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大規模実環境実験のためのマルチエージェント
応用論文 大規模実環境実験のためのマルチエージェントシミュレーション 中西 英之*1 石田 亨*2 小泉 智史*3 Multiagent Simulation for Large-scale Experiments in Physical Environments Hideyuki Nakanishi*1 Toru Ishida*2 Satoshi Koizumi*3 Abstract – It is very costly to conduct experiments to test smart environments installed in large-scale public spaces (e.g. airports and railway stations). As a tool to examine the design of such experiments beforehand, we developed a multiagent simulator integrating a large number of software agents and humans into a crowd that can produce complex group behaviors. In the testing of our emergency guidance system installed in a central railway station, human-like agents generated virtual emergency evacuations, which the subjects experienced via virtual reality or augmented reality. Consequently, we could hypothesize that our system is superior in trustworthiness, usefulness, and so on. Keywords : participatory simulation, augmented experiments, smart environments 1 はじめに 計算機シミュレーションは理論や実験に並ぶ第 3 の 方法として科学技術の研究に広く用いられるように なってきた.実際に行う実験よりも実施が容易でコス トが低いため,実験の仮説を得たり実験を行う動機を 得たりする目的で利用されている.このような計算機 シミュレーションを,実際に実験が行うことが困難な 情報システムである大規模スマート環境に適用したの が本研究である. 人々の状況に応じて支援を提供する機能が埋め込ま れた生活空間であるスマート環境の研究開発が盛んに なりつつある.生活空間には様々なサイズがあるため, 部屋 [2],教室 [4],住居 [12],オフィス [1],会議場 [25] など様々な大きさの生活空間をスマート化する研究が 行われてきたが,駅や空港のような大規模な公共空間 をスマート化する試みはほとんど行われていない.大 きな理由はその空間の広大さである.多くのプロジェ クトが,その研究機関の敷地に研究用の部屋 [2] や住 居 [12] を建てている.これと同じことを駅や空港に対 して行うのはほぼ不可能である. 複製を建てられない点では会議場も同様であるが, 実際の会議のほうが人工的に再現した会議よりも実験 の場として魅力的であり [25],複製を作る必要がない. このような実世界を実験に用いるアプローチは教室 [4] やオフィス [1] の研究で良く見受けられる.このアプ ローチも駅や空港には適用できない.空間の広大さだ けではなく,そこを利用する群集の存在も公共空間で の実験を困難にする理由である.公共空間の利用客は, クラスの生徒,仕事場の同僚,会議の参加者とは異な り,実験者にとっては全くの見知らぬ他人であり,実 験参加への承諾を得るのが困難である. 実世界での運用実験が困難なのであれば,自前で募 集した被験者で実験を行えば良い.だが,利用客が多 い場合は公共空間の通常利用を妨害することなく実験 を行うのは難しい.利用客を占め出して行う実験には 莫大なコストがかかる. 大規模な実環境で何度も実験を行うことは難しい ため,実験内容を慎重にデザインする必要がある.そ こで,実験内容を事前に良く検討できるようにするた めに,我々はシミュレータを開発した.この大規模実 環境実験シミュレータは,我々がこれまでに開発して きたマルチユーザ・マルチエージェント型シミュレー タ FreeWalk/Q[19] をベースに開発したものである. FreeWalk/Q は,シナリオで制御可能なエージェント [11] によって多数の人間の行動をシミュレートする. 従来の集団行動シミュレータと異なり,ソフトウェア エージェントと人間が混在する群集でシミュレーショ ンを構築可能である. 本研究の新規性は,従来の仮想現実感(VR)およ *1 大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 び拡張現実感(AR)に大規模群集行動を再現する機 *2 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻 能を追加することによって,人間の被験者が参加可能 *3 大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 *1 Department of Adaptive Machine Systems, Osaka Univer- sity *2 Department *3 Department sity of Social Informatics, Kyoto University of Adaptive Machine Systems, Osaka Univer- な大規模実環境実験のマルチエージェントシミュレー ションを開発し,それを大規模スマート環境,具体的 には,京都駅の地下鉄プラットホームに設置した避難 日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.12, No.4, 2007 図 2 仮想京都駅における参加型シミュレーシ ョン Fig. 2 Participatory simulations in the virtual Kyoto Station ばれている. 図 1 京都駅実験で用いた群集シミュレーション Fig. 1 Crowd simulation used in the Kyoto Station Experiment シミュレーションでまず問題となるのはその妥当性 である.参加型シミュレーションの妥当性を保つため には実際に実環境実験を行って,それとシミュレーショ ン実験の結果を比較しなければならないが,大規模な 誘導システムの評価実験の事前検討に適用した点であ 実環境実験は困難である.そこで今回取った方策は,ま る(以下,京都駅実験と記述).本研究で提案する実 ず小規模な実験を対象に実環境実験を再現するシミュ 験方式は,実環境実験が困難な大規模スマート環境の レーション実験を設計し,そこで得られた知見にもと 開発に貢献するものと考えている. づいて大規模なシミュレーション実験を設計する,とい 2 2.1 大規模実環境実験シミュレータの開発 うものである.我々は先行研究において,FreeWalk/Q を用いた参加型シミュレーションによって実環境の実 エージェント・アバタによる参加型シミュレー 験を再現できることを確認した [14].実空間において ション 人間の被験者を用いて行われた過去の避難誘導の実験 FreeWalk とシナリオ記述言語 Q [11] を組み合わせた ものである.Q 言語は Scheme をベースにしており, [24] を,Q 言語で行動シナリオを記述したエージェン トによって再現した.この研究ではまず,各エージェ ントが基本的に自分の判断にもとづいて避難するよう 拡張有限状態機械をモデルとしている.Q で書かれた にシナリオを書いたところ,避難誘導実験の再現に失 シナリオに従って,エージェントは FreeWalk の仮想 敗した.そこで,周囲の他者の行動を真似る行動ルー 空間の中で,歩いたり,話したり,ジェスチャーを使っ ルを追加したところ再現に成功した.シミュレーショ たりできる.プログラムが制御するキャラクタである ンで再現できたからといって,それに用いた行動ルー エージェントと,ユーザが制御するキャラクタである ル(「周囲の他者の行動を真似る」)が正しいとは限ら アバタは共通のインタラクションモデルを持っており, ないが,一般的な群集行動の性質と合致することから エージェントを制御するためのアプリケーションプロ おそらく正しいものと推察できる [9].京都駅実験で グラミングインタフェースとアバタを制御するための は,この知見にもとづいて群集エージェントの振舞い ユーザインタフェースが統合されているのが特長であ を設計した. 我々のシミュレータ FreeWalk/Q [19] は仮想都市 エージェント・人間による拡張実験 る [19].これによって,エージェントとアバタが混在 2.2 するシミュレーションの実行が容易となっている.図 1 本研究では FreeWalk/Q に AR インタフェースを追 は FreeWalk/Q で再現している群集のシミュレーショ 加し,実環境にシミュレーションを重ねる実験を可能 ンであり,図 2 は,実験室においてコンピュータのディ にした.これは,VR インタフェースによって完全に仮 スプレイに映し出されるシミュレーションの中で自分 想的に実験を行う参加型シミュレーションと実環境実 のアバタを片手に持ったゲームパッドで操作している 験の中間に位置するものと考えられる.実環境の中で 被験者の様子である.このような human-in-the-loop 行動することで被験者が感じる臨場感が実験結果に影 型のマルチエージェントシミュレーションは参加型シ 響を及ぼすことによって,AR インタフェースならで ミュレーション(Participatory Simulations)[8] と呼 はの知見が得られるのではないかと期待した.シミュ 中西・石田・小泉 : 大規模実環境実験のためのマルチエージェントシミュレーション レーションの中の多数のエージェントを重ねることに よって,実環境での実験は小規模でも,これを拡張して 仮想的に大規模な実験にすることができる.我々はこ のような実験を拡張実験(Augmented Experiments) と呼んでいる [10].拡張実験の被験者は,仮想空間の 中のアバタをゲームパッド等で操作するのではなく, 実環境において行動する.ただし,その行動は環境中 のセンサを介して仮想空間の中のアバタの行動に反映 される.エージェントの行動はアバタの行動から影響 を受ける.そして,エージェントの行動は AR インタ フェースを介して被験者の行動に影響を与える.この ように,実環境にいる被験者とシミュレーションの中 図 3 京都駅における拡張実験 Fig. 3 Augmented experiments in Kyoto Station にいるエージェントの間でインタラクションが発生す る点が,参加型シミュレーションや実環境実験とは異 加できる可能性があると考えた.そこで我々は,VR なる. 被験者に必要な視覚的状況提示と AR 被験者に必要な 京都駅実験ではシミュレーションを提示する方法と 記号的状況提示を同一のシミュレーションから生成で して透過型 HMD ではなく携帯電話を用いた.なぜ きるようにした.また,VR 被験者によるゲームパッ なら,実環境で行動している人間の視界を仮想群集の ドからの入力でも AR 被験者を捉えたセンサからの ような大きな画像で覆うのは危険な場合があるからで 入力でもアバタを動かすことのできるシミュレータを ある.一方で,携帯電話でテキストを読んだり入力し 開発した.図 4 はシミュレーション実験のアーキテク たりしながら混雑した場所を器用に歩き回る人々を良 チャであり,拡張実験と参加型シミュレーションを統 く見かけるため,我々は図 3 に示すように,携帯電話 合したものである.仮想空間には群集エージェントお を使うことにした.携帯電話の画面は小さくて解像度 よび VR 被験者のアバタと AR 被験者のアバタが,実 も十分ではない.そこで,シミュレーションの映像に 空間には AR 被験者と一般乗降客が,実験室には大ス よって状況を視覚的に提示するのではなく,実験タス クリーンに表示されるシミュレーションを眺める実験 クの遂行に必要な状況変化を記号的に提示することに 管理者と VR 被験者がいる. した.自分を取り巻くエージェントの群集によってな 度を伝える次のような 4 段階の記号を用いた.目の前 VR 被験者,AR 被験者,エージェントはシミュレー ションに参加する際に異なる作用・知覚の方法を用い る.これら異質な参加者を統合するために,歩行と視 に群集の壁があって,すぐに立ち止まらないといけな 覚のモジュールを覆うラッパーを実装した.歩行する い場合は×が表示された.だんだんと群集に近づいて 際,VR 被験者はゲームパッドで進みたい方向を指定 行っているために 1・2 メートルだけゆっくり前進でき する.AR 被験者の移動はセンサで捉えられて現在位 る場合は△・○が表示された.自由に歩き回れる状況 置がシステムに送られる.エージェントはシナリオに では◎が表示された.どの記号を表示するかはシミュ よって割り当てられた次の目標地点に向かって移動す レーションの状況にもとづいて決定した.シミュレー る.これら異なる入力データをラッパーが速度と向き ションの中にいる被験者のアバタは,京都駅に取り付 の変化に変換し,それに従って歩行モジュールは,歩 けた位置検出センサが捉える被験者の位置にもとづい 行モデル [27] と歩行者モデル [22] にもとづいた次の一 て歩行した. 歩の動作を生成する.ラッパーはまた,視覚モジュー かなか前進できない状況を作り出すために,群集の密 2.3 参加型シミュレーションと拡張実験の統合 ルが管理する同一のデータ,例えばエージェントやア 集団行動のマルチエージェントシミュレーション [20] バタの現在位置や体の向きを,異なる出力データに変 は実行する度に異なる振舞いを示す.VR インタフェー 換する.視覚によって外界を認識する際,エージェン スを用いる被験者(VR 被験者)と AR インタフェー トは視力や視界の制限範囲内で,モジュールが管理す スを用いる被験者(AR 被験者)が同じシミュレーショ るデータに直接アクセスする.VR 被験者はそのデー ンを共有して共同で評価を行えば,アンケートや観察 タをもとに描かれる 3 次元アニメーションを眺める. データなどの分析結果に含まれる分散を抑えることが AR 被験者はそのデータの変化の通知を携帯電話で受 け取る. できると考えた.この効果の評価は本実験では行わず, 今後の課題である.また,実環境を用いることができ 本研究で実施したシミュレーション実験には対話に る拡張実験のメリットを参加型シミュレーションに追 よる誘導は含まれていなかったため,使用したラッパー 日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.12, No.4, 2007 VR 被験者 のアバター VR 被験者 AR 被験者 制御 シナリオ AR 被験者 のアバター エージェント コンコース プラットホーム 実験室 実験 管理室 ゲームパッド Q 言語処理系 参加型シミュレーション (仮想空間) 図 5 京都駅に取り付けた位置検出センサ Fig. 5 Positioning sensors installed in Kyoto Station る [18].この位置依存型の誘導の例は「目の前の階段 センサー はすぐに混雑しますので,向こう側の階段を使ってく ださい. 」である. 拡張実験 (実空間) 位置依存型の誘導システムには,誘導メッセージの 一般乗降客 送り先の避難者の位置を知るための位置検出センサと, 避難現場の状況を知るための状況認識センサが必要で 図 4 マルチエージェントにもとづく実験のアー キテクチャ Fig. 4 Architecture of multiagent-based experiments ある.我々は京都駅の地下鉄コンコースに 12 台,地下 鉄プラットホームに 16 台のカメラ [16] を取り付けた. 図 5 の平面図の黒い点が取り付け位置である.このカ メラ群は,各避難者の位置を追跡できるとともに,混 雑状況を認識することが可能である.本研究では用い は上述のように歩行に関するものだけであった.しか しながら,このようなエージェントでは対面での避難 誘導はシミュレートできない.我々は先行研究におい て対面での避難誘導に従う能力を持つエージェントを 開発している [17].このようなエージェントをシミュ レーションで用いる際には,ジェスチャーや音声言語 などの対話機能に関するラッパーも使用する必要があ る [19]. ていないが,被害状況など他の情報を得るためには, そのための状況認識センサが必要となる.また,位置 依存型誘導システムには,誘導メッセージを電子メー ルによって避難者に送り届けるためのメールアドレス の情報が必要である.実験では事前に手作業で登録し たが,実際の運用では改札口の通過に用いられる IC カードを通して自動登録される仕組みを想定している. 3.2 3 適用事例:京都駅実験 仮説 冷静さを失って後先考えず周囲の人間に追随する避 難者 [9, 24] を安全に誘導するために,緊急時の避難 開発したシミュレータを,京都駅の地下鉄プラット 誘導は何よりもまず信頼されなければならない.遠隔 ホームに設置したスマート環境の実環境実験の事前検 コミュニケーションにおける信頼を調べた研究による 討に実際に適用した.京都駅は一日の乗降客数が 30 と,信頼には二つの独立した要因がある [7].一つは 万人を越える駅であり,実際に現場で実験を行うコス 感情的要因であり,協力的な印象を与えるかどうかに トを考えると,シミュレーションで事前に実験仮説を 関係する.避難誘導の場合で言うと,人々の安全な避 検証する意義は大きい.本研究における本実験の位置 難を支援しようとしている印象を与えるかどうかであ 付けはシミュレータの試用であり,VR インタフェー る.もう一つは認知的要因であり,タスクを完遂可能 スおよび AR インタフェースの問題点の発見とその解 であるという確信を与えるかどうかに関係する.避難 決策の検討を行うことがその趣旨である. 誘導の場合で言うと,正しい状況把握にもとづいて効 対象としたスマート環境 率的な避難を実現できるという確信を与えるかどうか 3.1 一般的な避難誘導では,全避難者にとって有用であ る総体的な情報だけを構内放送によって一斉に流す. である. 避難誘導システムの場合,システムの存在理由その このような構内放送型の誘導の例は「火災が発生しま ものが避難誘導であるので感情的要因は問題にならな した.近くの非常階段から避難してください. 」であ いと思われるが,認知的要因はシステムの機能と大き る.これに対して京都駅に設置した避難誘導システム く関連すると考えられる.我々は,位置依存型誘導は は,個々の避難者の携帯電話に向かって,現在位置の 構内放送型誘導よりも認知的要因の点で優れていると 周囲の状況に応じた情報を配布するスマート環境であ 予想した.位置依存型誘導のメッセージは避難者の位 中西・石田・小泉 : 大規模実環境実験のためのマルチエージェントシミュレーション 置や周囲の混雑状況を反映しているので,避難現場の ジェント群とのインタラクションは希薄であるので, 状況を把握した上で最適な指示を出している印象を与 階段周辺の経路を通るエージェント群のみで行った今 え,それが信頼につながるはずである.よって,より 回の実験とほぼ同様の結果が得られるものと予想され 信頼される,という仮説を立てた.また,より多くの る.図 1 のように,プラットホームにいる乗降客は一 情報を含んでいる.よって,避難に有用であると思わ 斉にホーム中央の階段を通ってコンコースへ避難しよ れる,という仮説を立てた.さらに,次の行動をより うとし,階段はすぐに混雑した. 具体的に指示する内容になっている.よって,避難者 を落ち着かせることができる,という仮説を立てた. 各被験者は 2 回避難に参加し,位置依存型と構内放 送型の誘導をランダムな順番で体験した.各避難終了 本実験は一般乗降客のいる駅で実施したため,緊急 後に,誘導の信頼度と有用性,および避難時の冷静さ 事態が及ぼすストレスを与えてパニックを起こすよう について問うアンケートに答えた.システムトラブル なことはせずに,単に,できるだけ早くゴールに向か により VR 被験者 1 名と AR 被験者 3 名は片方の誘導 うよう指示した.このようなストレスの低い状況でも 法しか体験できなかったため,それらのデータは分析 避難時の行動を再現可能であることが過去の研究で示 から取り除いた. されている [24]. 3.3 実験の詳細 位置依存型誘導と構内放送型誘導の双方において, システムは被験者の位置にもとづいて,次のようなタ 乗降客は我々の実験を気に止めることなく被験者に イミングで 5 回メッセージを送信した.1 つ目のメッ 接近する.そこで AR 被験者の位置は,図 3 のよう セージは避難が開始した時点,2 つ目は階段から約 15m に帽子にハロゲンランプを取り付け,その光を赤外線 手前を通過した時点,3 つ目は約 10m 手前を通過し フィルターを通して撮影することで検出した.混雑し た時点,4 つ目は約 5m 手前を通過した時点,最後の た中で実験を行うために,このような装置でエラーを メッセージ階段を登り始めた時点で送信された.階段 防ぐ必要があった.プラットホームがすいている場合 に向かって進んでいく被験者に対して,周囲の状況変 は,このような仕掛けを用いずとも位置検出が可能で 化に合わせたメッセージが定期的に送信されるように ある. するために,5m 進むごとに送信するようにした.AR VR 被験者 9 名と AR 被験者 8 名の計 17 名が参加 した.駅の業務の邪魔にならないように,一度に避難 被験者も VR 被験者も,位置依存型および構内放送型 する AR 被験者は 3 人にし,それに VR 被験者 3 人, メッセージとして受け取った. のメッセージを,携帯電話に送信されてくるテキスト エージェント 100 体を加えて実施した.このように 位置依存型誘導のメッセージは階段周辺の混雑や進 VR 被験者と AR 被験者を同じシミュレーションに参 加させることによって,実験結果における両被験者グ ループ間の差異を生んだ要因が,シミュレーションご 行方向に関する情報を含んでいた.被験者は避難が開 とに生じる群集行動の微妙な違いではなく,VR イン 「このまま階段に進んでください」,階段手前で混雑 タフェースと AR インタフェースの違いによるもので している群衆の最後尾に着いた頃に「混雑しています 始した時点で「前方の階段から避難してください」と いうメッセージを受け取り,一定距離進んだところで あることが明確になる.VR 被験者と AR 被験者が同 がこの階段を使ってください」,混雑を通り抜けつつ 時に参加することによって群集行動の不確定性が増す あるときに「もうすぐ混雑を抜けますので慌てないで 可能性はあるが,今回の実験ではエージェント数に比 ください」,階段を登り始めたときに「落ち着いて階 して被験者数は僅かであり,さらに全員が同じ経路を 段を上ってください」というメッセージを受け取った. 通って避難するシミュレーションであったため,そのよ これに対して構内放送型誘導のメッセージは, 「近く うな不確定性の増加は問題にならなかった.誘導メッ の階段から避難してください」, 「慌てずに避難してく セージの違いのみの影響を評価するためにホーム中央 ださい」, 「最寄りの階段を使ってください」, 「落ち着 の階段に全員が誘導される設定とし,階段周辺の混雑 いて避難してください」, 「そばにある階段を利用して のみを再現するために 100 体のエージェントで実験を ください」であり,通常の避難のアナウンスと同じで 行った.実際の駅の避難では 1 つのプラットホームに ある. つき数千人規模の避難者が発生することになるが,今 図 6 に,避難実験における VR 被験者および AR 被 回の実験で必要なのは階段周辺のシミュレーションの 験者の体験の流れを示す.1 から 5 の線は,5 つの誘 みであるため,階段周辺の空間を混雑させることので 導メッセージそれぞれが送信されたタイミングを示し きる 100 体で十分であると判断した.たとえ,プラッ ている.VR 被験者は,画面に表示されている階段前 トホーム全体に数千のエージェントを配置してシミュ のエージェントの群集に自分のアバタがぶつかって進 レーションを行ったとしても,異なる経路を通るエー めない体験をした.それに対して AR 被験者は,実際 日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.12, No.4, 2007 5 4 3 2 1 VR 27 27 18 0 0 構内放送 位置依存 構内放送 位置依存 信頼 有用 VR 被験者の反応 0 構内放送 位置依存 冷静 AR 被験者の反応 図 7 比較結果 Fig. 7 Comparison Results AR でも「有用」指標でも有意差は見られなかったが, 「冷 静」指標(構内放送型:9.8,位置依存型:14.6,2 が最低 △ × △ ○ ◎ 点で 18 が最高点)を比較した結果,位置依存型のほ うが冷静になれたという結果(t(4)=3.1, p<.05)を得 た.この指標は, 「急がずに避難しましたか?」と「慌 てずにできましたか?」の得点を足したもの(クロー ンバックのα係数は 0.91)である.図 7 にこの結果を 図 6 避難実験 Fig. 6 Evacuation experiment には混雑していないプラットホームにおいて,階段前 の混雑を伝える記号を携帯電話で受け取りながら,な かなか前に進めない体験をした.各記号を受け取った おおよそのタイミングを図 6 に示す.このように実験 では,位置依存型メッセージが周囲の状況を反映して いることが被験者に分かるような体験を与えた. 3.4 実験結果 避難終了後,VR 被験者も AR 被験者も全員同じア ンケートに答えた.アンケートは,信頼度に関する 3 問,有用性に関する 3 問,冷静さに関する 6 問,そし て実験意図の察知を防ぐための 12 問,の計 24 問で構 成した.全質問は 1 点から 9 点までの 9 ポイントのリ カート尺度である.VR 被験者のデータと AR 被験者 のデータは別々に分析した.対応ありの両側 t 検定で 二つの誘導システムが与えた印象の違いを分析した. VR 被験者のデータからは,位置依存型のほうが信 頼できるという結果(t(7)=3.1, p<.05)を得た.これ は「信頼」指標(構内放送型:13.1,位置依存型:19.6,3 が最低点で 27 が最高点)の比較結果である.この指標 は次の 3 質問「誘導に従う気になりましたか?」, 「誘導 は信頼できましたか?」, 「誘導には説得力がありました か?」の得点の合計(クローンバックのα係数は 0.84) である.また,位置依存型のほうが有用であるという 結果(t(7)=2.8, p<.05)も得た.これは「有用」指標 (構内放送型:15.3,位置依存型:20.2,3 が最低点で 27 が最高点)の比較結果である.この指標は次の 3 質問 「誘導は役に立ちましたか?」, 「メッセージは分かり易 かったですか?」, 「誘導は親切でしたか?」の合計(ク ローンバックのα係数は 0.70)である.これらの結果 を図 7 に示す.AR 被験者のデータでは「信頼」指標 示す.VR 被験者のデータでは,この指標では有意差 が出なかった. 以上で言及した質問以外に有意差の出たものは無 かった.また,構内放送型の優位性を示す結果は見ら れなかった. 3.5 考察 提案する実験デザインのプロセスは 1) 実験仮説を 立てる,2) シミュレーション実験による検証を行い, 仮説が支持されなかった場合は 1) に戻り,支持され た場合は 3) に進む,3) 実環境実験によって再度検証 する,というものであり,シミュレーション実験は事 前に行う予備的検証である.このようなプロセスの持 つ意義は,実施コストの大きい実環境実験を行う動機 が得られることに加えて,シミュレーション実験で支 持された仮説のみを検証するように実環境実験のデザ インを絞り込める点にもある.このような仮説の省略 によって,被験者の人数,独立要因の数,アンケート 項目の数などを削減できる場合がある. 今回のシミュレーション実験では位置依存型の避難 誘導システムは信頼度,有用性,冷静さを保つ効果, の 3 点で優れているという仮説を立てて検証した結 果,どれも支持される結果となった.今回の実験で仮 に有用性に関する仮説が支持されなかった場合,後に 実施する実環境実験において有用性に関する検証を省 略する,といったことが考えられる.今回そのような 省略対象は発見できなかったが,3 つの仮説を実環境 実験によって再度検証する動機を得ることができ,シ ミュレーション実験の実施には概ね意義があったと言 える.しかしながら,多くの仮説を立てて絞り込むこ とを行ったほうがより有意義であり,それが今回の実 験における大きな改良すべき点である.仮説を増やす 以外にも,内容や送信頻度が異なる様々なタイプの位 中西・石田・小泉 : 大規模実環境実験のためのマルチエージェントシミュレーション 置依存型誘導メッセージを比較して結果を得るように 今回の事例では,ソフトウェアエージェントは携帯 することで,シミュレーション実験はより有意義なも 電話を通して物理的移動などの単純なインタラクショ のになったと思われる. ンを人間との間で発生させることができ,仮想空間で 仮説は支持されたが,予想に反して,AR 被験者に は自分の姿を 3 次元のコンピュータアニメーションと よって得られた結果だけでは不十分であり,また VR して表示して社会的インタラクションをシミュレート 被験者から得られた結果とは異なった.VR 被験者が できたと言える.より完全なインタラクションを可能 誘導システムの信頼性と有用性を高く評価したのに対 にするためにはユーザインタフェースの改良が必要で し,AR 被験者は冷静に避難できた感覚を表明した. あり,今後の課題である. このように VR 被験者と AR 被験者で位置依存型誘 4 導への反応が異なった原因を客観的に探るために,実 関連研究 験を録画したビデオを観察した.第一の発見は VR 被 エージェントに人間の代わりをさせるという夢に向 験者が,位置依存型誘導システムは現場の状況にもと けて,セールスエージェント [5] や訓練エージェント づいて判断を下しておりコンテキストアウェアである [23] などの社会的エージェント [15] の研究が行われて きているが,実用化の兆しは見えない.一方で,映画 のエキストラとしてエージェントが使われ始めている と認識できていたことである.VR 被験者は,ディス プレイに表示される一人称視点映像をずっと眺めてい た.メッセージが階段の混雑を伝えるのと同時に,仮 想プラットホームの階段が混雑しているを眺めること [13].高度に自律的なエージェントよりもむしろ限ら れた自律性しか持っておらず,台本(シナリオ)に従 ができた.一方で AR 被験者は,前方の混雑度(すな う能力のあるエージェントを開発したほうが,人間の わち前進可能かどうか)を伝える記号を受け取るだけ 代わりをさせるという夢の実現に近いのかもしれない. だったため,システムがコンテキストアウェアである 本論文で述べたシミュレータは,台本に従う能力のあ ことに気付くのが難しかったと思われる.この問題は るエージェントを人間の被験者の代わりに用いるもの 透過型 HMD を AR 被験者に装着させ,エージェント である. や他の被験者のアバタのグラフィックスをそこに表示 我々のシミュレーション実験は,位置を持つ情報オ することによって解決可能と思われるが,2.2 章で述 ブジェクトを実世界に重ねる SpaceTag [26] に似てい べたように危険がともなうという懸念がある. る.しかしながら我々のシミュレータは,歩行モデル 次の発見は AR 被験者が,立ち止まる,歩き始める, というように自分の体を使って避難体験をしていたと [27],歩行者モデル [22],マルチエージェントインタラ クションモデル [14] にもとづく複雑な集団行動を重ね いうことである.階段前の混雑の中にいるとき,AR 被 ることができる.また,SpaceTag はモバイルユーザ 験者は停止を示す×が△や○に変わるのを待って立ち のための情報アクセス機構であり,デスクトップユー 止まっていた.このとき, 「もうすぐ混雑を抜けますの ザの利用は想定していないが,我々のシミュレータで で慌てないでください」という位置依存型メッセージ は同じ空間にモバイルユーザとデスクトップユーザを は, 「落ち着いて避難してください」という,どれだけ 混在させることができる.社会的複合現実感システム 待てば良いのか教えてくれない構内放送型メッセージ VR 被験者は,混雑に巻き込まれる前も後も常に方向 [6, 21] もモバイルユーザとデスクトップユーザが同じ 実空間を共有することを可能にするが,シミュレーショ ン実験を行うには不十分である.我々のシミュレータ キーの上を押し続けていた.アバタは他のキャラクタ は,モバイルユーザ,デスクトップユーザ,エージェ に衝突すると自動的に立ち止まるので,キーから指を ントを統合するためのラッパーを備えている.さらに, 離す必要がないからである.このようなビデオゲーム シミュレーションをスマート環境に接続することが可 と同様の身体性の欠如によって立ち止まっていること 能であり,モバイルユーザもデスクトップユーザも実 をほとんど意識することがなく,したがってメッセー 験の被験者になることができる. よりも冷静さを保つのに役立ったと思われる.一方で ジの違いによる影響が現われなかったものと思われる. 大規模実環境実験をシミュレートする手法として この問題は,ロコモーションインタフェースによって 我々の手法以外に,評価対象の環境に類似する環境を 解決可能と思われる.前進できない状態でデバイスの 実験に用いる手法がある.例えば,ショッピングガイ 動きを止めて,立ち止まらないといけない状態を作り ドシステムを評価するために,大学の建物をショッピ 出す方法が考えられる.また,より簡便な方法として ングモールの構造になぞらえた研究がある [3].この方 は,フォースフィードバックジョイスティックを用い 法を用いる場合,幸運にも評価対象に空間構造がそっ て,前進できない状態ではレバーを倒せなくする方法 くりの環境を発見したりしない限り,非常におおざっ が考えられる. ぱに近似するだけの空間で我慢しなければならない. 日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.12, No.4, 2007 これに対して我々の手法では本物の環境を使って実験 す. (ソフトウェアを を行うことができる. http://www.ai.soc.i.kyoto-u.ac.jp/freewalk/および http://www.ai.soc.i.kyoto-u.ac.jp/Q/ にて公開中. ) 5 おわりに 駅や空港のような公共空間,すなわち大規模で混雑 する環境は,研究施設内に複製を作ることはほぼ不可 能であり,営業中の現場で実験することや実験のため に占有することが非常に困難である.そのため,この ような環境に設置されたスマート環境の実環境実験は 慎重に実施する必要がある.そこで,実環境実験を実 際に行う前に実験デザインを検討する手法として,マ ルチエージェントにもとづいて実験をシミュレートす ることを提案した.そのようなシミュレーション実験 のために参加型シミュレーションが可能な仮想空間シ ミュレータ FreeWalk/Q を拡張し,エージェントとア バタに加えて実環境にいる人間も参加できるようにし た.京都駅の地下鉄プラットホームに設置した避難誘 導システムのシミュレーション実験では,3 人の人間 と 3 体のアバタに 100 体のエージェントを加えて構 成した仮想群集を実環境に重ねることにより,一般の 乗降客が大勢いる駅の業務を妨害することなく実験を 行うことができた.その結果,京都駅の避難誘導シス テムは信頼度,有用性,冷静さを保つ効果,の 3 点で 従来システムに比べて優れているという仮説が支持さ れ,実環境実験を行う動機を得ることができた. 今回の実験では一般乗降客による混雑がそれほど発 生しておらず,プラットホームで避難する被験者の進 行が妨害されることは無かった.しかしながら,一般 乗降客による混雑の度合いが高くなるにつれ,その影 響をコントロールする仕組みが必要となってくる.そ のような仕組みの開発は今後の課題である. 謝辞 本研究は科学技術振興機構 (JST) 戦略的基礎研究推 進事業 (CREST)「デジタルシティのユニバーサルデ ザイン」 (研究代表者:石田亨,期間:2000∼2004) にお いて実施されたものです.実験で大変お世話になりま した京都市交通局,京都市総合企画局情報化推進室に 深く感謝致します.シミュレーション構築における京 都大学総合人間学部の杉万俊夫教授,京都大学工学研 究科の岡崎甚幸教授(現在は武庫川女子大学),NTT サイバーソリューション研究所の筒口拳氏の御協力に 感謝致します.センサー技術をご提供いただいた大阪 大学工学研究科石黒浩教授に感謝致します.開発及び 実験実施を担当していただいた,京都大学の板倉豊和, 渡邊亮,小西信次,谷塚俊輔,大石隆俊,Armando Rubio Torroella の各氏, (株)CRC ソリューションズ, (株)数理システム, (株)キャドセンターに感謝しま 参考文献 [1] Addlesee, M., Curwen, R., Hodges, S., Newman, J., Steggles, P., Ward, A. and Hopper, A.: Implementing a Sentient Computing System, IEEE Computer, Vol. 34, No. 8, pp. 50-56 (2001) [2] Bobick, A. 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