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第2 障害者の地域生活や生活設計の支援 (PDF形式, 50.12KB)

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第2 障害者の地域生活や生活設計の支援 (PDF形式, 50.12KB)
第2 障害者の地域生活や生活設計の支援
1
生活支援
【現状と課題】
平成 15 年4月から、障害者の福祉サービスは、これまでの「措置制度」から障
害者によるサービスの選択と自己決定を可能にする「支援費制度」へと移行され
ました。本市では、各区に「障害者地域生活支援センター」を設置し、障害者の
サービスの選択と自己決定を支援するための相談支援を実施しています。
また、居宅サービス事業分野に民間介護保険事業者や障害当事者団体等の参入
も図られ、サービス基盤は充実してきましたが、サービス利用希望者も増えてお
り、サービス基盤を一層充実するとともに、サービスの質の向上を図っていく必
要があります。
地域生活に不可欠な「権利擁護」については、障害者や痴呆性高齢者の権利擁
護・財産管理などの相談・援助機関として「障害者・高齢者権利擁護センター」
を市社会福祉協議会が運営しており、その利用も着実に増加しています。
入所施設は、介護者が介護できなくなったときの生活の場として求められてき
たことなどから、本市の知的障害者入所更生施設では、入所者のうち 46.3%の人
は入所期間が 10 年以上となっておりますが、今後の障害者福祉のあり方として、
障害者の生活の場を入所施設から地域生活へと移行し、障害者自らが役割と責任
を持って生活できるようにすることが求められています。そのため、地域におけ
る相談支援体制の整備とともに、住宅やグループホームなど生活の場の確保が必
要です。
一方では、入所施設の待機者が増加しており、また、本市では施設入所者の約
半数が市外の施設に入所していることから、本市へ帰郷を希望する障害者の受け
入れ体制の確保も課題となっています。
精神障害者が地域で生活していくための基盤整備は他の障害に比べても十分で
はなく、居宅生活支援事業の充実や社会復帰施設の整備などを急ぐ必要がありま
す。
また、社会的入院者と言われる退院可能な精神障害者の退院促進が求められて
います。
重症心身障害児者施設は国、県の施設はあるものの本市所管の施設としては未
整備であり、重症心身障害児者サービスの拠り所としてその整備が急がれます。
また、在宅重症心身障害児者の通所先の確保や障害の重度重複化、障害者及び親
の高齢化への対応も課題となっています。
障害の早期発見・早期療育を目的として障害児総合通園センターや地域療育セ
−21−
ンターを整備し、主に学齢前児童の障害相談や療育を行っていますが、新たに相
談を希望する児童数は年々増加しています。とりわけ高機能自閉症、注意欠陥/
多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)は、就学後に気づくことが多く、その
ため学齢児の相談が増加していますが、こうした「障害」への対応も新たな課題
となっています。
近年、交通事故や脳血管障害などを原因とする高次脳機能障害に対する支援の
あり方を探るため、モデル事業を総合リハビリテーションセンターで実施してい
ますが、今後、支援策の具体化などが課題となっております。
−22−
【施策の体系】
(1) 地 域 生 活 を 支 援 す る サ ー ビ ス の 充 実
① 在宅サービスの拡充
② 外出支援策の推進
③ 日中活動の場の確保
④ 地域生活の場の確保
⑤ 福祉機器等の研究開発・普及促進と利用支援
⑥ 経済的施策の充実
(2) 地 域 生 活 へ の 移 行 促 進
① 障害者の地域生活への移行促進
② 精神障害者の退院と社会復帰の促進
(3) サ ー ビ ス の 質 の 向 上 と 多 様 な サ ー ビ ス 供 給 体 制 の 充 実
① サービスの質の向上
② 福祉事業従事者の育成と研修
(4) 権 利 擁 護 の た め の 支 援 の 充 実
① 権利擁護事業の推進
② 成年後見制度の利用促進
(5) 相 談 支 援 体 制 の 整 備 と 充 実
① 障害者地域生活支援センター等の拡充
② 様々な相談活動への支援の拡充
(6) 障 害 の 重 度 重 複 化 へ の 対 応
① 重度障害児者の生活の場としての施設の整備
② 重症心身障害児者への支援の拡充
(7) 「 手 帳 」 の 対 象 と な っ て い な い 「 障 害 」 へ の 対 応
(8) ス ポ ー ツ 、 文 化 芸 術 活 動 の 振 興
−23−
【施策の基本的方向と主な事業】
(1) 地域生活を支援するサービスの充実
① 在宅サービスの拡充
障害者が住み慣れた地域で生活し、社会、経済、文化などのさまざまな分
野でいきいきと活動できるようにするため、自立生活を支援する在宅サービ
スを拡充します。
ア
ホームヘルプサービス事業の拡充
身体障害者、知的障害者、障害児、精神障害者、難病患者に対するホー
ムヘルプサービスの拡充とともに利用のしやすさなど利用者のニーズにあ
った内容となるよう充実を図ります。
イ
短期入所事業の拡充
入所施設の整備に併せて、短期入所の受け入れを拡充するとともに、通
所施設等においても日中受け入れの促進や短期入所事業を充実します。
ウ
デイサービス事業の拡充
障害児者の日中活動の場として、機能訓練、レクリエーションなどを提
供するデイサービス事業を充実します。
エ
配食サービスの拡充
現行の身体障害者に加え、配食サービスを知的障害者・精神障害者へも
拡充します。
② 外出支援策の推進
障害者の社会参加をより円滑にするために、外出支援策を推進します。
ア
ガイドヘルパーの充実
支援費制度に移行し、移動介護が居宅介護事業に組み込まれましたが、
障害児者の社会参加を促進するため、ガイドヘルパーの充実を図ります。
イ
身体障害者補助犬※1の利用促進
障害者の自立支援や社会参加の促進のため、身体障害者補助犬に関して
その育成費等の助成や、総合リハビリテーションセンターにおいて補助犬
の認定・相談事業を実施し支援を進めます。
ウ
福祉特別乗車券の交付
市営交通機関による移動を支援し、社会参加を促進するため、福祉特別
乗車券の交付を実施します。
−24−
エ
自動車による移動手段の確保
公共交通機関が利用できない障害者の移動手段を確保するため、タクシ
ー料金の助成、リフトカー運行事業、移送サービスなどの事業の促進に努
めます。
③ 日中活動の場の確保
地域でいきいきとした自立生活がおくることができ、社会参加や社会活動
を促進するため、さまざまな日中活動の場を確保します。
ア
知的障害者通所援護施設の整備促進
養護学校卒業後の訓練や生活の場として、知的障害者通所更生施設や知
的障害者通所授産施設等の整備を促進します。
イ
小規模作業所・重症心身障害児小規模通所援護事業の支援
地域における作業の場や生活訓練の場としての小規模作業所や、訓練・
レクリエーションの場としての重症心身障害児小規模通所援護事業の活動
を支援します。
ウ
重症心身障害児者通園事業の推進
重症心身障害児者が、訓練やレクリエーションなどのサービスを受けら
れる重症心身障害児者通園事業の実施を促進します。
エ
デイサービス事業の拡充(再掲・24 ページ)
オ
精神障害者地域生活支援センターや精神障害者通所授産施設の整備促進
日常生活の相談の場であるばかりでなく、社会参加やコミュニケーショ
ンの場・情報提供の場でもある精神障害者地域生活支援センターの整備と、
訓練・指導を行う精神障害者通所授産施設の整備を促進します。
④ 地域生活の場の確保
障害者が自立した生活をおくることができる住まいや生活の場の確保を図
ります。
ア
グループホームの拡充
知的障害者や精神障害者が、世話人の援助を受けながら、地域の中で共
同生活をおくるグループホームを拡充します。また、市営住宅のグループ
ホーム利用を推進します。
イ
福祉ホームの整備促進
重度の身体障害者が、地域で日常生活を営むことができるよう、身体障
害者福祉ホームの整備を促進します。また、現に住居を求めている精神障
害者の生活の場を確保するとともに、社会復帰のために必要な指導等を行
う精神障害者福祉ホームの整備を促進します。
−25−
ウ
住宅改造や整備への支援
住み慣れた住宅での生活の利便性を図るため、障害者の住宅改造の相談、
補助金の支給や住宅整備資金の貸付を引き続き実施します。
⑤ 福祉機器等の研究開発・普及促進と利用支援
障害者の自立した日常生活を支援するため、福祉機器等の研究開発・普及
促進と利用支援を図ります。
ア
福祉機器の研究開発の推進
総合リハビリテーションセンターにおける福祉機器等の研究開発を推進
します。
イ
福祉機器や自助具等の普及促進と利用支援の推進
なごや福祉用具プラザにおいて、福祉機器や自助具等の普及促進と利用
支援を図るため、福祉機器等の展示や相談事業等を推進します。
⑥ 経済的施策の充実
地域生活が安定的に送れるよう、各種手当や助成制度により、経済的施策
の充実に努めます。
ア
年金・手当の給付水準の確保
障害基礎年金、特別障害者手当などの支給にあたっては、国に対して引
き続きその充実を要望するとともに、国の制度との調整を図りながら、各
種手当制度の給付水準の確保に努めます。
イ
医療費助成の拡充
精神障害者を新たに対象とするなど、障害者医療費助成制度を拡充しま
す。
(2) 地域生活への移行促進
① 障害者の地域生活への移行促進
障害者の個別の状態やニーズにあった支援を充実することにより、本人の
希望にもとづいて、入所施設における集団的な生活から地域生活へと移行を
促進します。
ア
移行支援プログラムの作成
施設入所から地域生活へ円滑に移行するための支援プログラムを作成す
るため、その援助技術を確立し、利用者及び家族が安心して地域生活を選
択できるよう努めます。
イ
施設における自立訓練の推進
知的障害者入所更生施設等において、地域生活への移行を目標とした自
−26−
立訓練事業を推進します。
ウ
地域生活推進事業の実施
施設の専門性及びその機能を活用し、自立と社会活動への参加を促進す
ることを目的として、施設に地域生活推進員を配置し、地域生活の維持と
障害者の意思にもとづいた地域生活への円滑な移行を促進します。
エ
自立生活に向けた宿泊体験事業の実施
地域での自立生活を容易に受け入れられるよう、グループホーム等の生
活に向けた宿泊体験事業を実施します。
② 精神障害者の退院と社会復帰の促進
受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者(いわゆる「社会的入院者」)
の退院と社会復帰を促進します。
ア
地域サービス基盤の整備推進
精神障害者の退院や社会復帰を可能とするための精神障害者社会復帰施
設の整備、グループホーム・ホームヘルプサービス・相談機関の拡充、関
係機関の連携強化などを図り、地域サービス基盤の整備をより一層推進し
ます。
イ
精神障害者退院促進支援の実施
いわゆる「社会的入院者」に対して、退院を促進し、地域生活を促進する
ための方策を検討し、病院や社会復帰施設などと協力し、退院を支援して
いきます。
(3) サービスの質の向上と多様なサービス供給体制の充実
① サービスの質の向上
支援費制度のもとで、障害者自身が事業者やサービス内容を適切に選ぶこ
とができるよう、わかりやすい情報提供やサービスの質の向上を図ります。
ア
事業者情報等の適切な提供
障害者が事業者を適切に選択することができるよう、わかりやすい情報
を提供します。
イ
サービスの質の向上
事業者の参入促進によりサービスの量的確保を進めるとともに、事業者
への指導監査、苦情解決制度などにより、サービスの質の向上に努めます。
② 福祉事業従事者の育成と研修
生活相談、居宅サービスなどに従事するマンパワーの養成と従事者の質的
向上のため、サービスの担い手の養成事業を促進するとともに必要な専門研
−27−
修や生活援助のための総合的な研修を充実します。
ア
ホームヘルパーの研修の充実
障害者の特性や個別性を十分に理解した上で、サービスが提供できるよ
う、ホームヘルパーの現任研修を充実します。
イ
施設職員の研修の充実
施設職員の資質向上のため、施設職員研修を充実します。
ウ
障害者ケアマネジメント従事者等の養成
個別支援計画などを円滑に進めるための担い手であるケアマネジメント
従事者の養成研修を実施するとともに、専門性の高いスーパーバイザーの
育成に努めます。
(4) 権利擁護のための支援の充実
① 権利擁護事業の推進
障害者に対する虐待、セクシャルハラスメント、ドメスティックバイオレ
ンス等の被害が防止されるとともに、一人ひとりの人権が尊重され、障害者
の権利が守られることが必要です。
知的障害者など判断能力が十分ではない人が、地域で適切なサービスが受
けられるよう、権利擁護にかかる相談、福祉サービスの利用援助、金銭管理
サービスなどを行う障害者・高齢者権利擁護センターの機能を拡充するなど、
権利擁護事業を推進します。
② 成年後見制度の利用促進
施設入所や在宅サービスの利用などにおいて、契約締結など法律行為が困
難な場合には、成年後見制度を円滑に利用できるよう、後見等開始の審判請
求及び後見人等の報酬を助成する成年後見制度利用支援事業を推進します。
(5) 相談支援体制の整備と充実
① 障害者地域生活支援センター等の拡充
障害者が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けるためには、日常生活上
生じる課題について、身近なところで相談ができ援助できる体制が必要であ
り、その核となる障害者地域生活支援センターの拡充などを進めます。
ア
障害者地域生活支援センターの拡充
相談支援の核となる身体・知的障害者の地域生活支援センターや精神障
害者地域生活支援センターの設置を促進します。
−28−
イ
障害者就労生活援助センターの設置
就業面と生活面の支援を併せて行う障害者就労生活援助センターを設置
し、専門的な相談援助活動の一層の充実を図ります。
ウ
自閉症・発達障害支援センターの設置
知的な発達には遅れがないため、福祉施策の対象となっていない高機能
自閉症や、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などへの
相談支援や訓練の場として、自閉症・発達障害支援センターを設置するな
ど、必要な施策を実施することにより適切に対応していきます。
エ
地域での生活支援ネットワークづくりの推進
障害者地域生活支援センターが核となって、ケアマネジメントの実施な
どを円滑に進めるため、関係機関との連携を図り、生活支援ネットワーク
づくりを推進します。
② 様々な相談活動への支援の拡充
障害当事者による相談活動などの取り組みを支援するなど、障害者がより
相談しやすい環境づくりを進めます。
ア
障害当事者による相談活動等への支援
当事者自身が相談に応じる相談活動、障害者・家族等の自助グループ、
ボランティア団体等の諸活動などに対する育成、支援を実施し、より相談
しやすい環境づくりを進めます。
イ
消費者教育の実施
知的障害者などが、悪徳商法の被害にあわないよう消費者教育の実施に
取り組みます。
(6) 障害の重度重複化への対応
① 重度障害児者の生活の場としての施設の整備
地域生活の継続が困難な重度の障害者等の生活の場の確保のため、入所施
設については必要性を慎重に検討し整備を進めます。
ア
身体障害者療護施設・知的障害者更生施設の整備
常時医療的ケアが必要な障害者や重度の強度行動障害がある障害者など、
地域での自立した生活が困難な障害者が安心して生活できる場として、ま
た、将来、地域生活へ移行するための訓練の場として、必要性を慎重に検
討しながら、身体障害者療護施設・知的障害者更生施設を整備します。
また、施設の新規整備や改築にあたっては、プライバシーの確保に十分
配慮し、小規模化、個室化を推進します。
−29−
イ
障害児施設の機能の活性化
本市の障害児施設においては、18 歳以上の年齢超過の障害者が入所を余
儀なくされています。今後、地域生活への移行や障害者施設への移行を図
り、障害児施設の機能の活性化を図ります。
② 重症心身障害児者への支援の拡充
重症心身障害児者や重度重複障害児者の生活の場として、重症心身障害児
者施設を整備します。また、在宅の重症心身障害児者の日中活動の場を確保
するため、重症心身障害児者通園事業などの在宅支援策を拡充します。
ア
重症心身障害児者施設の整備
重症心身障害児者施設を整備し、入所児者の生活の場としてだけではな
く、短期入所や重症心身障害児者通園事業などを実施し、市内の在宅の重
症心身障害児者を支援します。
イ
在宅重症心身障害児者への訪問指導
在宅の重症心身障害児者を支援するため、訪問して医療や看護サービス
が提供できるよう検討を進めます。
ウ
重症心身障害児小規模通所援護事業の実施
地域において、5人以上の重症心身障害児者等に訓練やレクリエーショ
ンなど実施する通所援護事業を支援します。
エ
デイサービス事業等への受け入れ促進
障害者施設での重症心身障害者受入施設補助制度やデイサービス事業へ
の重症心身障害者等加算補助を実施することにより、重症心身障害児者の
日中活動の場を広げます。
オ
重症心身障害児者通園事業の推進(再掲・25 ページ)
(7) 「手帳」の対象となっていない「障害」への対応
現在は障害者福祉施策の対象となっていない高次脳機能障害や高機能自閉症、
注意欠陥/多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などに対して、必要な施
策を実施していきます。
ア
高次脳機能障害への対応
身体障害者手帳の対象とならないため、福祉施策の対象外となっている
交通事故や脳血管障害による高次脳機能障害者の支援については、総合リ
ハビリテーションセンターにおいて、支援のあり方等の検討を進めていき
ます。
イ
自閉症・発達障害支援センターの設置(再掲・29 ページ)
−30−
ウ
障害児総合通園センターの改築による支援の充実
学習障害(LD)や高機能自閉症などは、学齢児になってから気づくこ
とが多いことから、教育機関と療育機関が連携して対応していきます。ま
た、障害児総合通園センターの改築に際しては、学齢児への相談・支援の
機能を充実します。
(8) スポーツ、文化芸術活動の振興
障害者が、さまざまなスポーツや文化活動に参加できるよう活動機会の拡大を
図るとともに、スポーツ交流、文化芸術活動を通じた国際交流を支援します。
ア
レクリエーション施設等のバリアフリーの促進
レクリエーション施設や文化施設、スポーツ施設のバリアフリーを促進
します。
イ
レクリエーションやスポーツの指導員の養成
レクリエーションやスポーツの指導員を養成するとともに、障害者自ら
が指導員として参画できるよう養成し、活動機会の促進を図ります。
ウ
スポーツ交流、文化芸術活動を通じた国際交流の促進
スポーツ交流、文化芸術活動を通じ障害者の国際交流が促進されるよう
必要な支援に努めます。
※1 身体障害者補助犬:身体障害者補助犬法では、身体障害者等の自立や社会参
加を促進するため、公共的施設の利用にあたって盲導犬、介助犬、聴導犬の同
伴ができることを定めている。
−31−
2
保健・医療
【現状と課題】
精神保健・医療施策を推進していくためには、市民に精神障害や精神障害者を
正しく理解してもらうとともに、「心の健康づくり」に関する知識の普及を図るこ
とが大切です。また、精神障害者が地域で安心して暮らしていくためには、日常
生活の支援体制の整備、緊急に医療が必要となったときにいつでも相談・診察を
受けることができる精神科救急医療システムの充実、医療費の負担の軽減などが
必要とされています。
平成 11 年の厚生労働省による患者調査によると、全国の精神病床入院患者のう
ち、受け入れ条件が整えば退院可能な者(いわゆる社会的入院者)の数は約
72,000 人といわれています。本市では、精神病床入院患者約 4,500 人のうち、社
会的入院者の数は 1,000 人から 1,300 人と推計され、これらの人々の退院と社会
復帰が求められています。そのためには、地域サービス基盤(精神障害者社会復
帰施設、グループホーム、ホームヘルプサービスなど)の整備の推進と退院促進
を支援していくための方策の検討が重要です。
地域精神保健福祉活動の推進のため、各区の保健所は精神保健福祉相談や福祉
施策の窓口業務、社会復帰指導事業などを行っており、また、精神保健福祉セン
ターは、中核機関として、普及啓発、精神保健福祉相談、教育研修、技術援助、
精神科デイケアなどの業務を行っていますが、今後も一層の機能強化が求められ
ています。
障害を早期に発見し、重症化しないようにするためには、健康診査の実施や気
軽に相談でき、早期に療育を受けられる体制が必要です。本市では、保健所で乳
幼児健康診査などを行うとともに、障害児総合通園センターや地域療育センター
における発達相談に取り組んでいますが、今後、これらの相談機関と医療機関等
との連携のもとで障害の早期発見・早期療育が可能となるような体制整備がより
一層求められています。
20 歳以上での障害の原因としては、交通事故などによるけがのほか、生活習慣
病によるものも多いため、本市では、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸を図る
ことなどを目的として策定した「健康なごやプラン 21」により、市民の健康づく
りを支援しています。
総合リハビリテーションセンターは、身体障害者の相談から医療・訓練指導を
経て社会復帰にいたるまでの一貫したリハビリテーションサービスを提供してい
ますが、今後、身近なところで社会復帰のためのリハビリテーションを受けられ
ることが必要です。
−32−
【施策の体系】
(1) 精 神 保 健 ・ 医 療 施 策 の 推 進
① 精神障害や精神障害者に対する正しい理解の促進等
② 人権に配慮した適正な医療の確保
③ 精神障害者の退院と社会復帰の促進
④ 精神科救急体制を含めた地域ケア体制の整備等の推進
⑤ 精神障害者への医療費助成の拡充
⑥ 保健所・精神保健福祉センターの機能強化
(2) 障 害 の 発 生 予 防 及 び 早 期 発 見
① 生活習慣病の予防
② 乳幼児に対する障害の発生予防及び早期発見
(3) 総 合 的 な 医 療 施 策 ・ リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 充 実
① 医療施策の充実
② リハビリテーションの充実
(4) 保 健 ・ 医 療 ・ 福 祉 サ ー ビ ス の 連 携 強 化
① 保健・医療・福祉サービスの連携強化
② 災害時の救急医療体制の整備や心のケア
−33−
【施策の基本的方向と主な事業】
(1) 精神保健・医療施策の推進
① 精神障害や精神障害者に対する正しい理解の促進等
精神疾患は誰でもかかる可能性のある疾患であり、適切な治療により症状
の安定や消失、治ゆが可能な疾患であることの認識を普及し、精神障害や精
神障害者に対する正しい理解の促進を図ることが必要です。また、「心の健康
づくり」の重要性を踏まえた啓発活動を推進します。
そのため、講演会やセミナーの開催、定期刊行物の発行、地域住民との交
流会の開催支援などあらゆる機会を通じて、その普及啓発に努めていきます。
② 人権に配慮した適正な医療の確保
人権に配慮した適正な医療を確保するため、精神病院に対して実地指導、
実地審査を引き続き厳正に行うとともに、精神医療審査会において入院の要
否及び入院患者の処遇の適否の審査を適正に行います。
③ 精神障害者の退院と社会復帰の促進
受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者(いわゆる社会的入院者)の
退院と社会復帰の促進をします。
ア
地域サービス基盤の整備推進(再掲・27 ページ)
イ
精神障害者退院促進支援の実施(再掲・27 ページ)
④ 精神科救急体制を含めた地域ケア体制の整備等の推進
精神障害者が地域で安心して暮らせるため、救急体制を含めた地域ケア体
制の整備等を推進します。
ア
包括的地域支援プログラムの実施の検討
重度精神障害者の安定した地域生活の実現及び入院の減少を図るために、
医師・看護師・精神保健福祉士・作業療法士など多職種からなるチームが、
医療・福祉・リハビリテーションの包括的な訪問型地域ケアを提供する
「包括的地域支援プログラム」の実施を検討します。
イ
精神科救急医療システムの充実
緊急時に、24 時間いつでも速やかに医療を受けられる精神科救急医療シ
ステムを関係機関と連携して、充実させていきます。
⑤ 精神障害者への医療費助成の拡充
障害者医療費制度を精神障害者にも拡充します。
−34−
⑥ 保健所・精神保健福祉センターの機能強化
地域精神保健福祉活動を担う保健所や精神保健福祉センターの機能強化を
図るとともに、医療機関・施設・社会福祉事務所などの関係機関との連携を
強めます。
(2) 障害の発生予防及び早期発見
① 生活習慣病の予防
障害の原因にもなる生活習慣病の予防と疾病の早期発見のための健康教
育・健康診査の実施に努めます。
② 乳幼児に対する障害の発生予防及び早期発見
医療機関や保健所等における周産期医療や乳幼児健康診断の充実とともに、
育児にかかる不安や負担を軽減する相談体制や療育機関等関係機関との連携
の強化を図ります。
ア
市立病院における周産期医療センター・小児医療センターの整備
周産期医療センター・小児医療センターの設置により、妊産婦、胎児及
び新生児に対する一貫した医療の提供及び救急医療をはじめとする小児医
療の拡充を図ります。
イ
障害児総合通園センターの改築と地域療育センターの整備
障害児総合通園センターを改築し、相談・診断・療育の機能をより一層
充実するとともに、身近な地域で、相談・診断・療育まで一貫したサービ
スを受けられる地域療育センターの整備を促進します。
(3) 総合的な医療施策・リハビリテーションの充実
① 医療施策の充実
障害者が、障害に対する適切な医療の提供により、安心して地域生活がで
きるよう医療施策の充実を図ります。
ア
医療従事者の障害に対する理解促進
障害者がいつでも必要かつ適切な医療が安心して受けられるよう、医療
従事者の障害に対する理解促進、受診環境の充実に努めます。
イ
市立病院における障害者に対する診療の充実
市立病院において障害者が気兼ねなく安心して外来診療が受けられるよ
う必要な方策を検討します。
−35−
ウ
歯科医療の充実
歯科医師会が開設している歯科医療センターでの相談・診療のほか、障
害児者の歯科治療を積極的に実施する診療所等の情報提供を歯科医師会の
協力により実施するなど、障害児者の歯科医療の充実を図ります。
② リハビリテーションの充実
職場復帰や社会復帰に向け、適切なリハビリテーションの拡充を図るとと
もに、心理的支援や自立生活訓練、職業指導までの総合的なリハビリテーシ
ョンの提供に努めます。
ア
市立病院における医学的リハビリテーションの充実
市立病院整備基本計画にもとづき、各市立病院が機能分担を図りながら、
発病直後の急性期から慢性期までの医学的リハビリテーションを実施しま
す。
イ
総合リハビリテーションセンター事業の充実
障害者が地域へ復帰した後の身近な場所でのリハビリテーション(アフ
ターケア事業)の実施などに取り組みます。また、高次脳機能障害など新
たな障害へのリハビリテーションや支援のあり方についても検討を進めま
す。
(4) 保健・医療・福祉サービスの連携強化
① 保健・医療・福祉サービスの連携強化
障害者が入所・入院施設から地域生活へ移行することができ、また地域に
おいて適切なサービスが受けることができるよう、保健・医療・福祉サービ
スの充実と関係機関の連携強化を図ります。
② 災害時の救急医療体制の整備や心のケア
「東海地震」の対策強化地域に指定されたことなどから、大規模災害の発
災時における障害児者に対する救急医療体制の整備や、発災後の障害者の
「心のケア」についても検討を進めます。
ア
救急医療体制の整備の検討
大規模災害の発災時における障害児者に対する救急医療体制のあり方に
ついて検討します。
イ
発災後の障害者の「心のケア」についての検討
発災という大きな出来事や避難所生活など、新たな状況への対応が困難
な障害者に対する「心のケア」について検討を進めます。
−36−
3
教育・育成
【現状と課題】
本市内の義務教育段階の障害児童生徒は、平成 15 年5月現在、養護学校など障
害児教育諸学校に 650 人、市立の小・中学校の障害児学級に 1,172 人、通級指導
教室に 116 人が教育を受けています。
本市は知的障害児のための養護学校を4校設置しているほか、障害の種別や程
度に応じた障害児学級や通級指導教室の整備に努めており、障害児学級は、10 年
前の平成5年度の 205 学級から平成 15 年度には 293 学級と拡充してきました。今
後とも、一人ひとりの障害の状態などに応じた教育が求められております。さら
に、通常の学級では、高機能自閉症、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、学習障
害(LD)などの児童生徒の教育的ニーズに対する支援が求められています。
卒業生の進路状況では、市立中学校の障害児学級卒業生と市立養護学校の中等
部卒業生のほとんどが高等部に進学しています。そして、市立養護学校高等部を
卒業した後は、多くの卒業生が授産施設・作業所などに進んでいます。今後、就
職や授産施設などを希望する者が増加すると思われることから、養護学校高等部
での就職指導の充実、一般企業の理解や雇用促進、授産施設などの設置とともに、
労働、福祉の関係機関が連携し、障害者本人のニーズにあった進路を確保してい
く必要があります。
障害児総合通園センターに加え、身近な地域で障害の早期発見から早期療育ま
で一貫したサービスを提供する地域療育センターを整備しています。平成 15 年度
に北部地域療育センターを開設し、障害児総合通園センター、西部地域療育セン
ター、南部地域療育センターそよ風とあわせ、4センターとなりました。このほ
か、知的障害児、肢体不自由児、難聴幼児の各通園施設では、学齢前の幼児が通
園して療育を受けています。
早期療育を必要とする児童数は、保健所等での障害の早期発見により、年々増
加しており、療育体制のさらなる拡充とともに、近年、高機能自閉症などの明ら
かな知的遅滞のない発達障害児への支援が求められています。
−37−
【施策の体系】
(1) 相 談 ・ 支 援 体 制 の 拡 充
① 相談支援体制の拡充
② 学齢期等の生活支援
③ 共に学べる生涯学習の機会の拡充
(2) 早 期 療 育 の 充 実
① 早期療育体制の整備
② 多様化する児童の相談支援機関の機能の充実
(3) 学 校 教 育 の 充 実
① 教育的ニーズに応じた教育の推進
② 適切な指導の推進
③ 学校におけるバリアフリー整備の推進
④ 学校卒業後の多様な進路の確保
⑤ 幼児期・学齢期における共に育つ場・機会の拡充
【施策の基本的方向と主な事業】
(1) 相談・支援体制の拡充
① 相談支援体制の拡充
学齢前、学齢期、卒業後など生涯のあらゆる段階を通じて一貫した相談支
援体制を拡充します。
ア
各相談支援機関の連携強化
各相談支援機関(障害児総合通園センター、地域療育センター、教育セ
ンター、児童・身体障害者更生・知的障害者更生相談所、障害者地域生活
支援センターなど)の連携を図り、障害児者一人ひとりへの連続した相談
支援ができるよう連携強化を図ります。
イ
一貫した療育・教育のプログラム等の整備
乳幼児期、児童期、思春期の一貫した療育・教育のプログラム(療育、
自立訓練、親子療育など)や家庭への支援システムの整備を図ります。
ウ
養護学校と障害者雇用支援センター等の連携強化
養護学校高等部卒業者の多様な進路の確保を図るため、学校と雇用支援
センター、公共職業安定所等の連携強化を進めます。
−38−
② 学齢期等の生活支援
学齢期における「共に学び共に育つ」環境づくりを進め、放課後・土日・
長期休暇中の生活の場の確保を図ります。
ア
学童保育所での障害児の受け入れ促進
障害児が地域で共に放課後を過ごすことができるよう、学童保育所への
障害児の受け入れを促進します。
イ
障害児の児童デイサービス事業の拡充
小学校までの児童の訓練・レクリエーションの場として、障害児の児童
デイサービス事業を事業者の参入を促進するなど拡充に努めます。
ウ
中高校生の放課後・土日・長期休暇中の生活の場の確保
中高校生については、児童デイサービスの対象となっていないため、作
業の場や生活訓練の場づくりをめざすグループの活動を支援する障害児
(者)地域グループ訓練事業を実施するとともに、中学校及び養護学校に
在籍する障害児を一時的に保護し、日中活動の場を提供する事業を検討し
ます。
③ 共に学べる生涯学習の機会の拡充
障害者の社会参加を支援するため、障害者が生涯を通じて学習できる機会
を拡充します。
ア
生涯学習センター等のバリアフリー整備の推進
福祉都市環境整備指針によるバリアフリー整備に努め、障害者も利用し
やすい場とします。
イ
生涯学習を支えるボランティアの育成
障害者が共に学ぶことができるよう、障害の特性に対応した個別の支援
ができるボランティアの育成を図ります。
ウ
学習プログラム等の内容充実
障害者が学習しやすいよう学習プログラムや資料の内容充実を図ります。
−39−
(2) 早期療育の充実
① 早期療育体制の整備
より身近な地域で障害の早期発見、早期療育が可能となるよう早期療育体
制の充実を図り、障害児や家族の支援を推進します。
ア
障害児総合通園センターの改築と地域療育センターの整備
(再掲・35 ページ)
イ
地域における療育体制の整備
障害児の育成については、身近な地域において療育や指導を受けること
ができるよう在宅障害児療育相談事業(療育グループ)や肢体不自由児巡
回療育指導事業などを引き続き実施します。
ウ
福祉施設における療育機能の充実
障害児総合通園センターの療育機能の強化を図るとともに、知的障害児
通園施設など障害児施設における療育機能の充実を図ります。
エ
心のケアの体制整備
障害に対する未受容状態から受け入れができるよう、親の心理的負担を
軽減するための心のケアの体制整備を図ります。
② 多様化する児童の相談支援機関の機能の充実
高機能自閉症、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など、
多様化する児童の障害への専門的な対応が可能となるよう、相談支援機関の
機能を充実します。
ア
自閉症・発達障害支援センターの設置(再掲・29 ページ)
イ
障害児総合通園センターの改築による支援の充実(再掲・31 ページ)
ウ
強度行動障害への適切な対応
強度行動障害への適切な対応を図るため、専門的な療育機能の確立に努
めます。
(3) 学校教育の充実
① 教育的ニーズに応じた教育の推進
児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高めるため、
障害の状況や教育の場に応じた指導方法や学習形態の工夫改善に努めるなど、
障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を
行います。
−40−
② 適切な指導の推進
障害児教育を推進する上で、関係機関との連携強化など必要な対応をとる
よう努めます。
ア
適切な指導のための関係機関との連携強化
障害のある児童生徒一人ひとりへの適切な指導を進めるため、就学前か
ら学校卒業後までの教育に関する相談機関である教育センターはじめ教育
機関と、福祉、医療、労働など関係機関との連携強化を図ります。
イ
個別の教育支援計画の策定の推進
障害のある児童生徒の個別の教育支援計画の策定を推進します。
ウ
教員への障害に関する研修の充実
学習障害や広汎性発達障害など、障害に関する研修を充実し、障害のあ
る児童生徒への教育的ニーズに対応できる力を養成します。
③ 学校におけるバリアフリー整備の推進
学校における障害者用トイレやスロープの設置などの整備を進めます。
ア
肢体不自由児・病弱児などへの対応
肢体不自由児・病弱児など障害のある児童生徒が転入学した場合は、障
害者用トイレやスロープの設置などの整備を行うとともに必要に応じてエ
レベーターの設置についても検討します。
イ
障害者用トイレやスロープの設置
市立小中学校における障害者用トイレやスロープの設置を計画的に進め
ます。
④ 学校卒業後の多様な進路の確保
卒業後の生活として、就労をはじめとする多様な進路が確保されるよう、
養護学校などでの就労指導・進路指導の充実に努めます。
⑤ 幼児期・学齢期における共に育つ場・機会の拡充
幼児期・学齢期において、共に育つ場の機会を拡充するため、幼稚園・保
育所における障害児の受け入れ等を推進します。
ア
幼稚園・保育所における障害児の受け入れの推進
健康福祉局と教育委員会等の関係機関が連携し、幼稚園・保育所におけ
る障害児の受け入れを推進します。
イ
共に学び、遊べる交流機会の創出
学齢期の障害児を中心に、共に学び、遊べる交流機会の創出を図ります。
−41−
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