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イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に向けた世界的戦略の枠組み

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イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に向けた世界的戦略の枠組み
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イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に向けた世界的戦略の枠組み
Global strategic framework for the elimination of dog-mediated human
rabies
OIE, 16 March 2016
(仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六
今こそ行動する時だ!
2015 年 12 月 10-11 日にジュネーブで開催された国際会議の合意に基づき、
国際獣疫局(OIE)と世界保健機関(WHO)は、国際連合食糧農業機構(FAO)
と連携し、狂犬病制御国際連盟(GARC)の支援を受けて、イヌが媒介するヒ
トの狂犬病の撲滅に向けた世界的戦略の枠組みを発表する。
この文書は、会議の報告書をまとめ、この病気の世界的撲滅のための協調し
た取り組み方と展望を提供する。加盟国において 2030 年までにイヌが媒介する
ヒトの狂犬病ゼロを達成するため、各国と地域に対して、世界的活動を調和し、
達成可能な柔軟な指針を提供する。
イヌが媒介するヒトの狂犬病によって、依然として、全世界で毎年数万人が
死亡している。この病気から解放されることは、世界的公益であり、現在使用
可能な手法で実現可能である。
この新たな枠組みは、専門家、資金提供者、獣医学と公衆衛生当局を含む約
300 名の狂犬病に関する昨年 12 月の WHO/OIE 会議参加者の有意義な議論の結
果であり、効果的に狂犬病撲滅を達成し、その成功の一里塚を約束するもので
ある。
行動計画は、5 本の柱に基づいて構築され、社会文化的、技術的、組織的、
政治的、ならびに資金の側面を組み合わせたものである。それは、とくに次の
事項を呼び掛ける。
● 人体用ワクチンと抗体を手頃な価格で利用可能とする。
● 咬まれた者が速やかに治療を受けられるようにする。
● リスクの高い地域で犬の集団予防接種を実施する。
「狂犬病は、予防接種と暴露後の適時の免疫処置を通して 100%予防するこ
とができるけれども、暴露後の治療を受けるのは高額であり、アジア・アフリ
カの多くの国では手頃な価格ではない。より包括的なこの取り組みに従えば、
我々は狂犬病を歴史の本にしまい込むことができる」と、WHO 事務局長
Margaret Chan 博士が会議で述べた。
-1-
「予防接種したイヌは、狂犬病との戦いにおける兵士である」
ヒトの狂犬病症例の 95%以上はイヌによる咬傷によって引き起こされてお
り、狂犬病を撲滅するための費用効果が最も大きい方法は、感染源となる動物
において防ぐことである。リスクの高い犬集団の 70%に持続可能な予防接種を
することは、流行地域においてこの疾患を撲滅する鍵であると認識されている。
こうした背景において、この活動計画は、OIE の政府間基準に従って、イヌ
の予防接種を含む責任あるイヌの所有権と管理習慣の推進を奨励している。
また、持続可能で、安全な、効果的かつ利用可能なイヌおよびヒト用のワク
チンと免疫グロブリンを確保し、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅を達成す
るため費用対効果の最も高い介入策としてイヌの集団予防接種の推進と実施を
行う動物衛生と公衆衛生のシステムを強化する必要性を再確認している。
この目的のため、品質保証されたイヌ用狂犬病ワクチンの十分な供給を確保
することが不可欠である。このことは、OIE が 2012 年以来イヌ用ワクチン銀行
のモデルを構築している理由であり、それによって、OIE の政府間基準を満た
す高品質ワクチンの入手を保証し、現場へ速やかな配布するとともに、ワクチ
ン供給者間の国際的競争によって手頃な価格を実現する。このモデルは、アフ
リカやアジアのいくつかの加盟国においてイヌの予防接種キャンペーンの成功
を既に支えている。
現時点において、OIE のワクチン銀行を通して、1500 万ドース以上のイヌ
用ワクチンが注文を受け、多くの国へ配布されている。
「フィリピンにおける狂犬病の事例は、成功例の一つである。彼らは、WHO
の支援を受けて、ヒトの狂犬病と戦うための非常に重要なプログラムを展開し
た。そして、とくにイヌ用ワクチンの提供を通してイヌの予防接種キャンペー
ンを処理する手助けを WHO は OIE に最近要請した。これは、国および国際機
関レベルにおいて予防接種キャンペーンを組織するチームを含む制度上の協力
の偉大な例である。このような協力は、共通の手法だけでなく、現場における
真の実用的活動の実施を生み出すので、非常に興味深い」と、OIE 事務局長
Monique Eloit 博士が述べた。
さらに、この枠組みは、実証された制御戦略を適応することによって、イヌ
とヒトの集団に的を絞る強調した活動を呼び掛けている。それは、「健康は一
つ」の取組み方および国と地域のネットワークを介した部門間連携を促進する。
これらの戦略の実施を支援するため、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に
国際社会が投資することが不可欠である。その結果、WHO、OIE、FAO、狂犬
病制御国際連盟(GARC)はイヌが媒介するヒトの狂犬病への投資について理
-2-
論的根拠を合同で発表し、各国、政策立案者および資金提供者に対して狂犬病
撲滅戦略へ投資する可能性、メリット、価値を説得することを狙っている。
全ての参加者とその他の利害関係団体は、2030 年までに加盟国がイヌを介
したヒトの狂犬病撲滅を達成する最も効果的な手段として、会議の結論として
洗練し、採択した国際的枠組みを検討した。今こそ行動する時だ!
――――――――――――――――――――
狂犬病国際会議の報告
Report of the Rabies Global Conference
10-11 December 2015
会議の課題:イヌが媒介するヒトの狂犬病の世界的撲滅
今こそ行動する時だ!
背景と会議の目的
狂犬病は、ヒトと動物ではほぼ 100%の致死率を示すが、過少報告される報
告された人獣共通感染症として残っている。イヌが媒介するヒトの狂犬病は、
100%予防可能であるにもかかわらず年間数万人の死亡を引き起こしている。ヒ
ト症例の 95%以上は、狂犬病に感染した犬の咬傷によって引き起こされる。イ
ヌが媒介するヒトの狂犬病は、農村社会に不釣合いに影響を与え、とくに子供
達およびこの病気への警戒と適切な曝露後予防処置(PEP)の利用が限られる
か、存在しないアフリカやアジアなどの経済的に恵まれない地域で発生してい
る。その他の多くの人獣共通感染症とは異なり、イヌが媒介するヒトの狂犬病
を撲滅するための適切な手法が存在している。イヌが媒介するヒトの狂犬病は、
イヌによる咬傷の予防、咬傷の管理、大衆の意識向上および曝露後の迅速な治
療の利用の改善と合わせて、イヌの予防接種によって感染源で撲滅することが
できる。
こうした背景で、世界保健機関(WHO)と国際獣疫局(OIE)は、国連食
糧農業機関(FAO)と共同で、狂犬病制御国際連盟(GARC)の支援を受けて、
「イヌが媒介するヒトの狂犬病の世界的な撲滅:今こそ行動する時だ!」に関
する国際会議を 2015 年 12 月 10-11 日にスイスのジュネーブで開催した。
その会議は、保健省と獣医局、加盟国の狂犬病担当部、獣医療部門と公衆衛
生部門の専門家、国際機関、政策立案者、非政府組織、資金提供者、ならびに
民間部門から主な参加者を招集した(附属書 1 を参照)。
その会議の目的は、次のとおりである。
-3-
● イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のための裏付け結果を様々な場
所に普及し、その他の流行地域に拡大し、持続可能性を追求する
● イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に向けて前進するため、国、地
域、世界、民間部門を含むその他の利害関係者から投資への支持と
事例を構築する
● 公衆衛生、動物衛生およびその他の部門の間に、「健康は一つ」の
部門間協力の取組み方を推進する
● イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のため、資金提供者と利害関係
者と協力して目的を共有する将来展望の課題を形成する
この会議は、ヒトとイヌの狂犬病ワクチンと免疫グロブリンに関する会議
(2015 年 10 月 12~13 日、ジュネーブ)の成果の上に行われた。その会議の成
果に基づいて準備されたヒトの狂犬病の撲滅のための世界的な枠組みは、さら
に追加し、洗練するため今回の会議に報告された。
今回の会議では、PowerPoint のプレゼンテーションが含まれ、パネル ディ
スカッションを促進し、質問と回答のフォーラムが開かれ、参加者が情報、成
功事例および経験の共有に従事するように企画された。抄録とプレゼンテーシ
ョンは、OIE ウェブサイトで入手できる。この報告書は、活動の概要や会議に
おける議論の分野、狂犬病撲滅の課題を進めるための鍵となるメッセージと主
要な成果を提供している。
大きく考え、小さなことから始め、素早く拡大する
(つづく 2016/3/19)
セッション 1:歓迎と舞台設定
最初のセッションの目的は、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅および「健
康は一つ」の取組み方を支持する高度なリーダーシップに感謝することであっ
た。
共同議長の Brian Evans 氏(OIE)と Bernadette Abela-Ridder 氏(WHO)
が参加者を歓迎し、会議を開いた。WHO の Margaret Chan 事務局長と OIE の
Bernard Vallat 事務局長が冒頭の挨拶を行い、WHO の無視された熱帯病制御
部 Dirk Engels 部長、FAO の動物生産健康部 Berhe Tekola 部長、パスツール
研究所国際部 Nadia Khelef 事務長、狂犬病制御国際連盟(GARC)の Louis Nel
事務長、および欧州委員会の Moritz Klemm 獣医局長が発言した。OIE の
Bernard Vallat 事務局長は、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅は可能である
という基調講演を行った。
Brian Evans 氏は、狂犬病の撲滅を達成するための集団体験と成功事例を報
告する枠組みに向けた参加者による入力の開始点として世界的枠組みの「スタ
-4-
ートアップ」バージョンを発表した。この枠組みの目標は、狂犬病の撲滅を「可
能から達成できる」へと前進させる適応可能な手法と選択肢を提供することで
ある。
鍵となるメッセージ
● 狂犬病は、最も貧しい者、とくに子供達に影響を与える貧困の病気
である。
● 狂犬病は、利用可能な手法と実証済みの取組み方で 100%予防できる。
● 少なくとも 70%のイヌを予防接種すれば狂犬病伝播のサイクルを中
断できる。イヌの狂犬病を減らすことは、狂犬病によるヒトの死亡
数を減少させる。
● ヒトの狂犬病の治療は、イヌの狂犬病の制御と予防(感染源での制
御)のためのプログラム費用よりも高価であり、しばしば実行でき
ない。咬まれてからの暴露後治療に費やしている現在の費用の 10%
を、イヌの狂犬病予防に使えば、流行地域におけるイヌが媒介する
ヒトの狂犬病を撲滅できる。
● 多部門の連携と広範囲の協力が不可欠である。
● ヒトの狂犬病の発生頻度の報告を強化し、「健康は一つ」の取組み
方を使用して政府レベルと部門間で共有する必要がある。
● 狂犬病の撲滅は、その他の無視された熱帯の人獣共通感染症の撲滅
のためのモデルとなることができる。
● 持続的な政治的意志と地域社会の関与が鍵である。
● 狂犬病の撲滅は、国際的公益と見なさなければならない。
● この会議は、狂犬病に対する戦いの転換点であり、今こそ、言葉か
ら行動に移す時である。
狂犬病を歴史書に仕舞い込もう
セッション 2:撲滅のための概念の実証
2 番目のセッションの目的は、狂犬病制御プログラム、官民連携および部門
を越えた連携の経済的側面と影響を含め、様々な開始時からの国レベルのサク
セス ストーリー、成功事例、学んだ教訓、および課題を共有することだった。
3 つのプレゼンテーションは、南アフリカ(Kevin Le Roux 氏)、タンザニ
ア(Emmanuel A. Mpolya 氏)およびフィリピン(Raffy Deray 氏)における
現状を打破するために企画された一連の活動と経験を実証した。パネリストの
Sarah Cleaveland 氏(英国のグレートブリテンと北アイルランド)、Thinlay
Bhutia 氏(インド)、および Veronica Gutiérrez Cedillo 氏(メキシコ)は、
それぞれの視点を提供し、質疑応答のセッションを盛り上げた。
-5-
鍵となるメッセージ
● 最も優れているのは、全ての部門を一緒にして、活動とその焦点を
維持する中心である。
● 地域社会全体の参加が鍵であり、関係者全員を参加させることであ
る。
● イヌが媒介するヒトの狂犬病は制御可能であり、イヌの予防接種率
と曝露後予防処置(PEP)の利用の改善によって最終的に撲滅する
ことができる。
● イヌ集団全体の 70%の予防接種率を目指すことは、全ての国にとっ
て最初は不可能である。狂犬病の発生頻度が高い地域における 70%
を目標とするイヌの予防接種戦略は、より大きな伝播サイクルを断
ち切る上で効果的であり、政府や投資家にとって困難がより少なく
魅力的である。
● 「小さなことから始め、拡大する」戦略は、システム構築中に、実
証すべき成功、構築すべき機運と関与、ならびに果たすべき地域社
会と利害関係者を漸進的に成長させることができる。
● 成功した分野の宣言は、全国的な保健上の優先事項に狂犬病を含め
るために利用することができ、暴露後予防処置(PEP)だけでなく
イヌの予防接種の達成のための予算を獲得できる。
● ワクチン銀行は、製品の品質と供給の安定を保証し、地域社会の活
動を確保し、その拡大を刺激する。
● 計画には、政治的混乱、優先順位の一時的な調整や自然災害におけ
る持続可能性、偶発事態および再出発を含めなければならない。
● 適切なデータの収集、管理、データの共有が重要である。データと
情報の信頼性の高い基準は、目標とする計画に最大の戦略的影響を
もたらすのに役立つ。
● 狂犬病についての高められた意識は、暴露後予防処置(PEP)の要
請の増加を導くことができる。両者は並行して高められる。最終的
に、PEP はイヌの予防接種率の増加とともに減少する。
● PEP の筋肉内接種から皮内接種への切り替えは、費用を大幅に削減
する。
● タンザニアおよび南アフリカの KwaZulu-Natal 州における狂犬病プ
ログラムの成功は、公衆衛生と動物衛生に跨る連携したその他の人
獣共通感染症に対する「健康は一つ」の取組み方を促進する。
● イヌの予防接種は費用対効果がより優れている。初期費用はかかる
が、それは増加せず、分岐点(おそらく 10~15 年)を過ぎれば維持
-6-
費用を大幅に削減する。適切な費用分析と見積もりは、公開する必
要がある。
● イヌの予防接種は、PEP を手頃な価格で利用できるかどうかに関わ
りなく、全ての国民を保護することによって平等を確保する最善の
方法である。
予防接種されたイヌは、狂犬病と戦う兵士である。
セッション 3:地域的な取組み方と進捗状況
3 番目のセッションは、どのように地域的取り組みと戦略を実施し、関連付
けたかの成功事例を紹介した。プレゼンテーションでは、欧州(Friedrich
Loeffler 研究所の Thomas Müller 氏)、アメリカ大陸(汎アメリカン保健機構
Ottorino Cosivi 氏)、中近東・北アフリカ(FAO の Mohammed Bengoumi 氏)、
アジア(OIE の Mary Joy Gordoncillo 氏)およびアフリカ(GARC の Louis Nel
氏)のプロジェクトを通した経験として、撲滅目標を達成するための調整の改
善と地域的必要性の特定の重要性が強調された。それらのプレゼンテーション
はパネルディスカッションに引き継がれ、質疑応答セッションへと続いた。パ
ネリストは、Tu Chang Chun 氏(中国 OIE 基準狂犬研究所)、Valentina Picot
氏(Mérieux 財団)および Hervé Bourhy 氏(パスツール研究所)が担当した。
鍵となるメッセージ
地域の戦略と手法
● 狂犬病撲滅には、堅牢な公衆衛生と動物衛生のシステムに裏付けら
れた一貫して持続可能な長期的な戦略が必要である。
● 狂犬病の予防と制御のための地域戦略は、全ての利害関係者による
参加型取組み方と協調した介入策に基づかなければならない。
● 欧州の広大な地域から狂犬病を撲滅したことは、イヌの狂犬病予防
接種キャンペーンと結びついた主要な保有動物であるキツネの狂犬
病撲滅、発生動向調査および長期的な政治的関与と資源のための狂
犬病データベースの確立を最初の焦点とした段階的な取組み方の結
果である。
● イヌが媒介するヒトの狂犬病を撲滅するための PAHO の行動計画は、
次の 4 つの優先事項を含んでいる;リスクがある人々の適時の PEP
の利用、イヌの集団予防接種、ヒトおよびイヌの狂犬病についての
厳格な発生動向調査、地域社会の動員。アメリカ大陸地域において、
公的部門と民間部門は、強力なリーダーシップと統治を規定し、地
域における狂犬病プログラムの成功に責任を持っている。狂犬病は、
公衆衛生と動物衛生の両方の問題として受け止められている。
-7-
● アジア地域においては、WHO、OIE および FAO の地域事務所は、
調整の仕組みと技術的支援を提供している。OIE の地域ワクチン銀
行は、品質が保証された手頃な価格のイヌ用狂犬病ワクチンを提供
することによって地域に便宜を図っている。
● 狂犬病撲滅および狂犬病の予防と制御のための青写真に向けた段階
的取組み方は、持続可能な介入戦略を立案して実行する国の支援を
意図した手法である。それは、教育と支援運動、発生動向調査と診
断、対象の設定を含む活動の監視と査定など、様々な予防接種プロ
グラムの側面に関する選択肢と助言を含んでいる。
● イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のための 2030 年の目標期限は、
参加する各国のため向上心を育て達成可能な目標とするために設定
された。それは、国連の持続可能な発展目標に結びついており、注
意喚起と動員のための手段である。
課題
● イヌ集団における狂犬病撲滅は、野生動物の間の狂犬病保有動物(た
とえばキツネの狂犬病)およびその他の制御戦略のための必要事項
を明らかにできる。
● 中東および北アフリカにおける狂犬病撲滅は、利害関係者の間の限
られた協調、リスク集団における不適切なコミュニケーションと警
戒、その他の健康と安全の優先事項、ならびに限られた人的・経済
的資源によって制限されている。
● アフリカにおいては、大陸の大きさと複雑さ、言語の多様性、情報
の欠如および高い狂犬病発生率が課題となっている。
● 狂犬病はアジアの多くの地域で課題として残っており、とりわけ、
貧困、政治的不安定、国の公衆衛生と動物衛生の不適切なサービス、
優先事項の競合、ならびに、イヌの社会的な役割、生態、ヒトとの
相互作用に影響を与える文化的影響する事項が存在する地域におい
ては深刻である。
● アメリカ大陸の狂犬病撲滅の最終段階にある地域では、撲滅の最終
過程に達するため、他の部門(たとえば獣医療、教育)と連携した
保健部門によって提供される資源を維持することが最重要である。
成功要因
● 地域の統治の仕組みは、長期的な目標、展望および関与とともに、
成功にとって不可欠である。
-8-
● 国、地域および国際的レベルでの動物衛生と公衆衛生の間の連携の
成功は、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅が、「健康は一つ」の
取組み方に従った部門間の連携を必要とする世界的な攻守衛生上の
懸念であるという明確なメッセージを発信する。
● 感染源において狂犬病と戦うことは鍵であるが、狂犬病ウイルスの
動態は、イヌを殺しても狂犬病撲滅にならないことを実証している。
それよりも、予防接種されたイヌは「狂犬病との戦いにおける兵士」
である。
● 費用対効果が高い曝露後予防(PEP)ワクチンの皮内接種法の導入
は、利用可能性と手頃な値段を向上させる。
● 狂犬病撲滅戦略は、人口統計の変化(農村から都市への人口移動な
ど)の影響に合わせて柔軟かつ適応可能でなければならない。
● 多くの様々な協力者と利害関係者の継続的な取り組みと参加は、地
域の能力を利し、国がその状況に適した取組み方に適応することを
可能にする。
● 国レベルで学んだ教訓は、地域的な取組みに知らせることができる。
● 発生動向調査が不可欠であり、それは成功を証明する重要な手法で
ある。移動予防接種施設、簡単な診断検査、地域連携、情報の共有、
ならびに報告の遵守の奨励は、全て、効果的な発生動向調査システ
ムの重要な一部である。
● リスクがある地域における 3~4 年毎のイヌの集団予防接種によって、
狂犬病を撲滅することができる。ただし、ウイルスが再侵入しない
ように、プログラムには、効果的かつ継続的な発生動向調査を含む
維持戦略も含める必要がある。
● 成功の会となる指標は、ヒト狂犬病症例が少ない (理想的にはゼロ)
ことである。
● アジアでは多くの課題が残っているけれども、地域連携、部門間の
連携、イヌの予防接種を通した感染源での狂犬病対策、ならびにイ
ヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅を公衆衛生問題として政治的支持
を取り付けることによって、進歩している。
速く進みたいのなら、一人で行け。成功したいなら、一緒に進め。
(つづく 2016/3/21)
セッション 4:感染源における予防と通したイヌが媒介する狂犬病の撲滅の実
現
このセッションのプレゼンテーションは、リスクが高い地域におけるイヌの
集団予防接種(バングラデシュ Ahmed Be- Nazir 氏)およびイヌによる咬傷の
-9-
予防(南アフリカ Daniel Stewart 氏)を含め、狂犬病撲滅プログラムの方法に
焦点が当てられた。部門間の連携の重要性(ケニア Eric Osoro 氏)とリスクが
高い集団の教育(GARC の Deepashree Balaram 氏)が強調された。活発な Q&A
セッションとパネル ディスカッションには、Luke Gamble 氏、Rubina
Cresencio 氏(フィリピン)、Eric Brum 氏(FAO)が発表した。
鍵となるメッセージ
「健康は一つ」の取組み方.
● 教育、地域社会の参加および「健康は一つ」の取組み方によって支
援されているイヌの集団予防接種は、成功する狂犬病撲滅プログラ
ムの共通要素である。
● 人獣共通感染症制御におけるヒト、動物および環境の部門を統合す
る「健康は一つ」の取組み方は、発生のより迅速な発見と対応、よ
り少数のヒトの死亡、ならびに動物とヒトの疾病の関連性に係る連
携、文書化、報告、理解を導く。
● 部門間の強固な関係、連携および情報共有は、効果的な「健康は一
つ」の取組み方を維持するために不可欠である。
● 国の活動の推進を支援する準備ができている多くの狂犬病撲滅支持
組織や個人が存在する。
小さなことから始め、拡大する
● パイロットプロジェクトを通して能力を構築し、それから範囲を拡
大するため活動を拡大することが重要である。
● 動物の狂犬病のためのワクチンの銀行は、バングラデシュ、フィリ
ピン、南アフリカ、スリランカなどの国々のプログラムの拡大の成
功に大きく貢献している。
イヌの集団予防接種
● 放浪犬(所有者がいないか、またはいい加減に飼われている)は、
アジアやアフリカのイヌ集団に共通してみられる。これらのイヌは、
狂犬病に対して脆弱であり、ヒトとその他の動物にウイルスを暴露
する。放浪しているイヌの集団予防接種は、狂犬病の一貫した削減
と撲滅に貢献することが示されている。
● 効果を発揮するために、イヌの集団予防接種プログラムは、対象地
域を十分にカバーし、計画を推進する持続可能な戦略を達成するた
め、費用対効果に優れ、手頃な価格で、反復可能なように適切に資
源を確保しなければならない。
- 10 -
● 狂犬病に対するイヌの集団予防接種プログラムは、公衆衛生上の利
益がある。
教育と注意喚起
● イヌの行動と咬傷予防に関する教育は、狂犬病予防接種プロジェク
トの重要な拡張機能であり、ヒトの狂犬病の発生率とイヌ咬傷の治
療負担を減らすことができる。そのような教育は、子供と大人の両
方を対象にする必要がある。
● 地域社会において狂犬病の予防と制御の注意喚起を高めることには、
責任あるペットの所有権、イヌ咬傷を防ぐ方法、咬まれた場合にど
うするかについての教育と情報を含む。地域社会 レベルでプログラ
ムへの参加と当事者意識は、メッセージの到達と受諾を高める。
● 逆説的に、大衆の意識向上と曝露後予防処置(PEP)の配布改善は、
地域で狂犬病発生率が低下しているにもかかわらず、PEP の需要を
増やすことがある。
地域社会の参加
● リスクがある地域において地域社会の参加を達しして維持し、それ
を強化することは、地域社会での行動の変化を生み出す。
● 地域社会に根差した参加と教育の効果的な取り組み方の例には、以
下が含まれる;学校のカリキュラムに狂犬病教育を組み込む、教師
の訓練、警察の関与、物語、劇場、絵本などの遊びながら学習でき
るソフトウェア、ならびに村レベルにおけるイヌのワクチン接種、
イヌの調査の実施、早期警戒迅速な対応システムへの地域社会ボラ
ンティアの参加。
セッション 5:活動を促進する戦略
第 5 セッションの目的は、イヌが媒介するヒトの狂犬病撲滅の国の活動を支
援し、克服すべき課題と障壁に焦点を当てるため、既存の戦略と手法を特定す
ることであった。プレゼンテーションは、ワクチン銀行とワクチンの品質(OIE
の Alain Dehove 氏)、利用する国の視点からの狂犬病ワクチン銀行の影響(フ
ィリピン Rubina Cresencio 氏)、ワクチンと免疫グロブリン(WHO の
Bernadette Abela-Ridder 氏)、および狂犬病撲滅における民間獣医師の役割(世
界獣医学協会 René Carlson 氏)に焦点が当てられた。パネリストは、Steven
McIvor 氏(WAP)、Carel du Marchie Sarvaas 氏(Health for Animals)お
よび Katinka de Balogh 氏(FAO)だった。
鍵となるメッセージ
品質と手頃な価格のワクチンと免疫グロブリン利用の強化
- 11 -
● 狂犬病撲滅に成功するため、高品質で手頃な価格のヒトおよびイヌ
用のワクチンと免疫グロブリンを各国が容易に入手できるようにす
る。
● 2012 年以来、OIE は主に南アジアと東アジアの 17 ヶ国に対してイ
ヌ用狂犬病ワクチンを 1300 万ドース以上を提供している。
● OIE の地域ワクチン銀行は、少量または大量の配布とともに緊急利
用を保証するため、そのまま使える調整済みのワクチン、必要とさ
れる需要に関する生産および補充の仕組みを保持している。限られ
た備蓄は緊急配布を可能にしている。
● 地域のワクチン銀行は、世界と地域の制御プログラムの調和と調整
に貢献しながら、スケールメリット(規模の経済性)、相乗効果お
よび結果の活用を可能にする。それに加えて、多政党の予防接種キ
ャンペーン、官民協力、非政府組織の関与を可能にする。
● ワクチン銀行の仕組みは、各国や国際機関によるワクチン購入を容
易にするためにも使用もできる。
● フィリピンの重点地域における十分なイヌの予防接種率は、イヌお
よびヒトの狂犬病症例の大幅な減少につながった。ワクチンの品質
はアジアの OIE 狂犬病ワクチン銀行の利用によって保証され、適切
な範囲に必要な量を提供する効率的な調達手順も提供した。
● ワクチン銀行は、被援助国がワクチンの使用と結果の報告を求めら
れるので、改善されたデータ収集の原動力になることができる。こ
れは、より適切な記録管理要領を作り出し、状況のより良い理解に
つながる。
● ワクチン銀行は、OIE の政府間基準に沿って製造された高品質ワク
チンの調達と、適時の配布を可能にする。
● 最初の援助と曝露後予防処置(PEP)について地域社会保健を強化
する。狂犬病によって死亡する最も多くの感染者は、遠隔地で必要
最低限の生活の地域社会に住み、地元で治療を受けられない。イヌ
において狂犬病がなくなるまでに時間がかかり、遠隔地の高リスク
の患者に治療を提供することは道徳的な義務である。
● PEP のためワクチンの皮内接種法は、費用の約 80%を節約する。製
薬会社はラベルに皮内接種法を含めることを要請され、各国はこの
費用を節約し、安全で効果的な接種方法を採用する。
● 狂犬病による死亡のほとんどは、PEP を利用できない非常に貧しい
犠牲者が住む遠隔地で発生している。これらの遠隔地へヒト用ワク
チンを配布することは、地域の医療従事者が咬傷の犠牲者に PEP を
- 12 -
提供するための権限を持つことが不可欠である。動物の狂犬病の伝
播が続く限り、PEP の規定が必要である。
成功要因
● 農業、動物衛生および公衆衛生の部門間の連携、ならびにイヌの集
団予防接種によって感染源でこの病気と取り組むために必要である
という高度な政治的な認識は、鍵となる成功要因である。国内の狂
犬病利害関係者の協議は、連携した狂犬病制御を開始できるように
し、狂犬病撲滅に向けた段階的な取組み方の不可欠な部分である。
● 安全で効果的な手頃な価格のイヌとヒト用の狂犬病ワクチンの利用
は、より適切な予測と計画、最適化された調達慣行および民間部門
からのサポート支援を通して改善できる。
● ワクチンの提供は、狂犬病の制御と撲滅のプログラムの開始を刺激
し、それが次々に成功を収め、関心とさらなる資金提供を刺激する。
● 資金供与戦略は、ワクチン皮内接種法への転換の奨励を含め、能力
と意識の向上、地方、国および地域のプログラムと活動の立案と開
始、咬傷自己管理のための動物の取り扱いと標準作業手順の実施も
支援しなければならない。
● 獣医学、医学および薬学の学生は、十分に活用されていない資源で
あり、より多くの参加が必要である。狂犬病撲滅は長期的な投資で
あり、次世代リーダーが現在従事することが重要である。
● 感染した人々に届くため、入手の可用性、手頃な価格、信頼できる
保健・供給システムの利用を増やす。咬傷患者に対する適時の治療
は、生命を救う。
● ワクチン製造会社は、品質保証システムを実施する役割を持ってい
る。最初からプロジェクトにワクチン製造会社を含めることは、ワ
クチンの品質、量および時期を保証するために役立ち、適切なリー
ドタイム(商品の発注から納品までに要する時間)が重要である。
● 狂犬病ワクチンの調達を可能にするために、PAHO 諸国で利用され
た回転資金のような代替の資金調達の仕組みを使用する。
課題
● 民間獣医師の参加の障害(自由に供与されるサービスや外部ボラン
ティアからの要員の欠如、資源の欠如、一般的な無関心、あるいは
認識上や実際の競合など)は、民間獣医師が狂犬病制御に全面的に
参加するため解決されなければならない。公的獣医師と民間獣医師
は、指導者、推進者および教育者として活動できる。
(つづく
2016/3/23)
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セッション 6:狂犬病撲滅のための国際的キャンペーン
第 6 セッションは、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のために、警戒と政
治的意思を高める戦略に焦点を当てている。プレゼンテーションは、予防と国
境を越えた連携の利点を考慮し、地域社会の関与の重要性と世界狂犬病予防デ
ーなどのキャンペーンの影響を強調した。
発表者と演題は、英国 Katie Hampson 氏(狂犬病の影響と予防の利点)、
ブラジル Eduardo Pacheco de Caldas 氏(地方自治体と主要都市で地域社会を
やる気にさせる)、スワジランド Bavukile Kunene 氏(国境を越えた連携:擁
護国の影響)、米国 Deborah Briggs 氏(世界狂犬病予防デーキャンペーンの 9
年間)であった。パネリストは、Ahmed Be-Nazir 氏(バングラデシュ)と
Sivasothy Arumugam 氏(スリランカ)であった。
鍵となるメッセージ
狂犬病の負荷
● イヌが媒介するヒトの狂犬病による年間の経済損失は、86 億ドルと
推定される。経済的負荷の最大の要素は、若年の死亡(55%)、PEP
の直接費用(20%)、治療を受けている間の収入(15.5%)である。
イヌの予防接種に関連する費用は比較的最小限である。これらの損
失は、過少報告や誤診された症例のため政策立案者にはしばしば見
えていない。
● 狂犬病の経済的負担は、公共予算、地域社会および家庭に影響して
いる。
● 狂犬病の最も高いリスクは、世界の最も貧困な地域で発生している。
成功要因
● ブラジルは過去十年に亘ってイヌが媒介するヒトの狂犬病症例の
90% 削減を達成した。その成功は、公衆衛生問題としてこの病気を
認識したこと、発生動向調査の改善、イヌの集団予防接種キャンペ
ーン、リスクが高い人々に対する予防対策、教育キャンペーン、地
域社会の参加および持続的な投資である。
● 2012 年以降、スワジランドにおけるヒト狂犬病の記録された死亡は
ない。その成功は、年間を通した全国的な移動チームによるイヌの
無料予防接種キャンペーン、動物による咬傷の報告、発生宣言要領、
イヌの避妊・去勢手術、およびイヌによる咬傷に対する PEP 規定に
よるものである。
● 南アフリとスワジランドは、狂犬病制御などの問題を議論するため、
国境を越えた連携会議を切れ目なく行った。両国は、狂犬病予防接
種証明書を必要とするイヌとネコの移動許可制度を設けた。
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● イヌの狂犬病が一旦撲滅された後、野生動物の狂犬病およびイヌの
狂犬病の再発問題が残されているので、継続的な警戒が重要である。
地域社会の参加
● 世界狂犬病予防デーは、狂犬病制御国際連盟(GARC)による協力
活動である。狂犬病に対する活動の国際日として 2007 年に立ち上
げられ、毎年 9 月 28 日に、200 以上の国の数千ヶ所で狂犬病予防記
念行事が行われている。参加者は、多くの国と地域の狂犬病撲滅戦
略の行動計画に含まれている。
● 毎年の世界狂犬病予防デー活動への参加は、意識の向上、地域社会
の参加、ならびにイヌの狂犬病予防接種と咬傷後のヒトの治療の両
方の需要を高めている。
● 「狂犬病を終わらせるのは今だ(End Rabies Now)」キャンペーン
は、国際的に無視された熱帯病気として狂犬病の注目度を高めるこ
とを目指している。目的には、この財団法人の課題としての狂犬病
制御、資金提供者としての各国政府や国際機関、政治的関与および
流行国における狂犬病撲滅の支援を導く緊急の優先事項として狂犬
病を認識すること含を含め、イヌが媒介するヒトの狂犬病を 2030
年までに撲滅することを含んでいる。
● 狂犬病の撲滅に向けた世界的な運動を維持するには、公式および非
公式のコミュニケーションと情報共有、同業者、部門、各国の間の
ネットワークと連携が必要である。
セッション 7:成功を目指す
第 7 セッション中の円卓会議の議論では、資金提供者の視点からイヌが媒介
するヒトの狂犬病の撲滅を検討した。鍵となる成功要因と一緒に、説得力のあ
る健全な事例を作るため何をすべきか(政治的意志、関与、コミュニケーショ
ン、技術的手法、動機など)を理解し実施の準備をした。こうした背景で、こ
のセッションの目的は以下のことであった。
● 狂犬病の撲滅に投資するため資金提供者の動機をより適切に理解す
る。
● ヒトの狂犬病の撲滅に投資するためのギャップと機会を特定する。
● 進行状況と成功を示すために必要な達成度の尺度を決定する。
議論に参加した資金提供者グループの代表者には、Andrea Ellis 氏(カナダ)、
Pedro Rosado 氏(欧州委員会)、Anne-Marie Sevcsik 氏(UBS Optimus 財団)、
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Judith Kallenberg 氏(Gavi ワクチン同盟)、Molly Mort 氏(ビル・アンド・
メリンダ・ゲイツ財団)が含まれた。
鍵となるメッセージ
成功を証明し、投資に反映させる
● 狂犬病撲滅が可能であることは実証されている。構想プロジェクト
の成功の実証は、証拠に基づいて提供され、それは、成功が資金提
供者に投資を魅力的にさせるために重要である。
● 資金提供者は彼らの投資の社会的反響を見ることを望み、命を救っ
た説得力のある事例を作る必要がある。
● 何もしない場合の費用と対比して、狂犬病の予防と撲滅の費用対効
果を強調する。健全な戦略、部門に跨る連携および持続可能性を示
す。
● 資金提供者は、狂犬病撲滅への国の関与と社会的動員の存在を見る
ことを望み、狂犬病は国の優先事項で、公衆衛生上の問題として認
識され、包括的な計画で裏付けされている必要がある。
● 3 つの主要な国際機関(WHO、OIE、FAO)の連携は、関与と部門
を跨ぐ連携を証明する。国と地域内の部門間の連携も、資金提供者
に鍵となるメッセージを送ることになる。
● 国と国との技術援助と技術交換 (たとえば能力を構築するための共
同プロジェクト)は、重要である。
● 行動計画は実施されなければならず、利害関係者と地域社会を一緒
にする方法を確実に示す。
● 実施された対策が機能しているかどうかを判定し、病気のあらゆる
再発を監視するため、厳格な発生動向調査システムを確保して実施
する。
● 国は、資金提供者に長期的に依存できず、狂犬病制御の行動計画と
戦略の一部として、当事者の移行計画および持続可能な活動と資源
の移行が必要である。
ワクチンおよび狂犬病の先を眺める
● 資金提供者は、ワクチンとワクチン配布の先々を支えるための資源
として考慮されなければならず、教育のための能力構築、知識と情
報の伝達、診断、発生動向調査および報告は、資金提供者が関与で
きる全ての領域である。
● 機会を活用し、投資を最大化する取組み方は、資金提供者に魅力的
である。投資の影響を最大化するためのその他の活動の構築を目指
す。たとえば、狂犬病制御業務とプログラムを提供するためにその
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他の機会やプロジェクトを利用することができ、逆に、それらは別
のプロジェクトを支援するために狂犬病撲滅活動の機会となり得る。
● イヌが媒介するヒトの狂犬病に対する唯一の資金提供者や唯一の解
決策はなく、集合的な取組み方、調整と同期が必要である。
セッション 8:世界的戦略の枠組みの構築
第 8 セッション(オープンフォーラム)は、世界的戦略の枠組みを背景とし
て効果的な狂犬病撲滅を達成するために、さらなる議論と必要な活動を特定す
ることを目指した。会議に続いて、イヌが媒介するヒトの狂犬病撲滅のための
枠組みを確定するために議論され、その内容は以下に示した。この文書の終わ
りと OIE 狂犬病ポータルにグラフィック版が示されている。
イヌが媒介するヒトの狂犬病撲滅のための世界的枠組み
イヌが媒介するヒトの狂犬病は、全世界で毎年数万人の人々を殺している。
イヌが媒介するヒトの狂犬病からの解放は、世界的公益であり、現在使用可能
な手法で実現できる。
世界会議(ジュネーブ、2015 年 12 月 10~11 日)の合意に基づき、この枠
組みはイヌが媒介するヒトの狂犬病の世界的撲滅のための協調的取組み方と展
望を提供する。それは、活動を調和し、国と地域の戦略のため達成可能な柔軟
な手引きを提供する。戦略的展望:加盟国において 2030 年までにイヌが媒介す
る狂犬病によるヒトの死亡をゼロする。
(つづく 25/3/2016)
狂犬病撲滅のための 5 本の柱(STOP-R)
第 1:社会・文化的柱
狂犬病の制御には、一般市民を含む広い範囲の利害関係者を含む。社会文化
的背景が、リスクの高い集団の狂犬病についての認識とイヌの飼育慣行に影響
する。この背景の理解は、行動変化を促し、実現可能なサービスを実行する計
画を立てる取り組み方の指針となる。
以下の活動を含む:
● 注意喚起: 世界狂犬病予防デーおよび狂犬病撲滅キャンペーンな
どの活動への参加を通して予防可能な世界的な公衆衛生問題として、
イヌが媒介する狂犬病に関する意識を構築する。
● 責任あるイヌの所有権: OIE 基準に従って、イヌの予防接種を含
め責任あるイヌの所有権とイヌの頭数管理の慣行を推進する。
● 咬傷の防止と治療: 子供と大人の両方に対する咬傷の防止と応急
処置に関する教育プログラムを開発し、実施する。
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● 曝露後予防処置: 皮内接種法を含め、曝露後予防処置(PEP)の
指示と選択肢に関する意識と理解を高める。
● 地域社会の参加: イヌが媒介する狂犬病を撲滅する活動に地域社
会が取り組み、参加することを奨励する。
第 2:技術的柱
効果的な動物衛生と公衆衛生のシステムには、イヌが媒介するヒトの狂犬病
撲滅が求められる。それらのシステムを強化し、適切に資源を配分し、ギャッ
プを特定して埋めなければならない。
以下の活動を含む:
● 予防接種: 安全かつ効果的に利用可能なイヌとヒトのワクチンと
免疫グロブリンを確保し、イヌが媒介するヒトの狂犬病撲滅を達成
するために、費用対効果の最も高い介入策としてイヌの集団予防接
種を推進し、実施する。
● 物流: イヌの集団予防接種プログラムと PEP 管理の配備と実施に
必要な物流と社会的基盤を整備・維持するため、ワクチン調達シス
テムに通知し、予測される需要のデータを収集する。
● 診断: 利用可能な、設備の整った研究所および訓練された職員に
よる迅速かつ正確な狂犬病診断のための能力と機能を確保する。
● 発生動向調査: 発生動向調査、サンプリング、報告書作成および
データ共有の改善を支援する。
● 技術的支援: 既存の手法の利用促進を含む地方および国の計画の
立案と調整のための指導と技術支援を提供する。
● 概念の実証: 概念プログラムの実証を支援し、成功の活用を通し
て規模を拡大する。
第 3:組織的柱
緊密な協力に関わる「健康は一つ」の取組み方が適用される。狂犬病の撲滅
活動のためのリーダーシップ、協力および調整は、公衆衛生部門、家畜衛生部
門、およびその他の利害関係者によって行われる。
以下の活動を含む:
● 「健康は一つ」: 国と地域のネットワークを通した「健康は一つ」
の取組み方および部門間調整を推進する。
● 良好な統治: 明確な役割、指揮系統、測定可能な成果および期限
を含む良好な統治(Good governance)を確立する。
● 調和: 国および地域の優先事項と取組み方を備えた作業計画と活
動を整え、各部門の間の相乗効果を育成する。
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● 調整: その他のプログラムと活動に係る人的資源、物流と社会的
基盤を、適切かつ可能であるように調整して組み合わせる。
● 指標と実績: 発生動向調査と検証データを含む実績の測定を裏付
け、注意または余分な支援を必要とする領域を判断するため、目標
およびその指標を特定する。
● モニタリングと評価: 適時にかつ費用費用対効果のある配布を確
保するための、国の計画のモニタリングと評価を支援する。
第 4:政治的柱
成功は、イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のための政治的意志と支援に依
存する。政治的意志は、国、地域および国際的公益として狂犬病を撲滅する認
識の結果である。
以下の活動を含む:
● 政治的支持: 政治的支持は、国が不安定な時期およびその後にお
いて(政治的混乱、自然災害など)不可欠で、最も関連する。
● 国際的支援: イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅に関して、WHO
総会および OIE 代表者総会を通して、解決を求める各国を奨励する。
● 法的枠組み: 狂犬病の通知との撲滅のための適切な法的枠組みを
確立して執行する。
● 影響の証明: イヌの集団予防接種プログラムおよびヒトの命を救
う効果のための、説得力のある事例を示す。
● 地域の関与: 狂犬病撲滅プログラムに関与するための国と地域の
積極的な参加を支援し、資源と協力を活用するため学んだ教訓と経
験の交換を促進する。
狂犬病は国境を認識しない
第 5:資源の柱
狂犬病の撲滅活動は、しばしば長期に及び、したがって、持続的かつ長期的
な支援を必要とする。
以下の活動を含む:
● 投資のための事例: 狂犬病撲滅戦略への投資の可能性、利点およ
び価値に関して国、政策立案者およびの資金提供者を説得するため、
イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅への投資のための論拠を挙げる。
● 事業計画: イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅の国際的枠組みに
基づく事業計画を準備する。
● 投資: 資源と協力を活用するため、投資と協力の様々な形(民間
投資と公共投資)を奨励する。
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決定的な成功要因
●
●
●
●
●
●
長期的な政治的、社会的関与
地域社会の参加
リスクの高いイヌ集団の 70%に持続可能な予防接種
概念の実証:小さく始めて、規模を拡大する
十分な資源、物流および社会的基盤
品質保証された狂犬病ワクチンとヒト用免疫グロブリンの十分な供給を確保
するため、狂犬病用の免疫資材獲得のためのワクチン銀行およびその他の
戦略を促進する。
● 遠隔地の農村およびリスクの高い集団へ届く
● 全てのレベルで実績測定を行う
● 訓練された動機が明確な実施担当者を維持する。
参考資料と追加情報(省略)
狂犬病は 99.9%致死的であるが、100%予防可能である
イヌが媒介するヒトの狂犬病の撲滅のための国際的枠組み
(完
2016/3/31)
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「イヌによる咬傷事故」をまとめています。
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