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実験とものづくりを通して科学的リテラシーを育成する歩行モデル教材開発
科教研報 Vol.24 No.3 実験とものづくりを通して科学的リテラシーを育成する歩行モデル教材開発 Development of walking model teaching materials that foster scientific literacy through experimentation and production 中澤 剛 松原 雅昭 NAKAZAWA, Tsuyoshi MATSUBARA, Masaaki 群馬大学 Gunma University 三田純義 MITA, Sumiyoshi 群馬大学 群馬大学 Gunma University Gunma University 斉藤勝男 SAITOU, Katuo 群馬大学 Gunma University [要約]近年,国際的な学力調査の結果を受けて科学的リテラシーを高めるための新たな取り組みが求められて いる。そこで本研究では,学生が実験やものづくりなどを実体験しながら科学的考察を行い能動的に学習する ことで科学的リテラシーを高める「歩行モデル」教材を開発し,授業に導入した。学生は与えられた課題に向 かって,特殊な設備のない教室でも実験や製作を行いながら考察を深め,工学の基礎である振動を中心とした 力学とその応用について学習できる。 群馬大学の1年生を対象とした授業に教材を導入し教育効果を検証したところ,授業の前後で行った評価テ ストからは,教材を活用した授業を通して学生が力学の理解を深めたことが明らかになった。さらに,コンセ プトマップからは実験やものづくりなどの実体験を通して力学的知識の応用力を高めたことが分かり,意識調 査からは学生が科学的リテラシーに対する意識を高めたことがわかった。さらに意識調査からは,学生が自ら の科学知識やものづくりなど実際の作業に対する自信を高めた事が示唆された。 [キーワード]実験,ものづくり,科学的リテラシー,科学技術教育,歩行モデル 1.はじめに 知識とその応用力を高められる教材の開発を行った。 最近の国際的な学力・意識調査結果は,我が国の 具体的には工学の基礎として重要な力学,特に振動 中・高生の科学的リテラシー(読解力・応用力)が, を中心とした内容について学習できる「歩行モデル」 他国に比べ低下傾向にあり,先進国の中でも「良い 教材を開発し授業に導入した。 1) 本稿では,開発した教材の具体的な内容と教材を 大学でも工学分野を中心に AHELO(Assessment of 使った指導展開,そして授業で開発した教材の教育 Higher Education Learning Outcomes,OECD に 効果を検証した結果について述べる。 と言えない」分野が少なくないことを示している 。 よる高等教育における学習成果の評価)が実施され ようとしており2)学生の科学的応用力を高める新た 2.教材のねらい 教材の開発にあたり,教材を導入した授業では教 な取り組が求められている。 本来工学的知識は具体的経験,深い観察・思考, 材に関連する力学の知識をしっかりと身につけさせ 抽象概念化,積極的体験といったサイクルを繰り返 る事を第1のねらいとした。また,実体験を通して 3) し身につけるものである 。特に,基礎的な知識を 学習する機会が少ない5)学生は,科学的知識を実践 すでに学習している大学生には単に知識を詰め込む 的に応用する能力を身につける必要がある。そこで ばかりでなく,知的創造性の基礎を築くため実際の 学生に,実験やものづくりを通して科学的知識を実 現象に対して実験と考察を行いながら課題に取り組 際の現象に応用する能力を身に付けさせるとともに, む総合学習が必要である4)。 科学知識の応用に対する意識を高めることを第2の ねらいとした。また,この授業終了後も学生がもの そこで本研究では,学生が具体的な課題に向かっ て,実験やものづくりを実体験しながら講義で学習 づくりなどを行いながら主体的な考察を行えるよう, した知識を使って考察し試行錯誤することで,工学 知識や作業に対する自信を持たせることを第3のね 9 径を k [m],重力加速度を g [m/s2],底面円弧の半径 らいとした。 を R [m],直立時の地面と重心の距離を l [m]とする これまで,このような授業の実現には,学生数に 応じた特殊な実験装置や機材さらに作業指導員が必 とラグランジュの方程式を用いた解析から 要であり,授業の準備や後片付けも含めると多大な T 費用や労力が必要になる場合が多かった。本研究で 2π ( l2 k 2 ) g(R −l ) はこのような負担を避け,特殊な機器が設置されて で表せ,実験結果ともよく一致することがわかって いない講義用の教室で,学生が安価な材料を使って いる。 教材を確実に製作できるようにした。 今回の教材開発にあたり,歩行モデルの振動を重 心が接地点に対して振動する実体振り子とした解析 3.教材の内容 からも上式が導ける事を確認した。この式は平方根 歩行モデル教材の一例を,図1に示す。このモデ 内分母の括弧内を除くと,実体振り子の周期を表す ルは工作用紙など市販の工作素材で構成され,学生 式に等しくなる。 が軽工具を使い無理なく製作可能な形状である。こ 歩行モデル製作に関連して学習できる主な内容を のモデルは胴体の前後への振動により歩行し,坂道 表1に示す。授業では,学生がこのようなモデルの を歩いて下っていく。歩行周期は胴体の振動周期に 周期変化について単振動や実体振り子などの知識を 伴い変化するので,歩行モデルの作成や実験を通し 使って考察する。 て工学の基礎である振動を中心とした力学について 表1 歩行モデルで考察すべき内容と 関係する主な学習項目 学生が学習・考察 関係する力学の する内容 主な学習項目 モデルの重心高さ 重心,モーメントのつり合い モデルの回転半径 回転運動,角速度 慣性モーメント モデルの振動周期 単振動,実体振り子の振動 学習できる。 胴体 基本となる振動モデルについては,学生が簡単な 脚 振動モデルの製作と諸条件を変えた実験を行い周期 の変化を確認する。その後,歩行モデルの設計・製 図1 作を行って力学的な考察を通して振動の基礎知識や 歩行モデルの一例 その応用力を高める。具体的には,紙製で軽量な歩 この歩行モデルの動作の基本である振動をモデル 行モデルに比較的質量の大きい金属製おもりを2個 化し図2に示す。著者らの研究6)により,このモデ 取り付けた場合,おもり位置により重心位置や慣性 ルの振動周期 T [s]は,モデルの重心まわりの回転半 モーメント R モーメント,そして歩行周期がどのように変化する モーメント かを考察する。考察の基本となる振動モデル周期の 考え方をコンセプトマップとして図3に示す。 重心 4.教材を使った指導展開 重心 l 開発した歩行モデル教材の製作を取り入れた講義 を,群馬大学の1年生を対象とした教養科目で実施 接地点(支点) 図2 接地点(支点) した。指導計画の概略を表2に示す。 振動モデル 最初に,授業の概要説明と導入として歩行モデル 10 5.歩行モデルの教育効果 の試作と動作確認を行い,教材のイメージを掴ませ 歩行モデルによる教育効果を評価テストと る。その後,講義形式の授業で歩行モデルの考察に 必要な物理法則などを,演示実験を交えて指導する。 コンセプトマップ作成,および意識調査により検証 その後「できるだけ早足で歩行する(歩行周期の短 した。調査対象は授業を履修した群馬大学1年生2 い)モデルを製作せよ」と具体的な課題を学生に与 5名で,全員高校で物理Ⅰ・Ⅱを履修済みである。 え,おもりの取り付け位置を実験から考察,決定さ 1)評価テスト 評価テストは教材を使用した授業を受講する前 せる。この実験と考察はグループ学習の形式を取り, 学生同士が意見交換して考察を深められるようにし (以下,事前と呼ぶ)と受講した後(以下,事後と た。最後に,歩行モデルを完成させて評価実験を行 呼ぶ)での,学生の理解度を調査するために行った。 う。性能評価試験を行うことで,学生は自分達の考 テストの内容は高校でも学習する単振動などについ 察が正しかったか否かを実感できる。 て 10 問作成した。事前と事後では同じ内容について 表2 質問し問題を変えた。問題の一例を図4に示す。 指導の流れ 授業の概要説明 導入として教材の試作と動作確認 考察に必要な力学の内容について 講義形式の説明や演示実験を行う。 2.講義 高校物理の復習を行うとともに発展 的な内容について解説する。 与えられた課題を達成するために実 験による検証を行いながら,製作す る歩行モデルの仕様を決定させる。 3.実験 (設計) グループ学習の形式を取り,学生に 話し合わせながら授業を進める。 4. 製作 歩行モデルを製作し,課題を達成で 性能評価試験 きたか性能評価実験を行わせる。 下図のように,おもりを糸で吊した単振り子で,糸 の長さを長くした場合,周期(一往復にかかる時 間)はどうなりますか?適当なものを選びなさい。 (1.長くなる,2.短くなる,3.変化しない) 1.導入 (事後テストでは,糸の長さのみ変化させて周期 を長くするにはどうすればよいか質問) 図4 問題の一例 ①振動モデルの 周期:Tを短くする ②重心周りの回転半径:k (慣性モーメント:IG)を小さくする ③支点と重心の距離:l を 小さくする ④重心と各おもりの距離:h1,h2 を短くする ⑤重心の高さ(位置):rG ⑥重力加速度 :g(一定) ⑦おもり1の 質量:m1 図3 ⑧おもり2の 質量:m2 ⑨おもり1の 高さ(位置):r1 ⑩おもり2の 高さ(位置):r2 振動モデルの周期に関するコンセプトマップ 11 ⑪底面の円弧:R (一定) 事前テストと事後テストの結果を表3に示す。事 コンセプトマップの作成は,表2の2.講義の後に 前テストに比べ事後テストの正解率が高まり,対応 「1回目」 ,3.実験(設計)の後に「2回目」,4. ありとした有意差検定から有意水準1%で有意差あ 製作・性能評価試験の後に「3回目」と,合計3回 りとなる事が確認できた(以下,危険率 p を用いて 行った。学生は,事前に KJ 法8)によるコンセプト p<.01 と記述する)。以上の結果から学生は,本教 マップ作成を練習済みである。コンセプトマップの 材を使用した授業に関連する内容について,理解を 集計結果を表4にまとめる。 深めたといえる。 表3 事前テスト 事後テスト 表4 コンセプトマップの正しい線結び率 歩行モデルの評価テスト結果 平均正解率[%] 62.4 84.4 標準偏差 14.2 13.3 正しい線結び率[%] 標準偏差 検定結果 1回目 30.1 31.3 p<.01 2回目 62.4 34.6 3回目 72.0 27.9 2)コンセプトマップ も認められる。この結果は,実験や歩行モデルの製 コンセプトマップを作成させることで学生に考えを 作,性能評価試験などの実体験を通して学生が力学 整理させるとともに,学生が学習した知識を正しく の知識を使って正しく考察できるようになった,つ 応用できたか調査することもできる7)。学生には図 まり応用力を高めたことを示している。 3の四角で囲まれた各要素のみ示し,要素間の結線 3)意識調査 を行わせた。マップを評価する指標として,下式に 授業の前後で学生の意識調査を行い,科学的リテ 示す正しい線結び率を用いた。 正しい線結びの総数 p<.05 でマップの正しい線結び率が向上しており,有意差 ンセプトマップを,授業の中で学生に作成させた。 正しい線結び率= p<.01 表4より,実験や製作・性能評価試験を行った後 図3に示した振動モデルの周期考察についてのコ 学生の 正しい線結び数 検定結果 ラシーに対する意識の変化を調査した。質問項目と × 100[%] 集計結果,事前事後の有意差検定結果を表5に示す。 表5 意識調査の質問項目 質問1 質問2 質問3 質問4 普段から,わからないことや生活に必要なことは,よく 調べるほうだ. 社会で話題になっていることについて知りたいときに, よく調べるほうだ. 博物館,科学館や市民講座にはよく行くほうだ. 解決しなければならない問題について,人と話し合っ て上手に解決できる. 科学技術の評価活動に市民として参加したい. 事前調査 平均値 事前調査 標準偏差 事後調査 平均値 事後調査 標準偏差 検定結果 3.68 0.945 3.76 1.09 n.s. 3.48 1.19 3.80 0.957 n.s. 2.24 1.23 2.36 1.38 n.s. 2.92 0.909 3.12 0.881 n.s. 2.56 1.26 3.04 0.935 * 3.00 1.23 3.48 0.872 * 3.08 1.47 3.16 1.28 n.s. 質問8 壊れたものの修理・修繕が得意だ. 新しい科学技術を使った電化製品が発売されるとすぐ に欲しくなる. 新しい電気機器をすぐに使いこなせる. 3.80 1.26 4.24 0.831 n.s. 質問9 ものづくり(料理,園芸,手芸などもふくむ)が好きだ 3.60 1.00 3.84 0.898 質問 10 科学技術についての知識は豊かなほうだ. 2.56 0.821 3.24 0.779 質問 11 展開図(平面)から立体図を予想することが得意だ. 3.12 1.05 3.48 1.09 n.s. ** * 質問5 質問6 質問7 質問 12 長い文章や講義などの要点をつかむのが得意だ. 2.64 1.11 2.60 0.913 質問 13 理論的にものを考えることが得意だ. 3.04 1.02 3.36 1.15 質問 14 ものの共通点をとらえるのが得意だ. 3.24 0.831 3.60 0.816 **:p < .01 *:p < .05 n.s. 12 n.s. n.s. n.s. 質問1∼14 は,科学的リテラシーに対する意識調 「ものづくりが好きである」 「博物館やなどによく行 査9)から,特に本件に関係が深いと考えられる質問 く」といった項目の因子負荷量が高く,その他の項 項目を抜粋した。各質問について「あてはまる」を 目も,ものづくりや科学活動への参加に関連する内 5点「あてはまらない」を1点とした5段階で学生 容であることから「ものづくりへの興味,参加」因 に自己評価させた。集計結果に天井効果やフロア効 子と命名した。 事前の第2因子は,α=0.751 となり,「社会で話 果がわずかに見られる項目も存在したが許容範囲と 題となっている内容について調査する」 「新しい機器 判断した。 をすぐ使いこなせる」 「日常的に疑問を調査する」と まず,全体的な傾向を把握するため質問全体の平 いった項目の因子負荷量が高かった。そこで,この 均値を算出し表6に示す。授業後の事後調査では平 因子を「調査・実証」因子と命名した。 均値が高くなり p<.05 となった。この結果から開発 表7 事前調査の因子パターン行列 した教材を使用した授業により科学的リテラシーに 対する学生の意識が高まったといえる。表5の各質 9. 3. 11. 6. 5. 4. 2. 8. 1. 7. 10. 13. 12. 14. 問項目の平均値の変化をみても,ほとんどの項目で 事後調査の平均値が高くなっている。 表6 事前テスト 事後テスト 意識調査全体の集計結果 回答平均値 3.07 3.36 標準偏差 0.607 0.570 検定結果 p<.01 さらに,表5の検定結果をみると知識の豊富さに 関する問 10 で p<.01,科学評価への参加について の質問5,修理など作業に関する質問6,図面を読 む能力に関する質問 11 で p<.05 と有意差が確認で きた。これら4項目では,いずれも事後調査の平均 値が高まっている。この結果は,学生が授業を通し て科学的知識についての自信を深め,科学に対する 項目内容 ものづくり好き 博物館に行く 立体能力 修理できる 科学評価に参加 話し合い得意 話題を調査 機器使用得意 日常に疑問を調査 新製品に興味 知識が豊富 理論能力 要点能力 博物能力 因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ 0.823 0.797 0.732 0.609 0.500 0.458 -0.229 0.048 0.041 0.023 0.088 0.062 0.250 -0.111 Ⅰ − Ⅱ 0.051 -0.137 -0.169 0.401 0.389 0.231 0.818 0.719 0.650 0.620 0.423 -0.225 -0.034 0.308 Ⅱ 0.331 − Ⅲ -0.129 0.167 0.145 -0.039 -0.008 0.050 0.359 -0.072 0.430 -0.500 -0.134 0.945 0.607 0.492 Ⅲ 0.246 0.098 − 表8 事後調査の因子パターン行列 積極的な姿勢や,修理や図面の読みなど作業の実体 験の重要性に対する意識や自信を高めた事を示唆し 6. 11. 4. 3. 9. 5. 7. 8. 10. 2. 1. 13. 12. 14. ている。 さらに詳細に検討するため,事前と事後の意識調 査結果について因子分析を行った。因子の抽出には 主因子法を用い,Promax 回転により分析した。事 前調査の因子分析結果を表7に,事後調査の因子分 析結果を表8に示す。固有値の変化や因子の解釈可 能性から事前・事後調査ともに3因子構造が妥当だ と考えた。なお,回転前の3因子までの累積寄与率 は,事前調査で 65.0,事後調査で 68.9 となった。 表7の事前第1因子は,因子を構成する項目の内 的整合性の指標である Cronbach のα係数がα= 0.857 となった(以下,α=0.857 と記述する) 。また, 13 項目内容 修理できる 立体能力 話し合い得意 博物館に行く ものづくり好き 科学評価に参加 新製品に興味 機器使用得意 知識が豊富 話題を調査 日常に疑問を調査 理論能力 要点能力 博物能力 因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ 0.878 0.863 0.691 0.665 0.615 0.561 -0.206 -0.022 0.073 0.103 0.207 -0.327 0.191 0.011 Ⅰ − Ⅱ -0.067 -0.051 0.268 -0.155 0.185 0.037 0.839 0.740 0.727 0.651 0.560 0.048 -0.074 0.090 Ⅱ 0.323 − Ⅲ -0.037 -0.323 0.027 0.251 -0.103 0.123 -0.406 0.284 -0.063 0.181 0.252 0.973 0.809 0.619 Ⅲ 0.445 0.237 − 事前の第3因子は,α=0.724 となり「理論的に物 などの実体験により学生が力学の応用力を高 を考える事が得意だ」など論理思考や内容把握に関 めたことが分かった。さらに,意識調査から 連した項目から構成されているので「論理的把握」 は科学的リテラシーに対する意識が高まった 因子と命名した。 ことがわかった。 一方,表8に示した事後調査の因子分析結果では ・ 因子分析や各質問項目の有意差検定からは, 各因子を構成する項目が表7の事前調査から変化し 学生が自らの知識や実際の作業に対する自信 ていないものの,各項目の因子負荷量には変化が見 を高めたことが示唆された。 られる。 事後の第1因子では,質問6の「修理が得意」や質 問8の「図面から形を把握するのが得意」が高い因 参考文献 子負荷量を示すようになった。この2項目は実際の 1)国立教育政策研究所:生きるための知識と技能 ものづくり作業に対する自信を表す項目であり,表 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA) 2006 年調査 5でも有意差を確認できる。このような第1因子の 国際結果報告書,ぎょうせい,2007. 変化は,授業前にはものづくりに興味を持っていた 2)文部科学省:OECD 高等教育における学習成果 学生が,授業を通して実際の作業に対する自信を高 の評価(AHELO) ,http://www.mext.go.jp/b_menu めた事を示唆している。事後の第1因子はα=0.850 /shingi/chukyo/chukyo4/022/index.html,参照 2010 であり,以上の考察をふまえて「ものづくりの実践・ 年 1 月 5 日. 3)D. A. Kolb:Experimental leaning ,PTR Prentice 参加」因子と命名した。 また,事後の第2因子はα=0.815 となり,各項目 Hall,1984. の因子負荷量にも多少の変化が見られたので「科学 4)梅本勝博,大串正樹:大学教育における総合学 的調査・実証」因子と命名した。事後の第3因子は 習の必要性 -知的創造の視点から-,大学教育学 α=0.814 となり,事前調査から大きな変化が見られ 会誌,22(2), 69-73,2000. ないので事前と同じ「論理的把握」因子と命名した。 5)日本学術会議工学教育研究連絡委員会:グロー 以上の意識調査結果をまとめると,表6の結果か バル時代における工学教育,工学教育研究連絡 委員会報告,2000. らは教材により学生の科学的リテラシーに対する意 識が高まったことが明らかになった。また,各質問 6)中澤剛,三田純義:歩行モデルの教材化と導入 項目の有意差検定と因子分析の結果からは,学生が 教育での活用,工学教育,55(2),230-236,2007. 自らの知識やものづくりに関する実際の作業などに 7)佐藤隆博:ISM 構造学習法,明治図書出版,1987. 対し自信を高めた事が示唆された。 8)川喜多二郎:発想法,中央公論社,1967. 9)川本思心,中山 実,西條 美紀:科学技術リテラ シーをどうとらえるか リテラシークラスタ別 6.まとめ 教育プログラム提案のための質問紙調査,科学 本研究では,教室で行われる講義形式の授業にお 技術コミュニケーション,3,40-60,2008. いても,無理なく実験やものづくりを通して力学に ついて学習できる歩行モデル教材を開発し,授業に 導入した。 大学1年生を対象とした授業で,教材の教育効果 を検証した結果,以下のことが明らかになった。 ・ 評価テストから,学生が教材に関連する力学 の理解を深めたことが明らかになった。 ・ コンセプトマップからは,実験やものづくり 14