...

JP 2012-501988 A 2012.1.26 (57)【要約】 本発明は、抗原に

by user

on
Category: Documents
22

views

Report

Comments

Transcript

JP 2012-501988 A 2012.1.26 (57)【要約】 本発明は、抗原に
JP 2012-501988 A 2012.1.26
(57)【要約】
本発明は、抗原に対して殺菌抗体が産生されるように上方制御されたレベルのNMB0964
抗原を有するナイセリアブレブを含む免疫原性組成物に関する。この抗原の発現が亜鉛に
よって調節されることが初めて見出され、したがって細胞またはプロモーターの亜鉛抑制
機構の除去によって、または培養培地からの亜鉛の除去によって発現を上方制御するため
の方法が提供される。
【選択図】なし
(2)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイセリア種細菌から調製された、単離された外膜小胞、ここで、該ナイセリア種細菌
は、被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘導する小胞の生産を提供するために十
分なレベルのNMB0964ポリペプチドを生産するものである、および製薬的に許容される賦
形剤を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
NMB0964ポリペプチドがナイセリア種細菌に内因性である、請求項1に記載の免疫原性
組成物。
【請求項3】
10
ナイセリア種細菌が、外因性NMB0964ポリペプチドをコードする核酸を含むように遺伝
子改変されている、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
NMB0964ポリペプチドが、内因性プロモーターを用いてNMB0964遺伝子から発現される、
請求項1∼3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
ナイセリア種細菌がNMB0964ポリペプチド生産に関して遺伝子改変されている、請求項
1∼4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
ナイセリア種細菌がZurリプレッサー(NMB1266)の機能的発現の破壊によって遺伝子改変
20
されている、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
ナイセリア種細菌が異種プロモーターからのNMB0964ポリペプチドの発現を提供するよ
うに遺伝子改変されている、請求項5または6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
異種プロモーターがZurリプレッサーと結合しない、請求項7に記載の免疫原性組成物
。
【請求項9】
異種プロモーターがナイセリア種細菌での、NMB0964遺伝子の非抑制内因性プロモータ
ーより強力なプロモーターである、請求項7または8に記載の免疫原性組成物。
30
【請求項10】
異種プロモーターがIPTG誘導性lacプロモーターである、請求項7∼9のいずれか1項
に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、トリプティッ
クソイブロス(TSB)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベル
より大きい、請求項1∼10のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、Roswell Park
Memorial Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって
40
作製されるレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項1∼10のいずれか1項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項13】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、1μM TPEN (N,
N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)を含むRoswell Park Memorial
Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製され
るレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項1∼10のいずれか1項に記載の免疫原
性組成物。
【請求項14】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、5、4、3、2、1
50
(3)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+し
か有さない培地中でN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベルと同じかまたは
それより大きい、請求項1∼10のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
ナイセリア種細菌がNeisseria meningitidis、またはNeisseria meningitidis血清群B
である、請求項1∼14のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
ナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している、請求項1∼15のいずれか1項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項17】
10
siaD遺伝子の機能的発現の破壊によってナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している
、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
ナイセリア種細菌のmsbBおよび/またはhtrB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請
求項1∼17のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
ナイセリア種細菌の以下の遺伝子、すなわちPorA、PorB、OpA、OpC、PilC、またはFrpB
の1種以上の発現が破壊されている、請求項1∼18のいずれか1項に記載の免疫原性組
成物。
【請求項20】
20
ナイセリア種細菌のlgtB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請求項1∼19のいず
れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
ナイセリア種細菌が免疫型L2またはL3である、請求項1∼20のいずれか1項に記載の
免疫原性組成物。
【請求項22】
外膜小胞が、0∼0.5、0.02∼0.4、0.04∼0.3、0.06∼0.2、または0.08∼0.15 %の界面
活性剤、例えばデオキシコール酸を用いて、例えば約または厳密に0.1%のデオキシコール
酸を用いて抽出することによって単離される、請求項1∼21のいずれか1項に記載の免
疫原性組成物。
30
【請求項23】
免疫原性組成物の製造方法であって、以下のステップ、
NMB0964ポリペプチドを生産するナイセリア種細菌を培養するステップ、ここで、NMB0964
ポリペプチドは、被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘導する外膜小胞の生産を
提供するために十分なレベルで生産され、
培養された細菌から外膜小胞を調製するステップ、および
外膜小胞を製薬的に許容される賦形剤と組み合わせて、被験体への投与に好適な免疫原性
組成物を得るステップ
を含む、前記方法。
【請求項24】
40
NMB0964ポリペプチドがナイセリア種細菌に内因性である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ナイセリア種細菌が、外因性NMB0964ポリペプチドをコードする核酸を含むように遺伝
子改変されている、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
NMB0964ポリペプチドが、内因性プロモーターを用いてNMB0964遺伝子から発現される、
請求項23∼25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ナイセリア種細菌がNMB0964ポリペプチド生産に関して遺伝子改変されている、請求項
23∼26のいずれか1項に記載の方法。
50
(4)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【請求項28】
ナイセリア種細菌がZurリプレッサー(NMB1266)の機能的発現の破壊によって遺伝子改変
されている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ナイセリア種細菌が異種プロモーターからのNMB0964ポリペプチドの発現を提供するよ
うに遺伝子改変されている、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
異種プロモーターがZurリプレッサーと結合しない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
異種プロモーターがナイセリア種細菌での、NMB0964遺伝子の非抑制内因性プロモータ
10
ーより強力なプロモーターである、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
異種プロモーターがIPTG誘導性lacプロモーターである、請求項29∼31のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項33】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、トリプティッ
クソイブロス(TSB)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベル
より大きい、請求項23∼32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、Roswell Park
20
Memorial Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって
作製されるレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項23∼32のいずれか1項に記
載の方法。
【請求項35】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、1μM TPEN (N,
N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)を含むRoswell Park Memorial
Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製され
るレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項23∼32のいずれか1項に記載の方法
。
【請求項36】
30
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、5、4、3、2、1
、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+し
か有さない培地中でN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベルと同じかまたは
それより大きい、請求項23∼32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ナイセリア種細菌の培養が、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.
2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+しか有さない培地中で行われる、請求項23
∼32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ナイセリア種細菌の培養が、Zn2+キレート剤を含む培地中で行われる、請求項23∼3
40
2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
Zn2+キレート剤が0.01∼100、0.1∼10、0.3∼5、または0.5∼1μMの濃度で培地中に存
在する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
培地中に存在するZn2+キレート剤がTPENである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
ナイセリア種細菌がNeisseria meningitidis、またはNeisseria meningitidis血清群B
である、請求項23∼40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
50
(5)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
ナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している、請求項23∼41のいずれか1項に記
載の方法。
【請求項43】
siaD遺伝子の機能的発現の破壊によってナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している
、請求項23∼42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
ナイセリア種細菌のmsbBおよび/またはhtrB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請
求項23∼43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
ナイセリア種細菌の以下の遺伝子、すなわちPorA、PorB、OpA、OpC、PilC、またはFrpB
10
の1種以上の発現が破壊されている、請求項23∼44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
ナイセリア種細菌のlgtB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請求項23∼45のい
ずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
ナイセリア種細菌が免疫型L2またはL3のものである、請求項23∼46のいずれか1項
に記載の方法。
【請求項48】
外膜小胞を調製するステップを、0∼0.5、0.02∼0.4、0.04∼0.3、0.06∼0.2、または0
.08∼0.15 %の界面活性剤、例えばデオキシコール酸を用いて、例えば約または厳密に0.1
20
%のデオキシコール酸を用いて抽出することによって実行する、請求項23∼47のいず
れか1項に記載の方法。
【請求項49】
界面活性剤を使用せずに外膜小胞を調製するステップを実行する、請求項23∼47の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
ナイセリアに対する免疫応答を誘発する方法であって、請求項1∼22の免疫原性組成
物の免疫学的有効量を哺乳類に投与するステップを含むか、または請求項23∼49のい
ずれか1項に記載の方法を実施して、得られた免疫原性組成物の免疫学的有効量を哺乳類
に投与することによる、前記方法。
30
【請求項51】
ナイセリア疾患の予防のためのワクチンの製造における、請求項1∼22のいずれか1
項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項52】
ナイセリア疾患、例えばN. meningitidisまたはN. meningitidis血清群Bの予防のため
のワクチンであって、請求項1∼22の免疫原性組成物を含むか、または請求項23∼4
9のいずれか1項に記載の方法によって製造される、前記ワクチン。
【請求項53】
以下の配列、
RDQYGLPAHSHEYDDCHADIIWQKSLINKRYLQLYPHLLTEEDIDYDNPGLSCGFHDDDNAHAHTHS
40
と50、60、70、80、90、95、99%以上、または100%の配列同一性を共有するペプチド配列
を含むポリペプチドまたは該配列由来の7、10、12、15または20 (またはそれ以上)の連続
アミノ酸の免疫原性断片を含むポリペプチド(場合により、該ペプチド配列または該免疫
原性断片は、必要であればタンパク質担体にカップリングされた場合に、WO00/55327の配
列番号2を認識できる免疫応答を誘発可能である)、
および製薬的に許容される担体
を含む、免疫原性組成物。
【請求項54】
2つのCys残基がポリペプチド中に存在する、請求項53に記載の免疫原性組成物。
【請求項55】
50
(6)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
2つのCys残基がジスルフィド結合している、請求項54に記載の免疫原性組成物。
【請求項56】
ポリペプチドが完全長成熟NMB0964ポリペプチドではないか、またはインタクトのシグ
ナル配列を有する完全長NMB0964ポリペプチドではない、請求項53∼55のいずれか1
項に記載の免疫原性組成物。
【請求項57】
Zn2+塩を含む、請求項53∼56のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
10
本発明は、ナイセリア菌、特に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)によって引き起こ
される疾患の予防のための免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイセリア菌株はいくつかのヒト病状の病原体であり、それに対して、有効なワクチン
を開発する必要性が存在する。特に淋菌(Neisseria gonorrhoeae)および髄膜炎菌(Nei
sseria meningitidis)は、ワクチン接種によって治療することができる病状を引き起こ
す。
【0003】
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は、世界で最も頻繁に報告されている性行為感染症の1
20
つである淋病の原因菌であり、推定年間発生率は6200万例である(Gerbase et al 1998 La
ncet 351; (Suppl 3) 2-4)。淋病の臨床症状には、尿生殖路、咽頭または直腸の粘膜の炎
症および新生児の眼感染が含まれる。女性の上行性淋菌性感染は、不妊症、子宮外妊娠、
慢性骨盤内炎症性疾患および卵管卵巣膿瘍形成を生じさせうる。敗血症、関節炎、心内膜
炎および髄膜炎は、併発する淋病と関連している。
【0004】
抗生物質耐性を有する淋菌株の数が大きいことは、淋病に伴う罹患率および合併症の増
加に寄与する。抗生物質での淋病の治療の魅力的な代替法は、ワクチン接種を使用するそ
の予防である。N. gonorrhoeae感染についてのワクチンは、現在存在しない。
【0005】
30
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、特に子供および若年成人において重要な病原
体である。敗血症および髄膜炎は最も命をおびやかす形式の侵襲性髄膜炎菌性疾患(IMD)
である。この疾患は、その高い罹患率および死亡率のせいで、世界的な健康問題になって
いる。
【0006】
13種のN. meningitidis血清群が、莢膜多糖類の抗原差異に基づいて特定されており、
最も一般的なものは、A、BおよびCであり、それらは世界中の疾患の90%を占める。血清群
Bは欧州、米国および中南米のいくつかの国において髄膜炎菌性疾患の最も一般的な原因
である。
【0007】
40
血清群A、C、WおよびYの莢膜多糖類に基づくワクチンが開発され、髄膜炎菌性疾患のア
ウトブレイクを抑制することが示されている(Peltola et al 1985 Pediatrics 76; 91-96
)。しかし血清群Bは免疫原性が不十分であり、主にIgMアイソタイプの一時的な抗体応答
しか誘発しない(Ala'Aldeen D and Cartwright K 1996, J. Infect. 33; 153-157)。した
がって、ほとんどの温帯の国の大多数の疾患に関与する血清群B髄膜炎菌に対する現在利
用可能な広く有効なワクチンは存在しない。欧州、豪州および米国で主に5歳未満の子供
において血清型B疾患の発生率が増加しているため、これは特に問題である。血清群B髄膜
炎菌に対するワクチンの開発は特定の困難を引き起こす。その理由は、該多糖カプセルは
、ヒト神経細胞接着分子に対するその免疫学的類似性のせいで免疫原性が不十分であるか
らである。したがって、ワクチン生産のストラテジーは髄膜炎菌性外膜の表面露出構造に
50
(7)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
的をしぼってきたが、菌株間でのこれらの抗原の顕著な変異によって妨げられている。
【0008】
さらなる開発は、細菌膜の通常の内容を構成するいくつかのタンパク質を含む外膜小胞
で構成されているワクチンの導入に至っている。これらの1つはN. meningitidis血清群B
およびCに対するVA-MENGOC-BC Cubanワクチンである(Rodriguez et al 1999 Mem Inst. O
swaldo Cruz, Rio de Janeiro 94; 433-440)。このワクチンは、莢膜多糖類ACワクチンを
使用するワクチン接種プログラムによって排除されなかったCubaでの侵襲性髄膜炎菌性疾
患のアウトブレイクと闘うように設計された。流行した血清群はBおよびCであり、VA-MEN
GOC-BC(登録商標)ワクチンはアウトブレイクの抑制に成功し、N. meningitidisの血清群B
株に対する推定ワクチン効率は83%であった(Sierra et al 1990 In Neisseria, Walter G
10
ruyter, Berlin, M. Achtman et al (eds) p 129-134, Sierra et al 1991, NIPH Ann 14
; 195-210)。このワクチンは特定のアウトブレイクに対して有効であったが、誘発された
免疫応答は他のN. meningitidis株には効かなかった。
【0009】
同型および異型血清群B髄膜炎菌株によって引き起こされた流行期中に中南米で行われ
たその後の効力研究では、高年齢の小児および成人でいくらかの効力が示されたが、その
有効性は、最も高い感染リスクにさらされている低年齢の小児で有意に低かった(Milagre
s et al 1994, Infect. Immun. 62; 4419-4424)。英国などの複数菌株の風土病を伴う国
でそのようなワクチンがどれほど有効であるかは疑わしい。異型菌株に対する免疫原性の
研究では、特に乳児において、限定的な交差反応性血清殺菌力しか示されていない(Tappe
20
ro et al 1999, JAMA 281; 1520-1527)。
【0010】
第2の外膜小胞ワクチンは、Scandinaviaでの流行に特有の血清型B単離体を使用してNor
wayで開発された(Fredriksen et al 1991, NIPH Ann, 14; 67-80)。このワクチンは臨床
試験で試験され、29か月後に57%の防御効力を有することが見出された(Bjune et al 1991
, Lancet, 338; 1093-1096)。
【0011】
現在利用可能な抗髄膜炎菌ワクチンには、多様な問題が伴う。タンパク質に基づく外膜
ワクチンは、特異的で、少数の菌株のみに対して有効である傾向がある。多糖ワクチンも
最適以下である。その理由は、それらが特に血清群Bに対して不十分でかつ短い免疫応答
30
しか誘発しない傾向があるからである(Lepow et al 1986; Peltola 1998, Pediatrics 76
; 91-96)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Gerbase et al 1998 Lancet 351; (Suppl 3) 2-4
【非特許文献2】Peltola et al 1985 Pediatrics 76; 91-96
【非特許文献3】Ala'Aldeen D and Cartwright K 1996, J. Infect. 33; 153-157
【非特許文献4】Rodriguez et al 1999 Mem Inst. Oswaldo Cruz, Rio de Janeiro 94;
433-440
40
【非特許文献5】Sierra et al 1990 In Neisseria, Walter Gruyter, Berlin, M. Achtm
an et al (eds) p 129-134
【非特許文献6】Sierra et al 1991, NIPH Ann 14; 195-210
【非特許文献7】Milagres et al 1994, Infect. Immun. 62; 4419-4424
【非特許文献8】Tappero et al 1999, JAMA 281; 1520-1527
【非特許文献9】Fredriksen et al 1991, NIPH Ann, 14; 67-80
【非特許文献10】Bjune et al 1991, Lancet, 338; 1093-1096
【非特許文献11】Lepow et al 1986; Peltola 1998, Pediatrics 76; 91-96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
50
(8)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【0013】
ナイセリア感染は、考慮すべき保健医療問題であり、N. gonorrhoeaeの場合には、利用
可能なワクチンが存在せず、N. meningitidisの場合には、異型株に対する防御の効力お
よび能力が限定的なワクチンしか利用可能でない。明らかに、現在利用可能なワクチンの
効力を向上させかつ広い範囲の菌株に対する防御を可能にする、ナイセリア感染に対する
優れたワクチンを開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明者らは、ナイセリア抗原NMB0964 (NMB番号は、www.neisseria.orgから入手可能
10
なNeisseria meningitidis B群ゲノム配列を参照する) [Z2491株のNeisseria meningitid
is A群ゲノムではNMA1161として知られ、WO 00/55327ではBASB082として知られ、ZnuDと
して知られる]がナイセリア全体で保存された抗原であり、一連のナイセリア菌株に対す
る殺菌抗体を誘導することができることを見出した。本発明者らは、細菌中のZn2+受容体
としてのこの抗原機能を見出し、その発現が培地中のZn2+のレベルによって制御されるこ
とを見出した。
【0015】
本発明は、概して、被験体でのナイセリア種(Neisseria spp.)細菌に対する、特にNeis
seria meningitidis血清群B株に対する免疫応答を誘発するための方法および組成物を提
供する。
20
【0016】
一態様では、本発明は、ナイセリア種細菌から調製された、単離された外膜小胞、ここ
に、該ナイセリア種細菌は、被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘発する小胞の
生産を提供するために十分なレベルのNMB0964ポリペプチドを生産する; および製薬的に
許容される賦形剤を含む免疫原性組成物を提供する。
【0017】
これは、例えば、培地中のZn2+の存在下でNMB0964の発現をオフにするタンパク質であ
るZurリプレッサー(NMB1266)の機能的発現を破壊することによって; NMB0964プロモータ
ーを、Zurに結合しないプロモーター、特にlacプロモーターなどの内因性NMB0964プロモ
ーターより強力なプロモーターに置換することによって; または、Zn2+濃度が低い、すな
30
わち5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μ
M未満の遊離Zn2+の培地(例えばICP-MSによって約1.69μM Zn2+を有するRoswell Park Mem
orial Institute培地1640 (RPMI))を使用するか、または例えば、NMB0964の発現が最大に
なるように十分に培地に加えられるべきTPEN (N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)
エチレンジアミン)などの公知の亜鉛キレート剤を使用して培地中のZn2+を除去すること
によって、NMB0964ポリペプチド生産に関して遺伝子改変されているナイセリア種細菌に
起因して達成することができる。
【0018】
ナイセリア種細菌は、例えばsiaD遺伝子の機能的発現を破壊することによって、莢膜多
糖類を欠損させることができる。外膜小胞中のLOSを無毒にするためにmsbBおよび/または
40
htrB遺伝子の機能的発現を破壊することができる。1種以上の以下の遺伝子: PorA、PorB
、OpA、OpC、PilC、またはFrpBの発現を破壊することができる。lgtB遺伝子の機能的発現
を破壊することができる。そのような破壊方法はWO 01/09350およびWO2004/014417に記載
される。ナイセリア種細菌は免疫型(immunotype) L2またはL3であってよい。
【0019】
ナイセリア株からの外膜小胞(微小胞またはブレブ(blebs)としても知られる)の製造ま
たは単離方法は当技術分野で周知であり、WO 01/09350およびWO2004/014417に記載される
。典型的に、外膜小胞は、界面活性剤を用いずに、または0∼0.5、0.02∼0.4、0.04∼0.3
、0.06∼0.2、または0.08∼0.15 %の界面活性剤、例えばデオキシコール酸を用いて、例
えば約または厳密に0.1%のデオキシコール酸を用いて抽出することによって単離される。
50
(9)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はウエスタンブロットでのTdfIの検出を示す。(A) TSB (レーン1)、RPMI (
レーン2)中で培養されたHB-1およびRPMI中で培養されたtdfIノックアウト株(レーン3)。(
B) 増加量のTSBを加えたRPMI中で培養されたHB-1。(C) RPMI (レーン1)中、0.5μM亜鉛
(レーン2)または1μM亜鉛(レーン4)を補充したRPMI中で培養されたHB-1。(D) RPMI (レ
ーン1)中、増加濃度のTPEN (それぞれレーン2∼4の0.1、0.5および1μM)を含むRPMI中で
培養されたHB-1。
【図2】図2は野生型およびzur突然変異体株でのTdfI発現を示す。RPMI、600 nM亜鉛ま
たはTSBを含むRPMI中で培養されたHB-1およびzur突然変異体の細胞ライセート中のTdfIの
10
存在をウエスタンブロット分析によって評価した。
【図3】図3はTdfIのトポロジーモデルを示す。プラグドメインはダークグレーで色付け
され、ベータストランドはライトグレーで色付けされ、細胞外ループは白で色付けされる
。ヒスチジン/アスパラギン酸ストレッチはボックスで囲まれる。
【図4】図4はTdfIによる亜鉛結合および輸送を示す。(A) TdfIを含むか含まない外膜
小胞への亜鉛結合をPAR競合アッセイによって測定した。(B) 野生型株、tdfI突然変異体
およびtonB突然変異体のICP-MSによって測定された細胞内亜鉛濃度。
【図5】図5は、TdfIの亜鉛調節が髄膜炎菌で高度に保存されていることを示す。亜鉛を
加えたかまたは加えないRPMI中で培養された指定菌株の細胞ライセートのウエスタンブロ
ット。a クローン群の名称は(36)にしたがう; - これは、該菌株が多座酵素電気泳動に
20
よって型に分類されたが、特定のクローンに割り当てることができなかったことを示す。
【図6】図6はTdfIワクチンのタンパク質プロファイルを示す。抗血清生産のためにマウ
スを免疫化するために使用される外膜小胞をSDS-PAGEによって分離し、クーマシーブリリ
アントブルーで染色した。
【図7】図7は、SBAにおいて使用される細胞上のTdfIの発現に対するIPTGの影響を示す
。実施例1を参照のこと。
【図8】補足図1。N. meningitidis MC58株のTdfIと、保有菌株 α14、α153およびα27
5の053422、FAM18およびZ2491のものとのアミノ酸配列アライメント。TonBボックス(Tb)
、プラグドメイン、ループおよび膜貫通ドメイン(Tm)には配列の上に印を付け、His-およ
びAsp-リッチストレッチには下線を付した。
30
【図9】補足図1の続きを示す。
【図10】補足図2。TdfIホモログのアミノ酸配列アライメント。ヒスチジンアスパラギ
ン酸リッチストレッチをグレーで強調する。
【図11】補足図2の続きを示す。
【図12】補足図2の続きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、Zn2+が低い特定の培養条件で製造されたか、またはNMB0964を過剰発現する
かもしくはZurによって媒介される亜鉛抑制機構を除去するように操作された突然変異体N
40
. meningitidis株から製造されたOMVワクチンがNMB0964に富み、そのようなOMVが、前記
方法で製造されなかったOMVと比較して良好な殺菌抗体応答を誘発するという発見に基づ
く。
【0022】
本明細書中、用語NMB0964ポリペプチドには、概して任意のナイセリア株由来のナイセ
リアTdfIポリペプチド(tdfI遺伝子によってコードされる)が含まれる(該タンパク質はナ
イセリア株間で非常によく保存されていて、当業者は任意の特定のナイセリア株でのその
同一性を容易に確かめることができる)。したがって該用語には、NMA1161配列、およびWO
00/55327のBASB082ポリペプチド配列(およびBASB082ポリペプチドに関する発明のすべて
のポリペプチド)が含まれる。例えば、本発明のNMB0964ポリペプチドは、WO00/55327の配
50
(10)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
列番号2または該配列番号2と70、80、90または95%を超える配列同一性を有するポリペ
プチド、または該配列番号2の7、10、12、15または20 (またはそれ以上)の連続アミノ酸
の免疫原性断片(特に該免疫原性断片は、必要であればタンパク質担体にカップリングさ
れた場合に、該配列番号2を認識できる免疫応答を誘発可能である)を含むポリペプチド
を含む。特に好ましいNMB0964免疫原性断片の実施形態は、任意の所定のNMB0964配列に適
用される図3のトポロジー図に示される細胞外ループ配列である。特に第3の細胞外ルー
プが供給される(ここに、2個のCys残基は場合によりジスルフィド結合しているかまたは
していない)。該NMB0964免疫原性断片ポリペプチド配列は、WO 00/55327の配列番号2由
来の該細胞外ループ配列(図3で規定される)と70、80、90または95%を超える配列同一性
を有するか、または配列番号2由来の該細胞外ループ配列(図3で規定される)由来の7、1
10
0、12、15または20 (またはそれ以上)の連続アミノ酸の免疫原性断片(特に該免疫原性断
片は、必要であればタンパク質担体にカップリングされた場合に、該配列番号2を認識で
きる免疫応答を誘発可能である)を含むポリペプチドであり、本発明のNMB0964ポリペプチ
ドとして提供される。該NMB0964免疫原性断片ポリペプチド配列は、図3に記載の第3の細
胞外ループ配列由来の配列と70、80、90、95、99を超えるかまたは100%の配列同一性を有
するか(ここに、場合により、2個のCys残基は保存されているべきであり、ジスルフィド
結合していてもいなくてもよい)、または該細胞外ループ配列由来の7、10、12、15または
20 (またはそれ以上)の連続アミノ酸の免疫原性断片(特に該免疫原性断片は、必要であれ
ばタンパク質担体にカップリングされた場合に、WO00/55327の配列番号2を認識できる免
疫応答を誘発可能である)を含むポリペプチドであり、本発明のNMB0964ポリペプチドとし
20
て提供される。一実施形態では、NMB0964免疫原性断片ポリペプチドは完全長NMB0964 (成
熟配列または、シグナル配列を伴う)ポリペプチドではない。ゆえに、本発明のさらなる
態様は、本発明のそのようなNMB0964免疫原性断片ポリペプチド配列および製薬的に許容
される賦形剤を含む免疫原性組成物である。
【0023】
一実施形態での用語「被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘発する小胞の生産
を提供するために十分なレベルのNMB0964ポリペプチド」は、該レベルが、検出可能な殺
菌抗体を誘導するために十分であること、例えばSBA力価が100以上であることを示し、例
えばそれは、5μgのトータルタンパク質含量の本発明の外膜小胞が、0、21および28日目
にマウスに筋肉内注射された場合に、42日目に血清を生産し、該血清が、実施例2の「血
30
清殺菌アッセイ」セクションのSBAアッセイを使用して、100を超える(例えば150、200、2
50、300、350、400、500、700、900または1000より大きい) SBA力価を生じさせることを
示す。
【0024】
本発明のポリペプチドの非抑制型内因性プロモーターより「強力な」、本発明のポリペ
プチドに関連する異種プロモーターとは、その使用が、本発明のポリペプチドの非抑制型
内因性プロモーターが利用された場合より多くの本発明のポリペプチドの発現を生じさせ
ることを意味する。
【0025】
用語「防御免疫」とは、哺乳類に投与されるワクチンまたは免疫化スケジュールが、Ne
40
isseria meningitidisによって引き起こされる疾患を予防するか、その発生を遅延させる
か、またはその重症度を低減するか、または該疾患の症状を減少させるかもしくは完全に
排除する免疫応答を誘発することを意味する。
【0026】
「Neisseria meningitidisの血清群B株によって引き起こされる疾患」という用語は、N
eisseria meningitidisの血清群Bのメンバーの感染の際に存在する任意の臨床症状または
臨床症状の組み合わせを包含する。これらの症状には、非限定的に: Neisseria meningit
idisの血清群Bの病原性株による上気道(例えば上咽頭の粘膜および扁桃腺)のコロニー形
成、粘膜および粘膜下血管床への細菌の侵入、敗血症、敗血性ショック、炎症、出血性(h
aemmorrhagic)皮膚損傷、線維素溶解および血液凝固の活性化、器官機能障害、例えば腎
50
(11)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
臓、肺、および心不全、副腎出血および筋肉梗塞、毛細管漏出、浮腫、末梢虚血肢、呼吸
困難症候群、心外膜炎および髄膜炎が含まれる。
【0027】
本明細書中で使用される「血清群」とは、莢膜多糖類中の免疫学的に検出可能な変異に
基づくNeisseria meningitidesの分類を表す。約12の血清群: A、B、C、X、Y、Z、29-E、
W-135、H、I、KおよびLが公知である。任意の1血清群は複数の血清型および複数の血清亜
型を包含しうる。
【0028】
「濃縮された(に富む)」とは、抗原組成物中の抗原が実験者または臨床家によって操作
されて、該抗原組成物の取得元の菌株中の該抗原の濃度より、総重量に基づいて少なくと
10
も3倍高い濃度で、通常少なくとも5倍高い濃度、より好ましくは少なくとも10倍高い濃度
、または少なくとも100倍高い濃度で存在するようにされることを意味する。ゆえに、特
定の抗原の濃度がトータル細菌調製物(またはトータル細菌タンパク質) 1グラムあたり1
マイクログラムである場合、濃縮された調製物はトータル細菌調製物(またはトータル細
菌タンパク質) 1グラムあたり少なくとも3マイクログラムを含む。
【0029】
本発明のNMB0964ポリペプチドは、本明細書中で考察される方法(例えば培養条件、また
は組み換え手段によるポリペプチドの過剰発現)によって本発明の外膜小胞中で濃縮する
ことができる。
【0030】
20
用語「異種(異型)」とは、天然には一緒に見出されない2つの生物学的成分を表す。該
成分は、宿主細胞、遺伝子、または調節領域、例えばプロモーターであってよい。異種成
分は天然には一緒に見出されないが、それらは、遺伝子に対して異種のプロモーターが該
遺伝子に作動可能に連結される場合のように、一緒に機能することができる。別の例は、
ナイセリア配列が、異なる菌株のナイセリア宿主に対して異型である場合である。本明細
書中で使用される「異種(異型)」は、2つの異なる菌株中で発現されるタンパク質の関連
で、目的のタンパク質のアミノ酸配列が異なることを示す。
【0031】
生産株は莢膜欠損株であってよい。莢膜欠損株は、(例えば、宿主細胞表面のシアル酸
と交差反応する抗体の生産に起因して)ワクチンが投与される被験体で重大な自己抗体応
30
答を誘発するリスクの減少を提供する小胞に基づくワクチンを提供することができる。本
明細書中で使用される「莢膜欠損」または「莢膜多糖類の欠損」とは、天然に存在する菌
株でのレベルより低いか、または、該菌株が遺伝子改変されている場合、該莢膜欠損株の
派生元の親株でのレベルより低い細菌表面の莢膜多糖類のレベルを表す。莢膜欠損株には
、表面莢膜多糖類生産が少なくとも10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%
、90%またはそれ以上減少している菌株が含まれ、(例えば、抗莢膜多糖類抗体を使用する
細胞全体のELISAによって)莢膜多糖類が細菌表面で検出不可能である菌株が含まれる。
【0032】
莢膜欠損株には、天然に存在するかまたは組み換えによって作製された遺伝子改変のせ
いで莢膜欠損である菌株が含まれる。天然に存在する莢膜欠損株(例えばDolan-Livengood
40
et al. J. Infect. Dis. (2003) 187(10): 1616-28を参照のこと)、ならびに莢膜欠損株
を特定しかつ/または作製する方法(例えばFisseha et al. (2005) Infect. Immun. 73(7)
:4070-4080; Stephens et al. (1991) Infect Immun 59(11):4097-102; Frosch et al. (
1990) Mol Microbiol. 1990 4(7):1215-1218を参照のこと)が当技術分野で公知である。
【0033】
莢膜多糖類の生産の減少を提供するためのナイセリア宿主細胞の改変には、莢膜合成に
関与する1種以上の遺伝子の改変が含まれ、該改変は、例えば、改変前の親細胞と比較し
た莢膜多糖類のレベルの減少を提供する。そのような遺伝子改変には、(例えば、1種以上
の莢膜生合成遺伝子中の1以上の挿入、欠失、置換、などに起因して)莢膜欠損株を提供す
る、1種以上の莢膜生合成遺伝子中のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の変化が含
50
(12)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
まれる。莢膜欠損株は、1種以上の莢膜遺伝子を欠くか、またはそれに関して非機能的で
あってよい。特に興味深いのは、シアル酸生合成が欠損している菌株である。
【0034】
そのような菌株は、ヒトシアル酸抗原と交差反応する抗シアル酸抗体を誘発する、低い
リスクしか有さない小胞の生産を提供することができ、さらに、向上した製造安全性を提
供することができる。(天然に存在する改変または操作された改変のせいで)シアル酸生合
成に欠損を有する菌株は、シアル酸生合成経路中のいくつかの異なる遺伝子のいずれかで
欠損していてよい。特に興味深いのは、N-アセチルグルコサミン-6-リン酸2-エピメラー
ゼ遺伝子(synX AAF40537. 1またはsiaA AAA20475として知られる)によってコードされる
遺伝子産物が欠損している菌株であり、不活性化されたこの遺伝子を有する菌株が特に興
10
味深い。例えば、一実施形態では、機能的synX遺伝子産物の生産を破壊することによって
莢膜欠損株を作製する(例えばSwartley et al. (1994) J Bacteriol. 176(5):1530-4を参
照のこと)。
【0035】
莢膜欠損株は、天然に存在する菌株から非組み換え技術を使用して、例えば、殺菌性抗
莢膜抗体を使用して莢膜多糖類が減少している菌株を選択することによって、作製するこ
ともできる。
【0036】
一般に、上記のように、小胞は、被験体に投与された場合に、抗NMB0964抗体の生産を
提供する十分なNMB0964タンパク質を有する小胞を生産する、天然に存在するかまたは天
20
然に存在しない改変型ナイセリア株を使用して、本発明にしたがって製造することができ
る。
【0037】
一実施形態では、本発明の小胞を生産するために使用されるナイセリア株は、検出可能
なレベルのNMB0964を発現しないかまたは低レベルのNMB0964しか発現しない菌株と比較し
て高レベルのNMB0964を発現する、天然に存在する菌株であってよい。
【0038】
別の実施形態では、ナイセリア株を組み換えまたは非組み換え技術によって改変して、
十分に高レベルのNMB0964生産を提供する。
【0039】
30
そのような改変された菌株は、一般に、未改変親細胞中のNMB0964生産またはRM1O9Oま
たはH44/76株のNMB0964生産に対して1.5、2、2,5 3、3.5、4、4.5、5、5. 5、6、6,5、7
、7.5、8、8.5、9、9.5、または10倍またはそれ以上であるNMB0964生産の増加を提供する
ように製造される。任意の好適な菌株をこの実施形態で使用することができ、それには、
改変前に低レベルまたは検出不可能なレベルのNMB0964しか生産しない菌株および、検出
可能なレベルのNMB0964を発現しないかまたは低レベルのNMB0964しか発現しない菌株と比
較して高レベルのNMB0964を天然に生産する菌株が含まれる。
【0040】
改変された菌株は、組み換え技術を使用して、通常、NMB0964ポリペプチドをコードす
る核酸の導入または内因性NMB0964の発現の増加を提供するための内因性NMB0964遺伝子の
40
操作によって製造することができる。
【0041】
上記のように、これは、NMB0964ポリペプチドをコードする核酸の導入または内因性NMB
0964の発現の増加を提供するための内因性NMB0964遺伝子の操作によって行うことができ
る。
【0042】
内因性NMB0964発現は、NMB0964の発現をコントロールする調節領域をin situで変化さ
せることによって増加させることができる。内因性ナイセリア遺伝子の発現の増加を提供
する方法は当技術分野で公知である(例えばWO 02/09746を参照のこと)。
【0043】
50
(13)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
内因性NMB0964の生産の増加を提供するためのナイセリア宿主細胞の改変には、NMB0964
発現をコントロールする内因性遺伝子のすべての部分の部分的置換または全置換が含まれ
、ここに、該改変は、例えば、未改変の親株と比較して増強された転写活性を提供する。
【0044】
転写活性の増加は、天然に存在するかまたは改変された異種プロモーターまたは両者の
組み合わせによる内因性調節領域の変異体(ポイントミューテーション、欠失および/また
は挿入)によって付与されうる。一般に、該遺伝子改変は、(例えば、強力なプロモーター
の導入によって)未改変の内因性転写活性のものより高い転写活性を付与し、NMB0964の発
現が増強される。
【0045】
10
NMB0964転写生産の増加に有用な典型的な強力なプロモーターには、例えば、porA、por
B、lbpB、tbpB、p110、hpuAB、lgtF、Opa、p110、lst、およびhpuABのプロモーターが含
まれる。PorA、RmpMおよびPorBは、構成的な強力なプロモーターとして特に興味深い。Po
rBプロモーター活性は、porBの開始コドンの上流のヌクレオチド-1∼-250に相当する断片
中に含まれる。
【0046】
プロモーターを内因性NMB0964コード核酸に作動可能に連結するような、宿主細胞ゲノ
ム中へのプロモーターの導入を達成する方法は、当技術分野で利用可能である。例えば、
コード配列の上流領域、例えばNMB0964コード核酸配列の開始ATGコドンから約1000 bp、
約30∼970 bp、約200∼600 bp、約300∼500 bp、または約400 bp 上流(5')の領域にプロ
20
モーターを導入して上方制御を提供するためのダブルクロスオーバー相同組み換えテクノ
ロジーである。プロモーターの最適な配置は、当技術分野で利用可能な方法の通常の使用
によって決定することができる。
【0047】
例えば、標的とされる遺伝子の上流の高度に活性なプロモーター(例えば、PorA、PorB
またはRmpMプロモーター)である。一例として、van der Ende et al. Infect Immun 2000
;68:6685-90に記載されるように、PorAプロモーターを、発現に最適化することができる
。プロモーターの挿入は、例えば、標的とされるNMB0964遺伝子の上流セグメントのPCR増
幅、ベクターへの上流セグメントのクローニング、およびPCR増幅中の適切な制限部位の
挿入、または天然に存在する制限部位を使用したPorAプロモーターセグメントの挿入によ
30
って達成することができる。例えば、NMB0964遺伝子の約700 bp上流セグメントをクロー
ニングすることができる。このクローニングされたセグメント内のNMB0964プロモーター
の上流の適切な距離(例えば約400 bp)で位置する天然に存在する制限酵素部位を使用して
、PorAプロモーターセグメントを挿入する。抗生物質(例えばエリスロマイシン)耐性カセ
ットをPorAプロモーターのさらに上流のセグメント内に挿入することができ、該構築物を
使用して、相同組み換えによって野生型上流NMB0964セグメントを置換することができる
。
【0048】
別のアプローチは、宿主細胞ゲノム中で強力な転写活性を示す、内因性プロモーターの
下流の、NMB0964ポリペプチドをコードする配列を導入するステップを含む。例えば、Rmp
40
M遺伝子のコード領域をNMB0964ポリペプチドのコード配列で置換することができる。この
アプローチは、発現を駆動するために、高度に活性な構成的RmpMプロモーターをうまく利
用する。
【0049】
ナイセリア株は、NMB0964ポリペプチドをコードする構築物のナイセリア宿主細胞への
導入によってNMB0964を過剰発現するように遺伝子改変することができる。発現のために
導入されるNMB0964は、本明細書中で「外因性」NMB0964と称される。該宿主細胞は内因性
NMB0964を生産し、外因性NMB0964は、内因性NMB0964と比較して同一のまたは異なるアミ
ノ酸配列を有してよい。
【0050】
50
(14)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
本発明で有用なNMB0964ポリペプチドには、融合タンパク質も含まれ、ここに、該融合
タンパク質は、そのN末端またはC末端に融合パートナーを有するNMB0964ポリペプチドを
含む。興味深い融合パートナーには、例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、
マルトース結合タンパク質(MBP)、Hisタグ、など、ならびに他のタンパク質由来のリーダ
ーペプチドが含まれる。
【0051】
配列同一性は、核酸またはアミノ酸配列のアライメントおよび比較のための方法を使用
して決定することができ、該方法は当技術分野で周知である。長い配列の比較ほど、2つ
の配列の最適なアライメントを達成するために、より洗練された方法を必要とする。比較
ウインドウをアライメントするための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman
10
(1981) Adv. Appl. Math. 2:482のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needlema
n and Wunsch (1970) J Mol. Biol. 48:443のホモロジーアライメントアルゴリズムによ
って、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nati. Acad. Sci. (USA) 85:2444の類似性検索
法によって、前記アルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Packa
ge Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BEST
FIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または点検によって行うことができ、種々の方法
によって作製された最良のアライメント(すなわち、比較ウインドウにわたって最高の配
列類似性パーセンテージを生じさせる)が選択される。
【0052】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appi. M
20
ath. 2:482 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J
. Mol. Biol. 48:443 (1970)のホモロジーアライメントアルゴリズムによって、Pearson
& Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、前記
アルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Com
puter Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BBSTFIT、FASTA、およびTFASTA)に
よって、または目視検査によって行うことができる(概して、Current Protocols in Mole
cular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture bet
ween Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1995 Suppl
ement) (Ausubel)を参照のこと)。
【0053】
30
配列同一性および配列類似性パーセントの決定に好適なアルゴリズムの例はBLASTおよ
びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 21
5: 403-410およびAltschuel et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 33 89-3402に記載
される。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnolo
gy Information (http:I/www.ncbi.nlm.nih.govl)から公的に入手可能である。このアル
ゴリズムは、まず、データベース配列中の同一の長さのワードとアライメントされた場合
に、いくらかの正値の閾値スコアTに適合するか、またはそれを満たす、クエリ配列中の
長さWのショートワードを特定することによってハイスコア配列ペア(HSP)を特定すること
を含む。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al, 上記)。
【0054】
40
これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含む、より長いHSPを発見するための検索
を開始するためのシードとして機能する。次いで該ワードヒットを、累積アライメントス
コアが増加しうる限り、各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド
配列では、パラメータM (適合残基のペアに関する報酬スコア; 常に> 0)およびN (ミスマ
ッチ残基に関するペナルティースコア; 常に< 0)を使用して算出する。アミノ酸配列では
、スコア行列を使用して累積スコアを算出する。累積アライメントスコアがその最大達成
値から量Xだけ低下した場合; 1種以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積に起因して
累積スコアがゼロ以下になった場合; またはいずれかの配列の末端に達した場合に、ワー
ドヒットの各方向の伸長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXはアラ
イメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、デ
50
(15)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
フォルトとして、ワードレングス(W) 11、期待値(expectation) (E) 10、M=5、N=-4、お
よび両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムでは、デフォルトと
して、ワードレングス(W) 3、期待値(E) 10、およびBLOSUM62スコア行列を使用する(Heni
koff & Henikoff, Proc. Nati. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)。
【0055】
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2配列間の類似性の
統計解析を実施する(例えばKarlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873
-5787 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一基準は最
小合計確率(smallest sum probability) (P(N))であり、それは2ヌクレオチドまたはアミ
ノ酸配列間の適合が偶然によって生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核
10
酸と参照核酸の比較において最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、
最も好ましくは約0.001未満であれば、参照配列に類似しているとみなされる。
【0056】
2つの核酸配列またはポリペプチドが配列同一性を共有するさらなる指標は、下記のよ
うに、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされる
ポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。
【0057】
ゆえに、ポリペプチドは、典型的に、例えば、2つのポリペプチドが保存的置換によっ
てのみ異なる場合に、第2のポリペプチドと配列同一性を共有する。2つの核酸配列が配列
同一性を共有する別の指標は、ストリンジェントな条件下で2つの分子が互いにハイブリ
20
ダイズすることである。特定のハイブリダイゼーション条件セットの選択は当技術分野の
標準的方法にしたがって選択される(例えばSambrook, et al., Molecular Cloning: A La
boratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照のこと)。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃以上および0.1 x SSC (15
mM塩化ナトリウム/i.5 mMクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。スト
リンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、溶液: %ホルムアミド、5 x SSC
(150 mM NaC1、15 nIMクエン酸3ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5 xデン
ハート液、10%硫酸デキストラン、および20 mg/ml変性断片化サケ精子DNA中で42℃での一
晩のインキュベーションおよびその後の約65℃で0.1 x SSCでのフィルターの洗浄である
。
30
【0058】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上記の代表的な条件と少なくとも
同程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、ここに、条件は、上記
の具体的なストリンジェントな条件の少なくとも約80%程度のストリンジェンシー、典型
的に少なくとも約90%程度のストリンジェンシーである場合に、少なくとも同程度にスト
リンジェントであるとみなされる。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
は当技術分野で公知であり、本発明のこの特定の実施形態の核酸を特定するためにそれを
用いてもよい。
【0059】
好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ
40
酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の交換可能性を表す。例えば、脂肪族側鎖を有する
アミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;
脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり; アミ
ド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり; 芳香族側鎖を
有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり; 塩
基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンであり; 硫黄
含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的ア
ミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシ
ン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0060】
50
(16)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
外因性NMB0964ポリペプチドを発現させるためのナイセリア宿主細胞の遺伝子改変を提
供するように容易に作り変えることができる方法および組成物は当技術分野で公知である
。典型的なベクターおよび方法は、WO 02/09746およびO'Dwyer et al. Infect Immun 200
4;72:651 1-80で提供される。
【0061】
遺伝物質をナイセリア宿主に導入する方法には、例えば、コンジュゲーション、形質転
換、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法などが含まれる。該導入方法は、導入
されたNMB0964コード核酸の安定な発現を提供すべきである。NMB0964コード核酸は、遺伝
性エピソーム性要素(例えばプラスミド)として提供するか、またはゲノムに組み込むこと
ができる。
10
【0062】
好適なベクターは、どのタイプの組み換えイベントを実施しようとするかに応じて組成
が変動する。組み込みベクターは条件的に複製可能であるか、または自殺プラスミド、バ
クテリオファージ、トランスポゾンまたは、制限加水分解もしくはPCR増幅によって得ら
れる線状DNA断片であってよい。組み換えイベントの選択は、選択可能な遺伝子マーカー
、例えば抗生物質(例えばカナマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、ま
たはゲンタマイシン)に対する耐性を付与する遺伝子、重金属および/または有毒な化合物
に対する耐性を付与する遺伝子または栄養要求突然変異(例えばpur、leu、met、aro)を補
完する遺伝子を用いて達成することができる。
【0063】
20
一実施形態では、ベクターは、E. coliおよびN. meningitidisの両者において自律的に
複製する選択可能な薬物耐性マーカーを含むエピソーム性プラスミドに基づく発現ベクタ
ーである。そのような「シャトルベクター」の一例はプラスミドpFP1Oである(Pagotto et
al. Gene 2000 244:13-19)。
【0064】
免疫化
一般に、本発明の方法は、1種以上のナイセリア種細菌株に対する防御免疫応答を誘発
するための、哺乳類被験体(例えばヒト)への本発明の1種以上の抗原性組成物の投与、お
よびゆえに、そのような細菌によって引き起こされる疾患に対する防御を提供する。特に
、本発明の方法は、1、2、3、4種、またはそれ以上のNeisseria meningitidis種株に対す
30
る免疫防御性の免疫応答を提供することができ、ここに該菌株は、血清群、血清型、血清
亜型、またはNMB0964ポリペプチドの少なくとも1つが異なる。特に興味深いのは、特に菌
株の血清亜型が異なる(例えば異型PorAを有する)場合の、複数の血清群BのNeisseria men
ingitidis株に対する防御免疫応答の誘発である。また、特に興味深いのは、PorAおよび/
またはNMB0964に関して他の1つと異型である菌株に対する防御免疫応答の誘発である。
【0065】
本発明の抗原性組成物は、経口、経鼻、鼻咽頭、非経口、腸、胃、局所、経皮、皮下、
筋肉内で、錠剤、固体、粉末、液体、エアロゾル剤形で、賦形剤を加えるか加えずに、局
所または全身で投与することができる。非経口投与用組成物を製造するための実際の方法
は当業者に公知であるかまたは自明であり、Remingtonts Pharmaceutical Science, 15th
40
ed., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania (1980)などの刊行物にさらに詳
細に記載される。
【0066】
経口投与では、組成物の消化を防ぐことが必要でありうることが認識される。これは、
典型的に、組成物を、それを酸性および酵素加水分解に抵抗性にする物質と結合させるか
または組成物を適切に抵抗性の担体にパッケージングすることによって達成される。消化
を防ぐ手段は当技術分野で周知である。
【0067】
該組成物は、疾患の発生およびその合併症を予防するかまたは少なくとも部分的に止め
るために、ナイセリア疾患を獲得するリスクにさらされている動物に投与される。これを
50
(17)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
達成するために適切な量は「治療有効量」と定義される。治療的使用に有効な量は、例え
ば、抗原性組成物、投与様式、患者の体重および全般的健康状態、および処方する医師の
判断に依存する。抗原性組成物の一回量または複数回用量を、患者に必要でかつ許容され
る用量および頻度、および投与経路に応じて投与することができる。
【0068】
本明細書中に記載の抗原性組成物(本明細書中で免疫原性組成物としても知られる)は、
同一のまたは異なる菌株に由来する小胞の混合物を含むことができる。別の実施形態では
、抗原性組成物は2、3、4、5種またはそれ以上の菌株由来の小胞の混合物を含むことがで
きる。
【0069】
10
抗原性組成物は、宿主中で免疫応答、特に体液性免疫応答を誘発するために有効な量で
投与される。混合物の、免疫化のための量は、一般に、70キログラムの患者あたり約0.00
1 mg∼約1.0 mg、より一般には70キログラムの患者あたり約0.001 mg∼約0.2 mgの範囲で
ある。特に抗原が血流中ではなく、隔離された部位に、例えば体腔中または器官の管腔中
に投与される場合、1日あたり患者あたり0.001∼約10 mgまでの用量を使用することがで
きる。経口、経鼻、または局所投与では、実質的に高用量(例えば10∼100 mgまたはそれ
以上)も可能である。混合物の初回投与に続いて、同一の異なる混合物で追加免疫を行う
ことができ、少なくとも1回の追加免疫、より通常には2回の追加免疫が好ましい。
【0070】
抗原組成物は、典型的に、ナイセリアに関して、特にNeisseria meningitidisに関して
20
免疫学的にナイーブである哺乳類に投与される。特定の実施形態では、哺乳類は約5歳以
下のヒト子供および好ましくは約2歳以下のヒト子供であり、出生後2週、1か月、2、3、4
、5、6、7、8、9、10、または11か月、または1年または15、18、または21か月、または2
、3、4、または5歳の時点の任意の1回以上で抗原組成物を投与する。
【0071】
一般に、任意の哺乳類への投与は、好ましくは、疾患症状の最初の徴候の前、またはナ
イセリアへの、起こりうるかまたは実際の曝露の最初の徴候の時点で開始される。
【0072】
(実施例)
本明細書中に記載の実施例および実施形態は説明のためだけのものであり、それを考慮
30
すると、種々の改変または変更が当業者に自明になり、それらは本出願および特許請求の
範囲の精神および範囲内に入ることが理解される。本明細書中で引用されるすべての刊行
物、特許、および特許出願は、ここに、参照によりそれらの全体がすべての目的のために
組み入れられる。
【0073】
実施例1
TdfIの上方制御を伴うOMVの免疫原性
TdfIは、N. meningitidisが血中にある場合に発現されると考えられる遺伝子である。
したがって、菌株が慣用の培養培地中で培養される場合には、通常発現されないが、野生
型H44/76株は、例えば、特殊な培養条件(ヘミンを補充したRPMI培養培地)で該タンパク質
40
を発現するように作製することができる。以下の実験は、TdfI発現が組み換えによって(I
PTGの使用による)誘導性にされているH44/76株の使用を詳しく述べる。これは、該菌株か
ら作製されたOMVワクチンの表面のTdfIの過剰発現を可能にし、該抗原を発現する菌株を
培養して、TdfIに対して産生された抗体が、通常の培養条件(+IPTG)下でTdfIを発現する
そのような改変株を死滅させることが可能であるかどうかを確立する容易な方法を提供す
る。SBAで使用される細胞上のTdfIの発現に対するIPTGの影響を図7に示す。
【0074】
10マウスの群を0、21および28日目に筋肉内経路によってOMVで3回免疫化した。各接種
は、MPLを伴うAlPO4で製剤化された5μg (タンパク質含量)のOMVから構成された。OMVは
、莢膜多糖類およびPorAが下方制御されかつLOS免疫型がgalE型であるように操作されたN
50
(18)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
eisseria meningitidis H44/76株由来であった。比較は、TdfIが上方制御(IPTG誘導性プ
ロモーターのコントロール下での上方制御)されているかまたはされていないOMVからなる
ものであった。42日目に、(培養培地中にIPTGを添加した後または添加せずに) TdfIを発
現するかまたはしない同型株H44/76 (B:15:P1.7,16)を使用する血清殺菌アッセイによる
分析のために血液サンプルを採取した。
【0075】
N. meningitidis株をペトリ皿の10μg/mlクロラムフェニコールを有するGC寒天上で37
℃+ 5% CO2で一晩培養した。それらを、1000μM IPTGを補充したかまたは含まない液体TS
B培地中で3時間、継代培養した。個別の血清を56℃で30分不活性化した。血清サンプルを
0.5% HBSS-BSAで希釈し、次いで平底マイクロプレート中の25μlの容量中で2倍希釈(8回
10
希釈)した。細菌を0.5% HBSS-BSAで希釈して8.103 CFU/mlを得た。12.5μlのこの希釈液
を血清希釈液に加えた。さらにウサギ補体(12.5μl)を各ウェルに加えた。振とう条件下
で37℃で75分のインキュベーション後、15 ulの混合物を、37℃+CO2で一晩インキュベー
トされたあらかじめ温められたGC寒天プレート上に広げた。
【0076】
CFUをカウントし、死滅のパーセンテージを算出した。SBA力価は50%の死滅をもたらす
希釈である。
【0077】
SBA力価: 標的細胞によるTdfIの発現への影響
20
IPTGなしでは、TdfIは標的細胞上で発現されず、該細胞は、上方制御されたTdfI OMVで
免疫化されたマウス由来の血清によって死滅しない。TdfIの発現がIPTGによって特異的に
誘導されると、標的細胞はTdfIを発現し、抗TdfI-OMVマウス血清によって死滅する。
【0078】
実施例2: ワクチンの潜在能力を有するNeisseria meningitidis中の新規の、亜鉛によ
って調節される外膜タンパク質
30
要約
ヒト宿主中の遊離鉄の濃度は低いので、効率的な鉄獲得機構は、病原性細菌の重要な病
原性因子を構成する。グラム陰性菌では、TonB依存的外膜受容体が鉄獲得にかかわる。し
かし、ヒト宿主中で同様に不十分な他の金属の、細菌外膜を横切る輸送はさらにわずかに
しか明らかになっていない。本研究では、本発明者らは、Neisseria meningitidisの新規
TonB依存的受容体を特徴付けた。本発明者らは、該細菌が亜鉛制限下でこのタンパク質を
生産し、それが亜鉛摂取に関与することを示す。さらに、該タンパク質は単離体の間で高
度に保存され、かつ殺菌抗体を誘導可能であるので、有効な汎用ワクチンがこれまで利用
可能でないN. meningitidisに対するワクチンの開発のための新規候補を構成する。TfdI
と称される該タンパク質のホモログは、気道に存在する多数の他の病原体中で見出され、
40
それは、受容体を介した亜鉛摂取がこのニッチでの生存に特に重要であることを示唆する
。
【0079】
導入
グラム陰性菌の細胞エンベロープは内膜および外膜の2つの膜からなり、それらはペプ
チドグリカン層を含むペリプラズムによって分離される。外膜は環境からの有害な化合物
に対するバリアを形成する。ほとんどの栄養分は、包括的にポーリンと称される豊富なチ
ャネル形成外膜タンパク質を介する受動拡散によって外膜を通過できる。しかし、栄養分
の細胞外濃度が低い場合、拡散は選択肢ではない。これは、例えば、鉄の場合に事実であ
る。病原体はヒト宿主内で低濃度の遊離鉄としか直面しない。ヒト宿主内では、鉄は鉄輸
50
(19)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
送および鉄貯蔵タンパク質、例えばラクトフェリンおよびトランスフェリンによって拘束
されている。ゆえに、効率的鉄獲得機構は重要な病原性因子を構成し、多数の病原体にお
いて広く研究されてきた(1、2)。
【0080】
鉄制限条件下で培養されると、グラム陰性菌は、宿主の鉄結合タンパク質、ヘム、また
はシデロフォアの受容体として機能する外膜タンパク質の合成を誘導する。シデロフォア
は、鉄制限下で該細菌によって生産および分泌される小さい鉄キレート化合物である。そ
のような受容体の解明された結晶構造は22ストランドβ-バレルを示し、それはオープン
チャネルを形成しないが、N末端プラグドメインによって閉じられる(3)。リガンドと受容
体との結合後、その後の取り込みは、内膜を横切るプロトン勾配のエネルギーを必要とす
10
る能動的プロセスであり、それは、3つのタンパク質の複合体であるTonB複合体を介して
外膜中の受容体と共役する(4、5)。
【0081】
鉄獲得機構は多数のグラム陰性菌で広く研究されてきたが、細菌外膜を横切る他の必須
の重金属、例えば亜鉛およびマンガンの輸送についてはまだほとんど知られていない。こ
れらの微量元素の濃度もヒト宿主中で低く、該宿主は、例えば、メタロチオネインおよび
カルプロテクチン(calprotectin)の生産によって感染に反応し、それによって侵入病原体
への金属の利用能を減少させる(6、7)。したがって、グラム陰性病原体は、これらの金属
についての有効な獲得機構を有する可能性が高く、それは鉄獲得システムと類似している
かもしれず、していないかもしれない。
20
【0082】
Neisseria meningitidisは、無症候性で鼻咽頭粘膜にコロニーを形成することができる
偏性ヒト病原体である。たまに、該細菌は血流に入り、高い死亡率を有する髄膜炎および
敗血症を引き起こす(8)。莢膜多糖類に基づく、N. meningitidisのほとんどの病原性血清
群についてのワクチンが利用可能であるが、血清群B髄膜炎菌に対するワクチンは欠けて
いる。血清群B株の多糖莢膜はヒト糖タンパク質とのその類似性のせいで免疫原性が不十
分である(9)。ゆえに、莢膜下抗原が代替ワクチン成分として研究されている; しかし、
これらの研究は、主要な外膜タンパク質の高い抗原的変動性によって頓挫している。した
がって、TonB依存的受容体を含むマイナーな抗原に関心が移っている。
【0083】
30
鉄制限下で培養された場合、N. meningitidisは、すべて鉄の摂取に関与するラクトフ
ェリン(10)、トランスフェリン(11)、ヘモグロビン(12、13)およびエンテロバクチン(ent
erobactin)(14)のTonB依存的受容体を生産する。ホモロジー検索に基づいて、Turner et
al (15)は、3種のナイセリア株の入手可能なゲノム配列中の推定TonB依存的ファミリー(T
df)メンバーの7つの追加の遺伝子を特定した。興味深いことに、これらのtdf遺伝子のい
くつかの発現は、種々のマイクロアレイ研究(16、17)で鉄利用能によって影響されないよ
うであった。それは、それらの産物が鉄以外の金属の輸送に関与するかもしれないことを
示唆する。ここに、本発明者らは、これらの受容体の1つの合成の調節、機能およびワク
チン潜在能力を研究した。そして、この受容体が亜鉛の摂取に関与することを示す。
【0084】
40
結果
TdfIはヘム受容体ではない
TdfI (それぞれ、N. meningitidis血清群A Z2491株および血清群B MC58株のシークエン
シングされたゲノム中の遺伝子座タグNMA1161およびNMB0964)は、ナイセリアゲノム中に
存在する7つの新規推定TonB依存的受容体の1つとして以前に特定され(15)、ナイーブヒト
血清の存在下で上方制御されると見出された(18)。今日までに研究されたほとんどすべて
のTonB依存的受容体は鉄獲得に関与するので、本発明者らはTdfIが鉄複合体を輸送すると
想定した。この考えは、NMA1161のアミノ酸配列でのblast検索(19)が、ヘムの摂取のため
の外膜受容体、例えばMoraxella catarrhalisのHumAに高い配列類似性を示し(20)、41%の
同一性および58%の類似性であった事実によって強化された。
50
(20)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【0085】
TdfIの機能を評価するために、本発明者らは、HB-1と称される血清群B H44/76株の非莢
膜(non-encapsulated)誘導体のtdfI欠失突然変異体を構築した。本発明者らは、ドットブ
ロット分析によって評価された場合の、HB-1およびtdfI突然変異体に対するヘムの類似の
結合を見出し、tdfI突然変異株が、唯一の鉄供給源としてヘムを有するプレート上で依然
として生育できることを見出した。本発明者らはまた、TdfIを発現するEscherichia coli
細胞によるヘム結合の増加を見出すことはできなかった。また、本発明者らは、E. coli
ヘム栄養要求体を補完することができなかった(データは示していない)。したがって、本
発明者らは、TdfIは、ヘム受容体と相同的であるが、ヘム受容体として機能しないと仮定
した。
10
【0086】
亜鉛によるtdfIの調節
TdfIはヘム受容体ではなく、かつ鉄によって調節されると見出されないので、本発明者
らは、莢膜欠損H44/76 Neisseia meningitidis HB-1中でtdfI発現を本発明者らが検出で
きる条件を捜した。本発明者らは、複合リッチ培地であるトリプティックソイブロス(try
ptic soy broth)(TSB)中で該細菌が培養された場合に、ウエスタンブロットでTdfIを検出
することは決してできなかった(図1A、レーン1)。しかし、該細菌が合成RPMI培地中で
培養された場合、TdfIは細菌ライセート中で検出可能であった(図1A、レーン2)。検出
されたシグナルの特異性は、RPMI中で培養されたtdfIノックアウト株でのその不存在によ
って実証された(図1A、レーン3)。本発明者らは、RPMIに加えられたTSBの存在は少量で
20
さえTdfI合成に負に影響することに気付いた(図1B); TSBはtdfIの転写を抑制する化合
物を含むと思われる。本発明者らはRPMIが微量金属の供給源を含まないことに気付いたの
で、コバルト、モリブデン、マンガン、銅および亜鉛を含む微量金属の反応混液を加える
とtdfI発現が抑制されるかどうかを試験することを決定し、それは実際に事実であるよう
であった。次いで本発明者らはすべてのこれらの金属を別々に試験し、特に亜鉛が、μM
以下の濃度でさえ、tdfI発現の抑制を引き起こすことを見出した(図1C)。標準RPMIには
特定の亜鉛供給源が補充されていないので、細菌の生育に必要な利用可能な亜鉛はおそら
く水および/または培地を作製するために使用された塩中の残留物(traces)に由来する。
本発明者らは、RPMI培地中の亜鉛濃度を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって測定
し、それが約110パーツパービリオン(約1.69μM)であることを見出した。
30
【0087】
tdfIの亜鉛調節は、本発明者らがRPMI培地に特定の亜鉛キレート剤N,N,N',N'-テトラキ
ス-(2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン(TPEN)を補充した場合にさらにより明らかにな
った。TPENを培地に加えると、TdfI合成の用量依存的増加が生じた(図1D)。しかし、1
μM TPENを超える濃度は、おそらく培地からの完全亜鉛枯渇のせいで細胞増殖を完全に阻
害した。亜鉛を加えることによって生育を回復させることができた(データは示していな
い)。tdfIの亜鉛調節を、500 nM亜鉛または0.5μM TPENを補充したかまたは含まないRPMI
中で培養された培養物から得られたトータルRNAを使用するリアルタイム定量的PCR (RT-q
PCR)によって確認した。データは、亜鉛の存在下で13.8倍抑制を示し、TPENの存在下で3.
8倍上方制御を示した。添加されたTPENと亜鉛との間の差異の倍数は52.6倍であった。
40
【0088】
tdfI発現での転写制御因子Zurの役割
E. coliでは、亜鉛摂取調節因子(Zur)は、znuACB遺伝子の発現を調節することが示され
ており、該遺伝子は、ペリプラズムから細胞質への亜鉛輸送に必要なペリプラズム結合タ
ンパク質、ATPアーゼおよび不可欠な(integral)内膜成分をコードする(23)。亜鉛の存在
下で、ZurはznuACBオペロンのプロモーター中のZur結合要素(コンセンサスGAAATGTTATANT
ATAACATTTC)に結合し、それによって転写をブロックする。
【0089】
N. meningitidis MC58株のゲノム配列中で、本発明者らはE. coli zur遺伝子のホモロ
グ、すなわちNMB1266、およびznuCBAのホモログ、すなわちNMB0588、NMB0587、およびNMB
50
(21)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
0586を特定した。さらに、本発明者らは、ナイセリアtdfIの上流の領域中にE. coli Zur
結合コンセンサスに類似する配列(GtAATGTTATATaATAACAaact)およびznuC (cAAAcGTTATACa
gTAtCATaTC)(E. coliコンセンサスと同一のヌクレオチドは大文字である)を発見した。td
fI発現の調節でのZurの関与を確認するために、本発明者らはHB-1株のzur突然変異体を作
製し、実際にそれはTdfIを構成的に生産した(図2)。また、RT-qPCRは、znuAおよびtdfI
の発現でのZurの関与を示し、znuAおよびtdfI発現レベルは、zur突然変異体で、いずれも
亜鉛の存在下で培養されたその親株と比較して、それぞれ、5および34倍増加した。
【0090】
TdfIは亜鉛獲得を促進する
tdfIの発現は亜鉛の利用能によって調節されるので、TdfIは亜鉛または亜鉛含有複合体
10
の受容体として機能する可能性が高い。本発明者らは、まず、アミノ酸配列を分析し、ww
w.rostlab.orgのPROFtmb プログラムを使用してTdfIのトポロジーモデルを構築した(図3
)。TdfIは推定細胞外ループL3中の2つのシステイン残基を含む。これらのシステインがジ
スルフィド結合を形成する場合(DTTを用いるか用いないSDS-PAGEによる細菌の膜画分の本
発明者らの分析によって支持され、ここに、サンプルと該還元剤のインキュベーションに
より、おそらくジスルフィド結合の破壊のせいで電気泳動移動度のシフトが生じた)、そ
れらは、ともにヒスチジンおよびアスパラギン酸残基に富む、非常に近接したアミノ酸残
基の2つのストレッチをもたらし(図3)、それらは機能的に重要である可能性があり、そ
の理由は、E. coliのペリプラズムZnuAタンパク質でも、HisおよびAsp残基のストレッチ
が亜鉛の結合に関与するからである(25)。ゆえに、本発明者らは、TdfIが遊離亜鉛と結合
20
し、それをペリプラズムに輸送する可能性を考慮した。この仮説を試験するために、本発
明者らは、まず、TdfIが亜鉛と結合するかどうかを決定した。本発明者らは、TdfIを有す
る外膜小胞とTdfIを有さない外膜小胞とを、亜鉛に関して4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノ
ール(PAR)と競合するそれらの能力に関して比較した。TdfIを含む外膜小胞は、TdfIを含
まない小胞と比較して亜鉛の結合の約40%増加を示した(図4A)。亜鉛の輸送を試験する
ために、本発明者らは、ICP-MSを使用して、tdfIノックアウト、tonBノックアウトおよび
それらの親株を細胞内亜鉛の蓄積に関して比較した。HB-1は、tdfI突然変異体またはtonB
突然変異体より約33%多量の亜鉛を蓄積した。それは、TdfIが遊離亜鉛を輸送しかつこの
輸送がTonBシステムを必要とすることを示す(図4B)。
【0091】
30
実際にTdfIが遊離亜鉛の摂取に関与するならば、tdfI突然変異体では野生型株と比較し
て高い外部亜鉛濃度でznu遺伝子発現の脱抑制が生じることが予測される。この考えを試
験するために、本発明者らは、500 nM追加亜鉛を有するRPMI培地でtdfI突然変異体および
親株を培養した。500 nM追加亜鉛は、野生型株でtdfI発現を、完全にではないが、ほとん
ど抑制する(図1C)。次いで本発明者らは、tdfIとznuA mRNAの相対レベルをRT-qPCRによ
って測定した。tdfI突然変異体は、依然として、遺伝子発現の検出に使用されたtdfI遺伝
子の最初の437ヌクレオチドを含む。tdfI突然変異体では、18.6倍多量のtdfIおよび7.4倍
多量のznuAが発現された。それは、実際に、適用された培養条件下でtdfI突然変異体の細
胞内亜鉛濃度が親株の細胞内亜鉛濃度より低いことを示す。また、znuAノックアウト株は
亜鉛の存在下で高レベルのTdfIを発現した。それは、ZnuAが細胞中で十分な亜鉛レベルを
40
維持するために必要とされることを確認する(図4C)。ゆえに、TdfIおよびZnuAはともに
、亜鉛の輸送に関与する。
【0092】
TdfIの保存
TdfIの機能に加えて、本発明者らはまた、TdfIが汎用N. meningitidisワクチンのワク
チン候補であるかどうかを研究したい。基準の1つは、該抗原が保存されている必要があ
ることである。本発明者らは、まず、入手可能なN. meningitidisゲノムを調べ、TdfIが
成熟タンパク質の著しい97∼99%アミノ酸同一性を有することを見出した(図S1)。配列
の差異はタンパク質の全体にわたって点在し、推定細胞外ループ領域でクラスター形成し
ていない。推定細胞外ループ領域はナイセリア外膜タンパク質中で抗原的に変動性である
50
(22)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
ことがよくある(図S1)。次いで本発明者らは、異なる血清群および異なるクローン系統
由来の32種の異なるN. meningitidis単離体のパネル中のTdfIの存在を分析した。各菌株
を、500 nM亜鉛を補充したかまたは含まないRPMI培地中で培養し、H44/76のTdfIに対して
産生された抗血清でのウエスタンブロッティングによって分析した。すべての菌株は亜鉛
の存在下でTdfIの抑制を示した(図5)。
【0093】
次いで本発明者らは、他の病原性細菌に対するTdfIのホモロジーを知りたいと考えた。
本発明者らは、まず、TdfIをN. gonorrheaと比較し、これらの2つのナイセリア株の間で9
6%同一性および97%類似性を見出した。次に、本発明者らはNCBIのblastプログラムをアミ
ノ酸レベルで40%同一性のカットオフで使用して、他の病原性細菌のTdfIのホモログを検
10
索した。本発明者らは、他の病原性細菌でのホモログを特定した。それには、M. catarrh
alis、Haemophilus parasuis、Mannheimia haemolytica、Acinetobacter baumannii、Pas
teurella multocida、Bordetella pertussisおよびActinobacillus pleuropneumoniaeが
含まれ、アミノ酸レベルで平均で41%同一性および59%類似性であり、すべてのTdfIホモロ
グはHis/Asp領域を有する(図S2)。興味深いことに、B. pertussisでは、tdfIホモログ
はznuABCおよびzur遺伝子のホモログに隣接して位置する。それは、やはり、これらの遺
伝子の間の機能的関連性を示す。さらに、すべてのこれらのTdfIホモログはHisおよびAsp
リッチストレッチを含む(図S2)。
【0094】
TdfIは殺菌抗体を誘導する
20
TdfIのワクチン潜在能力を研究するために、本発明者らは、過剰発現レベルのこのタン
パク質を含むナイセリア外膜小胞でマウスを免疫化し(図6A)、得られた血清を殺菌抗体
の存在に関して検査した。本発明者らは、通常通り、TSB培地で培養された細菌に対して
血清殺菌アッセイを実施する; しかし、これらの条件下でtdfIは発現されない。したが
って、本発明者らは、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモ
ーターからTdfIを発現した菌株で殺菌活性に関して血清を検査し、IPTGを用いて培養され
た培養物とIPTGを用いずに培養された培養物を比較した。IPTGが不存在である場合、血清
の殺菌力価は<1:100であったが、細菌の培養中にIPTGが存在する場合は1:1042であった。
免疫前血清での力価もまた、<1:100であった。これらのデータは、明らかに、TdfIが殺菌
抗体を誘発できることを示す。本発明者らはまた、正常な染色体がコードするtdfI発現レ
30
ベルが補体媒介性死滅を媒介するために十分であるかどうかを研究したかった。このため
に、本発明者らは、TSB培地中でTdfIを構成的に生産しかつこの培地中で野生型株に遜色
なく生育するzurノックアウト株を用いた。
【0095】
考察
亜鉛に関する高親和性ZnuABC摂取系はN. gonorrhoeaeで以前に特定されている(30)。上
記のように髄膜炎菌ゲノム、および多数の他の細菌のゲノム中でホモログを見出すことが
できる。Salmonella entericaでは、このABC輸送体は病原性と関連付けられている(31)。
いずれの場合も、亜鉛獲得に関与する外膜受容体は特定されておらず、亜鉛はポーリンを
通って拡散すると考えられる。
40
【0096】
しかし、ヒト宿主では、遊離亜鉛レベルは、おそらく、細菌生育が受動拡散によって維
持されないほど低い。ヒト血清中の亜鉛の総量は約19μMであるが、大部分は血清タンパ
ク質、例えばアルブミンによって拘束されている(32)。ここに、本発明者らは、亜鉛によ
って調節される外膜受容体であるTdfIを特定した。700 nM亜鉛を増殖培地に加えると、Td
fI発現が完全に抑制された。TdfIの機能は、未結合(遊離)亜鉛に結合し、それを輸送する
ことである。本発明者らは、亜鉛がまず外部ループ中のHis/Aspストレッチによって拘束
され、次いでプラグドメインの上にある2つのヒスチジンを介して内部に取り入れられる
ことを予測する(図3b)。亜鉛摂取でのTonBシステムの役割の候補は、バレルからプラグ
を引き抜くことであり、この移動に伴って、2つのHis残基に結合している亜鉛はペリプラ
50
(23)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
ズム中に輸送され、ペリプラズムでペリプラズム結合タンパク質ZnuAによって捕らえられ
る。
【0097】
興味深いことに、tdfIおよびznuA発現の類似の調節がN. gonorrhoeaeを使用するマイク
ロアレイ研究で報告された(33)。tdfIホモログNGO1205およびznuAホモログNGO0168は、NG
O0542遺伝子を欠く突然変異体で上方制御された。この遺伝子は、該研究で、perRとして
注釈された。それは、グラム陽性生物で見出されるマンガン依存的過酸化物応答性調節因
子へのそのホモロジーのせいである(34)。しかし、これは、本発明者らがzurと注釈した
ものと同一の遺伝子である。zur注釈の方が明らかに正確である。その理由は、本発明者
らは、zurの不存在または亜鉛の不存在による同一の調節を示すからである。perRではな
10
く注釈zurのさらなる証拠はN. gonorrhoeaeでの同一の研究に由来する。淋菌性perR突然
変異体を用いて実施されたマイクロアレイはリボソームタンパク質L31およびL36の上方制
御も示した。ナイセリアゲノムは、これらのタンパク質をコードする遺伝子のそれぞれに
ついての2コピーを含み、各タンパク質の一形式は亜鉛リボンモチーフを含む。亜鉛利用
能は、B subtilisで発現されるL31/L36タンパク質の型をコントロールする重要な因子で
あると見出された(34)。淋菌性perR突然変異体では、特に亜鉛リボンを欠くL31およびL36
パラログ(paralogs)の発現が誘導され、それは、perR突然変異体での亜鉛調節の破壊を強
く示す。さらに、別の研究(17)では、酸化的ストレスに対する応答を特定するマイクロア
レイが実施され、perRもPerR研究(33)で特定されたいずれの遺伝子も脱抑制されなかった
。本発明者らは、tdfIおよびznuAの発現に対するマンガンのいかなる調節的影響も観察し
20
ない。
【0098】
以前に、tdfI発現は、活性な補体の存在下で誘導されることが報告された(18)。このマ
イクロアレイ研究では、血清および加熱不活性化血清の存在下で培養されたN. meningiti
disの発現プロファイルが比較され、TdfIが未処理の血清の存在下で23倍脱抑制されるこ
とが見出された。亜鉛と補体調節との関連性は直ちに明らかなわけではないかもしれない
。類似の調節回路が発見されたことの見込まれる説明は、アレイ研究での細菌が、BSAを
含むRMPI中で前培養されたことである。アルブミンは亜鉛をキレートすることが知られ、
したがって、前培養条件は、亜鉛が厳しく制限されていたかもしれない。ヒト血清の加熱
処理はアルブミンから亜鉛を放出させ、それによってtdfI発現が抑制される。この説明は
30
、細菌培養中にBSAがTSB培地に加えられるとTdfI発現が誘導される事実によって強化され
る(データは示していない)。
【0099】
Hagen and Cornelissenによる研究(35)は、任意のTdfタンパク質がヒト上皮細胞でのN.
gonorrhoeaeの細胞内生存に必須であるかどうかを調べた。著者らはまた、TdfIホモログ
ノックアウト(NG1205)を試験したが、この突然変異体の細胞内生存は影響を受けなかった
。
【0100】
TdfIの保存は著しい; 配列決定されたN. meningitidis株の間の同一性は98.6%であり
、成熟タンパク質のアミノ酸レベルでの類似性は99.2%である。TdfIタンパク質は、試験
40
されたすべての髄膜炎菌で見出され、すべての菌株は亜鉛によって調節されるtdfI発現を
示した。シークエンシングされた髄膜炎菌株および淋菌株のTdfIタンパク質の間で、アミ
ノ酸レベルでの96.1%同一性および97.3%類似性が存在する。TdfI配列間の差異はタンパク
質全体にわたって点在し、特定のループにおいてクラスターを形成していない。本発明者
らはTdfIと他の細菌でのホモログとの平均41%アミノ酸同一性を見出し、全例でHis/Aspス
トレッチが保存されている。面白いことに、TdfIホモログは、ヒトおよび動物の気道に存
在する細菌種で特に見出された。おそらく気道の粘膜層では、未結合亜鉛濃度が、ポーリ
ンを通る十分な受動拡散を可能にしないほど低く、したがってTdfIは細菌生育および生存
に必須になる。TdfIは細胞内生存に必須ではない(35)が、遊離亜鉛濃度がやはり非常に低
い血清および髄液(liquor)などの体液中では必須でありうる。また、本発明者らは、TdfI
50
(24)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
が、さらに、気道、血清およびまたは脳脊髄液中で利用可能な複合型の亜鉛を認識するこ
とを無視することはできない。
【0101】
本発明者らは、TdfIがマウスで殺菌抗体を誘導できることおよびこれらの抗体がTdfIを
特異的に標的にすることをさらに示した。また、本発明者らは、染色体座由来のTdfIを発
現する細菌を使用した場合に殺菌活性を検出することができた。それは、感染時の抗原濃
度が、N. meningitidisの除去を可能にするのに十分に高いことを示す。
【0102】
高レベルの保存およびTdfI特異的殺菌抗体を産生する可能性により、TdfIは優れたワク
チン候補になる。
10
【0103】
材料および方法
使用される略語: IPTG, イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド; PAR, 4-(2ピリジルアゾ)レゾルシノール; RPMI, Roswell Park Memorial Institute培地1640; Td
f, TonB依存的ファミリー; TPEN, N,N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジ
アミン; TSB, トリプティックソイブロス; ICP-MS, 誘導結合プラズマ質量分析。
【0104】
菌株および培養条件
図5に列挙されるナイセリア株は実験室のコレクション由来である。特に指定される場
合を除き、HB-1株およびその突然変異体で実験を実施した。HB-1は血清群B H44/76株の非
20
莢膜誘導体である(Bos & Tommassen, 2005)。N. meningitidisを、Vitox (Oxoid)および
適切な場合には抗生物質(カナマイシン, 100μg/ml; クロラムフェニコール, 10μg/ml)
を含むGC寒天(Oxoid)プレート上でロウソクびん中で37℃で培養した。液体培養物を、プ
ラスチックフラスコ中のTSB (Difco)またはRPMI (Sigma)中で37℃で振とうしながら培養
した。IPTG、亜鉛、およびTPENを指定の濃度で加えた。金属を反応混液(340 nM ZnSO4, 1
60 nM Na2MoO4, 800 nM MnCl2, 80 nM CoCl2および80 nM CuSO4終濃度)として加えるか、
または同濃度の単一の化合物を、特に指定されない限り反応混液の場合と同様に加えた。
塩化第二鉄を終濃度8μMとして加えた。E. coli 株DH5αおよびTOP10F' (Invitrogen)を
通常のクローニングに使用し、BL21(DE3) (Invitrogen)を発現に使用した。E. coli hemA
突然変異体を使用して、TdfIのヘム輸送を評価した((22)。適切な場合には100μg/mlアン
30
ピシリン、50μg/mlカナマイシン、または25μg/mlクロラムフェニコールを補充したLuri
a-Bertani培地でE. coliを繁殖させた。E. coli ヘム栄養要求体C600 hemA::kan (22)の
場合、培地に5-アミノレブリン酸を補充した。
【0105】
プラスミドおよび突然変異体の構築
すべてのプライマーは、NMB0964 (tdfI)、NMB1730 (tonB)、NMN0586 (znuA)、NMB1266
(zur)を使用してMC58ゲノム配列上で設計した。
【0106】
E. coliでの高レベルタンパク質生産では、制限部位NdeIおよびBamHI (太字下線)をそ
れぞれ保持するプライマー0964-F-GATCATATGCATGAAACTGAGCAATCGGTG-および0964-R -GATG
40
GATCCTTAAATCTTCACGTTCACGCCGCC-を使用するPCRによってH44/76株の染色体DNAから、シグ
ナル配列コード部分を有さないtdfI遺伝子を増幅した。得られた産物をpCRII-TOPOに製造
元の推奨(Invitrogen)にしたがってクローニングし、pCRII-tdfIを得た。それを、NdeI/B
amHI制限部位を使用してpET11a (Novagen)にサブクローニングし、プラスミドpET11a-tdf
Iを得た。
【0107】
tdfI欠失構築物を得るために、プライマーKan-R -TGACGCGTCTCGACGCTGAGGTCTGC-および
Kan-F -TGTGTACAGTCGACTTCAGACGGCCACG-を用いるPCRによってカナマイシン耐性遺伝子カ
セット(36)を増幅し、MluIおよびBsrGI消化後に同酵素で消化されたpCRII-tdfIにクロー
ニングした。得られた構築物、pCRII-tdfI::kanでは、カナマイシン耐性カセットはtdfI
50
(25)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
のbp 437と1344との間の領域と置き換わる。0964-Rおよび0964-Fプライマーを用いるPCR
でpCRII-tdfI::kanを使用し、得られた産物を使用してHB-1を形質転換した(37)。正しい
遺伝子置換に関してPCRによってカナマイシン耐性コロニーを試験した。
【0108】
H44/76由来のtdfI遺伝子全体を、それぞれNdeIおよびAatIIの認識部位(太字下線)を含
むプライマーTdfI-F -GCATCATATGGCACAAACTACACTCAAACCC-およびTdfI-R -ATGACGTCTTAAAA
CTTCACGTTCACGCCGCC-で増幅した。得られたPCR産物を、NdeIおよびAatII制限部位を使用
してpCRII-TOPOにクローニングし、pEN11-pldA (36)にサブクローニングした。得られた
プラスミド、pEN11-tdfIはナイセリア複製可能プラスミドを構成し、該プラスミドはlacI
Q
遺伝子およびtdfIの制御された発現のための直列型lac/tacプロモーターを含む。
10
【0109】
一方の断片用のプライマーtonB-1 (GTACGATGATTGTGCCGACC)、AccI制限部位(太字下線)
を有するtonB-2 (ACTTTAAACTCCGTCGACGCAAGTCGACTGCGGGGGTTAA)、および、他方の断片用
の制限部位AccI (太字下線)を有するtonB-3 (TTAACCCCCGCAGTCGACTTGCGTCGACGGAGTTTAAAG
T)およびtonB-4 (GCCATACTGTTGCGGATTTGA)を使用してtonB遺伝子の上流および下流のDNA
断片を増幅することによってtonBノックアウトを作製するための構築物を作製した。2つ
の断片をそれぞれpCRII-TOPOにクローニングし、次いで導入された制限部位AccIおよびpC
RII-TOPOベクター中のSpeI部位を使用して互いにライゲートした。次いでAccI部位を使用
して、AccI部位を含むプライマーを用いるPCR増幅によってpCRII-TOPOに以前にクローニ
ングされたpKD3 (38)由来のクロラムフェニコールトランスアセチラーゼ遺伝子をクロー
20
ニングした。得られた構築物を、プライマーtonB-1およびtonB-4を使用するPCRによって
増幅し、この線状断片を使用してN. meningitidis HB-1を形質転換した。
【0110】
同じストラテジーにしたがってzur遺伝子をノックアウトした。この場合、プライマー:
zur-1 (TTCGCCGATGGCGGAATACA)、太字(下線)の制限部位AccIを有するzur-2 (CTTTCAGCG
CAAAGTCGACTCCGTCGACGCGTGCCTGTTC)、太字(下線)の制限部位AccIを有するzur-3 (GAACAGG
CACGCGTCGACGGAGTCGACTTTGCGCTGAAAG)およびzur-4 (TCCTATTGCGCAATACCCCC)を用いて上流
および下流の断片を増幅した。
【0111】
N. meningiditis H44/76株の、CE2001と称されるporA誘導体(39)をpMF121で形質転換し
30
、莢膜遺伝子座全体の欠失および切断型外核を有するリポ多糖の生産を生じさせた(36)。
N. meningitidisのtonB、exbBおよびexbD遺伝子を含むpLAFR派生プラスミドは以前に説明
されている((13)。
【0112】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析
6時間培養された細菌から細胞ライセートを調製した。細胞をOD600nm 1に希釈し、ペレ
ットにし、2% SDSおよび5% 2-メルカプトエタノールを含むSDS-PAGEサンプルバッファー1
00μl中で煮沸した。標準SDS-PAGEによってタンパク質を分離した。ゲルをクーマシーブ
リリアントブルーで染色するか、または25 mM Tris-HCl、192 mMグリシン、20%メタノー
ル中でウェットトランスファーシステム(Biorad)を使用してニトロセルロースメンブレン
40
(Protran)にタンパク質をトランスファーした。0.1% Tween 20および0.5% Protifar (Nut
ricia)を含むPBS中で1時間メンブレンをブロックした。ブロットをブロッキングバッファ
ー中で抗体とインキュベートした。ヤギ抗ウサギIgGペルオキシダーゼコンジュゲート二
次抗体(Biosource)および強化化学発光検出 (Pierce)を使用して抗体結合を検出した。
【0113】
免疫化
pET11a-tdfIを含むBL21(DE3)細胞をLB中でOD A600 0.6まで培養し、その後、1 mM IPTG
を加え、培養を2時間継続した。封入体に蓄積したTdfIタンパク質を、(40)に記載のよう
に単離し、Eurogentecで、精製されたタンパク質を使用してウサギを免疫化した。得られ
た抗血清SN1042を1/5000希釈で使用した。
50
(26)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【0114】
1 mM IPTGの存在または不存在下で培養されたCE1523 /pEN11-tdfI株の外膜小胞をデオ
キシコール酸抽出(41)によって調製し、それを使用して、(32)に記載のようにマウスを免
疫化した。群あたり10マウス由来の血清を42日後に収集してプールした。実験は、該当す
るBelgiumの国の指針およびGlaxoSmithKline Biologicalsの企業方針にしたがった。
【0115】
RT-qPCR
Applied Biosystems 7900HT Fast Real-Time PCR SystemおよびSYBR green master mix
(Applied Biosystems)を製造元の推奨にしたがって使用してRT-qPCRを実施した。約4x10
9
ナイセリア細胞を3 ml Trizol (Invitrogen)に再懸濁することによってトータルRNAを単
10
離した。クロロホルム600μlの添加および遠心分離後、上相を75%エタノールと1:1混合し
た。これをnucleospin RNA IIカラム(Macherey-Nagel)に積載し、次いでnucleospin RNA
IIキット由来のバッファーR3で洗浄し、水100μlで溶出させた。次いでRNAをTurbo DNA F
ree (Ambion)で処理して、DNAを含まないRNAを得た。cDNAを作製するために、transcript
orハイフィデリティcDNA合成キット(Roche)を製造元の推奨にしたがって使用してランダ
ムヘキサマーから1μgのトータルRNAを逆転写した。コントロールとして、並行サンプル
を調製し、該サンプルでは、逆転写酵素を反応混合物から除外した。PCRを96ウェルプレ
ート(Applied Biosystems)で25μl容量で3回重複して実施した。以下のサイクルパラメー
タ: 酵素活性化のための95℃10分、その後の95℃15秒および60℃1分の40サイクルを用い
た。融解プロットを実施して、シグナルが特定のアンプリコンから発生したことを保証し
20
た。コンパラティブサイクルスレショルド法(比較サイクル閾値法)(Applied Biosystems)
を使用してデータ解析を実施し、相対発現レベルを決定した。rmpM転写物を使用してすべ
てのデータを標準化した。
【0116】
ICP-MS
Utrecht UniversityのGeochemistry部門の統合実験室でICP-MSによってトータル亜鉛濃
度を測定した。N. meningitidis株をRPMI培地中で0.1の出発OD A550から6時間培養し; この時点でサンプルを採取し、残りの培養物を1μM亜鉛の存在下でさらに1時間培養した
。この時間の後、第2のサンプルを採取した。両サンプル(7 ml)をリン酸緩衝生理食塩水
で洗浄し、水に再懸濁し、56℃で1時間死滅させ、-80℃で凍結した。次いでサンプルを解
30
凍し、超音波処理し、0.22μmフィルター(Millipore)に通してろ過した。
【0117】
PAR競合アッセイ
PAR競合アッセイは比色反応であり、該反応では、PAR-亜鉛複合体のオレンジ色は、PAR
から亜鉛を放出させることができるタンパク質または化学物質の存在下で黄色に変化する
。該アッセイを(42)に記載のように実施し、以下の改変を加えた: 50μMの代わりに、本
発明者らは30μM亜鉛を加え、本発明者らはまずPAR-亜鉛溶液を測定し、次いで外膜小胞
をキュベットに加え、溶液を再測定した。このように、本発明者らは、時間内にUVによっ
て誘発される潜在的な色の変化を回避した。そしてデータをまずPAR-亜鉛測定に標準化し
、次いでPAR単独のサンプルに標準化して外膜小胞の結合値を得た。示される結果は、標
40
準化された500 nmでの吸収データである。
【0118】
血清殺菌アッセイ
野生型H44/76をpEN11-tdfIで形質転換し、振とうフラスコ中の1 mM IPTGを含むか含ま
ない125μM FeCl3を含むTSB中に37℃で3時間、OD A550 0.5に達するまで、一晩培養され
たプレートから接種した。試験対象の血清をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(GIBCO)、0.3%
BSA中で1:100希釈し、次いで滅菌U底96ウェルマイクロタイタープレート(NUNC)中の50μl
容量中で連続希釈した(2倍希釈ステップ、8回希釈)。細菌をHBSS、0.3% BSA中に希釈して
、約13,000 CFU/mlを得た。懸濁液の37.5μlサンプルを血清希釈液に加えた。マイクロタ
イタープレートを振とうしながら37℃で15分インキュベートした。次いで、12.5μlの子
50
(27)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
ウサギ補体(Pelfreez)または、血清の毒性のコントロールとして、加熱不活性化(56℃で4
5分)補体をウェルに加えた。振とうしながら37℃で1時間インキュベートした後、マイク
ロタイタープレートを氷上に置き、死滅を停止させた。各ウェルから、20μlをGCプレー
ト上にスポットし、液滴がプレートに流れ落ちるようにプレートを傾けた。一晩のインキ
ュベーション後、コロニーをカウントし、死滅のパーセンテージを算出した。殺菌力価を
>50%死滅を生じさせる最も高い血清希釈として定義した。
【0119】
参考文献
1. Ratledge, C. 2007. Iron metabolism and infection. Food. Nutr. Bull. 28:S515523.
10
2. Wandersman, C., and P. Delepelaire. 2004. Bacterial iron sources: from sider
ophores to hemophores. Annu. Rev. Microbiol. 58:611-647.
3. Wiener, M.C. 2005. TonB-dependent outer membrane transport: going for Baroqu
e? Curr. Opin. Struct. Biol. 15:394-400.
4. Postle, K. 1993. TonB protein and energy transduction between membranes. J.
Bioenerg. Biomembr. 25:591-601.
5. Braun, V. 2006. Energy transfer between biological membranes. ACS Chem. Biol
. 1:352-354.
6. De, S.K., M.T. McMaster, and G.K. Andrews. 1990. Endotoxin induction of muri
ne metallothionein gene expression. J. Biol. Chem. 265:15267-15274.
20
7. Corbin, B.D., E.H. Seeley, A. Raab, J. Feldmann, M.R. Miller, V.J. Torres, K
.L. Anderson, B.M. Dattilo, P.M. Dunman, R. Gerads, R.M. Caprioli, W. Nacken, W.
J. Chazin, and E.P. Skaar. 2008. Metal chelation and inhibition of bacterial gro
wth in tissue abscesses. Science. 319:962-965.
8. Stephens, D.S., and S.M. Zimmer. 2002. Pathogenesis, therapy, and prevention
of meningococcal sepsis. Curr. Infect. Dis. Rep. 4:377-386.
9. Finne, J., M. Leinonen, and P.H. Makela. 1983. Antigenic similarities betwee
n brain components and bacteria causing meningitis. Implications for vaccine dev
elopment and pathogenesis. Lancet. 2:355-357.
10. Pettersson, A., A. Maas, and J. Tommassen. 1994. Identification of the iroA
30
gene product of Neisseria meningitidis as a lactoferrin receptor. J. Bacteriol.
176:1764-1766.
11. Legrain, M., V. Mazarin, S.W. Irwin, B. Bouchon, M.J. Quentin-Millet, E. Ja
cobs, and A.B. Schryvers. 1993. Cloning and characterization of Neisseria mening
itidis genes encoding the transferrin-binding proteins Tbp1 and Tbp2. Gene. 130:
73-80.
12. Lewis, L.A., E. Gray, Y.P. Wang, B.A. Roe, and D.W. Dyer. 1997. Molecular c
haracterization of hpuAB, the haemoglobin-haptoglobin-utilization operon of Neis
seria meningitidis. Mol. Microbiol. 23:737-749.
13. Stojiljkovic, I., V. Hwa, L. de Saint Martin, P. O'Gaora, X. Nassif, F. Hef
40
fron, and M. So. 1995. The Neisseria meningitidis haemoglobin receptor: its role
in iron utilization and virulence. Mol. Microbiol. 15:531-541.
14. Carson, S.D., P.E. Klebba, S.M. Newton, and P.F. Sparling. 1999. Ferric ent
erobactin binding and utilization by Neisseria gonorrhoeae. J. Bacteriol. 181:28
95-2901.
15. Turner, P.C., C.E. Thomas, I. Stojiljkovic, C. Elkins, G. Kizel, D.A. Ala'A
ldeen, and P.F. Sparling. 2001. Neisserial TonB-dependent outer-membrane protein
s: detection, regulation and distribution of three putative candidates identifie
d from the genome sequences. Microbiology. 147:1277-1290.
16. Ducey, T.F., M.B. Carson, J. Orvis, A.P. Stintzi, and D.W. Dyer. 2005. Iden
50
(28)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
tification of the iron-responsive genes of Neisseria gonorrhoeae by microarray a
nalysis in defined medium. J. Bacteriol. 187:4865-4874.
17. Grifantini, R., E. Frigimelica, I. Delany, E. Bartolini, S. Giovinazzi, S.
Balloni, S. Agarwal, G. Galli, C. Genco, and G. Grandi. 2004. Characterization o
f a novel Neisseria meningitidis Fur and iron-regulated operon required for prot
ection from oxidative stress: utility of DNA microarray in the assignment of the
biological role of hypothetical genes. Mol. Microbiol. 54:962-979.
18. Dove, J.E., K. Yasukawa, C.R. Tinsley, and X. Nassif. 2003. Production of t
he signalling molecule, autoinducer-2, by Neisseria meningitidis: lack of eviden
ce for a concerted transcriptional response. Microbiology. 149:1859-1869.
10
19. Altschul, S.F., T.L. Madden, A.A. Schaffer, J. Zhang, Z. Zhang, W. Miller,
and D.J. Lipman. 1997. Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein d
atabase search programs. Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.
20. Furano, K., and A.A. Campagnari. 2004. Identification of a hemin utilizatio
n protein of Moraxella catarrhalis (HumA). Infect. Immun. 72:6426-6432.
21. Mazoy, R., and M.L. Lemos. 1996. Identification of heme-binding proteins in
the cell membranes of Vibrio anguillarum. FEMS Microbiol. Lett. 135:265-270.
22. Ghigo, J.M., S. Letoffe, and C. Wandersman. 1997. A new type of hemophore-d
ependent heme acquisition system of Serratia marcescens reconstituted in Escheri
chia coli. J. Bacteriol. 179:3572-3579.
20
23. Patzer, S.I., and K. Hantke. 1998. The ZnuABC high-affinity zinc uptake sys
tem and its regulator Zur in Escherichia coli. Mol. Microbiol. 28:1199-1210.
24. Ferguson, A.D., E. Hofmann, J.W. Coulton, K. Diederichs, and W. Welte. 1998
. Siderophore-mediated iron transport: crystal structure of FhuA with bound lipo
polysaccharide. Science. 282:2215-2220.
25. Yatsunyk, L.A., J.A. Easton, L.R. Kim, S.A. Sugarbaker, B. Bennett, R.M. Br
eece, Vorontsov, II, D.L. Tierney, M.W. Crowder, and A.C. Rosenzweig. 2008. Stru
cture and metal binding properties of ZnuA, a periplasmic zinc transporter from
Escherichia coli. J. Biol. Inorg. Chem. 13:271-288.
26. Bentley, S.D., G.S. Vernikos, L.A. Snyder, C. Churcher, C. Arrowsmith, T. C
30
hillingworth, A. Cronin, P.H. Davis, N.E. Holroyd, K. Jagels, M. Maddison, S. Mo
ule, E. Rabbinowitsch, S. Sharp, L. Unwin, S. Whitehead, M.A. Quail, M. Achtman,
B. Barrell, N.J. Saunders, and J. Parkhill. 2007. Meningococcal genetic variati
on mechanisms viewed through comparative analysis of serogroup C strain FAM18. P
LoS Genet. 3:e23.
27. Dempsey, J.A., W. Litaker, A. Madhure, T.L. Snodgrass, and J.G. Cannon. 199
1. Physical map of the chromosome of Neisseria gonorrhoeae FA1090 with locations
of genetic markers, including opa and pil genes. J. Bacteriol. 173:5476-5486.
28. Parkhill, J., M. Achtman, K.D. James, S.D. Bentley, C. Churcher, S.R. Klee,
G. Morelli, D. Basham, D. Brown, T. Chillingworth, R.M. Davies, P. Davis, K. De
40
vlin, T. Feltwell, N. Hamlin, S. Holroyd, K. Jagels, S. Leather, S. Moule, K. Mu
ngall, M.A. Quail, M.A. Rajandream, K.M. Rutherford, M. Simmonds, J. Skelton, S.
Whitehead, B.G. Spratt, and B.G. Barrell. 2000. Complete DNA sequence of a sero
group A strain of Neisseria meningitidis Z2491. Nature. 404:502-506.
29. Tettelin, H., N.J. Saunders, J. Heidelberg, A.C. Jeffries, K.E. Nelson, J.A
. Eisen, K.A. Ketchum, D.W. Hood, J.F. Peden, R.J. Dodson, W.C. Nelson, M.L. Gwi
nn, R. DeBoy, J.D. Peterson, E.K. Hickey, D.H. Haft, S.L. Salzberg, O. White, R.
D. Fleischmann, B.A. Dougherty, T. Mason, A. Ciecko, D.S. Parksey, E. Blair, H.
Cittone, E.B. Clark, M.D. Cotton, T.R. Utterback, H. Khouri, H. Qin, J. Vamathev
an, J. Gill, V. Scarlato, V. Masignani, M. Pizza, G. Grandi, L. Sun, H.O. Smith,
50
(29)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
C.M. Fraser, E.R. Moxon, R. Rappuoli, and J.C. Venter. 2000. Complete genome se
quence of Neisseria meningitidis serogroup B strain MC58. Science. 287:1809-1815
.
30. Chen, C.Y., and S.A. Morse. 2001. Identification and characterization of a
high-affinity zinc uptake system in Neisseria gonorrhoeae. FEMS Microbiol. Lett.
202:67-71.
31. Ammendola, S., P. Pasquali, C. Pistoia, P. Petrucci, P. Petrarca, G. Rotili
o, and A. Battistoni. 2007. The high affinity Zn2+ uptake system ZnuABC is requi
red for bacterial zinc homeostasis in intracellular environments and contributes
to virulence of Salmonella enterica. Infect. Immun. 75:5867-5876.
10
32. Stewart, A.J., C.A. Blindauer, S. Berezenko, D. Sleep, and P.J. Sadler. 200
3. Interdomain zinc site on human albumin. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 100:37013706.
33. Wu, H.J., K.L. Seib, Y.N. Srikhanta, S.P. Kidd, J.L. Edwards, T.L. Maguire,
S.M. Grimmond, M.A. Apicella, A.G. McEwan, and M.P. Jennings. 2006. PerR contro
ls Mn-dependent resistance to oxidative stress in Neisseria gonorrhoeae. Mol. Mi
crobiol. 60:401-416.
34. Nanamiya, H., G. Akanuma, Y. Natori, R. Murayama, S. Kosono, T. Kudo, K. Ko
bayashi, N. Ogasawara, S.M. Park, K. Ochi, and F. Kawamura. 2004. Zinc is a key
factor in controlling alternation of two types of L31 protein in the Bacillus su
20
btilis ribosome. Mol. Microbiol. 52:273-283.
35. Hagen, T.A., and C.N. Cornelissen. 2006. Neisseria gonorrhoeae requires exp
ression of TonB and the putative transporter TdfF to replicate within cervical e
pithelial cells. Mol. Microbiol. 62:1144-1157.
36. Bos, M.P., B. Tefsen, P. Voet, V. Weynants, J.P.M. van Putten, and J. Tomma
ssen. 2005. Function of neisserial outer membrane phospholipase A in autolysis a
nd assessment of its vaccine potential. Infect. Immun. 73:2222-2231.
37. Voulhoux, R., M.P. Bos, J. Geurtsen, M. Mols, and J. Tommassen. 2003. Role
of a highly conserved bacterial protein in outer membrane protein assembly. Scie
nce. 299:262-265.
30
38. Datsenko, K.A., and B.L. Wanner. 2000. One-step inactivation of chromosomal
genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
97:6640-6645.
39. Tommassen, J., P. Vermeij, M. Struyve, R. Benz, and J.T. Poolman. 1990. Iso
lation of Neisseria meningitidis mutants deficient in class 1 (PorA) and class 3
(PorB) outer membrane proteins. Infect. Immun. 58:1355-1359.
40. Dekker, N., K. Merck, J. Tommassen, and H.M. Verheij. 1995. In vitro foldin
g of Escherichia coli outer-membrane phospholipase A. Eur. J. Biochem. 232:214-2
19.
41. Weynants, V.E., C.M. Feron, K.K. Goraj, M.P. Bos, P.A. Denoel, V.G. Verlant
, J. Tommassen, I.R. Peak, R.C. Judd, M.P. Jennings, and J.T. Poolman. 2007. Add
itive and synergistic bactericidal activity of antibodies directed against minor
outer membrane proteins of Neisseria meningitidis. Infect. Immun. 75:5434-5442.
42. Lim, K.H., C.E. Jones, R.N. vanden Hoven, J.L. Edwards, M.L. Falsetta, M.A.
Apicella, M.P. Jennings, and A.G. McEwan. 2008. Metal binding specificity of th
e MntABC permease of Neisseria gonorrhoeae and its influence on bacterial growth
and interaction with cervical epithelial cells. Infect. Immun. 76:3569-3576。
【0120】
表1. 配列決定されたナイセリア株での成熟TdfIタンパク質配列の保存
40
(30)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【表1】
10
20
30
40
(31)
【図1】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
JP 2012-501988 A 2012.1.26
(32)
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
JP 2012-501988 A 2012.1.26
(33)
【図11】
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【図12】
【配列表】
2012501988000001.app
【手続補正書】
【提出日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイセリア種細菌から調製された、単離された外膜小胞、ここで、該ナイセリア種細菌
は、被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘導する小胞の生産を提供するために十
分なレベルのNMB0964ポリペプチド(これはN. meningitidis MC58株において図S1および配
列番号19に示す配列を有するものである)を生産するものである、および製薬的に許容さ
れる賦形剤を含む免疫原性組成物であって、
(i) 前記ナイセリア種細菌がZurリプレッサー(NMB1266)の機能的発現の破壊によって遺
伝子改変されている、および/または
(ii) 前記ナイセリア種細菌がZurリプレッサーに結合しない異種プロモーターからのNMB
0964ポリペプチドの発現を提供するように遺伝子改変されている、
前記免疫原性組成物。
【請求項2】
異種プロモーターがナイセリア種細菌での、NMB0964遺伝子の非抑制内因性プロモータ
ーより強力なプロモーターである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
(34)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
異種プロモーターがIPTG誘導性lacプロモーターである、請求項1または2に記載の免
疫原性組成物。
【請求項4】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、トリプティッ
クソイブロス(TSB)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベル
より大きい、請求項1∼3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、Roswell Park
Memorial Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって
作製されるレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項1∼3のいずれか1項に記載の
免疫原性組成物。
【請求項6】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、1μM TPEN (N,
N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)を含むRoswell Park Memorial
Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製され
るレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項1∼3のいずれか1項に記載の免疫原性
組成物。
【請求項7】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、5、4、3、2、1
、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+し
か有さない培地中でN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベルと同じかまたは
それより大きい、請求項1∼3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
ナイセリア種細菌がNeisseria meningitidis、またはNeisseria meningitidis血清群B
である、請求項1∼7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
ナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している、請求項1∼8のいずれか1項に記載の
免疫原性組成物。
【請求項10】
siaD遺伝子の機能的発現の破壊によってナイセリア種細菌の莢膜多糖類が欠損している
、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
ナイセリア種細菌のmsbBおよび/またはhtrB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請
求項1∼10のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
ナイセリア種細菌の以下の遺伝子、すなわちPorA、PorB、OpA、OpC、PilC、またはFrpB
の1種以上の発現が破壊されている、請求項1∼11のいずれか1項に記載の免疫原性組
成物。
【請求項13】
ナイセリア種細菌のlgtB遺伝子の機能的発現が破壊されている、請求項1∼12のいず
れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
ナイセリア種細菌が免疫型L2またはL3である、請求項1∼13のいずれか1項に記載の
免疫原性組成物。
【請求項15】
外膜小胞が、0∼0.5、0.02∼0.4、0.04∼0.3、0.06∼0.2、または0.08∼0.15 %の界面
活性剤、例えばデオキシコール酸を用いて、例えば約または厳密に0.1%のデオキシコール
酸を用いて抽出することによって単離される、請求項1∼14のいずれか1項に記載の免
疫原性組成物。
【請求項16】
(35)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
以下のステップ、
NMB0964ポリペプチド(これはN. meningitidis MC58株において図S1および配列番号19に示
す配列を有するものである)を生産するナイセリア種細菌を培養するステップ、ここで、N
MB0964ポリペプチドは、被験体に投与された場合に抗NMB0964抗体を誘導する外膜小胞の
生産を提供するために十分なレベルで生産され、
培養された細菌から外膜小胞を調製するステップ、および
外膜小胞を製薬的に許容される賦形剤と組み合わせて、被験体への投与に好適な免疫原性
組成物を得るステップ
を含む、免疫原性組成物の製造方法であって、
(i)前記ナイセリア種細菌がZurリプレッサー(NMB1266)の機能的発現の破壊によって遺伝
子改変されている、および/または
(ii) 前記ナイセリア種細菌がZurリプレッサーに結合しない異種プロモーターからのNMB0
964ポリペプチドの発現を提供するように遺伝子改変されている、および/または
(iii) 前記ナイセリア種細菌の培養が、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4
、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+しか有さない培地中で行われる、ま
たは
(iv) 前記ナイセリア種細菌の培養が、Zn2+キレート剤を含む培地中で行われる、
前記方法。
【請求項17】
異種プロモーターがナイセリア種細菌での、NMB0964遺伝子の非抑制内因性プロモータ
ーより強力なプロモーターである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
異種プロモーターがIPTG誘導性lacプロモーターである、請求項16または17に記載
の方法。
【請求項19】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、トリプティッ
クソイブロス(TSB)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベル
より大きい、請求項16∼18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、Roswell Park
Memorial Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって
作製されるレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項16∼18のいずれか1項に記
載の方法。
【請求項21】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、1μM TPEN (N,
N,N',N'-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン)を含むRoswell Park Memorial
Institute培地1640 (RPMI)中で培養されたN. meningitidis H44/76株によって作製され
るレベルと同じかまたはそれより大きい、請求項16∼18のいずれか1項に記載の方法
。
【請求項22】
ナイセリア種細菌によって生産されるNMB0964ポリペプチドのレベルが、5、4、3、2、1
、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05または0.01μM未満の遊離Zn2+し
か有さない培地中でN. meningitidis H44/76株によって作製されるレベルと同じかまたは
それより大きい、請求項16∼18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
Zn2+キレート剤が0.01∼100、0.1∼10、0.3∼5、または0.5∼1μMの濃度で培地中に存
在する、請求項16∼18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
培地中に存在するZn2+キレート剤がTPENである、請求項16∼18および23のいずれ
か1項に記載の方法。
(36)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【請求項25】
ナイセリア種細菌が請求項8∼14のいずれか1項に規定されるものである、請求項1
6∼24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
外膜小胞を調製するステップを、0∼0.5、0.02∼0.4、0.04∼0.3、0.06∼0.2、または0
.08∼0.15 %の界面活性剤、例えばデオキシコール酸を用いて、例えば約または厳密に0.1
%のデオキシコール酸を用いて抽出することによって実行する、請求項16∼25のいず
れか1項に記載の方法。
【請求項27】
界面活性剤を使用せずに外膜小胞を調製するステップを実行する、請求項16∼25の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項16に記載の方法により得ることのできる免疫原性組成物。
【請求項29】
ナイセリアに対する免疫応答を誘発する方法であって、請求項1∼15の免疫原性組成
物の免疫学的有効量を哺乳類に投与するステップを含むか、または請求項16∼27のい
ずれか1項に記載の方法を実施して、得られた免疫原性組成物の免疫学的有効量を哺乳類
に投与することによる、前記方法。
【請求項30】
ナイセリア疾患の予防のためのワクチンの製造における、請求項1∼15のいずれか1
項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項31】
ナイセリア疾患、例えばN. meningitidisまたはN. meningitidis血清群Bの予防のため
のワクチンであって、請求項1∼15の免疫原性組成物を含むか、または請求項16∼2
7のいずれか1項に記載の方法によって製造される、前記ワクチン。
【請求項32】
以下の配列、
と50、60、70、80、90、95、99%以上、または100%の配列同一性を共有するペプチド配列
を含むポリペプチドまたは該配列由来の7、10、12、15または20 (またはそれ以上)の連続
アミノ酸の免疫原性断片を含むポリペプチド(場合により、該ペプチド配列または該免疫
原性断片は、必要であればタンパク質担体にカップリングされた場合に、WO 00/55327の
配列番号2を認識できる免疫応答を誘発可能である)、および製薬的に許容される担体を
含む、免疫原性組成物であって、
(i) 前記2つのCys残基がジスルフィド結合している、および/または
(ii) 前記組成物がZn2+塩を含む、
前記免疫原性組成物。
(37)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
【国際調査報告】
10
20
30
40
(38)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
10
20
30
40
(39)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
10
20
30
40
(40)
JP 2012-501988 A 2012.1.26
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
C07K 14/22
(2006.01)
C07K 14/22
C12N 15/09
(2006.01)
C12N 15/00
A
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,S
K,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,
BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K
10
E,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL
,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW
特許法第30条第1項適用申請有り (74)代理人 100118773
弁理士 藤田 節
(74)代理人 100122389
弁理士 新井 栄一
(74)代理人 100111741
20
弁理士 田中 夏夫
(72)発明者 ボス,マルティーヌ ペトロネラ
オランダ国 エヌエル−3584 シーエイチ ユトレヒト,パドゥアラーン 8,ユトレヒト ユニバーシティー
(72)発明者 プールマン,ジャン
ベルギー ベー−1330 リクセンサール リュ ドランスティテュ 89,グラクソスミスク
ライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(72)発明者 ストルク,ミヒエル
オランダ国 エヌエル−3584 シーエイチ ユトレヒト,パドゥアラーン 8,ユトレヒト ユニバーシティー
(72)発明者 トマセン,ヨハネス ペトルス マリア
オランダ国 エヌエル−3584 シーエイチ ユトレヒト,パドゥアラーン 8,ユトレヒト ユニバーシティー
(72)発明者 ヴェイナンツ,ヴィンセント
ベルギー ベー−1330 リクセンサール リュ ドランスティテュ 89,グラクソスミスク
ライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
Fターム(参考) 4B024 AA01 AA03 BA31
4C085 AA03 BA16 CC07 DD23 DD31 EE01 GG01
4H045 CA11 DA86 EA20 FA74
30
Fly UP