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2/2(PDF形式:498KB)
若者の仕事観や将来像と職業的自立,就労等支援の現状と課題
図14
働くことの悩み等を相談した効果
(n=1,905)
はい
自分の考えや気持ちの整理がついた
60.0
18.4
21.6
就職先を選ぶこと・働き続けること
の参考になった
61.4
17.3
21.4
自分の決断の決め手になった
48.0
26.2
自分の考え方が広がった
25.7
68.2
将来像が具体的になった
表3
どちらともいえない・相談して
いないのでわからない
いいえ
14.8
43.6
29.8
17.0
26.7
働くことの悩み等を相談した効果(就業・就学状況別)
258
56.3
310
67.7
201
43.9
アルバイト・パート・嘱託・
非正規雇用の仕事
270
100.0
160
59.3
161
59.6
129
47.8
167
61.9
93
34.4
自営業・自由業
33
100.0
18
54.5
17
51.5
15
45.5
19
57.6
17
51.5
専業主婦(主夫)あるいは
家事手伝い
215
100.0
142
66.0
134
62.3
134
62.3
136
63.3
99
46.0
学校に在学中
851
100.0
478
56.2
522
61.3
359
42.2
627
73.7
402
47.2
いずれの仕事もしていない
78
100.0
31
39.7
30
38.5
20
25.6
40
51.3
18
23.1
1905
100.0
1143
60.0
1169
61.4
915
48.0
1299
68.2
830
43.6
現在の職業
全体
集
将来像が
具体的になった
305
66.6
⑹ 働くことを支援する公的な相談機関等について
ア 認知状況
働くことを支援する公的な相談機関等で
知っているものを聞いたところ,「ハロー
ワ ー ク」 を 知 っ て い る と 答 え た 割 合 が
90.0%と最も多く,次いで「職業訓練支援
センター」が28.9%,「ジョブカフェ」が
24.3%となっています (図15)。
一方,
「地域若者サポートステーション
(サポステ)
」は6.8%で10%に満たない状
況にありますが,就業・就学状況別の回答
状況を見ると
「いずれの仕事もしていない」
層の認知している割合が,他の層と比べ相
対的に高くなっています (表4)。
図15
働くことを支援する公的な相談機関
等の認知状況
0
10
20
30
40
ハローワーク
70
80
(%)
90 100
28.9
ジョブカフェ
24.3
職業能力開発大学校
地域若者サポートステーショ
ン(サポステ)
60
90.0
職業訓練支援センター
職業能力開発促進センター
50
14.7
13.0
6.8
その他 0.0
どれも知らない
8.7
特
自分の考え方が
広がった
314
68.6
自分の決断の
決め手になった
就職先を選ぶこと・
働き続けることの
参考となった
自分の考えや
気持ちに整理がついた
458
100.0
全体
正規雇用(常勤)
上段:件
下段:%
n=3,000
71
特集
表4
働くことを支援する公的な相談機関等の認知状況(就業・就学状況別)
6.職業訓練支援
センター
7.その他
︵1∼6以外の機関︶
27.2
7.5
16.4
17.8
28.7
―
10.4
92.7
28.6
8.5
11.0
12.5
36.3
―
6.0
8.どれも知らない
5.職業能力開発促進
センター
4.職業能力開発大学校
2.ジョブカフェ
88.7
アルバイト・パート・嘱託・非正規雇用の仕事
3.地域若者サポート
ステーション
︵サポステ︶
1.ハローワーク
正規雇用(常勤)
(%)
自営業・自由業
91.2
27.9
4.4
11.8
16.2
35.3
―
7.4
専業主婦(主夫)あるいは家事手伝い
98.2
23.4
5.0
11.9
12.6
40.6
―
1.4
高等学校に在学中
86.5
13.3
4.2
12.9
7.1
21.4
―
11.6
専門学校・専修学校に在学中
91.3
21.7
13.0
21.7
21.7
33.3
―
8.7
短期大学,高等専門学校に在学中
92.3
34.6
5.8
11.5
9.6
23.1
―
5.8
大学・大学院に在学中
88.4
25.3
5.9
18.0
12.6
25.5
―
10.0
いずれの仕事もしていない
93.1
31.3
14.6
10.4
11.1
30.6
0.7
6.3
図16
相談機関の利用状況
利用したことが
ある
(21.6%)
利用しようと
思わないし,
したこともない
(55.6%)
利用しようと
思ったけれども,
今まで利用して
いない
(22.8%)
n=3,000
表5
相談機関の利用状況(就業・就学状況別)
利用しようと思ったけれども,
いままで利用していない
利用しようと思わないし,
したこともない
正規雇用(常勤)
24.5
21.6
53.9
アルバイト・パート・嘱託・非正規雇用の仕事
43.6
26.1
30.3
自営業・自由業
27.9
22.1
50.0
専業主婦(主夫)あるいは家事手伝い
47.5
32.0
20.5
高等学校に在学中
2.7
20.0
77.3
専門学校・専修学校に在学中
24.6
15.9
59.4
短期大学,高等専門学校に在学中
19.2
26.9
53.8
大学・大学院に在学中
7.1
21.2
71.7
いずれの仕事もしていない
43.1
22.2
34.7
利用したことがある
イ 相談機関の利用状況
「相談機関を利用したことがあ
る」 と 答 え た の は21.6%,「利用
しようと思ったけれども,今まで
利用していない」は22.8%,一方,
「利用しようと思わないし,した
こともない」と答えている割合が
55.6%に上っています (図16)。
「利用したことがある」の就業・
就学別の状況を見ると,
「専業主
婦(主夫)あるいは家事手伝い」
(47.5%)
,「アルバイト・パート・
嘱 託・ 非 正 規 雇 用 の 仕 事」
(43.6%),「いずれの仕事もして
いない」(43.1%)などの正規雇
用以外の層が相対的に高くなって
います (表5)。
(%)
ウ 相談機関を利用した結果
相談機関を「利用したことがあ
る」と回答した者を対象に,その
結果どのように役立ったか質問し
たところ,
「就職先を選ぶ参考に
なった」が60.1%で最も多く,次
いで,
「自分の考えや気持ちの整
72
若者の仕事観や将来像と職業的自立,就労等支援の現状と課題
理がついた」
(24.3%)
,「自分の考え方が
図17
公的相談機関を利用した効果
広がった。」
(22.2%)となっており,その
一方で,
「自分の決断の決め手になった」
は9.7%となっています (図17)。
0
10
20
ア 受けた経験
「あなたは,キャリア教育・職業教育を
50
60
24.3
22.2
自分の決断の決め手になった
将来像が具体的になった
9.7
3.1
その他
図18
(%)
70
60.1
自分の考え方が広がった
受けたことがありますか」※ という質問に
10.2
n=649
キャリア教育・職業教育を受けた経験
わからない
(10.3%)
集
受けたことはない
(64.2%)
n=3,000
図19
職場体験・インターンシップを受けた経験
はっきりと
わからない
(5.0%)
ある
(37.6%)
ない
(57.3%)
n=3,000
このような状況を改善するための方策を検
討していく必要があると思われます。
※ 本調査では,続く質問で,
「あなたが受けたキャ
リア教育・職業教育はどのようなものでしたか」
という質問で,次の項目を挙げています。
職場体験やインターンシップ,働いている人へ
のインタビュー,職業に関する適性テスト,キャ
リアノート等による自己分析,キャリアカウンセ
ラーによるアドバイス,働くことに関する講演,
その他
図20
キャリア教育・職業教育を「受けたこと
がある」と回答した者の年齢別の状況
0
10
20
30
40
50
15∼19歳
25∼29歳
(%)
60
51.9
20∼24歳
特
受けたことが
ある
(25.5%)
「受けたことがある」と答えたのは25.5%
でした (図18)。また,職場体験・インター
ンシップについての同様の質問には,「受
けたことがある。
」と答えたのは37.6%で
した (図19)。さらに,職場体験・インター
ンシップを「受けたことがある」と答えた
者の年齢別の状況を見ると,15∼19歳が
51.9 %,20 ∼ 24歳 が40.7 %,25 ∼ 29歳 が
23.2%となっており,年齢が低くなるにつ
れて「受けたことがある」の割合が上昇し
ていることがわかります (図20)。
一方,国立教育政策研究所生徒指導研究
センター
(現国立教育政策研究所生徒指導・
進路指導研究センター)による「職場体験・
インターンシップ等実施状況調査」を見る
と,中学校における職場体験活動の実施率
は平成15年度においてすでに88.7%,平成
22年度においては97.1%となっています
が,本調査結果からは,これら職場体験活
動が,キャリア教育・職業教育,若しくは
職場体験・インターンシップとして認識さ
れていない状況がうかがえました。今後,
40
就職先を選ぶ参考になった
自分の考えや気持ちの整理
がついた
⑺ キャリア教育・職業教育について
30
40.7
23.2
73
特集
図21
キャリア教育・職業教育を受けた効果
(n=766)
はい
いいえ
働く事の大切さがわかった
自分の適性がわかった
ビジネスマナー等がわかった
就職先を選ぶ参考になった
自分の決断の参考になった
64.6
社会で必要とされるスキル(能力)
・
知識がわかった
図22
12.4
48.8
23.0
23.0
28.2
56.5
23.2
54.7
20.2
24.7
50.1
自分の考え方が広がった
抱いていたイメージが具体的になった
何とも言えない
20.6
25.7
24.2
68.8
14.9
48.3
26.6
58.2
16.3
25.1
17.0
24.8
職場体験・インターンシップを受けた効果
(n=1,129)
はい
いいえ
働く事の大切さがわかった
自分の適性がわかった
25.7
48.3
54.7
就職先を選ぶ参考になった
54.5
自分の考え方が広がった
10.8
73.2
ビジネスマナー等がわかった
自分の決断の参考になった
何とも言えない
47.8
26.0
22.8
22.5
28.0
17.5
31.0
65.8
抱いていたイメージが具体的になった
55.3
社会で必要とされるスキル(能力)
・
知識がわかった
54.9
16.0
21.2
18.8
24.8
21.8
15.4
19.9
23.3
イ 受けた効果
キャリア教育・職業教育を受けたと答えた者を対象に,受けた効果としてどのようなものが
あったかについて質問したところ,
「自分の考え方が広がった」が68.8%,次いで「働くこと
の大切さが分かった」が64.6%,「社会で必要とされるスキル(能力)・知識がわかった」が
58.2%となっています (図21)。さらに,職場体験,インターンシップを経験したことがある
と答えた者を対象にその効果について質問したところ,「働く事の大切さが分かった」が最も
多く73.2%,次いで「自分の考え方が広がった」が65.8%,「抱いていたイメージが具体的になっ
た」が55.3%となっています (図22)。
以上のように,職場体験,
インターンシップの効果としては,
「働くことの大切さがわかった」
,
「抱いていたイメージが具体的になった」について,キャリア教育・職業教育を受けた効果と
比べ,それぞれ8.6ポイント,7.0ポイント高い結果となっていることから,職場における具体
的な経験は,若者の職業観・勤労感の形成や働くことへのイメージの深化に対して効果がある
ことが示唆される結果となっています。
74
若者の仕事観や将来像と職業的自立,就労等支援の現状と課題
図23
図24
あるとよい支援
0
10
20
30
40
50
有効だった支援
(%)
60
0
試験や面接に対する助言・
指導
43.5
試験や面接に対する助言・
指導
職場体験・インターンシップ
43.4
会社説明会
キャリア教育・職業教育(職場体
験・インターンシップを除く)
27.2
その他
特にいいものはない
n=3,000
その他
特に有効なものはない
(%)
60
30.1
28.9
22.2
14.5
8.4
職業訓練講座
18.1
50
37.6
キャリア教育・職業教育(職場体
験・インターンシップを除く)
1.5
40
38.3
職場体験・インターンシップ
25.3
職業訓練講座
30
家族,友人などの助言や情
報提供
36.0
会社説明会
20
適性診断の実施
39.5
適正診断の実施
10
1.3
21.4
n=1,809
注)
「まだ就業,就職活動をしていないので,答えられない」と回答し
た者を除いています。
特
集
⑻ 職業選択や就職活動をする際に有効な支援
職業を選ぶ際にどのような支援があるとよいかについての回答状況を見ると,
「試験や面接に
対する助言指導」
(43.5%),
「職場体験・インターンシップ」
(43.4%)がほぼ同ポイントで最も
多く,次いで,「適性診断の実施」
(39.5%)
,「会社説明会」(36.0%)となっています。また「特
にいいものはない」が18.1%となっています (図23)。
次に,
どのような支援が有効だったかについての回答を見ると,
「試験や面接に対する助言指導」
が最も多く(38.8%,「まだ就業,就職活動をしていないので,答えられない」と回答した者を
除いた割合。以下同じ。
)
,次いで「会社説明会」37.6%,「適性診断の実施」30.1%,「家族・友
人などの助言や情報提供」28.9%,「職場体験・インターンシップ」22.2%となっています。また,
「特に有効なものはない」は21.4%となっています (図24)。「特に有効なものはない」と答えた
者の就業・就学状況別回答状況を見ると,「いずれの仕事もしていない」者の35.9%が回答して
おり,他の層より相対的に高くなっているほか,「アルバイト・パート・嘱託・非正規雇用の仕事」
で29.6%,
「正規雇用(常勤)
」も24.9%と全体の数値より高い結果となっています。
このことから,有効な支援として特に突出したものはなく,多様なニーズがあることがうかが
えます。
職業的自立や就労支援の取組
本調査結果からは,10代と20代の若者が将来の生活や就労に様々な不安を持っていること,2
人に1人は仕事よりも家庭を優先していること,就労支援について公的相談機関に対する多様な
ニーズがあること,職場体験・インターンシップに相応の効果が見られることなどが読み取れま
した。
ここでは,公的相談機関による相談・支援機能を充実させるための取組やキャリア教育・職業
教育を充実させるための取組,仕事と生活を調和させるための民間企業・組織の取組などについ
て紹介するとともに,それらを踏まえ,職業的自立や就労等支援について考えます。
75
特集
⑴ ハローワークによる失業者以外への支援の取組
○新卒応援ハローワーク合同就職面接会
大学院・大学・短大・高専・専修学校の学生で就職活動をしている者や,卒業後就職が決まっ
ていない者(既卒3年以内の卒業生等)の就職をワンストップで支援する専門のハローワーク
として,平成22年9月から,全都道府県に新卒応援ハローワークが設置されています。
新卒応援ハローワークでは,地元や全国の求人情報を提供しているほか,仕事探しに当たっ
ての各種相談を行っています。また,ジョブサポーター※1が就職についてのアドバイスをし
たり,エントリーシート・履歴書を作成する際の相談や面接を行ったりするほか,臨床心理士
による心理的サポートもしています。平成22年度(平成22年9月∼平成23年3月末)は延べ22
万8952人が利用し,3万485人が就職を決定しています。
そのほか,年間を通じて,就職説明会や各種セミナーを開催しています。例えば,平成23年
度に東京ビックサイトで開催された,東京都・東京新卒ハローワーク・ハローワーク八王子新
卒応援ハローワークが主催した新規大卒者等合同就職面接会(平成24年2月)には,約1700人
の学生等が参加し,約170社の企業と就職面接が行われました。
○大学や短期大学と新卒応援ハローワークの連携
各地で大学等と新卒応援ハローワークとの連携も進められており,次のような事例が報告さ
れています。
(メールマガジンによる学生への求人情報の提供)
中小企業の割合が高い地域においては,企業がホームページを十分に整備しておらず,学生
が地元の中小企業の情報を収集することが難しい状況にあった。そこで,ハローワークで受理
した新卒者対象求人情報,面接会やセミナー等イベント情報,ハローワークの支援メニューや
ジョブサポーターのアドバイスなどを掲載したメールマガジンを大学等あてに発信したとこ
ろ,学生に利用できる求人情報が増え,新卒応援ハローワークの周知が進み,学生が受けられ
る支援も増え,内定者数も増加した。
(ジョブサポーターの大学常駐による支援)
ある大学で,セミナーや模擬面接会などについて,学生からのニーズがあったが,大学だけ
新規大卒者等合同就職面接会
※1 ジョブサポーター:全国の新卒応援ハローワークやハローワークを拠点に,大学や高校などの新卒者・既卒者に対するさまざまな就職支援を専門
に行う。
76
若者の仕事観や将来像と職業的自立,就労等支援の現状と課題
ではノウハウがなく,また年間スケジュールなどもあり,機動的に対応できない状態であった。
そこで,ジョブサポーターが週3回大学の専用の教室に常駐し,定期的なキャリアカウンセリ
ングを行ったほか,年間スケジュールに追加して小規模なセミナーや個別相談会を行い,大学
主催の模擬面接に面接官として参加するなどして,学生に対する就職支援を充実させた。
(学内企業説明会の開催)
ある大学で,未内定学生への就職支援のために,大学独自で学内企業説明会を開催するに当
たり,広く企業に周知し,参加企業を集めたいと考えていた。そこで,新卒応援ハローワーク
内に企業向けの「大学等学校情報紹介コーナー」を設けるなど,企業に対して周知を図るほか,
学内企業説明会においては新卒ハローワーク相談ブースを設け,未内定者への就職相談を実施
したところ,多くの企業が参加し,内定に結び付いた。
特
以上のように,ハローワークでは,新卒者等に対しても,様々な支援プログラムを準備し,大
学等との連携を進めるなどしてその充実を図っています。就労支援については様々なニーズがあ
ることを踏まえれば,引き続き,ハローワークを始めとする公的相談機関による支援プログラム
の整備・充実と学校や企業等との連携を図っていく必要があると言えます。
集
⑵ 効果的なキャリア教育を実施するための取組
○小学生の職場見学「ゆめ・仕事ぴったり体験」
(千葉県)
千葉県では,
「実践,実習,現場体験に重点を置いたキャリア教育の推進」を図ることを目
的とし,主に小学校高学年を対象に,児童が企業や役所などで働く人々に密着するという「ゆ
め・仕事ぴったり体験」事業を実施しています。具体的には,半日間,小学生が働く大人にぴった
りと密着して,仕事に取り組む大人の姿を観察し,大人が仕事にかける情熱を感じとり,あい
さつやマナーの大切さを知り,働くこと,将来の夢へのイメージを膨らませるというものです。
仕事をする姿を見学したり,一部を体験したりすることで,その職業の内容について知るこ
と,職場で多くの大人と接し,あいさつや礼儀など社会のルールに触れることで,人間関係の
大切さに気付き,人として生きていく上での必要な資質を高めること,大人の仕事を身近に観
察したり,大人と会話をしたりする中から,自分の将来の仕事や学校で学ぶことの意味などを
考える機会とすること,中学校での職場体験の導入段階の活動とすること,学校・家庭・地域
がそれぞれの役割を自覚するとともに,連携して時代を担う子どもたちを育てる場とすること,
といったことをねらいとしています。
平成22年度において,90%の小学校が実施しており,実施した小学校を対象としたアンケー
トによると,
「職業や働くことへの関心が高まってきた」(80.4%)
,「働くことの意味や大切さ
を意識するようになってきた」(65.9%)との結果となっています※2。また,千葉県のキャリ
ア教育研究指定実践校による「ゆめ・仕事ぴったり体験」を受けた当該学校の児童に対するア
ンケート調査結果によると,
「仕事をしている人を見てどう思いましたか」という質問に対し,
「大変そう」と答えた者が64%,同じく「楽しそう」が33%,「機会があったらまた別の仕事
をしている人を見てみたいと思いますか」という質問に対しては,
「とても思う」と答えた者
※3
が83%,同じく「まあまあ思う」が17%となっています (表6) 。
※2 http://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/shougaku/career/career.html
※3 平成21年度小・中学校キャリア教育推進研究指定校『研究紀要 平成21年度キャリア教育実践研究のまとめ』
(山武市立緑海小学校)から抜粋。
77
特集
表6
質 問
①
②
③
④
ゆめ・仕事ぴったり体験は楽しかった
ですか。
楽しかった
(100%)
まあまあ楽しかった
(0%)
あまり楽しくなかった
(0%)
楽しくなかった
(0%)
仕事をしている人の姿を見てどう思い
ましたか。
楽しそう
(33%)
うれしそう
(3%)
大変そう
(64%)
その他
(0%)
働いている人の姿は,あなたが想像し
ていたものと比べてどうでしたか。
想像していたとおり
(13%)
まあ想像していたとおり
(74%)
少し違った
(13%)
とても違った
(0%)
学校でのいろいろな勉強や活動は,今
日見た体験した仕事や将来の仕事に役
立つと思いますか。
とても思う
(77%)
まあまあ思う
(13%)
あまり思わない
(0%)
思わない
(0%)
機会があったらまた別の仕事をしてい
る人を見てみたいと思いますか。
とても思う
(83%)
まあまあ思う
(17%)
あまり思わない
(7%)
思わない
(0%)
酒屋の店員さんに仕事の内容をインタビュー
お父さんの仕事の一部を体験
○労働者としての権利を学び,スキルとネットワークを形成する視点からの授業実践
大阪府では,実践的なキャリア教育・職業教育に力を入れている高校を支援するため,
「実
践的キャリア教育推進校」事業を実施しています。その事業の指定校の一つである福泉高等学
校では,学年ごとに,将来働くことの現実的なイメージをつくる,興味のある職業に至る道筋
を理解する,自分の目標に向かって主体的に努力するといった方針を掲げ,キャリア教育に力
を入れているところ,中でもユニークな実践として,井沼淳一郎教諭(現:堺東高等学校)に
よる現代社会の授業が挙げられます。
井沼教諭による年間の授業は,授業で学んだスキルを生かして現実社会に参加していくこと,
高校時代の様々な人間関係のネットワークを基にして,将来困ったときに助け合えるネット
ワークにつなげていくことを目指して,「働くこと」「生活すること」を教材化し,調べ学習を
中心に,弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けるなどして進められます。
調べ学習のテーマの一つに「アルバイト先から雇用契約書(労働契約書)をもらってみよう。」
というものがあります。これは,正社員が前提ではない「働く権利」の学習が必要であるとの
視点から設けられたものです。授業では,実際にアルバイト先から雇用契約書をもらってきて,
それを素材にグループ討議を行ったり,雇用契約書を出してほしいと依頼したときの状況(な
かなか出してくれない雇用主と交渉したり,むしろ勉強になったと雇用主から感謝されたりし
たこと)などを発表したりして,専門家からアドバイスを受けながら,働くために必要な知識
やスキルなどについて学んでいます。
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若者の仕事観や将来像と職業的自立,就労等支援の現状と課題
○キャリア教育推進連携シンポジウム(文部科学省・厚生労働省・経済産業省主催)
平成24年1月26日,東京都千代田区にある有楽町マリオンにおいて,教育関係者・企業関係
者等が一堂に会し,キャリア教育推進連携シンポジウムが開催されました。
キャリア教育を推進していくに当たっては,学校等の教育関係者と地域・社会や産業界の関
係者が連携・協働し,お互いにそれぞれの役割を認識しながら一体となった取組を進めること
が重要です。本シンポジウムは,このような垣根を超えた連携・協働によるキャリア教育の先
進事例を世の中に広く共有し,キャリア教育の意義の普及・啓発を行い,その推進を図ること
を目的として,文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省の主催により開催されたものです。
シンポジウムでは,アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)の創業者・最高顧問
の大竹美喜氏による基調講演「与えられた道を選ぶより選び取る人生を――好きでたまらない
仕事を見つけるために」が行われたほか,
「みんなで創る子供たちの未来――キャリア教育の
実践に当たって」をテーマにしたパネルディスカッション,キャリア教育アワード※4優秀賞
を受賞した団体と学校関係者等による事例発表,キャリア教育アワード,文部科学大臣表彰※5,
特
キャリア教育推進連携表彰※6の表彰式が行われました。
集
⑶ 仕事と生活の両立を図ることができる職場環境の整備
本調査では,若者の52.9%が仕事よりも家庭を優先するとしているほか,40歳くらいになった
ときには,親を大切にしている,幸せになっている,子どもを育てていると答える割合が相対的
に多くなっていました。一方,「子ども・若者ビジョン」においても,大人社会の在り方の見直
しとして,
「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の実現に向けた取組を進めるとさ
れています。そこで,ここでは,仕事と生活の調和を進めている企業・組織の取組について紹介
します。
岡山県にある社会福祉法人愛誠会(介護老人福祉施設)は,職場に設けた「両立支援委員会」
の提案による制度を毎年創設し,離職率を低下させた企業等として,
「次世代のための民間運動
※7
∼ワーク・ライフ・バランス推進会議∼」 が主催するワーク・ライフ・バランス大賞優秀賞を
受賞しました。
従業員の働きがいや働きやすさを高めるための具体的な取組としては,託児施設を設置したほ
か,子のバースデイ休暇(中学就学前までの子の誕生日を休日とする)を創設して家族と過ごせ
る日を増やしたり,
ノー残業デイを導入したり,経験に応じて自分を試す機会としてキャリアアッ
プ研修を実施したり,子育て中の職員など約20名からなる両立支援委員会を設置して働きやすい
職場をつるくための提言をするといったものです。これらの取組により,一般的に離職が多いと
言われている介護施設の中で離職率が全国平均より低く,また,求人が厳しい介護業界の中で市
外,県外からの新卒者が就職してきており,人口減少の地域にあって安定した人材の確保につな
がっています。さらに,働くことに対する職員の自己実現も図られ,職員の対応やサービスに対
する利用者の評価も高くなっています。
※4 キャリア教育アワード:先進的な教育支援活動を行う企業・経済団体を経済産業大臣が表彰
※5 文部科学大臣表彰:キャリア教育の充実・発展に関し顕著な功績が認められる教育委員会等を表彰
※6 キャリア教育推進連携表彰:教育関係者と産業界等が連携してキャリア教育に取り組む団体を文部科学省・経済産業省の両省から表彰
※7 http://www.jisedai.net/index.php
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特集
おわりに
平成22年7月に策定した「子ども・若者ビジョン」においては,子ども・若者に対する施策の
基本的方向として若者の職業的自立,就労等支援をテーマとし,就業能力・意欲の習得や就労等
支援の充実を掲げています。
また,雇用戦略対話※8の第7回会合(平成24年3月19日)においても,
「若者の雇用戦略」の
策定などについて話し合いがなされ,この中で野田内閣総理大臣は,意思と能力のある若者への
支援の強化,キャリア教育の充実,非正規雇用から正規雇用に移るための支援策などについて検
討するよう要請しています。
本調査においては,若者が将来に対して不安が強いことや職業的自立,就労等支援にも多様な
ニーズがあることが認められました。現在,政府においては関係府省庁が連携して施策を進めて
いるところですが,今後さらに,大学等の教育機関や民間企業・組織等とも協働し,支援の充実
を図っていく必要があります。
※8 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koyoutaiwa/
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