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第 12 講 インド文明の形成
基礎からわかる世界史 第 12 講 インド文明の形成 1.インダス文明 インダス文明 … インダス川流域に繁栄したインド最古の文明 ①時 期:前 2300~前 1800 年頃 ②形成者:先住のドラヴィダ系民族とする説あり ③遺 跡:シンド地方(インダス川下流域)のモエンジョ=ダーロ、パンジャーブ地方(インダス川 中流域)のハラッパー、インド西部のロータルやドーラヴィーラー ④文 字:インダス文字(印章に刻まれる)… 未解読 ⑥特 徴:青銅器文明。整然とした都市計画。牛や菩提樹の崇拝など現在のインド文明の源流 2.ヴェーダ時代 前 1500 年頃、インド=ヨーロッパ語系のアーリヤ人がカイバル峠をこえてパンジャーブ地方に進入 → 宗教文献ヴェーダを編纂(最古のヴェーダが自然神への賛歌集『リグ=ヴェーダ』 ) … ヴェーダ時代:ヴェーダが編纂された前1200~前 600 年頃 前 1000 年頃から、アーリヤ人がガンジス川流域へ進出・定住 → 鉄器の使用 → 農業生産性の向上・先住民の征服 → 社会層の分化 ・身分制度ヴァルナの成立 ・バラモン(司祭階層) ・クシャトリヤ(武士・貴族階層) ・ヴァイシャ(庶民階層) ・シュードラ(隷属民階層) → のちにジャーティ(カースト) (世襲的職業別集団)と結びついてカースト制度に発展 ・バラモン教 … バラモンが中心となり、ヴェーダを聖典とする宗教 3.都市国家の発達と新思想 前6世紀頃から、マガダ国やコーサラ国などガンジス川流域で都市国家が成長 → 都市国家間の抗争や商業活動の活発化でクシャトリヤやヴァイシャの台頭 → 形式化したバラモン教やバラモン中心のヴァルナへの批判が高まり新思想・宗教の出現 ①ウパニシャッド( 「奥義書」 )哲学 1 第 12 講 インド文明の形成 ・祭式至上主義の反省と内面的思索を重視したバラモン教内部の改革運動 ぼん ぼん が いちにょ (宇宙の根本原理)とアートマン(我) (自我の根本原理)の合一(梵我一如 ) ・ブラフマン(梵) ごう り ん ねてんしょう げだつ を悟ることで、業(カルマ)に決定づけられた輪廻 転 生 からの解脱が可能であると説く ②仏教 ・開祖:シャカ族のガウタマ=シッダールタ(ブッダ・仏陀) ・特徴:ヴァルナの否定 はっしょうどう 八 正 道 (8つの正しい実践方法)などによる輪廻転生からの解脱を説く クシャトリヤやヴァイシャの支持 ③ジャイナ教 ・開祖:ヴァルダマーナ(マハーヴィーラ) ・特徴:ヴァルナの否定 極端な苦行と不殺生主義による解脱を説く とくにヴァイシャの支持 <インダス文明・ヴェーダ時代> 2 基礎からわかる世界史 南アジアについて述べた次の文章を読み、それぞれの設問に答えよ。 〔松山大学〕 古代インドでは、紀元前 2300 年ごろから多くの都市国家がつくられ、インダス川流域にインダス 文明が栄えた。大きな都市では、道路や浴場、排水溝などがととのえられた、モエンジョ = ダーロ (a)などの遺跡がある。 この文明は紀元前 1800年ごろから衰退し、 紀元前 1500年ごろには 侵入して先住民を征服した。 ア ア が の征服後には、4つの基本的身分から成る階層身分制度(ヴァ ルナ制)(b)が成立し、のちに、各ヴァルナが守るべき社会的規範や生活規範がまとめられることと ふ なる。しかしその一方、紀元前6世紀ごろには、このヴァルナ制を否定する宗教として、徹底した不 せつしよう 殺 生 主義を説く イ が生まれ、人々のあいだに広まっていった。 〔設問〕 (1) 下線部分(a)について、この遺跡の場所として正しいものを、次の地図中の①~④のうちから1つ 選べ。 (2) 文章中の空所 ① アラム人 ア に入る人々の名称として正しいものを、次の中から1つ選べ。 ② クメール人 ③ アーリア人 ④ チャム人 (3) 下線部分(b)について、 「王族・戦士」が属するヴァルナの名称として正しいものを、次の中から1 つ選べ。 ① シュードラ (4) 文章中の空所 ① ジャイナ教 3 ② クシャトリヤ イ ③ バラモン ④ ヴァイシャ に入る宗教の名称として正しいものを、次の中から1つ選べ。 ② ヒンドゥー教 ③ バラモン教 ④ ゾロアスター教 第 12 講 インド文明の形成 次の文を読み、下記の設問A・Bに答えよ。 〔立教大学〕 紀元前 2300 年頃から、インダス文明と呼ばれる都市文明が栄えるようになった。この文明圏内に は、多くの都市が存在したが、中でも、(1)インダス川中流域のハラッパーと下流域のモエンジョ=ダ ーロは、大規模な都市を形成していたと考えられる。 前 1500 年頃から、中央アジアの遊牧民であるアーリヤ人が、カイバル峠を越えて西北インドの ( イ )に侵入し、先住民とまじわって農耕生活に入り、古代インド文明を作り上げた。アーリヤ 人は初め、部族ごとに村落を形成していたが、その後、村落は都市国家へと発展した。その中でも、 (2)マガダ国とコーサラ国が優勢であった。 アーリヤ人の移住・定着の過程において、インド特有の身分制度である(3)ヴァルナ制と、ヴェー ダを根本聖典としたバラモン教が生まれた。その一方で、身分制度を否定する宗教も新たにおこるよ うになる。ガウタマ=シッダールタによっておこされた仏教もその一つである。 A.文中の空所(イ)にあてはまる適当な語句を、次のa~dから1つ選べ。 a.ガンジス川中流域 b.パンジャーブ c.ベンガル d.マイソール B.文中の下線部(1)~(3)にそれぞれ対応する次の問1~3に答えよ。 ..... 1.これらの都市に関する説明として正しくないものを、次のa~dから1つ選べ。 a.青銅器や、ろくろでつくられた土器が用いられていた b.動物などの絵や楔形文字が刻まれた印章が使われていた c.道路や建物には、焼きレンガが用いられていた d.沐浴場や穀物貯蔵庫、会議場などの公共の建造物が備えられていた。 2.この国に関する説明として正しいものを、次のa~dから1つ選べ。 a.前5世紀頃に、コーサラ国によって併合された b.前6世紀頃に、インダス川中流域におこった c.その王はシャーと呼ばれ、絶対的な権力を有していた d.仏教は、この国で発生した 3.アーリヤ人が定住した当初に形成された4つのヴァルナのうち、第4位に位置づけられ、上位 3ヴァルナに奉仕するとされたヴァルナの名をしるせ。 3 南アジア・東南アジアに関する次の文章について、問(1~5)に対する答としてもっともふさわし いものを選択肢(a~d)の中から1つ選びなさい。正解がない場合はeを選びなさい。 〔上智大学〕 中央アジアの草原地帯を原住地とするアーリヤ人は、前 1500 年頃にはパンジャーブ地方に来住し て先住農耕民を征服、さらに前 1000 年頃になるとガンジス川流域に進出した。アーリヤ人は自然現 4 基礎からわかる世界史 象に神性を認めて崇拝し、 ( 1 )が編纂され、祭政一致の政治が行われた。この( 1 )を根 本聖典とするのが( 2 )である。この宗教と密接に結びつく形で( 3 )とよばれる(4)階層 身分制度が成立した。 前7世紀から前5世紀頃になると( 3 )制度を反省し克服する宗教運動がおこり、やがて(5) 多様な新思想や宗教の誕生へとつながった。 問1.空欄(1)に入るものは、次のどれか。 a.カルマ b.ダルマ c.ヴェーダ d.『マヌ法典』 問2.空欄(2)に入る宗教は、次のどれか。 a.仏教 b.ヒンドゥー教 c.ジャイナ教 d.バラモン教 問3.空欄(3)に入るものは、次のどれか。 a.ヴァルナ b.ラージャン c.ラージプート d.ダリト・ハリジャン 問4.下線部(4)の4つの基本的身分を、その最下位から最上位の順に正しく並べたものは次のどれか。 a.ヴァイシャ クシャトリヤ バラモン シュードラ b.クシャトリヤ バラモン シュードラ ヴァイシャ c.バラモン シュードラ ヴァイシャ クシャトリヤ d.シュードラ ヴァイシャ クシャトリヤ バラモン 問5 ア.下線部(5)について、その創始者が「マハーヴィーラ」 ( 「偉大な英雄」の意)という尊称をもつ 宗教の特徴として当てはまるものは、次のどれか。 a. 創始者は、インド北東部ビハールの一般庶民階層の出身である。 b. 極端な不殺生主義を説き、支持層には商人が多かった。 c. のちに、商業・手工業の発展とともに、アジア各地に広範に伝播した。 d. 出家者の団体はサンガと呼ばれた。 イ.下線部(5)について、空欄(2)の宗教においては祭式万能主義から転換して内面の思索を重視した 改革運動が生じた。その運動の説明として正しいものは、次のどれか。 a. 「奥義書」が形成され、業に決定づけられた輪廻からの解脱などが説かれた。 b. 空欄(1)の神々にかわって、シヴァ神やヴィシュヌ神が主神とされた。 c. ひたすら神への信仰を歌い、踊ることで救済を得ようとした。 d. アショーカ王によって理想とする政治理念として掲げられた。 5 第 12 講 インド文明の形成 6