受 け て きた英語教育では実際に使える英語にあまり重点が置かれなか った結果といえよう。 ち な み に 、 欧 州 で は 高 校 卒 業 時 点 で CEFR、 B2 が 平 均 的 レ ベ ル で あ る と い う 。そ れ と 比 較 す れ ば 、日 本 人 学 習 者 の 場 合 、現 実 に 力 の 差 は 明 ら か で あ る 。B 2 と は s p o k e n i n t e r a c t i o n で は 「 外 国 人 と 流 暢 に 自 然 に や り 取 り が 出 来 る 。身 近 な 内 容 の 議 論 に 積 極 的 に 参 加 し 、 自 分 の 意 見 を 説 明 、 弁 明 で き る 」レ ベ ル で あ り 、 spoken production で は 「関 心 の あ る 時 事 問 題 や 幅 広 い 話 題 に つ い て 自 分 の 見 解 を 明 瞭 で 詳 細 な 説 明 が 出 来 る 」レ ベ ル で あ る 。 日 本 人 学 習 者 の 場 合 、 高 校 生 は 無 論 、 大 学 生 で も 、 B2 に は 程 遠 い 現実である。学校の教室だけの学習が大多数であったとしても、 最 低 で も 中 学 校 、高 等 学 校 で の 英 語 教 育 6 年 間 、さ ら に は 大 学 で 2 年 ~ 4 年 以 上 、合 計 8 年 ~ 1 0 年 以 上 か ら 考 え る と 、こ の 学 習 年 数 と そ の 成 果 は 、効 率 の 悪 さ と 世 界 レ ベ ル と の 格 段 の 差 を 示 し て 68 いる。 参 考 ま で に 、 CEFR 評 価 レ ベ ル と TOEIC、 実 用 英 語 技 能 検 定 、 TOEFL-PBT の 得 点 レ ベ ル 比 較 を 以 下 の 表 に ま と め て お く 。 ( h t t p : / / w w w. k a n t e i . g o . j p / j p / s i n g i / k y o u i k u _ k o n d a n / k a n s a i / d a i3/2seku/2s-siryou2/pdf-windows Internet Explorer か ら 編 集 ) 表 3-1 CEFR、 TOEIC、 実 用 英 語 技 能 検 定 、 TOEFL-PBT の レ ベ ル比較* CEFR TOEIC 実用英語技能検定 TOEFL-PBT C2 900 点 ~ 1 級 650 点 ~ C1 850 点 ~ 1 級 600 点 ~ B2 800 点 ~ 準 1 級 550 点 ~ (小 池 他 , 2007) * 小 池 (2007)に よ る『 企 業 が 求 め る 英 語 力 調 査 報 告 』表 3. 「日 本人が国際交渉を第一線で行うのに必要な英語力」から抜粋。 表 3-2 CEFR, 実 用 英 語 技 能 検 定 の レ ベ ル 比 較 CEFR TOEIC 実用英語技能検定 TOEFL-PBT B1 ― 2 級 ― A2 ― 準 2 級 ― ― 3 級 *,4 級 *,5 級 * ― A1* (日 本 英 語 検 定 協 会 、 h t t p : / / w w w. e i k e n . o r. j p / f o r t e a c h e r s / d a t a / c e f r / c e f r 0 3 . h t m l を参照) * 上 記 英 検 資 料 に よ る と 、 A1 を さ ら に 3 つ の レ ベ ル に 分 け る フ ィ ン ラ ン ド な ど の 例 を 参 考 に 、「 英 検 5 , 4 , 3 級 ま で は 、 中 学 校 の 指 導 要 領 や 教 室 で の 活 動 な ど も 考 慮 し な が ら 、初 級 段 69 階 の 学 習 者 に 対 し て 実 用 性 が あ る 目 標 と し て 、3 つ と も 、A 1 の中に幅広く位置づけている」としている。 3.2 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と 情 動 と の 関 係 前 節 で 、現 代 の グ ロ ー バ ル 化 社 会 と り わ け 国 際 ビ ジ ネ ス の 世 界 で は 、「 自 己 主 張 は 良 い 」 と い う 価 値 観 に 支 え ら れ た 西 洋 型 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 主 流 と な っ て い る と 述 べ た 。相 対 峙 す る 両 者 の 利 害 が 反 す る よ う な デ ィ ベ ー ト な ど で は 、相 手 に か ま を 掛 け る 、 不 安 心 理 に つ け 込 む な ど 、手 段 を 選 ば ず 何 と し て も 自 分 の 主 張 を 通 そ う と す る 。デ ィ ベ ー ト の 発 達 し た 国 で は 、そ の よ う な フ ェ ア で な い と 思 え る よ う な 戦 略 も 、洗 練 さ れ た 形 で テ ク ニ ッ ク と し て 教 え 込 ま れ る 。そ の 反 面 、友 好 的 な 雰 囲 気 で の 社 交 の 場 や 日 常 会 話 な ど で は 、互 い に 自 己 主 張 を 抑 え 相 手 の 主 張 を 受 け 入 れ る こ と を 美 徳 と す る 。デ ィ ベ ー ト の 指 導 に つ い て は 、日 本 で は 一 部 の 大 学 で 行 わ れ て い る ( 林 , 1 9 9 9 a ) も の の 、実 際 に 社 会 で 将 来 デ ィ ベ ー ト力が発揮できるほどの指導までには至っていないのが一般な 現状である。 こ の 点 は 小 池 他 (2007)に よ る 約 7300人 を 対 象 に し た 調 査 報 告 で も 8 割 を 超 え て「 デ ィ ベ ー ト と ス ピ ー チ の 向 上 を 目 指 し 相 手 を 説 得 で き る 教 育 体 制 を 整 え る 」こ と が 必 要 で あ る と 回 答 し て い る事でもわかる。 本 論 文 で は 、相 対 す る 両 者 の 抱 く 情 動 が 、相 互 の コ ミ ュ ニ ケ ーションの過程や成果に強い影響を与えるのではないかとの視 点で検証する。情動は、人の心、精神の中で起こる感情であり、 他者と対峙する場合や人以外でも心を動かす状況に接した場合 に 生 ま れ る 心 の 反 応 、変 化 で あ り 、心 理 的 に も 生 物 学 的 に も 自 分 さらには対峙する相手にも影響を及ぼすものと考える。 本 研 究 で は 情 動 に つ い て 、既 述 の 8 つ の 要 素 を 取 り 上 げ 、そ 70 れらが外国語習得にどのような影響をおよぼすかを検証するも の で あ る 。そ の 8 つ の 要 素 に つ い て 、相 手 を 無 条 件 に 肯 定 す る 受 容 を 正 極 と し 、相 手 を 問 答 無 用 と ば か り に 否 定 す る 拒 絶 を 負 極 と す る 、い わ ば 、情 動 座 標 系 の 尺 度 と し て 使 用 で き る と 考 え て い る 。 情 動 は 、座 標 軸 に 沿 っ て 振 り 子 の よ う に 揺 れ 動 き 、自 己 が 脅 か さ れ そ う で な け れ ば 正 極 側 へ 振 れ 、少 し で も 脅 か さ れ そ う に な れ ば 負 極 側 へ 振 れ 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 過 程 で 、そ の 情 動 の 動 き に 連れて、正極と負極の間を揺れ動くのではないかと考える。 一 般 的 に 考 え る と 、自 尊 心 ( S E ) 、危 険 負 担 ( R T ) 、共 感 ( E M ) 、 外 向 性 ( E X ) お よ び 寛 容 性 ( T R ) が 、受 容 側 へ 向 い た 状 態 が 肯 定 的 な 情 動 と 考 え ら れ 、不 安 ( A N ) と 抑 制 ( I H ) お よ び 内 向 性 ( I N ) と が 、拒 絶側へ向いた状態が否定的な情動と考えられる。しかしながら、 前 者 が 絶 対 的 に 肯 定 的 な 情 動 と は 限 ら ず 、後 者 が 絶 対 的 に 否 定 的 な 情 動 と は 限 ら な い 。 例 え ば 、 SEは 、 十 分 な 努 力 と 実 績 に 裏 付 け ら れ た 「自 信 」と 、 大 し た 根 拠 も 無 い 自 信 、 つ ま り 「過 信 」や 「自 惚 れ 」と い う 対 極 の 間 で 揺 れ 動 き 、 一 方 、 ANは 、 何 に 対 し て も い た ず ら に 抱 く 「 不 安 」 と 、細 心 の 注 意 を 払 う 「 繊 細 」 と い う 対 極 の 間 で 揺 れ 動 く と 考 え ら れ る 。筆 者 は 、自 分 の 考 え を 正 し く 相 手 に 伝 え る た め に は 、自 分 の 考 え を 臆 せ ず 堂 々 と 伝 え る 「 自 信 」 と 同 時 に 、 相 手 の 考 え を 正 し く 理 解 す る 「 繊 細 」 が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 欠 か せ な い と 考 え る 。要 は 、正 の ベ ク ト ル を 持 つ 情 動 を よ り プ ラ ス の 方 向 へ 引 き 上 げ 、負 の ベ ク ト ル を 持 つ 情 動 を よ り プ ラ ス の 方 向へ引き上げることが大事なのである。 言 語 を 構 成 す る 技 能 は 、 一 般 的 に は 聞 く (listening)、 読 む ( r e a d i n g ) 、話 す ( s p e a k i n g ) 、書 く ( w r i t i n g ) の 四 つ と さ れ る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 、 直 接 的 に は listeningと speakingの 二 つ の 技 能 に よ っ て 行 わ れ る が 、 た だ 単 純 に 聞 い て ( l i s t e n i n g )、 話 し ( s p e a k i n g )さ え す れ ば コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 常 に 成 立 す る わ け ではなく、その行為を通して両者の間に意図した相互作用 71 ( i n t e r a c t i o n )が 働 か な け れ ば 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は い え な い。 筆者は、コミュニケーションを根底で支える 二つのものに 着目し、情動との関係に焦点を当て、考察したいと考えている。 一 つ 目 は 、ど の よ う な 動 機( motivation)を 得 て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 臨 む か で あ り 、 二 つ 目 は 、 ど の よ う な 態 度 ( attitude) で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 臨 む か で あ る 。相 対 す る 両 者 の 動 機 し だ い で 、そ し て 両 者 の 態 度 し だ い で 、い く ら 明 確 な 論 旨 を 準 備 し て い て も 、そ れ を 正 し く 相 手 に 伝 え ら れ ず 、ま た 、相 手 が 考 え て い る こ と を 正 し く 理 解 で き な く て 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 思 い も よ ら ぬ 展 開 に な る 、つ ま り 、意 図 し た 相 互 作 用 が 働 か な る こ と を 、誰 し も 経 験 す る と こ ろ で あ る 。筆 者 は 、肯 定 的 な 動 機 は 、受 容 側 に 寄 っ た 、す な わ ち 肯 定 的 な 情 動 を も た ら し 、前 向 き な 態 度 を 生 み 出 し 、そ し て 意 図 し た 相 互 作 用 を 働 か せ る こ と を 容 易 に す る も の と考えている。 3.3 情 動 、 態 度 、 動 機 づ け の 関 係 前 節 で は 動 機 づ け が 、情 動 と 、ひ い て は 態 度 に 作 用 し 、コ ミ ュニケーション力とコミュニケーションの成否に強い影響を及 ぼ す と 述 べ た 。こ こ で は 8 歳 の 子 供 が 第 2 言 語 で あ る 英 語 を 使 っ て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を ど う 獲 得 し た か と い う 事 例 を 引 い て 、情 動 、態 度 、動 機 づ け の 関 係 に つ い て 更 に 考 察 す る 。本 事 例 は 、両 親 帰 国 時 に 、直 接 面 接 及 び 電 話 イ ン タ ビ ュ ー 等 に よ る 情 報 を 基 に まとめたものである。 事例: あ る 日 、家 族 旅 行 で 遊 覧 船 に 乗 っ た 。妹 の B ち ゃ ん の 帽 子 が 風 に あ お ら れ て 、岸 辺 の 手 の 届 か な い 所 へ 飛 ん で し ま っ た 。両 親 72 は あ っ さ り あ き ら め て B ち ゃ ん を 一 生 懸 命 に な だ め 、ボ ー ト が 桟 橋に着いて家族は船を後にした。ところが A 君が見当たらない。 両 親 が う ろ う ろ さ が し て い る と 、A 君 が ボ ー ト の 船 員 に 一 生 懸 命 に 何 か を 話 し て い る 姿 を 見 つ け た 。船 員 は 長 い 棒 を 手 に し て B ち ゃんの帽子を拾い上げに行き、無事、妹の手に戻った。8 歳の A 君 は 英 語 で 現 地 の 大 人 と 交 渉 ( negotiation) し 、 見 事 に 目 的 を 達成したのである。5 歳で入学したときは英語を殆ど話せず、友 達 か ら 仲 間 は ず れ に さ れ 寂 し い 思 い を し た と 聞 く 。そ れ で も 、学 校 へ 進 ん で 出 か け 、3 年 足 ら ず で 、立 派 な 交 渉 術( d i s c o u r s e s k i l l ) を身につけたのである。 本 事 例 の 子 供 た ち の 両 親 は 日 本 人 で あ り 、ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で 約 1 0 年 生 活 し て い る 。両 親 や そ の 子 供 た ち に と っ て は E S L の 環 境 で あ る 。長 男 の A 君 は も う す ぐ 8 歳 。妹 の B ち ゃ ん は 5 歳 。 両 親 と も 英 語 は 流 暢 で あ る が 、無 理 強 い せ ず 自 然 に 覚 え さ せ れ ば よ い と の 考 え で 、両 親 は 直 接 に は 子 供 た ち に 英 語 を 教 え な い よ う に し て い る 。A 君 は 5 歳( 7 歳 未 満 は p r e - s c h o o l の 位 置 づ け で 入 学 可 能 )か ら オ ー ク ラ ン ド 市 内 の 私 立 Michael Park School へ 通 っ て い る 。 A 君 と ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 国 籍 を 持 つ 2~ 3 人 の イ ン ド 人 、ア ジ ア 人 を 除 け ば 、全 て 英 語 を 母 語 と す る ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 人である。 そ の 学 校 は 、生 徒 に 自 主 性 を 養 わ せ る た め 、問 題 の 答 え を 丸 暗 記 さ せ る こ と は 避 け 、答 え が な ぜ そ う な の か と 納 得 行 く ま で 考 え る こ と を 、 生 徒 に 奨 励 す る 。 更 に 、 14 歳 く ら い ま で の 年 代 の 生 徒 に 対 し て 、将 来 必 要 と な る 思 考 力 の 土 台 と し て 豊 か な 感 情 を 養 わ せ る こ と を 教 育 目 標 と し て い る 。更 に 、様 々 な 芸 術 的 刺 激 を 生 徒 に 与 え 、芸 術 体 験 を 通 し て 世 界 は 美 し い と 感 じ る 感 性 を 育 て て ゆ く と し て い る 。ま た 、エ ポ ッ ク 授 業 と 称 し て 、毎 日 の 特 定 の 時 間 帯 は 数 週 間 に 亘 り 特 定 の 授 業 を や り 続 け る 。例 え ば 、今 月 の 朝 の 2 時 間 は 毎 日 国 語 の 授 業 と い う 具 合 で あ る 。集 中 的 に 学 習 し 73 効 果 を 上 げ る や り 方 で あ る 。テ ス ト と い う も の は 無 く 、点 数 を 付 け る と い う こ と は 一 切 し な い 。 ク ラ ス サ イ ズ は 20 人 程 度 で 、 14 歳 に な る ま で ク ラ ス 変 え は な く 、教 師 は 持 ち 上 が り で あ る 。教 師 は、じっくり日常的に生徒の表情、反応、態度や言動を通して、 個 々 の 生 徒 の 気 質 を 観 察 し 、そ れ に 合 わ せ た 接 し 方 を す る よ う 心 掛 け る 。長 年 に 亘 る 経 験 の 蓄 積 に 基 づ き 、生 徒 の 気 質 は 、4 分 類 に大別し①自己顕示型 ②内向悲観型 ③マイペース型 ④外 向 楽 天 型 な ど と い う よ う に タ イ プ を 分 け ら れ る 。生 徒 が ど の タ イ プ に 近 い か を 判 断 す る 際 の 拠 り 所 と な る の は 、タ イ プ 別 に 用 意 さ れ て い る プ ロ フ ィ ー ル 記 述 で あ る 。 そ の 記 述 は 、「 褒 め ら れ る と 頑 張 る 」、 「 思 い 通 り に な ら な い と 癇 癪 を 起 こ す 」な ど と 非 常 に 具 体 的 で あ り 、 タ イ プ 別 に 10 種 ほ ど に な る 。 そ し て 、 そ れ ぞ れ の タ イ プ の 生 徒 へ の 接 し 方 に つ い て 、非 常 に 具 体 的 な イ ン ス ト ラ ク ション記述が用意されている。 これらすべてを日本の教育環境に取り入れるのは現実的に 無 理 と し て も 、個 人 差 に い か に う ま く 対 応 し た 指 導 を す る か 、生 徒 の 気 持 ち を ど う 把 握 し て 動 機 を 高 め 、持 て る 力 を ど う 伸 ば す か 等 に つ い て は 、情 動 と 関 連 し た 個 人 差 の 側 面 か ら 、学 習 ス タ イ ル に 合 わ せ た 指 導 や 生 徒 別 の ポ ー ト・フ ォ - リ オ を 導 入 す る な ど に よって可能ではないかと考えさせる、示唆に富む教育である。 こ の ケ ー ス を 、A 君 の 情 動 ( E:e m o t i o n ) と 、態 度 ( A:a t t i t u d e ) 、 動 機 (M: motivation)の 関 係 で 見 て い く と 次 の よ う に な る 。 E: ク ラ ス の み な と 仲 良 く し た い 、 楽 し く お し ゃ べ り し た い、遊びの仲間に入りたい。 A: だ れ か れ か ま わ ず 、 日 本 語 で で も 話 し か け ア プ ロ ー チ する。 他 の 子 の し ゃ べ り (英 語 )を 聞 き か じ り 、 ま ね る 。 74 上 手 く ま ね る こ と が で き な く て 笑 わ れ て も 、か ら か わ れても、へこたれない。 一 つ で も 通 じ る と 大 喜 び し て 、も っ と も っ と と ま ね る 。 成 功 体 験 か ら 、 言 葉 (英 語 )を 選 ぶ よ う に な る 。 いつしかクラスのみなをリードできるまでになる。 M: そ の 間 、 先 生 や 親 は 、「 こ の よ う に 話 し な さ い 」 と 答 え を与えるとか、A 君を助けようとはしない。クラスの 子 供 た ち に も 「一 緒 に 遊 ん で あ げ な さ い 」と 、 助 け 舟 を 出したりしない。どうすれば仲間に入れるか自分自身 で 考 え 、 行 動 す る よ う 、 「諦 め ず に ト ラ イ し て ご ら ん 」 と、A 君をひたすら励まし、見守ることに徹する。生 徒が自ら選択と、決断をする能力を育てるという方針 を徹底している。 こ の 過 程 に つ い て 、A 君 の 心 の 内 を D ö r n y e i の 説 に 照 ら し て 分 析 し て み る と 、「 友 達 と 話 が 出 来 る よ う に な り た い 」 と か 「 学 校 に 行 く の が 楽 し く な る よ う に 」と い っ た 内 発 的 動 機 づ け に 支 え ら れ 、肯 定 的 な「 情 動 」と く じ け そ う に な る 否 定 的 な「 情 動 」の 交錯を乗り越え、前向きな「態度」が生まれた。そして、3 年が か り で 、友 達 と 会 う の が 楽 し い 、学 校 が 楽 し い 、他 の 子 を リ ー ド で き る よ う に な り 、遂 に は 、誰 に も 頼 ら ず 、ボ ー ト の 船 員 と 自 分 一人で交渉できるまでになった。 個 性 を 尊 重 し 自 主 性 を 奨 励 す る 肯 定 的 な「 動 機 づ け 」は 、肯 定 的 な「 情 動 」を 導 き 、前 向 き な「 態 度 」を 生 み 出 す も の と 考 え られる。 そ れ に 対 し て 、画 一 的 な 価 値 観 を 押 し 付 け る 否 定 的 な 「 動 機 づ け 」は 、学 習 者 を 否 定 的 な 情 動 に 陥 れ 、消 極 的 な「 態 度 」 を 誘 う と 考 え ら れ る 。日 本 人 学 習 者 は 多 く の 場 合 、受 験 や 就 職 等 に伴う競争原理に追い立てられるストレスや文法完璧追求主義 75 等により、否定的な「動機づけ」に支配されがちである。 肯 定 的 な「 動 機 づ け 」に 導 か れ た 肯 定 的 な「 情 動 」と 、同 じ く肯定的な「動機づけ」によって生み出された前向き(肯定的) な 「 態 度 」、 そ れ ら 三 者 が 相 俟 っ て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 豊 か な も の へ 育 成 す る の で あ る 。三 者 の ど れ か 一 つ で も 否 定 的 な も の に な っ た と す れ ば 、中 で も 特 に「 動 機 づ け 」が 否 定 的 な も の に な っ た と す れ ば 、 否 定 的 な 連 鎖 と な っ て 、 残 る 二 つ の 「 情 動 」、「 態 度 」も 否 定 的 な も の と な り 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 貧 し い も の にとどまることになる。 第 2 章 で 言 及 し た D ö r n y e i は 、肯 定 的 な 情 動 の 上 位 概 念 と し て の「 動 機 づ け 」を 位 置 づ け て い る が 、本 論 文 に お い て は 、情 動 と 動 機 、態 度 に 関 す る 人 間 の 内 的 空 間 概 念 は 、ま ず 、情 動 が 基 盤 にあり、情動要素のうち、肯定的な要素は肯定的な動機を導き、 積 極 的 、且 つ 前 向 き な 態 度 を 生 み 出 す 構 造 に な っ て い る も の と 考 え る 。情 動 、動 機 、態 度 の 高 低 、そ れ ぞ れ の 強 弱 は 学 習 者 そ れ ぞ れ に 個 人 差 が あ る こ と は 言 う ま で も な い 。し か も 8 つ の 情 動 要 素 に 関 す る 相 互 の 影 響 関 係 は 5 章 の 調 査 結 果 で 明 ら か に す る が 、単 純 に 二 次 元 で は な く そ れ ぞ れ の 要 素 が 多 重・多 層 構 造 に な っ て 影 響 し あ い 、さ ら に 、動 機 、態 度 の 軸 と 互 い に 反 応 し 合 っ て プ ラ ス の エ ネ ル ギ ー 、マ イ ナ ス の エ ネ ル ギ ー を 発 し 、最 終 的 に は コ ミ ュ ニケーション力となって発信されていくという仕組みをイメー ジしている。 前述した事例 1 で述べた米国人経営幹部達の幼少時の姿と、 A 君 の 事 例 に は 類 似 性 が み ら れ る 。双 方 と も 、周 囲 か ら の 励 ま し が 肯 定 的 な「 動 機 づ け 」と な っ て 、自 身 の 根 底 に あ る 肯 定 的 な「 情 動 」を 刺 激 し 、そ れ が「 態 度 」と し て あ ら わ れ 、諦 め ず 努 力 し 続 け 自 分 の 願 い を 叶 え た も の と 考 え る 。褒 め た り 、励 ま し た り す る ことが良い方向への流れを支えるものと思われる。 こ れ ら の 事 例 は 、学 習 者 の「 情 動 」に 着 目 し 、彼 ら か ら 肯 定 76 的 な「 情 動 」と 前 向 き な「 態 度 」を 上 手 に 引 き 出 す こ と 、コ ミ ュ ニケーション力の育成に欠かすことのできない重要な視点であ る こ と を 示 唆 す る も の で あ る 。人 間 の 成 長 過 程 に 沿 っ て 、学 習 者 の「 情 動 」を 客 観 的 に 観 察 し 、肯 定 的 な「 動 機 づ け 」に よ っ て 肯 定 的「 情 動 」と 前 向 き な「 態 度 」を 奨 励 す る 、そ の よ う な 学 習 環 境 と 指 導 法 を 日 本 に 導 入 し 定 着 さ せ る こ と が 、日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケーション力の向上に極めて有益であると考える。 3.4 外国語学習における情動と年齢の視点から 前 述 の 事 例 で の A 君 は 、入 学 当 初 、英 語 に 関 し て は 片 言 以 下 のニュージーランド人幼児と同じスタートラインに立っていた と言える。そして、コミュニケーション力においては、3 年足ら ず の 間 に 同 年 齢 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 人 と 並 ぶ ま で に 至 っ た 。英 語 を覚え始めたのが 5 歳という幼少時だったのが幸いしたものと 考 え ら れ る 。そ の た め A 君 は 、 間 違 う の が 不 安 、 恥 ず か し い 、と い う 大 人 が 往 々 に し て 陥 る よ う な 否 定 的 な「 情 動 」に 支 配 さ れ ず 、 ク ラ ス の 皆 と 仲 良 く し た い 、楽 し く お し ゃ べ り し た い 、遊 び の 仲 間 に 入 り た い 、と い う 子 供 が 自 然 に 抱 く 肯 定 的 な「 情 動 」に 恵 ま れ た 。そ し て 、A 君 は 、彼 の 肯 定 的 な「 情 動 」と 前 向 き な「 態 度 」 を 奨 励 し 続 け て く れ る 環 境 に 恵 ま れ た 。肯 定 的 な「 情 動 」と そ れ を 支 え る 環 境 と い う 、二 つ の 幸 い に 恵 ま れ て い な か っ た ら 、こ れ ほどの成功事例にはならなかったであろう。 Listening や speaking か ら 始 ま る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 自 然 に 習 得 す る 英 語 教 育 の 開 始 時 期 と し て は 、こ れ ま で の 日 本 の よ う に 中 学 生 か ら で は あ ま り に も 遅 く 、世 界 的 な 傾 向 で も あ る 小 学 生 か ら と す る の が 、理 に 適 っ て い る と 考 え る 。国 際 的 な 潮 流 に あわせ現状の 5 年生からさらに早めることも検討すべきと考え る 。 A 君 は 幼 少 期 か ら ESL の 言 語 環 境 で 英 語 に 接 し た わ け で あ 77 る が 、E F L の 言 語 環 境 で あ る 日 本 の 場 合 で も 、間 違 っ た ら 恥 ず か し い と か 、人 が ど う 思 う が 不 安 に な っ た り す る よ う な 意 識 が 生 ま れ る 前 の タ イ ミ ン グ で 、英 語 に 慣 れ 親 し ま せ れ ば 、そ の 後 の 英 語 に対する苦手意識を大きくしないものと考える。更に、日本の E F L の 言 語 環 境 に お い て も 、今 日 の よ う に グ ロ ー バ ル 化 し 、教 材 や 様 々 な メ デ ィ ア の そ ろ っ た 時 代 で あ れ ば 、E S L の 環 境 に 近 い 状 況 に す る 手 段 や 道 具 立 て は 豊 富 で あ る 。大 切 な 事 は 、子 供 の 心 理 発達の面から最も効果的なタイミングで英語との接点を持たせ、 そ の 後 、自 分 か ら 学 び た い と い う 前 向 き の 動 機 が 生 ま れ る よ う に 、 ま た 、プ ラ ス の 情 動 に 支 え ら れ る よ う に 配 慮 す る 工 夫 が 必 要 と い うことであろう。 6 歳 か ら 12 歳 の ア ジ ア 圏 の 幼 児 ・ 児 童 へ の 英 語 指 導 の 専 門 家 で あ る Paul は 「 殆 ど の 子 供 た ち は 、 英 語 を 学 ぶ こ と に 対 し て 前 向 き ま た は 少 な く と も 拒 否 感 は な い が 、こ の 前 向 き な 姿 勢 を 失 わ せ た り 、プ レ ッ シ ャ ー を 感 じ さ せ た り 、過 度 な 競 争 意 識 を 生 み 出したり、家庭でやる気を高める努力を怠たることなどにより、 マ イ ナ ス の 影 響 を 与 え る こ と に な る 。最 も 大 切 な こ と は 、子 供 た ち が 、本 を 読 ん だ り 、英 語 で 話 し た り 、も っ と い ろ い ろ 新 し い こ とを自ら学びたいという思いで目を輝かすのをサポートしてや る こ と で あ る 」( 2 0 0 3 , p . 1 6 0 ) と 述 べ て い る 。 Paul は 教 師 の 役 割 に つ い て 、 教 師 と 児 童 の 間 に 心 理 的 な バ リアが生まれるような怖い存在であってはならないとしている。 「 う ま く い け ば 達 成 感 を 持 た せ る こ と 、そ れ に よ り 次 の 課 題 へ の 挑 戦 に 興 味 を 持 つ よ う に な り 、自 発 的 に 前 向 き に 取 り 組 む よ う に な る 」と 人 間 の 成 長 の 過 程 を 心 理 的 な 側 面 か ら と ら え 、幼 少 か ら 自 発 的 に 取 り 組 む よ う な child-centered learning の 第 二 言 語 指 導 を 実 践 し て い る (p.23)。 さ ら に 、以 下 の よ う に 論 じ て い る 。初 級 レ ベ ル で は 間 違 い を 指 摘 す る よ り も 、口 を 開 か せ る こ と に よ り 、積 極 的 に 話 す 自 信 を 78 生 む よ う 育 成 す る こ と が 大 事 で あ る 。間 違 い の 指 摘 は 上 達 し て か ら で あ れ ば 、指 摘 を す ん な り 受 け 入 れ る 土 壌 が 育 っ て い る 。ま た 、 自分で気づくようにもなる。児童は、常にチェックされるとか、 評 価 さ れ て い る と 、自 発 的 な 動 機 を 失 っ て し ま う 。ま た 、他 の 人 と 比 較 さ れ た り す る と 、失 敗 を す ま い と 抑 制 が か か り 、自 信 を 失 い 、前 向 き に 取 り 組 む 気 持 ち を 失 っ て し ま う 。少 々 間 違 っ て も 口 を 開 く よ う 工 夫 す る こ と で あ る 。プ ラ ス の 情 動 は 学 習 に プ ラ ス に 働 き 、脳 は こ の 情 報 が 重 要 だ と メ ッ セ ー ジ を 出 し 、記 憶 も 保 持 さ れ る 。恐 れ や ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 は 脳 が 合 理 的 な 学 習 効 率 を 低 下 さ せ 、学 ん だ こ と も 保 持 す る よ う に 働 か な い 。し た が っ て 、子 供 た ち に は 楽 し く 学 ば せ 、不 安 や ス ト レ ス と い っ た マ イ ナ ス の 影 響 を 与えないことが大切であると示唆している。 第 二 言 語 習 得 に 関 し て 、臨 界 期 仮 説 に つ い て こ こ で ふ れ て お き た い 。 L e n n e b e r g ( 1 9 6 7 ) は 、「 子 ど も が 自 然 に 言 語 を 獲 得 す る ま で の 時 期 を 臨 界 期 と し 、 思 春 期 ( 12 歳 ~ 14 歳 ) に な っ て 脳 の 一 側 化 (左 脳 優 位 性 )が 完 了 す る と 言 語 の 自 然 な 獲 得 が 困 難 に な る 」 と し て い る 。 こ れ に 対 し て Krashen( 1973 )は 「 脳 の 一 側 化 は 4~ 5 歳 頃 ま で に 終 わ り 、 臨 界 期 と 脳 の 一 側 化 の 年 齢 を 関 係 づ け る こ と は で き な い 」と し て い る 。( 林 , 1 9 9 9 b , p p . 3 0 8 - 3 0 9 参 照 ) 。 第 二 言 語 習 得 に 関 し て は 、 自 然 な 言 語 環 境 で の 習 得 ( ESL) と 形 式 的 な 言 語 環 境 (EFL)に よ っ て 異 な っ て く る 。 臨 界 期 、 つ ま り 思 春 期 ま で の 習 得 に つ い て 最 適 な 時 期 は 、自 然 か 教 室 か と い う 習 得 場 面 の 型 と い っ た 2 つ の 要 因 に 左 右 さ れ る 。こ の 見 解 に 関 連 し て S t e i n b e r g は 、 幼 い 子 ど も ( 6 歳 以 下 )、 年 長 の 子 ど も ( 6 歳 ~ 9 歳 / 1 0 歳 ~ 1 3 歳 )、大 人 ( 1 3 歳 以 上 ) に わ け て 次 の よ う に ま と め て い る ( 国 広 ・ 鈴 木 邦 訳 、 1 9 8 8 、 p p . 2 1 9 - 2 2 0 )。 自然場面: 幼 少 児 >年 長 児 >大 人 79 ・記 憶 力 お よ び 運 動 技 能 の 高 さ を 最 大 発 揮 し 、幼 い 子 供 の 方 が 最も優れている。 ・習 得 の た め の 社 会 的 交 わ り に つ い て 、大 人 は 年 長 の 子 供 よ り 不利になる。 教室場面: 年 長 児 >幼 少 時 ・教室での適応能力と説明の処理は向上する。 年 長 児 >大 人 ・説 明 の 処 理 は 大 人 は 進 歩 す る も の の 、記 憶 力 の 低 下 の 影 響 が 不利に働く。 幼 少 児 >年 長 児 >大 人 ・運動機能の低下により、発音は幼い子どもが優れている。 大 人 >年 長 児 > 幼 少 児 ・教 示 の 処 理 (教 え ら れ た 事 等 の 処 理 )や 教 室 で の 技 能 は 優 れ て いる。 以 上 の ま と め に つ い て 、 Steinberg は 、 基 本 的 能 力 に 関 し 個 人 差 が あ る 事 は 言 う ま で も な い と し て い る 。た だ し 、個 人 の 能 力 が 変 化 し て い く 時 、年 齢 の 幅 に は 差 が あ っ て も 、そ れ が 生 じ る 順 序は同じであると指摘している。 更 に 、第 二 言 語 習 得 に 関 し て は 、発 音 と 文 法 の 側 面 に つ い て 次 の よ う な 調 査 が あ る 。発 音 に 関 し て 、大 山( O y a m a , 1 9 7 6 )は 、 イタリア語を母語としてアメリカで英語を自然言語環境で学ぶ 6 歳 ~ 2 0 歳 の 6 0 名 の 移 民 の 子 供 た ち を 対 象 に 、米 国 へ の 到 着 年 齢 と 滞 在 年 数 に つ い て 調 査 し た 結 果 、滞 在 年 数 よ り 到 着 年 齢 が 低 い ほ ど 母 語 話 者 に 近 い と し て い る (林 , 1999b , p.309,参 照 )。 文 法 に 関 し て は 、S n o w a n d H o e f n a g e l - H ö h l e ( 1 9 7 8 ) は 3 ~ 1 0 歳 の 学 習 者 は 勝 る が 、最 も 速 く 獲 得 す る の は 1 2 歳 ~ 1 5 歳 で あ る と し 80 て い る (林 ,1999b , p.309 参 照 )。 第 二 言 語 習 得 に 関 し て 、年 齢 の 影 響 が 強 い と い う 臨 界 期 仮 説 に つ い て は 諸 説 論 争 が あ る 事 は 前 述 の と お り で あ る が 、臨 界 期 仮 説にかかわる諸説は明確に実証されたわけではない。要するに、 共 通 し て い る ポ イ ン ト は 、幼 少 の 時 に 第 二 言 語 に 接 す る 環 境 で あ れ ば 、自 然 さ 、流 暢 さ が 獲 得 で き る と い う も の で あ る 。し か し な が ら 、英 語 が 母 語 話 者 の よ う に 自 然 で あ る か ど う か と 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 が 育 つ か ど う か は 次 元 の 異 な る も の で あ る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は も っ と 人 間 の 内 的 な も の で あ り 、自 分 の 思 い を 表 現 で き る か ど う か の 領 域 で あ る 。 Brown( 2000) は 幼 児 は 恥 か し い と か 、間 違 い を 恐 れ る な ど の 感 情 が 比 較 的 弱 く 、一 方 、成 人 の 方 が 精 神 的 な 抑 制 が 強 い と か 、 L1 話 者 と し て の ア イ デ ン デ ィ ー が よ り 確 立 し て い る と い う 点 で 、幼 児 の 方 が 自 然 に 会 話 に 入 っ て い け る 。し た が っ て 、こ の 時 期 に 、第 二 言 語 に 接 す る こ と は 年 齢 が 高 く な っ て か ら 接 す る 場 合 に 比 べ 、抵 抗 が 少 な い で あ ろ う と 主 張 し て い る (pp.63-66)。 こ の 点 は 、E F L で の 言 語 環 境 で 長 年 日 本 人 の 幼 児 、児 童 に 英 語 指 導 し て い る Paul(2003)も 同 様 な 見 解 で あ る 。 ESL の 環 境 で は あ る が 、ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド の A 君 の 事 例 で も そ の こ と が 言 え る 。 つ ま り 、子 供 で あ る が ゆ え に 間 違 う か ど う か 不 安 等 に よ り 抑 制 さ れ る こ と な く 、大 人 と 対 峙 し て 自 由 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン す る こ と が 可 能 と い う こ と で あ ろ う 。言 語 知 識 も 必 要 で は あ る が 、そ れ 以 上 に 言 語 運 用 に は 、精 神 的 な 面 が 強 く 関 わ っ て い る も の と 考 え られる。 3.5 小 学 校 英 語 教 育 に お け る 年 齢 と 情 動 の 視 点 か ら 文 部 科 学 省 は 2 0 11 年 度 か ら 小 学 校 5 年 生 、 6 年 生 で 必 修 化 さ れ て い る 小 学 校 英 語 活 動 の 概 要 を 発 表 し て い る 。 2008 年 6 月 81 に公布された小学校学習指導要領解説・外国語活動編によると、 その目標は「コミュニケーション能力の素地を養うことであり、 外 国 語 を 用 い て 、積 極 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 ろ う と す る 態 度 の 育 成 」 に 重 点 が 置 か れ て い る 。 筆 者 は 、 2006 年 、 文 科 省 指 定研究開発校の一つである広島県内の公立小学校の 1 年生から 6 年 生 ま で 各 学 年 の 授 業 を 観 察 し た 。授 業 で は 、単 に お 決 ま り の 挨 拶 を 鸚 鵡 が え し に 繰 り 返 し 覚 え さ せ る 事 が 中 心 で あ っ た 。思 考 が 伴 わ な い こ れ ら の 指 導 で は 記 憶 の 訓 練 と し か 言 い よ う が 無 い 。前 述 し た ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 在 住 の A 君 の ケ ー ス で は 、指 導 者 は 徹 底 し て 、自 分 で 考 え さ せ 、判 断 さ せ る こ と を 教 育 の 大 前 提 と し て お り、自分で問題を解決に導くのが当たり前の教育方針であった。 ESL の 言 語 環 境 に あ る A 君 の ケ ー ス と 同 じ に す る 事 は で き な く て も 、日 本 の 教 室 で 以 下 の よ う な こ と は 試 み る こ と は 可 能 と 考 え る 。「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 素 地 を つ く る 」 と い う 意 味 に お い て 児 童 の 小 学 校 に お け る 英 語 力 を 伸 ば す 為 に 情 動 の 側 面 か ら 、児 童 の自信に結びつく次の点を示唆したい。 一 つ 目 は 、指 導 者 が 授 業 中 は 一 切 日 本 語 を 使 わ な い よ う に す る こ と で あ る 。言 い 換 え れ ば 、指 導 者 も そ れ が 可 能 な レ ベ ル の 人 材 を 指 導 者 と す る こ と が ま ず 体 制 と し て 必 要 で あ る 。英 語 教 育 に つ い て も 、 そ の 他 の 技 芸 (例 え ば 、 ピ ア ノ や バ レ ー 等 )と 同 じ く 、 初 級 だ か ら こ そ 、よ い 指 導 者 が 必 要 と 考 え る 。指 導 者 は 生 徒 を 外 国 人 と 見 立 て て 、根 気 強 く 英 語 で 話 し か け る 。話 の 内 容 は ご く 簡 単 な こ と で 、出 来 る だ け 生 徒 の 日 常 に 起 こ っ て い る こ と に つ い て 質 問 、僅 か な 断 片 で も 生 徒 が 回 答 し た ら 、褒 め た り 、励 ま し て あ げ る 。褒 め る こ と が 子 供 の 心 に 前 向 き な 気 持 ち 、態 度 を 養 う こ と を 指 導 者 は 理 解 し 、日 常 的 に 取 り 入 れ る 必 要 が あ る 。段 々 と 生 徒 が 慣 れ て く れ ば 、生 徒 が 興 味 を 持 ち そ う な 場 面 を 演 出 し て 、生 徒 の 方 か ら 質 問 や 発 言 が 出 る よ う に 導 い て 行 く 。上 述 の 授 業 観 察 の 事 例 で 目 の 当 た り に し た 実 態 は 、お 決 ま り の 挨 拶 を 繰 り 返 し 同 じ 82 パ タ ー ン で 鸚 鵡 が え し に 覚 え さ せ て い る だ け で あ り 、そ の よ う な 教え方では現実に起こる様々な文脈に対応できないと思われる。 そ れ で は 目 標 の「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 素 地 を 養 う 」こ と と は 程 遠 い と 言 わ ざ る を 得 な い 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 基 盤 と な る 積極的且つ自発的な対話の形に持っていくことが重要ではなか ろうか。 二つ目は、指導者と保護者の問題意識を変えることである。 指 導 者 と 保 護 者 の 多 く は 、自 身 の 学 生 時 代 体 験 し た 進 学 至 上 の あ ま り 、も っ ぱ ら 点 数 を 取 る た め 文 法 訳 読 式 の 授 業 に 追 わ れ た 。英 会話がいくら上手になっても進学試験に役立たないという思い 込 み が 、指 導 者 自 身 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 強 化 を 妨 げ 、保 護 者も試験の点数がとれるような授業を期待する事態を生んでは い な い だ ろ う か 。生 徒 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 最 大 限 に 引 き 出 し 、伸 ば す こ と が で き る か ど う か は 指 導 者 の 研 鑽 と 保 護 者 の 理 解 にかかっているものと考える。 ア イ ル ラ ン ド の 臨 床 心 理 学 者 で あ る Humphereys は 特 に 幼 児 、児 童 に 対 し て 指 導 者 、保 護 者 が ど う 扱 う か が 極 め て そ の 後 の 成 長 、発 達 に 重 要 で あ る と し て い る 。例 え ば 、自 尊 心 の 低 い 子 ど も に 対 し て 、過 剰 抑 制( o v e r c o n t r o l )の 場 合 に は 観 察 調 査 の 結 果 、 次 の よ う に な る 傾 向 が あ る と し て い る ( 1 9 9 6 , p . 3 )。 ・恥ずかしがり屋であり、すぐにあきらめる。 ・非常におとなしい。 ・新しいことに取り組むことを嫌う ・ほかの子供と溶けあう事ができない。 ・学習場面で意識しすぎるか、無関心である。 ・新しい状況に対して怖れを抱いたり、気弱である。 ・積極的に間違いを指摘されたら、すぐに頭にくる。 ・否定的に間違いを指摘されたら、かなり激しく頭にくる。 ・ 間違いや失敗を恐れる。 83 こ れ に 対 し て 、自 尊 心 が 高 い 場 合 、次 の 様 な 特 徴 が あ る と し て い る (1996, p.80)。 ・独立心が強い。 ・オープンで、反応が早い。 ・柔軟である。 ・直接的で、明確なコミュニケーションができる。 ・自分を他人も受け入れる寛大さがある。 ・他人との違いや価値に敬意を持つ。 ・他人の意見をきく。 ・情緒的に大人である。 ・弱み、強みを現実的に認識している。 ・弱みを強みに変える機会としてとらえている。 ・いろいろな感情・気持ちを豊かに表現できる。 ・必要な場合には支援、アドバイス、助けを素直に求める。 ・人生のすべての面に全力投球する。 ・自分を信じ、価値を認知している。 ・他人を大事にする。 ・ 問題解決ができる。 Humphreys は こ れ ら を コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 必 要 な 要 素 と し て 指 摘 し て い る わ け で は な い が 、筆 者 は ま さ に こ れ ら は 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 必 要 な 要 素 で あ る と 考 え る 。自 尊 心 を う ま く育てることが人間としてコミュニケーション力育成にいかに 大 事 で あ る か を 示 す も の で あ り 、将 来 の 健 全 な 成 長 の 基 盤 と な る た め に 幼 い 時 期 で あ れ ば 尚 更 、重 要 で あ る と 言 え よ う 。こ の 基 盤 が う ま く 育 っ て い れ ば 、外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い ても臆することなく自分を巧みに表現し、相手を理解しながら、 や り と り が で き る も の と 考 え る 。少 な く と も 言 語 知 識 が あ り な が 84 ら 、う ま く 運 用 で き な い と い う 日 本 人 に あ り が ち な 現 象 は 減 少 す るものと思っている。 3.6 ま と め コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 引 き 出 し 、伸 ば し て ゆ く に は 、EFL と し て の 学 習 の 開 始 時 期 、指 導 者 の 役 割 、情 動 に 配 慮 し た 指 導 法 が 鍵 と な る と い う こ と を 述 べ た 。学 習 者 の 情 動 を 肯 定 的 な エ ネ ル ギ ー に 向 か わ せ る の は 、学 習 者 、特 に 幼 少 期 に 不 安 等 過 度 の プ レ ッ シ ャ ー を 与 え な い こ と 、指 導 者 や 保 護 者 等 の 意 識 改 革 等 の 取 り 組 み が 重 要 な 条 件 に な る も の と 考 え る 。学 習 者 が 積 極 的 に 関 心 を 持 ち 、自 ら 疑 問 や 質 問 が 出 る よ う な 教 育 環 境 を 指 導 者 や 保 護 者 が 作 り 出 す こ と が 、結 果 と し て 学 習 者 の 思 考 力 を 発 達 さ せ 、そ れ が コミュニケーション力を育成する重要な基盤となる。 以 上 の こ と か ら 、本 論 文 に お い て コ ミ ュ に ケ ー シ ョ ン 力 の 発 達に情動がどのように影響するかを明確にするため実証的調査 をする必要がある。 85 第4章 4.1 情動と外国語学習の関連性についての調査 本調査の目的 本 研 究 で は 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 関 係 を 検 証 す る 為 、 多くの人々の協力を得てアンケート調査を実施した。 アンケート調査の主眼は、情動とコミュニケーション力が、 ど の よ う な 関 係 に あ る の か 、も っ と 厳 密 に 言 え ば 、情 動 の 肯 定 的 ま た は 否 定 的 度 合 い 、つ ま り 本 章 3 節 で 言 及 す る 4 件 法 に よ る 選 択 の 度 合 い (以 後 、 情 動 レ ベ ル と 呼 ぶ )と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 に 、ど の 程 度 の 相 関 性 が 存 在 す る か に つ い て 、明 確 に す る こ と に あ る 。本 研 究 で は 、学 習 者 の 情 動 レ ベ ル を 上 手 に 引 き 上 げ る ような学習環境と指導法を導入し定着させることが日本人のコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 向 上 の 鍵 を 握 る も の と 想 定 し 、そ の 観 点 か ら 、 以 下 の 3 つ の 仮 説 を た て 、調 査 を 通 し て 統 計 的 に 検 証 し 考 察 す る こととする。考察に際し、1 章や、本章 4 節、5 節、6 節で述べ る よ う に 、本 論 文 は 、デ ー タ を 統 計 処 理 し 主 と し て 量 的 研 究 を お こ な い 、さ ら に 、補 足 的 に 質 的 研 究 を 加 え 、以 下 の 仮 説 を 両 面 か ら 検 証 し た 結 果 を 基 に 論 じ て い く 。ち な み に 、や ま だ (2004)に よ る と 、質 的 研 究 と は「 具 体 的 な 事 例 を 重 視 し 、そ れ を 文 化・社 会 ・ 時 間 的 文 脈 の 中 で と ら え よ う と し 、人 々 自 身 の 行 為 や 語 り を 、そ の人々が生きているフィールドの中で理解しようとする学問分 野 で あ る 」( 住 , 2 0 1 2 , p . 2 4 3 参 照 ) と 述 べ て い る 。 仮 説 1: 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、 情 動 は 外 国 語 によるコミュニケーション力に影響を与える。 86 仮 説 2: 日 本 人 学 習 者 に 関 し 、情 動 と C E F R の 関 連 性 は 発 達 段 階によって異なる。 仮 説 3: 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、 情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 確 な 違 い が あ る。 以 下 、こ れ ら の 仮 説 を 検 証 す る 為 、調 査 内 容 、調 査 方 法 、調 査対象者、調査手順、分析方法について詳細を述べる。 4.2 情動と外国語学習の関連性についての国際比較調査 外 国 語 学 習 に お い て 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 英 語 の 4 技 能 が 統 合 的 に 成 果 を 発 揮 し た 結 果 で あ る と 考 え ら れ る が 、日 本 人 は この英語によるコミュニケーションが不得意であるといわれて い る 。本 研 究 の 目 的 は 、そ の 要 因 を 調 査 考 察 し 、明 ら か に す る こ とにある。 外 国 語 学 習 の 成 否 に は い ろ い ろ な 要 素 が 関 連 し て い る 。2 章 3 節 4 項 で 言 及 し た よ う に Larsen-Freeman and Long( 1991, p . 1 5 3 )) は 、言 語 適 性 、社 会 ・ 心 理 的 要 因 、性 格 、認 知 ス タ イ ル 、 大 脳 半 球 の 一 側 化 、学 習 ス ト ラ テ ジ ィ ー 、そ の 他 の 要 因 が 考 え ら れ る と し て い る 。本 研 究 で は 、日 本 人 学 習 者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に は 学 習 者 の 情 動 が 影 響 を 与 え て い る と い う 仮 説 を た て 、外 国 人 を 含 め た 調 査 ・ 面 接 結 果 を 基 に 国 際 比 較 検 証 す る 。こ れ に よ り、日本人学習者の特徴をより明確に出来ると考える。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と 情 動 の 視 点 で 、E F L と し て の 日 本 人 を 対 象 と し た 調 査 は 殆 ど な い 。本 章 で は 、小 学 生 、中 学 生 、高 校 生 、 英語を専攻としない大学生、英語圏への留学経験のある大学生、 社 会 人 英 語 上 級 者 な ど 、す べ て の 学 習 段 階 に お よ ぶ 日 本 人 学 習 者 87 3 2 0 名 と 在 日 外 国 人 留 学 生 1 0 2 名 の 比 較 調 査 を 基 に 、情 動 が コ ミ ュにケーション力に及ぼす影響に焦点をあてて考察する。 国 際 比 較 す る 対 象 の 学 習 者 は 、日 本 に 留 学 生 と し て 日 本 語 専 門 学 校 、大 学 お よ び 大 学 院 で 勉 強 し て い る 中 国 人 、ベ ト ナ ム 人 で あ る 。留 学 生 の 中 に は 社 会 人 と し て 就 業 経 験 の あ る 学 生 も 含 ま れ て い る 。留 学 生 を 調 査 対 象 に 加 え た 理 由 は 、情 動 の 形 成 に 強 く 影 響 す る と 考 え ら れ る 地 理 的 風 土 、文 化 的 背 景 、社 会 的 慣 習 、人 生 的 価 値 観 に お い て 、同 じ ア ジ ア 圏 で あ り な が ら 、日 本 人 と 大 き く 異 な る た め 、情 動 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ の 影 響 は 一 層 明 確 に な る と 考 え る か ら で あ る 。調 査 に お い て 日 本 人 学 習 者 と 比 較 対 象 に す る こ れ ら の 留 学 生 は い わ ば 、J F S L ( J a p a n e s e a s a f o r e i g n o r second language) の 言 語 環 境 で 日 本 語 を 目 標 言 語 と し 日 本 で 学 んでいる。 こ の ケ ー ス を 、 日 本 人 学 習 者 が 英 語 を EFL の 環 境 で 英 語 を 学 ん で い る 場 合 と 比 較 す る こ と が 妥 当 か ど う か 検 証 す る た め 、中 国 人 留 学 生 、ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の 中 か ら そ れ ぞ れ 一 人 ず つ 無 作 為 に 選 び 補 完 調 査 を お こ な っ た 。こ れ ら 留 学 生 は 、母 国 中 国 、ベ ト ナ ム に お い て 、 そ れ ぞ れ 英 語 を EFL の 環 境 で 第 一 外 国 語 と し て 学 習 し て お り 、そ の 後 、日 本 に 留 学 し 、本 格 的 に 日 本 語 を 第 二 外 国 語 と し て 学 習 し て い る 。4 章 3 節 で 言 及 し て い る 調 査 方 法 と 全 く 同 じ 方 法 で 、英 語 学 習 の 場 合 と 日 本 語 学 習 の 場 合 の 二 通 り 回 答 を し て も ら い 、さ ら に 面 接 調 査 を お こ な っ た 。こ れ ら 補 完 調 査 の 結 果 、学 習 者 は 目 標 言 語 に 左 右 さ れ な い こ と を 確 認 し 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 係 性 を 国 際 比 較 す る 場 合 、 EFL と JFSL の 条 件 で 調 査 を 行 う 事 が 不 適 切 で は な い と の 確 信 を 得 た 。 補完調査結果の詳細については 5 章 4 節「調査結果の補足」 で 述 べ る が 、留 学 生 に 面 接 を 行 っ た 際 、日 本 で 日 本 語 を 学 ぶ こ と と 、母 国 で 英 語 を 学 ぶ こ と に 関 し て 、情 動 面 で 著 し い 変 化 が あ る か ど う か の 質 問 に 対 し て 、中 国 人 留 学 生 は「 全 く な い 」と 回 答 し 88 て い る 。さ ら に 、ベ ト ナ ム 人 留 学 生 に 対 す る 面 接 で は 、日 本 語 の 場 合 、「 特 に 教 室 で 細 か い 間 違 い ま で 指 摘 さ れ る の で 、 人 前 で 話 す の は ス ト レ ス を 感 じ る 」と 答 え て い る 。こ の 点 は 、日 本 人 学 習 者 が 英 語 を EFL 環 境 で 学 ぶ 場 合 と 似 通 っ て い る 。 ベ ト ナ ム で 英 語 を 勉 強 し た 際 に は 、指 導 者 か ら 微 細 な 間 違 い な ど 指 摘 さ れ る こ と は な く 、 勉 強 が 楽 し か っ た 」と 答 え て い る 。 本 研 究 の 目 的 は 学 習 者 の 心 の あ り 方 、心 情 が 、相 手 と 対 峙 し コミュニケーションをする能力にどのように影響を及ぼすかに つ い て 明 ら か に す る も の で あ る 。故 に 目 標 言 語 の 違 い や 、さ ら に 、 E F L や J F S L と い っ た 習 得 す る 際 の 外 部 環 境 の 違 い よ り も 、こ れ ら 中 国 人 、ベ ト ナ ム 人 が 回 答 し て い る 通 り 、学 習 者 一 人 ひ と り の 気 持 ち の あ り 様 が ど う 影 響 し て い る か が 問 題 で あ る 。し た が っ て 、 言 語 環 境 が 同 じ で な け れ ば 適 切 に 比 較 で き な い と は 言 え な い 。手 始 め に 今 回 の 調 査 で は 、 EFL の 日 本 人 学 習 者 と 、 JFSL の 在 日 外 国人留学生を国際比較する。基本となる情動要素関連設問と C E F R 自 己 評 価 シ ス テ ム を 基 に 、言 語 環 境 が 異 な る 条 件 で 調 査 し 、 影 響 要 因 の 一 端 を 見 て い く 。な お 、今 後 の 課 題 と し て 、必 要 に 応 じ て 条 件 を EFL の 日 本 人 学 習 者 と 中 国 で 英 語 を 学 習 し て い る EFL と し て の 中 国 人 学 習 者 を 比 較 調 査 す る こ と も 視 野 に 入 れ て いる。 4.3 調査方法 調 査 手 法 は 、一 つ 目 は 、上 述 の 8 つ の 情 動 要 素 S E 、I H 、R T 、 A N 、E M 、E X 、I N 、T R( 自 尊 心 、危 険 負 担 、不 安 、共 感 、抑 制 、 外 向 性 、内 向 性 、寛 容 性 )に つ い て そ れ ぞ れ 5 項 目 ず つ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン や 動 機 に 関 連 す る 合 計 40 項 目 の 設 問 を 作 成 し 、 調 査 対 象 者 は 、次 の 4 つ「 全 く そ う で あ る 」 「まあまあそうである」 「ま あまあそうではない」 「 ま っ た く そ う で は な い 」の 中 か ら 選 び 、4 89 件法で情動レベルを測る選択尺度を設定する。 な お 、8 つ の 情 動 要 素 に 対 し 計 4 0 の 設 問 項 目 を 作 成 し た 段 階 で 、内 的 整 合 性 を 持 つ か ど う か 判 定 す る 為 に 求 め た ク ロ ン バ ッ ク ア ル フ ァ は 、 α = .78 で あ り 、 妥 当 で あ る こ と を 確 認 し た 。 二 つ 目 は 、実 際 に EU の 一 部 、ア ジ ア の 一 部 で 使 用 さ れ て い る 欧 州 言 語 共 通 参 照 枠 組 み ( CEFR ) に 着 目 し 、 そ の 日 本 語 版 CEFR 自 己 評 価 表 を 用 い る 。 CEFR 自 己 評 価 表 は 、 実 際 に 外 国 語 を 運 用 す る 状 況 に 則 し た 育 成 指 標 の 機 能 を 持 ち 、元 来 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 到 達 目 標 を 示 す 指 標 で あ る 。し た が っ て 、情 動 と の 関 連 性 を 反 映 し 易 い と 考 え る 。な お 、CEFR の 到 達 レ ベ ル を 示 す 能 力 記 述 文 ( Can-do-statements) は 吉 島 ・ 大 橋 の 翻 訳 に よ る 日 本 語 版 を 参 考 に し 、被 験 者 の 負 荷 軽 減 の た め 許 容 範 囲 内 で 微 調 整 し 、分 か り や す く し た 。C E F R は 、s p e a k i n g を 「 や り と り ( s p o k e n interaction)」と 「表 現 ( spoken production) 」と い う 二 つ の 技 能 要 素 へ 細 分 化 さ れ 、l i s t e n i n g 、r e a d i n g 、w r i t i n g と 合 せ 全 部 で 5 つ の 技 能 要 素( 以 後 、C E F R 技 能 と 呼 ぶ )へ 分 解 さ れ て い る 点 に 特 徴 が あ る 。 各 CEFR 技 能 は 6 段 階 か ら な り 、 そ れ ぞ れ の 段 階 に は 到 達 レ ベ ル を 示 す Can-do-statements が 明 記 さ れ て い る た め 、 自 己 評 価 が 容 易 に な っ て い る 。 (CEFR に つ い て の 詳 細 は 2 章 5 節を参照) な お 、す べ て の 調 査 は 共 通 に 日 本 語 で 行 う 。中 国 人 ・ べ ト ナ ム 人 留 学 生 に 対 す る 設 問 の 日 本 語 表 現 は 、日 本 語 専 門 学 校 の 指 導 専 門 家 の 協 力 を 得 て 、基 本 の 意 味 を 変 え ず 理 解 し 易 い よ う 工 夫 し た 。更 に 、事 前 に 調 査 対 象 以 外 の 学 習 者 で 同 レ ベ ル の 日 本 語 力 を 有 す る 留 学 生 数 名 に 対 し て 試 み に 回 答 し て も ら い 、理 解 度 を 確 認 し た う え で 調 査 紙 を 微 調 整 し た 。回 収 後 の 調 査 デ ー タ は 、情 動 要 素とコミュニケーション力との関係についてピアソン相関係数 を求め分析する。 更 に 調 査 対 象 者 の 個 人 差 を 考 慮 す る 為 に 、調 査 対 象 者 全 員 に 90 目 標 言 語 に 関 す る 学 習 歴 、学 習 の 目 的 、好 き 嫌 い 、好 き 嫌 い の 理 由 、 ど の よ う な 授 業 ・指 導 を 受 け た か 、 英 語 学 習 に 対 す る 意 識 な ど 、一 般 的 な 項 目 を 選 択 方 式 と 自 由 記 述 に よ る 回 答 を 求 め た 。そ れ ら の 情 報 は 、本 章 1 節 で 言 及 し て い る 仮 説 に 対 し 量 的 調 査 結 果 を基に検証する際、質的分析材料として補足的に参考にした。 4.4 調 査 対 象 者 ( 計 422 名 ) 調 査 結 果 の 一 般 化 を 図 る た め 、英 語 学 習 歴 お よ び 年 令 層 に お い て 幅 広 く 満 遍 な く 行 き 亘 る よ う 、小 学 6 年 生( 英 語 学 習 経 験 2 年 目 )、 中 学 2 年 生 、 高 校 2 年 生 、 大 学 学 部 1 回 生 ( 英 語 力 が 日 本 の 大 学 生 平 均 レ ベ ル )、 大 学 学 部 3 回 生 ( 英 語 専 攻 で 英 語 圏 へ 留 学 経 験 あ り )、 社 会 人 英 語 上 級 者 か ら 成 る 計 3 2 0 名 の 日 本 人 を 調査対象とする。 更 に 、国 際 比 較 の た め 、日 本 語 能 力 検 定 2 級 ま た は 1 級 の 資 格 を 有 す る 日 本 語 専 門 学 校 に 在 籍 す る 留 学 生 、大 学 学 部 生 お よ び 院 生 (一 部 母 国 で 就 業 経 験 の あ る 学 生 も 含 む )か ら 成 る 外 国 人 ( 中 国 人 69 名 、 ベ ト ナ ム 人 33 名 ) 計 102 名 を 調 査 対 象 に 加 え 、 総 計 4 2 2 名 を 本 調 査 の 対 象 と し た 。な お 、こ れ ら 調 査 対 象 総 計 4 2 2 名 は 、設 問 項 目 に 対 し て 未 回 答 部 分 が あ る 場 合 や 、す べ て の 項 目 に対して同じマークをしているなど不誠実な回答と判断される ケースを除外した数である。 (A 群 ) 社 会 人 英 語 上 級 者 46 名 ト ー ス ト マ ス タ ー ズ メ ン バ ー 1 )、 英 米 言 語 文 化 専 攻 大 学 院 生 、国 際 交 流 団 体 メ ン バ ー 、外 資 系 企 業 社 員 等 の 社 会 人 が 主 な 対 象 者 で あ る 。年 齢 層 も 2 0 歳 代 か ら 6 0 歳 代 と 幅 が 広 い 。 そ の 内 20 歳 代 が 15.2% 、 30 歳 代 が 30.4% 、 40 歳 代 が 2 1 . 7 % で あ る 。そ の 他 は 1 8 歳 ~ 2 0 歳 未 満 、5 0 歳 代 、6 91 0 歳 代 で あ る 。 TOEIC 受 験 者 が 46 名 中 29 名 で あ る 。 得 点 は 485 点 か ら 965 点 と 広 範 囲 に 亘 る が 、 700 点 台 が 1 9 . 6 % 、8 0 0 点 台 が 1 3 % 、9 0 0 点 台 が 1 9 . 6 % と 、大 半 が 高 レ ベ ル に あ る 。 700 点 以 上 は 52.2% で あ る 。 得 点 平 均 は 802.4 点 で あ る 。 他 に は 英 検 1 級 が 17.4 % 、 準 1 級 が 21.7% で あ る 。被 験 者 の 大 半 は 、日 本 の 社 会 で 日 常 的 に 英 語 を 使 用 し て い る 。 英 語 学 習 は 最 低 で も ほ と ん ど が 10 年 以上のグループである。 (B 群 ) 留 学 経 験 の あ る 大 学 学 部 3 回 生 35 名 英語専攻の大学学部 3 回生が対象である。被験者は、2 回 生 の 時 、1 ヶ 月 か ら 1 年 の 範 囲 で 英 語 圏 へ の 留 学 経 験 が あ る 。こ れ ら 、E S L の 言 語 環 境 で 学 習 経 験 の あ る 学 生 を 本 調 査 に 加 え た 理 由 は 、日 本 語 を 目 標 言 語 と し 、比 較 的 年 代 の 近 い 在 日 外 国 人 留 学 生 (後 述 の G 群 と H 群 )と の 学 習 条 件 を 類 似 さ せ て 比 較 す る た め で あ る 。な お 、B 群 に 関 し 、留 学 以 前 の 学 部 1 回 生 時 に 実 施 し た C - Te s t 2 ) の 平 均 点 は 4 6 点 で あ り 、英 語 専 攻 で な い 大 学 学 部 1 回 生 の C 群 と 比 べ て 英 語力はそれほど高くない。 留学後 3 回生時点で行った本調査の一部である自由記述 (35 名 中 28 名 が 記 入 ) を み る と 、「 留 学 に よ り 、 人 前 で 話 す こ と に 積 極 的 に な っ た 」 と の 感 想 が 28 名 中 の 18 名 、 64.2% あ っ た 。 筆 者 の 見 解 で は 、 海 外 と い う 生 活 習 慣 の 異 な る 環 境 で 実 際 に ESL 学 習 者 と し て の 経 験 を す る こ と は 人を精神的に大きく、強く成長させることが出来るものと 確信している。その成果が外国語学習にも良い結果として 表れているものと考える。この点については実際の検証結 果を 5 章で述べる。 92 (C 群 ) 大 学 学 部 1 回 生 47 名 一 般 教 養 と し て 英 語 を 履 修 す る 、英 語 専 攻 で な い 大 学 学 部 1 回 生 が 対 象 で あ る 。英 語 学 習 は 7 年 目 で あ り 、2 0 0 9 年 4 月 に 受 験 し た C - Te s t の 平 均 点 は 5 3 . 3 点 で あ る 。こ の 点 数 は 、 JACET 関 西 支 部 ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究 会 ( 林 , 2009) が 1998 年 に 16 大 学 の 学 部 生 1,440 名 に 対 し て 実 施 し た C - Te s t の 平 均 値 ( 5 2 . 8 1 ) に 近 い も の で あ り 、 平 均 的 英 語 力 の日本人大学生と考えられる。 (D 群 ) 高 校 2 年 生 50 名 調 査 対 象 は 私 立 高 等 学 校 の 50 名 で 、 国 公 立 大 学 を 目 指 す 文 系 ・理 系 の 男 子 ・ 女 子 生 徒 で あ る 。 年 間 約 32 週 の 授 業 が あ り 、 英 語 は 週 7 時 間 の 授 業 。 そ の う ち 、3 時 間 は w r i t i n g の 授 業 で あ る 。2 年 次 終 了 ま で に 積 極的に英語検定準 2 級を取得するよう指導されており、大 半の生徒は 1 年次終了までに取得している。学校全体とし て、英語検定 2 次試験対策として面接指導もしている。ち なみに、1 年次では週 7 時間の英語授業の内、1 時間が英 会話演習であり、ペア・ワークを取り入れている。3 年次 に は 6 時 間 の r e a d i n g 、3 時 間 の w r i t i n g に な っ て い る 。比 較的余裕のある 1 年次に会話演習、2 年、3 年次になると 大学受験に重点を置いた取り組みとなるのは他の一般的な 高等学校と同様である。本私立高等学校に特徴的な点は、 国際理解教育に熱心であり、海外からの留学生を受け入れ る 一 方 、日 本 人 生 徒 の 海 外 留 学 を 積 極 的 に 進 め て い る 。 「英 語で少しずつ話が出来るようになって、英語が好きになっ た」 「 英 語 が 話 せ る よ う に な っ て 、外 国 に 行 き た い 」な ど と い っ た 生 徒 の 自 由 記 述 か ら 、 指 導 者 が oral presentation に熱心であることが理解できる。なお、高等学校 2 年生で 93 あるこの調査対象群はすでに、英語学習歴は 5 年目である ため、大学生、社会人向けに使用した調査表と同じものを 適用する。 (E 群 ) 中 学 2 年 生 58 名 2 0 11 年 4 月 か ら 公 式 に 英 語 が 必 須 化 さ れ る 以 前 に 実 験 的 に 小 学 校 5 年 か ら 英 語 学 習 が 導 入 さ れ て お り 、調 査 対 象 の 公 立 中 学 校 2 年 生 は 、英 語 学 習 は 既 に 4 年 目 で あ る 。本 中 学 校 は 、F 群 の 小 学 校 か ら の 入 学 が 殆 ど で あ り 、い わ ゆ る 小 ・中 連 携 は 、 英 語 の 授 業 に つ い て 小 学 校 教 師 に よ る 中 学 校 英 語 授 業 参 観 や 、意 見 交 換 な ど を 通 し て あ る 程 度 実 施 さ れ て い る 。英 語 時 間 数 は 週 3 時 間( 2 0 0 9 年 度 か ら 4 時 間 )、 年 間 35 週 で あ る 。 調 査 対 象 の 公 立 中 学 校 2 年 生 の 英 語 ク ラ ス を 参 観 し た と こ ろ 、テ キ ス ト と 指 導 者 が 独 自 に 準 備 し た 視 聴 覚 教 材 を 使 用 し 、l i s t e n i n g 、 s p e a k i n g に か な り 力 を 入 れ て い る 指 導 法 で あ っ た 。 約 40 人 の ク ラ ス を 8 グ ル ー プ に 分 け 、少 人 数 の 生 徒 同 士 英 語 で 質 問 し 答 え さ せ る 機 会が授業時間の約半分を占めていた。 (F 群 ) 小 学 6 年 生 84 名 2 0 11 年 4 月 か ら 公 式 に 英 語 が 必 須 化 さ れ る 以 前 に 実 験 的 に 小 学 校 5 年 か ら 英 語 学 習 が 導 入 さ れ て い る 。広 島 市 独 自 の カ リ キ ュ ラ ム に よ り 文 字 指 導 は 無 く 、聴 く 、話 す こ と に 慣 れ 親 し む こ と を 中 心 に 過 去 1 年 間 ( 計 35 時 間 、 帯 時 間 と 称 し 週 3 回 、 計 45 分 の 発 音 練 習 を 合 わ せ る と 、 年 間 合 計 7 0 時 間 )英 語 学 習 を し て き た 公 立 小 学 校 6 学 年 児 童 8 4 名 を 調 査 対 象 と す る 。 こ の 内 31% が 塾 で 英 語 を 学 ん で い る 。 塾 で の 学 習 期 間 は 3 週 間 か ら 10 年 の 幅 が あ る が 、 6 年 か ら 7 年 が 主 流 で あ り 40%を 占 め て い る 。 94 (G 群 & H 群 ) 日 本 語 専 門 学 校 学 生 が 主 で あ る が 、 大 学 生 、 院 生 を 含 む 留 学 生( 日 本 に 留 学 し て い る 中 国 人 69 名 、ベ ト ナ ム 人 33 名 ) 目 標 言 語 は 日 本 語 で あ り 、実 用 日 本 語 検 定 1 級 ま た は 2 級 取 得 者 を 対 象 と す る 。日 本 語 専 門 学 校 入 学 時 期 は 個 々 の 学 生 に よ り 異 な る が 、通 常 の 例 で は 2 年 間 で 1 , 2 6 0 時 間 の 日 本 語 学 習 時 間 が あ り 、 中 級 (2 級 レ ベ ル 相 当 )、 上 級 レ ベ ル では、日本語表現、語彙、文法、漢字、文型表現など基礎 と な る 勉 強 (840 時 間 )以 外 に 、 技 能 別 授 業 420 時 間 (作 文 、 会 話 、 聴 解 )が あ る 。 中 国 人 留 学 生 に つ い て 、 日 本 語 を 第 一 外 国 語 と す る の は 、 全 体 の 20% で あ る 。 日 本 語 学 習 歴 は 、1 年 か ら 3 年 が 全 体 の 7 8 % で あ る 。日 本 語 学 習 の 目 的 は 日 系 企 業 へ の 就 職 が 主 流 の 3 3 % を 占 め る 。ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の 場 合 、日 本 語 を 第 一 外 国 語 と す る の は 4 8 % で あ る 。 日 本 語 学 習 歴 は 1 年 か ら 3 年 が 74% 。 日 本 語 学 習 の 目 的 は 学 者 ・ 研 究 者 希 望 が 48%を 占 め る 。日 系 企 業 へ の 就 職 ・ 昇 進 の 為 が 26%で あ る 。 ち な み に 、調 査 参 加 者 の 中 国 人 69 名 、ベ ト ナ ム 人 33 名 の ほ と ん ど は 日 本 語 専 門 学 校 で 学 習 中 で あ り 、卒 業 ま じ か で あ る 。中 国 人 の 調 査 参 加 者 の う ち 大 学 学 部 お よ び 院 生 は 7 名 で あ る 。年 齢 は 2 0 歳 代 か ら 3 0 歳 代 、わ ず か な が ら 、 社 会 で の 就 業 体 験 の あ る 30 歳 代 も 含 ま れ て い る 。 表 4-1 は 日 本 語 専 門 学 校 の カ リ キ ュ ラ ム を 示 し た も の で あ る 。調 査 対 象 と し た 留 学 生 は 、表 4 - 1 の 中 級 、上 級 ク ラ ス で あ り 、 通 常 2 年 間 で 1 , 2 6 0 時 間 の う ち 、4 2 0 時 間 を 技 能 別 授 業 で 作文、会話、聴解の訓練を受ける。 95 表 4-1 日本語専門学校のカリキュラム 2011.5 現 在 日 本 語 専 門 学 校 言 語 コミュニケーション科 カリキュラムについて レベル 教材名 内容 日 本 語 初 歩 (凡 人 社 ) 基 礎 日 本 語 構 文 、語 彙 の習 得 を、 読 み・書 き・聞 き・話 すことを通 して総 初 級 クラス 合 的 に行 う。漢 字 400 字 程 度 、語 彙 1400 語 程 度 を習 得 。 中 級 か ら 学 ぶ 日 本 語 〈 研 中 級 日 本 語 表 現 、語 彙 、文 法 の習 究社〉 得 を総 合 的 に行 う。漢 字 総 数 1000 中 級 クラス 字 程 度 、新 出 文 型 表 現 200 程 度 を 習得。 上 級 で学 ぶ日 本 語 (研 究 社 会 科 学 からテーマを取 り上 げ、上 社) 級 日 本 語 表 現 、語 彙 、文 法 の習 得 上 級 クラス を行 う。漢 字 総 数 2000 字 程 度 、新 出 文 型 表 現 150 程 度 を習 得 。 中 級 ・上 級 クラスには以 下 のような技 能 別 授 業 を行 っている 作 文 初 級 ~中 級 の表 現 、語 彙 を用 いて簡 単 な作 文 から小 論 文 に至 るまで、さまざまな形 式 の文 を練 習 する。 会 話 話 す力 を養 い、実 際 のコミュニケーションに役 立 つ表 現 を学 習 す る。 聴 解 日 本 語 のリズム、音 などに慣 れる練 習 から始 まり、最 終 的 にはニ ュースに至 るまでの聴 解 の練 習 を行 う。 (出 典:広 島 YMCA 日 本 語 専 門 学 校 ホ ー ム ペ ー ジ か ら 転 載・編 集 ) 96 4.5 調 査 手 順 ア ン ケ ー ト は 、 学 習 に 関 す る 個 人 情 報 や TOEIC 等 の 試 験 結 果 に つ い て 答 え て も ら う P a r t I 、情 動 に つ い て 自 己 評 価 し て も ら う Part II、 お よ び 英 語 力 に つ い て 自 己 採 点 し て も ら う CEFR 自 己 評 価 表 か ら な る P a r t I I I の 3 部 構 成 と し た 。な お 、回 答 方 式 は 、 以 下 の 通 り で あ る 。 (実 際 の 調 査 紙 サ ン プ ル は 付 録 参 照 ) P a r t I:2 1 個 か ら な る 設 問 に 対 し 、選 択・記 述 式 で 回 答 す る 。 な お 、 CEFR と の 相 関 を 見 る た め 、 TOEIC、 英 検 等 受験した場合、得点記入の設問を加えた。 Part II: 40 項 目 か ら な る 設 問 に 対 し 、 各 設 問 に 付 随 す る 記 述が自分にどの程度当てはまるか自己評価し、4 件 法で回答する。なお、アンケート上では、対象者に 無用な先入観を与えることを避けるため、8 つの情 動 要 素 と そ れ ぞ れ に 属 す る 合 計 40 項 目 の 設 問 が ど の要素に属するかは被験者にわからないようにし てある。 4 件法: まったくそうでない → 1 まあまあそうでない → 2 まあまあそうである → 3 まったくそうである → 4 Part III: CEFR 自 己 評 価 4 + 1 か ら な る C E F R 技 能 に 対 し 、各 技 能 に 付 随 し た 技 能 レ ベ ル を 解 説 す る 能 力 記 述 文 ( C a n - d o - s t a t e m e n t s ) の 中 か ら 、自 分 に 当 て は ま るものを選ぶことにより、自己評価する。なお、技 97 能 レ ベ ル は 6 段 階 か ら な り 、自 分 の レ ベ ル に 該 当 す る レ ベ ル を 4+1 の 技 能 に 対 し A1、 A2、 B1、 B2、 C1、 C2( A1 は 初 級 、 C2 は ネ イ テ ィ ブ レ ベ ル ) か ら選び記号で記入してもらう。なお、相関性の数値 的 評 価 に 際 し て は 、 A1~ C2 を 1 点 ~ 6 点 に 置 き 換 えて統計処理に使用する。 日本人学習者中学 2 年生・小学 6 年生用調査方法について: 社会人、大学生、高校生、留学生に使用する従来型 の CEFR 自 己 評 価 シ ス テ ム の Can-do-statements は 最 高 到 達 基 準 レ ベ ル が C2 に 設 定 さ れ て い る 。 調査 対象である E 及び F グループの中学 2 年生、小学 5 年生に対し、このシステムではレベル的に自己評価 が難しく、表現内容も理解できないものと考える。 そ の 為 Can-do-statements の 内 容 を 、 実 際 に 学 校 で 使 用 し て い る 教 材 及 び 資 料 (小 学 生 用 単 語 絵 カ ー ド 、 指 導 計 画 書 )、 教 科 書 ( 中 学 2 年 生 用 SUNSHINE, ONE WORLD, NEW HORIZON) 等 を 参 考 に 、 よ り 具体的で文脈に即した内容からなる独自のシステム を考案した。 従 来 型 の CEFR 自 己 評 価 シ ス テ ム の 点 数 配 分 は A1 か ら C2 を 1 点 か ら 6 点 と す る が 、 本 調 査 に 独 自 に作成したシステムでは、 「 聞 き 取 り 」、 「 話 す こ と( 相 手 と の や り と り 、 表 現 )」、「 読 む こ と 」、「 書 く こ と 」 の 4+1 技 能 に 関 し 、 具 体 的 な Can-do-statements を そ れ ぞ れ の 技 能 に つ い て 4 つ ず つ 合 計 20 の 項 目 を 設 定し、自己判定しやすいように4件法リッカートス ケールにより自己評価していく。 Can-do-statements の 内 容 は 頑 張 れ ば 到 達 可 能 98 なレベルに調整しており、4 段階(最高 4 ポイント) で自己選択させ、すべての項目への回答が「まった く そ の と お り で あ る 」の 場 合 、最 高 点 が 1 6 点 に な る 。 こ れ は 、 従 来 型 の CEFR 自 己 評 価 に お け る A2 レ ベ ル の 2 点 に 相 当 す る よ う 設 計 し た 。 従 っ て 、 2/16 の 係 数 、 0.125( 2÷16) を か け て 調 整 し 、 全 体 的 に 他 のグループと比較できるようにしている。 Can-do-statements に つ い て 、 例 え ば 、 「聞 き 取 り 」の ① の 項 目 に は「 天 気 予 報 な ど 、や や 長 め の 話 で も 要 点 は わ か る 」の よ う に 判 り や す く 設 定 し て い る 。 「話すこと」は「相手とのやりとり」と「表現」に 分 け 、「 相 手 と の や り と り 」 の ⑤ の 項 目 に は 「 人 を 紹 介 し た り 、あ い さ つ し た り 、あ る い は“ さ よ う な ら 、 これで失礼します”といったやりとりができる」の 項 目 を 設 定 し て い る 。「 表 現 」 の ⑨ に は 「 自 分 の 趣 味 や、やりたいことについて相手に話ができる」を設 定 し て い る 。「 読 む こ と 」 の ⑬ に は 「 外 国 の 友 達 か ら 手紙をもらい、どこに住んでいるとか、年齢がいく つといったことが書いたあった場合、理解できる」 を 設 定 し て い る 。「 書 く こ と 」 の ⑱ に は 「 サ ッ カ ー が 好き、音楽が好きとか、自分の趣味が何であるか書 ける」を設定している。このように、基本的には大 人 用 の CEFR 自 己 評 価 と 同 様 、 listening、 spoken interaction/ spoken production、reading、writing の 4+1 技 能 に 関 し 、 can-do-statements を 設 定 し て いる。 以 上 、出 来 る だ け 調 査 対 象 者 の 負 担 を 最 小 限 に し 、 回 答 し や す く す る 配 慮 を し た 。( 実 際 の 調 査 用 紙 は 本 論 文 の 付 録 を 参 照 )。 99 な お 、小 学 生 に つ い て は 、本 章 4 節 調 査 対 象 で 述 べ た よ う に 、 塾 を 合 わ せ れ ば 英 語 学 習 歴 が 6~ 7 年 間 以 上 に 及 ぶ 生 徒 が か な り い る が 、そ の 他 の 英 語 学 習 暦 が 1 . 4 年 と い う 短 期 の 児 童 に 引 っ 張 ら れ て 、「 ま っ た く そ う で は な い 」(「 ま っ た く 出 来 な い 」 の 意 味 ) と い う 回 答 に 集 中 す る の で は な い か と 危 惧 し た が 、現 実 に は回答に自然なバラツキが見られ、杞憂であった。 上 述 の 小 学 生・中 学 生 用 調 整 版 C E F R 自 己 評 価 表 に 加 え 、 情 動 8 要 素 の 設 問 40 項 目 お よ び 、 英 語 学 習 歴 な ど 一 般 的 な 質 問 ・自 由 記 述 の 調 査 は 他 の グ ル ー プ 同 様 に 使 用 す る 。 情 動 8 要 素 の 設 問 40 項 目 表 現 に つ い て は 、全 群 と の 共 通 性 を 保 ち な が ら 、理 解 し や す く 単 純 化 し た も の を 使 用 す る 。特 に 、分 か り 易 さ に つ い ては事前に調査対象の小学校英語担当主任の先生に よる助言を反映して調査用紙を完成させた。 例えば、大人用(高校生以上)と比較し、情動 8 要 素 の 設 問 40 項 目 の 内 容 は 変 わ ら な い が 、 小 ・ 中 学 生用には以下の通り、表現を分かり易くしている。 設 問 事 例 (1) 大 人 用: 「 現 在 学 ん で い る 言 語 ( 英 語 ) に つ い て 、自 分 の 能 力 に 自 信 が あ る 。」 小 ・ 中 学 生 用 :「 英 語 を 上 手 に な る 自 信 が あ る 。」 設 問 事 例 (8) 大 人 用 :「 自 分 の 英 語 力 が 伸 び る と 思 う と 誤 り を 指 摘 さ れ て も 気 に せ ず し ゃ べ る 。」 小 ・ 中 学 生 用 :「 英 語 を 上 手 に な る た め 、 習 っ た 事 は 少 々 間 違 っ て も 恐 れ な い で 新 し く 取 り 入 れ て 話 す 。」 表 現 に つ い て は 事 前 に 小 学 校 6 年 生 担 任 (英 語 指 導 主 任 )に 内 容 を 見 て も ら い 、 生 徒 に わ か り や す い 表 現 に 100 修 正 し て い る 。統 計 的 に 処 理 す る た め 、基 本 的 に は 大 人 用 の 設 問 と 共 通 で あ る 。さ ら に 、小 学 6 年 生 の 調 査 に つ い て は 3 ク ラ ス 、そ れ ぞ れ の ホ ー ム ル ー ム の 時 間 に 担 任 か ら 回 答 の 進 め 方 、テ ス ト で は な い の で 精 神 的 に気を楽にして取り組むことなど説明をしてもらっ たのちに、調査を実施した。なお、小学生・中学生用 調 査 用 紙 に は 、「 情 動 」 と い う 用 語 は 避 け 、 わ か り や すく「気持ち」という表現にしている。 4.6 分 析 方 法 ア ン ケ ー ト (付 録 参 照 )の 設 問 は 、 Part I が 21 項 目 、 Part II が 40 項 目 、 CEFR が 5 項 目 あ り 、 全 部 で 66 項 目 に の ぼ る が 、 PartⅠ の 1 項 目 、 Part II の 40 項 目 、 CEFR の 5 項 目 、 計 46 項 目 に 関 し て 相 関 分 析 を 行 っ た 。 Part I の 、 残 り 20 項 目 と 自 由 記 述 は 、量 的 分 析 結 果 を 考 察 す る 際 、補 足 的 に 参 考 資 料 と す る 。( 小 学 生 、 中 学 生 の 設 問 数 は Part I が 12 項 目 、 Part II が 40 項 目 、 CEFR が 20 項 目 で あ る 。 小 ・ 中 学 生 用 の CEFR 自 己 評 価 を 大 人 用 と 比 較 す る 為 の 点 数 調 整 方 法 に 関 し て は 、本 章 5 節 を 参 照 。実 際の評価表サンプルは付録を参照) (1) 相 関 分 析 の 対 象 Part I に つ い て は 、 設 問 5 の み 相 関 分 析 に 利 用 す る 。 設 問 5 は 、p r o f i c i e n c y の レ ベ ル を T O E I C 点 数 や 英 検 級 な ど の 実 績 値 で 回 答 し て も ら う よ う に し て お り 、 社 会 人 グ ル ー プ 46 名 の 内 29 名 が T O E I C 点 数 を 記 載 し て い る 。 そ の 他 英 検 、 I E LT S 等 は 回 答 件数が少なかったため参考情報にとどめた。 Part II に つ い て は 、 40 項 目 の 全 設 問 に 対 し て 回 答 し て い る 被験者全員について、その全てを相関性分析に利用する。 101 CEFR 自 己 評 価 に つ い て も 、 5 項 目 の 全 設 問 に 対 し て 回 答 し ている被験者について、その全てを相関性分析に利用する。 回 答 が 不 完 全 な 場 合 や 、す べ て 同 じ 回 答 で 不 誠 実 だ と 判 断 さ れる被験者は統計処理対象から除外している。 (2) 相 関 分 析 の 組 合 せ 以 下 の 4 つ の 組 合 せ を 対 象 と し 、ア ン ケ ー ト 調 査 の 主 眼 で あ る 、情 動 と C E F R 英 語 力 と の 間 に ど の 程 度 の 相 関 性 が 存 在 す る か 分析する。 ① 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 関 係 ② 情動要素相互の関係 ③ CEFR 技 能 相 互 の 関 係 ④ CEFR 技 能 お よ び CEFR 合 計 と TOEIC 合 計 、 C-test 合計との関係 ④ に つ い て 補 足 す る と 、CEFR は 、英 語 の 総 合 力 と し て の コ ミュニケーション力を到達目標に照らして自己評価するための 尺 度 と し て 開 発 さ れ て お り 、そ れ 自 体 の 信 頼 性 は 既 に 世 界 的 に 検 証 さ れ て い る 。し か し な が ら 、本 調 査 被 験 者 に よ る 自 己 評 価 結 果 の信頼性について、より慎重に確認することを目的として TOEIC や C-test な ど 客 観 的 デ ー タ と の 相 関 性 分 析 を 加 え た も の で あ る 。 な お 、 TOEIC に は 4 技 能 す べ て は そ ろ っ て い な い 上 、 個 別 の 技 能 点 数 は 不 明 な た め 、2 9 名 分 そ れ ぞ れ の T O E I C 総 合 得 点 数 を CEFR4 +1 技 能 と の 相 関 性 分 析 に 用 い る こ と と す る 。 (3) 相 関 性 評 価 の 方 式 相関性評価にはピアソンの相関係数を基に両側検定を用い、 「p 値」によって有意性の高さを判定する。本研究では、一般的 102 に 相 関 性 評 価 に 使 わ れ て い る 基 準 を 基 に 、表 4 - 2 に 示 す 通 り 相 関 性 の 強 さ を 表 現 す る 。有 意 水 準 5 % で 有 意 な 相 関 が あ り( p < . 0 5 )、 且 つ 、 相 関 係 数 が ±.20~ ±.40 の 場 合 「弱 い 正 あ る い は 負 の 相 関 性 が あ る 」 、相 関 係 数 が ± . 4 0 ~ ± . 7 0 の 場 合 「 比 較 的 強 い 正 あ る い は 負 の 相 関 性 が あ る 」、 相 関 係 数 が ±.70~ ±1.00 の 場 合 「強 い 正 あ る い は 負 の 相 関 性 が あ る 」と 判 定 す る こ と と し た 。 と り わ け 、 有 意 水 準 1 % で 有 意 な 相 関 が あ る ( p< .01) 場 合 は よ り 重 視 し 、 それぞれグループ毎の分析に対する解釈の文脈中で言及する。 表 4-2 相関性の強さ 相関係数 .00~ ±.20 相関性の強さ ほとんど相関がない ±.20~ ±.40 弱い相関がある ±.40~ ±.70 比較的強い相関がある ±.70~ ±1.00 強い相関がある (出 典 : 小 塩 ,2007, p.29) (4) 質的評価の方式 P a r t I は 、調 査 対 象 者 が 英 語 学 習 に 関 す る 一 般 的 な 情 報 を 選 択 し て 回 答 す る 部 分 と 、自 由 記 述 か ら 構 成 さ れ て い る 。選 択 式 回 答を集計し、件数、全体に対する割合を求めその傾向を捉える。 自由記述はキーワードで分類し、類似の記述の件数を集計する。 こ れ ら の デ ー タ か ら 、あ る 程 度 の 傾 向 が 判 明 す る も の と 考 え 、そ の結果を量的分析結果考察の際に参考とする。 4.7 ま と め 日本人の英語によるコミュニケーション力を高めるために、 103 こ れ ま で 様 々 な 取 り 組 み が 行 わ れ て き た 。そ の 多 く は 、技 術 的 な も の で あ っ た 。し か し な が ら 、目 覚 ま し い 進 歩 は 見 ら れ な い 。そ れ に は 多 様 な 原 因 が あ る と 考 え ら れ る が 、一 つ の 視 点 と し て 、こ れ ま で あ ま り 重 視 さ れ て こ な か っ た 学 習 者 の 情 動 、特 に 負 の 情 動 がコミュニケーション力の促進を阻んでいるのではないかとい う考えに基づき、3 つの仮説を立て、8 つの情動要素(自尊心、 危険負担、不安、共感、抑制、外向性、内向性、寛容性)がコミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に ど の よ う に 、プ ラ ス に 、ま た は マ イ ナ ス に 影 響 を 及 ぼ し て い る か を 統 計 的 に 検 証 し て い く 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 測 る 尺 度 と し て 、元 来 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 到 達 レ ベ ル を 測 る 尺 度 と し て 開 発 さ れ た CEFR 自 己 評 価 シ ス テ ム を 使 用 する。調査は、小学生、中学生、高校生、大学生、留学経験のあ る 大 学 生 、社 会 人 か ら 成 る 学 校 で の 英 語 学 習 経 験 の あ る 幅 広 い 世 代 の 日 本 人 6 グ ル ー プ 計 3 2 0 名 と 、こ れ ら 日 本 人 学 習 者 と 比 較 す る 為 、在 日 外 国 人 留 学 生( 中 国 人 、ベ ト ナ ム 人 )2 グ ル ー プ 計 1 0 2 名を対象に加え、相違性を検証する。3 種類の調査票(①英語学 習に関する一般的質問と自由記述用紙、②8 つの情動に関する合 計 40 項 目 の 設 問 に 対 す る 4 件 法 で の 選 択 式 回 答 用 紙 、 ③ CEFR 自 己 評 価 用 紙 )に よ る 回 答 を 、統 計 処 理 し て 相 関 性 の 分 析 を 行 う 。 合 わ せ て 、質 的 研 究 の 位 置 づ け で 自 由 記 述 を 補 足 と し て 調 査 結 果 に 反 映 さ せ る 。以 上 の 調 査 方 法 に 基 づ い て 、第 5 章 で 調 査 結 果 の 詳細を基に考察を加え、仮説の検証を行う。 注: 1)ト ー ス ト マ ス タ ー ズ ク ラ ブ ト ー ス ト マ ス タ ー ズ ク ラ ブ は 、 public speaking の 訓 練 と leadership を 磨 く こ と を 目 的 と し て 、 1924 年 に 米 国 で 設 立 さ 104 れ た 非 営 利 教 育 団 体 で あ る 。 現 在 、 世 界 11 3 ケ 国 に 1 2 , 5 0 0 以 上 の ク ラ ブ が あ り 、 総 計 26 万 人 の メ ン バ ー を 有 す る 。 国 際 語 と し て の 英 語 と 母 語 に よ る public speaking 力 を 鍛 錬 し 、 組 織 運 営 を 通 し て 会 員 の leadership を 鍛 え 、 総 合 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 磨 く 活 動 を し て い る 。毎 年 米 国 で 、世 界 大 会 が 開 催 さ れ 、 public speaking 世 界 一 を 競 う 。 本 ク ラ ブ に お け る 活 動 を 通 し て 獲 得 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 、l e a d e r s h i p 力 を 人 事 評 価 の 対 象 と し て 認 知 し て い る 米 国 の 大 企 業 は 多 々 あ る 。日 本 国 内 に は 126 の ク ラ ブ が あ り 、 英 語 お よ び 日 本 語 に よ る public speaking や 、組 織 運 営 活 動 を 通 し て leadership 力 を 研 鑽 し て い る 。本 論 文 に お い て 調 査 協 力 し て い た だ い た 広 島 ト ー ス ト マ ス タ ー ズ ク ラ ブ 会 員 で あ る 調 査 対 象 者 の TOEIC(46 名 中 2 9 名 回 答 あ り ) の 点 数 は 、4 8 5 点 か ら 9 6 5 点 と 広 範 囲 に 亘 る が 、 700 点 台 が 19.6% 、 800 点 台 が 13% 、 900 点 台 が 19.6% と 、大 半 が 高 レ ベ ル で あ る 。7 0 0 点 以 上 は 5 2 . 2 % で あ る 。ち な み に 4 6 名 の 内 、英 検 1 級 は 1 7 . 4 % 、準 1 級 は 2 1 . 7 % を 占 め る 。 2) C-test C-test は 、 1972 年 Oller に よ り 開 発 さ れ た ク ロ ー ズ テ ス ト の 一 種 で あ り 、 Klein-Braley、 Raatz に よ り 1984 年 に 熟 達 度 テ ス ト と し て 改 訂 さ れ た 。回 答 は 評 価 し や す い よ う に 設 計 さ れ て い る 。 本 書 で 用 い る C-test は 、 JACET 関 西 支 部 ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究 会 (1999)で 開 発 さ れ た も の で あ る 。 主 と し て 、 文 科 省 認 定 の 高 等 学 校 教 科 書 か ら 、そ れ ぞ れ 異 な る 4 節 を 抜 粋 し て 問 題 が 作 成 さ れ る 。 林 (1999a ) の デ ー タ に よ る と 、 C-test と TOEFL の 総 合 点 の 間 に は r= .526(p< .01)の 比 較 的 強 い 相 関 が あ る 。 本 論 文 で も CEFR 合 計 点 と C-test 合 計 点 、 TOEIC の 総 合 点 と は い ず れ も r=.51( p< .01) と い う 比 較 的 強 い 相 関 が 見 ら れ る 。 C-test に は listening や speaking は な い が 、 全 般 的 105 な 英 語 力 を 測 る の に 適 し て い る と さ れ る 。 15 分 と い う 短 時 間 でテスト出来ることもメリットである。 106 第5章 5.1 調査結果 調査の概要 本 研 究 の 目 的 は 、外 国 語 学 習 過 程 に お い て 学 習 者 の 抱 く 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る か 、そ し て 、そ れ に 関 し て 日 本 人 と 外 国 人 と の 間 で 類 似 性 あ る い は 相 違 性はあるかについて明らかにすることである。 こ の 分 野 の 研 究 事 例 は 国 内 外 に お い て 少 な く 、情 動 や コ ミ ュ ニケーション力の評価方法について未だ確立されたものはない。 ま し て や 、情 動 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 内 部 に ま で 踏 み 込 ん だ 実証的な検証に至っては全くと言ってよいほど事例がないのが 実 状 で あ る 。そ の た め 本 研 究 で は 、第 4 章 で 述 べ た 調 査 方 法 を 新 た に 考 案 し 、以 下 の 三 つ の 仮 説 を 立 て 、統 計 技 法 に 基 づ く 実 証 的 な検証を試みることとした。 仮 説 1: 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、 情 動 は 外 国 語 によるコミュニケーション力に影響を与える。 仮 説 2: 日 本 人 学 習 者 に 関 し 、情 動 と C E F R の 関 連 性 は 発 達 段 階によって異なる。 仮 説 3: 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、 情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 ら か な 違 い が ある。 本 研 究 で は 、情 動 と い う 人 間 の 心 の 領 域 を 扱 う 。言 う ま で も な く 、人 間 一 人 ひ と り の 心 の あ り 様 は 様 々 で あ り 、だ れ 一 人 と し て 同 じ で は な い 。し か し な が ら 、生 育 や 学 習 の 環 境 、個 人 の 資 質 ・ 107 価 値 観 な ど が 似 通 っ た 人 間 ど う し に は 、情 動 に お い て も あ る 程 度 の類似性が見られるのではないか、またその逆に、環境や資質・ 価 値 観 な ど が か け 離 れ た 人 間 ど う し に は 、情 動 に お い て も あ る 程 度 の 相 違 性 が 見 ら れ る の で は な い か と 考 え る 。そ こ に 着 目 し 、本 研 究 で は 、集 団 と し て の 大 き な 傾 向 を 明 ら か に す る 統 計 的 考 察 を す る 。こ の よ う な 視 点 は 、少 子 化 に 伴 っ て ク ラ ス サ イ ズ が 小 さ く な る と 予 想 さ れ る と は い え 、集 団 を 対 象 と し た 英 語 教 育 の 今 後 の 在り方について考察する上で、参考になるものと考える。 な お 、統 計 分 析 の 信 頼 度 を 増 す た め 、可 能 な 限 り 年 代 や 経 験 な ど で 偏 る こ と な く 、表 5-1 の 通 り 、な る べ く 幅 広 い 層 の 学 習 者 を 調 査 対 象 に す る こ と と し た 。ま た 、外 国 人 と 比 べ た 日 本 人 の 特 性 を よ り 明 確 に す る た め 、調 査 対 象 者 の 中 に 一 定 の 割 合 を 占 め る よう外国人を加え国際比較することとした。 表 5-1 調査対象者のグループ構成 日 本 人 (320 名 ) 外 国 人 (102 名 ) 社会人英語上級者 46 名 留学経験大学学部 3 回生 35 名 大学学部 1 回生 47 名 高校 2 年生 50 名 中学 2 年生 58 名 小学 6 年生 84 名 在日中国人留学生 69 名 在日ベトナム人留学生 33 名 合 計 422 名 調査と考察は、次の 3 項目に集約できる。 ・学習者が抱く心理状態の量的な考察 ・学習者が有するコミュニケーション力の量的な考察 108 ・学習者が抱く心理状態とコミュニケーション力との 関連性について統計的考察 外国語学習過程において学習者が抱く心理状態を量的に考 察 す る た め の 尺 度 に「 情 動 」を 用 い た 。そ の 際 、情 動 を 幅 広 く 多 面 的 に 捉 え る と 同 時 に 、で き る だ け 内 部 に ま で 踏 み 込 む た め 、情 動 を 大 ま か に 捉 え る の で は な く 、 表 5-2 に 示 す 通 り 、 8 つ か ら な る情動の構成要素を定義し、評価項目とした。 表 5-2 情動の構成要素 情動要素 ( self-esteem: SE) 1 自尊心 2 危 険 負 担 ( risk-taking: RT) 3 不安 ( anxiety: AN) 4 共感 ( empathy: EM) 5 抑制 ( inhibition: IH) 6 外向性 ( extroversion: EX) 7 内向性 ( introversion: IN) 8 寛容性 ( tolerance: TR) 学習者が有するコミュニケーション力を評価するための尺 度 に C E F R を 用 い た 。そ の 理 由 は 、第 2 章 で 述 べ た よ う に 、C E F R は元来コミュニケーション力の到達目標の尺度として開発され、 認知されているからである。 109 表 5-3 CEFR4+ 1 技 能 ( 一 般 的 4 技 能 と の 比 較 ) CEFR4 + 1 技 能 一般的4技能 1 聞く ( listening) 聞 く ( listening) 2 読む ( reading) 読 む ( reading) 3.1 や り と り ( spoken interaction) 3.2 表現 ( spoken production) 4 書く ( writing) 話 す ( speaking) 書 く ( writing) 以 下 、調 査 結 果 の 詳 細 に つ い て 述 べ 、量 的 及 び 質 的 考 察 を 加 える。 5.2 調査結果 5.2.1 学 習 者 が 抱 く 心 理 状 態 の 量 的 な 考 察 ― 情 動 要 素 レ ベ ル の 平 均 値 ( Mean) と 標 準 偏 差 ( SD) ― 表 5-4 は 、各 被 験 者 の 情 動 要 素 の レ ベ ル 値 を 基 に 、調 査 対 象 者 各 グ ル ー プ に 属 す る 全 員 の 平 均 値 ( Mean ) お よ び 標 準 偏 差 ( SD)を 集 計 し た も の で あ る 。4 章 6 節 で 述 べ た 通 り 、422 名 か ら な る 全 被 験 者 に よ る 回 答 は 、8 つ の 各 情 動 要 素 に 5 項 目 ず つ 用 意 し た 合 計 40 の 設 問 に 対 し て 、 4 件 法 で 行 っ た 。 従 っ て 、 情 動 要 素 ご と の 5 つ の 設 問 を 合 計 す る と 、レ ベ ル 値 は 5 点 の 最 低 点 か ら 2 0 点 の 最 高 点 ま で と な る 。( 表 5 - 4 で は 、 M a x 2 0 と 表 示 )。 日 本 人 と 外 国 人 と の 国 際 比 較 の た め 、6 つ の 日 本 人 グ ル ー プ 全 体 と 2 つ の 外 国 人 グ ル ー プ 全 体 の そ れ ぞ れ に つ い て 、日 本 人 グ ル ー プ平均値と外国人グループ標準偏差を加えた。 110 表 5-4 情 動 要 素 レ ベ ル の 平 均 値 ( Mean ) と 標 準 偏 差 ( SD ) ( N=422) 情 動 SE RT AN EM IH EX IN TR Max 20 20 20 20 20 20 20 20 社会人英語 Mean 14.02 12.59 11.26 14.48 9.04 13.91 11.30 12.37 上 級 者 N=46 SD 2.26 2.47 3.00 2.76 2.77 2.99 2.46 1.93 留学経験大 Mean 11.43 11.54 14.23 15.43 10.71 11.57 13.77 12.80 SD 3.06 3.09 2.85 2.50 2.72 3.20 2.87 2.52 Mean 9.75 10.72 13.70 13.60 11.43 11.94 12.83 12.34 SD 2.91 3.41 3.57 3.09 3.81 3.62 2.96 2.32 高校2年生 Mean 10.78 11.32 14.88 13.22 10.62 10.80 13.36 12.20 N=50 SD 2.64 2.51 2.53 2.48 2.60 3.07 2.16 2.23 Mean 12.71 11.59 12.38 16.67 9.57 13.19 11.48 12.88 SD 2.35 1.94 3.29 2.52 2.61 2.78 2.59 1.82 Mean 12.94 12.20 12.08 15.83 9.85 13.74 11.57 13.48 SD 3.33 3.45 3.58 3.40 2.96 3.51 2.39 3.14 Mean 11.94 11.66 13.09 14.88 10.21 12.53 12.39 12.68 SD 2.76 2.82 3.14 2.80 2.92 3.20 2.57 2.33 Mean 14.04 12.68 12.07 14.67 11.35 13.38 12.13 13.14 SD 2.54 2.31 2.37 2.78 2.66 2.45 2.69 2.25 Mean 13.94 12.24 11.67 14.76 10.55 13.91 11.42 12.88 SD 2.06 2.79 2.17 2.56 2.88 2.14 1.72 2.10 Mean 14.00 12.46 11.87 14.72 10.95 13.65 11.78 13.01 SD 2.30 2.55 2.27 2.67 2.77 2.30 2.21 2.18 Mean 12.46 11.86 12.78 14.84 10.39 12.81 12.24 11.39 SD 2.65 2.75 2.92 2.77 2.88 2.97 2.48 2.29 学生 N=35 日 大 学 学 部 1 回 生 N=47 本 中学生 人 N=58 小学生 N=84 日本人平均 中国人 N=69 外国人 ベトナム人 N=33 外国人平均 総平均 111 SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) 備考 AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 表 5-4 か ら 、 日 本 人 6 グ ル ー プ の SE の 平 均 値 は 、 小 学 生 か ら 大 学 学 部 1 回 生 ま で は 、1 2 . 9 4 か ら 9 . 7 5 へ と 下 降 線 を 辿 る も の の 、留 学 経 験 あ り の 3 回 生 の と こ ろ で 反 転 し 、社 会 人 英 語 上 級 者 と な る と 1 4 . 0 2 に 至 り 、外 国 人 2 グ ル ー プ の 平 均 値 と ほ ぼ 匹 敵 す る レ ベ ル に な る こ と が 分 か る 。日 本 人 6 グ ル ー プ に お け る SE 平 均 値 の 変 遷 は 、5 章 3 節 の 仮 説 2 の 検 証 に お い て 詳 細 を 述 べ る が 、 思春期や、受験、留学経験などによる影響が考えられる。 ま た 、 日 本 人 6 グ ル ー プ の AN の 平 均 値 は 、 SE と は 逆 に 、 小 学 生 か ら 留 学 経 験 あ り の 3 回 生 ま で は 、 12.08 か ら 14.23 へ と 概 ね 上 昇 線 を 辿 る も の の 、そ こ で 反 転 し 、社 会 人 英 語 上 級 者 と な る と 11 . 2 6 に 至 り 、外 国 人 2 グ ル ー プ の 平 均 値 と ほ ぼ 匹 敵 す る レ ベ ル に な る こ と が 分 か る 。日 本 人 6 グ ル ー プ に お け る A N 平 均 値 の 変 遷 は 、5 章 3 節 の 仮 説 2 の 検 証 に お い て 詳 細 を 述 べ る が 、上 述 し た SE 同 様 、 思 春 期 や 、 受 験 、 留 学 経 験 な ど に よ る 影 響 が 考 えられる。 5.2.2 学 習 者 が 有 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 量 的 な 考 察 ― CEFR 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 ( Mean) と 標 準 偏 差 ( SD) ― 表 5 - 6 は 、各 被 験 者 の C E F R 技 能 の レ ベ ル 値 を 基 に 、調 査 対 象者各グループに属する全員の平均値及び標準偏差を集計した ものである。 4 章 6 節 で 述 べ た 通 り 、 422 名 か ら な る 全 被 験 者 に よ る 回 答 は 、5 つ の 各 C E F R 技 能 に 対 し て 、表 5 - 5 に 示 す 6 段 階 評 価 方 式 で 行 わ れ た 。従 っ て 、CEFR 技 能 ご と の レ ベ ル 値 は 1 点 の 最 低 点 112 か ら 6 点 の 最 高 点 ま で と な る 。ま た 、日 本 人 と 外 国 人 と の 国 際 比 較 の た め 、6 つ の 日 本 人 グ ル ー プ 全 体 と 2 つ の 外 国 人 グ ル ー プ 全 体 の そ れ ぞ れ に つ い て 、日 本 人 グ ル ー プ 平 均 値 と 外 国 人 グ ル ー プ 標準偏差を加えた。 な お 、4 章 で 詳 細 を 述 べ た よ う に 、中 学 生 お よ び 小 学 生 向 け の C E F R 自 己 評 価 表 は 、通 常 の も の と は 異 な る 独 自 の 評 価 表 を 用 い た (付 録 参 照 )。 そ の 場 合 、 既 述 の 通 り 、 CEFR 技 能 ご と の レ ベ ル 値 は 4 点 の 最 低 点 か ら 16 点 の 最 高 点 と な る が 、 最 高 点 の 16 点 は 大 人 用 CEFR 自 己 評 価 表 の 2 点 に 相 当 す る よ う 設 計 し て い る 。 そ の た め 、表 5-6 の 全 グ ル ー プ を 相 互 比 較 す る こ と を 考 慮 し 、小 学 生 お よ び 中 学 生 の レ ベ ル 値 に 0 . 1 2 5( 2 点 / 1 6 点 )の 係 数 を 掛 け て 表 示 し て い る 。 頭 部 に #を 付 加 し た も の が こ の 調 整 結 果 の 数 値 である。 表 5-5 CEFR 技 能 の 段 階 CEFR 呼 称 レベル値 A1 1 A2 2 B1 3 B2 4 C1 5 C2 6 113 表 5-6 CEFR 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 ( Mean) と 標 準 偏 差 ( SD) ( N=422) CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 R I P W Max 6 6 6 6 6 社会人英語上級者 Mean 3.45 3.62 3.55 3.45 3.86 N=46 SD 0.80 0.84 0.88 0.80 0.72 留 学 経 験 大 学 生 Mean 2.74 2.83 2.26 2.74 3.46 N=35 SD 1.02 0.81 0.91 0.87 0.91 大 学 学 部 1 回 生 Mean 1.85 2.09 1.72 1.87 2.02 N=47 SD 0.92 0.90 0.87 0.94 1.16 Mean 2.22 2.06 1.62 1.94 2.02 SD 1.07 0.73 0.71 0.73 0.90 Mean #1.70 #1.74 #1.55 #1.58 #1.63 SD 1.86 1.93 2.17 2.26 1.73 Mean #1.41 #1.38 #1.30 #1.17 #1.20 SD 3.18 3.38 3.28 3.43 4.00 Mean 2.23 2.29 2.00 2.13 2.37 SD 1.48 1.43 1.47 1.51 1.57 Mean 3.45 3.61 3.35 3.41 3.73 N=69 SD 1.29 1.24 1.24 1.07 1.14 ベトナム人留学生 Mean 3.49 3.85 3.70 3.49 3.42 N=33 SD 0.78 0.89 1.03 0.96 0.92 Mean 3.47 3.73 3.53 3.45 3.58 SD 1.04 1.07 1.14 1.02 1.08 Mean 2.54 2.65 2.39 2.46 2.67 SD 1.37 1.34 1.39 1.39 1.44 日 L 本 高校2年生 N=50 中学2年生 人 N=58 小学6年生 N=84 日本人平均 中国人留学生 外国人 外国人平均 総平均 114 L: Listening 備考 R: Reading I: Spoken Interaction P: Spoken Production W: Wr i t i n g (頭 部 に #を 付 加 し た も の は 調 整 結 果 の 数 値 ) 表 5-6 か ら 、外 国 人 の 2 グ ル ー プ は 、CEFR の す べ て の 技 能 に お い て 、日 本 人 6 グ ル ー プ の 中 で 最 も 高 い 平 均 値 を 示 す 社 会 人 英 語 上 級 者 と ほ ぼ 匹 敵 し て い る の が 分 か る 。言 語 環 境 が 異 な る と は い え 、 学 習 期 間 が 1~ 3 年 に 過 ぎ な い 外 国 人 の レ ベ ル に 、 海 外 出 張 な ど 豊 富 な 経 験 の あ る 社 会 人 英 語 上 級 者 が 学 習 期 間 10 年 以 上 で や っ と 追 い 着 く と い う の で は 、い か に 日 本 の 英 語 教 育 の 効 率 が 悪 い か を 物 語 っ て い る の で は な い か 。5 章 3 節 の 仮 説 3 の 検 証 に お い て 詳 細 を 述 べ る が 、表 5 - 4 に つ い て 言 及 し て い る 結 果 と 併 せ て 考 え る と 、 SE 及 び AN の 平 均 値 が 、 外 国 人 2 グ ル ー プ と 社 会人英語上級者との間でほぼ匹敵することと密接な関連がある ものと言えよう。 以 上 、 表 5-4 お よ び 表 5-6 の 詳 細 は 、 5 章 3 節 「 調 査 結 果 に 対 す る 考 察 」 の 「 仮 説 1~ 3 の 検 証 」 に お い て 言 及 す る 。 5.2.3 心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 関 連 性 に つ い て の 統計的考察 ― 情 動 要 素 と CEFR 技 能 の 関 連 性 ― 調 査 対 象 者 の グ ル ー プ ご と に 、各 グ ル ー プ に 属 す る 全 被 験 者 の 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 間 に ど の よ う な 関 連 性 が あ る か 統 計的に分析し、論述する。 8 つ の グ ル ー プ そ れ ぞ れ の 表 に 共 通 に 示 し て い る よ う に 、2 8 通 り か ら 成 る 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ 、 40 通 り か ら 成 る 8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の CEFR 技 能 の 組 合 せ 、 10 通 り か ら 成 る 5 つ の 115 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ 、 合 計 78 通 り か ら 成 る 全 て の 組 合 せ に ついて、どのような相関性があるか評価する。 以 下 、調 査 対 象 者 の グ ル ー プ ご と に 解 説 す る 。そ の 中 で 用 い る 表 5-7 か ら 表 5-15 ま で の 各 表 は 、 相 関 性 を 評 価 す る 組 合 せ の 一 方 を 縦 軸 に 他 方 を 横 軸 に 並 べ 、縦 横 ク ロ ス し た 組 合 せ の 相 関 性 デ ー タ を 、そ の ク ロ ス し た 升 目 に 配 置 し た も の で あ る 。各 升 目 の 上 の 行 に は 相 関 係 数 ( r) を 、 ま た 、 下 の 行 に は 有 意 水 準 5 % で 有 意 な 相 関 で あ る 場 合( p< .05)は * の 記 号 を 、有 意 水 準 1 % で 有 意 な 相 関 の 場 合 は * * の 記 号 を 載 せ た 。以 下 の 解 説 に お け る 相 関 性 の 強 さ に つ い て の 表 現 は 、 第 4 章 6 節 (3)相 関 性 評 価 の 方 式 で述べた原則に基づく。 (1) 社 会 人 英 語 上 級 者 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-7 か ら 、 SE は 、E X と の 間 に r = . 4 8 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EX は IN と の 間 に r =- .39, p <.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。A N は 、I N と の 間 に r = . 6 8 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、I H と の 間 に r = . 3 7 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、 IN と の 間 に r =.61,p <.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E X と の 間 に r = - . 4 6 , p < . 0 1 と い う 比 較 的強い負の相関性が見られる。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-7 か ら 、 情 動 要 素 SE は 、 CEFR 技 能 L お よ び I と の 間 に 共 に r =.44,p <.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 P と の 間 に r =.32,p<.05 お よ び W と の 間 に r =.36 p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 A N は 、C E F R 技 能 L と の 間 に r =- .55,p <.01 お よ び R と の 間 に r =- .47,p <.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 I と の 間 に r =- .32, p<.05 お よ び W と の 間 に r =- .31, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 116 素 I N は 、C E F R 技 能 I と の 間 に r = - . 3 0 , p < . 0 5 と い う 弱 い 負 の 相関性が見られる。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-7 か ら 、 L は 、 R と の 間 に r = . 6 3 , p < . 0 1 、I と の 間 に r = . 5 4 , p < . 0 1 、P と の 間 に r =.44, p <.01 お よ び W と の 間 に r =.53, p <.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R は 、I と の 間 に r = . 5 2 , p < . 0 1 、 P と の 間 に r =.49, p <.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 W と の 間 に r =.71, p <.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 I は 、P と の 間 に r = . 7 7 , p < . 0 1 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、W と の 間 に r =.50, p <.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、W と の 間 に r = . 5 8 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ の 全 て に つ い て 、比 較 的 強 い あ る い は 強 い 、し か も 有 意 水 準 1 % で 有意な相関が見られることが分かった。 以 上 を ま と め れ ば 、 SE と EX は 互 い に 強 め あ い 、 ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 AN、 IH お よ び IN は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、 EX ひ い て は SE を 牽 制 し 、 全 て の C E F R 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。つ ま り 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、全 て の C E F R 技 能 が 完 全 に 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ スの方向へ動くことが分かる。 一 般 的 に 内 向 的 な 特 性 を 持 つ 日 本 人 学 習 者 の 場 合 、I N が A N お よ び IH と 三 つ 巴 と な っ て SE を 牽 制 し 、 せ っ か く SE が 英 語 力 の 発 達 へ プ ラ ス に 働 こ う と し て も 、そ れ を 阻 害 し て し ま う 。つ ま り 、内 向 的 で あ る が ゆ え に 、抑 制 し 、不 安 を 抱 い て 自 信 を 喪 失 し 、失 敗 を 恐 れ て 人 前 で 話 し た が ら な い 。そ れ が 、E F L と し て の 日 本 人 学 習 者 が 往 々 に し て 陥 る 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 不 得 手 と いうマイナス循環の構造ではないかと考える。 117 表 5-7 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 社 会人英語上級者 N=46) 情 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 RT AN EM IH EX IN 0.18 -0.19 0.09 -0.26 0.48 -0.24 TR 0.09 L R I P W 0.44 0.28 0.44 0.32 0.36 ** * * SE ** -0.02 RT -0.10 -0.14 ** 0.22 -0.26 0.55 -0.15 -0.02 0.02 -0.11 -0.08 -0.55 -0.47 -0.32 -0.26 -0.31 ** ** * 0.01 -0.16 -0.04 -0.04 -0.03 - ** -0.02 AN - 0.37 -0.25 0.68 -0.08 - * ** * 情 0.02 EM - - - IH - - - 0.06 0.16 0.02 -0.46 0.61 -0.14 -0.13 0.02 -0.15 -0.14 -0.04 ** ** -0.07 0.12 0.10 0.16 0.19 0.01 -0.29 -0.28 -0.30 -0.18 -0.15 0.13 0.15 - 動 -0.39 EX - - - - - ** IN - - - - - -0.27 - * 0.06 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 TR - - - - - - - L - - - - - - - R I P - - - - - - - - - - - - - - - - - - 118 - - - 0.06 -0.01 0.63 0.54 0.44 0.53 ** ** ** ** 0.52 0.49 0.71 ** ** ** 0.77 0.50 ** ** - - - - - - - - - - 0.58 ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 次 に 、 8 つ の 情 動 要 素 の 中 、 CEFR 技 能 と の 間 に 比 較 的 強 い 相 関 性 を 有 す る 情 動 要 素 S E( 自 尊 心 )と A N( 不 安 )に つ い て 更 に 詳 細 に 考 察 し て み る 。4 章 3 節 で 、情 動 要 素 ご と に 5 つ の 設 問 を 用 意 し た と 述 べ た 。 SE お よ び AN に 関 す る そ れ ぞ れ 5 つ の 設 問 の 中 か ら 、上 記 判 定 に 結 び つ い た そ れ ぞ れ 3 つ の 設 問 に つ い て 詳 細 に 調 べ て み れ ば 、ど の よ う な 質 問 に 対 し て 、自 己 評 価 に ど の ような変化が起こるか、きめ細かく具体的に分かってくる。 表 5-8は 、 SEと ANに 関 す る 上 記 そ れ ぞ れ 3つ の 設 問 項 目 と CEFR技 能 と の 間 の 相 関 性 を 表 示 し た も の で あ る 。 SEに 関 す る 設 問 の 中 、 回 答 者 の 自 信 を 表 す 項 目 1、 項 目 2お よ び 項 目 5が 、 正 の 相 関 性 を 高 め る こ と に 寄 与 し て い る 。 特 に 、 「 自 分 の 英 語 力 に 自 信 が あ る 」 と い う 項 目 1と 、 CEFR技 能 R、 W と の 間 に 、そ れ ぞ れ r = . 5 2 , p < . 0 1 お よ び r = . 6 0 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。こ の こ と は 、読 み 書 き に 力 を 入 れ て き た 日 本 人 学 習 者 の 強 み を 特 徴 的 に 表 し て い る 。同 様 に 、項 目 1と L( listening) と の 間 に も 、 r =.49, p<.01と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。読 み 書 き に と ど ま ら ず 、加 え て 一 方 向 で 受 身 型 の L( l i s t e n i n g )に も か な り 自 信 の あ る こ と が う か が え る 。 相手と対峙するコミュニケーションの要となる双方向で発信型 119 の I( s p o k e n i n t e r a c t i o n )に 関 し て は 、S E と 項 目 2 が r = . 5 9 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 を 示 し て お り 、S E が C E F R 技 能 に 与 える影響がかなりある事を示している。 A N に 関 す る 設 問 の 中 、英 語 力 に 不 安 が あ る 事 を 表 す 項 目 11 、 項 目 13 お よ び 項 目 15 は 、 す べ て の 技 能 に 対 し て 「 負 の 相 関 性 」 に 寄 与 し て い る 。 特 に 、 日 本 人 学 習 者 の 強 み で あ る L, R, W に お い て 顕 著 で あ る 。つ ま り 、A N は 否 定 的 な m o t i v a t i o n に つ な が り 、 強味をも阻害することになる可能性を示している。 表 5-8 情 動 (SE& AN)関 連 項 目 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間の相関係数 (社 会 人 英 語 上 級 者 N = 46) CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 L 項目 1 SE 項目 2 R 0.49 0.52 ** ** 0.42 0.32 ** 項目 5 I 0.36 情動 -0.43 項 目 15 -0.47 0.13 0.60 ** 0.32 * ** * 0.22 0.39 0.20 0.20 0.25 * -0.46 ** AN 項 目 13 W 0.59 * 項 目 11 0.24 P ** -0.46 ** ** -0.39 -0.31 ** * -0.31 -0.20 * -0.42 ** -0.26 -0.21 -0.20 -0.21 -0.24 -0.37 * ** p < .01 SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) * p < .05 L:Listening R:Reading P:Spoken Production 120 AN: Anxiety(不 安 ) I:Spoken Interaction W:Writing [SE 関 連 質 問 項 目 ] 項 目 1: 自 分 の 英 語 力 に 自 信 が あ る 。 項 目 2: 自 分 は ス ピ ー キ ン グ が 得 意 で あ る 。 項 目 5: ス ピ ー キ ン グ が 上 手 と 言 わ れ て 自 信 が つ い た 。 [AN 関 連 質 問 項 目 ] 項 目 11: 英 語 力 に 自 信 が な い 。 項 目 13: テ ス ト や 時 間 が 限 ら れ て い る と う ま く 話 せ な い 。 項 目 1 5:発 音 、語 彙 、文 法 な ど の 間 違 い を 指 摘 さ れ た の で 、 話したくなくなった。 (2) 留 学 経 験 の あ る 大 学 学 部 3 回 生 表 5 - 9 は 大 学 学 部 3 回 生 の 留 学 後 の 結 果 を 示 し て い る 。ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-9 か ら 、SE は 、RT と の 間 に r = . 5 8 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E M と の 間 に r =.34, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EX と の 間 に r =.72, p < . 0 1 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、A N と の 間 に r = - . 5 9 , p < . 0 1 お よ び IN と の 間 に r =- .60, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .40, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 RT は 、 EX と の 間 に r =.54, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 EM と の 間 に r =.37, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 TR と の 間 に r =.42, p<.05 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .45, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。A N は 、I H と の 間 に r = . 5 4 , p < . 0 1 お よ び I N と の 間 に r = . 5 1 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E X と の 間 に r = - . 4 6 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。E M は 、E X と の 間 に r = . 3 7 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I H は 、E X と の 間 に r =- .57, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ 121 る 。 EX は 、 IN と の 間 に r =- .64, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相関が見られる。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 9 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 L と の 間 に r = . 7 6 , p<.01 お よ び I と の 間 に r =.70, p<.01 と い う 共 に 強 い 正 の 相 関 性 が 、 R と の 間 に r =.58, p<.01、 P と の 間 に r =.44, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.44, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 R T は 、L と の 間 に r = . 4 2 , p < . 0 5 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 A N は 、L と の 間 に r = - . 4 8 , p<.01、 R と の 間 に r =- .42, p<.05, I と の 間 に r =- .58, p<.01 お よ び P と の 間 に r =- .41, p<.05 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 E M は 、I と の 間 に r = . 4 1 , p < . 0 5 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 L と の 間 に r =.39, p<.05 お よ び P と の 間 に r =.37, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IH は 、 I と の 間 に r =- .46, p<.01、 P と の 間 に r =- .42, p<.05 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 EX は 、 L と の 間 に r = . 5 8 , p < . 0 1 、R と の 間 に r = . 4 2 , p < . 0 5 、I と の 間 に r = . 6 8 , p < . 0 1 、P と の 間 に r = . 4 8 , p < . 0 1 お よ び W と の 間 に r = . 5 2 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、 L と の 間 に r =- .62, p<.01、 R と の 間 に r =- .61, p<.01、 I と の 間 に r =- .59, p<.01 お よ び P と の 間 に r =- .43, p<.01 と い う 比 較的強い負の相関性が見られる。 次 に 、 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-9 か ら 、 L は 、 R と の 間 に r =.67, p<.01、 I と の 間 に r =.69, p<.01、 P と の 間 に r =.66, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.40, p<.05 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R は 、I と の 間 に r = . 5 3 , p < . 0 1 、 P と の 間 に r =.58, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.54, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I は 、P と の 間 に r = . 7 3 , p < . 0 1 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、 W と の 間 に r =.59, p<.01 と い う 比 較 122 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.62, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る C E F R 技 能 相 互 の 全 て の 組 合 せ に つ い て 、比 較 的 強 い 、あ る い は 強 い 相 関 が 見 ら れ 、し か も 9 通 り の 組 合 せ に つ い て 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 分 か っ た 。 以 上 を ま と め れ ば 、 SE、 RT、 EM、 EX お よ び TR は 互 い に 強 め あ い 、全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。一 方 、AN、IH お よ び IN は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、 SE、 RT お よ び EX を 牽 制 し 、全 て の C E F R 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。つ ま り 、全 て の CEFR 技 能 が 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、完 全 に 連 動 し て プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。上 述 し た 社 会 人 英 語 上級者のケースと極めて類似した状況がここでも見られる。 表 5-9 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 学経験あり学部 3 回生 N=35) 情 (留 (留 学 後 ) CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 RT AN EM IH EX IN 0.58 -0.59 0.34 -0.40 0.72 -0.60 ** ** ** ** -0.45 0.54 -0.31 ** ** 0.54 -0.46 0.51 ** ** ** -0.26 0.37 -0.25 TR 0.30 L R I P W 0.76 0.58 0.70 0.44 0.44 ** ** ** ** ** 0.42 0.16 0.29 0.23 0.15 -0.42 -0.58 -0.41 -0.23 SE -0.12 RT * 0.37 情 -0.09 動 EM 0.42 - * AN * - - * -0.13 - ** 0.19 - 0.39 * 0.26 - - 0.41 - * * 0.33 -0.23 -0.24 -0.26 * 0.37 0.33 - -0.46 * -0.42 -0.25 - ** EX ** - -0.57 - -0.48 - * IH * - - -0.64 123 0.27 0.58 0.42 ** * 0.68 0.48 0.52 ** ** 0.01 - IN - - - - - - - - - - - L - - - - - - - CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 - - I - - - - - - ** ** ** -0.30 -0.62 -0.61 -0.59 -0.43 ** ** ** ** 0.21 -0.00 0.26 0.32 0.67 0.69 0.66 ** ** ** 0.53 0.58 0.54 ** ** ** 0.73 0.59 ** ** - TR R * - - - - 0.18 0.40 - - - - - * - - - 0.62 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing こ れ ら 35 名 の 留 学 経 験 の あ る 大 学 3 回 生 グ ル ー プ に 対 す る 質的分析は、次のようにまとめられる。 「コミュニケーション力の向上に役立った勉強法、さらに、 留 学 を 経 験 し て 英 語 力 や 情 動 (感 情 や 気 持 ち )の 面 で 変 化 し た 点 が あ れ ば 自 由 に 記 述 く だ さ い 」 の 設 問 に 対 し 、 35 名 の 内 80% で あ る 28 名 が 興 味 深 い 回 答 を 記 入 し て い る 。 そ れ を キ ー ワ ー ド で 分 124 類 し て み る と 以 下 の よ う に な る 。( な お 、 以 下 の 人 数 に は 、 ひ と り が 複 数 の キ ー ワ ー ド を 使 用 し て い る ケ ー ス も あ る )。 ・ 積 極 性 が 大 切 :1 8 名 ・ 自 信 が 生 ま れ た :6 名 ・ 間 違 い を 気 に せ ず 話 す こ と が 大 切 :5 名 ・ 褒 め ら れ て 、 や る 気 が 出 た :3 名 具体的な自由記述の代表例をいくつか以下にまとめておく。 自由記述事例 ・「 自 分 か ら 進 ん で 言 動 す る こ と が 大 切 で あ る と 思 っ た 」 ・「 私 に と っ て 、 な か な か 英 語 が 聞 き 取 れ ず 大 変 だ っ た 。 し かし、話せなくても結構コミュニケーションが取れた。 もっと話したいという気持ちが高まった」 ・「 ホ ー ム ス テ イ 先 の フ ァ ミ リ ー に ス ピ ー キ ン グ が 良 く で き ていると褒められて、自信がついた。もっと英語を学び たいと思った」 自 由 記 述 の 中 で 、文 法 や 間 違 い に 関 す る 以 下 の コ メ ン ト は 興 味 深 い。 「 発 音 と か 文 法 に 自 信 が な く て も 、結 構 相 手 に 言 い た い こ と が 伝 わ っ た 。… 知 っ て い る 単 語 で も 話 せ ば 伝 わ る の で 、 まずは恥ずかしがらず話をしてみることが大切だと思 った」 「 い く ら 文 法 を 学 ん で い て も 、い ざ 外 国 へ 行 く と あ ま り 使 わ な か っ た 。必 要 な の は 、コ ミ ュ ケ ー シ ョ ン し た い と 思 う行動力と間違えてもよいので話すことが大切だと思 った」 「 中 学 校 と 高 校 で 文 法 ば か り を 勉 強 し て い た け ど 、も っ と speaking を 身 に つ け た 方 が い い と 思 っ た 」 125 「 留 学 前 に は 、ど う し て も 正 し い 文 法 で 話 さ な い と い け な い と 考 え る あ ま り 、う ま く 自 分 の 思 い が 伝 わ ら な い 時 が あ っ た 。・ ・ ・ 留 学 後 、 文 法 が め ち ゃ め ち ゃ で も 、 会 話 は で き た 。会 話 の 上 で は 、文 法 を あ ま り 意 識 し な い 方 が いいと思った」 「 と り あ え ず 、話 し て み る こ と が 大 事 と 思 い 始 め 、文 法 と かをあんまり気にせず話すようになった」 「・・・英 語 を 使 っ て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン す る 事 は お 互 い に 理 解 し あ え な い 場 合 も あ る が 、失 敗 を 恐 れ ず に 、相 手 が何を伝えようとしているか理解しようとする姿勢が 大 切 だ と 思 っ た 。留 学 後 、た く さ ん の 人 た ち と 関 わ っ て 、 自分の意見を持ってそれが間違ったことでも発言する ことは恥ずかしいことではないと思えるようになった」 以 上 、 自 由 記 述 に 記 入 し て い る 28 名 は も ち ろ ん 、 本 調 査 参 加 者 35 名 全 員 が こ れ ま で の 英 語 の 授 業 に 関 す る 設 問 に 対 し て 「 会 話 の 授 業 は あ っ た 」 が 、「 文 法 ・ 訳 読 式 が 中 心 の 授 業 」 を 受 け て き た と 回 答 し て い る 。こ れ ら 回 答 と 自 由 記 述 か ら 次 の よ う な 状 況 が 読 み 取 れ る 。留 学 後 実 際 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン す る 際 、文 法 が 頭 か ら 離 れ ず 、間 違 っ て は い け な い と い う 意 識 が 働 き 、自 由 闊達なコミュニケーションの抑止力になっている状態が見えて く る 。 い っ た ん そ れ を 取 り 外 し 、「 間 違 っ て も い い の だ 」「 話 し て み れ ば 何 と か な る 」と い う 事 に 気 づ き 、危 険 負 担 を い と わ な け れ ば 、 積 極 的 に な り 、 そ の 結 果 「 や れ ば で き る 」、「 も っ と 勉 強 し た い 」「 褒 め ら れ て 自 信 が 持 て た 」 な ど と 、 プ ラ ス の 循 環 に 至 る 傾 向が見えてくる。 そ の よ う な 学 習 者 の 質 的 研 究 を 試 み る こ と に よ り 、量 的 分 析 で 検 証 し て き た 学 習 者 の 情 動 が 英 語 学 習 に 影 響 を 与 え 、プ ラ ス に 働 く と 、結 果 と し て 、英 語 を も っ と 勉 強 し た い と い う 意 欲 に つ な 126 がっていることがわかる。 以 上 の よ う に 、留 学 経 験 の あ る 大 学 3 回 生 で さ え も 、文 法 は 英 語 で 話 す 際 の 足 枷 に な っ て い た よ う で あ る 。だ か ら と 言 っ て 文 法 は 無 視 し て よ い わ け で は な い 。文 法 の 規 則 性 が 頭 に 入 っ て い な いと、英語としての文章構造が作れない。やはり、文法は読む、 書く、話す、聴くの基盤である。 鳥 飼 (2012)は 文 法 に つ い て「 高 校 で は 、最 低 限 の 文 法 を 知 っ て 基 本 的 な 英 語 を 聴 い て 書 い て 読 ん で 話 せ る 力 を つ け る こ と 。生 徒の自信や意欲をそがないようにしながら正確性も確保するの が 、 教 師 の 腕 の 見 せ 所 で あ る 」 (読 売 新 聞 ,2012.6/23)と 述 べ て い る。 文 法 学 習 に つ い て 酒 井( 2 0 0 8 )は 1 ~ 6 年 間 の 短 期 学 習 者 よ り、6 年以上続けている長期学習者の方が文章理解の回路が出来 て お り 、英 語 学 習 開 始 年 齢 よ り 英 語 の 接 触 量 が 多 い 方 が 、文 法 知 識 は 定 着 す る と い う 実 験 結 果 を 出 し て い る 。こ の 結 果 は 、英 語 の 文法の学習は短期間で獲得できるものではなく、 多くの文章を 読 み 続 け て い れ ば 、自 然 に 規 則 性 が 分 か る よ う に な る こ と を 示 し て い る と 思 わ れ る (林 、 2012, p.62 参 照 )。 つ ま り 、読 み 、書 き 、話 し 、聴 く と い う 4 技 能 を バ ラ ン ス よ く 継 続 的 に 鍛 え る こ と を 通 し て 英 語 の 接 触 量 を 増 や し 、そ の 結 果 文 法 の 規 則 性 は 自 然 に 身 に 付 く と い う こ と で あ ろ う 。重 要 な の は 、 話 す 際 に 文 法 が 抑 止 力 に な っ て は い け な い 。文 法 が 抑 止 力 な ら ず 、 気 に な ら な い ま で 4 技 能 を 鍛 え る こ と 、そ し て 、話 そ う と す る 際 の 環 境 を 話 し や す い 雰 囲 気 、プ ラ ス の 動 機 を 引 き 出 す こ と が 大 事 で あ る と 言 い た い 。そ れ は 指 導 者 の 工 夫 次 第 で 可 能 と な る こ と で ある。 留学経験のある大学学部 3 回生の留学前のデータに関して は 、5 章 3 節 2 項「 仮 説 2 の 検 証 」に お い て 、留 学 前 と 留 学 後 を 比較して論述する。 127 (3) 大学学部 1 回生 1 6 大 学 1 , 4 4 0 名( J A C E T 関 西 支 部 ラ イ テ ィ ン グ 研 究 会 , 1 9 9 8 ) の C-test 平 均 52.81 点 よ り や や 上 の 53.3 点 を 獲 得 し て い る ほ ぼ 日 本 の 大 学 生 の 平 均 的 英 語 力 を 有 す る 大 学 学 部 1 回 生 47 名 の 調 査 結 果 が 表 5-10 で あ る ま ず 、情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 0 か ら 、S E は 、 RT と の 間 に r =.35, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EM と の 間 に r =.55, p<.01 お よ び EX と の 間 に r =.56, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、A N と の 間 に r = - . 4 7 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .36, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 R T は 、E M と の 間 に r = . 4 3 , p < . 0 1 、 E X と の 間 に r =.42, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.40, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .30, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 AN は 、 IH と の 間 に r =.50, p<.01 お よ び IN と の 間 に r =.53, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E M と の 間 に r = - . 4 3 , p < . 0 1 お よ び E X と の 間 に r = - . 5 1 , p<.01 と い う と い う 共 に 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EM は 、 EX と の 間 に r =.80, p<.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、 RT と の 間 に r = . 4 3 , p < . 0 1 、T R と の 間 に r = . 4 0 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .46, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、 IN と の 間 に r =.50, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 が 、E X と の 間 に r = - . 4 5 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EX は 、 TR と の 間 に r =.47, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 が 見 ら れ る 。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 0 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 I と の 間 に r = . 4 9 , p < . 0 1 、P と の 間 に r = . 4 8 , p < . 0 1 お よ び W と の 間 に r = . 4 3 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 L と の 間 に r =.35, p<.05 128 お よ び R と の 間 に r =.36, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 AN は 、 CEFR 技 能 P と の 間 に r =.29, p<.05 お よ び W と の 間 に r =.32, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 E M は 、I と の 間 に r = . 3 3 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 I H は 、P と の 間 に r = - . 3 4 , p < . 0 5 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 EX は 、 I と の 間 に r =.32, p<.05 お よ び P と の 間 に r =.31, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の相関性が見られる。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-10 か ら 、L は 、R と の 間 に r =.63, p<.01、 I と の 間 に r =.48, p<.01、 P と の 間 に r =.42, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.60, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 R は 、 I と の 間 に r =.61, p<.01、 P と の 間 に r =.62, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.61, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 I は 、 P と の 間 に r =.74, p<.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、 W と の 間 に r =.62, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.75, p < . 0 1 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。す な わ ち 、1 0 通 り か ら 成 る C E F R 技 能 相 互 の 全 て の 組 合 せ に つ い て 、比 較 的 強 い 、あ る い は 強 い 、し か も 有 意 水 準 1 % で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 分 かった。 以 上 を ま と め れ ば 、 SE、 RT、 EM、 EX お よ び TR は 互 い に 強 め あ い 、全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。一 方 、AN、IH お よ び IN は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、 SE、 EM お よ び EX を 牽 制 し 、全 て の C E F R 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。つ ま り 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、全 て の C E F R 技 能 が 完 全 に 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。社 会 人 英 語 上 級 者 な ど上述した 2 つのグループのケースと類似した状況がここでも 見られる。 本論文 1 章 3 節で「コミュニケーションが適切に機能する 129 ためには、自分の意見や思いを相手に正しく投げかける一方で、 相 手 の 意 見 や 立 場 を 正 し く 受 け 止 め 、双 方 向 に う ま く 噛 み 合 っ た 、 会 話 の キ ャ ッ チ ボ ー ル を 展 開 す る 必 要 が あ る 」と 述 べ た 。つ ま り 、 E M ( 共 感 ) な し で は 、 S E( 自 尊 心 ) は 独 り 善 が り の 自 己 主 張 で あ っ た り 、 お ざ な り で う わ べ だ け の EX( 外 向 性 ) で は 、 相 手 を 納得させるやり取り、折衝など到底期待できないのである。 こ の 大 学 学 部 1 回 生 の 場 合 、 E M( 共 感 ) と S E 、 R T 、 T R と の 間 に い ず れ も 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が み ら れ 、特 に EX と の 間 に r =.80, p<.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 特 徴 的 で あ り 、 興 味 深 い 。上 述 か ら す れ ば 、こ の 大 学 1 回 生 グ ル ー プ は 、コ ミ ュ ニ ケ ー ション力を高めるために有益なプラスの要素を潜在的に持って いると言えよう。 表 5-10 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 大 N=47) 学学部1回生 情 RT 0.35 AN EM -0.47 0.55 ** ** -0.26 0.43 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 IH -0.36 EX IN 0.56 -0.26 TR 0.07 L R I P W 0.35 0.36 0.49 0.48 0.43 * * ** ** ** -0.01 0.11 0.23 0.14 0.11 -0.22 -0.13 -0.24 -0.29 -0.32 * * SE * RT 情 -0.43 - 動 IH EX 0.42 -0.10 0.40 - - - * 0.50 ** ** -0.51 0.53 -0.19 - ** EM -0.30 ** - ** AN * - - - ** ** ** -0.46 0.80 -0.22 ** ** 0.40 0.21 0.28 0.33 0.26 0.16 -0.34 -0.15 - - - * ** -0.45 0.50 ** ** 0.10 -0.16 -0.17 -0.20 - - - -0.24 130 * 0.47 0.13 0.19 0.32 0.31 0.25 ** 0.13 IN - - - - - - TR - - - - - - - L - - - - - - - CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 - R - I - - - - - - - - - - * * -0.17 -0.04 -0.25 -0.02 -0.18 -0.17 0.01 -0.03 -0.05 -0.00 0.63 0.48 0.42 0.60 ** ** ** ** 0.61 0.62 0.61 ** ** ** 0.74 0.62 ** ** - - - - - - - - 0.75 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 間 の 相 関 性 を 見 る と 、 SE は 全 て の CEFR 技 能 と の 間 に 比 較 的 強 い あ る い は 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EX は I と P と の 間 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EM は I と の 間 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 そ れ ぞ れ 見 ら れ る 。 つ ま り EM は 、 直 接 的 に は I に 限 定 さ れ る が 、 間 接 的 に は SE や EX を 介 し て CEFR 技 能 全 般 へ影響するのである。 131 し か し な が ら 、注 目 す べ き 情 動 要 素 S E 、E M 、E X お よ び C E F R の 各 技 能 に つ い て 、表 5 - 4 お よ び 表 5 - 6 を 基 に こ の 大 学 学 部 1 回 生 の デ ー タ を 見 る と 、情 動 要 素 お よ び C E F R 各 技 能 の レ ベ ル 値 は 社 会 人 英 語 上 級 者 や 留 学 経 験 の あ る 大 学 学 部 3 回 生 、さ ら に は 日 本 人 全 体 の 平 均 に す ら 達 し て い な い こ と が わ か る 。大 学 入 学 直 後 に 実 施 し た 本 調 査 段 階 で は 、こ の 大 学 学 部 1 回 生 の 資 質 が 十 分 に 発揮できていないと言えよう。 (4) 高校 2 年生 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5 - 11 か ら 、 S E は 、 EM と の 間 に r =.31, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EX と の 間 に r = . 5 2 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、A N お よ び IN と の 間 に 共 に r =- .34, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .49, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R T は 、E M と の 間 に r = . 3 4 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 EX と の 間 に r =.40, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.57, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 AN と の 間 に r =- .31, p<.05 お よ び IH と の 間 に r =- .32, p<.05 と い う 共 に 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 AN は 、 IH と の 間 に r =.56, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IN と の 間 に r =.39, p<.01 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、E X と の 間 に r = - . 3 8 , p < . 0 1 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EM は 、 EX と の 間 に r =.49, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、T R と の 間 に r = . 3 5 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、I H と の 間 に r =- .38, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、I N と の 間 に r = . 5 0 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 が 、E X と の 間 に r = - . 6 3 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、T R と の 間 に r = - . 2 9 , p < . 0 5 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。E X は 、 TR と の 間 に r =.34, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 が 、 IN と の 間 に r =- .41, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 132 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 11 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 I と の 間 に r = . 5 3 , p<.01 お よ び P と の 間 に r =.51, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、R と の 間 に r = . 3 1 , p < . 0 5 お よ び W と の 間 に r = . 3 2 , p < . 0 5 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 A N は 、I と の 間 に r =- .38, p<.01 お よ び P と の 間 に r =- .34, p<.05 と い う 共 に 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IH は 、 I と の 間 に r =- .32, p<.05 お よ び P と の 間 に r =- .28, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 E X は 、I と の 間 に r = . 3 6 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、 I と の 間 に r =- .32, p<.05 お よ び P と の 間 に r =- .34, p<.05 と い う 弱 い 負の相関性が見られる。 次 に 、 C E F R 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5 - 11 か ら 、 L は 、R と の 間 に r = . 3 4 , p < . 0 5 、I と の 間 に r = . 3 7 , p < . 0 1 お よ び P と の 間 に r = . 2 9 , p < . 0 5 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R は 、 I と の 間 に r =.46, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 P と の 間 に r =.38, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.39, p<.01 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 I は 、 P と の 間 に r =.53, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.41, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.42, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る CEFR 技 能 相 互の組合せのうち LとWを除いて 9通りについて何らかの相関が 見 ら れ 、 そ の 中 の 4 通 り (R と I、 I と P、 I と W 、 P と W)に つ い て は 、比 較 的 強 い 、あ る い は 強 い 相 関 性 が 見 ら れ 、し か も 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 分 か っ た 。 以 上 を ま と め れ ば 、 SE、 RT、 EM、 EX お よ び TR は 互 い に 強 め あ い 、 ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 A N 、I H お よ び I N は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、S E お よ び EX を 牽 制 し 、 ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。 つ 133 ま り 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、ほ と ん ど 全 て の C E F R 技 能 が 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。社 会 人英語上級者など上述した 3 つのグループのケースと類似した 状況がここでも見られる。 高 等 学 校 2 年 生 50 名 の Part I 回 答 を 基 に 、質 的 研 究 と し て まとめると、次のようになる。 ま ず 、 英 語 が 「 大 好 き 」 は 5 名 で あ り 、「 ま あ ま あ 好 き 」 は 2 6 名 、「 嫌 い 」 は 1 4 名 、「 大 嫌 い 」 は 5 名 と な っ て い る 。 準 2 級 取 得 し て い る 生 徒 は 5 0 名 の 内 3 8 名 で あ り 、英 語 が「 大 好 き 」 「ま あ ま あ 好 き 」 の 回 答 者 に つ い て は 8 0 % 以 上 が 取 得 し て い る 。「 嫌 い 」 の 回 答 者 は 8 5 . 7 % 、「 大 嫌 い 」 の 回 答 者 で さ え も 2 級 又 は 3 級 を 全 員 が 取 得 し て い る 。実 際 の 授 業 で 模 擬 面 接 を 導 入 し て い る 事 か ら み て も 、学 校 を あ げ て 英 語 検 定 受 験 を 推 進 し 、積 極 的 な 取 り 組 み を し て い る 事 が 理 解 で き る 。英 語 が 好 き な 理 由 と し て あ げ て い る の は「 外 国 へ 行 き た い か ら 」 「英語の映画を理解したい」 「外 国人と話したい」が主流である。 一 方 、 嫌 い な 理 由 は 「 文 法 が わ か ら な い 」「 勉 強 に つ い て い け な い 」「 試 験 が あ る か ら 」「 勉 強 の 仕 方 が わ か ら な い 」 の 回 答 が ほ と ん ど を 占 め る 。 不 安 は 、 英 語 が 「 大 好 き 」「 ま あ ま あ 好 き 」 と 回 答 し た 生 徒 も 含 め て 、 3 5 名 に 及 ぶ 。「 嫌 い 」 や 「 大 嫌 い 」 の 回 答 者 は ほ と ん ど が「 少 し 不 安 」 「 不 安 で あ る 」と 回 答 し て い る 。 「 嫌 い 」の 理 由 が そ の ま ま 、不 安 に つ な が っ て い る も の と 考 え ら れる。 興 味 深 い の は 、「 英 語 の 必 要 性 」 を 認 識 し て い る の は 、「 ま あ ま あ 好 き 」「 嫌 い 」「 大 嫌 い 」 の 回 答 者 に お い て 合 計 11 名 い る 点 で あ る 。英 語 が 嫌 い な 生 徒 で さ え も 、必 要 性 を 認 識 し て い る こ と か ら 、指 導 に よ っ て は 、勉 強 の や り 方 が わ か る よ う に な り 、理 解 に つ な が り 、英 語 嫌 い の 解 消 に つ な が る 可 能 性 も あ る 事 を 示 唆 し ている。 134 英 語 塾 に 通 っ て い る 生 徒 は 19 名 お り 、 学 習 期 間 は 3 年 が 主 流 で あ る 。自 由 記 述 を 見 て い く と 、こ の 年 代 に な る と 、自 分 に 適 し た 学 習 ス タ イ ル を 身 に 着 け 始 め て い る こ と と 、A LT の 影 響 が い かに大きいががわかる。自由記述から事例を以下にあげる。 自分に適した学習スタイルに関連する記述: ・「 英 語 の 歌 詞 を た く さ ん 聞 い て 表 現 を お ぼ え た 」 類 似 3 件 ・「 海 外 ド ラ マ を 吹 き 替 え な し で 見 て 表 現 を 覚 え た 」 類 似 2 件 ・「 対 話 文 の テ キ ス ト を 覚 え て 会 話 に 役 立 て た 」 ・「 英 語 で 話 す 機 会 を た く さ ん 持 つ こ と 」 類 似 3 件 ・「 暗 証 し て そ れ を つ か う こ と 」 類 似 3 件 ・「 英 語 が 完 璧 で な く て も 外 国 人 と 話 し て 通 じ た の で こ れ で も 良いのかと自信がもてた」類似 3 件 ・「 人 前 で 話 す 訓 練 を し て 慣 れ た 」 ・「 と り あ え ず 、 喋 っ て み る こ と で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き た」類似 2 件 ・「 音 読 に よ り 、 力 が つ い た 」 類 似 5 件 ・「 間 違 っ て も 、 と に か く し ゃ べ っ て み る こ と 」 類 似 3 件 ・「 ゲ ー ム 形 式 の 授 業 は 楽 し い が 、 実 際 の 英 語 に 役 立 つ 事 は な かった」 A LT に 関 す る 記 述 : ・「 間 違 っ て も 優 し く 直 し て く れ る の で 、 話 す こ と に 抵 抗 が な くなった」類似 2 件 ・「 A LT の 指 導 で 話 の 仕 方 に つ い て 指 導 さ れ 、 ス ピ ー チ す る こ とが楽になった」 ・「 A LT の 話 を 理 解 し た い と 思 い 、 英 語 に 興 味 が わ い た 」 類 似 3 件 135 こ れ ら 質 的 研 究 か ら わ か る こ と は 、英 語 嫌 い は 試 験 や 文 法 が 理 解 で き な い 、勉 強 に つ い て い け な い 等 そ れ が 不 安 に つ な が っ て い る 点 で あ る 。さ ら に 、人 前 で 話 す 際 に 間 違 い を す る こ と を 生 徒 は か な り 不 安 に 感 じ て い る が 、A LT な ど の 指 導 に よ り 、気 を 楽 に して人前で話せるようになったと述べている。 こ の 点 は 、日 本 の 英 語 教 育 の 特 徴 を 表 し て い る 。つ ま り 、日 本 人 指 導 者 は 文 法 な ど 完 璧 さ を 求 め る あ ま り 、生 徒 が 人 前 で 英 語 を話すことに対して委縮してしまう。学習者の気持のあり様を、 指導者自ら理解する必要があると言えよう。 表 5 - 11 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 高 校 2 年生 N=50) 情 RT 0.28 AN -0.34 EM 0.31 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 IH EX IN -0.49 0.52 ** ** -0.32 0.40 -0.34 TR 0.18 L 0.25 R I P W 0.31 0.53 0.51 0.32 * ** ** * 0.08 0.20 0.19 -0.00 -0.18 -0.38 -0.34 -0.14 SE * -0.31 RT 情 EM 0.34 -0.12 - - * * 0.04 0.56 -0.38 0.39 ** ** ** -0.38 0.49 0.20 ** ** - ** - - - -0.21 -0.08 - - - ** 0.35 * 0.22 0.10 -0.01 -0.12 -0.02 -0.10 -0.09 -0.32 -0.28 0.00 - - * -0.63 0.50 ** ** - - -0.29 - - - * 0.34 0.40 * ** 0.20 * * 0.36 0.21 0.01 -0.34 -0.00 - ** IN 0.06 ** -0.41 EX 0.57 - 動 IH * - * AN * - - 136 -0.03 -0.03 * -0.08 -0.32 * 0.04 TR - - - - - - - L - - - - - - - 0.08 0.34 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 - - I - - - - - - - - - - 0.17 0.08 -0.00 0.37 0.29 0.22 - * R * - - - - ** * 0.46 0.38 0.39 ** ** ** 0.53 0.41 ** ** - - - 0.42 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing こ こ で 、 参 考 ま で に 上 述 の 学 習 ス タ イ ル (本 論 文 p.134)に つ い て 、 学 習 方 略 と の 定 義 の 違 い を 明 確 に し て お く 。 Reid(2005) の 定 義 に よ る と 、「 学 習 方 略 と は 、 学 力 を 上 げ る 為 に 生 徒 が し ば し ば 意 識 的 に 使 う 目 に 見 え る ス キ ル で あ る 。つ ま り 、学 習 ス タ イ ル を 改 良 し た り 、拡 大 し た り で き る よ う に 生 徒 に 教 え ら れ た ス キ ル で あ る 。一 方 、学 習 ス タ イ ル と は 、性 格 上 の 特 徴 に 基 づ く も の で あ り 、意 識 的 に は 使 わ れ な い 。新 し い 情 報 を 理 解 し た り 、吸 収 137 し た り す る 際 の 基 盤 で あ り 、生 徒 は 自 分 の 好 み の 学 習 ス タ イ ル を 自 分 自 身 認 識 し 、さ ま ざ ま な 学 習 方 略 を 実 践 し た り 、吟 味 し た り することにより、自分のスタイルを拡大することができる」 (p.viii)と 、 述 べ て い る 。 こ の 定 義 を 当 て は め る と 、上 述 の「 自 分 に 適 し た 学 習 ス タ イ ル 」と は 、高 校 2 年 生 ま で の 学 習 経 験 に よ り 、自 由 記 述 に 記 載 さ れ て い る よ う に 、「 音 読 に よ る 勉 強 で 学 力 が 上 が っ た 」 と か 「 映 画 や 音 楽 で 英 語 を 覚 え た 」な ど と 、そ れ ぞ れ 自 分 に 適 し た 学 習 の 仕方が生徒に芽生えてきていると解釈できる。 (5) 中学 2 年生 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-12 か ら 、 SE は 、 EX と の 間 に r =.58, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 AN と の 間 に r =- .38, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .51, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 RT は 、 EX と の 間 に r =.29, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 AN は 、 IH と の 間 に r =.54, p<.01 お よ び IN と の 間 に r = . 5 1 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E X と の 間 に r =- .48, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EM は 、 EX と の 間 に r =.43, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.49, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、 IN と の 間 に r =.60, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 が 、 EX と の 間 に r = - .60, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EX は 、 IN と の 間 に r =- .36, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 2 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 R と の 間 に r = . 5 6 , p < . 0 1 、I と の 間 に r = . 4 9 , p < . 0 1 お よ び W と の 間 に r = . 4 2 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 L と の 間 に r =.34, p<.05 お よ び P と の 間 に r =.39, p<.01 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 138 ら れ る 。情 動 要 素 R T は 、P と の 間 に r = . 2 8 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 A N は 、I と の 間 に r = - . 5 0 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 R と の 間 に r =- .35, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 EM は 、L と の 間 に r =.51, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 I H は 、R と の 間 に r = - . 3 4 , p < . 0 1 、I と の 間 に r = - . 3 9 , p < . 0 1 お よ び P と の 間 に r =- .34, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 EX は 、 R と の 間 に r =.48, p<.01 お よ び P と の 間 に r =.41, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 L と の 間 に r =.29, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、I と の 間 に r = - . 3 4 , p < . 0 1 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 TR は 、 L と の 間 に r =.37, p<.01、 P と の 間 に r =.33, p<.05 お よ び W と の 間 に r =.29, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性が見られる。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-12 か ら 、L は 、R と の 間 に r =.56, p<.01、 I と の 間 に r =.47, p<.01、 P と の 間 に r =.58, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.59, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 R は 、 I と の 間 に r =.57, p<.01、 P と の 間 に r =.53, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.44, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 I は 、 P と の 間 に r =.47, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.55, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.44, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が あ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る CEFR 技 能 相 互 の 全 て の 組 合 せ に つ い て 、 比 較 的 強 い 、 し か も 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 確 認 さ れ た 。 つ ま り 、 英 語 4 +1 技能は統合的に関連性がある事を明確に示している。 以 上 を ま と め れ ば 、SE、RT、EM お よ び EX お よ び TR は 互 い に 強 め あ い 、 ほ ぼ 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 A N 、I H お よ び I N は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、S E お よ び 139 EX を 牽 制 し 、 全 て の CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。 つ ま り 、 情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、全 て の C E F R 技 能 が 完 全 に 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。社 会 人 英 語 上 級 者など上述した 4 つのグループのケースと類似した状況がここ でも見られる。 表 5-12 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 中 学 2 年生 N=58) 情 RT 0.07 AN -0.38 EM 0.19 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 IH EX IN -0.51 0.58 ** ** -0.23 0.29 -0.26 TR 0.02 L R I P W 0.34 0.56 0.49 0.39 0.42 * ** ** ** ** 0.01 -0.01 0.28 -0.14 SE ** 0.12 RT -0.06 0.02 0.21 0.05 - * * 0.06 AN - 0.54 -0.48 0.51 ** ** ** -0.04 0.43 0.01 0.21 -0.11 -0.35 -0.50 -0.22 -0.04 ** ** 0.21 0.08 0.24 0.25 -0.34 -0.39 -0.34 -0.19 ** ** ** 0.29 0.48 0.25 0.41 * ** - 情 EM - - - - - -0.60 0.60 動 - - ** ** -0.07 -0.22 ** ** - -0.36 EX 0.51 - ** IH 0.49 - - 0.10 ** 0.21 IN - - - - 0.05 - - -0.13 -0.25 ** -0.34 -0.26 -0.06 0.33 0.29 - ** 0.37 TR - - - - - - ** 140 -0.01 0.05 - * * - L CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 - R - I - - - - - - - - - - - - - - - - 0.56 0.47 0.58 0.59 ** ** ** ** 0.57 0.53 0.44 ** ** - - - - - - - ** 0.47 0.55 ** ** - 0.44 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 質 的 研 究 の 視 点 か ら 、P a r t I の 選 択 に よ る 回 答 と 自 由 記 述 か ら 次 の 点 が 読 み 取 れ る 。 調 査 し た 中 学 2 年 生 58 名 の 内 、 英 語 が 「 大 好 き 」 は 3 1 名 、「 ま あ ま あ 好 き 」 は 2 7 名 で あ り 、 全 員 が 、 英 語 に 対 し て 前 向 き で あ る 。4 章 4 節 で 述 べ た よ う に 、授 業 観 察 し た 限 り で は 、テ キ ス ト と 音 声 教 材 を 活 用 し 、生 徒 は 少 人 数 の グ ループで積極的に発言できるよう巧みな指導がなされているこ と と 無 関 係 で は な い と 推 測 さ れ る 。回 答 を 詳 細 に 見 て い く と 、英 語 が 好 き な 理 由 と し て「 自 由 に 話 し た り 、書 い た り し た い 」を 挙 げ て い る も の が 25 名 、 「 外 国 へ 行 き た い 」や「 外 国 人 と 友 達 に な り た い 」が 1 7 名 で あ っ た 。英 語 に 対 し て「 ま っ た く 不 安 が な い 」 が 18 名 で あ り 、 「 あ ま り 不 安 で な い 」が 2 2 名 で あ り 、 「少し不安」 141 が 1 4 名 で あ っ た 。小 学 生 の 場 合 と 異 な り 、中 学 2 年 生 に な る と 、 一 般 的 に 将 来 の 進 路 等 が 意 識 に 上 っ て く る タ イ ミ ン グ で あ り 、全 員 が「 英 語 が 好 き 」と 回 答 し て い る も の の 、不 安 の 要 素 が 表 れ て い る 。 不 安 の 理 由 と し て は 、「 試 験 が あ る か ら 」「 勉 強 に つ い て い け な い か ら 」「 周 り の 人 に 笑 わ れ る か ら 」 の い ず れ か を 挙 げ て い る 。 な お 、 中 学 2 年 生 で 塾 に 行 っ て い る 生 徒 は 13 名 で 、 全 体 の 22.4 %で あ っ た 。 塾 で の 学 習 経 験 は 1 年 か ら 7 年 と 幅 が あ る が 、 1 年 程 度 が 46% と 主 流 で あ る 。 以 上 の よ う な 質 的 研 究 を 、量 的 分 析 を 基 に ま と め た 5 章 3 節 、 表 5-20「 上 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 及 び CEFR 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力 の 平 均 値 」を 発 達 段 階 の 変 化 に あ わ せ て み て み る と 、小 学 生 から高校生への変化は、社会化が進み、思春期が重なるにつれ、 特 に 不 安 の 情 動 が 高 く な り 、「 間 違 う と 、 周 囲 の 人 に 笑 わ れ る か ら 」と か「 勉 強 に つ い て い け な い 」と か 、さ ら に は「 試 験 が あ る か ら 」等 の 回 答 に つ な が っ て い る と 言 え よ う 。こ の 点 は 、表 5 - 2 0 の A N の 平 均 値 に 表 れ て い る 。そ の 後 、発 達 段 階 を 経 る に つ れ て 、 さ ら に 、 AN は 高 く な り 、 紆 余 曲 折 を 経 て 社 会 人 に な る と 下 が る 傾向をたどっていく。 (6) 小学 6 年生 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-13 か ら 、 SE は 、R T と の 間 に r = . 4 0 , p < . 0 1 お よ び E X と の 間 に r = . 6 4 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E M と の 間 に r = . 2 8 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、A N お よ び I H と の 間 に r = - . 4 7 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R T は 、E X と の 間 に r =.54, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.41, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E M と の 間 に r = . 2 6 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、A N と の 間 に r = - . 3 1 , p < . 0 1 お よ び I H と の 間 に r = - . 3 0 , p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 AN は 、 IH お よ び IN 142 と の 間 に r =.51, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 EX と の 間 に r =- .50, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EM は 、 EX と の 間 に r =.43, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .30, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、 IN と の 間 に r =.48, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、E X と の 間 に r = - . 6 0 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EX は 、 TR と の 間 に r =.27, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 IN と の 間 に r =- .37, p<.01 と い う 弱 い 負 の 相 関性が見られる。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 3 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 L と の 間 に r = . 6 1 , p < . 0 1 、R と の 間 に r = . 4 6 , p < . 0 1 お よ び I と の 間 に r = . 4 1 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 P と の 間 に r =.30, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.23, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 R T は 、L と の 間 に r = . 2 5 , p < . 0 5 お よ び I と の 間 に r =.24, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 AN は 、 L と の 間 に r =- .48, p<.01 お よ び I と の 間 に r = - .42, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 R と の 間 に r =.- 36, p<.01 お よ び P と の 間 に r =.- 25, p<.05 と い う 共 に 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 EM は 、 L と の 間 に r =.29, p<.01 お よ び P と の 間 に r =.27, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 IH は 、L と の 間 に r =- .40, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 負 の 相 関 性 が 、 R と の 間 に r =- .22, p<.05 お よ び I と の 間 に r =- .30, p<.01 と い う 共 に 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 E X は 、L と の 間 に r = . 5 1 , p < . 0 1 、R と の 間 に r = . 4 3 , p < . 0 1 お よ び I と の 間 に r =.43, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 P と の 間 に r =.27, p<.05 お よ び W と の 間 に r =.22, p<.05 と い う 共 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、 L と の 間 に r =- .29, p<.01 お よ び I と の 間 に r =- .25, p<.05 と い う 弱 143 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 TR は 、 L と の 間 に r =.33, p < . 0 1 、R と の 間 に r = . 2 6 , p < . 0 5 お よ び I と の 間 に r = . 2 9 , p < . 0 1 という共に弱い正の相関性が見られる。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-13 か ら 、L は 、R と の 間 に r =.73, p<.01 お よ び I と の 間 に r =.74, p<.01 と い う 共 に 強 い 正 の 相 関 性 が 、 P と の 間 に r =.58, p<.01 お よ び W と の 間 に r = . 4 7 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R は 、I と の 間 に r =.76, p<.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、P と の 間 に r =.53, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.56, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I は 、P と の 間 に r =.68, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.67, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.68, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る CEFR 技 能 相 互 の 全 て の 組 合 せ に つ い て 、比 較 的 強 い 、あ る い は 強 い 、し か も 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 分 か っ た 。 興 味 深 い 点 は 、塾 に 行 っ て い る 割 合 が 調 査 対 象 者 の 3 1 % で あ る こ と を 反 映 し て い る た め か 、 す で に 小 学 6 年 生 に お い て も 英 語 4 +1 技 能 の 統 合 的 関 連 性 を 示 し て い る 。中 で も 、特 に 強 い 相 関 性 が み ら れ る の は L と R、 L と I、 R と I で あ る が 、 小 学 生 の 段 階 で も 主 に 使 用される技能に統合的関連性が表れているのは自然な結果であ ろ う 。ち な み に 、大 手 英 語 塾 に 見 学 に 行 く と 、小 学 1 年 生 で す で に 、絵 と 共 に 文 字 を 教 え 、フ ォ ニ ッ ク ス を 導 入 し て い る 。英 語 で のやり取りも指導者と児童、児童と児童の間で行っている。 以 上 を ま と め れ ば 、SE、RT、EM お よ び EX お よ び TR は 互 い に 強 め あ い 、 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 AN、 IH お よ び IN は 三 つ 巴 と な っ て 強 め あ う と 共 に 、 SE お よ び EX を 牽 制 し 、全 て の C E F R 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。つ ま り 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、全 て の C E F R 技 能 が 完 全 に 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。社 会 人 英 語 上 級 者 な 144 ど上述した 5 つのグループのケースと類似した状況がここでも 見られる。 本 調 査 対 象 は 、学 校 で の 英 語 学 習 歴 は 2 年 目 の 小 学 校 6 学 年 、 84 名 で あ り 、 そ の 質 的 分 析 結 果 は 以 下 の と お り で あ る 。 全 体 の 約 31% は 半 年 か ら 10 年 間 英 語 塾 で の 学 習 経 験 が あ る 児 童 で あ る 。塾 で 学 ん で い る こ れ ら 学 習 者 の う ち 、6 年 か ら 7 年 英 語 を 勉 強 し て い る 児 童 は 約 40% に の ぼ る 。 な お 、 表 に は 出 し て い な い が 、 P a r t I の 質 問 中 、「 ほ め ら れ る と ど う し ま す か 」 の 質 問 に 対 し て 、「 も っ と 勉 強 す る 」 「 自 信 が わ き 勉 強 が 楽 し く な る 」 「む ず か し い こ と に も 挑 戦 す る 気 に な る 」の プ ラ ス の 行 動 を 選 択 し た 児 童 は 6 0 名 ( 7 1 . 4 % ) で あ り 、示 唆 に 富 む 結 果 で あ る 。ま た 、 「 話 し 方 を ほ め ら れ て 自 信 が つ い た 」と い う 自 尊 心 の 設 問 と 殆 ど 全 て の 4 + 1 技 能 と の 間 に 、か な り 高 い 相 関 性 が あ り 、一 方 、 「言 葉や発音が間違っていると言われるのがいやで、あまり話さな い 」と い う 不 安 の 設 問 と 殆 ど 全 て の 4 + 1 技 能 と の 間 に 、負 の 相 関 性 が 、 そ れ ぞ れ 見 ら れ る 。「 英 語 は 好 き で す か 」 の 設 問 に 対 し て 、「 大 好 き 」 が 3 0 名 「 ま あ ま あ 好 き 」 は 4 8 名 で あ り 、 あ わ せ て 全 体 の 9 2 . 8 % に の ぼ る 。「 好 き な 理 由 」は「 外 国 へ 行 き た い か ら」「外国人と友達になりたいから」「自由に英語を話したり、 読 ん だ り 、書 い た り し た い か ら 」を 4 8 名 の う ち 3 5 名 が 選 択 し て い る 。 そ の 他 は 「 い い 学 校 へ 入 る の に 必 要 だ か ら 」「 先 生 が ほ め てくれるから」と全員が前向きな回答をしている。 興 味 深 い 点 は 、 英 語 が 「 大 好 き 」「 ま あ ま あ 好 き 」 と 回 答 し た 児 童 は 英 語 を 学 ぶ こ と に [ま っ た く 不 安 で な い ]「 あ ま り 不 安 で な い 」 と の 回 答 が 54 名 、 64.2% に の ぼ る 。 な お 、 塾 で 英 語 学 習 し て い る 児 童 の 全 員 、 英 語 が 「 大 好 き 」「 ま あ ま あ 好 き 」 と 回 答 している。 一 方 、 英 語 が 「 嫌 い 」 は 6 名 「 大 嫌 い 」 は 1 名 で あ っ た 。「 嫌 い 」「 大 嫌 い 」 を 選 択 し た 児 童 は 「 発 音 が 覚 え ら れ な い か ら 」 が 145 最も多く 5 名、 「 ま ち が う と 先 生 や 友 達 に 笑 わ れ る か ら 」が 1 名 、 「 中 学 か ら 、英 語 の 試 験 が あ る の で い や だ か ら 」を 1 名 が 選 択 し ている。これら英語が嫌いを選択した児童は英語を学ぶことに 「不安がある」を 2 名が、「少し不安」を 5 名が選択している。 上 述 の 「 発 音 が 覚 え ら れ な い か ら 」 が 「 大 嫌 い 」「 嫌 い 」 の 理 由 の 71% を 占 め て い る 背 景 に は 、 広 島 型 カ リ キ ュ ラ ム の 特 徴 、 つ ま り 文 字 を 教 え な い こ と と 関 係 が あ る も の と 思 わ れ る 。特 に 塾 に 行っていない児童は英語をカタカナでメモしている実態がある。 以 上 の 回 答 か ら 、英 語 に 対 す る プ ラ ス の 動 機 づ け と 不 安 を な く す ことが英語好きになる可能性を示唆する児童の反応が読み取れ る 。特 に 児 童 期 で は 、前 向 き な 動 機 づ け や 気 持 ち の あ り 様 に 影 響 されていることが、質的研究からも分かる。 表 5-13 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 小 学 6 年生 N=84) 情 RT AN 0.40 -0.47 ** ** EM 0.28 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 IH EX IN -0.47 0.64 -0.39 ** ** ** -0.30 0.54 -0.20 * ** ** 0.00 0.51 -0.50 0.51 ** ** ** -0.30 0.43 0.05 ** ** TR 0.17 L R I P W 0.61 0.46 0.41 0.30 0.23 ** ** ** ** * 0.25 0.18 0.24 0.12 0.08 -0.25 -0.16 SE -0.31 情 RT 動 EM IH 0.26 0.41 - ** AN * - - - ** -0.16 * * -0.48 -0.36 -0.42 ** ** ** * 0.29 0.17 0.18 0.27 - - - 0.09 0.06 - - ** -0.60 0.48 ** ** -0.12 -0.40 * -0.22 -0.30 - 146 ** * ** -0.15 -0.07 -0.37 - EX - - - 0.27 0.51 0.43 0.43 0.27 0.22 * ** ** ** * * -0.29 -0.21 -0.25 - ** -0.05 - IN - - - - ** 0.33 - TR - - - - - - CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 - R - I - - - - - - - - - -0.10 0.14 0.20 - - - - - - * 0.26 0.29 - ** L -0.19 - - * ** 0.73 0.74 0.58 0.47 ** ** ** ** 0.76 0.53 0.56 ** ** ** 0.68 0.67 ** ** - - - - - - - - 0.68 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 次 に 、在 日 外 国 人 留 学 生 と し て 調 査 対 象 の 中 国 人 、ベ ト ナ ム 人 の 場 合 に つ い て 述 べ る 。こ れ ら 留 学 生 に は 、日 本 語 専 門 学 校 卒 業 直 前 の 学 生 が 主 で 大 学 学 部 生 、院 生 も 一 部 含 ん で い る 。い ず れ の 学 生 も 日 本 語 能 力 試 験 1 ) の 2 級 又 は 1 級 取 得 済 み 、或 い は そ れ 147 以 上 の 日 本 語 力 を 有 し て い る 。ち な み に 、日 本 語 専 門 学 校 に 入 学 す る に は 、正 規 の 学 校 教 育 に お け る 1 2 年 以 上 の 過 程 を 修 了 し て おり、日本語学習歴は日本語教育機関で150時間以上受講し、 日本語能力試験 4 級・3 級・2 級のいずれかを取得しているか、 実 用 日 本 語 検 定 2 )の E-以 上 を 取 得 し て い る こ と の 条 件 が あ る 。 (7) 在 日 中 国 人 留 学 生 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-14 か ら 、 SE は 、E M と の 間 に r = . 6 2 , p < . 0 1 お よ び E X と の 間 に r = . 4 1 , p < . 0 1 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 RT は 、 EM と の 間 に r =.42, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.41, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =.30, p<.05 お よ び EX と の 間 に r = . 2 9 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。A N は 、I H と の 間 に r =.46, p<.01、 IN と の 間 に r =.58, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.34, p<.01 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 EM は 、 EX と の 間 に r =.52, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 TR と の 間 に r = . 2 6 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I H は 、 IN と の 間 に r =.37, p<.01 お よ び TR と の 間 に r =.27, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I N は 、T R と の 間 に r = . 4 5 , p < . 0 1 という比較的強い正の相関性が見られる。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 4 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 R と の 間 に r = . 2 4 , p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 AN は 、 L と の 間 に r =- .29, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、 L と の 間 に r =- .35, p<.01、 I と の 間 に r =- .28, p<.05 お よ び P と の 間 に r =- .26, p<.05 と い う 共 に 弱 い 負 の 相 関性が見られる。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-14 か ら 、L は 、R と の 間 に r =.53, p<.01、 I と の 間 に r =.69, p<.01 お よ び P と の 148 間 に r =.47, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 W と の 間 に r = . 3 0 , p < . 0 5 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。R は 、I と の 間 に r =.54, p<.01 お よ び P と の 間 に r =.40, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。I は 、P と の 間 に r = . 6 1 , p < . 0 1 お よ び W と の 間 に r =.54, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.59, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 す な わ ち 、 10 通 り か ら 成 る CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ の 中 、 W と L、 W と R の 組 合 せ を 除 く 8 通 り に つ い て 、 比 較 的 強 い 、 し か も 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ ることが分かった。 以 上 を ま と め れ ば 、S E 、R T 、E M お よ び E X は 互 い に 強 め あ い 、 ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 AN、 IH お よ び IN は 互 い に 強 め あ い 、ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 へ マ イ ナスに働く。つまり、情動要素の影響を受け、ほとんど全ての C E F R 技 能 が 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る 。但 し 、上 述 し た 社 会 人 英 語 上 級 者 な ど 6 つ の 日 本 人 グ ル ー プ の ケ ー ス と 比 べ 、 SE に 代 表 さ れ る CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 情 動 要 素 群 と 、AN に 代 表 さ れ る CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働く情動要素群との間の互いに牽制しあう関係はそれほど強く な い 。ま た 、6 つ の 日 本 人 グ ル ー プ の ケ ー ス で は 、T R は S E な ど と 相 俟 っ て C E F R 技 能 へ プ ラ ス に 働 く が 、こ の ケ ー ス で は T R は AN、 IN な ど と 相 俟 っ て CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 い て い る 。 こ の 中 国 人 留 学 生 グ ル ー プ の 場 合 、E M と S E 、R T 、E X と の 間 に 強 い 正 の 相 関 性 が 、 TR と の 間 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 、 そ れ ぞ れ見られ、日本人大学学部1回生と類似した傾向を示している。 一 方 、 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 相 関 性 を 見 る と 、SE は R と の 間 に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る の み で あ り 、そ の 点 は 日 本 人 大 学 学 部 1 回 生 と 異 な る 傾 向 を 示 し て い る 。更 に 、日 本 人 に 典 型 的 と さ れ る IN で あ る が 、 中 国 人 グ ル ー プ に も 程 度 の 差 こ そ あ れ 確 認 149 できる点は興味深い。 中 国 人 留 学 生 に つ い て Part I の 回 答 と 自 由 記 述 を 基 に 、 質 的 研 究 に 関 し 、 以 下 に ま と め る 。 6 9 名 の 内 、「 あ ま り 日 本 語 に 自 信 が な く て も 人 前 で 自 分 の 意 見 は 積 極 的 に 話 す タ イ プ で す か 」の 設 問 に 対 し 、 4 6 名 が 「 は い 」、 3 4 名 が 「 い い え 」、 残 り が 無 回 答 で あ っ た 。「 は い 」 と 回 答 し た 理 由 は 、「 発 音 に 自 信 が な い か ら 」 が 1 2 名 、「 人 前 で 話 す と 緊 張 す る か ら 」 が 8 名 で あ っ た 。「 自 信 が な く て も 積 極 的 に 話 す 」と い う 回 答 が 6 6 . 7 % に も 上 る 点 は 、日 本 人 学 習 者 の 姿 勢 と は か な り 異 な る 。英 語 圏 へ の 留 学 経 験 の あ る 日 本 人 大 学 学 部 3 回 生 の 場 合 、8 年 以 上 の 英 語 学 習 経 験 を 経 た 留 学 後 に「 間 違 い を す る こ と が 恥 ず か し く 、自 信 は な い が 、積 極 的 に と に か く 話 す こ と が 大 切 と 気 づ い た 」 と 、 回 答 者 28 名 中 23 名が類似の記述をしている。 表 5-14 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 日 本 語 力 間 の 相 関 係 数 (在日中国人留学生 N=69) CEFR 自 己 評 価 に よ る 情 動 日本語力 RT 0.21 AN -0.05 EM 0.62 IH -0.12 EX 0.41 IN TR -0.21 -0.12 L 0.21 R 0.24 I P W 0.23 0.22 0.17 SE ** ** * 情 0.14 RT AN 0.42 0.30 0.29 ** * * 0.15 0.46 0.15 0.41 0.00 0.04 -0.01 0.02 -0.01 - -0.29 0.09 -0.16 -0.21 -0.13 0.16 0.12 0.07 0.14 ** 動 0.10 - 0.58 0.34 ** ** * 0.03 0.26 0.15 - ** EM 0.23 - - 0.52 - ** 150 * -0.03 - IH - - 0.37 0.27 -0.01 0.13 0.07 0.01 0.08 ** * 0.19 0.17 0.11 0.14 0.12 0.14 0.45 -0.35 -0.14 -0.28 -0.26 -0.15 ** ** - -0.01 EX - - - - - IN - - - - - - -0.05 TR - - - - - - - L - - - - - - - CEFR 自 己 評 価 に よ る 日 本 語 力 - R - I - - - - - - - - - - * 0.14 * -0.07 -0.04 -0.13 0.53 0.69 0.47 0.30 ** ** ** 0.54 0.40 ** ** - - - - - * 0.14 - - 0.61 0.54 ** ** - 0.59 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing こ の よ う に ESL 経 験 が 1 年 未 満 の EFL 環 境 の 日 本 人 学 習 者 は 、計 8 年 以 上 の 英 語 学 習 経 験 が あ り 、一 方 、中 国 人 留 学 生 は 日 本 語 学 習 期 間 が 1 年 か ら 3 年 が 主 流 の J F S L で あ る 。言 語 環 境 と 151 学習経験の違いを考慮にいれても、両グループの心のあり様は、 かなり異なっているようである。 以 上 、中 国 人 留 学 生 の 場 合 、量 的 、質 的 調 査 結 果 を あ わ せ て 考 察 す る と 、自 己 主 張 の 文 化 的 背 景 も あ っ て か 他 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 し て 抵 抗 感 が 少 な く 、少 々 の 文 法 上 の 誤 り も 気 に せずしゃべるという姿が見えてくる。 (8) 在日ベトナム人留学生 ま ず 、 情 動 要 素 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、 表 5-15 か ら 、 SE は 、 EX と の 間 に r =.58, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 IH と の 間 に r =- .39, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 RT は 、 AN と の 間 に r =- .38, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 AN は 、 IN と の 間 に r =.68, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 IH は 、 TR と の 間 に r =.40, p<.05 と い う 弱い正の相関性が見られる。 次 に 、8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の C E F R 技 能 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5 - 1 5 か ら 、情 動 要 素 S E は 、C E F R 技 能 I と の 間 に r = . 5 8 , p<.01 お よ び P と の 間 に r =.54, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 、 L と の 間 に r =.38, p<.05 と い う 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。情 動 要 素 A N は 、I と の 間 に r = - . 3 4 , p < . 0 5 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 IN は 、 I と の 間 に r =- .37, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 情 動 要 素 TR は 、 P と の 間 に r =- .35, p<.05 と い う 弱 い 負 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ に つ い て は 、表 5-15 か ら 、L は 、R と の 間 に r =.63, p<.01、 I と の 間 に r =.45, p<.01、 P と の 間 に r =.66, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.51, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 R は 、 I と の 間 に r =.45, p<.01、 P と の 間 に r =.62, p<.01 お よ び W と の 間 に r =.52, p<.01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 I は 、 P と の 間 に r =.76, 152 p<.01 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 、 W と の 間 に r =.52, p<.01 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 P は 、 W と の 間 に r =.73, p < . 0 1 と い う 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。す な わ ち 、1 0 通 り か ら 成 る C E F R 技 能 相 互 の 全 て の 組 合 せ に つ い て 、比 較 的 強 い 、あ る い は 強 い 、 し か も 有 意 水 準 1% で 有 意 な 相 関 が 見 ら れ る こ と が 分 か っ た 。調 査 対 象 の 在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の 目 標 言 語 は 日 本 語 で あ る が 、 日 本 語 に お い で も 4 +1 技 能 は 統 合 的 に 関 連 性 が あ る 事 を示している。 以 上 を ま と め れ ば 、 SE お よ び EX は 互 い に 強 め あ い 、 全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 AN、 IH お よ び IN は 互 い に 強 め あ う と 共 に 、 SE を 牽 制 し 、 全 て の CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。つ ま り 、情 動 要 素 の 影 響 を 受 け 、全 て の C E F R 技 能 が 完 全 に 連 動 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス の 方 向 へ 動 く こ と が 分 か る。 社会人英語上級者など上述した 6 つの日本人グループのケ ースと類似した状況がここでも見られる。但し、6 つの日本人グ ル ー プ の ケ ー ス で は 、 TR は SE な ど と 相 俟 っ て CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く が 、在 日 中 国 人 留 学 生 グ ル ー プ と 似 て 、こ の ベ ト ナ ム 人 の ケ ー ス で も T R は A N 、I N な ど と 相 俟 っ て C E F R 技 能 へ マ イ ナスに働く。 Part I の 回 答 を 基 に 、質 的 分 析 し 、以 下 に ま と め る 。調 査 し た ベ ト ナ ム 人 留 学 生 33 名 の 内 、 「あまり日本語で話す自信がなく て も 人 前 で 自 分 の 意 見 は 積 極 的 に 話 す タ イ プ で す か 」の 設 問 に 対 し 、 1 8 名 が 「 は い 」 と 回 答 し 、「 い い え 」 は 9 名 で あ っ た 。「 い い え 」の 回 答 理 由 と し て「 人 前 で 話 す と 緊 張 す る か ら 」が 7 名 で 最 多 で あ っ た 。「 人 前 で 話 す の は 恥 ず か し い か ら 」 が 3 名 で あ っ た 。こ れ か ら 見 え て く る の は 、中 国 人 留 学 生 の 場 合 と 同 様 、日 本 人 と の 明 確 な 違 い で あ る 。自 信 が な く て も 話 す と い う 姿 勢 は ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の 場 合 5 4 . 5 % に 上 る 。日 本 人 に 似 て「 お と な し い ベ 153 トナム人」という印象は誤っていることがわかる。 実際にベトナムで講義を行った複数の教師や日本でベトナ ム 人 に 日 本 語 を 教 え て い る 教 師 も 、「 彼 ら は と て も 積 極 的 に 自 分 の 意 見 を の べ る 。む し ろ 中 国 人 の マ イ ン ド と 似 て い る 」と い う 見 解を持っており、その経験に近い調査結果と言えよう。 表 5-15 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 日 本 語 力 間 の 相 関 係 数 N=33) (在日ベトナム人留学生 CEFR 自 己 評 価 に よ る 情 動 日本語力 RT 0.26 AN EM IH -0.26 -0.15 -0.39 EX 0.58 IN TR -0.17 -0.58 L 0.38 R 0.23 I P 0.58 0.54 ** ** W 0.27 SE * -0.38 RT ** ** * -0.09 -0.08 0.34 -0.31 -0.02 0.06 0.13 0.32 0.22 0.24 -0.10 0.28 -0.17 0.68 0.10 -0.07 -0.17 -0.34 -0.26 -0.27 - * AN - - ** * 情 -0.22 EM IH - - - - 0.01 -0.05 0.28 0.06 0.08 -0.24 -0.06 0.11 -0.20 0.26 0.40 -0.02 -0.08 0.20 0.00 0.00 -0.19 0.28 0.23 0.32 0.33 0.20 0.09 -0.09 -0.14 -0.37 -0.24 -0.32 -0.35 -0.02 - - - 動 * -0.08 EX - - - - - IN - - - - - - * -0.30 TR - - - - - - -0.12 -0.21 - * 154 - L CEFR 自 己 評 価 に よ る 日 本 語 力 - R - I - - - - - - - - - - - - - - - - 0.63 0.45 0.66 0.51 ** ** ** ** 0.45 0.62 0.52 ** ** ** 0.76 0.52 ** ** - - - - - - - - 0.73 - P - - - - - - - - - - ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 以 上 、グ ル ー プ ご と に 、被 験 者 が 自 己 評 価 し た 各 情 動 要 素 と 各 C E F R 技 能 と 相 関 性 に つ い て 調 査 結 果 の 詳 細 を 述 べ 、量 的 お よ び質的考察を加えてきた。以下、5 章 3 節では、これまでの調査 の結果を基に、考察を深め、仮説の検証をしていく。 5.3 調 査 結 果 に 対 す る 考 察 本 章 2 節 で は 、調 査 対 象 者 の グ ル ー プ ご と に 、各 グ ル ー プ に 属 す る 全 被 験 者 の 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 間 に ど の よ う な 相 関性があるかを明らかにしてきた。 3 節 で は 、 調 査 結 果 に 対 す る 考 察 を 通 し て 仮 説 1~ 3 の 検 証 155 を 行 う が 、そ の 前 提 と し て 、グ ル ー プ ご と の 相 関 性 デ ー タ を ま と め た 表 5-7、 表 5-9~ 表 5-15 を 基 に 、 本 研 究 で 「有 意 な 相 関 が あ る 」と 判 定 し た 組 合 せ 、 す な わ ち 、 相 関 係 数 が ±.20~ ±1.00 で 、 且 つ 、 有 意 水 準 5 % で 有 意 な 相 関 が あ る ( p < . 0 5 )、 あ る い は 有 意 水 準 1%で 有 意 な 相 関 が あ る ( p< .01) 組 合 せ ( 簡 単 に 言 え ば 、 * あ る い は * * の 付 い た 組 合 せ )を 抜 粋 し 、大 き く 二 つ の 視 点 か ら 相 関 性 デ ー タ を 再 編 成 し た 表 5-16 お よ び 表 5-17 を 提 示 す る 。 表 5-16 情 動 要 素 と 有 意 な 相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 個 数 集 計 情動要素 合計 日本人 外国人 SE RT AN EM IH EX IN TR 個数 割合 社会人 4 0 4 0 0 0 1 0 9 23% 留学大学生 5 1 4 3 2 5 4 0 24 60% 大学生 5 0 2 1 1 2 0 0 11 28% 高校生 4 0 2 0 2 2 2 0 12 30% 中学生 5 1 2 1 3 3 1 3 19 48% 小学生 5 2 4 2 3 5 2 3 26 65% 平均 93% 13% 60% 23% 37% 57% 33% 20% 42% 中国人 1 0 1 0 0 0 3 0 5 13% ベトナム人 3 0 1 0 0 0 1 1 6 15% 平均 40% 0% 20% 0% 0% 0% 40% 10% 14% 32 4 20 7 11 17 14 7 11 2 合計 ( 注 ) SE: 自 尊 心 IH: 抑 制 RT: 危 険 負 担 AN: 不 安 EM: 共 感 EX: 外 向 性 IN: 内 向 性 TR: 寛 容 性 社会人:社会人英語上級者 留学大学生:留学経験学部 3 回生 大学生:大学学部 1 回生 高校生:高校 2 年生 中学生:中学 2 年生 小学生:小学 6 年生 156 中国人:在日中国人留学生 ベトナム人:在日ベトナム人留学生 ま ず 、 表 5-16 は 、 相 関 性 デ ー タ を 情 動 要 素 の 視 点 か ら 再 編 成 し た も の で あ り 、そ れ ぞ れ の 情 動 要 素 と 「 有 意 な 相 関 が あ る 」 と 判 定 し た C E F R 技 能 の 個 数 を 集 計 し た も の で あ る 。な お 、表 5 - 1 6 の見方は、以下の通りである。 ・ 各 情 動 要 素 と 、有 意 な 相 関 が あ る C E F R 技 能 の 個 数 を 、グ ル ー プ ご と に 集 計 し た 。( 表 5 - 1 6 中 央 ) ・ 情 動 要 素 ご と に 集 計 し た 個 数 を 、グ ル ー プ 別 に 全 て の 情 動 要 素 を 横 断 し て 合 計 し た 。ま た 、そ の 個 数 が 8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の CEFR 技 能 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 40 に 対 す る 割 合 を 表 示 し た 。( 表 5 - 1 6 右 端 ) ・ 情 動 要 素 ご と に 集 計 し た 個 数 を 、情 動 要 素 別 に 全 て の グ ル ー プを縦断して合計した。 ( 表 5-16 下 端 )ま た 、日 本 人 6 グ ル ー プ 、外 国 人 2 グ ル ー プ に つ い て も 、そ れ ぞ れ の 合 計 個 数 を 求 め 、 日 本 人 6 グ ル ー プ と 5 つ の CEFR 技 能 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 30、 外 国 人 2 グ ル ー プ と 5 つ の CEFR 技 能 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 1 0 に 対 す る 割 合 を 表 示 し た 。( 表 5 - 1 6 平 均 欄) 次 に 、 表 5-17 は 、 相 関 性 デ ー タ を CEFR 技 能 の 視 点 か ら 再 編 成 し た も の で あ り 、 そ れ ぞ れ の CEFR 技 能 と 「有 意 な 相 関 が あ る 」と 判 定 し た 情 動 要 素 の 個 数 を 集 計 し た も の で あ る 。 な お 、 表 5-17 の 見 方 は 、 以 下 の 通 り で あ る 。 ・ 各 C E F R 技 能 と 、有 意 な 相 関 が あ る 情 動 要 素 の 個 数 を 、グ ル ー プ ご と に 集 計 し た 。( 表 5 - 1 7 中 央 ) 157 ・C E F R 技 能 ご と に 集 計 し た 個 数 を 、グ ル ー プ 別 に 全 て の C E F R 技 能 を 横 断 し て 合 計 し た 。ま た 、そ の 個 数 が 8 つ の 情 動 要 素 と 5 つ の CEFR 技 能 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 40 に 対 す る 割 合 を 表 示 し た 。( 表 5 - 1 7 右 端 ) ・ CEFR 技 能 ご と に 集 計 し た 個 数 を 、 CEFR 技 能 別 に 全 て の グ ル ー プ を 縦 断 し て 合 計 し た 。( 表 5 - 1 7 下 端 ) ま た 、 日 本 人 6 グ ル ー プ 、外 国 人 2 グ ル ー プ に つ い て も 、そ れ ぞ れ の 合 計 個 数 を 求 め 、日 本 人 6 グ ル ー プ と 8 つ の 情 動 要 素 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 48、 外 国 人 2 グ ル ー プ と 8 つ の 情 動 要 素 と の 組 合 せ 個 数 で あ る 16 に 対 す る 割 合 を 表 示 し た 。 ( 表 5-17 平 均 欄 ) 表 5-17 CEFR 技 能 と 有 意 な 相 関 性 の あ る 情 動 要 素 の 個 数 集 計 CEFR 技 能 合計 日本人 外国人 L R I P W 個数 割合 社会人英語上級者 2 1 3 1 2 9 23% 留学経験学部 3 回生 6 4 6 6 2 24 60% 大学学部 1 回生 1 1 3 4 2 11 28% 高校 2 年生 1 1 5 4 1 12 30% 中学 2 年生 4 4 4 5 2 19 48% 小学 6 年生 8 5 7 4 2 26 65% 日本人平均 46% 33% 58% 50% 23% 在日中国人留学生 2 1 1 1 0 5 13% 在 日 ベトナム人 留 学 生 1 0 3 2 0 6 15% 外国人平均 19% 6% 25% 19% 0% 25 17 32 27 11 合計 11 2 ち な み に 、「 よ り 多 く の C E F R 技 能 と 相 関 性 が あ る 、 す な わ ち 、 CEFR 技 能 へ よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 」 と い う 視 点 で 、 情 動 158 要 素 の 順 位 づ け を し て み る と 、 表 5-18 の 通 り と な る 。 そ の 順 位 は 、 表 5-16 の 下 端 に 示 さ れ る 合 計 数 に 基 づ い て い る 。 日 本 人 、外 国 人 を 問 わ ず 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 S E( 自 尊 心 ) と A N( 不 安 ) が 、 1 位 と 2 位という順位を占めるのは興味深い結果である。 表 5-18 CEFR 技 能 へ よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 の 順 位 1 位 SE( 自 尊 心 ) 2 位 AN( 不 安 ) 3 位 EX( 外 向 性 ) 4 位 IN( 内 向 性 ) 5 位 IH( 抑 制 ) その他 RT( 危 険 負 担 ) EM( 共 感 ) TR( 寛 容 性 ) ま た 、「 よ り 多 く の 情 動 要 素 と 相 関 性 が あ る 、 す な わ ち 、 情 動 要 素 か ら よ り 多 く の 影 響 を 受 け る 」と い う 視 点 で 、CEFR 技 能 の 順 位 づ け を し た も の が 表 5 - 1 9 で あ る 。そ の 順 位 は 、表 5 - 1 7 の 下端に示される合計数に基づいて判定した。 表 5-19 情 動 要 素 か ら よ り 多 く の 影 響 を 受 け る CEFR 技 能 の 順 位 1 位 I( spoken interaction や り と り ) 2 位 P( spoken production 表 現 ) 3 位 L( listening 聞 く ) 4 位 R( Reading 読 む ) 5 位 W ( Wr i t i n g 書 く ) 159 CEFR 技 能 I、 P お よ び L は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 要 と な る 技 能 で あ り 、相 手 と 対 峙 す る ス ト レ ス や 緊 張 感 に 晒 さ れ 正 に 情 動 の 影 響 を 受 け る で あ ろ う 技 能 が 、1 位 か ら 3 位 ま で を 占 め る 統 計結果が出たことは意義深いと言えよう。 更 に 、表 5-4 及 び 表 5-6 を 基 に 、考 察 の 焦 点 と な る 上 位 ラ ン ク ( 表 5-18 参 照 ) の 情 動 要 素 SE と AN 及 び 全 て の CEFR 技 能 に 絞 っ て レ ベ ル 値 の 各 グ ル ー プ 平 均 を 示 し た 表 5-20 を 提 示 す る 。 表 5-20 上 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 お よ び CEFR 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力 の 平 均 値 (Mean) ( N=422) 情 動 CEFR 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力 SE AN L R I P W 14.02 11.26 3.45 3.62 3.55 3.45 3.86 11.43 14.23 2.74 2.83 2.26 2.74 3.46 9.75 13.70 1.85 2.09 1.72 1.87 2.02 10.78 14.88 2.22 2.06 1.62 1.94 2.02 12.71 12.38 #1.70 #1.74 #1.55 #1.58 #1.63 12.94 12.08 #1.41 #1.38 #1.30 #1.17 #1.20 11.94 13.09 2.23 2.29 2.00 2.13 2.37 社会人英語上級者 N=46 留学経験大学生 N=35 大学学部1回生 日 N=47 本 高校2年生 人 N=50 中学2年生 N=58 小学6年生 N=84 日本人平均 N=320 160 中国人留学生 14.04 12.07 3.45 3.61 3.35 3.41 3.73 13.94 11.67 3.49 3.85 3.70 3.49 3.42 14.00 11.87 3.47 3.73 3.53 3.45 3.58 0.85 1.10 0.64 0.61 0.57 0.62 0.66 0.91 1.07 0.89 0.86 0.82 0.90 1.02 N=69 外国人 ベトナム人留学生 N=33 外国人平均 N=102 外国人平均を 1とした 日本人平均の比率 社会人&留学経験 大学生平均の比率 SE:Self-Esteem(自 尊 心 ) L:Listening AN:Anxiety(不 安 ) R:Reading P:Spoken Production I:Spoken Interaction W : Wr i t i n g 中 学 生 お よ び 小 学 生 向 け の CEFR 自 己 評 価 値 の 満 点 は 16 備考 点 で あ る が 、 こ れ は 一 般 の CEFR 自 己 評 価 に お け る A2 レ ベ ル の 2 点 に 相 当 と す る 。従 っ て 、相 互 比 較 の た め 小 学 生 お よ び 中 学 生 の CEFR 自 己 評 価 値 平 均 に 0 . 1 2 5 ( 2 / 1 6 ) の 係 数 を 掛 け て 表 示 す る 。( 頭 部 に # を 付 加 ) つ ま り 、 表 5-20 は 、 上 位 ラ ン ク ( 表 5-18 参 照 ) の 情 動 要 素 SE と A N お よ び 全 て の C E F R 技 能 に 絞 っ て 、そ の レ ベ ル 値 の 平 均 値 を 8 つのグループ別に再編集したものである。 5.3.1 仮説 1 の検証 仮 説 1「 日 本 人 学 習 者 、外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 は 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 影 響 を 与 え る 」に つ い て 、以 下 、 デ ー タ に 基 づ き 検 証 す る 。 表 5-16 か ら 、 多 く の グ ル ー プ に お い て 、程 度 の 差 こ そ あ れ 、多 く の 情 動 要 素 が 多 く の C E F R 技 能 と の 161 間に有意な相関性があるという共通性が見られる(本章 3 節、 p . 1 5 5 参 照 )。 中 で も 、 情 動 要 素 の S E ( 自 尊 心 ) は 、 8 つ の グ ル ー プ 全 て に 共 通 し て 、数 多 く の C E F R 4 + 1 技 能 と の 間 に 有 意 な 相 関 性 の あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。特 に 日 本 人 グ ル ー プ に つ い て は 、 ほ と ん ど 全 て の CEFR 技 能 に 対 し て こ の こ と が 該 当 す る 。 な お 、5 章 2 節 に 言 及 し て い る 調 査 か ら 、そ の 相 関 係 数 は 正 の 値 で あ り 、 CEFR 技 能 に 対 し て プ ラ ス に 働 く 。 ま た 、 情 動 要 素 AN ( 不 安 ) お よ び IN( 内 向 性 ) は 、 大 学 学 部 1 回 生 を 除 く 全 て の グ ル ー プ に 共 通 し て 、数 多 く の C E F R 技 能 と の 間 に 相 関 性 の あ る ことが明らかとなった。なお、その相関係数は負の値であり、 CEFR 技 能 に 対 し て マ イ ナ ス に 働 く こ と に な る 。 こ の こ と か ら 、 仮 説 1 の 通 り 、「 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 は 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 影 響 を 与 え る 」 こ と を 統 計 上 示 し た 。 こ こ で は 、 更 に 一 歩 進 め て 、「 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、 情 動 要 素 SE お よ び AN は CEFR 技 能 I、 P お よ び L に 対 し て よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 」 こ とが明らかとなった。 表 5-17 か ら 、 在 日 中 国 人 留 学 生 お よ び 在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の W、 在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 の R が 例 外 で あ る 他 は す べ て の グ ル ー プ に お い て 、 程 度 の 差 こ そ あ れ 、「 全 て の C E F R 技 能 が 情 動要素との間に有意な相関性があるという共通性」が見られる。 中 で も 、 CEFR 技 能 の I、 P お よ び L は 、 8 つ の グ ル ー プ 全 て に 共 通 し て 、多 く の 情 動 要 素 と の 間 に 有 意 な 相 関 性 の あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。興 味 深 い の は I と P に つ い て 高 校 生 で 影 響 が 大 き い こ と 、 留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 で は I、 P に 加 え て L も 影 響 が 大 き い 点 で あ る 。小 学 6 年 生 は 英 語 学 習 歴 が 他 の グ ル ー プ と 比 べ 短 い 点 と 、思 春 期 と い わ れ る 年 齢 に 重 な る こ と か ら 、心 の あ り 様 を 微 妙 に 反 映 し や す く 、影 響 を 受 け や す い 結 果 に つ な が っ て い る と 考 え ら れ る 。こ の 成 長 過 程 は 中 学 2 年 生 、更 に は 感 受 性 の 敏 162 感 な 年 齢 の 高 校 生 に も I、 P に 対 し て 引 き 続 き 同 様 の 結 果 を も た らしていると考えられる。 5.3.2 仮説2の検証 仮 説 2「 日 本 人 学 習 者 に 関 し 、情 動 と C E F R の 関 連 性 は 発 達 段 階 に よ っ て 異 な る 」に つ い て 、以 下 、デ ー タ に 基 づ き 検 証 す る 。 日 本 人 の 6 グ ル ー プ 間 で 、 表 5-16 の 右 端 に 示 し た 「 情 動 要 素 と 相 関 性 の あ る C E F R 技 能 の 合 計 個 数 」を 比 較 す る と 、小 学 6 年 生 は 2 6 個 ( 6 5 % )、 中 学 2 年 生 は 1 9 個 ( 4 8 % )、 高 校 2 年 生 は 1 2 個 ( 3 0 % )、 大 学 学 部 1 回 生 は 11 個 ( 2 8 % )、 留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 は 2 4 個 ( 6 0 % )、 社 会 人 英 語 上 級 者 は 9 個 ( 2 3 % ) と なる。 大きな流れとして、小学 6 年生から社会人英語上級者へと、 年 代 ・ 経 歴 ・ 留 学 経 験 と い う 発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、情 動 要 素 と 相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 割 合 が 下 が る 傾 向 に あ る こ と を 明 ら か に 示 し て い る 。 つ ま り 、 発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、 CEFR 技 能 つ ま り 英 語 力 に 対 し て 、プ ラ ス あ る い は マ イ ナ ス を 含 め た「 情 動 の 影 響 の 度 合 い 」 が 下 が る 。 (ど の 情 動 要 素 が ど の 程 度 影 響 し て い る か に 関 す る 詳 細 は 表 5-16 を 参 照 )。 但 し 、唯 一 の 例 外 は 、留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 の と こ ろ で 一 転 し て 24 個 ( 60%) へ 急 上 昇 し て い る 点 で あ る 。 し か し 、 こ の留学経験のある学部 3 回生に対して特別に実施した調査によ っ て 、そ の 理 由 の 一 端 を 明 ら か に す る こ と が 出 来 た 。そ の 手 法 と し て 、留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 に 対 し て は 、留 学 後 の 状 況 に 対 す る 調 査 に 加 え て 、留 学 前 の 状 況 に 対 す る 調 査 を 全 く 同 じ 方 法 で 行 い 、ど の よ う な 変 化 が あ っ た か 明 ら か に し た 。留 学 前 に 対 す る 調 査 結 果 を ま と め た も の が 、 次 の 表 5-21 で あ る 。 163 表 5-21 情 動 と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 間 の 相 関 係 数 ( 留 学経験あり学部 3 回生 N=35) 情 (留 学 前 ) CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 動 RT AN EM IH EX IN 0.23 -0.31 -0.24 -0.06 0.25 -0.27 TR 0.21 L R I P W 0.40 0.51 0.32 0.21 0.31 SE * -0.22 RT -0.00 -0.33 0.49 ** -0.05 0.27 0.12 -0.06 -0.09 -0.10 -0.10 0.42 -0.08 -0.26 -0.10 0.05 -0.20 -0.25 - ** 0.28 AN - 0.44 -0.26 - ** * 情 0.06 EM - - - IH - - - 0.07 0.23 0.06 -0.11 -0.19 0.08 0.05 0.05 -0.46 0.25 -0.05 -0.20 0.08 0.06 -0.21 -0.12 -0.39 0.26 0.10 -0.03 0.21 0.20 -0.02 0.21 -0.27 -0.23 -0.04 -0.08 -0.19 0.16 -0.05 0.09 0.08 0.07 0.51 0.60 0.48 ** ** ** 0.43 0.44 0.51 ** ** 0.64 0.41 - 動 ** EX - - - - - * CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 IN - - - - - - TR - - - - - - - L - - - - - - - R - - - - - - - - - * I - - - - - - - - - - ** P - - - - - - 164 - 0.33 - - - - - * 0.63 ** - W - ** p < 0.01 * p < 0.05 - - - - - SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) - - - - - IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) 備考 L: Listening R: Reading P: Spoken Production I: Spoken Interaction W: Writing 1 か 月 か ら 1 年 間 の 英 語 圏 へ の 留 学 か ら 帰 国 し た 後 に 、留 学 前 を 回 想 し た 回 答 で あ る た め 、記 憶 の 確 か ら し さ に お い て あ る 程 度 割 り 引 く 必 要 が あ る と 思 わ れ る が 、そ の 変 化 の 差 は 著 し い 。注 目 す べ き は 、 表 5-21 か ら 、 い ず れ か の 情 動 要 素 と 相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 個 数 が 、留 学 前 に は SE と L お よ び R と い う 僅 か 2 個 ( 5%) と な っ て い る 。 こ の 結 果 を 、 表 5-16「 情 動 要 素 と 有 意 な 相 関 性 の あ る C E F R 技 能 の 個 数 集 計 」と あ わ せ て み る と 、留 学 を 経 験 し た 後 に は 一 転 し て 2 4 個( 6 0 % )に 跳 ね 上 が る 点 で あ る 。 発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、E X( 外 向 性 )、I N( 内 向 性 )、E M( 共 感 )、 I H( 抑 制 ) な ど 下 位 ラ ン ク ( 表 5 - 1 8 参 照 ) の 情 動 要 素 か ら の 影 響 は 下 が っ て い く も の の 、英 語 圏 へ 行 き 現 実 に 英 語 で コ ミ ュ ニケーションせざるを得ない状況下で極度の自信喪失や不安に 陥 る と 、気 持 ち の あ り 様 が 発 達 段 階 を 後 戻 り し て し ま う 、し か し 、 更に精進して自信を取り戻せばまた下がり始めるといった状況 が 起 こ る の で は な い か と 考 え ら れ る 。留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 の 24 個 ( 60%) か ら 社 会 人 英 語 上 級 者 の 9 個 ( 23%) へ の 変 遷 が 、そ れ を 物 語 っ て い る 。時 間 も か か り 、さ ら に 一 本 調 子 に は 行 か な い が 、発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、情 動 か ら の 影 響 は 徐 々 に 薄 れ てくるものと考える。 165 留 学 前 と 留 学 後 の 調 査 に 関 し 次 の 様 に 補 足 し て お く 。留 学 前 と 留 学 後 の 差 が 際 立 っ て い る 理 由 は 、回 答 者 の 気 持 ち が 留 学 後 の 違 い を 鮮 明 に 心 に 刻 ん で い る た め 、留 学 前 の 回 答 が や や 希 薄 に な っ た こ と が 考 え ら れ る 。更 に 、留 学 前 の 時 期 は 、学 部 2 年 生 で あ り 、就 活 に 関 す る 不 安 は さ ほ ど 深 刻 で は な い 。む し ろ 留 学 が 決 ま り 、精 神 的 に は も っ と も 前 向 き で 、期 待 感 に あ ふ れ 、不 安 感 も さ ほ ど 大 き く な い 状 態 を 反 映 し て い る も の と 解 釈 で き る 。し た が っ て 、情 動 的 に は 、留 学 後 の よ う に 目 立 っ た 特 徴 が 表 れ な か っ た も の と 考 え ら れ る 。留 学 直 後 か ら 、E S L の 環 境 に 直 面 し 、情 動 は 敏 感に心のあり様、変化を反映している状態は上述の通りである。 な お 、 表 5-20 か ら 、 明 確 に 興 味 深 い 特 徴 を 読 み 取 る こ と が で き る 。発 達 段 階 別 に 見 た 日 本 人 の 各 グ ル ー プ は 、小 学 生 グ ル ー プから到達点の社会人英語上級者グループに向けて、情動要素 SE( 自 尊 心 ) の レ ベ ル は 、 小 学 6 年 生 の 12.94 か ら 社 会 人 英 語 上 級 者 の 14.02 ま で 、 紆 余 曲 折 し な が ら も 上 昇 傾 向 を 辿 る 反 面 、 AN( 不 安 ) の レ ベ ル は 、 小 学 6 年 生 の 12.08 か ら 社 会 人 英 語 上 級 者 の 11 . 2 6 ま で 、 紆 余 曲 折 し な が ら も 下 降 傾 向 を 辿 る 。 そ れ に 連 れ て C E F R 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力( 英 語 力 )の 各 技 能 の レ ベ ル は 、 例 え ば L に つ い て は 小 学 6 年 生 の 1.41 か ら 社 会 人 英 語 上 級 者 の 3.45 ま で 、 総 じ て 徐 々 に 上 昇 し て い く 。 特 に 、 SE に つ い て こ の 数 字 の 変 遷 ・ 特 徴 は 次 の よ う に 解 釈 で き る 。つ ま り 、小 学 6 年 生 で は 発 達 心 理 学 的 に は い わ ば 怖 い も の 知 ら ず で 、社 会 化 が 未 発 達 故 に 自 尊 心 も さ ほ ど 砕 か れ て い な い 。 中 学 生 に な る と 、徐 々 に 他 者 と の 競 争 に さ ら さ れ 自 尊 心 も 低 く な る 傾 向 が 見 ら れ 、高 校 2 年 生 、大 学 学 部 1 回 生 に な る と 、更 に 低 下 の 一 途 を 辿 る 。 こ の よ う に 、 上 級 学 校 に す す む に つ れ て SE が 低 下 し て い る 事 は 、最 終 段 階 で あ る 大 学 受 験 競 争 と 無 関 係 で は な い と 考 え る 。 そ の 後 、 英 語 圏 へ の 留 学 を 経 験 後 は 、 SE は 上 昇 傾 向を示している。英語上級者社会人グループは、情動の3要素、 166 C E F R 自 己 評 価 と も に 、在 日 外 国 人 留 学 生 グ ル ー プ と 類 似 し た 結 果 と な っ て い る 。 日 本 人 学 習 者 も 、 社 会 人 と な り 、 10 年 以 上 か け て 、英 語 力 を 磨 き 、経 験 を 重 ね た 後 や っ と 、学 習 期 間 が 比 較 的 短期間( 1 年から 3 年)の在日外国人留学生グループと同様のレ ベルに達している。 AN に つ い て も 、 ほ ぼ 同 様 の 傾 向 を 示 し て い る 。 つ ま り 、 小 学 生 、 中 学 生 の 折 に は 、 比 較 的 AN が 低 く 、 高 校 生 に な る と 最 も 高 く な っ て い る 。こ れ は 大 学 受 験 と も 関 連 す る も の と 考 え る 。大 学 学 部 1 回 生 で 少 し 下 が る の は 、大 学 入 学 直 後 の 安 堵 感 と 将 来 へ の不安など入り交ざった複雑な心理状況を反映しているものと 考 え ら れ る 。留 学 経 験 の あ る 大 学 3 回 生 に な る と 、既 述 し た よ う に 、E S L と し て の 言 語 環 境 変 化 に よ る 新 た な 不 安 が つ の り 、さ ら に、社会人になって、やっと、外国人のレベルに近づいている。 以 上 の こ と か ら 、仮 説 2 に つ い て 筆 者 は 次 の よ う に 考 察 す る 。 上 位 ラ ン ク ( 表 5-18 参 照 ) に あ る SE( 自 尊 心 ) や AN( 不 安 ) は 、8 つ の グ ル ー プ に 共 通 し て C E F R に 影 響 す る 、 言 わ ば 人 間 の 根 底 に あ る 情 動 要 素 で あ り 、そ こ か ら は 容 易 に 抜 け 出 せ な い も の の 、 学 校 の 授 業 で 外 国 語 に 慣 れ て く る に つ れ 、 EX( 外 向 性 ) や I N( 内 向 性 )、 E M( 共 感 )、 I H( 抑 制 ) と い っ た 下 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 か ら の 影 響 は 徐 々 に 薄 れ て く る 、あ る い は 耐 性 が 出 て く る の で は な い か 。し か し 、留 学 な ど に よ り 現 実 の 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 晒 さ れ る と 、薄 れ て い た 下 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 か ら の 影 響 が 再 び 現 れ て く る 。し か し 、そ こ か ら 更 に 努 力 し て 、そ れ を 凌 ぐ だ け の 経 験 を 積 み さ え す れ ば 、社 会 人 英 語 上 級 者 の よ う に 、下 位 ラ ン ク の 情 動 要 素 か ら 再 び 脱 す る こ と が で き る 。ま と め れ ば 、 日 本 人 は 、 根 底 に あ る S E( 自 尊 心 ) や A N( 不 安 ) か ら は 容 易 に 抜 け 出 せ な い も の の 、発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、下 位 ラ ン ク の情動要素からの影響は克服できるものと考える。 八 島 は 、 海 外 語 学 研 修 な ど の 成 果 と し て 、「 英 語 を 話 す 不 安 167 が 取 れ た 」、「 話 す 事 に 抵 抗 が な く な っ た 」、「 積 極 的 に な っ た 」 ( 2009, p.57) な ど を 挙 げ る 学 習 者 が 多 い と し て い る 。 実 際 に 、本 論 文 に お け る 調 査 に お い て 留 学 経 験 の あ る 大 学 3 回 生 の ア ン ケ ー ト 自 由 記 述 で も 、「 話 す こ と が 怖 く な く な っ た 」、 「 自 信 が 出 て き た 」、「 や れ ば で き る こ と を 実 感 し た 」[ 間 違 っ て も 積 極 的 に 話 す こ と が 大 切 で あ る ]な ど と 、留 学 当 初 の 不 安 が 経 験により低下したことを述べている。 5.3.3 仮説3の検証 仮 説 3「 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、 情 動 レ ベ ル と C E F R レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 ら か な 違 い が あ る 」に つ いて、以下、データに基づき検証する。 仮 説 1 の 検 証 で 、「 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、 情 動 は 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 影 響 を 与 え る 」こ と が 明 ら か と な っ た 。し か し な が ら 、情 動 が C E F R 技 能 へ 影 響 を 与 え る 度 合 い に お い て 、日 本 人 と 外 国 人 と の 間 に 顕 著 な 相 違 の あ る ことも同時に明らかとなった。 まず、8 つの情動要素の内、いずれかの情動要素と有意な相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 割 合 を 見 て み る 。 表 5-16 か ら 、 情 動 要 素 S E と 相 関 性 の あ る C E F R 技 能 の 割 合 に つ い て 比 較 す る と 、日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 の 約 9 3 % に 対 し て 、外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 約 40%に 止 ま る 。ま た 、情 動 要 素 AN に つ い て は 、日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 の 約 6 0 % に 対 し て 、外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 2 0 % に 止 ま る。 次 に 、 CEFR4+1 技 能 の 内 、 い ず れ か の 技 能 と 有 意 な 相 関 性 の あ る 情 動 要 素 の 割 合 を 見 て み る 。 表 5-17 か ら 、 CEFR 技 能 I と 相 関 性 の あ る 情 動 要 素 の 割 合 に つ い て 比 較 す る と 、日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 の 約 58% に 対 し て 、 外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 約 25% に 止 ま る 。ま た 、CEFR 技 能 P に つ い て は 、日 本 人 グ ル ー プ の 平 168 均 の 約 5 0 % に 対 し て 、外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 約 1 9 % に 止 ま り 、 CEFR 技 能 L に つ い て は 、 日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 の 約 46% に 対 し て 、 外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 約 19% に 止 ま る 。 こ の よ う に 、情 動 が C E F R 技 能 へ 影 響 を 与 え る 度 合 い に お い て 、日 本 人 と 外 国 人 と の 間 に 顕 著 な 差 が あ る こ と が 明 ら か と 成 っ た 。正 に 、情 動 の 影 響 を 受 け 易 い 日 本 人 の 特 性 が 明 確 に 表 れ た も のと考える。 更 に 、情 動 要 素 の レ ベ ル 値 を 見 て み る と 、 表 5-4 か ら 、情 動 要 素 SE の レ ベ ル 値 は 、 日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 に 対 し て 外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は か な り 高 い 。 一 方 、 情 動 要 素 AN の レ ベ ル 値 は 、 日本人グループの平均に対して外国人グループの平均はかなり 低 い 。ち な み に 、日 本 人 グ ル ー プ の 中 で も 他 の グ ル ー プ と 比 べ 年 代 的 に 近 く 、海 外 経 験 も あ る 社 会 人 英 語 上 級 者 と 留 学 経 験 の あ る 学部 3 回生の2つのグループに限って外国人グループと比較す る と 、 SE の レ ベ ル 値 の 平 均 は 、 日 本 人 の 上 記 2 グ ル ー プ の 平 均 12.73 に 対 し て 、 外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 14.00 で あ る 。 一 方 、 AN の レ ベ ル 値 の 平 均 は 、 日 本 人 の 上 記 2 グ ル ー プ の 12.75 に 対 し て 、 外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 11 . 8 7 で あ る 。 ま た 、 表 5-6 か ら 、 CEFR 技 能 の レ ベ ル 値 を 日 本 人 グ ル ー プ の 平 均 と 比 較 す る と 、外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 全 て の C E F R 技 能 に お い て か な り 高 い 。一 般 的 に 、中 国 人 は 、日 本 人 と 比 べ 、自 信 過 剰 で 、自 己 評 価 は 高 く な る 可 能 性 は あ る も の の 、ち な み に 、日 本人の上記 2 グループに限って外国人グループと比較すると、 CEFR 技 能 L の レ ベ ル は 、 日 本 人 の 上 記 2 グ ル ー プ の 平 均 3.10 に 対 し て 、外 国 人 グ ル ー プ の 平 均 は 3 . 4 7 、ま た 同 様 に 、C E F R 技 能 R の レ ベ ル は 3 . 2 3 に 対 し て 3 . 7 3 、C E F R 技 能 I の レ ベ ル は 2 . 9 1 に 対 し て 3.53、CEFR 技 能 P の レ ベ ル は 3.10 に 対 し て 3.45、ほ ぼ 同 等 の C E F R 技 能 W を 除 く 全 て の 技 能 で 、1 . 1 倍 か ら 1 . 2 倍 ほ ど高いことが明らかとなった。 169 以 上 の こ と は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ 、 情 動 要 素 SE が ど の 程 度 プ ラ ス に 影 響 し 、逆 に 、情 動 要 素 AN が ど の 程 度 マ イ ナ ス に 影 響 す る か に つ い て 表 し た 比 較 事 例 と 言 え る 。な お 、情 動 要 素 と 強 い 相 関 性 が あ る CEFR 技 能 と の 組 合 せ の 数 は 、 中 国 人 が 5 個 、ベ ト ナ ム 人 が 6 個 と 、日 本 人 の 各 グ ル ー プ と 比 較 し て 格 段 に 少 な く 、社 会 人 英 語 上 級 者 と 同 様 の 境 地 に 比 較 的 短 期 間 の 学 習 経 験で既に達していると見られる。 ち な み に 、発 達 段 階 と い う 視 点 で 、外 国 人 留 学 生 と 年 代 お よ び 学 習 環 境 が 似 通 っ た 日 本 人 の グ ル ー プ を 選 択 し 、両 者 を 比 較 し て み る 。こ れ に よ り 、外 国 人 と 比 べ た 日 本 人 の 特 性 に つ い て の 国 際 比 較 が 一 層 鮮 明 に な る の で は な い か と 考 え る 。そ の 比 較 に は 年 代 お よ び 留 学 経 験 か ら し て 、外 国 人 留 学 生 に 対 し 、社 会 人 英 語 上 級者と留学経験のある学部 3 回生とを平均したものが適してい る と 考 え 、 表 5-20 の 一 番 下 の 行 に 、 そ の 平 均 値 を 示 し て い る 。 こ の デ ー タ を 基 に 、外 国 人 平 均 と 社 会 人 英 語 上 級 者 お よ び 留 学 経 験大学学部 3 回生の平均を比較すると、上記の「外国人と比べ、 日 本 人 は 各 情 動 要 素 か ら の 影 響 を 受 け 易 く 、C E F R 各 技 能 の レ ベ ル が 総 じ て 低 い 」と い う 結 論 に 、W の レ ベ ル が 同 等 で あ る こ と を 除 い て 、 大 筋 で 変 わ り は な か っ た 。 情 動 要 素 SE( 自 尊 心 ) の レ ベ ル は 外 国 人 平 均 の 0.91( 91%) に 止 ま る 反 面 、 AN( 不 安 ) の レ ベ ル は 1.07( 107%) に 達 す る 。 CEFR 自 己 評 価 に よ る 外 国 語 力 の 各 技 能 の レ ベ ル は 、例 え ば 、L に つ い て は 外 国 人 平 均 の 0 . 8 9 ( 89%) で あ る 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 要 と な る I に つ い て は 0 . 8 2( 8 2 % ) に 止 ま る 。 ま た 、 表 5 - 2 0 か ら 、 情 動 要 素 S E お よ び AN の レ ベ ル 値 と CEFR 各 技 能 の レ ベ ル 値 を 比 較 す る と 、外 国 人 平 均 は 社 会 人 英 語 上 級 者 と ほ ぼ 同 等 で あ る こ と が 分 か る 。つ ま り 、 外国人平均は既に社会人英語上級者の域に達していることを明 確に表している。 一 般 的 に 、中 国 人 は 、日 本 人 と 比 べ 、自 信 過 剰 で 、自 己 評 価 170 は 高 く な る 可 能 性 は あ る 。し か し 、少 々 間 違 っ て も 気 に せ ず 、精 神 的 に 鍛 錬 さ れ 、積 極 的 に 自 己 主 張 す る 特 性 は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン力を高める為に日本人が習得すべき点であろう。 5.3.4 調 査 結 果 が 示 唆 す る 日 本 の 英 語 教 育 の 在 り 方 以 上 の 相 関 分 析 と 、調 査 対 象 者 の 自 由 記 述 を 発 達 段 階 別 に 合 わ せ て 考 察 す る と 、情 動 の 影 響 を 受 け や す い 日 本 人 学 習 者 に つ い て 、言 語 の 運 用 力 、つ ま り 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 伸 ば す に は 、指 導 上 、プ ラ ス の 情 動 が 働 き や す い よ う な 環 境 を 生 み 出 す こ と が 大 切 と 考 え る 。特 に 、小 学 校 、中 学 校 ま で は「 英 語 が 好 き 」 の 気 持 ち を 持 続 さ せ 、 高 等 学 校 あ た り か ら は 、「 不 安 」 の 元凶である受験対応偏重の文法やテストでの得点に重点を置い た指導から脱却し、4技能をバランス良く鍛えることであろう。 それが、自分の意見や思いを英語で伝える基盤となる。 「不安」は留学経験のある大学生の自由記述にあるように、 コミュニケーションをしようという気持ちに抑制をかけてしま う 。失 敗 し て も 問 題 な い と い う 経 験 を 学 習 当 初 か ら 繰 り 返 し 訓 練 し て お く と 、ネ ガ テ ィ ブ な 情 動 に 左 右 さ れ な い 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン力への鍛錬が徐々に備わっていくものと考えられる。 直 近 の 新 聞 記 事 連 載 教 育 ル ネ サ ン ス 「 英 語 で 教 え る 」 (読 売 新 聞 ,2012,6/2) に 興 味 深 い 事 例 が 報 道 さ れ て い る 。 2013 年 度 か ら 英 語 で 教 え る 指 導 を 明 記 し た 学 習 指 導 要 領 の 実 施 に 先 立 ち 、公 立 高 等 学 校 授 業 の 改 革 の 事 例 で あ る 。「 テ キ ス ト の 文 章 を 読 み 、 自 分 の 言 葉 で 内 容 を 英 語 で 説 明 し 、英 語 を 英 語 の ま ま 理 解 さ せ る よ う な 指 導 」 が お こ な わ れ て い る 。「 英 国 の 学 校 と 姉 妹 校 協 定 を 結 び 、生 徒 が 現 地 を 訪 問 し て 研 究 発 表 を 英 語 で 行 う 機 会 」を 設 け ていることも紹介されている。 た と え 、現 地 に 行 か ず と も 、イ ン タ ー ネ ッ ト で つ な ぐ こ と は 今 日 可 能 で あ る 。疑 似 留 学 体 験 さ せ る こ と は 、容 易 に で き る 。指 171 導者、学校の方針でいかようにも工夫可能と考える。ちなみに、 本 年 5 月 開 催 の 英 語 教 育 セ ミ ナ ー 、「 新 学 習 指 導 要 領 5 つ の 提 言 ( 2 0 1 2 )を 考 え る 」に お け る 資 料 に よ る と 、情 報 通 信 技 術( I C T ) を導入し英語を使用する機会を設定している日本の高等学校は 2012 年 1 月 末 現 在 で 735 校 ( 22.2%) と な っ て い る 。 以 上 の よ う な 指 導 法 が 本 格 的 に 展 開 さ れ れ ば 、高 等 学 校 卒 業 時 に C E F R の B 2 レ ベ ル に 到 達 す る の は 、遠 く な い 将 来 可 能 で あ る と 期 待 す る 。英 語 で 遜 色 な く 太 刀 打 ち で き る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 備 え 、国 際 的 に 通 用 す る 人 材 育 成 の 為 に は 、逆 算 し て こ の 段 階 で B2 レ ベ ル に は 到 達 し て ほ し い と 願 う 。 ち な み に B2 は TOEIC で 800 点 、 英 検 で 準 1 級 レ ベ ル と 言 わ れ て い る ( 本 論 文 p . 6 8 , 表 3 - 1 参 照 )。 言 語 環 境 の 違 い は あ る も の の 、 欧 州 で は 、 B2 が 高 校 卒 業 時 の 平 均 的 な レ ベ ル で あ る と い う 。 小 池 は 、 7,300 名 を 超 え る ビ ジ ネ ス パ ー ソ ン へ の 調 査 結 果 を 基 に 、国 際 レ ベ ル の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 備 え る に は「 大 学 4 年 卒 業 時 点 で B2~ C1 レ ベ ル に 達 す る こ と を 到 達 基 準 と 設 定 し 、 以 下 、 高 校 卒 業 時 点 で B2 前 後 、 中 学 卒 業 時 点 で は A2 前 後 、 小 学 校 卒 業 時 点 で A1~ A2 と い う 目 標 達 成 を 仮 に 設 定 し て い る 」 (2008,p.16)と 述 べ て い る 。 そ の 目 標 を 達 成 す る た め に は「 一 貫 し た シ ス テ ム ,カ リ キ ュ ラ ム 、教 授 法 、学 習 法 、教 材 、学 習 ス ト ラ テ ジ ー 、教 師 養 成 を 再 構 成 し て 提 案 す る 」( p . 1 5 ) と 論 じ て い る 。 心 に と ど め て お き た い の は 、学 習 者 の 心 の あ り 様 に 配 慮 し 、自 信 を も た せ 、学 び た い と い う プ ラ ス の 動 機 を 引 き 出 し 、失 敗 の 経 験 が 力 を つ け る こ と を 信じて学び続けるよう指導者は手助けすることが肝要という視 点である。 172 5.4 調査結果の補足 調 査 の 最 終 的 な 目 標 は 、学 習 者 の 抱 く 心 理 状 態 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に ど の よ う に 関 係 す る か 、つ ま り 、情 動 要 素 の レ ベ ル と 、C E F R 技 能 の レ ベ ル と の 間 に ど の よ う な 相 関 性 が あ る か 明 ら か に す る こ と で あ る が 、5 章 1 節 お よ び 2 節 で 述 べ た よ う に 、 「ど の 情 動 要 素 が 、ど の C E F R 技 能 と の 間 に 、ど の 程 度 の 相 関 性 を 有 す る か 」そ の 基 本 的 な 構 造 を 調 査 デ ー タ か ら 明 ら か に で き た も の と 考 え る 。な お 、そ こ に 至 る 過 程 で 、本 節「 調 査 結 果 の 補 足 」と し て 述 べ る C E F R と T O E I C や C - t e s t の 相 関 性 、ま た 目 標 言 語 や 学習環境による影響の側面から、以下、検証を試みる。 5.4.1 C E F R と T O E I C 及 び C - Te s t と の 相 関 性 2 章 5 節、4 章 3 節で述べたように、コミュニケーション力 を 評 価 す る 尺 度 と し て CEFR 自 己 評 価 シ ス テ ム が 適 切 で あ る と 考 え 、本 研 究 の 調 査 に C E F R 自 己 評 価 シ ス テ ム を 用 い る こ と と し た 。し か し な が ら 、長 期 に 亘 る 様 々 な 視 点 か ら の 検 証 と 十 分 な 実 績 に 基 づ き 、標 準 と し て の C E F R の 活 用 が 確 立 さ れ て い る 欧 州 と は 異 な り 、C E F R の 利 用 が 検 討 さ れ 始 め て 間 も な い 日 本 に お い て は 、と り わ け「 自 己 評 価 」で あ る が 故 に 過 少 評 価 あ る い は 過 大 評 価する可能性があるといった疑念があるのも事実である。 そ こ で 、今 回 の 一 部 被 験 者 を 対 象 に 、CEFR 自 己 評 価 と 並 行 し て T O E I C ま た は C - Te s t の 受 験 結 果 に つ い て 調 査 し 、両 者 の 間 にどのような関連性があるか統計的な視点で分析することによ り 、過 少 評 価 あ る い は 過 大 評 価 と い っ た 疑 念 に 対 し て 、補 足 す る こ と と し た 。CEFR 自 体 の 信 頼 性 で は な く 、あ く ま で 本 調 査 対 象 者 に よ る 自 己 評 価 の 信 頼 性 を 確 認 す る た め で あ る 。な お 、T O E I C お よ び C - Te s t の 受 験 結 果 は 、 一 般 的 英 語 4 技 能 で 言 え ば 、 listening、 reading、 speaking、 writing と い っ た 技 能 ご と の 得 173 点ではなく、それらを総合したもの(総合点)で表されている。 従 っ て 、C E F R の 4 + 1 技 能 と の 間 で 、技 能 ご と に( 例 え ば 、T O E I C の listening と CEFR の listening) 相 関 性 を 評 価 す る こ と は で き な い 。そ の た め 、主 と し て 、総 合 点 同 士 の 相 関 性 を 評 価 し 、更 に 、 補 足 と し て T O E I C ま た は C - Te s t の 総 合 点 と C E F R 各 技 能 との間の相関性についても評価し以下に考察する。 (1) CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と TOEIC と の 相 関 性 社 会 人 英 語 上 級 者 グ ル ー プ 4 6 名 の 中 、T O E I C 受 験 経 験 の あ る 2 9 名 を 対 象 に 、C E F R 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と T O E I C と の 相 関性を評価した。 ま ず 、表 5 - 2 2 か ら 、T O E I C 総 合 点 と C E F R 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 の 総 合 点 ( To t a l ) と の 間 に r = . 5 1 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 TOEIC の 試 験 形 態 は listening と r e a d i n g か ら 成 っ て お り 、s p e a k i n g と w r i t i n g は 表 向 き 含 ん で い な い よ う に 見 え る が 、一 般 的 英 語 4 技 能 を ふ く む 総 合 的 な 英 語 力 を 包 含 す る と み な さ れ て い る 。そ の 観 点 か ら 、総 合 点 同 士 の 相 関 性 が 有 意 水 準 1% で 比 較 的 強 い と い う 評 価 結 果 は 、 CEFR 自 己 評 価による英語力の妥当性を補完する材料として十分な意味を持 つ と 考 え る 。な お 、表 5-22 か ら 、CEFR 各 技 能 相 互 の 10 通 り の 組 合 せ 、 そ し て 、 C E F R 各 技 能 と C E F R 総 合 点 ( To t a l ) の 5 通 り の 組 合 せ 、 そ の 全 て に つ い て 有 意 水 準 1% で 比 較 的 強 い 相 関 性 が 見 ら れ る 。総 合 点 相 互 の 相 関 性 が 極 め て 高 い と い う 評 価 結 果 の 持つ意味に一段と重みを増すものと考える。 次 に 、 TOEIC 総 合 点 と CEFR 各 技 能 と の 間 の 相 関 性 を 見 て み る と 、 I と の 間 に r =.57, p <.01 お よ び R と の 間 に r =.42, p < . 0 5 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。ま た 、他 の L 、 P お よ び W に つ い て も 、有 意 水 準 5 % で 有 意 と い う 水 準 に 僅 か に 届 か な い が 、弱 い 正 の 相 関 係 数 を 示 し て お り 、CEFR 自 己 評 価 と 174 TOEIC と の 間 の 乖 離 の 少 な さ が 見 ら れ る 。 表 5-22 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と TOEIC の 相 関 係 数 N=29) (社会人英語上級者 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 TOEIC CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 L L R I P W To t a l 0.34 0.42 0.57 0.35 0.28 0.51 * ** 0.63 0.54 0.44 0.53 0.76 ** ** ** ** ** 0.52 0.49 0.71 0.82 ** ** ** ** 0.77 0.50 0.82 ** ** ** 0.58 0.82 ** ** R I ** P 0.82 W 備考 ** ** p < .01 L: Listening * p < .05 I: Spoken Interaction R: Reading P: Spoken Production W : Wr i t i n g ( 2 ) C E F R 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と C - Te s t と の 相 関 性 大 学 学 部 1 回 生 グ ル ー プ の 47 名 全 員 を 対 象 に 、 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と C - Te s t と の 相 関 性 を 評 価 し た 。 ま ず 、 表 5 - 2 3 か ら 、 C - Te s t 総 合 点 と C E F R 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 の 総 合 点 ( To t a l ) と の 間 に r = . 5 1 , p < . 0 1 と い う 比 較 的 175 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 C - Te s t の 試 験 形 態 は l i s t e n i n g と speaking を 表 向 き 含 ん で い な い よ う に 見 え る が 、 実 際 に は 一 般 的 英 語 4 技 能 の 全 て を 包 含 す る と 考 え ら れ て い る 。 林 (1999a)の デ ー タ に よ る と 、 C-test と TOEFL の 総 合 点 の 間 に は r= .526, p < .01 と い う 比 較 的 強 い 相 関 が あ る と い う 調 査 結 果 が 出 て い る 。 以 上 の 観 点 か ら 、 本 調 査 に お け る 「 C-test と CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 総 合 点 の 相 関 性 が 高 い 」と い う 評 価 結 果 は 、本 調 査 対 象 者 に よ る CEFR 自 己 評 価 の 信 頼 性 を 補 足 す る 材 料 と し て 十 分 な 意 味 を 持 つ と 考 え る 。 な お 、 表 5-23 か ら 、 CEFR 各 技 能 相 互 の 10 通 り の 組 合 せ 、 そ し て 、 CEFR 各 技 能 と CEFR 総 合 点 ( To t a l ) の 5 通 り の 組 合 せ 、 そ の 全 て に つ い て r = . 7 5 , p < . 0 1 か ら r =.88, p< .01 と い う 共 に 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 総 合 点相互の相関性が極めて高いという評価結果の持つ意味に一段 と重みを増すものと考える。 次 に 、C - Te s t と C E F R 各 技 能 と の 間 の 相 関 性 を 見 て み る と 、 L、 R、 P お よ び W と い う CEFR4+1 技 能 の 中 、 実 に 4 つ の 技 能 と の 間 に r =.41, p< .01 か ら r =.52, p< .01 と い う 共 に 比 較 的 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。残 る I に つ い て は 、相 関 性 は み ら れ な い 。 元 来 C-test は L、 R、 P、 W に 関 連 し た 総 合 力 を 示 す も の と し て 考 案 さ れ て お り 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 要 と な る I と 相 関 性 が見られないのは当然と言えよう。 表 5-23 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 と C-Test の 相 関 係 数 ( 大 N=47) 学学部1回生 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 C-Test L R I P W To t a l 0.52 0.47 0.27 0.41 0.42 0.51 ** ** ** ** ** 176 CEFR 自 己 評 価 に よ る 英 語 力 L 0.63 0.48 0.42 0.60 0.75 ** ** ** ** ** 0.61 0.62 0.61 0.83 ** ** ** ** 0.74 0.62 0.82 ** ** ** 0.75 0.85 ** ** R I P 0.88 W 備考 ** ** p < .01 L: Listening * p < .05 I: Spoken Interaction R: Reading P: Spoken Production W : Wr i t i n g 5.4.2 目 標 言 語 や 学 習 環 境 に よ る 影 響 1 章 5 節 1 項 、4 章 4 節 で 述 べ た よ う に 、日 本 人 6 グ ル ー プ の 学 習 環 境 は 、 ほ と ん ど の 被 験 者 が EFL( English as a foreign l a n g u a g e )で あ る 。社 会 人 英 語 上 級 者 グ ル ー プ の 一 部 お よ び 留 学 経 験 学 部 3 回 生 グ ル ー プ の 全 員 が 、 ESL( English as a second l a n g u a g e )の 学 習 環 境 を 経 験 し て い る も の の 、学 習 期 間 全 体 か ら す れ ば そ の 比 率 は か な り 低 い 。一 方 、外 国 人 2 グ ル ー プ の 学 習 環 境 は 、 全 員 が JFSL の 環 境 に あ る 。 具 体 的 に は 、 在 日 中 国 人 留 学 生 被 験 者 の ほ と ん ど に と っ て「 日 本 語 」は 第 一 外 国 語 で あ り 、第 二 外 国 語 が「 英 語 」で あ る 。ベ ト ナ ム 人 留 学 生 被 験 者 の ほ と ん ど に と っ て 、「 日 本 語 」 は 第 二 外 国 語 で あ り 、 第 一 外 国 語 が 「 英 語 」 である。 今 回 の 4 2 2 名 に 対 す る 全 体 調 査 に つ い て は 、日 本 人 グ ル ー プ 177 と 外 国 人 グ ル ー プ と の 間 で 、目 標 言 語 や 学 習 環 境 に お い て 差 異 が あ る 。そ の た め 、特 に 日 本 人 グ ル ー プ と 外 国 人 グ ル ー プ と の 間 で 、 適正な比較が困難との見方はあり得る。 し か し な が ら 、本 研 究 が 目 指 す の は 、何 ら 前 提 条 件 を 置 か ず 「 情 動 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 及 ぼ す 影 響 」を 明 ら か に す る こ と で あ る 。つ ま り 、目 標 言 語 が 何 で あ れ 、学 習 環 境 が ど う で あ れ 、 「 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 関 連 性 」に つ い て 本 質 的 に 明 ら か に す る と 共 に 、国 際 比 較 を 通 し て「 日 本 人 学 習 者 の 特 性 」を 浮 き 彫 り に す る こ と で あ る 。そ う し た 考 え か ら 、目 標 言 語 や 学 習 環 境 の 異 な る グ ル ー プ 同 士 の 比 較 調 査 を 積 極 的 に 行 う こ と は 、本 研 究の目的に適うものと確信する。 更 に 、非 常 に 僅 か な 標 本 数 に 止 ま る が 、目 標 言 語 や 学 習 環 境 の違いがどのように影響するかテスト事例として以下の方法で 検 証 し て み る こ と と し た 。調 査 対 象 の 在 日 中 国 人 留 学 生 お よ び 在 日ベトナム人留学生の中から、各 1 名を無作為に抽出し(以降、 そ れ ぞ れ A 氏 お よ び B 氏 と 称 す る )、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 う と 共 に面接調査を行った。 な お 、情 動 お よ び C E F R 自 己 評 価 に つ い て の ア ン ケ ー ト 調 査 は、目標言語を「英語」と条件設定した以外は、4 章 4 節で述べ た 、在 日 外 国 人 留 学 生 計 1 0 2 名 を 対 象 に 実 施 し た も の と 全 く 同 じ 方法で行った。ちなみに、A 氏、B 氏の場合、両者とも、英語が 第 一 外 国 語 、日 本 語 は 第 二 外 国 語 で あ る 。英 語 学 習 に 関 す る 基 本 情 報( 期 間 、指 導 法 な ど )に 関 す る 記 述 式 ア ン ケ ー ト 調 査 に つ い て は 、日 本 人 の 留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 に 用 い た も の と 全 く 同 じ方法で行った。 ま た 、面 接 調 査 で は 、第 一 外 国 語 と し て の 英 語 、第 二 外 国 語 と し て 日 本 語 に つ い て 、そ れ ぞ れ の 教 育 、学 習 が ど の よ う で あ っ た か 、英 語 と 日 本 語 と の 間 で ど の よ う な 相 違 点 あ る い は 共 通 点 が あ っ た か 、 等 に つ い て 聞 き 取 り を 行 っ た 。 A 氏 (在 日 中 国 人 留 学 178 生 )お よ び B 氏 (在 日 ベ ト ナ ム 人 留 学 生 )に 対 す る 、 情 動 お よ び CEFR 自 己 評 価 に つ い て の ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 を ま と め た も の が 表 5-24 で あ る 。 上 段 は 「 JFSL 環 境 で 目 標 言 語 が 日 本 語 」 に 関 す る 、 下 段 は 「 E F L 環 境 で 目 標 言 語 が 英 語 」に 関 す る 、そ れ ぞ れ の 結 果 で あ る 。 A 氏 の 場 合 、目 標 言 語 お よ び 学 習 環 境 が 異 な っ た と し て も 、各 情 動 要 素 の レ ベ ル は 全 く 同 じ で あ り 、 CEFR 各 技 能 の レ ベ ル は listening お よ び reading が 僅 か に 異 な る 他 は 同 じ で あ る 。 B 氏 の 場 合 、各 情 動 要 素 の レ ベ ル は 、日 本 語 学 習 と 比 べ て 英 語 学 習 の S E( 自 尊 心 ) レ ベ ル が 2 点 低 い 一 方 、 A N ( 不 安 ) レ ベ ル が 3 点 高 い 。CEFR 各 技 能 の レ ベ ル は writing が 同 じ で あ る 他 は 全 て 1 ~2 点低い。 表 5-24 目 標 言 語・学 習 環 境 の 違 い に よ る 各 情 動 要 素 レ ベ ル お よ び CEFR 各 技 能 レ ベ ル の 比 較 ( N=2) CEFR 自 己 評 価 に よ る 情 動 外国語力 A氏 B氏 目標言語 SE RT AN EM IH EX IN TR L R I P W 日本語 13 14 10 14 9 14 11 13 4 4 4 4 4 英語 13 14 10 14 9 14 11 13 3 3 4 4 4 日本語 16 13 13 15 9 15 10 15 5 5 5 4 4 英語 14 12 16 15 12 12 12 14 4 4 3 3 4 5 章 3 節での検証の結果、仮説1「日本人学習者、外国人学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 は 外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 影 響 を 与 え る 」 を 更 に 一 歩 前 進 さ せ 、「 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、情 動 要 素 S E お よ び A N は 、C E F R 技 能 I 、P お よ び L に 対 し て よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 」そ し て「 CEFR 各 技 能 に 対 し 179 て 、S E は プ ラ ス に 、A N は マ イ ナ ス に 働 く 」こ と を 明 ら か に し た 。 A 氏 の 場 合 、目 標 言 語 に よ ら ず 各 情 動 要 素 お よ び C E F R 各 技 能 の レ ベ ル が ほ と ん ど 同 じ で あ る こ と か ら 当 然 で あ る が 、上 記 の 結 論 と 矛 盾 す る 程 で は な い 結 果 で あ る 。B 氏 の 場 合 、目 標 言 語 の 違 い に よ っ て 、各 情 動 要 素 お よ び C E F R 各 技 能 の レ ベ ル に 違 い が あ る 。 CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 情 動 要 素 SE が 2 点 低 く 、 同 時 に 、CEFR 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 情 動 要 素 AN が 3 点 高 い 、そ の た め 、 CEFR 各 技 能 の レ ベ ル が 軒 並 み 下 が っ て い る の で あ っ て 、 このケースも上記の結論に何ら矛盾しないと考える。 次 に 、 中 国 、 ベ ト ナ ム そ れ ぞ れ EFL 環 境 で 英 語 を 学 習 し た A 氏 お よ び B 氏 と 、学 習 期 間 全 体 に 占 め る 割 合 が か な り 低 い も の の ESL 環 境 で 英 語 学 習 し た 経 験 を 有 す る 日 本 人 の 社 会 人 英 語 上 級者および留学経験学部 3 回生の各グループとを比較してみる。 表 5 - 2 5 は 、5 章 1 節 の 表 5 - 4 お よ び 表 5 - 6 か ら 、社 会 人 英 語 上 級 者グループおよび留学経験のある学部 3 回生の各情動要素なら び に CEFR 各 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 を 抜 粋 し 、 表 5-24 の 「 目 標 言 語が英語」の欄と統合したものである。 表 5-25 英 語 学 習 に 関 す る 各 情 動 要 素 レ ベ ル お よ び CEFR 各 技 能レベルの比較 (EFL 環 境 の 中 国 人 ・ ベ ト ナ ム 人 学 習 者 と 日 本 人 学 習 者 を 比 較 ) CEFR 自 己 評 価 に よ る 情 動 英語力 SE RT AN EM IH EX IN TR L R I P W 社会人平均 14.02 12.59 11.26 14.48 9.04 13.91 11.30 12.37 3.45 3.62 3.55 3.45 3.86 3回生平均 11.43 11.54 14.23 15.43 10.71 11.57 13.77 12.80 2.74 2.83 2.26 2.74 3.46 A氏 13 14 10 14 9 14 11 13 3 3 4 4 4 B氏 14 12 16 15 12 12 12 14 4 4 3 3 4 180 備考 SE: Self-Esteem(自 尊 心 ) IH: Inhibition(抑 制 ) RT: Risk-Taking(危 険 負 担 ) EX: Extroversion(外 向 性 ) AN: Anxiety(不 安 ) IN: Introversion(内 向 性 ) EM: Empathy(共 感 ) TR: Tolerance(寛 容 性 ) L: Listening R: Reading I: Spoken Interaction P: Spoken Production W: Writing 社会人:社会人英語上級者 3回生:留学経験あり学部3回生 表 5 - 2 5 か ら 、A 氏 の 場 合 、情 動 要 素 S E お よ び A N の レ ベ ル は 社 会 人 英 語 上 級 者 の 平 均 値 と か な り 近 く 、C E F R 各 技 能 の レ ベ ルは社会人英語上級者の平均値とほぼ同等である。B 氏の場合、 情 動 要 素 SE の レ ベ ル は 社 会 人 英 語 上 級 者 の 平 均 値 と ほ と ん ど 同 じ で あ る が 、 AN の レ ベ ル が 社 会 人 英 語 上 級 者 は も と よ り 留 学 経 験 の あ る 学 部 3 回 生 の 平 均 値 よ り か な り 上 回 っ て い る 。し か し な が ら 、 CEFR 各 技 能 の レ ベ ル は 、 A 氏 同 様 、 社 会 人 英 語 上 級 者 の 平均値とほぼ同等である。 5 章 3 節 で の 検 証 の 結 果 、 仮 説 3「 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 と で は 、情 動 レ ベ ル と C E F R レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 明 確 な 違 い が あ る 」 を 更 に 一 歩 前 進 さ せ 、「 日 本 人 学 習 者 と 外 国 人 学 習 者 を 比 較 す る と 、 情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 連 性 に お い て 、 影響の度合いに著しい差が見られる」ことを明らかにした。 表 5 - 2 5 が 示 す よ う に 、A 氏 お よ び B 氏 は 、そ れ ぞ れ 、中 国 、 ベ ト ナ ム に お い て EFL 環 境 の 英 語 学 習 に も か か わ ら ず 、 学 習 期 間 お よ び 学 習 環 境( E S L 経 験 や 豊 富 な 海 外 出 張 経 験 有 り )の 双 方 において有利な日本人社会人英語上級者の域に達しているので あ る 。 こ の こ と は 、 CEFR レ ベ ル へ の 影 響 は 、 目 標 言 語 や 学 習 環 境 に よ る も の よ り も 、情 動 レ ベ ル に よ る も の が 大 き い こ と を 示 唆 していると言えよう。 国 際 比 較 す る 場 合 、調 査 対 象 者 の 言 語 環 境 が 同 じ で な け れ ば 181 ( 例 え ば 、 同 じ E F L 言 語 環 境 )、 比 較 の 意 味 を な さ な い と い う 見 解 も あ る 。し か し 、本 研 究 で 目 指 す の は 、あ く ま で 情 動 が コ ミ ュ ニケーション力にどのように影響を与えるかを明らかにするこ と で あ る 。そ し て 、外 国 人 に 比 べ て 高 い と は 言 い 難 い 日 本 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 、日 本 人 の 心 理 的 特 性 に 由 来 す る の で は な い か と の 推 察 に 基 づ き 、敢 え て 海 外 経 験 や 学 習 環 境 の 条 件 を 特 定 せ ず 幅 広 い 層 を 調 査 対 象 者 に 選 ん だ 。そ の 結 果 、情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 関 係 性 の 本 質 は 、年 齢 や 経 歴 、学 習 環 境 、国 籍 な ど に 左 右 さ れ な い こ と が 明 ら か と な っ た 。と は い え 、日 本 人 と 外 国 人 と の 心 理 的 特 性 に 由 来 す る 差 が 浮 き 彫 り に な っ た よ う に 、学 習 環 境 の 違 い に 由 来 す る 新 た な 発 見 が あ る か も 知 れ な い 。更 な る 調査を進める考えである。 5.5 まとめ 本 研 究 で は 、「 情 動 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 へ 及 ぼ す 影 響 」 を 明 ら か に す る と 同 時 に 、日 本 人 学 習 者 の 特 性 を 浮 き 彫 り に す る た め 、下 記 の 3 つ の 仮 説 を 立 て 、日 本 人 6 グ ル ー プ 計 3 2 0 名 お よ び 在 日 外 国 人 留 学 生 2 グ ル ー プ 計 102 名 の 総 計 422 名 か ら 成 る 被 験 者 を 対 象 に 、主 と し て ア ン ケ ー ト 方 式 に よ る 調 査 を 数 値 的 に 統計処理し、量的分析を行った。 仮 説 1: 日 本 人 学 習 者 、 外 国 人 学 習 者 を 問 わ ず 、 情 動 は 外 国 語によるコミュニケーション力に影響を与える。 本章で言及した多面的な調査結果を包括的にとらえたのが、 情 動 要 素 と 有 意 な 相 関 性 の あ る CEFR 技 能 の 個 数 を 集 計 し た 表 5 - 1 6 で あ り 、こ れ ら の デ ー タ か ら 上 記 の 仮 説 1 は 検 証 で き た 。し か も 、 情 動 要 素 S E( 自 尊 心 ) お よ び A N( 不 安 ) は 、 C E F R 技 能 182 I、 P お よ び L に 対 し て よ り 多 く の 影 響 を 与 え 、 CEFR 各 技 能 に 対 し て SE は プ ラ ス に 、 AN は マ イ ナ ス に 働 く と い う 事 も 統 計 的 に示すことが出来た。 仮 説 2: 日 本 人 学 習 者 に 関 し 、情 動 と C E F R と の 間 の 関 係 性は発達段階によって異なる。 仮 説 2 に つ い て は 、主 と し て 本 章 の デ ー タ を 包 括 的 に と ら え た 表 5-16、 表 5-4 情 動 要 素 レ ベ ル の 平 均 値 と 標 準 偏 差 、 表 5-6 C E F R 技 能 レ ベ ル の 平 均 値 と 標 準 偏 差 、留 学 前 後 の 変 化 を 分 析 し た 表 5-9 お よ び 表 5-21 な ど か ら 、 検 証 で き た 。 さ ら に 、 そ れ ぞ れ の 調 査 対 象 グ ル ー プ の 詳 細 結 果 を 総 合 的 に 見 る と 、発 達 段 階 に お い て C E F R 技 能 に 対 す る 情 動 要 素 S E( 自 尊 心 ) や A N( 不 安 ) に よ る 影 響 か ら は 容 易 に 抜 け 出 せ な い も の の 、発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、そ の 他 の 情 動 要 素 か ら の 影 響 は 克 服 で き る 事 が 統 計 的 に 示 されている。 仮 説 3: 日 本 人 学 習 と 外 国 学 習 者 を 比 較 す る と 、 情 動 レ ベ ル と CEFR レ ベ ル の 関 係 性 に お い て 明 ら か な 違 いがある。 仮 説 3 に つ い て 、統 計 的 に 分 析 し た 結 果 、次 の よ う に ま と め ら れ る 。外 国 人 と 比 べ 、日 本 人 は 各 情 動 要 素 か ら の 影 響 を 受 け 易 く 、特 に S E( 自 尊 心 )と A N( 不 安 )か ら の 影 響 は か な り 強 い 。 さ ら に 、日 本 人 は C E F R レ ベ ル へ プ ラ ス に 作 用 す る S E( 自 尊 心 ) の レ ベ ル が 低 い 反 面 、C E F R レ ベ ル へ マ イ ナ ス に 作 用 す る A N( 不 安 ) の レ ベ ル が 高 い 。 そ の 結 果 、 外 国 人 と 比 べ 、 日 本 人 は CEFR 各技能のレベルが総じて低い」ことが統計的に表れている。 以 上 、調 査 結 果 は 3 つ の 仮 説 を 検 証 す る も の で あ り 、更 に そ 183 れ ぞ れ の 仮 説 に 対 し て 、上 述 の よ う に 具 体 性 を 加 え る こ と に 繋 が ったという点で、調査の意義を一歩深める事が出来たと考える。 ま た 、 CEFR技 能 に よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 の 順 位 と 、 そ の 逆 に 、 情 動 要 素 か ら よ り 多 く の 影 響 を 受 け る CEFR技 能 の 順 位 が 、 以 下 の 通 り 明 ら か に な っ た こ と が 特 筆 さ れ る 。( 詳 細 は 表 5-18お よ び 表 5-19を 参 照 ) 情 動 要 素 の 順 位 : 1 位 = SE( 自 尊 心 ) 2 位 = AN( 不 安 ) 3 位 = EX( 外 向 性 ) CEFR技 能 の 順 位 : 1 位 = Spoken Interaction 2 位 = Spoken Production 3 位 = Listening 注: 1) 日 本 語 能 力 試 験 財団法人日本国際教育支援協会と独立行政法人国際交流基 金 が 主 催 の 、日 本 語 を 母 語 と し な い 人 を 対 象 に 日 本 語 能 力 を 認 定 す る 検 定 試 験 で あ る 。日 本 を 含 め 世 界 58 カ 国 ・ 地 域 (平 成 22 年 ) で 実 施 。日 本 語 を 母 語 と し な い 人 を 対 象 と し た 日 本 語 の 試 験 と し ては最も受験者の多い試験である。 最 上 級 の N1 か ら 最 下 級 の N5 ま で の 5 段 階 の レ ベ ル が あ る 。 ( 平 成 2 1 年 ) ま で は 1 級 ~ 4 級 の 4 段 階 で あ っ た 。日 本 語 を 母 語 と し な い 者 の 、日 本 の 国 立 大 学 へ の 派 遣 留 学 に は 日 本 語 能 力 試 験 1 級を要求されることが多い。 本 論 文 の 被 験 者 で あ る 留 学 生 の 日 本 能 力 レ ベ ル は 平 成 21 年 184 以 前 の 実 績 で あ る た め 、参 考 ま で に 各 級 ご と の 日 本 語 能 力 レ ベ ル を下記に記しておく。 平 成 21 年 ま で の 受 験 級 レ ベ ル と 概 要 1 級 :高 度 の 文 法 ・ 漢 字 (2,000 字 程 度 )・ 語 彙 (10,000 語 程 度 )を 習 得 し て い る 。社 会 生 活 を す る 上 で 必 要 な 、総 合 的 な 日 本 語 能 力 で あ る 。 900 時 間 程 度 学 習 し た レ ベ ル 。 2 級 :や や 高 度 な 文 法 ・ 漢 字 (1,000 字 程 度 ).語 彙 (6,000 語 程 度 )を 習 得 し て い る 。一 般 的 な 事 柄 に つ い て 、会 話 が で き 、読 み 書 き で き る 能 力 で あ る 。6 0 0 時 間 程 度 学 習 し 、中 級 コ ー ス を 修了したレベル。 3 級 :基 本 的 な 文 法 ・ 漢 字 (300 字 程 度 )・ 語 彙 (1,500 語 程 度 )を 習 得 し て い る 。日 常 生 活 に 役 立 つ 会 話 が で き 、簡 単 な 文 章 が 読 み 書 き で き る 能 力 で あ る 。 300 時 間 程 度 学 習 し 、 初 級 コ ー ス 終了したレベル。 4 級 :初 歩 的 な 文 法 ・ 漢 字 (100 字 程 度 )・ 語 彙 (800 語 程 度 )を 習 得 し て い る 。簡 単 な 会 話 が で き 、平 易 な 文 、ま た は 短 い 文 章 が 読 み 書 き で き る 能 力 で あ る 。 150 時 間 程 度 学 習 し 、 初 級 コ ー ス前半を終了したレベル。 2) 実 用 日 本 語 検 定 日本語を使ったビジネスコミュニケーション能力及びその 基 礎 と な る 知 識 を 測 定 す る 試 験 で あ る 。日 本 語 能 力 試 験 N 1 ( 旧 1 級 )合 格 レ ベ ル 程 度 の 日 本 語 能 力 が あ る 日 本 語 を 母 語 と し な い 者 が 対 象 で あ る 。 基 準 点 は 下 記 8 分 野 す べ て に お い て 30% 以 上 の 得 点 で あ る こ と 。ビ ジ ネ ス A 級 、ビ ジ ネ ス 準 A 級 ~ ビ ジ ネス D 級、準 D 級、認定なしの7段階レベルで評価する。 ・読解試験 1 文 法 語 彙 問 題 (ビ ジ ネ ス を 間 接 的 に 支 え る 語 彙 力 お よ び 敬 語を含む基礎的な表現力) 185 2 読 解 問 題 (ビ ジ ネ ス 文 書 や 図 表 、 新 聞 な ど の 内 容 を 深 く 理 解できる能力) 3 漢 字 問 題 (企 業 関 連 の ニ ュ ー ス 、 新 聞 な ど を 理 解 す る た め に必要な基礎的な漢字理解力) 4 記 述 問 題 (短 文 作 成 に よ る 正 確 な 文 章 を 書 く 能 力 ) ・聴解試験 1 写 真 問 題 (状 況 の 理 解 と 基 本 的 な 表 現 力 ) 2 聴解問題 3 応答問題 4 会話・説明問題 186 6章 結論 コミュニケーション力の向上を狙いとして、長年主流であ っ た 訳 読 式 主 体 の 日 本 の 英 語 教 育 に Communicative Language Te a c h i n g ( C LT ) が 取 り 入 れ ら れ て 久 し い 。 文 部 科 学 省 ( 2 0 0 9 ) に よ る 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 外 国 語 編 に お い て は「 積 極 的 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 ろ う と す る 態 度 の 育 成 を 図 り 、情 報 や 相 手 の 意向などを理解したり自分の考えなどを表現したりする実践的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 養 う 」と し 、ま た 、中 学 校 学 習 指 導 要 領 で は「 実 践 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 基 礎 を 養 う 」と し 、更 に は 、小 学 校 学 習 指 導 要 領 で は「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 素 地 を 養 う 」と す る な ど 、表 面 的 に は 国 を 挙 げ て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 向 上 に 邁 進 し て い る か に 見 え る 。し か し な が ら 、さ ほ ど 目 覚 し い 成 果 を 上 げ る に 至 っ て い な い の が 現 状 で あ る 。言 語 を 通 し て 相 手 と 対 峙 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 過 程 で 、人 間 の 心 理 状 態 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 出 来・不 出 来 を 大 き く 左 右 す る の で は と い っ た 心 理 的 側 面 に 真 正 面 か ら 取 り 組 ん だ 研 究 は 限 ら れ て お り 、ま してや実際の指導施策として取り入れられた事例はほとんどな い。 そ の 主 た る 要 因 は 、「 心 理 状 態 」 お よ び 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」と い う 抽 象 的 な 二 つ の 事 象 に つ い て 、ど の よ う に 明 確 に 定 義し、どのようにその本質を逃さず統計処理し量的分析を行い、 ま た 、ど の よ う に 両 者 の 関 連 性 を 明 ら か に す る か 、そ の 方 法 論 が 定かでなかったためと考えられる。 実際に、この分野における国内外の研究事例は、2 章で述べ た よ う に ほ と ん ど が「 不 安 」な ど と い う 心 理 状 態 の 特 定 の 一 面 を 捉 え た 研 究 が 主 で あ り 、心 理 状 態 を 幅 広 く 数 値 化 し 量 的 に 捉 え た 187 実 証 研 究 の 事 例 や 、外 国 人 と 比 較 し た 日 本 人 の 心 理 面 で の 特 性 に ついて探求した事例はほとんどない 本 研 究 の 目 的 は 、外 国 語 学 習 者 の 心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン力との間にどのような重大な関連性があるか明らかにする と 同 時 に 、そ れ を 通 し て 、外 国 人 と 比 較 し た 日 本 人 の 心 理 面 で の 特性を浮き彫りにすることにある。 本研究の目標は、第一に「心理状態」と「コミュニケーショ ン 力 」の 双 方 を 幅 広 く 且 つ 量 的 に 捉 え る こ と で あ り 、第 二 に「 両 者の間の関連性」を実証的に検証することである。 そ の た め 、研 究 調 査 の 対 象 を 、日 本 人 の 小 学 生 、中 学 生 、高 校 生 、 大 学 生 、 社 会 人 の 他 に 在 日 外 国 人 留 学 生 を 加 え た 合 計 422 名 と し 、年 代 や 学 習 歴 、国 籍 に お い て 多 様 性 を も た せ る こ と と し た 。ま た 、独 自 に 考 案 し た 下 記 の 方 法 に よ り 、 「 心 理 状 態 」と「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」 双 方 の 数 値 化 、 お よ び 、「 両 者 の 間 の 相 関 性 」 の 分 析 を 行 う こ と と し た 。( 詳 細 は 、 4 章 5 節 お よ び 6 節 を 参照) (1) 心 理 状 態 の 数 値 化 自 尊 心 ( S E )、 危 険 負 担 ( R T )、 不 安 ( A N )、 共 感 ( E M )、 抑 制 ( I H )、 外 向 性 ( E X )、 内 向 性 ( I N )、 寛 容 性 ( T R ) と い う 8 つ か ら 成 る 情 動 の 各 要 素 を 評 価 軸 と し 、4 2 2 名 の 対 象 者一人ひとりについて情動の各要素がどのレベルにあるか 調査することによって、心理状態を数値化し統計処理した。 こ れ に よ り 、大 雑 把 な 捉 え 方 や「 不 安 」な ど と い う 特 定 の 一 面 に 止 ま る こ と な く 、心 理 状 態 を 幅 広 く 多 面 的 に 捉 え る と 同 時 に 、そ の 内 部 に ま で 踏 み 込 む こ と が 可 能 と な る 。調 査 の 手 段 は 、 独 自 に 考 案 し た 40 項 目 か ら 成 る 設 問 表 を 用 い る ア ン ケート方式とした。 188 (2) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 数 値 化 元 来 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 到 達 目 標 の 尺 度 と し て 開 発 さ れ た CEFR を 統 計 処 理 す る た め の ツ ー ル と し て 活 用 し た 。 l i s t e n i n g( L )、r e a d i n g( R )、s p o k e n i n t e r a c t i o n( I )、s p o k e n p r o d u c t i o n ( P )、 w r i t i n g ( W ) と い う 5 つ か ら 成 る C E F R の 各 技 能 を 評 価 軸 と し 、4 2 2 名 の 対 象 者 一 人 ひ と り に つ い て CEFR の 各 技 能 が ど の レ ベ ル に あ る か 自 己 評 価 調 査 す る こ と に よ っ て 、「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」 を 数 値 化 し 量 的 に 捉 え る こ と が 可 能 で あ る 。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 要 と な る の は 一 般 的 に 英 語 4 技 能 で い う 「 speaking」 で あ る が 、 CEFR で は そ れ を 、相 手 と 対 峙 す る こ と で 感 情 や 心 理 状 態 に 左 右 さ れ 、内 面 的 特 徴 が 出 易 い「 や り と り:s p o k e n i n t e r a c t i o n( I )」 と 「 表 現 : s p o k e n p r o d u c t i o n ( P )」 と に 細 分 化 し て い る た め 、「 心 理 状 態 」 と 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」 と の 間 の 関 連 性を明らかにするのに適していると判断した。 (3) 心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 の 相 関 性 の 分 析 上 記 (1)お よ び (2)の 調 査 に よ り 数 値 化 し て 統 計 処 理 し た 各 情 動 要 素 と 各 C E F R 技 能 と の 間 に 、ど の よ う な 相 関 性 が 見 ら れ る か 、 そ れ ぞ れ の グ ル ー プ ご と に 、 以 下 の 合 計 78 通 り の 組 合 せ に つ い て 分 析 し た 。( 詳 細 は 、 5 章 2 節 を 参 照 ) ① 各 情 動 要 素 対 各 CEFR 技 能 の あ ら ゆ る 組 合 せ ( 40 通 り ) ② 各 情 動 要 素 相 互 の あ ら ゆ る 組 合 せ ( 28 通 り ) ③ 各 CEFR 技 能 相 互 の あ ら ゆ る 組 合 せ ( 10 通 り ) ① に つ い て は 、文 字 通 り 各 情 動 要 素 と 各 C E F R 技 能 と の 間 の 相関性を直接見るためのものであるが、②および③については、 更にそれへ間接的に働きかけるメカニズムを解明するためのも 189 の で あ る 。例 え ば 社 会 人 の 場 合 、S E と L 、I お よ び P と の 間 に 相 関 性 が あ る 。 一 方 、 EX は ど の 技 能 と も 相 関 性 が な い 。 し か し 、 S E と E X と の 間 に は 高 い 相 関 性 が あ る 。従 っ て 、 E X が 高 け れ ば SE が 高 く 、 そ の 結 果 L、 I お よ び P が 高 い 。 つ ま り 、 EX は 間 接 的 に L、 I お よ び P を 高 め る と い う メ カ ニ ズ ム が 働 い て い る と 解 釈 で き る 。( 表 5 - 7 参 照 ) 6.1 本 研 究 の 成 果 (1) 各 情 動 要 素 と 各 CEFR 技 能 と の 間 の 相 関 性 前 節 で 述 べ た よ う に 、 各 情 動 要 素 対 各 CEFR 技 能 の 40 通 り の あ ら ゆ る 組 合 せ に つ い て 、両 者 の 間 の 相 関 性 を 分 析 し た と こ ろ 、 以 下 の こ と が 明 ら か と な っ た 。( 詳 細 は 、 5 章 2 節 を 参照) ① 情 動 要 素 と CEFR 技 能 と の 間 の 相 関 性 ( 仮 説 1 の 検 証 ) 8 つ の 調 査 グ ル ー プ の 全 て に お い て 、多 く の 情 動 要 素 と 多 く の CEFR 技 能 と の 組 合 せ に 相 関 性 が 見 ら れ る 。 中 で も 、 情 動 要 素 の 自 尊 心 ( SE) お よ び 不 安 ( AN) と 、 CEFR 技 能 の I、 P お よ び L と の 組 合 せ に 有 意 な 相 関 性 の 見 ら れ る こ と が 、ほ と ん ど の 調 査 グ ル ー プ に お い て 明 ら か と な っ た 。 な お 、 全 て の CEFR 技 能 に 対 し て 、 自 尊 心 ( SE) は プ ラ ス に 働 く が 、 不 安 ( AN) は マ イ ナ ス に 働 く こ と も 同 時 に 明らかとなった。 ② 情 動 要 素 お よ び CEFR 技 能 の 順 位 づ け 8 つ の 調 査 グ ル ー プ を 総 合 し た と こ ろ 、 よ り 多 く の CEFR 技 能 と 有 意 な 相 関 性 が あ る 、す な わ ち C E F R 技 能 へ よ り 多 く の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 の 順 位 づ け は 、以 下 に 示 す 通 り 190 であることが明らかとなった。なお、8 つの調査グループ を 総 合 す る と CEFR 技 能 の 合 計 は 40 個 と な る が 、 第 1 位 の 自 尊 心( SE)に つ い て は 、そ の 中 の 80%に 当 た る 32 個 へ 影 響 を 与 え る 。 以 降 、 不 安 ( A N )、 外 向 性 ( E X )、 内 向 性 ( I N )、 抑 制 ( I H )、 共 感 ( E M )、 寛 容 性 ( T R )、 危 険 負 担( R T )に つ い て は 、そ れ ぞ れ 、5 0 % 、4 3 % 、3 5 % 、2 8 % 、 1 8 % 、 1 8 % 、 1 0 % の C E F R 技 能 へ 影 響 を 与 え る 。( 表 5 - 1 6 参 照 )な お 、CEFR 技 能 へ プ ラ ス の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 に 対 し て は 「positive」、 マ イ ナ ス の 影 響 を 与 え る 情 動 要 素 に 対 し て は 「negative」と 表 現 し て 区 別 す る 。 第 1 位 : 自 尊 心 ( SE) → 80% positive 第 2 位 : 不 安 ( AN) → 50% negative 第 3 位 : 外 向 性 ( EX) → 43% positive 第 4 位 : 内 向 性 ( IN) → 35% negative 第 5 位 : 抑 制 ( IH) → 28% negative 第 6 位 : 共 感 ( EM) → 18% positive 第 6 位 : 寛 容 性 ( TR) → 18% positive 第 8 位 : 危 険 負 担 ( RT) → 10% positive 逆 に 、よ り 多 く の 情 動 要 素 と 相 関 性 が あ る 、す な わ ち 情 動 要 素 か ら よ り 多 く の 影 響 を 受 け る CEFR 技 能 の 順 位 づけは、次の通りであることが明らかとなった。なお、8 つ の 調 査 グ ル ー プ を 総 合 す る と 情 動 要 素 の 合 計 は 64 個 と な る が 、 第 1 位 の I に つ い て は 、 そ の 中 の 50%に 当 た る 32 個 か ら 影 響 を 受 け る 。 ( 表 5 - 1 7 参 照 )以 降 、 P 、L 、 R 、 W に つ い て は 、 そ れ ぞ れ 、 42%、 39%、 27%、 17%の 情 動 要素から影響を受ける。 191 第 1 位 : Spoken interaction( I) → 50%の 影 響 第 2 位 : Spoken production( P) → 42%の 影 響 第 3 位 : Listening( L) → 39%の 影 響 第 4 位 : Reading( R) → 27%の 影 響 第 5 位 : Wr i t i n g ( W ) → 17%の 影 響 ③ 日本人の発達段階による変遷(仮説 2 の検証) 日 本 人 6 グ ル ー プ に お い て 、発 達 段 階 を 経 る に つ れ 、情 動 要 素 の 上 位 順 位 の 自 尊 心 ( SE) や 不 安 ( AN) か ら は 容 易 に 抜 け 出 せ な い も の の 、下 位 順 位 の 情 動 要 素 か ら は 脱 す る ことができることが明らかとなった。 ④ 日本人の心理面での特性(仮説 3 の検証) 日本人 6 グループの平均と外国人 2 グループの平均を比較 す る と 、情 動 要 素 の 自 尊 心( S E )か ら 影 響 を 受 け る C E F R 技 能 の 割 合 は 、前 者 が 9 3 % 、後 者 が 4 0 % 、と い う よ う に 日 本 人 の 方 が 格 段 に 高 い 。 そ し て 、 情 動 要 素 の 不 安 ( AN) か ら 影 響 を 受 け る CEFR 技 能 の 割 合 に つ い て も 、 前 者 が 6 0 % 、後 者 が 2 0 % 、と い う よ う に 日 本 人 の 方 が 格 段 に 高 い ( 表 5 - 1 6 参 照 ) 。ま た 、そ の 他 の 情 動 要 素 に つ い て も 、程 度 の 差 こ そ あ れ 、日 本 人 の 方 が 全 て に つ い て 高 く 、情 動 か ら の影響を受け易い日本人の特性が明らかとなった。 (2) 情 動 の 各 要 素 相 互 お よ び CEFR の 各 技 能 相 互 の 相 関 性 前 節 で 述 べ た よ う に 、 各 情 動 要 素 相 互 の 28 通 り の あ ら ゆ る 組 合 せ 、 お よ び 各 CEFR 技 能 相 互 の 10 通 り の あ ら ゆ る 組 合 せ に つ い て 、両 者 の 間 の 相 関 性 を 分 析 し た と こ ろ 、以 下 の こ と が 明 ら か と な っ た 。( 詳 細 は 、 5 章 3 節 を 参 照 ) 192 ① 8 つの調査グループの全てにおいて、情動要素の自尊心 ( SE) と 外 向 性 ( EX) と の 組 合 せ に 比 較 的 強 い あ る い は 強 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。ま た 、ほ と ん ど の 調 査 グ ル ー プ に お い て 、 不 安 ( A N )、 内 向 性 ( I N ) お よ び 抑 制 ( I H ) の三つ巴の組合せに比較的強い正の相関性が見られると 同 時 に 、 そ れ ら が 、 自 尊 心 ( SE) お よ び 外 向 性 ( EX) に 対してマイナスに働くことが明らかとなった。 ② 8 つ の 調 査 グ ル ー プ を 総 合 す る と 、 各 CEFR 技 能 相 互 の 組 合 せ は 合 計 8 0 通 り と な る が 、そ の 中 の 7 2 通 り の 組 合 せ に比較的強いあるいは強い正の相関性が、6 通りの組合せ に 弱 い 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 (表 5-7、 5-9~ 5-15 参 照 ) (3) 情 動 要 素 と CEFR 技 能 の 相 関 性 に つ い て の ま と め 前 述 し た 各 情 動 要 素 相 互 お よ び 各 CEFR 技 能 相 互 の 相 関 性 に つ い て の 分 析 結 果 を 踏 ま え 、各 情 動 要 素 と 各 C E F R 技 能 と の 間 の 相 関 性 に つ い て ま と め る と 、以 下 の こ と が 明 ら か と な った。 ① 各情動要素相互の協調関係あるいは牽制関係 ほ と ん ど の 調 査 グ ル ー プ に お い て 、情 動 要 素 の 自 尊 心( S E ) と 外 向 性( EX)は 互 い に 強 め 合 い 、全 て の CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 く 。 一 方 、 情 動 要 素 の 不 安 ( A N )、 内 向 性 ( I N ) お よ び 抑 制( I H )は 三 つ 巴 と な っ て 強 め 合 い 、全 て の C E F R 技 能 へ マ イ ナ ス に 働 く 。そ し て 、自 尊 心( S E )と 外 向 性( E X ) と い っ た p o s i t i v e な 情 動 要 素 群 と 、不 安( A N )、内 向 性( I N ) お よ び 抑 制( I H )と い っ た n e g a t i v e な 情 動 要 素 群 と は 、互 い に 牽 制 し 合 う 関 係 に あ る 。 従 っ て 、 せ っ か く positive な 情 動 要 素 群 が CEFR 技 能 へ プ ラ ス に 働 こ う と し て も 、 そ れ 193 を negative な 情 動 要 素 群 が 阻 害 し て し ま う 。 ② 各 CEFR 技 能 相 互 の 協 調 性 8 つ の 調 査 グ ル ー プ を 総 合 す る と 、各 C E F R 技 能 相 互 の あ ら ゆ る 組 合 せ の 約 98% に 有 意 な 正 の 相 関 性 が 見 ら れ る 。 従 っ て 、 調 査 結 果 か ら 判 明 し た positive な 情 動 要 素 群 (p.189 の positive, negative 情 動 要 素 リ ス ト 参 照 。具 体 的 に は positive な 情 動 要 素 は 、自 尊 心 、外 向 性 、共 感 、寛 容 性 、 危 険 負 担 )の 影 響 を 受 け 、 全 て の CEFR 技 能 の レ ベ ル が 揃 っ て プ ラ ス の 方 向 へ 動 く 。一 方 、n e g a t i v e な 情 動 要 素 群 ( p . 1 8 9 ) の p o s i t i v e , n e g a t i v e 情 動 要 素 リ ス ト 参 照 。具 体 的 に は 不 安 、 内 向 性 、 抑 制 )の 影 響 を 受 け 、 全 て の CEFR 技能のレベルが揃ってマイナスの方向へ動く。 6.2 ま と め 本 研 究 は 、外 国 語 学 習 者 の 心 理 状 態 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 と の 間 の 関 連 性 を 明 ら か に す る と 同 時 に 、そ れ を 通 し て 、外 国 人 と比較した日本人の心理面での特性を浮き彫りにするための独 自 の 試 み と し て 、日 本 人 3 2 0 名 、外 国 人 1 0 2 名 か ら 成 る 合 計 4 2 2 名 を 対 象 に 調 査 し 、「 情 動 要 素 と C E F R 技 能 と の 間 の 相 関 性 」 に つ いて分析した。 そ の 結 果 、 自 尊 心 ( SE) や 不 安 ( AN) と い っ た 「情 動 要 素 」 と 、 全 て の 「CEFR 技 能 」と の 間 に 「 相 関 性 が あ る 」 こ と が 明 ら か と な っ た が 、 同 時 に 、 そ の 相 関 性 の 程 度 が 「日 本 人 は 外 国 人 よ り も 格 段 に 高 い 」こ と が 明 ら か と な っ た 。 そ し て 、 自 尊 心 ( SE) に 代 表 さ れ る 「 positive な 情 動 要 素 群 」 と 、 不 安 ( AN) に 代 表 さ れ る 「 negative な 情 動 要 素 群 」 と は 互 い に 牽 制 し 合 い な が ら 、 「 positive な 情 動 要 素 群 」 は 全 て の CEFR 技 能 と 協 調 し 合 い 、 194 「 negative な 情 動 要 素 群 」 は 全 て の CEFR 技 能 と 牽 制 し 合 う こ と が 明 ら か と な っ た 。更 に 、全 て の C E F R 技 能 は 相 互 に 協 調 し 合 う こ と が 明 ら か と な っ た 。ま た 、平 均 し て 日 本 人 は 外 国 人 よ り も 自 尊 心 ( SE) の レ ベ ル が 低 く 、 不 安 ( AN) の レ ベ ル が 高 い こ と が 明 ら か と な っ た 。 以 上 の 分 析 結 果 を 総 合 す れ ば 、 「外 国 人 と 比 べ 、 日 本 人 の 英 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 は 劣 る 」と 一 般 的 に 言 わ れている評判に、本研究は統計的裏づけを与えたことになる。 こ こ で 、「 協 調 し 合 う 、 す な わ ち 、 正 の 相 関 性 が あ る 」 と は ど う い う こ と か 再 確 認 し て お く 。 そ れ は 、「 ど ち ら か 一 方 の レ ベ ル が 高 け れ ば 他 方 の レ ベ ル も 高 く 、そ の 逆 に 、ど ち ら か 一 方 の レ ベ ル が 低 け れ ば 他 方 の レ ベ ル も 低 い 」こ と を 意 味 す る 。一 方 、 「牽 制 し 合 う 、 す な わ ち 、 負 の 相 関 性 が あ る 」 と は 、「 ど ち ら か 一 方 の レ ベ ル が 高 け れ ば 他 方 の レ ベ ル は 低 く 、そ の 逆 に 、ど ち ら か 一 方のレベルが低ければ他方のレベルは高い」ことを意味する。 例 え ば 、「 自 尊 心 ( S E ) の レ ベ ル が 高 け れ ば 、 不 安 ( A N ) の レ ベ ル は 低 く 、 全 て の C E F R 技 能 の レ ベ ル は 高 い 」、 そ の 逆 に 、 「 自 尊 心 ( SE) の レ ベ ル が 低 け れ ば 、 不 安 ( AN) の レ ベ ル は 高 く 、全 て の C E F R 技 能 の レ ベ ル は 低 い 」と い う 具 合 で あ る 。ま た 、 「 ど れ か 一 つ の C E F R 技 能 の レ ベ ル が 高 け れ ば 、他 の 全 て の C E F R 技 能 の レ ベ ル は 高 く 、自 尊 心( SE)の レ ベ ル は 高 く 、不 安( AN) の レ ベ ル は 低 い 」 、そ の 逆 に 、「 ど れ か 一 つ の C E F R 技 能 の レ ベ ル が 低 け れ ば 、他 の 全 て の C E F R 技 能 の レ ベ ル は 低 く 、自 尊 心( S E ) の レ ベ ル は 低 く 、不 安( A N )の レ ベ ル は 高 い 」 と い う 具 合 で あ る 。 そ の よ う に 、「相 関 性 」は 、両 者 間 の 双 方 向 の 関 係 性 で あ り 、両 者 の変化の方向性を評価している。 日 本 人 の 自 尊 心 ( SE) の レ ベ ル が 総 じ て か な り 上 が る か 、 ま た は 不 安 ( AN) の レ ベ ル が 総 じ て か な り 下 が れ ば 、 理 論 的 に は 全 て の C E F R 技 能 の レ ベ ル は か な り 上 が り 、上 述 と は 逆 に 、平 均して日本人は外国人と比べ英語コミュニケーション力が勝る 195 ことになると言えよう。 以 上 統 計 分 析 に よ る 量 的 研 究 結 果 を 論 じ て き た 。量 的 研 究 を 補足する位置づけで調査対象者に対しておこなった英語学習な ど に 関 す る 質 問 、自 由 記 述 を 質 的 研 究 と し て ま と め た 結 果 は 、次 の 節 で 言 及 す る よ う に 、ま さ に 、E F L と し て の 日 本 人 学 習 者 の 特 徴 を 示 す も の で あ る 。量 的 、質 的 研 究 の 両 方 の 視 点 か ら 、以 下 の ように英語教育へ示唆したい。 6.3 日 本 の 英 語 教 育 へ の 示 唆 日 本 の 教 育 現 場 で 、 こ れ ま で C LT を 含 め 様 々 な 指 導 法 が 取 り 入 れ ら れ て き た が 、心 理 的 側 面 に 真 正 面 か ら 取 り 組 ん だ も の は ほ と ん ど な い と 本 章 冒 頭 で 述 べ た 。し か し な が ら 、諸 施 策 そ の も の が 無 益 で あ っ た と は 考 え て い な い 。本 研 究 の 視 点 か ら 俯 瞰 す れ ば 、 C LT を は じ め と す る 諸 施 策 に よ り 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」 のレベルは間違いなく上がる方向にあったと思われる。しかし、 そ の 過 程 で 、自 尊 心( S E )を 始 め と す る「 p o s i t i v e な 情 動 要 素 群 」 を 挫 き 、 不 安 ( AN) を 始 め と す る 「 negative な 情 動 要 素 群 」 を 煽るような指導方法や学習環境が日本の英語教育の現場に溢れ て い な か っ た だ ろ う か 。そ う で あ っ た と し た ら 、せ っ か く 上 が る は ず だ っ た「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」の レ ベ ル は 逆 に 下 が り 、そ の 結 果 、「 p o s i t i v e な 情 動 要 素 群 」 の レ ベ ル は 下 が り 、 そ し て 「 n e g a t i v e な 情 動 要 素 群 」の レ ベ ル は 上 が り 、そ の 結 果 、再 度「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」の レ ベ ル は 下 が る 、と い う よ う に 正 に「 萎 縮のスパイラル」に陥ってしまったものと考えている。 諸 施 策 の 過 程 で 、心 理 的 側 面 に 真 正 面 か ら 迫 り 、自 尊 心( S E ) を 始 め と す る 「 positive な 情 動 要 素 群 」 を 育 み 、 不 安 ( AN) を 始 め と す る「 n e g a t i v e な 情 動 要 素 群 」を 和 ら げ る よ う な 指 導 方 法 や 学 習 環 境 が 日 本 に 根 付 い て い た な ら ば 、期 待 通 り「 コ ミ ュ ニ ケ 196 ー シ ョ ン 力 」の レ ベ ル は 上 が り 、そ し て「 p o s i t i v e な 情 動 要 素 群 」 の レ ベ ル は 上 が り 、そ の 結 果 、再 度「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 」の レ ベ ル は 上 が る 、と い う よ う に 正 に「 伸 張 の ス パ イ ラ ル 」の 軌 道 へ乗ったであろうと考える。 更 に 筆 者 は 、外 国 語 教 育 に 力 を 入 れ て い る 最 近 の 東 ア ジ ア の 状 況 を 見 聞 き す る に つ け 、日 本 人 の 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 レ ベ ル は 、国 際 化 と い う 時 代 の 趨 勢 か ら 取 り 残 さ れ る の で は な い か と い う 危 惧 を 覚 え る 。3 章 で 取 り 上 げ た 小 池 他 に よ る 日 本 の 第 一 線 で 国 際 ビ ジ ネ ス に 従 事 す る 約 7,300 名 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 を 知 る に 及 ん で 、そ の 危 惧 は 更 に 深 ま っ た 。小 池 他 ア ン ケ ー ト に よ れ ば 、既 に こ れ ら の 人 達 で す ら 、そ の 半 数 近 く が 「 討 論 に 50% 程 度 し か つ い て 行 け な い 」 と 回 答 し て い る 。 そ の 原 因 は ど こ に 在 る の か 。日 本 人 だ け が 生 ま れ つ き 能 力 を 持 ち 合 わ せ て い な い と は 思 え な い し 、日 本 人 だ け が 外 国 語( 英 語 ) に 興 味 や 関 心 が な い と も 思 え な い 。そ の 証 拠 に 、小 池 他 ア ン ケ ー ト に よ れ ば 、8 0 % 以 上 の 人 達 が「 国 際 競 争 に 耐 え う る レ ベ ル の コ ミュニケーション力が要求されている」との認識を示しており、 また、決して努力を怠っているとは思えない。 日本の学校では進学試験に役立つような文法や語彙に焦点 を あ て た 訳 読 式 授 業 は 重 視 さ れ 、 特 に 、 試 験 が 迫 る と oral c o m m u n i c a t i o n は 軽 ん じ ら れ る 傾 向 が あ る と い う 。筆 者 は 、本 研 究 に 取 り 組 む 当 初 は 、そ の よ う な 「 英 語 授 業 の 方 式 」 に こ そ 、コ ミ ュニケーション力が伸びない原因のほとんどが在るのではない か と 考 え て み た 。従 来 の 授 業 形 態 で 英 語 学 習 し て き た と 予 想 さ れ る 社 会 人 グ ル ー プ (本 論 文 調 査 対 象 の 46 名 )に つ い て 見 て み る と 、 確 か に 、本 研 究 の ア ン ケ ー ト 調 査 P a r t Ⅰ 質 問 1 0 「 英 語 授 業 の 方 法 は ? 」に よ れ ば 、 「文 法 ・ 訳 読 式 中 心 の 教 育 だ け 」だ っ た と 、 被 験 者 の 65% が 回 答 し て い る 。 年 代 の 内 訳 は 、 50 歳 以 上 の 89% と 、 50 歳 未 満 の 50% で あ る 。 し か し な が ら 、 「文 法 ・ 訳 読 式 」が 中 心 197 な が ら も 「会 話 や ス ピ ー チ 、 Native teacher に よ る 授 業 な ど が あ っ た 」 と 、被 験 者 の 3 5 % が 回 答 し て い る 。年 代 の 内 訳 は 、5 0 歳 以 上 の 11 % と 、 5 0 歳 未 満 の 5 0 % で あ る 。 つ ま り 、 5 0 歳 以 上 の 大 多 数 と 、 50 歳 未 満 の 半 分 が 、 「文 法 ・ 訳 読 式 中 心 の 教 育 」だ け で 育 っ た が 、 50 歳 未 満 の 半 分 は 、 「文 法 ・ 訳 読 式 中 心 の 教 育 」か ら 次第に脱却しつつあることを示している。そのようなことから、 筆 者 は 、文 法 ・ 訳 読 式 中 心 の 「 英 語 授 業 の 方 法 」 に か な り の 原 因 が 在 る も の と し て も 、そ れ だ け で は 説 明 が つ か な い 、こ れ ま で 見 過 ご さ れ て き た と こ ろ に 、も っ と 根 本 的 な 原 因 が 在 る の で は な い か と 考 え る に 至 っ た 。そ の 原 因 と は 、ま ず 日 本 人 の「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 す る 認 識 」 と 、「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 発 達 に 強 い 影 響 を 与 え る 情 動 」の 、二 つ だ と 、筆 者 は 考 え て い る 。こ の 2 点 については後述する。 「英 語 授 業 の 方 法 」に つ い て は 、 「文 法 ・ 訳 読 式 中 心 」か ら 「会 話 ・ ス ピ ー チ 中 心 」へ と 、 授 業 方 法 を た だ 単 に 変 え さ え す れ ば 良 い と は 考 え て い な い 。そ れ に も ま し て 大 事 な の は 、肯 定 的 な 動 機 づ け を 与 え 続 け る こ と に よ っ て 、根 底 に あ る 肯 定 的 な 情 動 を 引 き だ し 、そ の 結 果 前 向 き な 態 度 が 生 ま れ る よ う な 学 習 環 境 と 指 導 法 を導入し、定着させることである。3 章で述べた幼少時の米国人 経営幹部やニュージーランド在住の日本人学習者 A 君の事例で は 、彼 ら は 、周 囲 か ら の 励 ま し が 肯 定 的 な 動 機 と な っ て 、自 身 の 可 能 性 を 高 め る と い う 肯 定 的 な 情 動 を 引 き 出 し 、諦 め ず 努 力 す る と い う 態 度 を 取 り 続 け る こ と に よ っ て 、自 分 の 願 い を 叶 え た 。ま た 、1 章 2 節 で 言 及 し た 広 島 ト ー ス ト マ ス タ ー ズ・ク ラ ブ の C さ ん の 場 合 に は 、自 分 の 中 に あ る「 間 違 え る こ と が 怖 い 」と い っ た よ う な 「 不 安 」 と い う 否 定 的 な 情 動 を 克 服 す る こ と に よ っ て 、持 て る 力 を 思 う 存 分 発 揮 で き る よ う に な っ た 。筆 者 は 、英 語 指 導 法 に つ い て 考 察 す る 場 合 、情 動 へ 配 慮 し た 指 導 環 境 は 不 可 欠 な 視 点 で あると考える。 198 高等学校2年生の自由記述から次の様なことが読み取れる。 英 語 嫌 い は「 試 験 や 文 法 が 理 解 で き な い 」、 「勉強についていけな い 」な ど そ の 心 理 的 状 況 が 学 習 者 の 不 安 に つ な が っ て い る 点 で あ る 。 さ ら に 、「 人 前 で 話 す 際 に 間 違 い を お か し 、 恥 を か く の で は な い か と 不 安 を 感 じ る が 、A LT な ど に よ り 、間 違 っ て も い い の だ と い う 指 導 環 境 づ く り の お か げ で 、気 を 楽 に し て 人 前 で 話 せ る よ う に な っ た 」と 述 べ て い る 。こ の 点 は 、日 本 の 英 語 教 育 の 特 徴 を 表 し て い る よ う に 思 わ れ る 。つ ま り 、日 本 人 指 導 者 は 文 法 な ど 完 璧 を 求 め る あ ま り 、生 徒 は 人 前 で 英 語 を 話 す こ と に 対 し て 委 縮 し て し ま う 。学 習 者 の 気 持 の あ り 様 を 、指 導 者 自 ら 理 解 す る 必 要 が あ る と 言 え よ う 。知 識 だ け を 習 得 さ せ る の で は な く 、い か に 運 用 させるかに指導者は心を砕くことが大切であろう。 さ ら に 、留 学 経 験 の あ る 大 学 3 回 生 の 自 由 記 述 は 、学 習 者 の 心のあり様の変化を留学前と留学後で明確な違いを示している。 留 学 後 に 改 め て 、自 分 の 英 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 乏 し さ に 気 づ く が 、話 さ ざ る を 得 な い 状 況 に お か れ る と 、文 法 的 に 間 違 い を し て は な ら な い 、恥 ず か し い こ と で あ る な ど と い っ た こ れ までとらわれてきたトラウマのごとき不安の意識を捨てざるを え な い 。「 中 学 校 、 高 校 で 文 法 ば か り を し て い た け ど 、 も っ と s p e a k i n g を 身 に つ け た 方 が い い と 思 っ た 」「 と り あ え ず 、 話 し て み る こ と が 大 事 と 思 い 始 め 、文 法 と か を あ ん ま り 気 に せ ず 話 す よ う に な っ た 」な ど の 記 述 か ら 、ま さ に 日 本 の 英 語 教 育 が 、こ の よ う な 学 習 者 を 育 成 し て き た と い う こ と で あ ろ う 。無 論 、文 法 だ け が 要 因 で は な い 。指 導 者 の 指 導 の 仕 方 、伝 統 的 な 読 み 書 き 偏 重 の 傾 向 、入 試 問 題 、点 数 だ け で 判 断 す る よ う な 評 価 方 法 、更 に 日 本 人 に 特 有 な 性 格 的 特 徴 、個 性 の 主 張 を 良 し と し な か っ た 文 化 的 背 景 な ど 、複 合 的 に 絡 み 合 っ た 結 果 で あ る と も い え よ う 。言 語 は 運 用出来て初めて、ツールとしての目的を果たすものである。4 技 能 の バ ラ ン ス の 取 れ た 統 合 的 指 導 が 基 盤 と な り 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ 199 ョ ン の 潜 在 力 が つ き 、そ れ を う ま く 発 揮 で き る よ う に 作 用 す る の が ポ ジ テ ィ ブ な 情 動 で あ る 。つ ま り プ ラ ス の 情 動 は 良 質 な 潤 滑 油 の よ う な も の で あ る と 考 え る 。 荒 木 は ,プ ラ ス の 情 動 と マ イ ナ ス の 情 動 を 次 の よ う に も 表 現 し て い る 。「 プ ラ ス の 情 動 は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 を 推 進 す る ア ク セ ル と し て 作 用 し 、マ イ ナ ス の 情 動 は ブ レ ー キ と し て 作 用 す る 」 ( 2 0 11 b , p . 7 ) 。 上 述 の 一 つ 目 の 、 日 本 人 の 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 す る 認 識 」( 本 論 文 p . 1 9 6 ) に つ い て は 、 3 章 1 節 で 述 べ た よ う に 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 す る 認 識 は 、洋 の 東 西 で 歴 史 的 に 大 き く 異 な っ て い る 。す な わ ち 、西 洋 で は 「 自 己 主 張 は 良 い 」 と い う 価 値 観 に 支 え ら れ 、一 方 、東 洋 で は 「 自 己 主 張 は 良 く な い 」 と い う 価 値 観 に 支 配 さ れ て き た 。そ し て 、現 代 の グ ロ ー バ ル 化 社 会 と り わ け 国 際 化 し た ビ ジ ネ ス の 世 界 で は 、西 洋 型 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 主 流 で あ り 、そ こ で は 、自 己 主 張 の 得 意 な 者 が 勝 者 と な り 苦 手 な 者 は 敗 者 と な る 。対 峙 す る 両 者 の 利 害 が 対 立 す る 国 際 競 争 の 場 な ど で は 、日 本 人 の 感 覚 で は フ ェ ア で は な い と 思 え る よ う な テ ク ニ ッ ク も 高 度 な 戦 略 と し て 用 い ら れ る 。し か し 、近 代 に 至 る ま で 、学 校 で の 外 国 語( 英 語 )教 育 の 第 一 義 的 な 目 的 を 、知 識・教 養 の 研 鑽 に お い て き た 日 本 で は 、実 用 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 技 能 の 習 得 に 重 き を 置 か な か っ た 。ま た 、教 え る 側 と 教 え ら れ る 側 の 双 方 に 染 み 付 い た 「自 己 主 張 は 避 け た ほ う が 良 い 」と い う 価 値 観 が 、 speaking と listening に よ っ て 意 見 を 戦 わ せ 、 そ れ を 通 し て 互 いに理解し合うという西洋型コミュニケーションを取り入れる ことへの意欲や熱意を阻む根深い抵抗感になったのではないか と考える。そのため、これまで、対話教育などは重要視されず、 デ ィ ベ ー ト や プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 至 っ て は 長 い 間 、度 外 視 さ れ た の で あ ろ う 。ち な み に 同 じ 東 洋 に あ っ て も 韓 国 や 中 国 で は 日 本 と 違 う 道 を 歩 ん で い る よ う に 見 え る 。 王 少 鋒 氏 の 著 書 「日 ・韓 ・中 三 国 の 比 較 文 化 論 」に よ れ ば 、 中 国 で は 個 人 主 張 が 強 く 意 見 を は 200 っ き り 言 う 個 人 主 義 の 国 民 性 が 顕 著 で あ る と さ れ る 。ま た 、多 数 の 韓 国 人 留 学 生 か ら は 、 「韓 国 人 は も の の 考 え 方 が 欧 米 に 近 い 自 己 主 張 の 強 い 個 人 主 義 で あ る 」と 聞 く 。 大 陸 に あ っ て 、 有 史 以 来 何度となく異民族による侵略や支配にさらされたという地政学 的 な 共 通 点 が 、「 生 き 延 び る た め に は 自 己 主 張 す る し か な い 」 と い う 西 洋 型 の 価 値 観 を 韓 国 や 中 国 に も た ら し た も の と 、筆 者 は 考 え て い る 。グ ロ ー バ ル 時 代 を 生 き 抜 く た め に は 、日 本 人 に 染 み 付 い た 「自 己 主 張 は 避 け た ほ う が 良 い 」と い う 価 値 観 を 払 拭 す る こ と が 、積 極 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 る 前 提 と な る 。そ の う え で 、 人 間 の 考 え 方 、行 動 、表 現 を 大 き く 左 右 し て い る 情 動 を プ ラ ス の エネルギーを発揮するエンジンとすることがコミュニケーショ ン力向上に大きな成果をもたらすものと信じる。 二 つ 目 の 、 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 強 い 影 響 を 与 え る 情 動 」 ( 本 論 文 p . 1 9 6 )に つ い て は 、そ れ を 考 察 す る こ と が 、本 研 究 の 、 正 に 目 的 と す る と こ ろ で あ る 。2 章 2 節 で 述 べ た よ う に 、自 分 の 考 え を 明 確 な 論 旨 に 整 理 し 、そ れ を 正 し く 相 手 に 伝 え 、相 手 が 考 えていることを正しく理解するための能力こそがコミュニケー ション力であると考える。更に、3 章 3 節で述べたように、肯定 的 な 動 機 が 、肯 定 的 な 情 動 を 引 き 出 す と 同 時 に 、否 定 的 な 情 動 を 引 き 下 げ 、持 て る 力 を 思 う 存 分 発 揮 で き る よ う に す る こ と が 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 育 成 に つ な が り 、ひ い て は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 成 否 に 強 い 影 響 を 与 え る も の と 考 え て い る 。筆 者 は 、逆 に 、 コミュニケーション力のレベルが高くなったから肯定的な情動 の レベルが高くなったとは言えないだろうかと、一応考えてみ た 。例 を 挙 げ れ ば 、「 l i s t e n i n g や s p e a k i n g が 上 手 に な っ た か ら 、 デ ィ ベ ー ト で 相 手 を 言 い 負 か せ る よ う に な っ た 」と い っ た 具 合 で あ る 。し か し な が ら 、こ の 考 え に は 強 い 違 和 感 が あ る 。l i s t e n i n g や speaking が い く ら 上 手 に な っ て も 、 対 峙 す る 相 手 に ど う 働 き か け る か と い う 論 旨 と 、そ れ を ど う 表 現 す る か と い う 戦 略 は 、何 201 としてもディベートに勝ちたいという肯定的な動機抜きでは生 ま れ て こ な い の で は な い か 。肯 定 的 な 動 機 は 、プ ラ ス の 情 動 レ ベ ル を 引 き 上 げ 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の レ ベ ル を 引 き 上 げ る こ と に つ な が る も の と 考 え る 。但 し 、両 者 は ス パ イ ラ ル な 関 係 に あ る の で は な い か と 、筆 者 は 考 え て い る 。す な わ ち 、肯 定 的 な 情 動 の レベルを引き上げることがコミュニケーション力を引き上げる こ と に つ な が り 、そ れ が ま た 、肯 定 的 な 情 動 の レ ベ ル を 引 き 上 げ る こ と に つ な が り 、肯 定 的 な 動 機 が 触 媒 と な っ て 、連 鎖 し 続 け る の で あ る 。上 記 の 例 で い え ば 、何 と し て も デ ィ ベ ー ト に 勝 ち た い と 努 力 し た 結 果 、 speaking が そ こ そ こ 上 手 に な り 、 ま た そ れ が 嬉 し く て 努 力 を 続 け る 、そ し て 、周 囲 が そ れ を 後 押 し す る と い っ た具合である。 一人ひとりの個性を尊重し自主性を奨励することによって、 学習者に肯定的な動機づけをし続けるような学習環境と指導法 を導入し定着させることが、学習者の肯定的な情動を引き出し、 前 向 き な 態 度 に つ な が る 。そ し て 、そ の 流 れ が 、学 習 者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 対 す る 認 識 を 大 き く 転 換 さ せ 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン力の向上へつながるものと考える。 N. リ ヒ テ ル ズ ( 2010) に よ る と 、 教 育 先 進 国 で あ る オ ラ ン ダ に お け る 教 育 の 特 徴 は 、自 尊 心 と 自 立 心 を 育 て な が ら 、個 々 の 力 を 伸 ば す 教 育 に 力 を 入 れ て い る と 言 う 。子 供 の 自 主 性 を 尊 重 し 自 分 自 分 の 個 性 や 能 力 の 現 状 を 把 握 し 、目 標 を 設 定 す る 。指 導 者 は子供たち一人ひとりのニーズに合わせて能力や個性を伸ばす た め の 支 援 す る 役 割 を 担 う 。画 一 的 な 教 育 、入 試 競 争 に 象 徴 さ れ る点数獲得競争を強いる日本の教育とは根本的に異なる。 ま す ま す 国 際 化 が す す み 、文 化 や 価 値 観 の 多 様 化 す る 現 代 に あ っ て 、日 本 は 、外 国 語 学 習 に 限 ら ず 、単 に 得 点 競 争 に 明 け 暮 れ る 教 育 社 会 か ら 脱 却 し 、個 人 差 を 尊 重 し 、一 人 ひ と り が 、自 信 を 取 り 戻 し 、持 て る 力 を 最 大 発 揮 で き る よ う 、真 に 人 を 育 て る 教 育 202 本 来 の 使 命 を 取 り 戻 す こ と を 期 待 し 、本 研 究 結 果 の 一 端 が そ の 方 向でいささかながらでも役立てば幸いである。 6.4 今 後 の 課 題 本 研 究 の 成 果 を 基 に 、心 理 的 な 側 面 を ふ く め た 実 践 的 な 外 国 語 教 育 指 導 法 に つ な が る 研 究 を 目 指 し て い く 所 存 で あ る が 、引 き 続 き 、本 研 究 テ ー マ と の 関 連 で は 、以 下 を 課 題 と し て 研 究 の 精 度 を 向上させていきたいと考えている。 (1) 本 論 文 で 用 い た 研 究 方 法 を 以 下 の 視 点 で 更 に 充 実 ・調査対象 ・目標言語 ・学習環境 今 回 の 調 査 に 関 し 、E F L 環 境 に あ る 日 本 人 学 習 者 に つ い て は 小 学 生 、中 学 生 、高 校 生 、一 般 大 学 生 、英 語 圏 へ 留 学 経 験 の あ る 大 学 生 、社 会 人 と 、幅 広 い 学 習 者 層 に 及 ん で い る た め 分 析 結 果 は か な り 一 般 化 で き る も の と 考 え る 。一 方 、留 学 生 に 関 し て は 、第 1 章 5 節 1 項、4 章 4 節で述べたように、日本で第一外国語、ま たは第二外国語として日本語を勉強している環境にある。なお、 少 人 数 で あ る が 無 作 為 に 選 択 し た 中 国 人 、ベ ト ナ ム 人 留 学 生 に 対 し て 補 完 調 査 し 確 認 し た よ う に 、情 動 は 目 標 言 語 の 違 い に は 殆 ど 変 わ り な い と い う 結 果 を 得 て い る 。 本 研 究 に お い て EFL, JFSL と い う 異 な る 言 語 環 境 で 比 較 調 査 し た こ と は 、一 つ の ア プ ロ ー チ と し て 第 一 段 階 で は 有 意 義 で あ る と 考 え る 。今 後 の 研 究 段 階 で は 、 必 要 に 応 じ 言 語 環 境 を そ ろ え た 調 査 、例 え ば 、中 国 に お い て 英 語 を 学 習 す る EFL 環 境 の 学 習 者 を 対 象 に 実 施 す る こ と も 視 野 に 入 れている。 203 (2) 新 た な 研 究 方 法 の 開 拓 ・情報収集および調査方法 ・相関性に代わる分析技法 本研究では、統計分析手法として相関性を用いたが、人間 の 微 妙 な 心 の 動 き ・ 変 化 を 図 る う え で 、相 関 性 に 代 わ る よ り 一 層 適 し た 分 析 技 法 が あ る の か 、あ れ ば そ の 新 し い 手 法 を 用 い て 更 に 研究を深めていきたい。 これまでの調査結果を基に、実際に指導にどのように生かし て い け る か が 今 後 の 課 題 で あ る が 、学 習 者 の 情 動 を 観 察 し 、そ れ ぞれに最も適したポジティブな環境に導いていくということが 鍵 と な る 。人 間 に は 個 性 が あ る た め 、抱 く 情 動 に は 一 人 ひ と り 個 人 差 が あ る 、し か も 、そ の 情 動 は 、時 間 や 状 況 、対 峙 す る 相 手 な ど に よ っ て 、受 容 と 拒 絶 の 間 を 揺 れ 動 く 。全 て の 学 習 者 の 情 動 を 、 個 性 を 無 視 し て 画 一 的 に 導 く の で は な く 、一 人 ひ と り の 長 所 を 伸 ば し 短 所 を 抑 え る 視 点 が 必 要 だ と 考 え る 。Dörnyei, Skehan が 指 摘 す る よ う に 、個 人 差 は 心 理 、認 知 、態 度 な ど に 表 れ 、こ れ ら は 学習者のものの見方や、言語学習のスタイルに影響を与える。 以上のことを踏まえ、どのような学習環境が効果的なのか、 い か な る 指 導 法 が 適 し て い る の か 等 、指 導 者 の 在 り 方 に つ い て も 、 今 後 追 求 し な け れ ば な ら な い と 考 え て い る 。ま た 、心 理 学 、ニ ュ ー ロ ・ サ イ エ ン ス な ど を 含 む 幅 広 い 領 域 へ 目 を 向 け 、全 体 像 を つ かむ試みにチャレンジして行きたい。 204 参考文献 A e b e r s o l d , A . J . , & F i e l d , L . M . ( 1 9 9 7 ) . F ro m re a d e r t o re a d i n g t e a c h e r, i s s u e s a n d s t r a t e g i e s f o r s e c o n d l a n g u a g e c l a s s ro o m s , Cambridge: Cambridge University Press. A s h e r, J . ( 1 9 8 1 ) . T h e f e a r o f f o r e i g n l a n g u a g e s . P s y c h o l o g y To d a y 1 5 ( 8 ) . 5 2 - 5 9 . 荒 木 史 子 (2010).「 情 動 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 の 関 係 に つ い て 」 JACET KANSAI Journal 12. 荒 木 史 子 ( 2 0 11 a ) . 「 第 5 章 日 本 人 の 自 尊 心 と 英 語 教 育 :子 ど も に自尊心を持たせて英語力を伸ばす」 『小学校の英語教育』 東 京:明石書店. A r a k i , F. ( 2 0 11 b ) . A c o m p a r a t i v e s t u d y o f e m o t i o n a l i n f l u e n c e s on language learning between Japanese and Chinese. P re s e n t e d a t t h e 1 6 t h w o r l d c o n g re s s o f a p p l i e d l i n g u i s t i c s . B a i l e y, M . K . , & S a v a g e , L . , ( E d s . ) ( 1 9 9 4 ) . N e w w a y s i n t e a c h i n g s p e a k i n g . Vi r g i n i a : Te a c h e r s o f E n g l i s h t o s p e a k e r s o f o t h e r languages, Inc. B a i l e y, M . K . ( 1 9 8 3 ) . C o m p e t i t i v e n e s s a n d a n x i e t y i n a d u l t second language learning: Looing at and through the diary studies. In Seliger & Long 1983 Benesse 教 育 研 究 開 発 セ ン タ ー (2012). 「 調 査 デ ー タ ク リ ッ プ ! 子 ど も と 教 育 ― 英 語 教 育 」 2012 年 6 月 2 7 日 検 索 , http://benesse.jp/berd/data/dataclip/clip0013/index.html Brown, H.D. (2000). Principles of language learning and teaching. ( 4 t h e d . ) . N e w Yo r k : P e a r s o n E d u c a t i o n . Brown, H.D. (2001). Te a c h i n g by principles: An interactive a p p ro a c h t o l a n g u a g e p e d a g o g y ( 2 n d e d . ) . N e w Yo r k : L o n g m a n . バ ト ラ ー 後 藤 裕 子 ( 2 0 0 5 ) . 『 日 本 の 小 学 校 英 語 を 考 え る 』東 京 : 205 三省堂. Canale, M., & Swain, M. (1980). Theoretical bases of communicative approaches to second language teaching and testing. Applied Linguistics, 1 (1),1-47. 陳 舜 臣 (1984). 『 日 本 人 と 中 国 人 』 東 京 : 集 英 社 文 庫 . C l é m e n t , R . ( 1 9 8 0 ) . E t h n i c i t y, c o n t a c t a n d c o m m u n i c a t i v e c o m p e t e n c e i n a s e c o n d l a n g u a g e . P re s e n t e d a t t h e f i r s t i n t e r n a t i o n a l c o n f e re n c e o n s o c i a l p s y c h o l o g y & l a n g u a g e h e l d a t University of Bristol, England. 147-154. Clément, R, Z. Dörnyei, & K. A. Noels (1994). self-confidence language and group cohesion in Motivation, the foreign classroom.Language Learning 44. 417-448. Coopersmith, S. (1967). The antecedents of self-esteem. San F r a n c i s c o : W. H . F r e e m a n . Crystal,D.(2004).The Cambridge encyclopaedia of the English language (2nd ed.). U.K.: University of Cambridge. 大 学 英 語 教 育 学 会 実 態 調 査 委 員 会 ( 2 0 0 3 ) .『 わ が 国 の 外 国 語・英 語 教 育 に 関 す る 実 態 の 総 合 的 研 究 』 東 京 :丹 精 社 D ö r n e y , Z . ( 2 0 0 1 ) . M o t i v a t i o n a l s t r a t e g i e s i n t h e l a n g u a g e c l a s s ro o m . 邦 訳 米 山 朝 二 ・ 関 昭 典 (2005). 『 動 機 づ け を 高 め る 英 語 指 導 ストラテジー3』東京:大修館書店. D ö r n e y , Z . ( 2 0 0 5 ) . T h e p s y c h o l o g y o f t h e l a n g u a g e l e a r n e r. I n d i v i d u a l d i ff e re n c e s i n s e c o n d l a n g u a g e a c q u i s i t i o n . N e w J e r s e y : L a w r e n c e Eribaum Associates, Inc. D u l a y, H . , B u r t , M . , & K r a s h e n , S . ( 1 9 8 2 ) . Language two. New Yo r k : O x f o r d U n i v e r s i t y P r e s s . E l y, C . ( 1 9 8 6 ) . A n a n a l y s i s o f d i s c o m f o r t , r i s k t a k i n g , s o c i a b i l i t y, and motivation in the L2 classroom. Language Learning 36:1-25 206 榎 本 博 明 ( 2010) . 910, pp.5-9,「 子 ど も の 自 己 肯 定 感 の 持 つ 意 味 」『 児 童 心 理 』 東 京 : 金 子 書 房 . 深 田 博 巳 ( 編 著 ) (1999). 『 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 心 理 学 ― 心 理 学 的コミュニケーション論への招待』. 京都:北大路書房. G a r d n e r, H . ( 1 9 8 3 ) . F r a m e s o f m i n d : T h e t h e o r y o f m u l t i p l e i n t e l l i g e n c e s . N e w Yo r k : B a s i c B o o k s . G a r d n e r, R . C . , & L a m b e r t , W. E . ( 1 9 7 2 ) . A t t i t u d e s a n d m o t i v a t i o n i n second language learning. Massachusetts: Newbury House. G a r d n e r, R.C., & MacIntyre, P. D. (1992). A s t u d e n t ’s contributions to second language learning. Part I:cognitive v a r i a b l e . L a n g u a g e Te a c h i n g , 2 5 , 2 11 - 2 2 0 G a r d n e r, R . C . , & M a c I n t y r e , P. D . ( 1 9 9 3 ) . O n t h e m e a s u r e m e n t of affective variable in second language learning.Language Learning, 43, 157-194 G a s s , S . M . , & S e l i n k e r, L . ( 1 9 9 4 ) . S e c o n d l a n g u a g e a c q u i s i t i o n , a n i n t ro d u c t o r y c o u r s e . N e w J e r s e s y : L a w r e n c e E r l b a u m Associates. Goleman, D. (1995). Emotional intelligence: Why it can matter m o re t h a n I Q , N e w Yo r k : B a n t a m B o o k s . 邦 訳 : 土 屋 京 子 ( 1 9 9 6 ) .『 こ こ ろ の 知 能 指 数 』 東 京 : 講 談 社 . Griffin, E.M. (2006). First look at communication theory (6th ed.). N e w Yo r k : M c G r a w - H i l l . G u i o r a , Z . A . , B r a n n o n , R o b e r t C . , & D u l l , C . Y. ( 1 9 7 2 ) . Empathy and second language learning. Language Learning 2 2 : 111 - 1 3 0 . G u i o r a , Z . A . , A c t o n , R . W. , E r a n d , R . , & S t r i c k l a n d , W. F. J r. , (1980). The permeability Effects of of benzodiazepine language Learning 30: 351-363. 207 ego (valium) boundaries. on Language 波 多 野 五 三 ( 2 0 11 ) . 「 英 語 教 師 に 求 め ら れ る 英 語 力 - C E F R ( ヨ ー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 )の 言 語 能 力 観 を 反 映 し た 授 業 で の 英 語 19 . 99-148. 使 用 - 」『 広 島 女 学 院 大 学 英 語 英 米 文 学 研 究 』 広 島 :広 島 女 学 院 大 学 文 学 部 英 米 言 語 文 化 学 科 . 林 桂 子( 1 9 9 4 ). L e a n e r s t r a t e g i e s i n s e c o n d l a n g u a g e l e a r n i n g . 『 関 西 外 国 語 大 学 研 究 論 集 』 59, 137-157 大 阪 : 関 西 外 国 語大学. 林 桂 子 (1999a). 「 The effects of listening and dictation activities on grammatical correction」 大 学 英 語 教 育 学 会 ( JACET 関 西 支 部 ) 第 5 次 (1997-1999)研 究 プ ロ ジ ェ ク ト , ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究 会 紀 要 ,大 学 に お け る ラ イ テ ィ ン グ 指 導 の 課 題 :実 践 研 究 の 報 告 」 4, 33-42. 林 桂 子 ( 1 9 9 9 b ) .「 第 1 0 章 言 語 獲 得 と 外 国 語 学 習 :こ と ば の 獲 得 と 学 習 の し く み 」『 こ と ば の 世 界 ― 英 語 学 入 門 』 ( 第 2 版 ) 藤 井 健 夫 ・ 大 島 新 (共 編 ).大 阪 :大 阪 教 育 図 書 . 林 桂 子 (2002).『 外 国 語 学 習 に お け る 認 知 能 力 の 役 割 ‐ 認 知 発 達 と 親 子 言 語 相 互 交 渉 』和 歌 山 : 和 歌 山 大 学 教 育 学 部 大 学 特 別 経費成果報告書. 林 桂 子 ( 2 0 0 4 ) .『 外 国 語 学 習 に 影 響 を 及 ぼ す 親 と 子 の コ ミ ュ ニ ケーション』東京:風間書房. 林 桂 子 ( 編 著 ) ( 2 0 0 8 ) . 「 脳 科 学 と 外 国 語 指 導 」『 言 語 ・ 文 化 研 究 諸相-藤井健夫教授退任記念論集』大阪:大阪教育図書. 林 桂 子 (2009). 「 リ ー デ ィ ン グ と ラ イ テ ィ ン グ の 統 合 的 ア プ ロ ー チ―理解のための指導を目指して―」 『 JACET 関 西 支 部 ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究 会 紀 要 』 8, 1-14. 林 桂 子 ( 2011) .『 MI 理 論 を 応 用 し た 英 語 指 導 法 : 個 性 を 尊 重 し 理解を深めあう協同学習』東京:くろしお出版. 林 さ と 子 他 (2006).『 こ と ば を 学 ぶ 一 人 ひ と り を 理 解 す る 第 二 言 語学習と個別性』横浜:津田塾大学言語文化研究所. 208 広 島 Y M C A 国 際 ビ ジ ネ ス 専 門 学 校 日 本 語 科 H P, 2 0 1 2 年 1 月 2 0 日 検 索 , h t t p : / / w w w. h y m c a . j p / j p Hofstede, G. ( 1 9 9 1 ) . C u l t u re s a n d o rg a n i z a t i o n s , s o f t w a re o f t h e m i n d . N e w Yo r k : M c G r a w - H i l l . H u m p h e r e y s , T. ( 1 9 9 6 ) . Self-Esteem- the key to your c h i l d ’s education, Dublin: ColourBooks Ltd. イ ビ チ ャ ・ オ シ ム (2007). 『 日 本 人 よ ! 』 東 京 :新 潮 社 磯 博 行 ・ 杉 岡 幸 三 ( 編 )( 1 9 9 4 ) .『 情 動 ・ 学 習 ・ 脳 』 大 阪 : 二 瓶 社. 岩 井 千 秋 ( 2 0 11 ) . Oral presentation and performance (OPP). 第 50 回 JACET 国 際 大 会 ポ ス タ ー セ ッ シ ョ ン 資 料 . JACET 関 西 支 部 ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究 会 ( 1999) 第 5 次( 1 9 9 7 - 1 9 9 9 )研 究 プ ロ ジ ェ ク ト ラ イ テ ィ ン グ 指 導 研 究会紀要第 4 号 K a m , H . W. , & Wo n g . R . Y. L . ( 2 0 0 4 ) E n g l i s h l a n g u a g e t e a c h i n g i n e a s t Asia today. (2nd ed.) Singapore: Eastern Universities Press 河 添 恵 子 ( 2 0 0 5 ) . 「 遅 れ る 日 本 ? 進 む ア ジ ア ! 」『 ア ジ ア 英 語 教 育 最 前 線 』 東 京 :三 修 社 . Khan, S. (1969). Affective correlates of academic achievement. J o u r n a l o f E d u c a t i o n a l P s y c h o l o g y. 6 0 : 2 1 6 - 2 2 . 小 池 生 夫 他 (2007). 「 第 二 言 語 習 得 研 究 を 基 盤 と す る 小 、 中 , 高 、大 の 連 携 を は か る 英 語 教 育 の 先 導 的 基 礎 研 究 」」企 業 が 求 める英語力調査報告書』 千葉:明海大学. 小 池 生 夫 他 ( 2 0 0 8 a ) .「 グ ロ ー バ ル 時 代 に お け る 日 本 人 の 英 語 コ ミュケーション能力の到達目標のナショナル・スタンダード 化を目指して」 『 明 海 大 学 大 学 院 応 用 言 語 学 研 究 科 紀 要・応 用 言 語 学 研 究 』 10, 55-65,千 葉 : 明 海 大 学 . 小 池 生 夫 ( 2 0 0 8 b ) . 「 世 界 基 準 を 見 据 え た 英 語 教 育 」『 英 語 展 望 』 , 11 6 , 1 4 - 2 3 209 小 池 生 夫 ( 2 0 0 9 ) .「 C E F R と 日 本 の 英 語 教 育 の 課 題 」『 英 語 展 望 』 , 11 7 , 1 4 - 1 9 K o n d o , S . , & Ya n g , Y. ( 2 0 0 6 ) . P e r c e i v e d e f f e c t i v e n e s s o f language anxiety coping: The case of English learning students in Japan. JACET Bulletin, 42. 国 際 ビ ジ ネ ス コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 協 会 ( 2 0 11 ) 「 T O E I C テ ス ト D ATA & A N A LY S I S 2 0 1 0 」 2 0 11 年 11 月 2 0 日 検 索 . http://www.toeic.or.jp/toeic/data/data_ave01.html?sco re_id=0000000072 小 塩 真 司 (2007). 『 SPSS と Amos に よ る 心 理 ・ 調 査 デ ー タ 解 析 』 東 京 :東 京 図 書 K o y a m a , Y. , & K i m u r a , T. ( 2 0 11 ) . L i n k i n g c a n - d o s t a t e m e n t s w i t h l a n g a u g e t e s t s u s i n g n e u r a l t e s t i n g t h e o r y. P r e s e n t e d a t t h e JACET 50th Commemorative Internatioanl Convention. Krashen, S.D. (1985). The input hypothesis: issues and implications. London: Longman. L a r s e n - F r e e m a n , D . , & L o n g , M . H . ( 1 9 9 1 ) . A n i n t ro d u c t i o n t o s e c o n d l a n g u a g e a c q u i s i t i o n re s e a rc h . London: Longman. 邦 訳 : 牧 野 高 吉 ・ 萬 谷 隆 一 ・ 大 場 浩 正 ( 1 9 9 5 ):『 第 2 言 語 習 得への招待』 LeDoux J. E. 東京:鷹書房弓プレス. (2003). The emotional brain. 情 動 の 脳 科 学 . 邦 訳 : 松 本 元 ・ 川 村 光 毅 他 .『 エ モ ー シ ョ ナ ル ・ ブ レ イ ン 』 . 東 京:東京大学出版会. Lenneburg, E. H. (1967). Biological foundation of language. New Yo r k : J o h n Wi l e y. M a c I n t y r e , P. D . , & G a r d n e r, R . C . ( 1 9 9 4 ) . T h e s u b t l e e f f e c t s o f language anxiety on cognitive processing in the second language. Language Learning, 44. 283-305. M a c I n t y r e , P. D . ( 2 0 0 2 ) . M o t i v a t i o n , a n x i e t y a n d e m o t i o n i n s e c o n d 210 language acquisition. Amsterdam: John Benjamins. McLaughlin, B. (1985). Second-language acquisition in childhood (2nd ed.). New Jersey:Lawrence Eribaum Associates, Inc. 拝 田 清 ( 2 0 11 ) . 複 言 語 主 義 の 理 念 と 大 学 英 語 教 育 : ヨ ー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 (CEFR)導 入 の 在 り 方 を 考 え る , JACET 第 50 回全国大会口頭発表資料. 文 部 科 学 省 . (2008). 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 外国語活動編. 2010 年 3 月 10 日 検 索 . h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / a _ m e n u / s h o t o u / n e w - C S / y o u r y o u / s y o kaisetsu/index.htm. 文 部 科 学 省 ( 2009) .「中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 ・ 外 国 語 編 」2010 年 3 月 15 日 検 索 . 文 部 科 学 省 ( 2009) .「高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 ・ 外 国 語 編 ・ 英 語 編 」2010 年 3 月 15 日 検 索 . 文 部 科 学 省 ( 2 0 11 ) . 報 道 発 表 「 図 表 で 見 る O E C D イ ン デ ィ ケ ー タ ー ( 2 0 11 年 度 ) 」 ( E d u c a t i o n a t a g l a n c e ) 2 0 11 年 11 月 3 日 検 索 . h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / b _ m e n u / h o u d o u / 2 2 / 0 9 / _ _ i c s F i l e s / afieldfile/2010/09/07/1297267_01_1.pdf#search 茂 木 健 一 郎 ( 2005) .『 脳 と 創 造 性 』 東 京 : PHP 研 究 所 . 向 後 秀 明 (2012). 「 新 学 習 指 導 要 領 と 5 つ の 提 言 (2012)を 考 え る 」 英 語 教 育 セ ミ ナ ー <広 島 > . 2012, May 26 M u n o z , C . ( E d . ) ( 2 0 0 6 ) . A g e a n d t h e r a t e o f f o re i g n l a n g u a g e l e a r n i n g . N e w Yo r k : M u l t i l i n g u a l M a t t e r s L t d . 岡 秀 夫 ・ 川 成 美 香 ・ 吉 田 章 人 ( 2 0 11 ) . 「ジャパン・スタンダ ー ド の 開 発 ― CEFR 日 本 へ の 適 用 」 JACET 全 国 大 会 第 50 回 発表資料. 大 森 裕 實 ( 編 著 ) (2006).「 臨 界 期 仮 説 〔 C P H 〕 基 本 文 献 資 料 集 」 . JACET CPH と SLA 研 究 会 . 愛 知 : 愛 知 県 立 大 学 . 小 野 武 年 ( 2 0 0 5 )「 3 章 : 心 と は 何 な の だ ろ う か 」『 脳 は ど こ ま で 211 わかったか』東京:朝日新聞社. 王 少 鋒 ( 2 0 0 2 ) . 『 日 ・ 韓 ・ 中 三 国 の 比 較 文 化 論 』東 京 : 明 石 書 店 . 大 谷 泰 照 ・ 林 桂 子 ・ 相 川 真 佐 夫・ 東 真 須 美 ・ 沖 原 勝 昭 ・ 河 合 忠 仁 ・ 竹 内 慶 子 ・ 武 久 文 代 編 著( 2004) 『 世 界 の 外 国 語 教 育 政 策 』東 京 :東 信 堂 . 大谷泰照・杉谷眞佐子・脇田博文・橋本武・林桂子・三好康子編 著 (2010). 『 EU の 言 語 教 育 政 策 』 東 京 : く ろ し お 出 版 . Oxford, L.R. (1990). Language learning Boston: strategies. Heinle & Heinle Publishers. Oxford, L.R.(1999). Anxiety and the language learner :New insights. In Arnold (ed.), Affect in languge learning (pp.58-67).Cambridge:Cambridge University Press. P a u l , D . ( 2 0 0 3 ) . Te a c h i n g E n g l i s h t o c h i l d re n i n A s i a . Singapore: L o n g m a n A s i a E LT. Piaget, J. (1964). Six études de psychologie. 邦 訳 :滝 沢 武 久 (1968)『 思 考 の 心 理 学 』 東 京 :み す ず 書 房 . リ ヒ テ ル ズ 直 子 (2010). 『 オ ラ ン ダ の 共 生 教 育 』 東 京 :平 凡 社 R e i d , J( . 2 0 0 5 ). L e a r n i n g s t y l e s i n t h e E S L / E F L c l a s s ro o m . B o s t o n : Heinle & Heinle Publishers. R i c h a r d s , J . C . ( 1 9 9 7 ) . F ro m re a d e r t o re a d i n g t e a c h e r, i s s u e s a n d strategies for second language c l a s s ro o m s . Cambridge: Cambridge University Press. R i c h a r d s , J . C . , & R o d g e r s , T. S . ( 2 0 0 1 ) . A p p ro a c h e s a n d m e t h o d s i n language teaching. (2nd ed.). Cambridge:Cambridge University Press R o b i n s o n , P. ( E d . ) ( 2 0 0 2 ) . I n d i v i d u a l d i ff e re n c e s a n d i n s t r u c t e d language learning. Amsterdam: John Benjamins. Savignon, J.S.(1983).Communicative competence: c l a s s ro o m p r a c t i c e . N e w Yo r k : L o n g m a n . 212 Theory and S c o v e l , T. ( 1 9 7 8 ) . T h e e f f e c t o f a f f e c t o n f o r e i g n l a n g u a g e learning:review of the anxiety research. Language Leaning, 28, 129-142. 塩 澤 利 雄 ・ 伊 部 哲 ・園 城 寺 信 一 ・ 小 泉 仁( 2005) 『新英語科教育の 展 開 』 (新 訂 版 )東 京 :英 潮 社 Steinberg, D.D. (1982). Psycholinguistics: language, mind and world, London: Longman 邦 訳 : 国 広 哲 弥 ・ 鈴 木 敏 昭 (1988)『 心 理 言 語 学 - 思 考 と 言 語 教育-』東京:研究社. S k e h a n , P. ( 1 9 9 8 ) . A c o g n i t i v e a p p ro a c h t o l a n g u a g e l e a r n i n g . Oxford: Oxford University Press. S t r o z e r, J.R. (1994). Language acquisition after p u b e r t y. Wa s h i n t o n , D . C : G e o r g e t o w n U n i v e r s i t y P r e s s . 邦 訳 :木 下 耕 児 (2001). 「思 春 期 を め ぐ る 脳 の 言 語 機 能 」『 言 語 獲得から言語習得へ』東京:松柏社. 杉 谷 眞 佐 子 ( 2 0 1 0 ) . 「『 E U の 言 語 教 育 政 策 』 関 連 事 項 の 解 説 」 大 谷 泰 照 他 ( 編 著 )『 E U の 言 語 教 育 政 策 』東 京 : く ろ し お 出 版 . 住 政 二 郎 (2012)「 17 章 質的研究入門―基盤概念を知るには」 『 外 国 語 教 育 研 究 ハ ン ド ブ ッ ク -研 究 手 法 の よ り 良 い 理 解 の た め に -』 竹 内 理 ・ 水 本 篤 (編 著 ), 東 京 : 松 柏 社 . 鈴 木 清 (編 著 )( 1991) .『 心 理 学 : 経 験 と 行 動 の 科 学 』 京 都 :ナ カ ニシ出版. 只木徹 (2008). 「 事 例 研 究 : 名 城 大 学 英 語 教 育 プ ロ グ ラ ム と ヨ ー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 組 み 」『 グ ロ ー バ ル な 英 語 力 を 求 め て 』 東 京 : 大 学 英 語 教 育 学 会 (JACET) 第 47 回 全 国 大 会 口 頭発表資料. Ta d a k i , T. ( 2 0 11 ) . C h a l l e n g e s o f a C E F R b a s e d p r o g r a m . P re s e n t e d at the JACET 50th Convention. 213 Commemorative Internatioanl 田 中 幸 子 ・ 春 原 憲 一 郎 (2006)「 5 章 性 格 ・ 情 緒 要 因 」『 第 二 言 語 学 習 と 個 別 性 』 横 浜 :春 風 社 竹 内 理 ・ 水 本 篤 ( 編 著 )( 2 0 1 2 ).「『 外 国 語 教 育 研 究 ハ ン ド ブ ッ ク 』 -研 究 手 法 の よ り 良 い 理 解 の た め に -」 東 京 : 松 柏 社 . Tr u s c o t t , J . ( 1 9 9 6 ) . T h e c a s e a g a i n s t g r a m m a r c o r r e c t i o n i n L 2 writing classes. Language Learning. 46 (2), 327-369. 塚本三夫 (1985). 『 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 論 理 と 構 造 』 東 京 : サ イ エ ン ス 社 . 1-48. Tu d o r, I. (2001). The dynamics of the language c l a s s ro o m . Cambridge: Cambridge University Press. Wi d d o w s o n , H . G . ( 1 9 7 8 ) . Te a c h i n g l a n g u a g e a s c o m m u n i c a t i o n . Oxford: Oxford University Press. 邦 訳 : 東 後 勝 明 ・ 西 出 公 之( 1991) 『コミュニケーションのた めの言語教育』東京:研究社. 八 島 智 子 ・ 竹 内 理 ( 監 訳 )( 2 0 0 6 ) .『 外 国 語 教 育 学 の た め の 質 問 紙調査入門』東京:松柏社. 八 島 智 子 ( 2008) .『 外 国 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 情 意 と 動 機 』 大阪:関西大学出版部. 八 島 智 子 (2009). 『 海 外 研 修 に よ る 英 語 情 意 要 因 の 変 化 :国 際 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 の 場 合 』 JACET Journal, 49, 57-69. 吉 島 茂 ・ 大 橋 理 枝 他 ( 訳 ・ 編 ) (2004). 『 外 国 語 教 育 II 外 国 語 の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠』東京: 朝日出版社. 柳 瀬 陽 介 ( 2 0 0 6 ) .「 英 語 教 育 内 容 へ の 指 針 」『 第 二 言 語 コ ミ ュ ニ ケ ーション力に関する理論的考察』広島:渓水社. 読 売 新 聞( 2 0 1 2 ).「 教 育 ル ネ サ ン ス ・ 英 語 で 教 え る - 授 業 改 革 : 入 試 と 両 立 」 (6 月 13 日 ). 読 売 新 聞 ( 2012) .「 教 育 ル ネ サ ン ス ・ 英 語 で 教 え る - 対 話 に 文 法 力 は 必 須 」 (6 月 23 日 ). 214 付録 調査の構成 Part I:英語学習に関すること Part II:情動(emotion)に関すること Part III:英語力/日本語力に関する自己申告 社会人・大学学部1回生用 Part I: 英語学習に関すること 該当する項目を一つ選び、その番号を回答欄へ記入して下さい。その他に該当する場合は( 具体的にご記入下さい。 )の中へ 1.職業は? 回答( ) (1)会社員(外国語・英語使用) (2)会社員(外国語・英語使用なし) (3)小・中・高・大学教員(外国語・英語使用) (4)小・中・高・大学教員(外国語・英語使用なし) (5)学生(外国語・英語学習あり) (6)学生(外国語・英語学習なし) (7)国際交流関連職員 (8)公務員(外国語・英語使用) (9)公務員 (外国語・英語使用なし) (10) その他( ) 2.性別は? 回答( ) (1)男性 (2)女性 3.年齢層は? 回答( ) (1)10~20 代 (2)30~40 代 (3)50~60 代 (4)60 代以上 4.英語を勉強し始めて何年になりますか? 回答( ) (1)6~10 年 (2)10~20 年 (3)20 年以上 5.これまでに以下の試験を受けたことがあれば、 差し支えなければそのスコアまたは級を、回答欄へ記入してください。 (ア)TOEICのスコア 回答( ) (イ)TOFLEのスコア 回答( ) (ウ)IELTSのスコア 回答( ) (エ)英検の級 回答( ) (オ)その他(種類とスコア/級など( ) 6.英語は日常的に使いますか? 回答( ) (1)仕事で使用している (2)趣味で勉強している (3)海外旅行などでよく使う (4)外国人をホームステイ受け入れで使用する (5)学校の勉強で使用する (6)友人が外国人であるため使用する (7)英語関連クラブに入っている (8)その他 (具体的に; ) 7.英語圏への留学や海外出張の経験がありますか? (ア)留学経験又は海外駐在経験があればその期間は? 回答( ) (3)3年 (4)4年 (5)5年以上 (1)1年 (2)2年 (イ)海外出張経験があればその回数は? 回答( ) (1)1~5回 (2)5~10 回 (3)10~20 回 (4)それ以上 8.英語と今日までかかわってきた動機はなんですか? 回答( ) (1)英語が好きだから (2)試験に合格したいから (3)仕事上必要だから (4)外国の文化を知り、外国人と不自由なく話したいから (5)英語が上達すると昇進の可能性が高いから (6)その他 (具体的に; ) 中学校、高校、大学での英語の授業について思い出して回答してください。 9.中学校および高校ではどのようなクラス分けでしたか? (ア)英語クラスの人数は何人程度でしたか? 回答: 中学( ) 、高校( ) 215 (1)20人程度 (2)30~40人 (3)40~50人 (4)50人以上 (イ) 出身校分類(私立、国・公立)および所在地(県)はどこですか? (1)私立 (2)国・公立 回答: 中学( )-( )県 高校( )-( )県 ) 10.英語の授業はどのような内容でしたか? 複数回答可( (1)文法・訳読式が中心であった (2)会話の授業があった (3)Native teacher または ALT(英語指導助手)による授業から刺激を受けた (4)ディベートやパブリック・スピーチなどを取り入れた授業があった (5)その他 (具体的に; ) 11.英語の授業はどのような形態でしたか? 回答 ( ) (1)得意分野別にグループ分けしていた(例;speaking グループ、writing グループなど) (2)試験の成績別にグループ分けしていた (3)ペアワークやグループワークを取り入れた授業があった (4)得意分野別や成績別などのグループ分けは一切なかった (5)その他 (具体的に; ) 12.英語の先生はどんな先生でしたか? 回答( ) (1)発音にきびしい (2)Speaking に力を入れた (3)文法を詳細に教えた (4)テキスト以外にもいろいろ工夫した教材をもちいた (5)生徒のレベルに応じてきめ細かく指導した (6)英語だけでなく、外国の文化を紹介した (7)その他 (具体的に; ) 13.以上のような授業を受けた結果、自分はどう変わりましたか? 回答( ) (1)英語が好きになった (2)どちらかといえば好きになった (3)英語をもっと勉強したいと思った (4)英語の必要性を感じた (5)どちらかといえば嫌いになった (6)大嫌いになった 13.で(1)または(2) (好きになった)と回答した方へ 14.英語が好きになった理由は何ですか? 回答( ) (1)先生が誤りに対して寛容であったから (2)試験の成績が良かったから (3)先生がよくほめてくれたから (4)先生の教え方が楽しかったから (5)その他 (具体的に; ) 15.英語を熱心に勉強するきっかけはなんですか? 回答( ) (1)外国映画を英語で理解したかったから (2)外国人と友達になって自由に話せるようになりたかったから (3)外国旅行するとき言葉で困らないようになりたかったから (4)受験や就職の役に立つと思ったから (5)その他 (具体的に; ) 16.4技能(reading, listening, writing, speaking)のうちどれが好き・得意ですか? いちばん好きな・得意な順に、1から4までの番号を( )の中へ記入して下さい。 ( )reading ( ) listening ( ) writing ( ) speaking 16.で Speaking を 1 番(いちばん好き・得意)と回答した方へ 17.Speaking がいちばん好きな理由はなんですか? 回答 ( ) (1)人前で話すのが好きだから (2)英語の発音に自信があるから (3)話の主導権をとれるから (4)相手の反応をみながら話しをできるから (5)相手の考えを聞きだすことができるから (6)その他 (具体的に; ) 16.で Speaking を4番(いちばん嫌い・にがて)と回答した方へ 18.Speaking がいちばん嫌い、にがてな理由は何ですか? 回答( ) (1)人前で話すのは恥ずかしいから (2)人前で話すとあがるから (3)英語の発音に自信がないから (4)どう話せば相手に通じるか考えが纏まらないから (5)変な英語だと相手から笑われたり、ばかにされたりしないかと不安だから (6)その他(具体的に; ) 16.で Listening を 1 番(一番好き・得意)と回答した方へ 216 19.Listening が好きな理由は何ですか? 回答( ) (1)人の話を聞くのが好きだから (2)話すより聞くほうが気が楽だから (3)自分が話す前に相手の考えを正しく理解したいから (4)人の話がきちんと聞き取れたら自信になるから (5)その他 (具体的に; ) 16.で Listening を 4 番(一番嫌い・にがて)と回答した方へ 20.Listening が嫌い、にがてな理由はなんですか? 回答( ) (1)人の話を聞くのが煩わしいから (2)人の話をきちんと聞き取れなくて、人に笑われたり、ばかにされたら嫌だから (3)予備知識や興味・関心のある話題でなければ、ちゃんと聞き取れないから (4)反論されそうな相手だと話を聞く気が失せるから (5)その他(具体的に; ) 13.で(5)または(6) (嫌いになった)と回答した方へ 21.英語が嫌いになった理由は何ですか? 回答 ( ) (1)発音を何度も訂正されたから (2)文法が分かり難かったから (3)人前で話すのが嫌だったから (4)先生に叱られたり、クラスの人に笑われたりしたから (5)試験の点数が悪かったから (6)その他(具体的に; ) これまでのご経験で、英語 communication 力の向上に最も役立った勉強法はどんなものですか? 下のテキストボックスへご自由に記述下さい。 引き続き次ページの Part II: 情動(emotion)に関すること へお進み下さい。 217 Part II: 情動(emotion)に関すること 下表(1)~(40)の 40 項目に対し、お手数ですがもれなく、下記1,2,3,4の選択肢の中から現在のあなたの 心境に当てはまる番号を一つだけ選択し回答欄へ記入して下さい。あまり謙虚にならず、率直にお答え下さい。 1 ↓ まったくそうでない (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) 2 ↓ まあまあそうでない 3 ↓ まあまあそうである 4 ↓ まったくそのとおりである 項 目 回答 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信がある。 自分は speaking が得意である。 自分の話を受け入れるよう相手を説得しようとする。 問題解決に必要な意見は主張する。 英語での話し方が上手とほめられて自信がついた。 人に笑われても気にせずしゃべる。 発音、文法、語彙の誤りは気にせずしゃべる 自分の英語力が伸びると思うと誤りを指摘されても気にせずしゃべる。 人が理解するかどうか気にせずしゃべる。 意味内容が重要であれば臆せず話すことが大切と言われて話すようになった。 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信が持てない。 人前で話すばあい、間違いをするのではないかと不安になる。 試験や時間制限内に話そうとすると、自分自身をうまく表現できない。 公式な場で話す際、あがる。 発音、語彙、文法などの間違いを指摘されてから話すのがいやになってあまりしゃべらない。 外国の人や文化を理解するおもしろさを教えられ、外国語(英語)を勉強している。 他人と一緒にグループ・ワークをするのが好きである。 他人の話を聞くのが好きである。 他人の話に共感しやすい。 相互理解に重点を置くことが大切と聞いたことから、理解に焦点を置くようになった。 義務感からこの言語(英語)を勉強している。 自分の殻に閉じこもり、他の人から距離を置く。 控えめな性格である為、人前で口数が少ない。 予期せぬことに即答できない。 間違いをする事がはづかしいので、なるべく話さないようにする。 時代のニーズに対応するため communication 力をみがいている。 誰とでも臆することなく話ができる。 自分の存在を口頭でアピールするのが上手と思う。 自分から進んで他人との communication をはかる。 自分の話を受け入れてもらえるよう積極的に相手に働きかける。 外国文化等に関心があるが、communication のツールである英語がなかなかうまくならない。 自分の発言に対し反省しがちである。 グループで話し合うことが苦手である。 人前で話をするのが恥ずかしい。 正しいかどうか意識的に自己確認しながら話すタイプである。 英語の Speaking 力が伸びないが、継続が大事と教えられ、ねばりづよく勉強を続けている。 相手の話を理解しようとする。 意味内容を理解してもらえなくても気にしない。 語彙、文法の正誤にこだわらない。 人の誤り(発音、文法、語彙)に対して無頓着なほうである。 218 Part III: 英語力に関する自己申告 (横軸の各技能について、あなたに最も近いと思うレベルを A1~C2 の中からひとつ選び、その記号を一番下の解答欄に記入して下さい) 技 能 理解すること 聞くこと 読むこと ゆっくり、はっきりと 国名や地名、駅名、案 話してもらえば、日常 内表示など日常的に A1 的によく使われる単 よく使われる単語や 語や語句を聞き取れ 単純な文を理解でき る。 る。 日常的によく使われ 簡単なパンフレット る簡単なメッセージ や商品カタログ、メニ や短いアナウンスの ュー、予定表などか A2 要点を聞き取れる。 ら、情報を取り出せ る。簡単な短い個人的 な書簡は理解できる。 身近な話題について、 日常語で書かれた仕 ゆっくりとした明瞭 事関連の内容なら理 な話し方であれば、ラ 解できる。出来事、感 B1 ジオやテレビ番組の 情、希望など表現した 要点を理解できる。 書簡を理解できる。 話すこと やり取り 表現 ゆっくり、はっきりと どこに住んでいるか 話してもらい、聞き直 や、知っている人たち しや助け舟を出して について簡単な語句 もらえば、簡単な言葉 や文を使い表現でき でやり取りできる。 る。 身近な話題や活動に 家族、周囲の人々、居 ついて話し合いがで 住条件、学歴、職歴な きる。短い社交的なや ど簡単な言葉で一連 り取りができる。 の語句や文を使って 説明できる。 当該言語圏を旅行中 通常起こる状況に対 処できる。日常生活に 関連あること、個人的 な関心事について、準 備なしで会話できる。 関心のある時事問題 や身近な話題であれ ば、長くて複雑な話し B2 でも、ラジオやテレビ 番組が理解できる。標 準語の映画なら殆ど 理解できる ほとんどの時事問題 や話題について、長く て複雑な話しでも、ラ C1 ジオやテレビ番組の 一部始終を聞き取れ 理解できる。 論説記事や報告書が 母語話者と流暢に自 読める。現代文学の散 然にやり取りができ 文は読める。 る。身近なコンテクス トの議論に積極的に 参加し、自分の意見を 説明、弁明できる。 母語話者が早口で話 しても、話し方の癖に 慣れさえすれば、どん C2 な種類の話し言葉も 難なく聞き取れ理解 できる。 回 答 抽象的で言語的にも 複雑な文学書や難解 な論理構成の学術書、 専門的記事などあら ゆる形式の著作物を 容易に読める。 専門外の分野の記事 や技術的説明書が理 解できる。文体の違い を認識しながら文学 テクストを理解でき る。 作成者荒木史子(吉島・大橋 CEFR 2004 参照) 言葉を探さず流暢に 自然に自己表現がで きる。自分の意見を正 確に表現し自分の発 言をうまく他の話し 手の発言にあわせる ことができる。 慣用表現、口語体表現 を駆使しどんな会話 や議論でも参加でき る。流暢に自己表現し 詳細に細かなニュア ンスを伝えられる。 219 書くこと 新年挨拶やクリスマスカード など定型的な葉書であれば書 ける。 ホテルの宿帳に姓名や住所、 国籍などを記帳できる。 お礼状やお祝い状など目的の はっきりした短い簡単な手紙 であれば書ける。 自分の経験や計画に ついて、日常的によく 使われる語句や文で、 簡潔に説明できる。本 や映画のあらすじを 話し、感想を表現でき る。 関心のある時事問題 や幅広い話題につい て自分の見解を明瞭 で詳細な説明できる。 身近な出来事や体験につい て、感想や印象に残ったこと などを手紙やレポートに書け る。 複雑な話題でも、詳し く論じ、一定の観点を 展開しながら、適切な 結論にまとめ上げる ことができる。 相手の心情や立場を念頭に置 いた適切な文体で、自己表現 ができる。 どんな主題でも、主題に則し た文体ときちんとした論理構 成で、主張の重要点を上手に 強調するレポートを書ける。 主題に相応しい格調高い文体 と巧みな論理構成で、主張の 独自性、優位性を鮮明に印象 付けるレポートを書ける。 文学作品の概要や評を書くこ とができる。 状況にあった文体で 流暢に、はっきりとし た論述ができる。説得 力ある論理構成で、相 手の共感を呼ぶ表現 ができる。 興味関心のある分野なら、明 瞭で詳細な説明文を書くこと ができる。 エッセイやレポートで情報を 伝え、支持や反対の理由を書 くことができる。 留学経験あり学部3回生.用 Part I: 英語学習に関すること 該当する項目を一つ選び、その番号を回答欄へ記入して下さい。その他に該当する場合は( 具体的にご記入下さい。 )の中へ 1.社会人の方:職業は? 回答( ) (1) 会社員(外国語・英語使用) (2)会社員(外国語・英語使用なし) (3) 小・中・高・大学教員(外国語・英語使用) (4)小・中・高・大学教員(外国語・英語使用なし) (5) 国際交流関連職員(6)公務員(外国語・英語使用) (7)公務員 (外国語・英語使用なし) (8) その他( ) 2.年齢層は? 回答( ) (1)10~20 代 (2)30~40 代 (3)50~60 代 (4)60 代以上 3.英語を勉強し始めて何年になりますか? 回答( ) (1)6~10 年 (2)10~20 年 (3)20 年以上 4.これまでに以下の試験を受けたことがあれば、 差し支えなければそのスコアまたは級を、回答欄へ記入してください。 (ア)TOEICのスコア 回答( ) (イ)TOEFLのスコア 回答( ) (ウ)IELTSのスコア 回答( ) (エ)英検の級 回答( ) (オ)その他(種類とスコア/級など: ) 5.英語圏への留学・インターンシップや海外駐在・出張の経験がありますか? (ア)留学経験・インターンシップ又は海外駐在経験があればその期間は? 回答( ) 留学(1)1ヶ月 (2)4ヶ月 (3)1年 (4)2年 (5)3年 (6)4年以上 (イ)英語4技能(①listening, ②reading, ③speaking, ④4writing)の内、もっとも必要な技能はなんでしたか? ( ) インターンシップ (ウ)期間 (1)4ヶ月 (2)その他 具体的な期間 ( ) (エ)仕事内容 具体的に( ) 英語4技能(①listening, ②reading, ③speaking, ④4writing)の内、もっとも必要な技能はなんでしたか ( ) (オ)留学・インターンシップをした国は? (1)米国 (2)英国 (3)その他 具体的に国名 ( ) (カ)英語圏への海外出張経験があればその回数は? 回答( ) (1)1~5回 (2)5~10 回 (3)10~20 回 (4)それ以上 6.英語と今日までかかわってきた動機はなんですか? 回答( ) (1)英語が好きだから (2)試験に合格したいから (3)仕事上必要だから (4)外国の文化を知り、外国人と不自由なく話したいから (5)英語が上達すると昇進の可能性が高いから (6)その他 (具体的に; ) 中学校、高校、大学での英語の授業について思い出して回答してください。 7.中学校および高校ではどのようなクラス分けでしたか? (ア)英語クラスの人数は何人程度でしたか? 回答: 中学( ) 、高校( ) (1)20人程度 (2)30~40人 (3)40~50人 (4)50人以上 (ロ) 出身校分類(私立、国・公立)はどこですか? 220 (1)私立 (2)国・公立 回答: 中学( ) 高校( ) ) 8.英語の授業はどのような内容でしたか? 複数回答可( (1)文法・訳読式が中心であった (2)会話の授業があった (3)Native teacher または ALT(英語指導助手)による授業から刺激を受けた (4)ディベートやパブリック・スピーチなどを取り入れた授業があった。 (5)その他 (具体的に; ) 9.英語の授業はどのような形態でしたか? 回答 ( ) (1)得意分野別にグループ分けしていた(例;speaking グループ、writing グループなど) (2)試験の成績別にグループ分けしていた (3)ペアワークやグループワークを取り入れた授業があった (4)得意分野別や成績別などのグループ分けは一切なかった (5)その他 (具体的に; ) 10.英語の先生はどんな先生でしたか? 回答( ) (1)発音にきびしい (2)Speaking に力を入れた (3)文法を詳細に教えた (4)テキスト以外にもいろいろ工夫した教材をもちいた (5)生徒のレベルに応じてきめ細かく指導した (6)英語だけでなく、外国の文化を紹介した (7)その他 (具体的に; ) 11.以上のような授業を受けた結果、自分はどう変わりましたか? 回答( ) (1)英語が好きになった (2)どちらかといえば好きになった (3)英語をもっと勉強したいと思った (4)英語の必要性を感じた (5)どちらかといえば嫌いになった (6)大嫌いになった 11.で(1)または(2) (好きになった)と回答した方へ 12.英語が好きになった理由は何ですか? 回答( ) (1)先生が誤りに対して寛容であったから (2)試験の成績が良かったから (3)先生がよくほめてくれたから (4)先生の教え方が楽しかったから (5)その他 (具体的に; ) ) 13.4技能(reading, listening, writing, speaking)のうちどれが好き・得意ですか? いちばん好きな・得意な順に、1から4までの番号を( )の中へ記入して下さい。 ( )reading ( ) listening ( ) writing ( ) speaking 13.で Speaking を 1 番(いちばん好き・得意)と回答した方へ 14.Speaking がいちばん好きな理由はなんですか? 回答 ( ) (1)人前で話すのが好きだから (2)英語の発音に自信があるから (3)話の主導権をとれるから (4)相手の反応をみながら話しをできるから (5)相手の考えを聞きだすことができるから (6)その他 (具体的に; ) 13.で Speaking を4番(いちばん嫌い・にがて)と回答した方へ 15.Speaking がいちばん嫌い、にがてな理由は何ですか? 回答( ) (1)人前で話すのは恥ずかしいから (2)人前で話すとあがるから (3)英語の発音に自信がないから (4)どう話せば相手に通じるか考えが纏まらないから (5)変な英語だと相手から笑われたり、ばかにされたりしないかと不安だから (6)その他(具体的に; ) 13.で Listening を 1 番(一番好き・得意)と回答した方へ 16.Listening が好きな理由は何ですか? 回答( ) (1)人の話を聞くのが好きだから (2)話すより聞くほうが気が楽だから (3)自分が話す前に相手の考えを正しく理解したいから (4)人の話がきちんと聞き取れたら自信になるから (5)その他 (具体的に; ) 221 13.で Listening を 4 番(一番嫌い・にがて)と回答した方へ 17.Listening が嫌い、にがてな理由はなんですか? 回答( ) (1)人の話を聞くのが煩わしいから (2)人の話をきちんと聞き取れなくて、人に笑われたり、ばかにされたら嫌だから (3)予備知識や興味・関心のある話題でなければ、ちゃんと聞き取れないから (4)反論されそうな相手だと話を聞く気が失せるから (5)その他(具体的に; ) 13.で(5)または(6) (嫌いになった)と回答した方へ 18.英語が嫌いになった理由は何ですか? 回答 ( ) (1)発音を何度も訂正されたから (2)文法が分かり難かったから (3)人前で話すのが嫌だったから (4)先生に叱られたり、クラスの人に笑われたりしたから (5)試験の点数が悪かったから (6)その他(具体的に; ) これまでのご経験で、英語 communication 力の向上に最も役立った勉強法はどんなものですか?更に、留学や海外でのイ ンターンシップを経験して英語力や情動(感情や気持ち)の面でもっとも変化した点を、下のテキストボックスへご自由に ご記述下さい。 (例:英語でコミュニケーションすることが上手になった。英語で話すことに不安がなくなった。自信がつい た。 ) 引き続き Part II: 情動(emotion)に関すること、Part III: 英語力に関する自己申告 へお進み下さい。 重要なご注意 解答欄が留学前と留学後に二分されております。 留学前はすべてにもれなくご記入下さい。 留学後については著しく変化した場合にのみご記入下さい。変化がない場合、記入は不要ですが、留学前と同じ数値 とみなして統計処理させていただきます。お手数をおかけしますが、信頼性の高い情報となるよう、すべてに率直に ご回答いただくようご協力お願いいたします。 222 Part II:情動(emotion)に関すること 下表(1)~(40)の 40 項目に対し、お手数ですがもれなく、下記1,2,3,4の選択肢の中から現在のあなたの 心境に当てはまる番号を一つだけ選択し回答欄へ記入して下さい。あまり謙虚にならず、率直にお答え下さい。 これらの項目は人間の感情がコミュニケーション能力にいかに作用するか調べる為のものです。 1 2 3 4 ↓ ↓ ↓ ↓ まったくそうでない まあまあそうでない まあまあそうである 項 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) まったくそのとおりである 目 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信がある。 自分は speaking が得意である。 自分の話を受け入れるよう相手を説得しようとする。 問題解決に必要な意見は主張する。 英語での話し方が上手とほめられて自信がついた。 人に笑われても気にせずしゃべる。 発音、文法、語彙の誤りは気にせずしゃべる。 自分の英語力が伸びると思うと誤りを指摘されても気にせずしゃべる。 人が理解するかどうか気にせずしゃべる。 意味内容が重要であれば臆せず話すことが大切と言われて話すようになった。 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信が持てない。 人前で話すばあい、間違いをするのではないかと不安になる。 試験や時間制限内に話そうとすると、自分自身をうまく表現できない。 公式な場で話す際、あがる。 発音、語彙、文法などの間違いを指摘されてから話すのがいやになってあまりしゃべらない。 外国の人や文化を理解するおもしろさを教えられ、外国語(英語)を勉強している。 他人と一緒にグループ・ワークをするのが好きである。 他人の話を聞くのが好きである。 他人の話に共感しやすい。 相互理解に重点を置くことが大切と聞いたことから、理解に焦点を置くようになった。 義務感からこの言語(英語)を勉強している。 自分の殻に閉じこもり、他の人から距離を置く。 控えめな性格である為、人前で口数が少ない。 予期せぬことに即答できない。 間違いをする事がはづかしいので、なるべく話さないようにする。 時代のニーズに対応するため communication 力をみがいている。 誰とでも臆することなく話ができる。 自分の存在を口頭でアピールするのが上手と思う。 自分から進んで他人との communication をはかる。 自分の話を受け入れてもらえるよう積極的に相手に働きかける。 外国文化等に関心があるが、communication のツールである英語がなかなかうまくならない。 自分の発言に対し反省しがちである。 グループで話し合うことが苦手である。 人前で話をするのが恥ずかしい。 正しいかどうか意識的に自己確認しながら話すタイプである。 英語の Speaking 力が伸びないが、継続が大事と教えられ、ねばりづよく勉強を続けている。 相手の話を理解しようとする。 意味内容を理解してもらえなくても気にしない。 語彙、文法の正誤にこだわらない。 人の誤り(発音、文法、語彙)に対して無頓着なほうである。 223 回答 留学前 留学後 Part III: 英語力に関する自己申告 (横軸の各技能について、あなたに最も近いと思うレベルを A1~C2 作成者荒木史子(吉島・大橋 CEFR 2004 参照) の中からひとつ選び、その記号を一番下の解答欄にもれなく記入して下さい) 理解すること 聞くこと 話すこと 読むこと やり取り 表現 書くこと ゆっくり、はっきりと話 国名や地名、駅名、案内 ゆっくり、はっきりと話し どこに住んでいるかや、知 新年挨拶やクリスマスカ してもらえば、日常的に 表示など日常的によく てもらい、聞き直しや助け っている人たちについて ードなど定型的な葉書で A1 よく使われる単語や語 使われる単語や単純な 舟を出してもらえば、簡単 簡単な語句や文を使い表 あれば書ける。 句を聞き取れる。 文を理解できる。 な言葉でやり取りできる。 現できる。 ホテルの宿帳に姓名や住 所、国籍等を記帳できる。 日常的によく使われる 簡単なパンフレットや 身近な話題や活動につい 家族、周囲の人々、居住条 お礼状やお祝い状など目 簡単なメッセージや短 商品カタログ、メニュ て話し合いができる。短い 件、学歴、職歴など簡単な 的のはっきりした短い簡 いアナウンスの要点を ー、予定表などから、情 社交的なやり取りができ 言葉で一連の語句や文を 単な手紙であれば書ける。 A2 聞き取れる。 報を取り出せる。簡単な る。 使って説明できる。 短い個人的な書簡は理 解できる。 身近な話題について、ゆ 日常語で書かれた仕事 当該言語圏を旅行中通常 自分の経験や計画につい 身近な出来事や体験につ っくりとした明瞭な話 関連の内容なら理解で 起こる状況に対処できる。 て、日常的によく使われる いて、感想や印象に残った し方であれば、ラジオや きる。出来事、感情、希 日常生活に関連あること、 語句や文で、簡潔に説明で ことなどを手紙やレポー B1 テレビ番組の要点を理 望など表現した書簡を 個人的な関心事について、 きる。本や映画のあらすじ トに書ける。 解できる。 理解できる。 準備なしで会話できる。 を話し、感想を表現でき る。 関心のある時事問題や 論説記事や報告書が読 母語話者と流暢に自然に 関心のある時事問題や幅 興味関心のある分野なら、 身近な話題であれば、長 める。現代文学の散文は やり取りができる。身近な 広い話題について自分の 明瞭で詳細な説明文を書 B2 くて複雑な話しでも、ラ 読める。 コンテクストの議論に積 見解を明瞭で詳細な説明 くことができる。 ジオやテレビ番組が理 極的に参加し、自分の意見 できる。 解できる。標準語の映画 を説明、弁明できる。 エッセイやレポートで情 報を伝え、支持や反対の理 由を書くことができる。 なら殆ど理解できる ほとんどの時事問題や 専門外の分野の記事や 言葉を探さず流暢に自然 複雑な話題でも、詳しく論 相手の心情や立場を念頭 話題について、長くて複 技術的説明書が理解で に自己表現ができる。自分 じ、一定の観点を展開しな に置いた適切な文体で、自 雑な話しでも、ラジオや きる。文体の違いを認識 の意見を正確に表現し自 がら、適切な結論にまとめ 己表現ができる。 C1 テレビ番組の一部始終 しながら文学テキスト 分の発言をうまく他の話 上げることができる。 どんな主題でも、主題に則 を聞き取れ理解できる。 を理解できる。 し手の発言にあわせるこ した文体ときちんとした とができる。 論理構成で、主張の重要点 を上手に強調するレポー トを書ける。 母語話者が早口で話し 抽象的で言語的にも複 慣用表現、口語体表現を駆 状況にあった文体で流暢 主題に相応しい格調高い ても、話し方の癖に慣れ 雑な文学書や難解な論 使しどんな会話や議論で に、はっきりとした論述が 文体と巧みな論理構成で、 さえすれば、どんな種類 理構成の学術書、専門的 も参加できる。流暢に自己 できる。説得力ある論理構 主張の独自性、優位性を鮮 C2 の話し言葉も難なく聞 記事などあらゆる形式 表現し詳細に細かなニュ 成で、相手の共感を呼ぶ表 明に印象付けるレポート き取れ理解できる。 の著作物を容易に読め アンスを伝えられる。 現ができる。 を書ける。 文学作品の概要や評を書 る。 くことができる。 留 学 回 前 答 留 学 後 224 高校2年生用 実施日 __ 年__月__日 学年___年 Part I: 主として英語学習に関すること 該当する回答を選んで番号に○をしてください。その他に該当する場合は自由に具体的に( 記入してください。 )内に 1.英語は好きですか? 一つ選んでください。 (1) とても好き (2) まあまあ好き (3) 嫌い (4) 大嫌い 2.英語が好き、または嫌いな理由はなんですか? 一つ選んでください。 1で(1)または(2)と回答した方へ(好きな理由) (1) 外国へ行きたいから (2) 外国人と友達になりたいから (3) いい学校へ入るのに必要だから (4) 試験の成績が良いから (5) 先生がよくほめてくれるから (6) 先生の教え方が楽しいから (7) その他(自由に記述 ) 1で(3)または(4)と回答した方へ(嫌いな理由) 一つ選んでください。 (1) 文法がわからないから (2) まちがうと先生や友達に笑われるとおもうから (3) 発音を何度も訂正され、はずかしいから (4) 自分だけ出来ないとおもうから (5) 英語の試験がいやだから (6) その他(自由に記 述 ) 3.英語の勉強でどんなことをしたいですか? 一つ選んでください。 (1) 実際に外国人と話をしたい (2) 先生や、友達と英語で話をしたい (3) 英語の映画などを見たい (4) 英語で手紙やメイルを書きたい (5) その他 ( ) 4.英語を学ぶことに不安がありますか? 一つ選んでください。 (1) はい (2) 少し不安 (3) あまり不安ではない (4) 全く不安でない 5.英語を学ぶことに不安がある人は、具体的に何が不安ですか? 一つ選んでください。 (1) 勉強についていけないから (2) 試験があるから (3) 間違うと周りの人に笑われるとおもうから (4) その他(自由に記述 ) 6.先生やまわりの人からほめられると、あなたはどうしますか? 一つ選んでください。 (1) もっと勉強する気になる (2) 自信がわき、勉強が楽しくなる (3) むずかしいことにも挑戦する気になる (4) うれしくて安心するが何もしない (5) その他(自由に記述 ) 7.将来の夢は何ですか? (自由に記述 ) 8.自分の性格は次のうちどれに近いとおもいますか? 一つ選んでください。 (1) 自信家である (2) 失敗しても挑戦するタイプ (3) 心配性である (4) 失敗しそうなことはさけるタイプ (5) いろいろな人とたくさん友達になれるタイプ (6) なんでも積極的にとりくむ タイプ (7) 人とあまり話をしたくないタイプ (8) 間違っても気にならないタイプ 9.英語の塾へ行ったことがありますか? (1)はい (2) いいえ 「はい」の人は次の質問にすすんでください。 10.いつから何年くらい、塾で英語を勉強していますか? ( )内に記入してください。 いつから ( ) 何年くらい ( ) 11.これまでに以下の試験を受けたことがあれば、 差し支えなければそのスコアまたは級を( )に記入してください。 (1) TOEICのスコア ( ) (2) 英検の級 ( ) (3) その他(種類とスコア/級など) ( ) 12.中学校および高校では英語クラスの人数は何人程度でしたか? ( )内に番号を記入してください。 回答: 中学( ) 、高校( ) (1) 20人程度 (2) 30~40人 (3) 40~50人 (4) 50人以上 225 13.これまで中学校・高校の英語の授業はどのような内容でしたか? いくつでも選んでください。 (1) 文法・訳読式が中心であった (2) 会話の授業があった (3) 外国人または ALT(英語指導助手)による授業から刺激を受けた (4) ディベートやパブリック・スピーチなどを取り入れた授業があった (5) その他 (具体的に; ) 14.英語の授業はどのような形態でしたか? 一つ選んでください。 (1) 得意分野別にグループ分けしていた(例;speaking グループ、writing グループなど) (2) 試験の成績別にグループ分けしていた (3) ペアワークやグループワークを取り入れた授業があった (4) 得意分野別や成績別などのグループ分けは一切なかった (5) その他 (具体的に; ) 15.英語の先生はどんな授業に重点を置かれましたか(現在も含め)? いくつでも選んで下さい。 (1)発音に力を入れた (2)Speaking に力を入れた (3)文法に力を入れた (4)Reading に力を入れた (5)Writing に力を入れた (6)テキスト以外にもいろいろ工夫した教材をもちいた (7)生徒のレベルに応じてきめ細かく指導した (8)英語だけでなく、外国の文化を紹介した (9)その他 (具体的に; (7) その他 (具体的に; ) 16.以上のような授業を受けた結果、自分はどう変わりましたか? 一つ選んでください。 (1) 英語が好きになった (2) どちらかといえば好きになった (3) 英語をもっと勉強したいと思った (4) 英語の必要性を感じた (5) ついていけないので、あまり好きになれなかった 17.4技能(reading, listening, writing, speaking)のうちどれが好き・得意ですか? いちばん好きな・得意な順に、1から4までの番号を( )の中へ記入して下さい。 ) listening ( ) writing ( ) speaking ( )reading ( 17 で Speaking を 1 番(いちばん好き・得意)と回答した方へ 18.Speaking がいちばん好きな理由はなんですか? 一つ選んでください。 (1) 人前で話すのが好きだから (2) 英語の発音に自信があるから (3) 自分の考えを聞いてほしいから (4) その他 (具体的に; ) 17 で Speaking を4番(いちばん嫌い・にがて)と回答した方へ 19.Speaking がいちばん嫌い、にがてな理由は何ですか? 一つ選んでください。 (1) 人前で話すのは恥ずかしいから (2) 人前で話すとあがるから (3) 英語の発音に自信がないから (4) どう話せば相手に通じるか考えがまとまらないから (5) 変な英語だと相手から笑われたり、ばかにされたりしないかと不安だから (6) その他(具体的に; ) 17 で Listening を 1 番(一番好き・得意)と回答した方へ 20.Listening が好きな理由は何ですか? 一つ選んでください。 (1) 人の話を聞くのが好きだから (2) 話すより聞くほうが気が楽だから (3) 自分が話す前に相手の考えを正しく理解したいから (4) その他 (具体的に; ) 17 で Listening を 4 番(一番嫌い・にがて)と回答した方へ 21.Listening が嫌い、にがてな理由はなんですか? 一つ選んでください。 (1) 人の話を聞くのがわずらわしいから (2) 人の話をきちんと聞き取れなくて、人に笑われたり、ばかにされると嫌だから (3) 予備知識や興味・関心のある話題でなければ、ちゃんと聞き取れないから (4) その他(具体的に; ) これまでの経験で、英語 communication 力の向上に最も役立った勉強法はどんなものですか? その方法はどのように役 立ちましたか?下のテキストボックスへご自由にご記述下さい。 (例:・・・・をすることにより、英語でコミュニケーシ 226 ョンすることが上手になった。英語で話すことに不安がなくなった。自信がついた。 ) 引き続き Part II: 情動(emotion)に関すること、Part III: 英語力に関する自己申告 へお進み下さい。 227 Part II: 情動(emotion)に関すること (注:社会人・大学学部 1 回生用と共通) 下表(1)~(40)の 40 項目に対し、お手数ですがもれなく、下記1,2,3,4の選択肢の中から現在のあなたの 心境に当てはまる番号を一つだけ選択し回答欄へ記入して下さい。あまり謙虚にならず、率直にお答え下さい。 これらの項目は人間の感情がコミュニケーション能力にいかに作用するか調べる為のものです。 1 ↓ まったくそうでない (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) 2 ↓ まあまあそうでない 3 ↓ まあまあそうである 4 ↓ まったくそのとおりである 項 目 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信がある。 自分は speaking が得意である。 自分の話を受け入れるよう相手を説得しようとする。 問題解決に必要な意見は主張する。 英語での話し方が上手とほめられて自信がついた。 人に笑われても気にせずしゃべる。 発音、文法、語彙の誤りは気にせずしゃべる。 自分の英語力が伸びると思うと誤りを指摘されても気にせずしゃべる。 人が理解するかどうか気にせずしゃべる。 意味内容が重要であれば臆せず話すことが大切と言われて話すようになった。 現在学んでいる言語(英語)について、自分の能力に自信が持てない。 人前で話すばあい、間違いをするのではないかと不安になる。 試験や時間制限内に話そうとすると、自分自身をうまく表現できない。 公式な場で話す際、あがる。 発音、語彙、文法などの間違いを指摘されてから話すのがいやになってあまりしゃべらない。 外国の人や文化を理解するおもしろさを教えられ、外国語(英語)を勉強している。 他人と一緒にグループ・ワークをするのが好きである。 他人の話を聞くのが好きである。 他人の話に共感しやすい。 相互理解に重点を置くことが大切と聞いたことから、理解に焦点を置くようになった。 義務感からこの言語(英語)を勉強している。 自分の殻に閉じこもり、他の人から距離を置く。 控えめな性格である為、人前で口数が少ない。 予期せぬことに即答できない。 間違いをする事がはづかしいので、なるべく話さないようにする。 時代のニーズに対応するため communication 力をみがいている。 誰とでも臆することなく話ができる。 自分の存在を口頭でアピールするのが上手と思う。 自分から進んで他人との communication をはかる。 自分の話を受け入れてもらえるよう積極的に相手に働きかける。 外国文化等に関心があるが、communication のツールである英語がなかなかうまくならない。 自分の発言に対し反省しがちである。 グループで話し合うことが苦手である。 人前で話をするのが恥ずかしい。 正しいかどうか意識的に自己確認しながら話すタイプである。 英語の Speaking 力が伸びないが、継続が大事と教えられ、ねばりづよく勉強を続けている。 相手の話を理解しようとする。 意味内容を理解してもらえなくても気にしない。 語彙、文法の正誤にこだわらない。 人の誤り(発音、文法、語彙)に対して無頓着なほうである。 228 回答 (注:社会人・大学学部 1 回生用と共通) Part III: 英語力に関する自己申告 (横軸の各技能について、あなたに最も近いと思うレベルを A1~C2 の中 からひとつ選び、その記号を一番下の回答欄にもれなく記入して下さい) A1 A2 B1 B2 C1 C2 理解すること 聞くこと 読むこと ゆっくり、はっきり 国名や地名、駅名、 と話してもらえば、 案内表示など日常的 日常的によく使われ によく使われる単語 る単語や語句を聞き や単純な文を理解で 取れる。 きる。 作成者荒木史子(吉島・大橋 CEFR 2004 参照) 話すこと やり取り 表現 ゆっくり、 はっきりと話 どこに住んでいるかや、 してもらい、 聞き直しや 知人について簡単な語 助け舟を出してもらえ 句や文を使い表現でき ば、 簡単な言葉でやり取 る。 りできる。 書くこと 新年挨拶やクリスマス カードなど定型的な葉 書であれば書ける。 ホテルの宿帳に姓名や 住所、 国籍等を記帳でき る。 日常的によく使われ 簡単なパンフレット 身近な話題や活動につ 家族、周囲の人々、居住 お礼状やお祝い状など る簡単なメッセージ や商品カタログ、メ いて話し合いができる。 条件、学歴、職歴など簡 目的のはっきりした短 や短いアナウンスの ニュー、予定表など 短い社交的なやり取り 単な言葉や語句、 文章を い簡単な手紙であれば 書ける。 要点を聞き取れる。 から、情報を取り出 ができる。 使って説明できる。 せる。簡単な短い個 人的な書簡は理解で きる。 身近な話題につい 日常語で書かれた仕 外国を旅行中、 通常起こ 自分の経験や計画につ 身近な出来事や体験に 感想や印象に残 日 いて、 日常的によく使わ ついて、 て、ゆっくりとした 事関連の内容なら理 る状況に対処できる。 簡潔に ったことなどを手紙や 明瞭な話し方であれ 解できる。出来事、 常生活に関連あること、 れる語句や文で、 ば、ラジオやテレビ 感情、希望など表現 個人的な関心事につい 説明できる。 本や映画の レポートに書ける。 準備なしで会話でき あらすじを話し、 感想を 番組の要点を理解で した書簡を理解でき て、 表現できる。 きる。 る。 る。 関心のある時事問題 論説記事や報告書が 外国人と流暢に自然に 関心のある時事問題や 興味関心のある分野な 身近 幅広い話題について自 ら、 明瞭で詳細な説明文 や身近な話題であれ 読める。普通の文章 やり取りができる。 ば、長くて複雑な話 の現代文学は読め な内容の議論に積極的 分の見解を明瞭で詳細 を書くことができる。 に参加し、 自分の意見を な説明できる。 エッセイやレポートで しでも、ラジオやテ る。 情報を伝え、 賛成や反対 レビ番組が理解でき 説明、弁明できる。 の理由を書くことがで る。標準語の映画な きる。 ら、殆ど理解できる ほとんどの時事問題 専門外の分野の記事 言葉を探さず流暢に自 複雑な話題でも、 詳しく 相手の心情や立場を念 や話題について、長 や技術的説明書が理 然に自己表現ができる。 論じ、 一定の観点を展開 頭に置いた適切な表現 適切な結論に ができる。 くて複雑な話しで 解できる。文章の特 自分の意見を正確に表 しながら、 も、ラジオやテレビ 色を認識しながら文 現し自分の発言をうま まとめ上げることがで どんな主題でも、 主題に 番組の一部始終を聞 学テキストを理解で く他の話し手の発言に きる。 則した文章の様式で、 論 き取れ理解できる。 きる。 あわせることができる。 理構成が明確な、 しかも 重要点を上手に強調す るレポートを書ける。 母語話者が早口で話 抽象的で言語的にも 慣用表現、 口語体表現を 状況にあった文章様式 主題に相応しい格調高 しても、話し方の癖 複雑な文学書や難解 駆使しどんな会話や議 で流暢に、 はっきりとし い文章と巧みな論理構 説得力 成で、主張の独自性、優 に慣れさえすれば、 な論理構成の学術 論でも参加できる。 流暢 た論述ができる。 どんな種類の話し言 書、専門的記事など に自己表現し詳細に細 ある論理構成で、 相手の 位性を鮮明に印象付け 葉も難なく聞き取れ あらゆる形式の著作 かなニュアンスを伝え 共感を呼ぶ表現ができ るレポートを書ける。 文学作品の概要や評論 理解できる。 物を容易に読める。 られる。 る。 を書くことができる。 回 答 229 中学2年生用 学年と組を書き入れ、あなたが男子、女子か、いずれかに○を入れてください。 早稲田中学校 ( )年 ( )組 男子( ) 女子( ) 小学校何年生から英語を勉強しましたか? 小学校5年( )小学校6年( )その他( ) Part I: 英語についての質問リスト 次の質問に対して、一つ選んで答えてください。( ○で選ぶ場合と、自由に記述の場合があります。) 1. 英語は好きですか ? a. 大好き 2. b. まあまあ好き c. 嫌い d. 大嫌い 英語が好きな理由、嫌いな理由はなんですか? 当てはまるものをひとつ選んでください。 好きな理由 a. 外国へ行きたいから b. 外国人と友達になりたいから c. いい学校へ入るのに必要だから d. 先生がほめてくれるから e. 覚えるのが得意だから f. 自由に英語を話したり、読んだり、書いたりしたいから g.その他(自由に記述 ) 嫌いな理由 a. 発音が覚えられないから b. まちがうと先生や友達に笑われるから c. ひとりで発音するのが、はずかしいから d. 自分だけ出来ないとおもうから e. 中学生から、英語の試験があるのでいやだから f. その他(自由に記 述 3. ) 英語の勉強でどんなことをしたいですか? 一つ選んでください。 a. お話を英語でしてほしい b. 先生や、友達と英語で話をしたい c. 英語のアニメなどを見たい d. 英語で手紙やカードを書きたい e. その他 ( ) 4.英語をもっと勉強して上手に話したり、書いたりしたいですか? a. はい b. まあまあしたい c. あまりしたくない d. 全く興味がない 5. 英語を学ぶことに不安がありますか? a. はい b. 少し不安 c. あまり不安ではない d. 全く不安でない 6.英語を学ぶことに不安がある人は、具体的に何が不安ですか? a. 勉強についていけないから d. その他(自由に記述 b. 試験があるから c. 周りの人に笑われるから ) 7. 英語を勉強するのが楽しいですか? a. とても楽しい b. まあまあ楽しい c. あまり楽しくない d. 全く楽しくない 8.英語の勉強が楽しくないのはなぜですか? a. 理解できないから d.その他(自由に記述 b. 興味がないから c. 人に笑われるから ) 9.先生やまわりの人からほめられると、あなたはどうしますか? a. もっと勉強する気になる b. 自信がわき、勉強が楽しくなる c. むずかしいことにも挑戦する気になる d. うれしくて安心するが何もしない 230 e. その他(自由に記述 ) 10. 将来の夢は何ですか? (自由に記述 ) 11 自分の性格は次のうちどれに近いとおもいますか? 一つ選んでください。 a. 自信家である b. 失敗しても挑戦する c. 心配性である d. 失敗しそうなことはさける e. いろいろな人とたくさん友達になれる f. なんでも積極的にとりくむ g. 人とあまり話をしたくない h. 他人が間違っても気にならない。 12.英語の塾へ行ったことがありますか? a. はい b. いいえ 「はい」の人は次の質問にすすんでください。 13 いつから何年くらい、塾で英語を勉強していますか?(記入してください。 ) いつから ( ) 何年くらい ( 14.家で誰かが英語を教えてくれますか? a. はい ) b. いいえ 「はい」の人は誰に教えてもらいますか? a. お父さん b.おかあさん c. お兄さん、またはお姉さん d. その他 家庭教師など 15. 家で英語はどんな勉強をしますか? a. DVD を見て勉強する b. テープをきいて勉強する c. その他 231 具体的に書いてください。 Part II: 英語の勉強に関することや自分の性格や気持ちに関すること 下表の 40 項目に対し、もれなく、下記1,2,3,4の中から現在のあなたの気持ちに当てはまる番号を直感で 一つだけ選択し回答欄へ記入して下さい。 1 2 3 4 ↓ ↓ ↓ ↓ まったくそうでない あまりそうでない まあまあそうである まったくそのとおりである (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) 項 目 英語を上手になる自信がある。 (英語) 他の人に自分の考えを話すのは得意である。 (英語) 他の人を自分の考えに賛成させようとする。 (性格・気持ち) 何か問題が起こったら、その解決に必要な意見は進んで言う。 (性格・気持ち) 話し方をほめられて自信がついた。 (英語) 話しているとき他の人に笑われても気にせず話す。 (英語) 言葉や発音のまちがいは気にしないで話す。 (英語) 英語を上手になるため、まちがいを恐れないで話す。 (英語) 他の人が理解するかどうかは気にしないで話す。 (英語) 大事なことはだまっていてはいけないと教えられ、話すようになった。 (性格・気持ち) 英語を上手になる自信がない。 (英語) 人前で話す場合、まちがうのではないかと不安になる。 (英語) 制限時間を決められると、自分の考えがまとまらなくなる。 (英語) 試験や面接で話す場合、あがってしまう。 (英語) 言葉や発音がまちがっていると言われるのがいやで、あまり話さない。 (英語) 外国人や外国の文化を理解するために、英語を勉強したい。 (英語) グループで活動をするのが好きである。 (性格・気持ち) 他の人の話を聞くのが好きである。 (性格・気持ち) 他の人の話に、よく賛成する。 (性格・気持ち) 自分も理解してもらいたいし、他の人を理解することも大切だと思う。 (性格・気持ち) 授業があるので仕方なく英語を勉強する。 (英語) 自分の殻に閉じこもり、他の人と話すのはあまり好きでない。 (性格・気持ち) 控えめな性格であるため、人前で話すことは少ない。 (英語) 急に質問されたら、すぐに回答できない。 (英語) 間違いをする事がはずかしいので、なるべく話さないようにする。 (英語) 将来必要になると思うので、英語を上手になるよう努力する。 (英語) 誰とでも恐れずに気軽に話ができる。 (英語) 自分が目立つように話ができる。 (英語) 自分から進んで他の人と話をしようとする。 (英語) 自分の話を理解してもらえるよう、積極的に話しつづける。 (英語) 外国の文化などに興味はあるが、英語がなかなか上手にならない。 (英語) (英語で)自分の話したことについて、よく反省する。 グループで話し合うことが苦手である。 (性格・気持ち) 人前で話をするのがはずかしい。 (性格・気持ち) ) (英語で)自分の話すことが正しいか、よく考えて慎重に話す。 英語が上手にならないが、継続が大事と教えられ、ねばりづよく勉強を続けている。 (性格・気持ち) 相手の話を理解しようとする。 (性格・気持ち) 自分の話を相手から理解してもらえなくても気にしない。 (性格・気持ち) 語彙、文法の誤りにこだわらない(性格・気持ち) 他の人の話に言葉や発音のまちがいがあってもあまり気にならない。 (性格・気持ち) 232 回答 Part III: 英語に関する自己申告 (CEFR オリジナルを基に初級学習者用に編集) 下の表の 20 項目に対し、現在あなたが英語で出来ることを下記矢印1,2,3,4の レベルの中からえらんで、右の回答欄に、レベル番号をもれなく記入して下さい。 1 ↓ まったくそうでない 2 ↓ あまりそうでない 3 ↓ まあまあそうである 項 英語で 作成者 荒木史子 4 ↓ まったくそのとおりである ここへ番号を記入 ↓ 目 ① 天気予報など、やや長めの話でも要点はわかる。 聞き取り ② 数字、値段、時間などは聞いてわかる ③ 自分の知っている言葉や表現なら、人の話の中や歌の中で断片的に聞き取れる。 ④ よく使う日常的表現なら聞いたときにわかる。 話すこと 相手とのやりとり ⑤ 人を紹介したり、あいさつしたり、あるいは「さようなら、これで失礼します」といった やり取りができる。 ⑥ ほしい物を相手に伝え、 「これをどうぞ」といったやり取りができる。 ⑦ 天気がどうだとか、物の名前を言うといった程度であれば、簡単な言葉や表現を使ってや り取りができる。 ⑧ どこの学校の生徒かとか、どこに住んでいるか、兄弟は何人だといった事実に関すること を質問する程度のやり取りができる。 ⑨ 自分の趣味ややりたいことについて相手に話ができる。 表現 ⑩ 「来週」 「先週の何曜日」 「月」 「時間」等をあらわす言葉を使って相手に話ができる。 ⑪ 駅や空港などで、行き先や時間などを伝えることができる。 ⑫ 何が食べたいか、飲みたいかなどの話ができる。 ⑬ 読むこと 外国の友達から手紙をもらい、どこに住んでいるとか、年齢がいくつといったことが書い てあった場合、理解できる。 ⑭ ポスターを見て、映画やイベントがいつ、どこで行われるかを理解できる。 ⑮ 日常的に見かける駅名などの表示や簡単な案内情報を読んで、理解できる。 ⑯ クリスマスカードなどへの添え書きなどの簡単なものであればだいたい理解できる。 ⑰ 自分がどこにいるとか、どこで会おうといった内容の簡単なメモ書きを作れる。 書くこと ⑱ サッカーが好き、音楽が好きだとか、自分の趣味が何か書ける。 ⑲ 自分の住所、年齢などが書ける。 ⑳ 買い物用のリストを作ったり、絵はがきなどにちょっと一言書くことができる。 233 回答 小学6年生用 学年と組を書き入れ、あなたが男子、女子かいずれかに○を入れてください。 早稲田小学校 ( )年 ( )組 男子( ) 女子( ) Part I: 英語についての質問リスト 次の質問にたいして、答えてください。( ○で選ぶ場合と、記入の場合があります。) 1.語は好きですか ? (1) 大好き (2) まあまあ好き (3) 嫌い (4)大嫌い 2.好きな理由、嫌いな理由はなんですか? 当てはまるものを全て選んでください。 好きな理由: (1) 国へ行きたいから (2)外国人と友達になりたいから (3) 学校へ入るのに必要だから (4) 先生がほめてくれるから (5) 覚えるのが得意だから (6)たくさん勉強して、自由に英語を話したり、読んだり、書いたりしたいから 嫌いな理由: (1) 音が覚えられないから (2)まちがうと友達に笑われるから (3) ひとりで発音するのが、はづかしいから (4) 自分だけ出来ないとおもうから (5) 中学生からは、英語の試験があるのでいやだから 3.英語の勉強でどんなことをしたいですか? 一つ選んでください。 (1)話しを英語でしてほしい (2) 先生や、友達と英語で話しをしたい (3) 英語のアニメなどを見たい (4) 英語で手紙やカードを書きたい 4.英語をもっと勉強して上手に話したり、書いたりしたいですか? (1)はい (2) まあまあしたい (3)あまりしたくない (4) ぜったいしたくない 5.むずかしくなるのが不安ですか? (1) はい (2) 少し不安 (3)あまり不安ではない (4)全く不安でない 6.英語を勉強するのが楽しいですか? (1) とてもたのしい (2) まあまあたのしい (3) あまり楽しくない (4) 全く楽しくない 7.将来の夢は何ですか? 英語を使う仕事をしたい。(例:通訳、英語の先生、宇宙飛行士、外国で仕事など) 将来の夢: (自分で自由に書いて下さい。 ) ( ) 英語は嫌いだから、関係ない仕事をしたい。 将来の夢:(自分で自由に書いて下さい。) ( ) 8.自分の性格は次の内どれに近いとおもいますか? 一つ選んでください。 (1)自信家である (2) 失敗しても挑戦する (3) 心配性である (4) いろいろな人とたくさん友達になれる (5) 失敗しそうなことは避ける (7)人とあまり話しをしたくない (6) んでも積極的にとりくむ (8) 他の人が間違っていても気にならない。 9.英語の塾へ行ったことがありますか? (1) はい (2) いいえ 「はい」の人は次の質問にすすんでください。 10.いつから、何年くらい塾で英語を勉強していますか?(記入してください。 ) いつから ( ) 何年くらい ( ) 11.家で誰かが英語を教えてくれますか? (1) はい (2) いいえ 「はい」の人は誰に教えてもらいますか? (1) お父さん (2)おかあさん (3)お兄さんまたはお姉さん (4)その他 家庭教師など 12.家で英語はどんな勉強をしますか? (1) DVD を見て勉強する (2) テープをきいて勉強する 234 (3) その他 ( 具体的に書いてください。 ) Part II の質問に回答する際の注意:英語だけの勉強にかかわらず、 「言葉で表現する」事とおもってください。 全部の質問にもれなく1,2,3,4の中から選んでください。 235 Part II: 英語の勉強に関することや自分の性格や気持ちに関すること 下表の 40 項目に対し、もれなく、下記1,2,3,4の中から現在のあなたの気持ちに当てはまる番号を一つだけ 選択し回答欄へ記入して下さい。 1 2 3 4 ↓ ↓ ↓ ↓ まったくそう思わない あまりそう思わない まあまあそう思う とてもそう思う (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) 項 目 英語を上手になる自信がある。 他の人に自分の考えを話すのは得意である。 他の人を自分の考えに賛成させようとする。 何か問題が起こったら、その解決に必要な意見は主張する。 話し方をほめられて自信がついた。 話しているとき他の人に笑われても気にしない。 言葉や発音の間違いは気にしないで話す。 英語を上手になるため、間違いを恐れないで話す。 他の人が理解するかどうかは気にしないで話す。 大事なことは黙っていてはいけないと教えられ、話すようになった。 英語を上手になる自信がない。 人前で話す場合、間違いをするのではないかと不安になる。 制限時間を決められると、自分の考えがまとまらなくなる。 試験や面接で話す場合、あがってしまう。 言葉や発音が間違っていると言われるのが嫌で、あまり話さない。 外国人や外国の文化を理解するために、英語を勉強したい。 グループ・ワークをするのが好き。 他の人の話を聞くのが好きである。 他の人の話しに、よく賛成する。 自分も理解してもらいたいし、他の人を理解することも大切だと思う。 授業があるので仕方なく英語を勉強する。 自分の殻に閉じこもり、他の人と話すのはあまり好きでない。 控えめな性格であるため、人前で話すことは少ない。 急に質問されたら、すぐに回答できない。 間違いをする事がはずかしいので、なるべく話さないようにする。 将来必要になると思うので、英語を上手になるよう努力する。 誰とでも恐れずに気軽に話ができる。 自分が目立つように話ができる。 自分から進んで他の人と話しをしようとする。 自分の話しを理解してもらえるよう、積極的に話しつづける。 外国の文化などに興味はあるが、英語がなかなか上手にならない。 自分の話したことについて、よく反省する。 グループで話し合うことが苦手である。 人前で話をするのがはずかしい。 自分の話すことが正しいか、いちいち確認しながら話すタイプである。 英語が上手になれないが、大切だと教えられ、ねばりづよく勉強を続けてる。 相手の話を理解しようとする。 自分の話しを相手から理解してもらえなくても気にしない。 自分の話しに言葉や発音の間違いがあっても気にしない。 他の人の話に言葉や発音の間違いがあってもあまり気にならない。 236 回答 Part Ⅲ:英語に関する自己申告 (CEFR オリジナルを基に初級学習者用に編集) (注:中学生用と共通) 下の表の 20 項目に対し、現在あなたができることを下記矢印1,2,3,4の レベルの中からえらんで右の回答欄に、レベル番号をもれなく記入して下さい。 作成者 荒木史子 1 ↓ まったくそうでない 2 ↓ あまりそうでない 英語で 3 ↓ まあまあそうである 項 4 ↓ まったくそのとおりである ここへ番号を記入 ↓ 目 ① 天気予報など、やや長めの話でも要点はわかりますか? ききとり ② 数字、値段、時間などは聞いてわかりますか? ③ 自分の知っている言葉や表現なら、人の話の中や歌の中で断片的に聞き取れますか? ④ よく使う日常的表現なら聞いたときにわかりますか? 話すこと 相手とのやりとり ⑤ 人を紹介したり、あいさつしたり、あるいは「さようなら、これで失礼します」といった やり取りができますか? ⑥ ほしい物を相手に伝え、 「これをどうぞ」といったやり取りができますか? ⑦ 天気がどうだとか、物の名前を言うといった程度であれば、簡単な言葉や表現を使ってや り取りができますか? ⑧ どこの学校の生徒かとか、どこに住んでいるか、兄弟は何人だといった事実に関すること を質問する程度のやり取りができますか? ⑨ 自分の趣味ややりたいことについて相手に話ができますか? 表現 ⑩ 「来週」 「先週の何曜日」 「月」 「時間」等をあらわす言葉を使って相手に話ができますか? ⑪ 駅や空港などで、行き先や時間などを伝えることができますか? ⑫ 何が食べたいか、飲みたいかなどの話ができますか? ⑬ 読むこと 外国の友達から手紙をもらい、どこに住んでいるとか、年齢がいくつといったことが書い てあった場合、理解できますか? ⑭ ポスターを見て、映画やイベントがいつ、どこで行われるかを理解できますか? ⑮ 日常的に見かける駅名などの表示や簡単な案内情報を読んで、理解できますか? ⑯ クリスマスカードなどへの添え書きなどの簡単なものであればだいたい理解できます か? ⑰ 自分がどこにいるとか、どこで会おうといった内容の簡単なメモ書きを作れますか? 書くこと ⑱ 自分の趣味が何か書けますか? ⑲ 自分の住所、年齢などを書けますか? ⑳ 買い物用のリストを作ったり、絵はがきなどにちょっと一言書くことができますか? 237 回答 在日外国人留学生用 あなたの出身国は? ( ) あなたの母語は?( ) PartⅠ: 日本語学習に関すること 該当する項目を一つ選び、その番号を回答欄へ記入して下さい。その他に該当する場合は( 記述して下さい。 )の中へ具体的に 1.日本語はあなたにとって何番目の外国語ですか? 回答 ( ) (1)1番目 (2)2番目 → この場合1番目は何ですか?記述してください( ) 2.日本語を勉強する目的・動機は何ですか? 回答( ) (1)日本語が好きだから (2)大学の試験に合格したいから (3)日系の企業で仕事をしたいから (4)日本語が上達すると昇進の可能性が高いから (5)日本語の先生になりたいから (6)日本の文化を知り、日本人と流暢(りゅうちょう)に話したいから (7)その他 (具体的に; ) 3.性別は? 回答( ) (1)男性 (2)女性 4.年齢層は? 回答( ) (1)10~20 代 (2)30~40 代 (3)50~60 代 5.日本で日本語を勉強し始めて何年になりますか? 回答( ) (1)1年 (2)2年 (3)3年 (4)4年 (5)4年以上 6.これまでに以下の試験を受けたことがあれば、差し支えなければその点数または級を、回答欄へ記入して下さい。 (1)日本語能力試験 回答( ) (2)その他 (試験名と点数/級など; ) 7.日本語は日常的に使いますか? 回答( ) (1)アルバイト先で使用している (2)学校以外でも勉強している (3)旅行などでよく使う (4)学校の勉強で使用する (5)その他 (具体的に; ) 8.日本に来る前に、あなたの母国で日本語を勉強しましたか ? 回答 ( ) (1)はい (2)いいえ 9.どこで勉強しましたか? 回答 ( ) (1)日本語学校に行った(2)自分の母校で日本語の授業を受講した(3)どこへも行かず、自分で勉強した (4)その他 (具体的に; ) 10.日本に来る前に日本語をどれくらい勉強しましたか? 回答 ( ) (1) 1ヶ月から2ヶ月 (2) 2ヶ月から3ヶ月 (3) 3ヶ月から5ヶ月 (4) それ以上どれくらい( ) 11.日本語の勉強は好きですか? 好きであればその理由は何ですか? 回答( ) (1)間違っても厳しく指摘されないから(2)試験の成績が良かったから(3)先生がよくほめてくれたから (4)先生の教え方が楽しかったから (5)その他(具体的に; ) 12.日本語の勉強は嫌いですか?嫌いであればその理由は何ですか? 回答( ) (1)発音を何度も訂正されたから (2)文法が難しいから (3)人前で話すのが嫌だから (4)先生に怒られたり、クラスの人に笑われるから (5)試験の点数が悪かったから (6)その他(具体的に ) 13.あまり日本語に自信がなくても人前で自分の意見は積極的に話すタイプですか? 回答 ( ) (1)はい (2)いいえ (3)その他 (具体的に ) 14.人前で日本語で話すのが苦手な人は、その理由は何ですか? 回答( ) (1)人前で話すのは恥ずかしいから (2)人前で話すと緊張するから (3)発音に自信がないから (4)どう話せば相手に通じるか考えがまとまらないから (5)変な日本語だと相手から笑われたり、ばかにされたりしないかと不安だから (6)その他(具体的に; ) 238 Part II: 情動(emotion)に関すること 下表(1)~(40)の 40 項目に対し、お手数ですが全部に、下記1,2,3,4の選択肢の中から現在のあなたの 気持ちに当てはまる番号を一つだけ選択し回答欄へ記入して下さい。あまり謙虚にならず、率直にお答え下さい。 これらの項目は人間の感情がコミュニケーション能力にいかに作用するか調べる為のものです。 1 2 3 4 ↓ ↓ ↓ ↓ まったくそうでない まあまあそうでない まあまあそうである まったくそのとおりである (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27) (28) (29) (30) (31) (32) (33) (34) (35) (36) (37) (38) (39) (40) 項 目 言語(日本語/英語)について、自分の能力に自信がある。 自分は話すのが得意である。 自分の話を受け入れるよう相手を説得しようとする。 問題解決に必要な意見は主張する。 日本語/英語での話し方が上手とほめられて自信がついた。 人に笑われても気にせずしゃべる。 発音、文法、語彙の誤りは気にせずしゃべる 自分の日本語力/英語力が伸びると思うと、誤りを指摘されても気にせずしゃべる。 人が理解するかどうか気にせずしゃべる。 意味内容が重要であれば、勇気をもって話すことが大切と言われて話すようになった。 日本語/英語について、自分の能力に自信が持てない。 人前で話す場合、間違うのではないかと不安になる。 試験や時間制限内に話そうとすると、自分自身をうまく表現できない。 公式な場で話す場合、緊張する。 発音、語彙、文法などの間違いを指摘されてから話すのが嫌になってあまりしゃべらない。 外国の人や文化を理解するおもしろさを教えられ、日本語/英語を勉強している/した。 他人と一緒にグループ・ワークをするのが好きである。 他人の話を聞くのが好きである。 他人の話に自分もそのとおりだと感じやすい。 自分を理解してもらうとともに他人を理解する相互理解に重点を置くようになった。 義務感から日本語を勉強している。 自分のほうから他人に話しかけたりしない。 ひかえめな性格であるため、人前であまり話さない。 予期しない質問にすぐに答えられない。 間違うのが恥ずかしいので、なるべく話さないようにする。 時代のニーズに対応するためコミュニケーション力をみがいている。 誰とでも恐れずに気軽に話ができる。 自分の存在を口頭でアピールするのが上手と思う。 自分から進んで他人とのコミュニケーションをする。 自分の話を受け入れてもらえるよう積極的に相手に働きかける。 外国文化等に関心があるが、コミュニケーションの手段である日本語/英語がなかなかうまくならない。 自分の発言に対し反省しがちである。 グループで話し合うことが苦手である。 人前で話をするのが恥ずかしい。 間違えたりしないか心配しながら話すタイプである。 日本語/英語を話す力が伸びないが、継続が大事と教えられ、あきらめないで勉強を続けている。 相手の話を理解しようとする。 意味内容を理解してもらえなくても気にしない。 語彙、文法の誤りにこだわらない。 人の誤り(発音、文法、語彙)に対して気にしない。 239 回答 Part Ⅲ: 日本語/英語力に関する自己申告 (横軸の各技能について、あなたに最も近いと思うレベルを A1~C2 作成者荒木史子(吉島・大橋CEFR 2004 参照) の中からひとつ選び、その記号を一番下の解答欄に記入してください) 技 能 理解すること 話すこと 書くこと 表現 どこに住んでいるか あいさつ 新年挨拶やクリスマスカー や、知っている人たち について簡単な語句 はがき ドなど定型的な葉書であれ や文を使い表現でき る。 ば書ける。ホテルの宿泊者 カードに姓名や住所、国籍 などを記入できる。 日常的によく使われ 簡単なパンフレットや 身近な話題や活動に 家族、周囲の人々、住 お礼状やお祝い状など目的 る簡単なメッセージ 商品カタログ、メニュ ついて話し合いがで んでいる家の事、学 のはっきりした短い簡単な や短いアナウンスの ー、予定表などから、情 きる。短い社交的な 歴、職歴など簡単な語 手紙であれば書ける。 A2 要点を聞き取れる。 報を取り出せる。 簡単な やり取りができる。 句や文を使って説明 できる。 短い個人的な手紙は理 解できる。 身近な話題について、 日常語で書かれた仕事 日本/英語圏を旅行 自分の経験や計画に 身近な出来事や体験につい ゆっくり、はっきりし 関連の内容なら理解で 中通常起こる状況に ついて、日常的によく て、感想や印象に残ったこ た話し方であれば、ラ きる。出来事、感情、希 対処できる。日常生 使われる語句や文で、 となどを手紙やレポートに B1 ジオやテレビ番組の 望など表現した手紙を 活に関連あること、 簡潔に説明できる。本 書ける。 理解できる。 個人的な関心事につ や映画のあらすじを 要点を理解できる。 いて、準備なしで会 話し、感想を表現でき 話できる。 る。 関心のある時事問題 興味関心のある分野なら、 関心のある時事問題 新聞の論説記事や報告 りゅうちょう 母語話者と 流 暢 に や幅広い話題につい 分かりやすく、くわしい説 や身近な話題であれ 書が読める。 現代文学の 自然にやり取りがで て自分の見解を分か 明文を書くことができる。 ば、長くて複雑な話し エッセイは読める。 きる。身近な内容の りやすく,くわしく説 エッセイやレポートで情報 B2 でも、ラジオやテレビ 議論に積極的に参加 明できる。 を伝え、賛成や反対の理由 番組が理解できる。標 を書くことができる。 し、自分の意見を説 準語の映画ならほと 明、主張できる。 んど理解できる ほとんどの時事問題 専門外の分野の記事や 複雑な話題でも、くわ 相手の心情や立場を念頭に りゅうちょう 言葉を探さず 流 暢 や話題について、長く 技術的説明書が理解で しく論じ、一定の観点 置いた適切な文章様式で、 て複雑な話しでも、ラ きる。 文章の特徴を認識 に自然に自己表現が を展開しながら、適切 自己表現ができる。 ジオやテレビ番組の しながら文学テキスト できる。自分の意見 な結論にまとめ上げ どんなテーマでも、それに C1 最後まで全部を聞き を理解できる。 を正確に表現し自分 ることができる。 ふさわしい文章様式と、き 取れ理解できる。 の発言をうまく他の ちんとした論理構成で、主 話し手の発言にあわ 張の重要点を上手に強調す せることができる。 るレポートを書ける。 慣用表現、口語体表 状況にあった文体で テーマにふさわしい格調高 母語話者が早口で話 ちゅうしょうてき 抽 象 的 で言語的にも 現を使いこなし、ど 流暢に、はっきりとし い文章と上手な論理構成 くせ しても、話し方の癖に 複雑な文学書や難しい んな会話や議論でも た論述ができる。説得 で、主張の独自性、優位性 C2 慣れさえすれば、どん 論理構成の学術書、専門 参加できる。流暢に 力ある論理構成で、相 を鮮明に印象付けるレポー な種類の話し言葉も 的記事などあらゆる形 自己表現し詳細に細 手が賛成してくれや トを書ける。 簡単に聞き取り理解 式の著作物を容易に読 かなニュアンスを伝 すい表現ができる。 文学作品の概要や評を書く ことができる。 める。 えられる。 できる。 回 答 聞くこと ゆっくり、はっきりと 話してもらえば、日常 的によく使われる単 A1 語や語句を聞き取れ る。 読むこと 国名や地名、駅名、案内 表示など日常的によく 使われる単語や単純な 文を理解できる。 やり取り ゆっくり、はっきり と話してもらい、聞 き直しやヒントを出 してもらえば、簡単 な言葉でやり取りで きる。 240