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行動的対処方略の違いが疼痛生活障害に影響するのか?

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行動的対処方略の違いが疼痛生活障害に影響するのか?
第 50 回日本理学療法学術大会
(東京)
6 月 5 日(金)ABC 区分
ポスター会場(展示ホール)【疼痛】
P1-B-0195
行動的対処方略の違いが疼痛生活障害に影響するのか?
米谷
俊輝,重藤
隼人
医療法人社団 昌樹会 ウツミ整形外科医院
key words Pain disability assessment scale・行動的対処方略・痛み
【はじめに,目的】
破局的思考や抑うつ,不安は疼痛生活障害に影響すると言われている。これらは認知や情動を評価するものであり,認知や情動
が疼痛生活障害に影響していると言える。しかし痛みに対して,自己管理をするような行動的対処方略に対する疼痛生活障害の
影響を検討されていない。行動的対処方略は,痛みの程度と関連していることが言われており,疼痛生活障害の改善の上で重要
ではないかと考える。そこで本研究の目的としては,痛みに対する行動的対処方略の違いが,疼痛生活障害に与える影響を検討
した。なお性差により,行動的対処方略の違いがある(神村 1995)ため,今回は男女別に検討した。
【方法】
対象は痛みを有する外来患者 187 例(女性 84 例:54.6±19.2 歳,頚部疾患 6 例,腰部疾患 2 例,上肢関節疾患 52 例,下肢関節
疾患 24 例。男性 103 例:41.6±22.6 歳,頚部疾患 2 例,腰部疾患 16 例,上肢関節疾患 66 例,下肢関節疾患 19 例)とした。
初診時に痛み強度(VAS)
,行動的対処方略,疼痛生活障害評価尺度(Pain disability assessment scale : PDAS)を評価した。行
,日本語短縮版 Coping strategy
動的対処方略は,日本人における慢性疼痛を有する患者の疫学調査
(Nakamura et al 2011,2014)
questionnaire(大竹ら 2002)
,および痛みセンター問診票(牛田 2010)を参考に,
「日ごろから行っている痛みへの工夫はあり
ますか」
と提示し,1.薬を飲む,2.湿布を貼る,3.ストレッチや体操,4.マッサージ,5.運動して身体を鍛える,6.横に
なってゆっくり休む,7.痛みが出るまで無理しない,の 7 項目について複数回答可能とし,日ごろから行っている項目の回答
を求めた。
統計処理として,PDAS を従属変数,痛み強度および行動的対処方略を独立変数とした重回帰分析を男女それぞれ行った。行動
的対処方略の性差を Fisher s exact test で検討した。
【結果】
PDAS は女性 15.3±11.2,男性 10.2±8.3,痛み強度は女性 47.3±21.3,男性 55.3±23.6 であった。
行動的対処方略において,日ごろから行っていると回答した人数(割合)は女性,男性それぞれ,薬を飲む 19 例(23%)
,26
例(25%)
,湿布を貼る 48 例(57%)
,53 例(51%)
,ストレッチや体操 17 例(20%)
,27 例(26%)
,マッサージ 23 例(27%)
,
24 例(23%)
,運動して身体を鍛える 8 例(10%)
,11 例(11%)
,横になってゆっくり休む 15 例(18%)
,10 例(10%)
,痛み
が出るまで無理しない 7 例(8%)
,9 例(9%)であり,全ての項目で性別による割合の差はなかった。
重回帰分析の結果,女性は,薬を飲む(β=0.34)
,マッサージ(β=0.31)
,運動して身体を鍛える(β=−0.25)
(R2=0.33,R2*=
2
2*
0.30)
,男性は,薬を飲む(β=0.29)痛み強度(β=0.25)
(R =0.16,R =0.14)が有意な変数として抽出された。なお,男女共
に抽出された薬を飲むと痛みの強度との間に有意な相関関係は認めなかった。
【考察】
本研究結果から,行動的対処方略の違いが PDAS に影響を及ぼすことが明らかとなった。選択している対処方略に男女差はない
が,PDAS に対する影響度合いが違う。女性の場合 PDAS と運動して身体を鍛えるが負の相関関係にあった要因として,能動的
な行動的対処方略は PDAS を低くすることが考えられる。男性の場合 PDAS と痛み強度が相関関係にあった要因として,痛み
強度による ADL 障害が影響していることが考えられる。また女性では薬を飲む,マッサージが男性では薬を飲むが PDAS と相
関関係にあった。これらは,受動的な行動的対処方略であり,これらにより活動制限が起こったのではないかと考えられる。ま
た薬を飲むに関しては,初診時の行動的対処方略ということで,患者自ら選択した薬で,医療用医薬品ではない可能性があり,
症状に適した薬が処方されたかは明らかではない。結果からも,行動的対処方略として薬を飲むと痛みの強度に関係はない。そ
のため患者の薬への期待とその結果の差より,負の情動が影響する ADL 低下の可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
従来からの報告にもある破局的思考,抑うつ,不安と同様に行動的対処方略も重要であるため,評価が必要である。
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