Comments
Description
Transcript
アフリカの米
アフリカの米 アジア経済研究所 平野克己 米はアジアの専売特許ではない? コメにはアジア原産種(オリザ・サティバ)とアフリカ原産 種(オリザ・グラベリマ)しかない サバンナ農耕文化(BP7000年∼) マードック『アフリカ』1959年 コメのほか、シコクビエ、ソルガム、ササゲ、オクラ ヒョウタン、ゴマ、スイカ、メロンなど ニジェール川内陸三角州の氾濫原がサハラ大帝国を 支えた 製鉄技術、紡錘技術、産金、イスラム交易 竹沢尚一郎(国立民族学博物館教授) サハラ大帝国と ニジェール川 幅100km、長さ150kmの 巨大な大氾濫原 トンブクトゥの街 ニジェール川 オリザ・グラベリマ 西アフリカの米料理 もうひとつのコメ:アジア稲の伝来 マダガスカルの稲作(東京外語大深沢秀夫教授撮影) 作物別にみた耕作面積の比率(2000年) :アフリカ農業は国内向けに食糧を作る農業である ソルガム 13.0% メイズ 13.0% 12.1% ミレット 6.7% キャッサバ 5.8% 落花生 5.2% ササゲ 4.3% 稲 3.4% カカオ 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% われわれ日本人よりお米を食べているアフリカ人(2000年) 人口1人当たり 消費 生産 自給率 (kg) (kg) (%) 人口1人当たり 消費 生産 自給率 (kg) (kg) (%) マダガスカル 168 155 92 ミャンマー 443 449 101 ギニアビザウ 132 78 59 ラオス 420 417 99 ギニア 112 91 81 カンボジア 311 306 99 コートジボワール 105 78 74 インドネシア 252 245 98 ガンビア 94 26 28 韓国 157 154 98 リベリア 90 62 69 日本 98 93 95 アフリカ平均 27 19 73 アジア平均 159 162 102 (万トン) アフリカの米輸入は急増している 900 800 700 600 タイの輸出 500 400 300 アフリカの輸入 200 ベトナムの輸出 100 0 61 66 71 76 81 86 91 96 1 その結果、アフリカは巨大な穀物輸入地域になっている 3大穀物の主な輸入国と輸出国(2000年) コメ アフリカ インドネシア 日本 中国 ベトナム タイ 小麦 -670 -140 -60 280 350 600 ブラジル アフリカ 日本 オーストラリア カナダ アメリカ メイズ -750 -750 -590 1,800 1,900 2,600 -1,600 日本 -870 韓国 -140 アフリカ 770 フランス アルゼンチン 1,000 4,800 アメリカ (万トン) (億ドル) 0 61 66 71 76 81 86 91 -100 韓国 -200 アフリカ -300 -400 日本 -500 -600 96 穀物の純輸入 1 1人当たりの穀物収支 10 アフリカは労働力の67%を農業に投入しながら、 大量の穀物を輸入している 5 インド 0 61 65 69 73 77 81 85 89 -5 中国 -10 -15 -20 アフリカ -25 -30 (kg) 93 97 1 アフリカは農業では外貨を稼げなくなった (百万ドル) 6,000 5,000 農産物貿易収支 4,000 3,000 2,000 南アフリカの 農産物貿易収支 1,000 0 61 66 71 76 81 86 -1,000 -2,000 -3,000 -4,000 穀物貿易収支 91 96 2001 アフリカのコメ生産性は向上していない (kg/ha) 4,500 アジア 4,000 3,500 3,000 2,500 ラテンアメリカ 2,000 1,500 アフリカ 1,000 500 0 61 66 71 76 81 86 91 96 1 コメだけではない (kg/ha) 3500 穀物の土地生産性(kg/ha)の推移 アジア 2500 ラテンアメリカ 1500 アフリカ 500 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 アフリカは食糧を作る力が弱い 小麦 人口1人当たりの 250 (kg) 食糧生産(2000年) 200 根菜類 サブサハラ・アフリカ 150 100 世界平均 メイズ 50 0 アジアの開発途上国 ミレット 米 ソルガム 食料価格(ドル価での平均) :生産性が低いからアフリカでは物価が高い アフリカ 穀物 食肉 アジア 穀物 食肉 1985 1990 1995 2000 0.58 2.87 0.88 3.71 0.76 2.78 0.52 2.54 0.38 1.87 0.40 1.78 0.46 1.98 0.41 1.67 800 肥料価格(ドル) 窒素肥料 700 :アフリカの肥料価格は 禁止的に高い 600 500 400 アフリカ 300 200 100 複合肥料 0 リン酸肥料 アジア ラテンアメリカ カリ肥料 肥料の自給率 :アフリカは肥料の輸入代替に失敗した 90% 80% アジア 70% 60% ラテンアメリカ 50% 40% 30% 20% アフリカ 10% 0% 61 66 71 76 81 86 91 96 1 1980年代以降、アフリカでは穀物の耕作面積 が急増している (百万 ha) 80 (kg/ha) 1,500 耕作面積 70 1,000 60 土地生産性 50 40 500 61 65 69 73 77 81 85 89 93 97 1 アフリカの穀物生産は要素投入増によっている 収穫逓減局面がすぐそこまできている (kg/ha) (百万 ha) 80 1,050 75 1,000 土地生産性 70 950 65 900 60 850 55 土地投入 800 50 45 750 40 700 61 65 69 73 77 81 85 89 93 97 1 アジアの農業は要素生産性の向上によって支えられている 収穫逓増農業 (百万 ha) (kg/ha) 310 3,500 土地投入 300 3,000 290 2,500 土地生産性 280 2,000 270 1,500 260 1,000 61 65 69 73 77 81 85 89 93 97 1 しかも、アフリカの穀物生産はきわめて変動が激しい 高いリスクと低い期待収益 30% アフリカ 20% 10% アジア 0% 62 -10% -20% 65 68 71 74 77 80 83 86 89 92 95 98 1 (kg/ha) 1300 食糧の生産性が伸びなくなって、 経済成長も止まった 1250 1200 実質経済成長率 6% 5% 4% 1150 1100 3% 1050 2% 1000 1% 950 900 穀物の土地生産性 0% 850 -1% 800 -2% 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 0 (kg) 穀物生産農民の1人当たり生産量 1600 1500 1400 インド農民 1300 1200 中国農民 1100 1000 900 アフリカ農民 800 (南アフリカを除く) 700 600 61 66 71 76 81 86 91 96 2001 アフリカ人の所得低減はなにが原因か (穀物、kg) (ドル) 560 1,600 1,500 540 1,400 520 1人当たりGNP 1,300 500 1,200 480 1,100 食糧穀物の労働生産性 460 1,000 900 440 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 2000 アフリカにおける低投入低収量農業 アフリカ農村は在来的技術進歩の可能性を使い 果たして、貧困均衡に陥りつつある その最大の理由は政策的支援がないこと したがって収益が低く、リスクが高い 労働力の6割以上、貧困層の8割以上を収用 する農村の所得が悪化しているので、アフリカの 貧困は深刻化する一方である 農業が発展しないとほかの産業も発展できない ネリカ米(New Rice for Africa) 現在のアフリカにとって アジアの経験 とはなにか 1960∼70年代のアジアにおけるIRシリーズ 1999年、西アフリカ稲作開発協会(WARDA)が アジア稲とアフリカ稲の交雑に成功しネリカと命名 日本はその普及を積極的に支援している