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異質的な退出:新規企業の分析

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異質的な退出:新規企業の分析
Heterogeneous Exits: Evidence from New Firms
(異質的な退出:新規企業の分析)
加藤雅俊
関西学院大学経済学部
本庄裕司
中央大学商学部
【本研究の概要】
企業の新規参入は、市場における競争やイノベーションを高め、結果として市場での効
率性・生産性を高めることは多くの研究で明らかになってきた。近年の経済の停滞を背景
に、ハイテク・ベンチャーのようなイノベーションの担い手となる新規企業の参入をいか
に促進するか、あるいは、このような企業が生存・成長しやすい環境をいかに整えるかは
経済政策にとって重要な政策課題である。
しかしながら,新規開業企業の多くは、開業後数年で市場を退出することが知られてい
る。 一部の企業は事業の失敗により退出を余儀なくされ、あるいは他の企業から合併され
ることにより退出することがある。さらに、自主廃業というケースもある。このように退
出する企業の中でも、多くの退出の形態があるが、このような異質性はどこから来るのか。
本論文では、この問いに答えるために、1997年から2004年の間に日本で設立された新
規企業の異質的な退出形態の決定要因を分析する。特に,退出形態の違いによって、退出
の決定要因がどのように変化するのかについて明らかにする。
本論文では,東京商工リサーチのデータベースをもとに、日本で新規に設立された製造
業 16000 社を対象として、企業が設立後に生存するか撤退するかを決める要因について、
起業家特性、企業特性、産業特性、地域特性の観点から実証的な研究を行った(下記の「フ
レームワーク」を参照)
。この研究では、企業が設立後に生存するか撤退するか、また、撤
退した場合、倒産、自主廃業、被合併の区別を行い、どのようにそれぞれの退出の決定要
因が異なるのかを明らかすることが目的である。
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【本論文のフレームワーク】
主な結果について、まず、起業家特性については、学歴、年齢、性別の違いで生存確率
が異なることがわかった。特に学歴について、学歴が高いほど倒産確率は低下するが、自
主廃業と被合併の確率はむしろ高まるという結果が示された。また、研究開発集約度や集
積の程度といった産業や地域の競争環境の違いが新規企業の生存と撤退の要因として重要
であることが明らかになり、事業の失敗としての倒産とどちらかというと事業の成功とし
ての被合併(他企業への事業の売却)はそれらを引き起こす要因が大きく異なることも明
らかになった。
これまでの先行研究では、どのような要因が市場での企業の「新陳代謝」を促進させる
かを明らかにするために行われてきた。政策的な観点からは、いかに市場での新陳代謝を
良くし、競争を高めて、市場を活性化するかは市場における効率性・生産性を高める上で
重要である。昨今の経済の停滞を背景にして、いかに市場における競争を高め、効率的な
資源配分を実現するかを検討するために、産業活性化の要因を分析する実証研究の蓄積が
急務であり、いかに政策に活かしていくかが今後の課題である。これらの点で、本研究で
は市場の活性化を促進する要因のより良い理解へ貢献したと期待される。
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