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この回の予稿
応用物理学特別演習
平成 23 年 11 月 8 日
ソフトマター工学研究室 柴山 雄紀
Screw-Sense Inversion Characteristic of α-Helical Poly(β-p-chlorobenzyl
L-aspartate) and Comparison with Other Related Polyaspartates
A. Abe1, K. Hiraga1, Y. Imada1, T. Hiejima1, H. Furuya2
1
Department of Applied Chemistry, Tokyo Polytechnic University
2
Department of Organic and Polymeric Materials, Tokyo Institute of Technology
Biopolymers (Peptide Science), 80, 249-257(2005)
ポリペプチドは、アミノ酸からなる立体規則性高分子である。これは、タンパク質のモデル分
子的な役割を果たし、α ヘリックスや β シート、ランダムコイル等の特徴的な高次構造に注目さ
れている。
ポリアスパラギン酸の誘導体である Poly(β-phenethyl L-aspartate) (以下 PPLA) クロロホルム溶
液は室温では右巻きの α へリックス構造をとるが、高温にすると左巻きの α へリックス構造に変
化する[1]。この原因を調べる為 NMR 測定を行い、右巻きと左巻きの構造で側鎖の取りうる状態
数が異なる、すなわち右巻きと左巻きではエントロピーに差が生じることを発見した。高分子は
Gibbs の自由エネルギー G  H  TS がより小さくなるように構造をとる。そのため温度の関数で
ラセン反転が生じるのである[2]。また有機酸である trifluoroacetic acid (以下 TFA) が存在する状態
で溶液を冷却するとラセンの向きは右巻き→左巻き→ランダムコイルと変化する。一方、酸を取
り除くと右巻きから直接ランダムコイルに変化することを発見した。さらに同じくポリアスパラ
ギン酸誘導体の 1 つである Poly(β-p-chlorobenzyl L-aspartate) (以下 PClBLA) はこの酸が存在しない
溶液では、高温にすると PPLA と同様に右巻きから左巻きに反転するが、酸を加えると構造の温
度依存性が PPLA とは異なる挙動を示すことがわかった。本論文では、有機酸によるラセン反転
の原因を解明するための第一歩として、PClBLA の相図を、NMR 測定より作成した(図 2)。
O
NH
CH
O
NH
C
CH
C
n
n
H2C
C
O
H2C
C
O
O
CH 2
CH 2
O
CH 2
図 2 PClBLA と PPLA 構造の温度、
TFA
濃度依存性
Cl
図 1 PClBLA(左)と PPLA(右)の構造式
[1] S. Sasaki, et al., Macromolecules 14, 1797-1801 (1981)
[2] A. Abe, et al., Biopolymers(peptide Science) 43, 405-412 (1997)
応用物理学特別演習
平成 23 年 11 月 8 日
結晶物理工学研究室 田中佑弥
Quasicrystalline order in self-assembled binary
nanoparticle superlattice
Dmitri V. Talapin, Elena V. Shevchenko, Maryna I. Bodnarchuk,
Xingchen Ye, Jun Chen and Christpher B. Murray
Nature 461, 964–967 (2009)
十二回(dodecagonal)準周期性秩序は有機デンドリマーなどのソフトマターで
報告されているが、原子固体においては未だ稀なものである。十二回対称性は
周期結晶では許されず、正十二角形のみでは平面を埋め尽くすことは出来ない。
しかし、1986 年、P.Stampfli によって理論的に十二回回転対称性を持つタイリ
ングが報告された。そのうち、compound tessellation 法は格子点を結ぶことで
正三角形と正方形のタイルから構成されたタイリングとして準格子を扱うこと
が可能になる。ここで、タイリングのエントロピーが大きな役割をもつ。タイ
リ ン グ の エン ト ロ ピー が 正 十 二角 形 準結晶 (Dodecagonal Qusicrystal, 以 下
DDQC)形成に与える影響について知見を得ることは重要なことである。
本論文では、2 種類の異なるナノ微粒子を含んだコロイド溶液を、減圧された
容器内において温度を 50℃に保ちゆっくりと溶媒を蒸発させることにより基板
上に二元超格子を自己組織化させた。作製した試料に対して、電子顕微鏡(TEM)
を用いて超格子の像、電子回折像を観察したところ DDQC 相が形成しているこ
とがわかった。また、二種類の微粒子のサイズの比γ 0.43、空間充填因子
ρ 0.70となるとき、DDQC 相は形成していた。結晶化プロセスにおけるエン
トロピーに関わるこれらの因子が相の安定性を左右していることがわかった。
図1
12.6nmFe3O4 と 4.7nmAu のナノ微粒
子からなる準周期超格子の
(a)電子顕微鏡像(b)電子線回折像
応用物理学特別演習
平成 23 年 11 月 8 日
極限量子光学研究室 横山 裕太
Suppression of nuclear spin diffusion at a GaAs/AlxGa1-xAs interface
measured with a single quantum-dot nanoprobe
A. E. Nikolaenko, E. A. Chekhovich, M. N. Makhonin, I. W. Drouzas, A. B. Van’kov,
J.Skiba-Szymanska, M. S. Skolnick, P. Senellart, D. Martrou, A. Lemaître,
and A. I. Tartakovskii
PHYSICAL REVIEW B 79, 081303(R) (2009)
素励起のスピンを利用した量子情報処理の研究が盛んである.そこでは主に高速制御が可能
な電子スピンが用いられる.これに対し原子核スピンは,周囲との相互作用が少ないため,高
速制御には不向きであるが,電子に比べ圧倒的に長いスピン寿命を持つ.この特徴を生かして
量子メモリの研究がおこなわれている.また核スピン分極が生み出す有効磁場が電子にのみ作
用する特性を利用した量子ビット変換も考えられている.これらの実現には,核スピンの緩和
機構とその抑制方法を知ることが重要である.
量子ドットでは光励起された電子は 3 次元的な閉じ込めにより局在する.また励起光の偏光
を制御する(円偏光励起をする)ことにより,電子のスピンアップ・ダウンを選択的に生成す
ることができる.
核スピンはスピン選択励起された電子とフェルミの接触型相互作用を通じて,同時スピン反
転(フリップ・プロップ)を起こす.電子に比べ長いスピン寿命を反映し,量子ドット内には
核スピン分極が成長する.また,核スピンの向きが揃う(核スピン分極率が高くなる)ことに
より数テスラに及ぶ核磁場を生み出すことが可能で,その向きは励起偏光で制御することがで
きる.核磁場による電子 Zeman 分裂エネルギー変化を OverHauser シフト (OHS)と呼ぶ.
OHS は量子ドットからの発光エネルギーを高スペクトル分解能で観測することで検出できる.
本論文では,光励起したドットの発光スペクトルから OHS を pump-probe 法により測定す
ることで核スピン分極のダイナミクスを評価している.2 T 下で 1 分という長い核スピン分極
緩和時間が観測され,拡散方程式を使った計算との比
較(左図の実線)から,2x10
cm /sの拡散定数を
得ている.これは GaAs バルクでの拡散定数よりも2
ケタ小さい.著者らはドットにおける小さな核スピン
拡散定数を,ドット界面における同種核間距離の増加
による効果としている. 詳細は講演に譲る.
図 1: 外部磁場 2 T 下でのσ+,σ-核スピン分極の緩和
曲線(丸).線は核スピン拡散定数を変えたときの計算した
核スピン分極緩和曲線.
(太い黒:2 × 10
黒:10
cm /s,灰色:10
cm /s)
cm /s,細い
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