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大学生向け1

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大学生向け1
高レベル放射性廃棄物
-地層処分への取り組み-
原子力発電環境整備機構(NUMO)
P. 0
目 次
1.原子燃料サイクルと放射性廃棄物
2.地層処分とは ?
2-1.立地選定において考慮すべき事項
(火山、地震、地下水を例として)
3.地層処分事業へのこれまでの取組み
4.新しい取り組みに向けて
P. 1
1.原子燃料サイクルと放射性廃棄物
P. 2
わが国における商用原子力発電所(2015年6月末)
⇒43
⇒54
:2015年3月廃炉決定
出典:電気事業連合会,原子力・エネルギー図面集2015に加筆
3
出典:電気事業連合会,原子力・エネルギー図面集
4
(2)放射性廃棄物の分類と対応する処分概念
廃棄物分類
主な発生源
処分概念
高レベル放射性廃棄物
再処理施設
地層処分
再処理施設、
MOX燃料加工施設
地層処分
/余裕深度処分/
浅地中処分
放射能レベルの
比較的高い廃棄物
原子炉施設
(廃止措置等)
余裕深度処分
放射能レベルの
比較的低い廃棄物
原子炉施設
(操業、廃止措置等)
浅地中処分
(ピット処分)
放射能レベルの
極めて低い廃棄物
原子炉施設
(操業、廃止措置等)
浅地中処分
(トレンチ処分)
ウラン廃棄物
ウラン濃縮・加工施設
浅地中処分
/余裕深度処分/ (+地層処分)
RI・研究所等廃棄物
RI使用施設、研究施設等
浅地中処分
/余裕深度処分/ (+地層処分)
TRU 廃棄物
(長半減期低発熱放射性廃
棄物)
低
レ
ベ
ル
放
射
性
廃
棄
物
発
電
所
廃
棄
物
5
浅地中処分(ピット処分)の概念
浅地中処分(トレンチ処分)
(日本原子力研究開発機構 廃棄物埋設実地試験
)
地層処分の概念
余裕深度処分の概念
地上施設:1~2km2程度
1km2=ディズニーリゾート
(ディズニーランド&シー)
地下施設:10km2程度
地
下
(
東3
京0
タ0
ワメ
ーー
ト
3ル
3よ
3り
m深
)
い
高レベル放射性廃棄物処分施設(イメージ)
出典:資源エネルギー庁 「放射性廃棄物のホームページ」(http://www.enecho.meti.go.jp/rw/gaiyo/gaiyo03.html),他
6
2.地層処分とは ?
P. 7
原子燃料サイクルと地層処分対象の放射性廃棄物
将来発生見込みの合計
約40,000本 (平成33年頃)
ウラン
燃料加工
既に発生した
使用済燃料を換算
約25,000本
(平成25年10月末)
回収ウラン・
プルトニウム
(約95%)
貯蔵管理中
(JNFL 1788本 JAEA
247本)
2,035本
(平成25年10月末)
高レベル放射性廃棄物
(約5%)
燃料
再処理
平成33年頃までの累計
(ガラス固化体の発生量)
MOX燃料加工
ガラス固化体
使用済燃料
原子力発電
低レベル放射性廃棄物
(TRU廃棄物*)
*:放射能レベルの高い廃棄物のみ地層処分対象 約18,100 m3 発生見込み
(300m以深)
P. 8
高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)とは?
高レベル放射性廃棄物の特徴
高レベル放射性廃棄物は,原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理して,ウランとプルトニ
ウムを取り出した後,残った核分裂生成物などをガラス原料と融かし合わせて固化体にしたもの。
放射線量が高く,発熱量が大きい。
再処理工場
約5%
核分裂生成物等
再処理
ガラス原料
約95%
使用済燃料
(約4m)
ガラス固化体
製造時の数値
・高さ:約1.3m
・直径:約40cm
・重さ:約500 kg
・固化ガラス容積:約150ℓ
表面線量:約1,500 Sv/h
放射能:約2000万GBq
表面温度:200℃以上 ※
※周囲の環境条件により異なる
Sv:シーベルト
G:ギガ(10億倍)
Bq:ベクレル
ガラス溶融炉
排気
ウランとプルトニウ
ムを回収し,燃料
として再利用
電極
溶融ガラス
溶融ガラス
キャニスター
(ステンレス製容器)
固化ガラス
(電気事業連合会,
2011を編集)
P. 9
高レベル放射性廃棄物の放射能は非常に長期間残る
高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の放射能は製造時には非常に高く、1000
年後で数千分の1程度になるものの、ウラン鉱石と同程度になるには数万年以上か
かる。
⇒ 超長期間にわたり、人の生活環境に影響を与えないようにしなければならない。
※
※ ガラス固化体1.25本分に相
当する固化ガラスの重量
※ 重さ約500kgのガラス固化
体1本のうち、容器等を除く
固化ガラスの重量は約
400kgなので、
400kg×1.25本=500kg
と計算
P. 10
ガラス固化体の発熱量
製 造 時
約 2kW
白 熱 電 球 20
約個 分
50年 後
100年 後
約 400W
白 熱 電 球 4約個 分
約 100W
白 熱 電 球 約 1 個 分
1000年 後
約6 W
使 い 捨 て カ イ ロ 約 1 個 分
P. 11
高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)はどのように管理されているか
• 核分裂する成分はほとんど含まれておらず、爆発
の危険性はない。
• 厚さ約2mの床で遮蔽すれば、その上で人間が作
業可能。
操業中の
安全確保対策
出典:日本原燃㈱
ガラス固化体の貯蔵
(30~50年間冷却のため貯蔵管理)
床の厚さ
2m
高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター
出典:日本原燃㈱
平成23年双方向シンポジウム資料より一部抜粋・加筆
12
地層処分の安全確保の基本的な考え方
地層処分は,長期間にわたる人間の管理を必要としない処分方法。
放射性廃棄物の影響を防ぐため,人間の生活環境から「隔離」し,
地下深部に「閉じ込める」ことによって,安全を確保。
地層処分の安全確保の原則*1,2
放射性廃棄物を人間の生活環境から隔離する
放射性廃棄物を地下深部に閉じ込める
*1:IAEA, 2006, Geological Disposal of Radioactive Waste, Safety Requirements, IAEA Safety Standard Series, No.WS-R-4
*2:IAEA, 2011, Disposal of Radioactive Waste, No.SSR-5
P. 13
放射性物質を閉じ込める多重のバリア
・放射能が人間に影響を及ぼさないレベルに下がるまで放射性物質を長期間閉じ込める
ために、多重のバリアを施す
・多重バリアは、ガラス固化体、オーバーパック(金属製容器)、緩衝材(締め固めた
粘土)からなる人工バリアと、厚い岩盤による天然バリアから構成
・ 放射性物質をガラ
ス構造に取り込む
・ 水に溶けにくい
人工バリア
ガラス固化体
•放射能が高い期間、 オーバーパック
(金属製の容器)
地下水とガラス固
化体の接触を阻止
地
下
3
0
0
メ
ー
ト
ル
以
深
•低透水性
緩衝材
•放射性物質を吸着
(締め固めた粘土)
し、移動を遅延
天然バリア
•放射性物質を吸着
し、移動を遅延
岩盤
緩衝材
岩盤
P. 14
地下の優位性
・地下は地表に比べ自然現象に左右されにくく、人の行為の影響を受けにくい
・地下深部では様々な変化が緩慢(地下水の動きが非常に遅い、地下深部は酸素を
ほとんど含まないため、金属が腐食しにくい)
・放射性物質は岩盤に吸着される(放射性物質の移動が遅くなることにより、その
間に放射能が弱くなる)
自然現象
人の行為
ものの動き
(100m動くのに必要
な時間)
金属の腐食
地表
地震、火山、断層、
台風、地滑り、
津波、隕石、他
破壊、爆発、火事、
公害、事故、戦争、
テロ、他
空気:台風
水 :河川
~数秒
~数分
腐食しやすい
地下
火山、断層
地下水の動きが非常に遅い
深い岩盤ほど、岩盤中の鉱物の隙
間や亀裂が小さく、地下水が動き
にくくなる
掘削
放射性物質は岩盤に吸着
空気:なし
水 :~数万年以上
(地下水)
腐食しにくい
鉱物の物理・化学的な性質により、
放射性物質は岩盤に吸着される
酸素をほとんど含まない
地下水は地下深部へ浸透していく
につれ、土壌中の微生物の活動等
により酸素が消費されるため、酸
素がほとんどない状態に変化する
P. 15
ガラス固化体の役割(人工バリア)
◆ガラス固化体は、放射性物質を閉じ込める役割を持つ(放射線、熱にも強い)
・ガラスは分子構造の中に放射性物質を閉じ込めることが可能で、割れても放射性物質が漏れ出すこと
はない
・ガラスは水に溶けにくく(ガラス固化体が全て溶けるのに約7万年と評価※)、熱にも強い
ガラス固化体
100万年前の火山ガラス
【ガラス固化体の仕様例】
材質:ガラス
寸法:高さ 約1.3m
直径 約40cm
重量:約500kg
ガラス容積:約150ℓ
※ガラスの溶け出しに対する評価
<評価条件>
・ガラスの溶ける速度
長期間模擬地下水などに浸した
試験結果をもとに設定
・ガラス固化体の状態
ガラス固化体の表面積が10倍に
なったものが地下水に接触して
いると仮定
ガラス固化体1本が溶解する時
間は約7万年
およそ100万年前に堆積
した泥質層の中に埋まった
「火山ガラス」からは、ガ
ラスの成分の溶けだしがほ
とんどないことが確認され
ている(千葉県にて産出)
(核燃料サイクル機構(現
日本
ガラス固化体は網目構造の中に放射性物 原子力研究開発機構)パンフレッ
質を取り込み長期間安定な状態を保つ ト「地層のことを考える」)
P. 16
オーバーパックの役割(人工バリア)
◆オーバーパックは、ガラス固化体と地下水の接触を、1000年以上遮断する役割を持つ
・地下の深部では酸素が少ないため、金属の腐食は極めてゆっくりとしか進まない(長期腐食実験
の結果、1000年間におけるオーバーパックの腐食量は、地下深部の環境条件の不確実性などを
考慮して大きめに評価しても約3cm程度)
オーバーパック
ガラス固化体
長期腐食実験などを踏まえ
て、1000年間の腐食量は
大きめに約3cmと想定
【オーバーパックの仕様
例】
材質:炭素鋼
寸法:高さ 約1.7m
直径 約80cm
厚さ 約20cm
(※)
重量:約6トン
※外からの圧力に対する安全性
や、オーバーパックを透過する
放射線による影響の低減などを
考慮して、必要な厚さを約
20cmと設定した例
鉄は酸素がない環境ではほとんど腐食しない
英国インテシュルの古代ローマ軍の
要塞跡の鉄釘(約1900年前)
これまで考古学で出土した鉄製品の長
期腐食事例からは、1000年間の鉄製
品の腐食深さは0.1~1.4cm
P. 17
緩衝材の役割(人工バリア)
◆緩衝材は、オーバーパックへの地下水の浸透や、放射性物質の移動を遅らせたり、放射性物
質を吸着する役割などを持つ
・緩衝材は、天然の粘土(ベントナイト)が主成分
・ベントナイトは吸水すると膨らみ、粒子間の隙間を埋めることで水を通しにくくする性質を
持つ
 堺市下田遺跡から発掘された銅鐸
 粘土の中で、1800年間腐食がほと
んどなく、金属光沢が保たれていた
70cm
水
緩衝材
砂の粒子
ベントナイト粒子
ベントナイトの
吸水による膨らみ
吸水により膨らんだ
【緩衝材の仕様例】
ベントナイト粒子
材質:ベントナイト70%、ケイ砂30%
ベントナイトに吸
寸法:高さ 3.1m、外径 約2.2m、内径 約80cm
着した放射性物質
厚さ 約70cm
写真提供
(財)大阪府文化財センター
P. 18
地層処分施設の概要
・地層処分施設は、必要な面積を確保でき、安定した場所であれば、様々な地域
に建設することが可能
・処分施設は、地上施設と地下施設からなり、地域の特徴に応じて建設する
地上施設の面積(めやす)
:約1~2km2
地下施設の面積(めやす):約10km2
地下施設
(高レベル放射性廃棄物)
地下施設
(地層処分低レベル
放射性廃棄物)
P. 19
処分施設のイメージ
建設から操業までの流れ
地上施設:1km2程度
管理棟内
地下坑道の建設
●
ボーリング孔
アクセス坑道
●
埋め戻し完了
埋め戻し完了
ガラス固化体の定置
操業中
操業中
●
●
●
●
●
建設中
連絡坑道
地下施設:延べ10km2程度
処分パネル
●
処分坑道の埋め戻し
20
安全性を確認するための計算例(基本的なケース)
評価上,1,000年後にオーバーパックが機能を失ってガラス固化体が溶け出し,放射性物質が地
下水とともに岩盤および断層破砕帯を移動して地表に到達すると仮定。
岩盤の物性や地下水の流れる速さなどは,日本の一般的な地質環境を仮定。
放射性物質が地表に現れる量は徐々に大きくなるが,放射能レベルは時間とともに減衰するため,
被ばく線量はある時点を境に減少する(下記計算例では,80万年後に年間0.005μSv)。
放射性物質を人
が摂取すると仮定
被ばく線量の計算例(基本的なケース)
河川
帯水層
岩盤
処分施設
断層破砕帯
(流速:50m/年と仮定)
放射性物質を
含む地下水
100m (流速:0.05~50m/年の間で正規分布すると仮定)
被ばく線量(μSv/年)
堆積層
放射性物質の地表
への出現量の増大
線量の最大値
0.005μ Sv
0
10万年
80万年
100万年
放射能レベル
の減衰
1、000万年
処分後の年数
シナリオとして、1000年後にオーバーパックが機能を
失い、ガラス固化体が溶け出し始めると仮定
21
安全性を確認するための計算例(不確実性を考慮したケースを含む)
基本的なケースの他に異なる岩盤を仮定した場合や,埋め戻しの施工不良,将来の地盤の隆起・
侵食など,様々な不確実性を考慮したケースについても計算を実施。
各ケースの最大線量は諸外国で提案されている安全基準を下回る(※断層が処分場を直撃する仮
想的なケースでも安全基準と同等レベル)。
処分場の候補地が決まれば,より詳細な条件にて被ばく線量を評価し,処分場の選定や,工学的
対策に反映させる。
様々な条件における被ばく線量の最大値
諸外国で提案されている安全基準(100~300μ Sv/年)
最大線量 (μ Sv/年)
※仮に1000年後に
断層が処分施設を
直撃するとしたケー
ス :160μ Sv/年
わが国の自然放射線レベル(900~1200μ Sv/年)
Case 1:基本的なケース(レファレンスケース)
仮に隆起・侵食
により地表が削
られ処分施設が
地表に接近する
としたケース
基本的なケース(リファレンスケース)
- 岩種:結晶質岩(酸性)
- 地下水:降水系
- 放射性物質が地表に到達する場所:河川
- 地形:平野
Case 2-30、32:環境の多様性を考慮
- 岩種: 6種類
- 地下水:降水系、海水系
- 放射性物質が地表に到達する場所:
河川、沿岸海域、 深井戸
- 地形: 平野、丘陵、山地
Case 31:緩衝材厚さ0.7m→0.4mに変更
Case 33-34:データ、モデル、シナリオの不確実
性を考慮
仮に天然バリア機
能(岩盤の吸着等)
がないとしたケース
1万年
(核燃料サイクル開発機構(現 日本原
子力研究開発機構)、1999を編集)
10万年
100万年
1000万年
処分後の時間 (年)
1億年
- ガラス溶解速度、岩盤の透水量係数データなどの不
確実性を考慮
- コロイドによる核種の移動促進を考慮
- 隆起・侵食を考慮(隆起・侵食速度 = 1mm/年)
- 埋め戻し・プラグの施工不良を考慮
Case 37: 天然バリア機能を考慮しない
22
日常生活と放射線
人工放射線
自然放射線
放射線の量
平成23年2月 双方向シンポ資料
(ミリシーベルト)
ブラジル・ガラパリの
放射線(年間、大地などから)
胸部X線コンピュータ断層
撮影検査 (CTスキャン)(1回)
宇宙から 0.39
1人当たりの自然
放射線(年間)
(世界平均)
大地から 0.48
一般公衆の線量限度(年間)
(医療は除く)
食物から 0.29
岐阜
神奈川
吸入により
(主にラドン)
1.26
国内自然放射線の差(年間)
胃のX線集団検診(1回)
(県別平均値の差の最大)
胸のX線集団検診(1回)
原子力発電所(軽水炉)周辺の線量
目標値(年間)
東京-ニューヨーク航空機旅行(往復)
(高度による宇宙線の増加)
人工放射線
TRU廃棄物からの地下水等の
媒介による年間最大線量
※処分後約1万年後に最大
(実績は0.001ミリシーベルト未満で、
この目標値を大幅に下回っている)
六ヶ所再処理工場から
の放出により、施設周辺
で受ける線量評価値(年
間)
高レベル放射性廃棄物からの地下
水等の媒介による年間最大線量
※処分後約80万年後に最大
出典:資源エネルギー庁「原子力2008」に一部加筆
23
2-1.立地選定において考慮すべき事項
(火山、地震、地下水を例として)
日本の地質環境を考慮した対策
・日本は火山や地震が多く、地下水が豊富といった特徴がある
・これらに対処するために適切な処分施設建設地を選定し、工学的な対策を講じることで対応可能
火山・地震・断層が多い
日本の地質環境
地下水が豊富
処分施設の損傷
安全性への影響
地下水による放射性物質の移動
対
火山や断層等を避けることで、
地層処分にとって安定な場所を選定
火山活動
地震・断層活動
策
適切な多重バリアシステムを構築
(工学的な対策)
人工バリア
処分施設
天然バリア(岩盤)
25
火山の回避
数百万年程度の期間、火山ができる位置は
ほとんど変わっていません。
258万年前~78万年前
に活動した火山
「日本の火山(第3版)
(産業技術総合研究所地質調査総合センター,2013)を改変」
78万年前~現在
に活動した火山
78万年前 :中期更新世の始まり
258万年前:第四紀の始まり
P. 26
地震の影響
・地震が地層処分システムに影響を与える可能性として,「地震の揺れ」,
「活断層によるずれ」,「地下水特性の変化」などが考えられる。
地下利用深度;数十m以浅
断層活動
活断層によるずれ
地下水特性の
変化
地震の揺れ
処分場設施設深度;300m以深
(震源;地下数km~数十km)
P. 27
「地震の揺れ」
・地震の揺れは,一般に地下の方が地上に比べ小さく,このことは観測や経 験に
よって知られている。
・処分場閉鎖後,埋設されたガラス固化体は周囲の岩盤と一体になって揺れるため,
地震によって影響を受ける可能性は非常に小さい。
1200
震度7直下型地震
における被害事例
UD
上下成分
南北成分
NS
東西成分
EW
1000
地中加速度(gal)
地表の大きな被害
に対し,トンネル
の被害は軽微
揺れは地上に比べて
地下の方が大きい
800
600
揺れは地上に比べて
地下の方が小さい
地表の被害
400
トンネル内の被害
KiK-net(防災科学技
術研究所)の観測デー
タを用いて作成
200
0
0
200
400
600
800
1000
1200
地表加速度(gal
東北地方太平洋沖地震で観測された
地上と地下の地震加速度の比較
新潟県旧山古志村の木沢トンネル
(2004年10月中越地震)
(土木学会(2005):「平成16年新潟県中越地震第一次調査団調査速報」を編集)
P. 28
「活断層によるずれ」① (全国)
断層活動は過去数十万年にわたり同じ場所(活断層)で繰り
返し起きています。
活断層の分布
活断層
~ 活断層とは ~
過去数十万年前以降に繰り返し活動し、
将来も活動する可能性のある断層のこと。
~ 活断層の影響範囲とは ~
断層周辺の岩盤の破壊や変形が生じてい
る領域、ならびに将来、断層が伸展した
り分岐する可能性がある領域のこと。
数百万年前から、プレート運動に大きな
変化はなく、一度できた断層はそこが弱
面となって繰り返し活動することとなり
ます。
出典:活断層データベース(産業技術総合研究所
https://gbank.gsj.jp/activefault/index_gmap.html)
P. 29
「活断層によるずれ」② (特定地域)
・主要な活断層を避けた処分候補地において,さらに地上や地下からの詳細な
調査や観測を行うことによって,未確認の断層や地上にあらわれていない断
層の有無を確認することが可能である。
・具体的な調査方法として,地質調査のほか,地形解析・トレンチ調査・物理
探査・ボーリング調査・微小地震観測などがある。
・これらの調査結果に基づき,活断層による影響を避けて処分施設を建設する。
断層
断層
活断層のトレンチ調査の様子 Fault:断層
(遠田ほか(2009) :「糸魚川-静岡構造線活断層系松本盆地
東縁断層群中央部の古地震調査」を引用)
物理探査による地中の断層の確認例
(物理探査学会(1992):「図解 物理探査」を編集)
P. 30
地下水の特徴
一般に,深いほど岩盤が固くて緻密であり,また地形(地表の傾きなど)の影響を受けにくいた
め,地下水の流れは遅い。
日本は地質変化に富み,地質構造が複雑であるため,地下水の流れ方も変化に富む。
⇒様々な調査・解析を行って,候補地周辺における地下水の流れや成分(化学組成など)を評価し,
設計に反映させる。
すき間が多く
流れやすい
地形の傾きの影響
で速く流れる
緻密で
流れにくい
地形の傾きの影響
が小さいため遅い
(経済産業省資源エネルギー庁パンフレット、2004を加筆)
P. 31
地下水の「流れの変化」の影響(1)
東北地方太平洋沖地震に伴う地下水位変化は,殆どの観測地点において2
~16ヶ月程度で地震発生前の状態に回復したが,2年程度経過後において
回復途上の観測地点もある。
このような知見を参考に,地下水位や水圧の変化に伴い地下水の流速が変
化する場合,さらにはそれらの現象が繰り返し発生する場合などを想定,地
層処分の安全性への影響を概略評価。
 地層処分施設周辺の地下水の流れが増加し,かつ断層の中
の流れも上昇したケースの影響評価を実施。
 地下水流動ポテンシャルの変動を動水勾配の変化で表現
 水頭の上昇と低下は周期的(1回/100年)に発生と仮定
地震発生前
地震後
帯水層
河川
海
断層・破砕帯
放射性物質の移行経路
③ 断層・破砕帯の透水性変化
動水勾配 (a.u.)
① 表層付近の帯水層の透水性変化
処分施設
平均動水勾配
② 処分場周辺の動水勾配変化
1E+2
1E+3
1E+4
1E+5
時間 (y)
P. 32
地下水の「流れの変化」の影響(2)
(動水勾配が最大で10倍になった場合の解析結果の例示)
自然放射線のレベル(2.2mSv/年日本平均)
被ばく線量 [mSv/年]
被ばく線量線量 [mSv/年]
10
10-2
10-4
10-6
赤枠部分の拡大図
10-3
0
線量の極大値の包絡曲線
10-4
10-5
線量の極小値の包絡曲線
解析結果の
分布範囲
-6
10
62.5
62.52
62.54
62.56
62.58
62.6
処分後の経過時間 [万年]
線量の極大値の包絡曲線
線量の極小値の包絡曲線
10-8
10-10 3
10
104
105
106
107
処分後の経過時間 [年]
P. 33
3.地層処分事業へのこれまでの取組み
P. 34
4.3 高レベル放射性廃棄物の地層処分
(1) 地層処分事業のマイルストーン
原子力発電環境整備機構
の設立(2000年10月)
国の政策
処分事業
処分地選定
「特定放射性廃棄物の
最終処分に関する法律」
処分施設建設
(2000年5月)
総合エネルギー調査会原子力部会報告
「処分事業の制度化のあり方」(1999年)
(原子力発電環境整備機構)
原子力安全委員会報告書「安
全規制の基本的考え方(1次
報告)」(2000年11月)
操業~
2040
原子力委員会放射性廃棄物処分懇談会報告「処
分に向けた基本的考え方」(1998年)
2030
2020
原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会
報告「処理処分方策(中間報告)」(1984年)
「地層処分を基本方針」
原子力委員会報告「放射性
廃棄物対策について」(1976年)
「当面地層処分に重点」
1976
地層処分研究開始
2010
2000
1992
幌延深地層研究所着工(2003
年)
瑞浪超深地層研究所着工(2002年)
第2次取りまとめ(1999年11月)※
「地層処分の技術的信頼性」
第1次取りまとめ(1992年)※
「地層処分の技術的可能性」
【※原子力委員会による
評価がなされた】
研究開発
(日本原子力研究開発機構
等)
35
地層処分と地上管理~それぞれの利点と課題
これまで様々な処分方法が国際的に検討されたが、最も有望な処分方法と
して地層処分が選択されている。
地層処分
地層処分
長期保管
利点
・数万年以上の長期に
わたって人間の関与な
しに隔離できる
・将来世代に負担を残
さない
・貯蔵技術自体は完成
された技術
課題
・長期間の安全性が直
接実証できない
・将来世代の負担が大
きい(日常の管理や設
備更新等が必要)
・数万年もの長い期間
の人間による管理は不
確実性が大きい
長期保管
その他、これまでに検討された方法
●宇宙処分(宇宙空間にロケットで運ぶ処分)
●海洋底処分(海の底に埋める処分)
●氷床処分(南極の氷の下に埋める処分)
●核種分離・変換(短半減期の核種への変換)
→ 発射技術の信頼性などに問題がある。
→ 条約により禁止。
→ 一部の核種は残るので、処分は必要。基礎技術開発段階。
P. 36
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律
(平成25年5月
総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会
参考資料から抜粋)
P. 37
地層処分事業の段階的な手続き(2014年4月まで)
平成20年代
中頃を目途
公
募
申国
入に
れよ
る
※
平
成
19
年
追
加
応
募
文
献
調
受 査
諾
※
※国が市町村に対し、
文献調査実施の申入
れを行う場合もあり。
その場合、市町村
長は、国の申入れに
対して受諾の可否を
表明。
概
要
調
査
地
区
選
定
概
要
調
査
精
密
調
査
地
区
選
定
平成40年 平成40年代
前後を目途 後半を目途
精
密
調
査
処
分
施
設 建 操
業
建
設 設 開
始
地
選
定
操
業
閉
鎖
措
置
モ
ニ
タ必
リ要
ンに
グ応
をじ
継て
続
選定に当たっては、知事及び市
町村長の意見を聞き、反対の場
合は次の段階に進まない。
調査段階:約 20年
約10年
約 50年
約10年
P. 38
地域の意見を反映する仕組み
報告書の公告・縦覧、送付、説明会の開催、意見書の提出、意見概要等の送付については法令
(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等)において実施することが定められている。
地域住民等
関係都道府県知事
および市町村長
NUMO
経済産業省
文献調査
調査計画の説明
送付
公告・縦覧
大規模・小規模説明会の開催
報告書の作成
説明会の開催
意見書
送付
地域に
おける検討
意見概要および
NUMOの見解の作
成
概要調査地区の選定
関係都道府県
知事および市
町村長の意見
を聴きこれを
十分尊重
実施計画の変更申請
閣議決定
意 見
概要調査地区選定完了
承認
※精密調査地区の選定、地層処分施設建設地の選定においても同様の手続き
39
4.新しい取組みに向けて
P. 40
(平成25年5月
総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 放射性廃棄物小委員会
資料から抜粋)
P. 41
(総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ
第12回会合資料)
42
42
(総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ
第12回会合資料)
43 43
(総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ
第12回会合資料)
44 44
基本方針の改定 (平成27年5月22日 閣議決定)
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律
第三条
 最終処分を進めるための基本的な方針 経済産業大臣策定、閣議
決定







最終処分の基本的方向
概要調査地区等の選定に関する事項
関係住民の理解の増進のための施策に関する事項
最終処分の実施に関する事項
最終処分の技術の開発に関する事項
国民の理解の増進のための施策に関する事項
その他重要事項
 主な改定のポイント
 将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で取り組みつつ、
可逆性・回収可能性を担保し、代替オプションの技術開発も進める。
 事業に貢献する地域への敬意や感謝の念の国民間での共有を目指す。
 国が科学的有望地を提示し、調査への協力を自治体に申し入れる。
 地域の合意形成や持続的発展に対して支援を行う。
 技術開発の進捗等について原子力委員会が定期的に評価を行う。
45
諸外国の地層処分の進捗状況
(2015.5現在)
許可
申請
準備段階
文献調査
概要調査
スイス *4
(2地点を選定)
精密調査
安全審査
建設/操業
フィンランド *7
スウェーデン
フランス *2
(ビュール近傍) (エストハンマル) (オルキルオト)
英国 *6
ドイツ *3
(ゴアレーベン)
*1
*2
*3
*4
*5
*6
*7
日本
カナダ
米国 *1
(ユッカマウンテン)
政権交代によりユッカマウンテン計画は中止の方針、今後の方策を検討中
ムーズ県とオート・マルヌ県の県境の候補区域において詳細調査実施中
ゴアレーベンでの探査は一時中止し、新たなサイト選定プロセスを検討中
NAGRAがサイト選定手続きの第2段階での絞り込みを終了し、2地域を公表
オンタリオ州とサスカチュワン州の19地域において第3段階のフィージビリティ調査を実施中
カンブリア州のサイト選定プロセスからの撤退により新たなサイト選定プロセスを公表
規制当局が安全審査を終了。国からの建設許可待ち
*5
46
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