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平成27年度の事業活動状況(概要)

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平成27年度の事業活動状況(概要)
平成27年度の事業活動状況(概要)
Ⅰ.政治・経済・医療制度改革等の概況
1.政治・経済の動向
平 成 27 年 の 通 常 国 会 で は 、 集 団 的 自 衛 権 の 限 定 行 使 を 含 む 安 全 保 障 関 連 法 案
の 審 議 が 大 き な 焦 点 と な っ た 。同 法 案 の 審 議 も あ っ て 、通 常 国 会 は 、戦 後 最 長 と
な る 95 日 の 会 期 延 長 が 行 わ れ 、 9 月 27 日 に 閉 会 さ れ た 。
通 常 国 会 で は 、「 持 続 可 能 な 医 療 保 険 制 度 を 構 築 す る た め の 国 民 健 康 保 険 法 等
の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 」( 医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 案 ) も 提 出 さ れ 、 野 党 の 反
対 も あ っ た が 、 5 月 27 日 に 成 立 し た 。 こ の 間 、 参 議 院 の 厚 生 労 働 委 員 会 に 健 保
連 の 白 川 副 会 長 が 参 考 人 と し て 出 席 し 、意 見 を 述 べ た こ と な ど も あ り 、健 保 連 の
主張に対して一定の理解を得ることにつながった。
同 法 に は 、こ れ ま で 、市 町 村 単 位 で 運 営 さ れ て き た 国 民 健 康 保 険 に つ い て 、大
規 模 な 財 政 支 援 を 行 い な が ら 、都 道 府 県 単 位 の 財 政 運 営 に 改 め る こ と な ど が 含 ま
れ て い る こ と か ら 、国 民 皆 保 険 制 度 が 始 ま っ て 以 来 の 大 改 革 と も 評 さ れ た 。こ の
ほ か 、▽ 後 期 高 齢 者 支 援 金 の 総 報 酬 割 の 段 階 的 拡 大( こ れ に よ り 捻 出 さ れ る 国 庫
財 源 を 国 保 の 財 政 対 策 に 転 用 )、 ▽ 前 期 高 齢 者 納 付 金 の し く み の 一 部 見 直 し ( 特
別 負 担 調 整 の 導 入 )、 ▽ 入 院 時 食 事 療 養 費 の 患 者 負 担 額 の 段 階 的 引 き 上 げ 、 ▽ 紹
介 状 が な い 場 合 の 大 病 院 受 診 時 定 額 負 担 の 導 入 、▽ 協 会 け ん ぽ に 対 す る 国 庫 補 助
率 16.4% の 実 質 恒 久 化 、 ▽ 所 得 水 準 の 高 い 国 保 組 合 の 国 庫 補 助 の 見 直 し 、 ▽ 患
者 申 出 療 養 制 度( 患 者 の 申 し 出 を 起 点 と す る 保 険 外 併 用 療 養 費 制 度 )の 創 設 - 等
が 盛 り 込 ま れ た 。こ れ に よ り 、25 年 12 月 に 成 立 し た「 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度
の 確 立 を 図 る た め の 改 革 の 推 進 に 関 す る 法 律 」( プ ロ グ ラ ム 法 ) に 基 づ く 医 療 保
険制度改革の中身が決まり、順次、実行に移されることとなった。
一 方 、 政 府 は 、 6 月 30 日 、 経 済 財 政 諮 問 会 議 が 取 り ま と め た 「 経 済 財 政 運 営
と改革の基本方針」
( 骨 太 の 方 針 2015)を 閣 議 決 定 し た 。32 年 度 の 財 政 健 全 化 目
標( プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス の 黒 字 化 )の 達 成 に 向 け て 、今 後 5 年 間 を 対 象 期 間 と
す る「 経 済 ・財 政 再 生 計 画 」を 策 定 し た 。な か で も 、増 加 を 続 け る 社 会 保 障 費 に
つ い て は 、「 集 中 改 革 期 間 」 と 位 置 づ け る 28 年 度 か ら 30 年 度 ま で の 3 年 間 で 、
安 倍 政 権 の 取 組 み の 成 果 を 踏 ま え 、こ れ ま で の 基 調( 過 去 3 年 間 で 1.5 兆 円 程 度
の伸び)を継続することを「目安」として取り組む方針を示した。
こ れ を 受 け 、 8 月 末 に 締 め 切 ら れ た 28 年 度 政 府 予 算 の 概 算 要 求 の 段 階 で は 、
社 会 保 障 費 の 自 然 増 6,700 億 円 が 認 め ら れ た が 、年 末 の 予 算 編 成 過 程 で は 、財 政
当 局 な ど か ら 5,000 億 円 ま で 圧 縮 す る こ と が 求 め ら れ る こ と に な っ た 。予 算 編 成
の 最 終 段 階 の 12 月 21 日 、 28 年 度 の 診 療 報 酬 改 定 に 向 け て 、 本 体 を 0.49% 引 き
上 げ る 一 方 、 薬 価 と 医 療 材 料 を あ わ せ て 1.33% 引 き 下 げ 、 全 体 で 0.84% 引 き 下
げ る こ と が 決 定 し た 。通 例 の 薬 価 等 の 引 き 下 げ に 加 え 、高 額 医 薬 品 等 の 薬 価 の 適
正 化 ( 市 場 拡 大 再 算 定 、 長 期 収 載 品 の 算 定 ル ー ル の 見 直 し 等 )、 大 型 門 前 薬 局 の
概-1
評 価 の 適 正 化 、 協 会 け ん ぽ と 国 保 組 合 に 対 す る 国 庫 補 助 削 減 等 に よ っ て 2,200
億 円 の 財 源 を 捻 出 し 、社 会 保 障 費 の 自 然 増 1,700 億 円 の 圧 縮 分 を 差 し 引 い た 500
億円を診療報酬本体引き上げに充てることとした。
9 月 8 日 に は 、自 民 党 の 総 裁 選 が 告 示 さ れ 、現 職 以 外 の 候 補 者 擁 立 の 動 き は あ
っ た も の の 、結 局 、安 倍 総 裁 の ほ か に 立 候 補 の 届 け 出 は な く 、安 倍 総 裁 の 無 投 票
再 選 が 決 ま っ た 。 そ の 後 、 安 倍 首 相 は 10 月 7 日 に 内 閣 改 造 を 行 い 、 第 3 次 安 倍
改造内閣を発足させ、塩崎厚生労働大臣は留任した。
通 常 国 会 終 了 後 、安 倍 首 相 は 、新 た な 政 策 と し て「 新 ・三 本 の 矢 」を 打 ち 立 て
た 。そ れ は 、▽ 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 済 、▽ 夢 を 紡 ぐ 子 育 て 支 援 、▽ 安 心 に つ な
が る 社 会 保 障 - と い う も の で 、 具 体 的 な 目 標 と し て 、 ▽ GDP600 兆 円 の 達 成 、 ▽
出 生 率 1.8 へ の 回 復 、 ▽ 介 護 離 職 ゼ ロ の 実 現 - を 掲 げ た 。 11 月 26 日 に は 、「 一
億 総 活 躍 社 会 」 の た め の 緊 急 対 策 を 取 り ま と め 、「 新 ・ 三 本 の 矢 」 の 実 現 に 向 け
て 、特 別 養 護 老 人 ホ ー ム や 在 宅 サ ー ビ ス の 受 け 皿 の 整 備 目 標 の 上 積 み 、介 護 休 業
給 付 金 の 拡 充 、待 機 児 童 解 消 の た め の 施 策 、不 妊 治 療 の 助 成 限 度 額 拡 充 、最 低 賃
金 の 引 き 上 げ 等 が 盛 り 込 ま れ た 。 28 年 1 月 4 日 に 召 集 さ れ た 通 常 国 会 に は 、 こ
れ ら の 緊 急 対 策 を 盛 り 込 ん だ 27 年 度 補 正 予 算 案 を 提 出 し 、1 月 20 日 に 成 立 さ せ
た。
他 方 、 24 年 に 成 立 し た 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 関 連 法 に 基 づ き 、 26 年 4 月 に
5% か ら 8% へ 引 き 上 げ ら れ た 消 費 税 率 は 、 27 年 10 月 に さ ら に 10% へ と 引 き 上
げ ら れ る こ と に な っ て い た が 、 26 年 秋 の 安 倍 首 相 の 決 断 を 受 け 、 29 年 4 月 ま で
1 年 半 延 期 さ れ て い る 。こ う し た な か 、 消 費 税 の「 軽 減 税 率 」を め ぐ る 議 論 が 一
時 迷 走 し た 。財 務 省 は 、個 人 番 号 カ ー ド を 活 用 し 、酒 類 を 除 く 飲 食 料 品 の 2% 分
を 消 費 者 に 払 い 戻 す「 還 付 制 度 案 」を 与 党 税 制 協 議 会 に 提 示 し た が 、公 明 党 が「 痛
税 感 を 緩 和 で き な い 」な ど と 強 く 反 発 し た た め 、 10 月 14 日 に は 、安 倍 首 相 が 消
費 税 率 10% 引 き 上 げ と 同 時 に 軽 減 税 率 を 導 入 す る 方 向 で の 調 整 を 指 示 し た 。
そ の 後 の 調 整 の 結 果 、税 率 を 8% に 据 え 置 く 軽 減 税 率 の 対 象 品 目 に つ い て 、酒
と 外 食 を 除 く 食 品 全 般 と す る こ と で 合 意 さ れ 、そ の 内 容 は 、12 月 24 日 に 閣 議 決
定された税制改正大綱にも明記された。そのために必要な財源 1 兆円のうち
4,000 億 円 は 、医 療 や 介 護 の 利 用 者 負 担 を 抑 え る 総 合 合 算 制 度( こ の 時 点 で 具 体
的 な 議 論 は な さ れ て い な い ) の 導 入 見 送 り で 捻 出 す る が 、 残 り の 財 源 は 28 年 度
末までに安定的な恒久財源を確保するとして、具体的な議論は先送りされた。
安 倍 政 権 の 経 済 財 政 政 策 の も と 、 27 年 度 は 、 企 業 収 益 が 上 昇 し 、 雇 用 ・ 所 得
環 境 が 改 善 す る な ど 、緩 や か な 回 復 基 調 が 続 く と 見 ら れ て き た が 、年 度 途 中 に 変
化 が 見 ら れ た 。 28 年 3 月 8 日 、 内 閣 府 が 発 表 し た 27 年 10~ 12 月 期 の 国 内 総 生
産( GDP)の 2 次 速 報 値 に よ る と 、実 質 成 長 率 は 前 期 比 0.3% 減 、2 四 半 期 ぶ り の
マ イ ナ ス 成 長 と な っ た 。年 率 換 算 は 1.1% 減 で 、景 気 回 復 に 向 け た 足 取 り の 重 さ
が 明 ら か に さ れ た 。最 大 の 要 因 は 、個 人 消 費 が 0.9% 減 と 大 き く 落 ち 込 ん だ こ と
で あ っ た 。 設 備 投 資 は 1.5% 増 だ が 、 中 国 経 済 の 減 速 な ど に よ り 輸 出 が 0.8% 減
となったことも強く影響している。
概-2
日 経 平 均 株 価 は 、 27 年 度 に 入 っ て か ら も 上 昇 基 調 を 続 け て い た が 、 や は り 中
国 経 済 の 減 速 な ど の 影 響 を 受 け 、 夏 過 ぎ か ら 28 年 初 め に か け て 乱 高 下 し 、 不 安
定 な 動 き が 見 ら れ た 。有 効 求 人 倍 率 は 28 年 2 月 に 1.28 倍 と 上 昇 基 調 を 維 持 し て
いるが、この先の見通しは不透明である。
こ う し た な か 、 29 年 4 月 の 消 費 税 率 の 10% へ の 引 き 上 げ に 向 け て 、 安 倍 首 相
は 、 リ ー マ ン ・ シ ョ ッ ク ( 21 年 ) あ る い は 大 震 災 並 み の 重 大 事 態 が 生 じ な い 限
り 、予 定 ど お り 引 き 上 げ を 実 行 す る 考 え を 示 し て い る が 、直 近 の 経 済 情 勢 を と ら
え て 、周 囲 で は 先 送 り 論 が 顕 在 化 し は じ め た 。消 費 税 率 の 引 き 上 げ は 、社 会 保 障
制 度 改 革 と 一 体 的 に 行 わ れ る も の で あ り 、引 き 上 げ が 再 度 延 期 さ れ る 事 態 に な れ
ば 、当 然 に 、社 会 保 障 制 度 改 革 の 所 要 財 源 に も 影 響 し 、改 革 推 進 に 支 障 が 生 じ る
こ と に な る た め 、 極 め て 慎 重 な 政 治 判 断 が 求 め ら れ る 。 28 年 7 月 に 予 定 さ れ る
参 議 院 議 員 選 挙 を に ら み 、さ ま ざ ま な 動 き が 出 て く る 可 能 性 も あ り 、政 治 情 勢 に
は引き続き注視していく必要がある。
2.医療制度改革等の動向
27 年 度 の 健 保 組 合 の 予 算 早 期 集 計( 27 年 4 月 22 日 発 表 )で は 、高 齢 者 医 療 の
た め の 拠 出 金 負 担 や 保 険 給 付 費 等 の 支 出 の 増 を ま か な う た め 、保 険 料 収 入 を 増 加
さ せ た が 、全 体 で は 1,429 億 円 の 赤 字 予 算 と な っ た 。赤 字 予 算 は 、現 行 の 高 齢 者
医 療 制 度 が 施 行 さ れ た 20 年 度 以 降 、 8 年 連 続 と な っ た 。 平 均 標 準 報 酬 月 額 や 平
均 標 準 賞 与 額 に 上 昇 傾 向 が 見 ら れ る な か で も 、多 く の 健 保 組 合 で 保 険 料 率 の 引 き
上 げ が 行 わ れ 、 全 体 の 平 均 保 険 料 率 は 9.021% と 、 は じ め て 9% を 超 え た 。 協 会
け ん ぽ の 全 国 平 均 保 険 料 率 10% 以 上 の 健 保 組 合 は 285 に の ぼ っ た 。28 年 度 以 降 、
高 齢 者 医 療 費 の 増 加 に よ る 拠 出 金 負 担 増 、短 時 間 労 働 者 の 適 用 拡 大 等 に よ り 、健
保組合の財政悪化がさらに進行することが懸念される。
こ う し た な か 、骨 太 の 方 針 2015 を 踏 ま え 、経 済 財 政 諮 問 会 議 は 、12 月 24 日 、
「 経 済・財 政 再 生 計 画 改 革 工 程 表 」を 策 定 し た 。工 程 表 に は 、今 後 の 社 会 保 障 制
度 の 改 革 に 向 け た 具 体 的 な 検 討 事 項 や 法 案 提 出 時 期 等 が 明 記 さ れ た 。そ の な か で 、
28 年 末 ま で に 検 討 し 、 29 年 の 通 常 国 会 へ 必 要 な 法 案 を 提 出 す る と さ れ た の は 、
医 療 保 険 制 度 関 係 で は 、▽ 入 院 時 の 患 者 の 居 住 費 負 担 、▽ か か り つ け 医 以 外 を 受
診 し た 場 合 の 定 額 負 担 、▽ 高 額 療 養 費 制 度 の 見 直 し 、▽ 金 融 資 産 を 考 慮 し た 負 担
の し く み の 拡 大 ( 介 護 保 険 制 度 の 「 補 足 給 付 」 に 前 例 あ り )、 ▽ ス イ ッ チ OTC 化
さ れ た 医 療 用 医 薬 品 の 保 険 償 還 率 の あ り 方 - な ど で あ っ た 。介 護 保 険 制 度 関 係 で
は 、こ れ ま で 健 保 連 が 一 貫 し て 反 対 し て き た 介 護 納 付 金 の 総 報 酬 割 に 加 え 、▽ 介
護 給 付 費 の 適 正 化 イ ン セ ン テ ィ ブ 、▽ 高 額 介 護 サ ー ビ ス 費 の 見 直 し 、▽ 利 用 者 負
担 の 見 直 し 、 ▽ 軽 度 者 に 対 す る 給 付 の 見 直 し 、 ▽ 29 年 度 末 に 廃 止 さ れ る 介 護 療
養 病 床 の 取 り 扱 い - と い っ た 項 目 が あ げ ら れ て い る 。 こ の ほ か 、 28 年 度 か ら 30
年 度 ま で の 集 中 改 革 期 間 中 に 検 討 す る も の と し て 、後 期 高 齢 者 の 窓 口 負 担 の 見 直
し等も盛り込まれている。
概-3
社 会 保 障 審 議 会 の 医 療 保 険 部 会 で は 、工 程 表 策 定 に 向 け た 政 府 の 動 き と 並 行 し
て 、夏 か ら 議 論 が 進 め ら れ た 。そ の な か で 、医 療 保 険 部 会 で は 、工 程 表 に 明 記 さ
れ た 検 討 事 項 に 加 え て 、▽ 高 齢 者 医 療 制 度 の あ り 方 、▽ 被 用 者 保 険 を め ぐ る 諸 課
題 へ の 対 応( 任 意 継 続 被 保 険 者 制 度 等 )- な ど に つ い て も 議 論 す る こ と が 確 認 さ
れ て い る 。こ れ ら は 、健 保 連 の 主 張 を 踏 ま え た も の で も あ り 、引 き 続 き 見 直 し を
求 め て い く こ と に な る 。 介 護 保 険 部 会 も 同 様 に 、 27 年 度 中 か ら 議 論 が 開 始 さ れ
た 。工 程 表 の 検 討 事 項 の う ち 、と く に 介 護 納 付 金 の 総 報 酬 割 に つ い て は 、こ れ ま
でにも増して強く反対していく必要がある。
い ず れ も 、 本 格 的 な 議 論 は 、 28 年 度 に 入 っ て か ら 、 具 体 的 な 内 容 に つ い て は
参 院 選 が 行 わ れ る 夏 以 降 に な る と の 見 方 が 強 い 。 そ れ ぞ れ 、 28 年 末 に 検 討 結 果
を ま と め 、 そ れ ら を 踏 ま え て 、 必 要 な 法 案 を 29 年 の 通 常 国 会 に 提 出 す る と さ れ
て お り 、 議 論 す る 時 間 は 限 ら れ て い る 。 28 年 度 は 、 医 療 保 険 部 会 、 介 護 保 険 部
会のみならず、関係各方面で活発な議論が行われることが想定される。 一方で、
消 費 税 率 引 上 げ 延 期 の 可 能 性 も あ り 、こ の 影 響 は 大 き い こ と か ら 、改 革 に 向 け た
動きは不透明な状況にある。
概-4
Ⅱ.平成27年度の主な事業活動状況
【最重点事業項目】
1.医療、介護制度の一体改革における健保連の主張実現に向けた活動の継続・
強化
(1)医療保険制度改革関連法案審議、施行等への的確な対応
①医療保険制度改革関連法案の取りまとめと概要について
医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 案 (「 持 続 可 能 な 医 療 保 険 制 度 を 構 築 す る た め の 国
民 健 康 保 険 法 等 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 案 」)は 、3 月 3 日 に 閣 議 決 定 さ れ 、通 常
国会に提出された。
同 法 案 に は 、国 保 の 財 政 支 援 と 30 年 度 か ら の 財 政 運 営 の 都 道 府 県 化 等 の 国 保
改 革 の ほ か 、▽ 後 期 高 齢 者 支 援 金 の 総 報 酬 割 の 段 階 的 拡 大( 27 年 度:2 分 の 1、
28 年 度:3 分 の 2、29 年 度:全 面 総 報 酬 割 )、▽ 前 期 高 齢 者 納 付 金 の 仕 組 み の 一
部見直し(特別負担調整の導入、前期高齢者にかかる後期高齢者支援金への前
期 高 齢 者 加 入 率 の 加 味 : 29 年 度 実 施 )、 ▽ 標 準 報 酬 月 額 等 の 上 限 引 き 上 げ 、 ▽
患者申出療養の創設、▽大病院の紹介状なし外来患者に対する選定療養費の義
務化、▽入院時食事療養費の自己負担分の引き上げ、▽傷病手当金、出産手当
金 の 支 給 額 算 定 の 見 直 し 、 ▽ 協 会 け ん ぽ の 国 庫 補 助 率 の 見 直 し ( 13% ~ 20% の
範 囲 と す る が 当 分 の 間 16.4% を 維 持 。法 定 準 備 金 を 超 え て 準 備 金 が 積 み 上 げ ら
れる場合は翌年度に新たに積み上げられる分から国庫補助相当額を減額)-等
が盛り込まれた。
こ の う ち 、国 保 の 財 政 支 援 は 、27 年 度 か ら 消 費 税 財 源 に よ る 1,700 億 円 の 低
所 得 者 対 策 を 実 施 す る こ と に 加 え 、29 年 度 以 降 は 、後 期 高 齢 者 支 援 金 の 全 面 総
報 酬 割 に よ っ て 生 じ る 国 費 財 源 2,400 億 円 の う ち 1,700 億 円 を 追 加 的 に 投 入 し 、
毎 年 3,400 億 円 の 財 政 支 援 を 実 施 。追 加 公 費 1,700 億 円 は 、29 年 度 に 財 政 安 定
化 基 金( 27 年 度 に 設 置 、 2,000 億 円 規 模 を 想 定 )に 積 み 、 30 年 度 以 降 は 、 ▽ 自
治 体 の 責 め に よ ら な い 要 因 に 対 す る 財 政 支 援 の 強 化 ( 700~ 800 億 円 規 模 )、 ▽
医療費適正化に向けた取組み等への努力を支援する「保険者努力支援制度」の
創 設 ( 700~ 800 億 円 規 模 ) - 等 に 充 当 さ れ る こ と と さ れ た 。
こ れ ら の 医 療 保 険 制 度 改 革 案 の 取 り ま と め は 、プ ロ グ ラ ム 法 の 規 定 に 基 づ き 、
26 年 春 か ら 27 年 1 月 に か け て 、 政 府 ・ 与 党 内 の 協 議 や 国 保 基 盤 強 化 協 議 会 、
医療保険部会等の場で議論され、健保連は一貫して、後期高齢者支援金の全面
総報酬割によって生じる協会けんぽの国庫補助削減分の 7 割相当部分を国保の
財政対策に優先投入することは国庫負担の肩代わりであり、容認できないと批
判し、そのうえで、法定外一般会計繰り入れや保険料収納など、国保固有の問
題の改善を優先すべきと主張した。
さ ら に 、経 団 連 、連 合 、日 商 、協 会 け ん ぽ の 被 用 者 保 険 関 係 団 体 と も 連 携 し 、
連名による意見書を 2 回にわたり医療保険部会に提出。改革案の問題点を指摘
するとともに、高齢者医療制度の負担構造の改革をはじめとする医療保険制度
概-5
全 体 の さ ら な る 改 革 に 取 り 組 む た め の 議 論 を 強 く 求 め た が 、 結 果 的 に 27 年 1
月に同法案の骨格が固められ、以後、議論の舞台は国会審議の場に移ることと
なった。
②医療保険制度改革関連法案の国会審議への対応について
医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 案 は 、4 月 14 日 の 衆 院 本 会 議 で 審 議 入 り し 、4 月 28
日 の 衆 院 本 会 議 で の 可 決 を 経 て 、 5 月 27 日 の 参 院 本 会 議 で 可 決 、 成 立 し た 。
ま ず 同 法 案 の 審 議 を 付 託 さ れ た 衆 院 厚 生 労 働 委 員 会 で は 、4 月 15 日 の 趣 旨 説
明を皮切りに、質疑や参考人の意見陳述が行われた。
審議のなかでは、法案の柱の 1 つである国保改革が大きな焦点となる一方、
与野党からは現役世代に過重な負担を課す現行の高齢者医療制度の仕組みに懸
念を示す意見も出され、健保連が求める高齢者医療への公費投入や、拠出金負
担の上限設定、拠出金負担の重い保険者の負担を軽減する現行の高齢者医療運
営円滑化等補助金の予算額拡充を訴える声も聞かれた。
特に、後期高齢者支援金の総報酬割により生じる国費財源の 7 割相当を国保
の財政対策に転用することについては、被用者保険関係 5 団体の強い反対意見
を踏まえて、
“ 国 庫 補 助 の 肩 代 わ り ”と の 指 摘 ほ か 、与 党 議 員 か ら も 、今 回 制 度
化 さ れ た 特 別 負 担 調 整( 拠 出 金 負 担 の 重 い 上 位 10% の 保 険 者 の 負 担 軽 減 費 用 を
国 庫 と 保 険 者 の 支 え 合 い で 折 半 す る 仕 組 み ) に よ る 国 費 財 源 100 億 円 の さ ら な
る拡充の必要性が指摘され、健保組合をはじめ被用者保険の危機的な財政状況
への理解が与野党に広がっていることをうかがわせた。
4 月 23 日 の 委 員 会 に は 、 岡 﨑 誠 也 氏 ( 全 国 市 長 会 )、 福 田 富 一 氏 ( 全 国 知 事
会 )、花 井 圭 子 氏( 連 合 )ら が 参 考 人 と し て 出 席 し 、意 見 を 陳 述 し た 。こ の な か
で、被用者保険を代表して意見を述べた花井氏は、▽被用者保険では、保険料
収入に占める高齢者医療への拠出金の割合は平均 4 割強、すでに 5 割を超えて
いる健保組合も多数存在すること、▽後期高齢者支援金の全面総報酬割により
生じる国費を国保の財政対策の財源とすることは国費の肩代わりであり撤回す
べきであること-等を主張し、抜本的な解決のためには高齢者医療制度の抜本
改革が必要だと訴えた。
4 月 24 日 の 委 員 会 で は 、 同 法 案 の 施 行 期 日 を 当 初 の 「 27 年 4 月 1 日 」 か ら
「公布の日」に修正したうえで法案を可決。また、維新の党から、高齢者医療
制度を含めた医療保険制度体系、保険給付の範囲、負担能力に応じた費用負担
の在り方等について、必要に応じ、磐石な医療保険制度を再構築するための検
討を行う等の 3 項目の附帯決議が提案され、民主、共産両党以外の与野党の賛
成多数で採択された。
参 院 の 審 議 は 、 5 月 13 日 の 本 会 議 か ら 始 ま り 、 翌 14 日 以 降 、 厚 生 労 働 委 員
会において審議や参考人質疑が続けられた。衆院で議論となった国保財政の都
道府県化・国保の財政支援策や、後期高齢者支援金の全面総報酬割による被用
者保険の肩代わりと被用者保険の財政問題が引き続き論点となったほか、▽患
者申出療養、▽大病院の紹介状なし外来患者に対する選定療養費の義務化、▽
概-6
予防・健康づくりへのインセンティブ-なども集中的に取り上げられた。
一 方 、野 党 の 一 部 か ら は 、協 会 け ん ぽ と 健 保 組 合 と の 報 酬 水 準 の 格 差 を 引 き
合いに、前期高齢者納付金の総報酬割導入や、保険者間の財政調整・一元化に
繋がるような意見も散見されたが、答弁に立った塩崎厚生労働相は、十分な議
論・慎重な検討を要するとの立場を崩さず、こうした保険者の一元化論とは一
線を画す姿勢を示した。
(( 2)財 政 調 整・一 元 化 の 阻 止 活 動 の 継 続 実 施 に も 記 述 )
ま た 、 5 月 21 日 、 22 日 の 委 員 会 で は 参 考 人 の 意 見 陳 述 が 行 わ れ 、 22 日 に は
健 保 連 の 白 川 副 会 長 、福 田 富 一 氏( 全 国 知 事 会 )、渡 邊 廣 吉 氏( 全 国 町 村 会 )ら
が参考人として出席した。
このなかで、白川副会長は、同法案について、拠出金負担の重い保険者への
支 援 策 な ど 評 価 で き る 部 分 も あ る が 、後 期 高 齢 者 支 援 金 の 全 面 総 報 酬 割( 29 年
度 実 施 ) に よ っ て 生 じ る 国 費 約 2,400 億 円 の う ち 7 割 相 当 を 国 保 の 財 政 支 援 に
投入することは肩代わりであり、大きな問題だと指摘した。さらに、今回の法
案には最重要課題である高齢者医療の費用負担構造の改革が含まれていないと
述べて、医療費適正化の一層の推進とともに必要な措置をとるよう訴えた。
参 院 厚 生 労 働 委 員 会 は 5 月 26 日 に 質 疑 を 終 局 し 、同 法 案 を 可 決 。採 決 に あ わ
せて賛成多数で採択された附帯決議(自民、民主、公明、維新、元気、無所属
ク ラ ブ の 6 会 派 共 同 提 出 ) は 、( 1) 国 保 改 革 、( 2) 高 齢 者 医 療 制 度 お よ び 被 用
者 保 険 、( 3) 患 者 負 担 、( 4) 医 療 費 適 正 化 計 画 お よ び 予 防 ・ 健 康 づ く り 、( 5)
患 者 申 出 療 養 - を 柱 と し た 19 項 目 に 及 び 、
( 2)高 齢 者 医 療 制 度 お よ び 被 用 者 保
険の項目には、▽医療保険制度改革の促進と高齢者医療制度の検討、▽拠出金
負担軽減措置の実施と高齢者医療運営円滑化等補助金の将来にわたる財源確保、
▽後期高齢者支援金の総報酬割拡大の被用者保険財政への影響・評価と被用者
保険の保険者・被保険者への十分な説明と理解・納得-等が盛り込まれ、健保
連・健保組合の主張が一定程度反映される形となった。
ま た 、 健 保 連 は 5 月 27 日 の 法 案 成 立 を 受 け て 、 同 日 、「 医 療 保 険 制 度 改 革 関
連法の成立にあたって」と題する大塚会長コメントを公表。総報酬割によって
生じる国費財源の「肩代わり」を「きわめて遺憾」とする一方、附帯決議の採
択 な ど「 健 保 組 合・健 保 連 一 体 と な っ た 活 動 が 一 定 の 成 果 を あ げ た 」と 評 価 し 、
持続可能性を追求するための「抜本的改革の断行」を強く求めていくとした。
な お 、 改 正 法 の 成 立 が 5 月 27 日 と な っ た こ と か ら 、 27 年 度 の 後 期 高 齢 者 支
援金等の拠出金の賦課徴収の開始は例年の 5 月から 6 月に 1 か月程度遅れる事
態となった。
③ 骨 太 方 針 2015「 経 済 ・ 財 政 再 生 計 画 」 へ の 対 応 に つ い て
政 府 は 、平 成 27 年 6 月 30 日 、
「 デ フ レ 脱 却 ・ 経 済 再 生 」と「 財 政 健 全 化 」を
同時達成するため、
「 経 済 財 政 運 営 と 改 革 の 基 本 方 針( 骨 太 方 針 )2015」を 閣 議
決定した。
「 骨 太 方 針 2015」 で は 32 年 度 の PB( プ ラ イ マ リ ー バ ラ ン ス ) の 黒 字 化 を 実
現 す る た め 、 28 年 度 か ら 32 年 度 ま で の 5 年 間 を 対 象 期 間 と す る 「 経 済 ・ 財 政
概-7
再生計画」を策定。特に、最初の 3 年間を「集中改革期間」と位置づけ、社会
保 障 関 係 費 の 伸 び を 3 年 間 で 1.5 兆 円( 年 0.5 兆 円 )程 度 と す る こ と を 目 安 に 、
医療・介護提供体制の適正化、インセンティブ改革、負担能力に応じた公平な
負担、給付の適正化、薬価・調剤等の診療報酬に係る改革、医薬品等に係る改
革などの社会保障分野の改革事項を検討するとされた。改革の検討事項は、経
済財政諮問会議の下に設置する経済・財政一体改革推進委員会において、改革
の KPI、 ス ケ ジ ュ ー ル 等 の 改 革 工 程 表 を 年 内 に 策 定 し 、 進 め て い く こ と と な っ
た。
一 方 、経 済 財 政 諮 問 会 議 と 並 行 し て 議 論 を 進 め て い た 財 務 省 の 財 政 制 度 等 審
議会は 6 月 1 日、
「 財 政 健 全 化 計 画 等 に 関 す る 建 議 」を ま と め 、
「 骨 太 方 針 2015」
に反映するよう求めた。
「 建 議 」 は 、 経 済 再 生 と 財 政 健 全 化 の 両 立 を め ざ し 、 32 年 度 の PB 黒 字 化 に
向け社会保障等の歳出分野の改革に取り組むとし、医療・介護分野では、負担
能 力 に 応 じ た 公 平 な 負 担 と し て 、▽ 高 額 療 養 費 制 度 の 見 直 し 、▽ 75 歳 以 上 高 齢
者の原則 2 割負担、▽介護保険の 2 割負担対象者の拡大、▽高額介護サービス
費の利用者負担限度額の引き上げ、▽金融資産も勘案した負担能力判定の仕組
みの導入-等のほか、前期高齢者納付金と介護納付金への総報酬割導入も提起
した(このほか、▽診療報酬本体・介護報酬のマイナス改定、▽調剤報酬の適
正化、▽市販類似薬の公的保険からの除外、▽受診時定額負担の導入、▽後発
医 薬 品 使 用 割 合 目 標 の 引 き 上 げ ( 29 年 度 内 に 80% )、 ▽ 後 発 医 薬 品 が あ る 先 発
品 の 保 険 給 付 額 を 後 発 品 価 格 ま で と す る 制 度 へ の 移 行 等 )。
これに対し、健保連は 6 月 5 日、経団連、連合、日商、協会けんぽの被用者
保険関係団体と連携し、
「 財 源 捻 出 策 と し て 、介 護 納 付 金 や 前 期 高 齢 者 納 付 金 に
総 報 酬 割 を 導 入 す る こ と は 到 底 容 認 で き る も の で は な い 」と の 意 見 書 を ま と め 、
塩崎厚生労働大臣に提出した。
そ の 後 、6 月 30 日 に 閣 議 決 定 さ れ た「 骨 太 方 針 2015」で は 、▽ 高 額 療 養 費 制
度 の 見 直 し 、▽ 75 歳 以 上 高 齢 者 の 窓 口 負 担 、▽ 介 護 保 険 の 利 用 者 負 担 - 等 の 負
担・給 付 の 適 正 化 策 に 加 え 、
「現役被用者の報酬水準に応じた保険料負担の公平
化を図る。このため…介護納付金の総報酬割やその他の課題について検討を行
う」と明記された。介護納付金の総報酬割が検討課題にあげられる一方、前期
高齢者納付金の総報酬割については明確には記述されなかった。
④社会保障審議会・医療保険部会及び介護保険部会での議論について
27 年 7 月 9 日 に 開 か れ た 医 療 保 険 部 会 で は 、 当 面 の 進 め 方 と し て 、「 骨 太 方
針 2015」の 閣 議 決 定 を 踏 ま え て 、経 済 財 政 諮 問 会 議 の 議 論 と 並 行 し な が ら 改 革
項 目 の 具 体 化 の 議 論 を 行 う こ と を 確 認 し た 。さ ら に 、10 月 、11 月 の 医 療 保 険 部
会 に は 、「 骨 太 方 針 2015」 に お け る 検 討 課 題 の う ち 、 医 療 保 険 部 会 で の 検 討 が
必要な項目について、論点が提示された。
こ う し た 議 論 に 対 応 す る た め 、健 保 連 で は 、12 月 1 日 に 開 催 さ れ た 医 療 制 度
等 対 策 委 員 会 に お い て「 骨 太 方 針 2015 の 主 な 検 討 項 目 に 対 す る 健 保 連 の 考 え 方 」
概-8
をまとめた。
こ の な か で は 、医 療 保 険 部 会 で の 主 な 検 討 項 目 で あ る 、▽ 医 療 に 要 す る 費 用
負担のあり方(医療・介護を通じた居住費負担、外来時の定額負担、高額療養
費 の あ り 方 、後 期 高 齢 者 の 窓 口 負 担 等 )、▽ 保 険 給 付 の 範 囲・内 容( 市 販 類 似 薬
にかかる保険給付等)-等について、給付の効率化・重点化を推進する立場か
ら お お む ね 賛 成 の 考 え 方 を ま と め る と と も に 、介 護 保 険 制 度 に か か る 方 向 性( 介
護納付金への総報酬割導入の反対、給付のさらなる重点化・効率化の検討、2
割負担対象者の見直し、要介護度に応じた負担割合設定の検討、介護療養病床
の廃止後の対応等)についても整理し、今後開催が予定される介護保険部会の
議論にも備えることとした。
一 方 、 経 済 財 政 諮 問 会 議 は 12 月 24 日 、「 経 済 ・ 財 政 再 生 ア ク シ ョ ン プ ロ グ
ラ ム 」 及 び 「 経 済 ・ 財 政 再 生 計 画 改 革 工 程 表 」 を 策 定 し た 。「 改 革 工 程 表 」 は 、
改 革 項 目 に つ い て 、 ① 27 年 度 内 に 対 応 、 ② 関 係 審 議 会 等 に お い て 検 討 し 、 28
年 度 末 ま で に 結 論 を 得 て 、そ の 結 果 に 基 づ き 29 年 の 通 常 国 会 へ 必 要 な 法 案 を 提
出、③集中改革期間中に検討、④その他-にそれぞれ区分し、関係審議会等に
おける検討や必要な措置の実施を求めるものであった。
こ れ を 受 け 、28 年 1 月 20 日 の 医 療 保 険 部 会 は 、
「 改 革 工 程 表 」に 沿 っ て 必 要
なものについては年内の取りまとめを目指して議論していく方針を確認。さら
に、健保連が求めていた高齢者医療制度のあり方、任意継続被保険者制度等の
被用者保険をめぐる諸課題への対応についても、改革工程表の議論と並行して
議論していくこととなった。
ま た 、介 護 保 険 部 会 は 28 年 2 月 17 日 、約 2 年 ぶ り に 再 開 さ れ 、30 年 度 か ら
の 第 7 期 介 護 保 険 事 業( 支 援 )計 画 期 間 に 向 け て 、29 年 の 通 常 国 会 へ の 法 案 提
出をめざし、制度の見直し議論を開始した。
今回の制度の見直しは、改革工程表の内容を踏まえ、①地域包括ケアシステ
ムの推進、②介護保険制度の持続可能性の確保-を柱に検討を進めていく方針
が確認され、②介護保険制度の持続可能性の確保では、給付と負担のあり方が
主な論点となり、介護納付金の総報酬割も検討課題にあげられた。
同 部 会 の 委 員 と し て 参 画 し た 佐 野 副 会 長( 医 療 制 度 等 対 策 委 員 会 委 員 長 )は 、
給付の適正化に向けて、市町村や後期高齢者医療広域連合の保険者機能の重要
性を指摘するとともに、高齢者と現役世代の負担の公平の観点から、現役世代
の負担軽減を求め、現役世代の負担を高める方向となる介護納付金の総報酬割
には健保連として絶対反対の考えを表明した。
この「改革工程表」のうち、医療、介護分野において「関係審議会等におい
て 検 討 し 、 28 年 度 末 ま で に 結 論 を 得 て 、 そ の 結 果 に 基 づ き 29 年 の 通 常 国 会 へ
必要な法案を提出」とされている項目については、医療保険部会、介護保険部
会等での議論が活発に行われる見通しである。また、社会保障費の伸びの抑制
( 年 0.5 兆 円 程 度 )、29 年 4 月 の 消 費 税 率 再 引 き 上 げ( 8% → 10% )等 の 財 源 問
題も絡めた議論が制度改革論議に波及することも予想される。前期高齢者納付
概-9
金の総報酬割等、給付費を含む保険者間の一層の財政調整に途を開くような提
案が提起される可能性も否定できない。
健 保 連 と し て は 、「 改 革 工 程 表 」 に 掲 げ ら れ た 項 目 だ け で な く 、 財 政 調 整 ・
一元化につながる議論を注視しつつ、喫緊の最重要課題である高齢者医療制度
への公費拡充を実現するための活動を強化していく必要がある。
⑤短時間労働者の社会保険の適用拡大への対応について
短 時 間 労 働 者 へ の 社 会 保 険 の 適 用 拡 大 に つ い て は 、 平 成 24 年 8 月 に 成 立 し
た社会保障・税一体改革関連法の年金機能強化法で規定され、①週の所定労働
時 間 が 20 時 間 以 上 、② 月 額 賃 金 が 8.8 万 円 以 上 、③ 勤 務 期 間 が 1 年 以 上 見 込 ま
れ る こ と 、 ④ 学 生 を 適 用 除 外 、 ⑤ 従 業 員 501 人 以 上 の 企 業 ( 特 定 適 用 事 業 所 )
が 対 象 - を 適 用 要 件 と し 、 28 年 10 月 か ら 施 行 さ れ る こ と と な っ た 。
また、適用拡大に伴う調整措置として、後期高齢者支援金、前期高齢者納付
金(前期高齢者にかかる後期高齢者支援金)の加入者割部分および介護納付金
について、
「特定加入者」
( 報 酬 額 ベ ー ス で 10.1 万 円 未 満 の 被 保 険 者 と そ の 被 扶
養 者 )( 介 護 保 険 で は 「 特 定 第 2 号 被 保 険 者 」) の 人 数 を 補 正 す る こ と で 、 標 準
報酬の低い被保険者が多く加入する保険者の拠出金負担が軽減されることとな
った。
なお、さらなる適用拡大については、施行後、3 年以内に検討を加え、その
結果に基づき、必要な措置を講じることとされている。
27 年 10 月 2 日 の 医 療 保 険 部 会 で は 、 厚 生 労 働 省 か ら 、 短 時 間 労 働 者 の 適 用
拡 大 に つ い て 、直 近 デ ー タ( 22、23 年 デ ー タ )に 基 づ く 対 象 者 数( 25 万 人 )お
よ び 保 険 者 種 別 の 財 政 影 響 、チ ェ ー ン ス ト ア 業 界 の 14 健 保 組 合 の デ ー タ に 基 づ
く 財 政 影 響 の 試 算 結 果 が 示 さ れ 、適 用 拡 大 に 伴 う 保 険 者 の 負 担 軽 減 措 置 と し て 、
「 特 定 加 入 者 」の 人 数 を「 0.01 人 換 算 」と す る 案 が 了 承 さ れ た 。こ れ ら に つ い
て、白川副会長は、直近データに基づく試算や負担軽減措置による財政効果を
金額ベースで示す資料を要望したほか、適用拡大により大幅な保険料率の引き
上げが必要となる健保組合の医療給付費等に対する負担軽減策等についても必
要な対応を求めた。
一方、厚生労働省は、適用拡大に伴う負担増組合に対する財政支援について
は 、28 年 度 の 予 算 概 算 要 求 の 段 階 で 、予 算 編 成 過 程 で 検 討 す る「 事 項 要 求 の 取
扱い」とする方針を決め、医療制度等対策委員会の場において予算額確保に努
力する考えを明らかにした。
そ の 後 、 27 年 末 に 閣 議 決 定 さ れ た 28 年 度 政 府 予 算 案 で は 、 被 用 者 保 険 の 拠
出 金 等 の 負 担 に 対 す る 財 政 支 援 ( 高 齢 者 医 療 運 営 円 滑 化 等 補 助 金 ) 381 億 円 の
う ち 、 財 政 窮 迫 組 合 に 対 す る 補 助 ( 旧 臨 給 分 ) と あ わ せ た 約 19 億 円 に つ い て 、
適用拡大により著しく法定給付費が増加する健保組合の財政支援に充てる予定
であることが盛り込まれた。
な お 、適 用 拡 大 に 伴 う 保 険 者 へ の 財 政 支 援 に つ い て は 、今 後 、実 績 を 踏 ま え
たうえで助成基準等を検討していく必要がある。適用拡大の影響が満年度化す
概-10
る 29 年 度 以 降 の 支 援 に つ い て も 、 そ の 拡 充 を 求 め て い く 必 要 が あ る 。
ま た 、 従 業 員 500 人 以 下 の 企 業 に お い て も 適 用 拡 大 を 望 む 企 業 に つ い て は 、
労 使 合 意 に 基 づ き 適 用 拡 大 を 行 う こ と を 可 能 と す る 法 案( 年 金 改 革 法 案 )が 28
年の通常国会に提出されており、その審議状況や施行時期等について注視する
必要がある。
⑥健保組合に対する国の財政支援の継続・拡大について
○拠出金負担の軽減のための財政支援
27 年 度 の 健 保 組 合 全 体 の 拠 出 金 負 担 は 、3 兆 2,893 億 円 に の ぼ り 、26 年 度 に
比 べ 254 億 円 減 少 し た 。
これに対し、高齢者医療運営円滑化等補助金(高齢者支援金等負担金助成事
業 費 )の 予 算 額 と し て 、26 年 度 の 265 億 円 か ら 308.4 億 円 へ 前 年 度 比 16% 、43
億円増加した。
こ の う ち 、拠 出 金 の 負 担 軽 減 を 図 る た め の 助 成 は 、従 来 分 が 199 億 円 と 後 期
高 齢 者 支 援 金 の 総 報 酬 割 の 拡 大 に よ り 前 年 度 よ り 39 億 円 縮 減 さ れ た 一 方 で 、前
期 高 齢 者 納 付 金 負 担 の 軽 減 を 図 る た め に 支 援 す る 新 規 拡 充 分 101 億 円 の 合 計
300.5 億 円 が 計 上 さ れ た 。
ま た 、27・28 年 度 の 2 年 間 に 限 り 、高 齢 者 医 療 運 営 円 滑 化 等 事 業 の 枠 組 み の
な か で 財 政 窮 迫 組 合 に 対 し て 支 援 す る 健 保 組 合 給 付 費 等 臨 時 補 助 金 は 、27 年 度
予 算 で 7.9 億 円 が 計 上 さ れ た 。
実 際 の 助 成 に つ い て は 、 交 付 基 準 等 の 調 整 を 経 て 、 ▽ 従 来 分 に 200 億 円 ( 健
保 組 合 給 付 費 等 臨 時 補 助 金 か ら の 流 用 を 含 む )、 ▽ 新 規 拡 充 分 に 97.3 億 円 、 ▽
健保組合給付費等臨時補助金に 5 億円-が交付された。
ま た 、 健 保 連 は 、 27 年 6 月 に 28 年 度 政 府 予 算 案 に 向 け て 、 厚 生 労 働 省 に 対
し「 平 成 28 年 度 政 府 予 算 概 算 要 求 に 向 け た 個 別 の 要 望 事 項 」を 提 出 し た 。要 望
事項では、全面総報酬割の段階的実施などを踏まえ、▽前期高齢者医療への公
費拡充など高齢者医療費の負担構造改革の実現、▽高齢者医療運営円滑化等 補
助金などの財政支援の拡充、▽総報酬割の拡大により負担増となる健保組合へ
の 激 変 緩 和 措 置 の 実 施 - 等 を 求 め た ほ か 、 28 年 10 月 か ら 施 行 す る 短 時 間 労 働
者への社会保険の適用拡大により、短時間労働者を多く雇用する業種・業態の
保険者の拠出金負担や保険給付費の影響を精査したうえで、必要な負担軽減措
置を検討するよう要望した。
こ の 結 果 、28 年 度 の 高 齢 者 医 療 運 営 円 滑 化 等 補 助 金 は 、前 年 度 比 73.1 億 円 、
19% 増 の 381.5 億 円 が 確 保 さ れ る こ と と な っ た 。 内 訳 は 、 拠 出 金 の 負 担 軽 減 を
図 る た め の 助 成 が 前 年 度 比 62 億 円 増 の 362.5 億 円 ( 従 来 分 160 億 円 、 拡 充 分
202 億 円 ) の ほ か 、 旧 健 保 組 合 給 付 費 等 臨 時 補 助 金 分 及 び 適 用 拡 大 に 伴 い 法 定
給 付 費 が 著 し く 増 加 す る 保 険 者 へ の 支 援 に あ わ せ て 18.9 億 円 を 計 上 し た 。
な お 、27 年 5 月 に 成 立 し た 医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 で 、被 用 者 保 険 に お け る
後 期 高 齢 者 支 援 金 に つ い て 、 29 年 度 ま で 段 階 的 ( 27 年 度 =2 分 の 1、 28 年 度 =3
分 の 2) に 全 面 総 報 酬 割 に 拡 大 す る こ と が 盛 り 込 ま れ た こ と に あ わ せ て 、 29 年
概-11
度に被用者保険の拠出金に対する支援策を拡充する方針が示されている。
具体的には、▽拠出金の負担が重く運営に困難を来たしている保険者への支
援 ( 既 存 分 ) に 約 120 億 円 、 ▽ 所 要 保 険 料 率 ( 総 報 酬 に 占 め る 前 期 高 齢 者 納 付
金 の 割 合 ) が 高 い 上 位 の 被 用 者 保 険 者 等 の 負 担 軽 減 ( 拡 充 分 ) に 約 600 億 円 、
▽保険者の支え合いで実施している拠出金負担の特に重い保険者の負担軽減策
の 対 象 を 拡 大 ( 現 行 3% → 10% ) し 、 拡 大 分 に 該 当 す る 保 険 者 の 負 担 軽 減 の 費
用を保険者の支え合いと国費で折半(拡大分は、総報酬が平均以下の保険者に
限 定 )す る 費 用( 国 費 分 )に 約 100 億 円 - と な っ て い る 。29 年 度 の 予 算 編 成 に
向けては、こうした財源の確実な確保・拡充に向けて活動する必要がある。
○災害臨時特例補助金
27 年 度 政 府 予 算 で は 、東 日 本 大 震 災 に 伴 う 東 京 電 力 福 島 原 発 事 故 に よ る 避 難
指示区域等の住民である被保険者等の一部負担金の減免に要する費用を対象に、
災 害 臨 時 補 助 金 と し て 、26 年 度 か ら 0.9 億 円 減 の 4.8 億 円 が 措 置 さ れ た 。交 付
基 準 等 の 調 整 を 経 て 、結 果 と し て 、27 年 度 の 健 保 組 合 か ら の 交 付 申 請 額 は 2.07
億 円 と な り 、 81 組 合 に 1.74 億 円 が 交 付 さ れ た 。
28 年 度 政 府 予 算 の 編 成 に 向 け て 、 27 年 6 月 に 健 保 連 が 厚 生 労 働 省 に 提 出 し
た要望事項では、健保組合からの交付申請の状況や今後の見通しを踏まえて必
要 な 補 助 金 の 継 続 を 要 望 し た 。 そ の 結 果 、 28 年 度 政 府 予 算 で は 、 3.6 億 円 が 措
置 さ れ た 。27 年 度 に 引 き 続 き 、区 域 指 定 が 解 除 さ れ た 地 域 に 居 住 す る 上 位 所 得
層 に つ い て は 財 政 支 援 措 置 の 対 象 外 と さ れ た た め 、27 年 度 に 比 べ て 1.2 億 円 の
減額となった。
(2)財政調整・一元化の阻止活動の継続実施
① 医療保険制度改革関連法案の国会審議について
医 療 保 険 制 度 改 革 で は 、前 述 の と お り 、29 年 度 か ら 被 用 者 保 険 の 後 期 高 齢 者
支援金の算定を全面総報酬割とし、その際に不要となる協会けんぽの国庫補助
分 ( 約 2,400 億 円 ) の 7 割 相 当 部 分 ( 約 1,700 億 円 ) は 国 保 の 財 政 対 策 に 優 先
投入することが決定された。
し か し な が ら 、こ う し た 被 用 者 保 険 の 負 担 増 に よ っ て 国 庫 財 源 を 捻 出 し 、制
度基盤の異なる国保の財政対策のために充当するといった方策は、制度間の財
政調整の手法にほかならず、健保連や被用者保険関係団体はこうした手法に一
致して反対してきたが、この点は、法案の国会審議においても大きな論点のひ
とつとなった。
衆参の厚生労働委員会では、与党である公明党の古屋範子氏(衆院)が「後
期高齢者の支援金の総報酬割導入により、報酬水準の低い健保組合の負担は軽
減されるが、報酬水準の高い健保組合の負担は増える。…負担増となる部分は
丁寧な議論が必要だ」と述べて、健保組合全体の負担に配慮を求める発言を行
った。
さ ら に 、 民 主 党 ( 当 時 ) を は じ め と し た 野 党 か ら も 、 27 年 2 月 に ま と め た 被
概-12
用 者 保 険 関 係 5 団 体 の 意 見 書 を 踏 ま え 、▽ 総 報 酬 割 に よ り 浮 い た 国 庫 補 助 を 国 保
の 財 政 支 援 に 投 入 す る の は 、国 の 役 割 を サ ラ リ ー マ ン や 企 業 に 押 し 付 け る も の だ
( 衆 院 民 主・大 西 健 介 氏 )、▽ 全 面 総 報 酬 割 の 一 番 の 問 題 は 総 報 酬 割 そ の も の で
はなく、浮いた国費を国保に優先的に活用している点にある(参院 民主・津田
弥 太 郎 氏 )- 等 、国 の 負 担 を 被 用 者 保 険 が 肩 代 わ り す る 構 図 を 批 判 す る 指 摘 が 目
立 ち 、与 野 党 を 問 わ ず 、健 保 組 合・健 保 連 の 主 張 が 国 政 の 場 に 届 い て い る 状 況 が
うかがわれた。
一 方 、民 主 党 の 櫻 井 充 氏 は 、参 院 厚 生 労 働 委 員 会 で 、協 会 け ん ぽ と 健 保 組 合
には歴然とした報酬格差があるとして、
「前期高齢者納付金が加入者割では協会
けんぽの負担が重くなる。前期高齢者納付金も総報酬割にすべきだ」として、
厚生労働省の見解を質した。これに対し、塩崎厚生労働大臣は、協会けんぽの
平 均 保 険 料 率 10% を 維 持 す る た め に 、国 庫 補 助 率 を 当 分 の 間 16.4% と す る こ と
となったとしたうえで、前期高齢者納付金の総報酬割については、▽前期高齢
者の偏在の調整が被用者保険間でなくなること、▽相対的に報酬の高い健保組
合が他の制度のために半分以上の保険料を拠出していること、▽特に負担の重
くなる健保組合の納得が必要なこと-等の課題があるとして、慎重な姿勢を明
確に示した。
②政府の審議会及び被用者保険関係 5 団体の連携等について
27 年 5 月 の 医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 の 成 立 に 前 後 し て 、医 療 費 適 正 化 や 高 齢
者医療制度の見直しなど、今改革で積み残された課題の議論も活発化した。
4 月 か ら 5 月 に か け て 経 済 財 政 諮 問 会 議 が 28 年 度 以 降 の 予 算 編 成 を 見 据 え て
「 骨 太 方 針 2015」の 策 定 に 向 け た 議 論 を 開 始 す る と 、財 務 省 の 財 政 制 度 等 審 議
会も同時並行的に議論を開始。いち早く「財政健全化計画等に関する建議」を
まとめた。そのなかでは、医療・介護分野では、負担能力に応じた公平な負担
の 名 の 下 、前 期 高 齢 者 納 付 金 や 介 護 納 付 金 へ の 総 報 酬 割 導 入 も 提 起 さ れ て い た 。
これに対し、健保連は、経団連、連合、日商、協会けんぽと連携し、 6 月 5
日 に 連 名 の 意 見 書 を ま と め 、塩 崎 厚 生 労 働 大 臣 に 提 出 し た 。意 見 書 は 、
「財源捻
出策として、介護納付金や前期高齢者納付金に総報酬割を導入することは到底
容認できるものではない」として、保険者間の財政調整に繋がるような総報酬
割の導入には真っ向から反対する考えを主張し、財政審の動きを牽制した。
最 終 的 に 閣 議 決 定 さ れ た 「 骨 太 方 針 2015」 で は 、「 介 護 納 付 金 の 総 報 酬 割 や
その他の課題について検討を行う」と明記され、介護納付金の総報酬割が検討
課題にあげられる一方、前期高齢者納付金の総報酬割については明確には記述
されることはなかった。
しかしながら、健保連としては、負担の公平あるいは応能負担といった趣旨
から、健保組合等に対してさらなる負担増を求めようとする動きには断固反対
していかなければならない。
特 に 、介 護 納 付 金 の 総 報 酬 割 は 、28 年 2 月 か ら 再 開 さ れ た 社 会 保 障 審 議 会 ・
介 護 保 険 部 会 に お い て 、29 年 の 通 常 国 会 へ の 法 案 提 出 に 向 け た 検 討 課 題 の 1 つ
概-13
に 位 置 づ け ら れ て お り 、28 年 度 中 に も 具 体 的 な 議 論 に 入 る こ と が 想 定 さ れ て い
る。だが、そもそも介護納付金の総報酬割は、介護保険制度創設時の理念を逸
脱するものであり、国の財源捻出の手段として提起されているにすぎない。合
理性・納得性を欠く提起に対し、断固反対の立場で議論に臨む必要がある。
ま た 、前 期 高 齢 者 納 付 金 の 総 報 酬 割 の 検 討 も 、 現 状 は 一 審 議 会 の 提 案 に す ぎ
ないが、今後、議論が具体化されないとも限らない。引き続き理不尽な財政調
整や一元化の議論が広がっていく動きに注意し、被用者保険の関係団体とも連
携、協調して、必要な活動を継続していく必要がある。
③その他
健 保 連 は 11 月 25 日 、健 康 保 険 組 合 全 国 大 会 を 開 催 し 、
「高齢者医療費の負担
構造改革の実現」
「 保 険 者 機 能 の 発 揮 に 効 果 的 な 健 保 組 合 方 式 の 維 持・発 展 」等
4 本を大会スローガンに掲げ、健保組合の総意として決議した。あわせて、全
国の健保組合の協力を得て国会議員への要請活動や広報活動等、健保組合・健
保連の主張実現へ精力的な活動を展開した。
一方、地方 6 団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国都道府県議
会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会)と国保中央会、都道府県
国 保 連 合 会 、全 国 国 保 組 合 協 会 は 11 月 19 日 、
「 国 保 制 度 改 善 強 化 全 国 大 会 」を
共同開催した。大会スローガンは、例年の「医療保険制度の一本化を早期に実
現すること」のほか、▽国は地方との協議において合意した公費投入について
平 成 29 年 度 か ら は 毎 年 3,400 億 円 を 確 実 に 措 置 す べ き 、▽ 国 は 新 た な 制 度 に お
いて、制度運営について不断の検証を行い、国保制度を持続可能なものとする
ための責任を果たすこと-等が盛り込まれ、後期高齢者支援金の全面総報酬割
導入により生じる財源を活用した公費投入のほか、さらなる追加公費を示唆す
る文言が追加された。公費の追加財源として、被用者保険の負担増により財源
を捻出する手法が繰り返される恐れも考えられることから、こうした動向も常
に把握し、必要な対応を考えていく必要がある。
( 3 ) H28 年 度 診 療 報 酬 改 定 に 向 け た 対 応
28 年 度 改 定 で は 、前 回 改 定 の 答 申 書 附 帯 意 見 を 踏 ま え た 改 定 の 結 果 検 証 や 入
院 ・ 外 来 ・ 在 宅 医 療 に 関 す る 総 論 的 な 議 論 を 行 い つ つ 、 27 年 11 月 か ら は 概 ね
週 2 回ペースで検討を重ねた。社会保障審議会の医療保険部会および医療部会
で は 、 12 月 9 日 に 平 成 28 年 度 診 療 報 酬 改 定 の 基 本 方 針 が 取 り ま と め ら れ 、 重
点課題とされた「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携
に 関 す る 視 点 」を は じ め 、
「 患 者 に と っ て 安 心・安 全 で 納 得 で き る 効 果 的・効 率
的 で 質 が 高 い 医 療 を 実 現 す る 視 点 」、「 重 点 的 な 対 応 が 求 め ら れ る 医 療 分 野 を 充
実 す る 視 点 」、「 効 率 化 ・ 適 正 化 を 通 じ て 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め る 視 点 」 と い
った 4 つの基本的視点が示され、この方向性に基づいて審議が行われた。
改 定 率 に つ い て は 、 11 月 18 日 に 健 保 連 を は じ め と す る 支 払 側 6 団 体 は 、 ▽
患者負担や保険料負担の増加につながる診療報酬の引き上げを行うことは、到
概-14
底 、国 民 の 理 解 と 納 得 が 得 ら れ な い 、▽ 26 年 度 改 定 と 同 様 に 薬 価 ・ 特 定 保 険 医
療材料改定分(引き下げ分)を診療報酬本体に充当せず、国民に還元する必要
がある-等とし、診療報酬のマイナス改定を求める要請書を塩崎厚生労働大臣
に提出し、中医協でも同様の主張を展開した。これに対し診療側は、▽薬価等
引き下げ分は本体改定財源に充当すること、▽マイナス改定を行うことになれ
ば医療崩壊の再来を招くことからプラス改定とすべき-と主張したことから、
中 医 協 は 12 月 11 日 に 両 論 併 記 の 意 見 書 を 厚 生 労 働 大 臣 に 提 出 し た 。
厚 労 相 と 財 務 相 と の 折 衝 を 経 て 、 改 定 率 は 12 月 21 日 に 診 療 報 酬 本 体 +
0.49%( 医 科 + 0.56% 、歯 科 + 0.61% 、調 剤 + 0.17% )、薬 価・医 療 材 料 ▲ 1.33%
と し 、 全 体 で ▲ 0.84% の マ イ ナ ス 改 定 と な っ た 。 こ れ 以 降 、 厚 生 労 働 省 が 具 体
的 な 報 酬 設 定 作 業 を 行 い 、 中 医 協 は 1 月 13 日 に 諮 問 を 受 け 、 2 月 10 日 に 答 申
を行った。
28 年 度 改 定 を 総 括 す る と 、支 払 側 が 患 者 や 国 民 の 負 担 等 の 観 点 か ら マ イ ナ ス
改 定 の 主 張 を し た に も か か わ ら ず 、診 療 報 酬 本 体 で 0.49% の プ ラ ス 改 定 と な っ
たこと、さらに薬価等改定分を国民へ還元するという方向性が明確に示されな
かったことについては、大きな不満が残る。しかし、具体的な改定内容につい
て、▽地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携等、全体と
して社会保障審議会がまとめた改定の基本方針に沿った見直しが行われたこと、
▽一般病棟 7 対 1 入院基本料の施設基準の見直しや主治医機能の拡大等、医療
機能の強化・連携の推進が図られたこと、▽かかりつけ薬剤師・薬局の要件化
や後発医薬品の使用促進策等、調剤報酬の適正化が図られたこと、▽特例によ
る市場拡大再算定の導入や薬価算定時の「費用対効果評価」の試行的導入等、
薬価の適正化が行われたこと、▽一部の医療用医薬品(湿布薬)について適正
給付に向けた対応が実施されたこと-等は評価できる。
次 期 30 年 度 診 療 報 酬 改 定 は 介 護 報 酬 と の 同 時 改 定 と な る が 、 こ れ に 向 け て
は答申書附帯意見に盛り込まれた、▽急性期、回復期、慢性期等の入院医療の
機能分化・連携の推進等に向けた検証、▽かかりつけ医に関する評価等の影響
の調査・検証等、外来医療の検証、▽後発医薬品の更なる使用促進に向けた検
討 - 等 を 行 っ て い く こ と に な る が 、健 保 連 は 社 会 保 障・税 一 体 改 革 が 示 す 2025
年の医療提供体制のあるべき姿に向け、病床の機能分化と連携、主治 医機能の
強化、後発医薬品の使用促進、医療と介護の連携等を引き続き検討していく。
(4)健保連の主張実現に向けた効果的な要請活動の展開
主 張 ・ 要 求 の 実 現 に 向 け て は 、 こ れ ま で 平 成 26 年 4 月 15 日 に 設 置 し た 「 要
求実現対策本部」および「特別委員会」を中心に、積極的かつ効果的な活動を
展開してきた。
平 成 27 年 5 月 に 成 立 し た 医 療 保 険 制 度 改 革 関 連 法 の 法 案 審 議 に あ た っ て は 、
関係議員、政党への働きかけを行い、審議における質問・答弁、そして附帯決
議において、一定の成果を得た。しかし、肝心の高齢者医療費の負担構造改革
概-15
は実現しておらず、また医療費の適正化対策など多くの課題も残されたままで
あ る た め 、引 き 続 き 、平 成 29 年 4 月 の 消 費 税 率 2% の 引 き 上 げ 時 に そ の 財 源 を
高齢者医療制度に投入する等、高齢者医療費の負担構造改革の実現に向け、▽
「要求実現対策本部」は継続して設置する、▽「特別委員会」は医療保険制度
改 革 関 連 法 の 成 立 も 受 け 6 月 12 日 の 常 任 理 事 会 を も っ て 一 旦 解 散 し 、 情 勢 ・
状況に応じて再設置する-こととした。
平 成 27 年 度 の 活 動 に つ い て は 、平 成 28 年 度 に お け る 総 報 酬 割 3 分 の 2 に よ
る負担増、短時間労働者の適用拡大、不合理な諸制度の見直し等を踏まえ、健
保 組 合 に 対 す る 十 分 な 財 政 支 援・手 当 て を 求 め る 活 動 を 中 心 に 展 開 し た 。ま た 、
最 大 の 課 題 で あ る 平 成 29 年 4 月 の 消 費 税 率 2% の 引 き 上 げ 時 に お け る 改 革 実 現
に向け、活動の基本方針等を策定し、効果とタイミングを考えた計画的な活動
を実施したほか、昨年から展開している健保組合の価値と皆保険維持に関する
対外アピール活動についても継続して実施した。
要請にあたっては、要請用リーフレットを作成し、医療制度改革関連法の附
帯 決 議 等 と あ わ せ 効 果 的 に 活 用 し た ほ か 、26 年 度 に 引 き 続 き 、都 道 府 県 単 位 で
の国会議員招致型イベント等によるアピール、要請を行った。
(5)健保連の主張実現に資する広報活動の継続的展開
26 年 度 の 広 報 活 動 を 踏 ま え 、 27 年 度 の 方 向 性 を 「 主 張 賛 同 型 」 か ら 「 情 報
の 収 集・発 信 型 」へ と 活 動 を 移 行 し 、健 保 組 合 の 認 知 度 の 拡 大 を 図 る と と も に 、
医 療 保 険 制 度 へ の 理 解 浸 透 の 基 盤 を 作 り 、訴 求 力 を 高 め る 広 報 活 動 を 展 開 し た 。
こ の う ち 「 あ し た の 健 保 プ ロ ジ ェ ク ト 」 は 、 特 設 Web サ イ ト の 内 容 を 一 新 し
た。またイメージキャラクターに「天才バカボンファミリー」を起用し、テレ
ビ CM、 意 見 広 告 、 交 通 広 告 、 統 一 広 報 資 料 等 に 活 用 し た 。
さ ら に 要 求 実 現 活 動 の 一 環 と し て 、国 会 議 員 を 招 い た イ ベ ン ト の 内 容 を 特 設
Web サ イ ト や 機 関 誌 で 紹 介 す る と と も に 、広 報 グ ッ ズ( ク リ ア フ ァ イ ル 、付 箋 )
を製作しイベント参加者に配布した。
2.保険者機能を発揮できる健保組合方式の維持発展のための支援策の推進
(1)データヘルス 計画の円滑実施に向けた健保組合への支援と各種データに
基づく効果的な保健事業の検証
平 成 27 年 度 か ら ス タ ー ト し た 「 デ ー タ ヘ ル ス 計 画 」 の 普 及 ・ 啓 発 事 業 と し
て 、 被 用 者 保 険 運 営 円 滑 化 助 成 金 ( 本 部 分 ・ 2,900 万 円 ) を 活 用 し 、 各 健 保 組
合 の デ ー タ ヘ ル ス 計 画 実 施 に 向 け た 側 面 的 支 援 を 行 っ た 。先 進 的 な 保 健 事 業( モ
デ ル 事 業 )の 事 例 集 を は じ め 、計 画 策 定・評 価 時 に お け る 適 切 な ア ウ ト プ ッ ト ・
アウトカム設定のためのガイドブック、健保組合から事業主に説明を行う際に
活 用 で き る リ ー フ レ ッ ト「 デ ー タ ヘ ル ス・健 康 経 営 」等 を 作 成 し た 。あ わ せ て 、
計画書策定時における内部体制、外部委託状況、分析手法、事業主との連携、
意識の変化等を把握することを目的とした、
「データヘルス計画における保険者
概-16
調 査 」を 実 施 し 、28 年 度 に 各 健 保 組 合 に ア ド バ イ ス を 行 う フ ィ ー ド バ ッ ク シ ー
トの基礎資料として取りまとめた。
ま た 、 保 険 者 団 体 、 経 済 団 体 、 医 療 関 係 団 体 等 32 の 民 間 組 織 や 有 識 者 に よ
る「日本健康会議」が 7 月に発足し、8 つの宣言「健康なまち・職場づくり宣
言 2020」が 採 択 さ れ た こ と か ら 、目 標 達 成 に 向 け て 関 係 省 庁 ・ 団 体 と 連 携 を 図
りその推進方策を検討した。
こ の 他 「 保 健 福 祉 事 業 実 施 状 況 等 調 査 ( 26 年 度 実 施 )」 結 果 を も と に 、 本 会
が保有する月報・決算データ等とのクロス分析による「保健事業運営実態から
みた医療保険者の調査研究」を実施した。分析の結果、保健事業種目ごとに多
様な傾向が表れており、健保組合の施策優位性や、保健事業を実施していく上
での事業主との連携・協働の重要性が再確認できた。今後、これらの分析結果
を活用して、国や関係機関、有識者等に健保組合の優位性を訴えていくことと
した。
<データヘルス計画>
①
「データヘルス計画」推進会議の開催(厚労省と共同設置)
②
「データヘルス計画における保険者調査」の実施
③
事業主向け説明リーフレット「データヘルス・健康経営」の作成
④
事例集、ガイドブック、マニュアル等の作成
⑤
「 デ ー タ ヘ ル ス ・ 予 防 サ ー ビ ス 見 本 市 」( 厚 労 省 主 催 ) へ の 協 力 ・ 支 援
(2)「医療費分析全体集計データベース」による医療費分析等への支援
データヘルス計画の策定等、保健事業を支える観点から、各健保組合が形
態・業態・規模等に応じ、他の健保組合との比較分析を行うための「医療費分
析全体集計データベース」を運用し、毎月、分析の際の共通指標となる全体集
計結果データの提供を行った。
ま た 、医 療 費 デ ー タ 並 び に 特 定 健 診 ・ 特 定 保 健 指 導 デ ー タ の 活 用 に よ る 調 査
分析事業については、以下の調査分析を実施し、それぞれ報告書(レポート)
を 取 り ま と め 、 イ ン ト ラ ネ ッ ト の ほ か 、 本 会 HP に 掲 載 し た 。
1) 特 定 健 診 ・ 特 定 保 健 指 導 の 実 施 状 況 に 関 す る 調 査 分 析
2) 健 診 レ ベ ル 判 定 分 布 と 健 診 検 査 値 の 判 定 値 別 分 布 状 況 に 関 す る 調 査
3) 特 定 健 診 ・ 特 定 保 健 指 導 の 「 問 診 回 答 」 に 関 す る 調 査
4) 特 定 健 診 受 診 者 の 医 療 受 診 状 況 と 医 療 費 に 関 す る 調 査 分 析
5) 特 定 保 健 指 導 の 効 果 に 関 す る 調 査
6) 健 保 組 合 医 療 費 の 動 向 に 関 す る 調 査
7) か ぜ ・ イ ン フ ル エ ン ザ 等 、 季 節 性 疾 患 の 動 向 に 関 す る レ ポ ー ト
8) 生 活 習 慣 病 医 療 費 の 動 向 に 関 す る 調 査 分 析
9) メ ン タ ル 系 疾 患 の 動 向 に 関 す る レ ポ ー ト
概-17
(3)電子レセプトに対応したレセプト点検の推進
コ ン ピ ュ ー タ で レ セ プ ト 点 検 を 行 う「 点 検 サ ブ シ ス テ ム 」に 追 加 さ れ た 機 能
(診療報酬項目による抽出機能等)については、健保連イントラネットで紹介
するとともに、健保連主催のレセプト点検事務研修会や都道府県連合会主催の
研修会で周知した。
またレセプト点検情報サイトを設置し、レセプト点検に必要な基礎知識と査
定事例の解説を掲載したほか、点検サブシステムを活用した効率的な点検業務
を実践している健保組合の実例を紹介した。
概-18
【主な継続的事業項目等】
1.医療費適正化対策の推進
(1)社会保障・税一体改革における医療費適正化の推進
6 月 30 日 に 閣 議 決 定 さ れ た 骨 太 の 方 針 2015 を 踏 ま え 、 市 販 品 類 似 薬 に 係 る
保険給付の見直し等、医療費適正化に向けた取組みに係る課題については、平
成 27 年 度 の 社 会 保 障 審 議 会・医 療 保 険 部 会 、ま た 中 央 社 会 保 険 医 療 協 議 会( 中
医協)で議論された。
一般用医薬品で代替可能な医療用医薬品の保険適用からの除外等の医療費適
正 化 策 に つ い て は 、か ね て よ り 健 保 連 は 高 い 関 心 を 持 ち 、27 年 度 に つ い て も 前
年度に引き続き、医療保障総合政策調査・研究基金事業として「政策立案に資
するレセプト分析に関する調査研究Ⅱ」を実施し、政策提言に向けた分析を積
極 的 に 行 っ た 。こ れ に 基 づ き 9 月 18 日 に は 、▽ 湿 布 薬 に つ い て 、処 方 枚 数 等 に
一定の上限を設定する、▽ビタミン剤の保険適応範囲内での処方は、嚥下や咀
嚼の障害や精神衰弱等、必要なビタミンを食事により摂取することが困難であ
る場合等に限定する-こと等について、厚労省に対して政策提言を行った(※
詳 細 は 本 編 「 9. 医 療 費 適 正 化 対 策 活 動 」 を 参 照 )。 ま た 医 療 保 険 部 会 に お い て
健保連は、前述の政策提言を踏まえた上で、市販品類似薬の保険給付範囲の見
直しを本格的に検討すべきとの強い姿勢を示し、これについては経団連や日商
からも、▽市販品類似薬の保険給付の除外については積極的に検討すべき、▽
医 療 用 医 薬 品 の ス イ ッ チ OTC 化 に つ い て 、 海 外 の 取 組 み を 踏 ま え た 検 討 が 必 要
-との意見が出された。
健 保 連 の 政 策 提 言 や 医 療 保 険 部 会 に お け る 審 議 を 経 て 、28 年 度 診 療 報 酬 改 定
に 向 け た 議 論 の 最 中 で あ っ た 12 月 11 日 の 中 医 協 で は 、 湿 布 薬 と ビ タ ミ ン 剤 を
はじめとする医薬品の適正な保険給付のあり方が論点として挙げられた。議論
に お い て 、湿 布 薬 に つ い て は 1 回 の 処 方 で 70 枚 を 超 え て 調 剤 さ れ る 例 が 一 定 程
度存在し、これが何日分に相当するのかが明確ではないこと、またビタミン剤
に つ い て は 平 成 24 年 度 診 療 報 酬 改 定 に お い て 単 な る 栄 養 補 給 の 目 的 で 投 与 す
る脂溶性ビタミン剤の適正化を行ったが、改定後ではビタミン A 及び D 剤は増
加 傾 向 で あ っ た こ と 等 の 課 題 が 示 さ れ 、 健 保 連 は 、 ▽ 湿 布 薬 の 処 方 上 限 は 70
枚とし、これを超える処方が必要な場合はその理由をレセプトに記載するとと
もに処方枚数も明記すべき、▽ビタミン剤については処方可能な疾患名を明確
化すべき-と主張した。
こ れ に 対 し 診 療 側 か ら は 、▽ 湿 布 薬 処 方 の 実 態 は 、気 候 や 医 療 機 関 ま で の 距
離等、地域の環境によって異なるため一律の規制には反対、▽栄養補給目的で
ビタミン剤を投与しているとは考えにくく、食事でしっかり採れていれば十分
だという単純な考え方は適切でない-等の反論があり、両者の意見には大きな
相 違 が 見 ら れ た 。結 果 と し て 28 年 度 診 療 報 酬 改 定 に お い て は 、湿 布 薬 に つ い て
は 、1 処 方 に つ き 70 枚 を 超 え て 投 薬 す る 場 合 は 当 該 超 過 分 の 薬 材 料 を 算 定 し な
い( た だ し 医 師 が 医 学 上 の 必 要 性 が あ る と 判 断 し 、や む を 得 ず 70 枚 を 超 え て 投
概-19
薬する場合は、その理由を処方せん及び診療報酬明細書に記載することで算定
可能)こと等の見直しが行われ、ビタミン剤における見直しについては、診療
側の反対を踏まえ見送られることとなった。
健 保 連 に お い て は 、28 年 度 に つ い て も「 政 策 立 案 に 資 す る レ セ プ ト 分 析 に 関
する調査研究Ⅲ」を実施し、一般医薬品で代替可能な医療用医薬品を保険適用
から除外する等の観点から、より一層の医療費適正化に向けた取組みを推進し
ていくこととする。
(2)後発医薬品の使用促進
27 年 度 は 、24 年 8 月 に 本 会 ホ ー ム ペ ー ジ 上 に 開 設 し た「 ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品
取扱い薬局検索」の内容を 9 月に更新し、ジェネリック医薬品の調剤を積極的
に推進している調剤薬局の情報提供を求める声に応えた。
ま た 、26 年 4 月 に リ ニ ュ ー ア ル し た 健 保 組 合 加 入 者 向 け の「 ジ ェ ネ リ ッ ク 医
薬 品 Q&A」の リ ー フ レ ッ ト( お 願 い カ ー ド 付 )、な ら び に「 お 願 い カ ー ド 」の 販
売を継続して行った。
(3)レセプト点検事業と療養費適正化対策の実施
本部及び都道府県連合会にレセプト(専任・登録)指導員を設置し、レセプ
ト専任指導員を設置する都道府県連合会に、人件費部分の一定額を補助した。
また、疑義レセプト等の事例を収集し、解説を加えた事例集をレセプト指導員
に提供したほか、レセプト指導員を集めた情報交換会を開催した。
さらに、本部主催による医科ならびに歯科レセプトに関するレセプト点検事
務研修会、療養費支給の適正化に向けた事例研究会を開催するとともに、都道
府県連合会等が開催する研修会にレセプト指導員、相談員を派遣した。
(4)レセプト分析の推進
医療提供体制や診療報酬、医療費適正化に関して、レセプト分析に基づくエ
ビ デ ン ス の あ る 政 策 提 言 を 行 う た め の 調 査 研 究 「政 策 立 案 に 資 す る レ セ プ ト 分
析 に 関 す る 調 査 研 究 Ⅱ 」を 、医 療 保 障 総 合 政 策 調 査・研 究 基 金 事 業 の ひ と つ と し
て 実 施 し 、 報 告 書 を ま と め た ( 26 年 度 か ら の 継 続 事 業 )。
今回の分析テーマは、①入院前検査・画像診断と入院医療の包括評価、②短
期滞在手術等基本料 3 拡大の影響、③皮膚科軟膏処置、④ビタミン剤処方、⑤
湿 布 薬 処 方 - の 5 つ で 、そ れ ぞ れ に 仮 説 を 立 て た う え で 、レ セ プ ト を 分 析 し た 。
ま た 、26 年 度 に テ ー マ の 一 つ と な っ て い た「 入 院 基 本 料 と 診 療 密 度 と の 対 応 状
況」については、政策提言を目的としない調査研究として分析を行なった。
9 月 に は 政 策 提 言 を 28 年 度 診 療 報 酬 改 定 等 に 活 用 す る よ う 、厚 生 労 働 省 の 唐
澤 剛 保 険 局 長 に 要 請 し た 。そ の 結 果 、28 年 度 診 療 報 酬 改 定 に ② 及 び ⑤ に 関 す る
政策提言が反映され、医療サービスの質の向上・標準化や保険給付範囲適正化
に資することとなった。
健保連の政策活動のひとつとして、今後も充実・強化していく必要がある。
概-20
(5)支払基金における審査の充実・強化と業務の効率化
審 査 支 払 事 務 手 数 料 を は じ め と す る 社 会 保 険 診 療 報 酬 支 払 基 金 と の 28 年 度
契約については、健保連の要請事項への対応や、コスト削減とサービス向上へ
の取組み等を検証した上で、診療報酬対策委員会や審査支払問題検討小委員会
で議論・検討を重ね、健保連と支払基金の二者協議会、二者協議会に協会けん
ぽ・厚生労働省を加えた四者懇談会での協議・交渉を経て、合意に至った。
支 払 基 金 と 合 意 し た 内 容 は 、▽ レ セ プ ト の 審 査 支 払 事 務 手 数 料 は 、医 科・歯 科
分 89.00 円 ( 27 年 度 比 - 3.80 円 )、 調 剤 分 44.50 円 ( 同 - 1.90 円 ) 、レ セ プ ト
1 件 に か か る コ ス ト( 平 均 手 数 料 )74.60 円( 同 - 3.00 円 )▽ レ セ プ ト 電 子 デ ー
タ 提 供 事 業 の 利 用 料 は 、電 子 レ セ プ ト 1.5 円( 同 - 0.5 円 )、紙 レ セ プ ト 8.6 円
( 基 本 料 5.1 円 、 オ プ シ ョ ン 3.5 円 。 28 年 度 か ら 電 算 単 票 レ セ プ ト と 全 紙 レ セ
プ ト の 利 用 料 を 一 本 化 ) 、 ▽ 調 剤 報 酬 の 直 接 審 査 支 払 に 関 す る 手 数 料 は 、 27 年
度 と 同 額( 審 査 意 見 の 提 出 2,492 円 、決 済 処 理 492 円 )、▽ 出 産 育 児 一 時 金 の 支
払 に 係 る 手 数 料 は 、 27 年 度 と 同 額 ( 152 円 ) - 等 で 、 契 約 を 更 改 し た 。
ま た 、28 年 度 の 契 約 に 際 し 支 払 基 金 に 対 し て は 、▽ 組 織 体 制 の 見 直 し と 業 務
範囲の拡大、▽審査の充実強化、▽継続的な業務効率化への取組みの実施、▽
32 年 度 の シ ス テ ム 刷 新 に 向 け た 取 組 み - を 求 め る 要 請 書 を 提 出 し た 。
さ ら に 、規 制 改 革 会 議 が 提 案 し た「 保 険 者 が ま ず 全 て の 診 療 報 酬 明 細 書 の 点
検 を 可 能 と す る 仕 組 み ( 事 前 点 検 制 度 )」 に つ い て 、 平 成 27 年 3 月 4 日 に 設 置
し た 「 事 前 点 検 に 関 す る 検 討 グ ル ー プ 」 に お い て 、 27 年 6 月 、 8 月 、 9 月 に 渡
り 審 議 を 進 め た 。 審 議 の 結 果 、「 こ れ ま で の 審 議 の 中 間 と り ま と め 」 を 策 定 し 、
「事前点検制度を真に有効な制度として構築していくためには、支払基金の体
制の改革や点検水準維持のための施策等についてのさらなる検討が必要と考え
られる」と総括した。
ま た 、11 月 に は 政 府 の 規 制 改 革 会 議 健 康・医 療 ワ ー キ ン グ グ ル ー プ に 白 川 副
会長が出席し、支払基金の業務効率化等について、▽支部の集約を含めた組織
体 制 の 抜 本 的 な 見 直 し に よ る コ ス ト 削 減 と 効 果 的 ・効 率 的 な サ ー ビ ス 提 供 、▽ レ
セプトデータ分析結果の提供サービス等の業務内容範囲の拡大-等を実現する
ためには「支払基金法の改正が必要」と提言した。
2.医療提供体制の改革等に向けた活動の強化
( 1 )「 医 療 提 供 体 制 に 関 す る 健 保 連 の 見 解 」 の 実 現 に 向 け た 活 動 の 継 続 と 強 化
26 年 6 月 の い わ ゆ る 医 療 介 護 総 合 確 保 推 進 法 の 成 立・公 布 を 受 け 、都 道 府 県
は 団 塊 の 世 代 が 全 て 後 期 高 齢 者 と な る 2025 年 を 見 据 え 、人 口 構 造 の 変 化 に よ る
患者の医療ニーズに対応可能な医療提供体制への再構築を進めるため、医療計
画 の 一 部 と し て の「 地 域 医 療 構 想 」を 策 定 す る こ と と な り 、策 定 作 業 は 27 年 度
から本格化した。
27 年 4 月 に は 、健 保 組 合 等 で 構 成 さ れ る 保 険 者 協 議 会 が 法 定 化 さ れ る と と も
に、地域医療構想を策定する際は保険者協議会から意見を聴取することとなっ
概-21
た等、医療提供体制改革における医療保険者の役割がこれまで以上に重要とな
った。こうした環境の変化に応じ、地域医療構想の策定や実現に関わる都道府
県の医療審議会や構想区域毎の地域医療構想調整会議に参画する都道府県連合
会及び健保組合代表委員の活動支援を展開した。
保険者協議会間の連携協力の促進を担う保険者協議会中央連絡会(委員:白
川修二副会長・専務理事)は計 4 回開催され、地域医療構想案に対する各保険
者協議会の意見提出等に対する課題や問題点への対応等を検討した。同連絡会
の資料は保険者協議会における活動の参考となるため、適宜、都道府県連合会
に対し情報提供した。
27 年 5 月 に は 、全 国 健 康 保 険 協 会 と 健 保 連 の 連 名 に よ る「 医 療 提 供 体 制 改 革
に関する要請」を厚生労働省医政局長宛に行い、地域医療構想の策定に向けて
保険者が求められる役割を発揮できるよう求めた。さらに、各地域での活動に
資するよう、都道府県連合会事務局長及び健保組合代表の医療審議会委員を対
象とした情報交換会を同月に開催。厚生労働省医政局から「医療提供体制改革
を め ぐ る 動 き と 今 後 の 方 向 性 」に つ い て 聴 取 し た ほ か 、
「医療提供体制改革と保
険者機能」と題した有識者の講演を実施し、健保連からは健保組合代表として
のスタンスや医療審議会・地域医療構想調整会議等での主なチェックポイント
と意見表明の視点に関する説明を実施した。
こ の 他 、 健 保 連 イ ン ト ラ ネ ッ ト に 医 療 提 供 体 制 の コ ー ナ ー を 設 け 、「 医 療 提
供 体 制 改 革 に 関 す る Q&A( 初 版 )」
( 7 月 )、
「地域医療構想に関する基礎資料」
・
「医
療提供体制に関するデータ」
( 9 月 )、
「 地 域 医 療 構 想 策 定 に 向 け て( 発 言 例 ② )」
( 10 月 )- を 掲 載 す る 等 会 議 で の 発 言 や 保 険 者 協 議 会 に お け る 意 見 表 明 の 参 考
となる情報を提供した。
地 域 医 療 構 想 の 策 定 は 28 年 度 中 に 完 了 す る こ と か ら 、情 報 交 換 会 の 開 催 を は
じめ、都道府県の活動状況の把握・提供や参考情報の提供等引き続き各地域で
の活動を支援していくこととする。
こ れ ま で 、 医 療 提 供 体 制 改 革 を 審 議 す る 国 の 関 係 審 議 会 で 健 保 連 は 、 25 年 7
月に策定・公表した「医療提供体制に関する健保連の見解」に基づき、患者中
心の効率的な医療提供体制を構築する観点から、▽医療機能の分化と連携、▽
機能分化の受皿としての在宅医療の推進、▽地域医療におけるゲートキーパー
としての役割が期待される総合診療医の養成-を主張してきたが、同見解につ
いては医療介護総合確保推進法の施行等その後の状況変化を踏まえ、改訂する
予定である。
(2)患者中心の医療の実現を目指した情報提供活動の強化
病 院 情 報 「ぽ す ぴ た る ! 」に つ い て 、 診 療 報 酬 対 策 委 員 会 に て 、 ▽ 医 療 機 関 の
情 報 提 供 の 充 実 、▽ 費 用 対 効 果 - の 観 点 か ら 28 年 3 月 末 に 閉 鎖 す る こ と が 了 承
された。代替の情報提供として「医療等に関するお役立ちサイト」を製作、閉
鎖 後 に 本 会 HP に 掲 載 す る こ と と し た 。
概-22
3.各種保健事業関連施策の推進
( 1 )保 健 師 共 同 設 置 事 業 を 中 心 と し た 都 道 府 県 連 合 会 の 共 同 保 健 事 業 の 推 進 と
各種健康づくり事業等の実施
都 道 府 県 連 合 会 が 実 施 す る 保 健 事 業 に 、健 康 開 発 共 同 事 業 助 成 金 や 被 用 者 保
険運営円滑化助成金を活用して事業支援を行い、保健事業の積極的な展開を図
るとともに、共同設置保健師等に対する側面的な支援を実施した。
ま た 、27 年 度 の 都 道 府 県 連 合 会 モ デ ル 事 業 の 一 環 と し て「 保 健 事 業 意 見 交 換
会」を 3 地区(中国、四国、九州)対象に 2 会場で開催した。保健師・看護師
等全国研修会終了後には、共同設置保健師に対してもヒヤリングを行い意見や
要望の把握に努めた。なお、意見や要望については、今後の健康開発共同事業
及び円滑化助成金事業のあり方を議論する上での検討材料とした。
(2)特定健診・特定保健指導の促進と集合契約の円滑運用
特定健診・特定保健指導については、その安定的な運営に向けて、厚労省を
はじめ関係機関等と運営に関する協議を行った。
また、特定健診・特定保健指導の集合契約においては、健保連と健診実施機
関 の 中 央 6 団 体 と の 間 で 契 約 す る 集 合 契 約( A)タ イ プ は 、本 体 価 格 を 据 え 置 き
契 約 を 締 結 し た 。各 都 道 府 県 保 険 者 協 議 会 代 表 保 険 者 に よ る 集 合 契 約( B)タ イ
プは、契約の早期成立と円滑履行のための支援を行った。支払基金との決済代
行業務手数料については、機器更新に伴う延長保守費用の終了や、取扱い見込
件 数 の 増 加 が 見 込 ま れ る こ と か ら 、 協 会 け ん ぽ と 協 調 し て 契 約 交 渉 を 行 い 、 27
年 度 の 294 円 か ら 85 円 減 の 209 円 で 契 約 を 締 結 し た 。
支払基金のシステムの機器更新にかかる費用のうち、特定健診等の費用決済
を 行 う 「 決 済 シ ス テ ム 」 部 分 の 3,902 万 円 を 協 会 け ん ぽ 、 共 済 組 合 、 健 保 組 合
の 各 保 険 者 で 負 担 す る こ と と な り 、 健 保 組 合 の 負 担 額 は 928 万 円 で 確 定 し た 。
な お 、 健 保 組 合 間 の 負 担 に つ い て は 、 事 務 コ ス ト や 公 平 性 等 を 考 慮 し 、 20~ 26
年度の累計利用件数に応じた按分額と平等割額の合算額を利用組合で負担する
こととなった。
(3)各種保健事業研修会(データヘルス含む)の開催
健保組合及び母体事業所に所属する保健師・看護師等専門職を対象とした
「特定保健指導実践者育成研修会」
「専門職向けスキルアップ研修会」
「保健師・
看 護 師 等 全 国 研 修 会 」を 開 催 し た 。
「 専 門 職 向 け ス キ ル ア ッ プ 研 修 会 」に お い て
は、自健保組合の「データヘルス計画」を使用し、戦略的・効果的な保健事業
の展開に向けた知識の修得と技術の向上をめざした内容とした。
健保組合の保健事業担当者を対象とした研修会については、
「健康寿命の延伸」
をテーマに、国を挙げた健康づくりを目指す背景や意義を厚労省、経産省両省
の 立 場 か ら 解 説 す る と と も に 、 一 次 予 防 の 重 要 性 、 ICT を 活 用 し た 新 た な 保 健
事業の展開についての事例紹介を実施した。
概-23
4.健保連・健保組合への理解醸成に向けた情報発信
( 1 )健保組合、医療 保険制度 等の現状 と課 題への理 解醸成に 向け た広報活 動の展開
「あしたの健保プロジェクト」の実施にあわせ、国会議員向け要請用リーフ
レットや事業所掲示用ポスターを作成したほか、健康保険料や医療保険制度の
問 題 を 広 く 一 般 の 方 々 へ 訴 え る こ と を 目 的 に 、 テ レ ビ CM を 作 成 す る と と も に 、
全国紙やビジネス誌等に意見広告を出稿した。
ま た 健 保 連 ホ ー ム ペ ー ジ に つ い て は コ ン テ ン ツ の 充 実 に 努 め 、ア ク セ ス 数 の
増加を図った。
(2)健保組合、健保連の主張や活動等への理解醸成に向けた広報活動の展開
健保組合・健保連の主張、考え方に対する理解促進と制度改革への世論形成
を目的に、記者会見や記者クラブへの資料の投げ込みを行ったほか、全国紙の
論説委員を中心に意見交換も実施した。
さ ら に 機 関 誌 ・ 紙 の 発 行 に あ た っ て は 、医 療 費 適 正 化 や 健 康 増 進 な ど を 特 集
テーマに設定し、わかりやすい紙面づくりを行った。
5.調査研究事業及び基本統計調査の実施
(1)医療制度改革に対応した調査研究事業の実施
平 成 27 年 度 は 、▽ 医 療 制 度 の 現 状 分 析 や 課 題・問 題 点 把 握 の た め の 基 礎 的 な
調査研究、▽中長期的な視点に立ち、組合運営の基盤強化、環境整備に向けた
政策提言を行うための調査研究、▽医療制度改革の動向を踏まえ、緊急的な対
応が必要な課題・問題点に焦点を絞った調査研究-という基本方針に基づき、
①制度の持続性、皆保険体制の維持、②医療費の効率的な資源配分、医療費適
正化-の視点に立った、以下の 3 事業を策定、実施した。
1) 医 療 費 適 正 化 に 向 け た 給 付 と 負 担 の あ り 方 に 関 す る 調 査 研 究
2) 政 策 立 案 に 資 す る レ セ プ ト 分 析 に 関 す る 調 査 研 究 Ⅱ
3) 健 保 組 合 に お け る 番 号 制 度 の 影 響 等 に 関 す る 調 査 研 究
1)は 26 年 度 か ら の 継 続 事 業 で 、公 的 医 療 保 険 制 度 の 給 付 範 囲 や 負 担 の あ り
方 、医 療 費 適 正 化 策 を 検 討 す る こ と を 目 的 と し 実 施 し た 。27 年 度 は「 経 済 財 政
運 営 と 改 革 の 基 本 方 針 2015( 骨 太 の 方 針 2015)」 な ど 各 種 審 議 会 に よ る 提 言 内
容の中から、同事業の検討項目として重要と思われるものを選定し、論点や見
直しの方向性を取りまとめた。
2)も 27 年 度 か ら の 継 続 事 業 で 、28 年 度 診 療 報 酬 改 定 に 向 け 、レ セ プ ト 分 析
に基づき診療報酬の合理化、医療費の適正化を図るための具体的な方策を提言
す る こ と を 目 的 に 実 施 し た 。27 年 度 は 、26 年 度 の 研 究 成 果 を 踏 ま え 、① 入 院 前
検 査・画 像 診 断 と 入 院 医 療 の 包 括 評 価 、② 短 期 滞 在 手 術 等 基 本 料 3 拡 大 の 影 響 、
③皮膚科軟膏処置、④ビタミン剤処方、⑤湿布薬処方-の 5 つのテーマについ
て 分 析 結 果 を ま と め 、 27 年 7 月 に 厚 労 省 担 当 部 局 に 対 し て 政 策 提 言 を 行 っ た 。
この他、政策提言を目的とせず、地域医療構想策定における議論の参考とする
概-24
ことを目的として、
「 入 院 基 本 料 と 診 療 密 度 の 対 応 状 況 」に つ い て も あ わ せ て 分
析を行った。
3)に お い て は 番 号 制 度 導 入 に あ た り 健 保 組 合 へ の タ イ ム リ ー な 情 報 提 供 の 重
要性が高まったことを受け、健保組合の意見・要望を反映させながら、▽番号
制度対応に向けた準備事項、▽健保組合事務所における安全管理措置事項-を
中心に、簡易的なハンドブックを作成し、イントラネットに掲載した。また、
27 年 10 月 の 厚 生 労 働 省 現 役 職 員 の 不 祥 事 に 伴 い 、 番 号 制 度 に 関 す る 国 か ら の
情報提供が停滞した際も、上記の情報内容をベースにしたスライドを用いて説
明会を開催し、情報提供のフォローアップを行った。
(2)健保組合に関する基本統計調査の実施
健 保 組 合 の 予 算 、決 算 、月 報 お よ び 現 勢 等 の 統 計 調 査 を 実 施 し た 。組 合 業 務
の効率化を支援するために予算・決算概要表等作成ツールを作成し、イントラ
ネットで全組合に提供した。集計結果はイントラネットの「数値情報」や「ダ
ウ ン ロ ー ド コ ー ナ ー 」 に 掲 載 す る と と も に 、『 決 算 概 況 報 告 ( 25 年 度 版 )』『 健
康 保 険 組 合 の 現 勢 ( 27 年 3 月 末 )』 を 刊 行 し た 。 ま た 、 27 年 度 予 算 に つ い て は
早 期 集 計 を 行 い 4 月 22 日 に 、26 年 度 決 算 見 込 に つ い て は 10 月 2 日 に 集 計 結 果
を公表した。
こ の ほ か 、組 合 の 予 算 編 成 や 財 政 見 通 し の 策 定 に 活 用 し て も ら う た め 、27 年
12 月 25 日 の 厚 生 労 働 省 保 険 局 保 険 課 事 務 連 絡 に 基 づ き 、 後 期 高 齢 者 支 援 金 の
総 報 酬 割 の 拡 大 や 28 年 10 月 施 行 の 適 用 拡 大 等 に 対 応 し た「 平 成 28 年 度 納 付 金
等 算 出 ツ ー ル 」 を 1 月 15 日 に イ ン ト ラ ネ ッ ト で 提 供 し た 。
6.交付金交付事業と円滑な組合事業運営の支援
( 1 ) H28 年 度 以 降 の 交 付 金 交 付 事 業 の 見 直 し
平 成 28 年 度 以 降 の 組 合 財 政 支 援 交 付 金 の 見 直 し に つ い て は 、交 付 金 交 付 事 業
委 員 会 で 審 議 を 重 ね 、 27 年 11 月 の 同 委 員 会 で 見 直 し 案 を 決 定 、 12 月 の 理 事 会
において承認された。
見 直 し に あ た っ て は 、近 年 、協 会 け ん ぽ の 財 政 状 況 が 好 転 し て お り 、法 定 水
準を大きく上回る準備金を確保し、平均保険料率の引き下げが可能であること
や 、 28 年 10 月 か ら の 短 時 間 労 働 者 の 適 用 拡 大 に よ り 、 特 定 の 業 種 の 健 保 組 合
の急激な財政悪化が見込まれること等を踏まえ、健保組合の財政運営に与える
影響を考慮し、交付基準等は前年度と同基準に維持することとした。
28 年 度 の 事 業 規 模 の 配 分 に つ い て は 、法 定 準 備 金 水 準 の 見 直 し に 伴 う 資 産 基
準 の 引 き 下 げ 等 に よ り 、27 年 度 の 交 付 額 が 減 少 し 、28 年 度 以 降 の 交 付 額 増 大 に
も 対 応 可 能 な 一 定 の 積 立 金 が 確 保 で き る 状 況 が 想 定 さ れ る こ と か ら 、28 年 度 に
限 り 高 額 医 療 分 を 千 分 の 1.1
( 27 年 度 千 分 の 1.0)、組 合 財 政 支 援 分 を 千 分 の 0.2
( 同 千 分 の 0.3) に 見 直 す こ と と し た 。
ま た 、 短 時 間 労 働 者 の 適 用 拡 大 の 影 響 等 を 踏 ま え 、 必 要 に 応 じ 28 年 度 事 業
概-25
における緊急的な対応を検討することとした。
(2)交付金交付事業の的確な運用
【組合財政支援交付金について】
① 27 年 度 事 業 の 概 要 お よ び 交 付 基 準 に つ い て
健保組合の運営基盤の強化や解散抑止を目的として継続実施した。
交付対象組合は、次の 3 基準を全て満たした組合とした。
○ 保 険 料 率 基 準 は 、「 当 年 度 協 会 け ん ぽ の 平 均 保 険 料 率 」 の 100‰ 以 上 と し た 。
○ 法 定 給 付 費 等 所 要 保 険 料 率 基 準 は 97‰ 超( 保 険 料 率 基 準 -3‰ )と し 、負 担 上
限を交付基準とする。
○ 保 有 資 産 基 準 は 、 当 年 度 末 「 保 険 給 付 費 の 2 ヶ 月 相 当 分 +納 付 金 等 の 1 ヶ 月
相当分」未満で、基準以上控除方式とする。
② 27 年 度 事 業 の 必 要 財 源 の 確 保 に つ い て
27 年 度 の 事 業 の 実 施 に 必 要 な 財 源 に つ い て は 、基 本 調 整 保 険 料 率 0.3‰ 分 を
基本とした。
③ 27 年 度 組 合 財 政 支 援 交 付 金 の 交 付 に つ い て
申 請 が あ っ た 30 組 合 に つ い て 審 査 し た 結 果 、29 組 合 に 対 し 、交 付 率 を 100%
と し 、 49 億 3,095 万 8 千 円 を 交 付 し た 。
④ 平 成 26 年 度 交 付 金 の 決 算 ( 実 績 報 告 ) に 基 づ く 精 算 に つ い て
組 合 財 政 支 援 交 付 金 に つ い て は 、34 組 合( 内 全 額 返 還 1 組 合 )か ら 15 億 9,817
万 3 千 円 の 返 還 、19 組 合 に 対 し 6 億 7,708 万 8 千 円 の 追 加 交 付 と な り 、実 績
報 告 に 基 づ く 26 年 度 の 確 定 交 付 額 は 、 54 組 合 ( 内 合 併 消 滅 1 組 合 )、 148 億
1,735 万 5 千 円 と な っ た 。
⑤ 全組合審査およびヒヤリングの実施
交 付 申 請 組 合 か ら 提 出 を 受 け た「 審 査 資 料 」や 申 請 書 類 等 に 基 づ き 、全 組合
審 査 を 実 施 し た 。 さ ら に 全 組 合 審 査 を 踏 ま え 、 27 年 度 は 10 組 合 に ヒ ヤ リ ン
グを実施し、事業運営努力、財政改善に向けた対応を促した。
【高額医療交付金について】
交 付 率 は 66% ( 400 万 円 超 部 分 の 高 額 医 療 費 は 交 付 率 100% 。 400 万 円 以 下
の 交 付 率 は 61% ) と し 、 申 請 が あ っ た 1,387 組 合 、 28 万 7,833 件 に 対 し 、 863
億 9,959 万 1,800 円 を 交 付 し た ( 金 額 は 過 年 度 調 整 分 含 む )。
(3)円滑な組合事業運営に向けた支援
①健康保険組合役職員研修会
健康保険組合の新任職員を対象とした研修会を 3 月に 1 回、中堅職員を対象
と し た 研 修 会 を 6 月 と 12 月 に 2 回 開 催 し た 。ま た 、新 任 の 常 務 理 事 を 対 象 に し
た 研 修 会 を 9 月 に 、新 任 の 事 務 長 を 対 象 と し た 研 修 会 を 11 月 に そ れ ぞ れ 1 回 開
催した。
さ ら に 、都 道 府 県 連 合 会 等 か ら の 要 請 を 受 け 、同 連 合 会 等 が 主 催 す る 各 種 研
修 会 ( 合 計 24 ヵ 所 ) に 職 員 及 び 相 談 員 を 講 師 と し て 派 遣 し た 。
概-26
②健康保険組合等からの実務相談への対応
健康保険組合関係者からの給付・適用・経理処理・庶務等実務や個人情報の
取扱いに関する電話相談及び訪問相談に対応した。また、将 来的に健康保険組
合の設立を検討している事業所からの相談にも適切に対応したほか、組合運営
に関連する情報の提供を行った。
③健康保険組合実務に役立つ書籍等の作成
平 成 24 年 10 月 に 作 成 し た 『 健 康 保 険 組 合 規 約 ・ 諸 規 程 例 集 』 に 係 る 制 度 改
正 等 に 関 す る 規 約 の 改 定 に つ い て 、平 成 27 年 11 月 及 び 12 月 に イ ン ト ラ ネ ッ ト
に 掲 載 し た 。( マ イ ナ ン バ ー 関 係 に つ い て は 説 明 用 動 画 も イ ン ト ラ へ 掲 載 。)
7 . IT 化 に 関 す る 対 応
(1)社会保障・税番号制度への対応
平 成 27 年 10 月 の 個 人 番 号 通 知 開 始 に 伴 い 、 厚 生 労 働 省 に お い て 、 医 療 保 険
者等の関係者による制度対応に関する検討を行っている最中、厚生労働省職員
の不祥事が発覚し、検討は大幅に遅延した。
こ れ に よ り 、健 保 組 合 が 必 要 と す る 情 報 に つ い て は 、医 療 保 障 総 合 政 策 調 査 ・
研究基金事業「健保組合における番号制度の影響等に関する調査研究」を活用
し、番号制度対応に向けた準備事項のポイントや健保組合事務所における安全
管理措置事項等をハンドブックに取りまとめ、イントラネット及び各所研修会
等で情報提供を行った。
ま た 、健 保 組 合 基 幹 シ ス テ ム の 改 修 に つ い て は 、厚 生 労 働 省 の シ ス テ ム 改 修
仕様書に基づき、個人番号を管理するための改修を行った。システム改修に係
る 補 助 金 に つ い て は 、 50.8 億 円 が 交 付 さ れ た 。
( 2 )「 特 定 健 診 ・ 特 定 保 健 指 導 共 同 情 報 処 理 シ ス テ ム 」 安 定 運 用 へ の 対 応
「特定健 診・特定保 健指導共 同情報処 理 システム 」は、特定 健診・特定保健
指 導 制 度 に あ わ せ 、 平 成 25 年 か ら の 5 年 間 ( 25~ 29 年 度 ) を 第 2 期 と 位 置 づ
け 、 27 年 度 は 3 年 度 に あ た る 。 27 年 度 末 時 点 で 、 254 健 保 組 合 と 16 の 共 済 組
合が利用している。
① システムの安定稼動及び実績報告のサポート
年度を通じて、システムは大きなトラブルもなく順調に稼動するとともに、
実績報告対応においても特に混乱なく、全利用組合で実績報告が完了した。
② 利用組合の利便性向上に向けた機能改修
利 用 組 合 の 利 便 性 を 向 上 さ せ る た め 、 ▽ Windows Vista の IE9 検 証 ( 内 部 実
施 )、 ▽ 保 険 者 番 号 変 換 対 応 ツ ー ル の 改 修 、 ▽ 健 診 結 果 ( CSV) チ ェ ッ ク ツ ー ル
の改修、▽健診項目関連マスタ追加の改修-を行い、年度当初に策定した中期
改修計画のスケジュール通りに完了した。
概-27
8.組織強化の推進と効率的な事業運営
(1)健保連本部・支部の連携による組織活動の強化
健 保 組 合・健 保 連 の 主 張 要 求 実 現 に 向 け 、健 保 連 本 部 、都 道 府 県 連 合 会 の 連
携 に よ る 組 織 活 動 の 強 化 を 図 る た め 、26 年 度 か ら 持 ち 越 し と な っ た 東 海 地 区 を
加えた 6 地区において地域懇談会を開催するとともに、都道府県連合会事務局
長等会議を開催し、迅速な情報の収集・提供、コミュニケーションの強化等に
努めた。このほか、各都道府県連合会における総会、研修会等に本部役職員の
派遣を積極的に行い、方針・施策・事業内容等の十分な説明に努め、連帯の強
化を図った。
ま た 、来 期 に お け る 議 員 お よ び 理 事 定 数 と 委 員 会 等 の あ り 方 に つ い て 、理 事
組合・都道府県連合会を対象に実施したアンケートをもとに、組織等委員会に
おいて審議・検討を行い、見直しを行った。このうち、来期における議員およ
び理事定数については、健保組合全体にとって大変重要な時期であり、一層の
行動力、組織力の強化が求められること等に鑑み、現行通りとした。また、来
期における委員会については、各委員会の審議・開催回数、審議事項・内容、
ま た 現 在 の 情 勢 等 を 踏 ま え 、 IT 事 業 委 員 会 を 設 置 せ ず 7 委 員 会 を 設 置 し 、 IT
事業委員会の付託事項については常任理事会において審議、承認を得ることと
した。
(2)都道府県連合会助成金による支部への支援強化
都 道 府 県 連 合 会 に 対 す る 支 援 強 化 と し て 、次 の 3 つ の 助 成 金 に つ い て 実 施 し た 。
①「都道府県連合会設置助成金」については、1 県 1 連合会の設置を基本とし
て サ ポ ー ト を 充 実 し て い く 観 点 か ら 、小 規 模 連 合 会 に 対 す る 特 別 助 成 も あ わ
せて実施した。
②「都道府県連合会情報連絡等推進助成金」については、連合会間の連携強化
に 向 け 、各 地 域 内 に お け る 情 報 連 絡 体 制 の 整 備・充 実 を 図 る た め 、定 期 的 な
会議・会合等の開催にかかる経費を助成した。
③「予算編成事務講習会助成金」については、予算編成事務講習会の開催にか
かる経費を助成した。
(3)健康保険組合全国大会の開催
本 年 度 の 全 国 大 会 は 、 改 革 実 現 に 向 け 、「 会 員 組 合 お よ び 健 保 連 の 結 束 を さ
ら に 強 化 す る 」、「 健 保 組 合 の 価 値 ・ 役 割 の 理 解 醸 成 と 我 々 の 主 張 ・ 要 求 の 実 現
に 向 け 、関 係 方 面 へ 広 く ア ピ ー ル し て い く 」- と す る 大 会 の 基 本 方 針 の も と に 、
大会前半では 3 組合による意見発表を受け、健保組合の総意による大会決議を
採択し、後半では特別企画として、昨年度好評であった街頭インタビューの模
様 等 を 撮 影 し た VTR の 続 編 と な る 健 保 組 合 の 活 動 に 焦 点 を 当 て た VTR の 放 映 後 、
トークセッションを実施した。
大 会 終 了 後 は 本 部 役 員 に よ る 代 表 者 要 請 と し て 、自 民 党・公 明 党・民 主 党 の
3 党各役員および厚生労働省への要請を、また各都道府県連合会代表による個
概-28
別 要 請 を 地 元 選 出 の 国 会 議 員 を 中 心 に 実 施 し た ほ か 、大 会 前 の 期 間 に お い て も 、
大会への出席依頼も含めた要請活動を積極的に実施した。
(4)本部職員の資質向上と人材の育成
会 員 組 合 か ら の 期 待 に 応 え る た め 、職 員 の 専 門 性 や 資 質 の 向 上 に 向 け た 研 修
などを実施した。今後は、職員の教育・研修体系の構築を図り、計画的に研 修
を実施していく予定である。
(5)本部既存事業の見直しと事業運営の効率化
会 員 組 合 の 厳 し い 財 政 状 況 を 踏 ま え 、事 業 運 営 に あ た っ て は 、既 存 事 業 の 効
果・成 果 に つ い て 、
「 健 保 組 合 に と っ て 必 要 な 事 業 か 」、
「健保連を運営する上で
必要な事業か」という観点から見直し、効率化、また節減に努めた。
(6)監事による監査の指摘事項への確実な対応
年 4 回 実 施 さ れ る 監 事 に よ る 監 査 に お い て 指 摘 を 受 け た 事 項 に つ い て は 、各
担当部において、原則として次回監事会までの間に具体的な対応策を検討し、
実行に移した。また、運営上の課題がある事項や即時に対応できない事項、今
後の事業展開の中で改善していく事項については、それぞれ対応の方向性や目
標を明確にした。
(7)第三期 3 ヵ年計画に基づく大阪中央病院の経営改善の推進
「 第 三 期 3 ヵ 年 計 画 」で は 、診 療 事 業 と 健 診 事 業 の 両 輪 を 一 層 円 滑 に 回 す こ
とを経営の基本に、より先進的な医療を目指し、診療部門においては採算も勘
案した上で、大型医療機器の更新または新規導入を行った。また、健診フロア
の 3 フロア拡大による健診部門の充実と受診者数の増に努めた。併せて、医師
の 減 員 等 に 伴 う 患 者 の 減 少 傾 向 を 改 善 す る た め 、医 師 の 採 用 に 努 め る と と も に 、
診療科医師と健診医師の情報交換により、健診の有所見者を着実に外来に紹介
する取組みを重点的に行った。
こ の 結 果 、 健 診 受 診 者 数 は 確 実 に 増 加 し 、 健 診 収 益 も 27 年 度 は 対 前 年 度 比
7.7% 増 と 大 き く 伸 ば す こ と が で き た 。ま た 、健 診 の 充 実・強 化 に よ る 外 来 へ の
相乗効果もあり、外来患者数も増加し、収益の牽引役を果たした。
そ の 一 方 、入 院 患 者 数 の 減 少 傾 向 が 継 続 し 、入 院 収 益 が 減 少 。入 院 収 益 の赤
字分を外来・健診部門で補うことができず、3 年度連続して医業利益は赤字と
なった。
こ の よ う な 状 況 下 、経 営 改 善 に 取 り 組 む べ く 、27 年 7 月 に 外 科 の 中 に 肛 門 外
科を新設し、優秀な専門医を 2 名招聘し、てこ入れを図るとともに、徹底した
経 費 合 理 化 策 を 遂 行 し て お り 、平 成 28 年 2 月 か ら 経 営 が 改 善 傾 向 を 示 し て い る 。
第 四 期 3 ヵ 年 計 画 に お い て は 、赤 字 経 営 か ら 脱 却 し 、安 定 し た 黒 字 経 営 を 目
指すため、徹底した経費合理化策を継続するとともに、引き続き診療・健診部
門強化に向けた医師の確保に努めることとした。
概-29
Ⅲ.その他
○ 健 保 連 本 部 に お け る PC ウ イ ル ス 感 染 の 経 緯 及 び 対 応 に つ い て
( 1 ) PC 端 末 の ウ イ ル ス 感 染 の 経 緯
平 成 27 年 6 月 、 職 員 PC 端 末 に ウ イ ル ス が 感 染 し て い る 疑 い の あ る こ と が 判
明した。そのため、会員組合へのウイルス拡散を防ぐため、翌日より本部ネッ
トワークを外部から完全に遮断し調査を行った。その結果、ウイルスに感染し
た痕跡が確認された。なお、外部への情報漏えいは確認されなかった。
(2)ネットワーク復旧に向けた対策
感染した端末は、ワクチンにより根絶を行い、新たに通信監視センサーを導
入のうえ、全端末についてモニタリング調査を実施した。これを受け、高度か
つ強固なセキュリティ対策を実施し、一定の安全性が確認されたことから 9 月
に全面復旧を行った。
復 旧 後 は 、 PC 等 に つ い て 厳 格 な 運 用 を 徹 底 し 、 防 御 措 置 を 講 じ る と と も に 、
全役職員に対して注意喚起を行っている。
概-30
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