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処理4:ステレオ復調
第2部 第 7章 音楽もちゃんと聴けるとカッコいい 処理 4:ステレオ復調 高橋 知宏 L(左)信号とR(右)信号を,和信号と差信号に分け, ゲイン 和信号はベースバンドに,差信号は38kHzのサブ キャリア(抑圧搬送波)で DSB変調されている 50Hz L +R L −R 15kHz 23kHz 19kHz 音声帯域は 50Hz∼15kHz 38kHz±50kHz は抜けている 53kHz 38kHz 周波数 基準となる19kHzパイロット信号が 10%の振幅で加えられている 図 1 FM ステレオ放送のしくみ 和信号に加えて,差信号が音声帯域外に変調されて加えられている.さ らに分離の基準となるパイロット信号も加えられている FM 放送のステレオ方式 ● モノラルとステレオを両立! うまくできている FM 放送ではステレオとして,左右 2 チャネルの音 声が重畳して変調されています.このステレオ方式 は,モノラル放送との互換性を確保するよう工夫され ています.ステレオ復調を行うために,しくみを説明 しておきます. ステレオ放送では,FM 復調後の信号は図 1 のよう なスペクトラムになっています.左右のチャネルの信 号を加算した L + R の信号が,19kHz 以下のベースバ ンドに入っています.一方,差信号 L − R が,38kHz を中心とした位置に DSB(両側波帯)信号として,変 調されています.さらに,19kHz には分離の基準とな るパイロット信号があります. ステレオ復調の際には,和信号 L + R と,差信号 L − R を取り出し,それぞれ,和と差をとることで, 左右の信号に分離することができます. (L + R)+(L − R)= 2L (L + R)−(L − R)= 2R 左右の分離をよくするためには,L + R と L − R の 信号のレベルがうまくマッチングしている必要があり ます.つまり,FM 復調時の周波数特性が平坦である 必要があります.もし周波数特性が平坦でない場合に は,L + R と L − R の信号にレベル差が生じ,左右が 80 精度よく分離できません.左右の信号が分離しきれ ず,混じって聞こえることになります. ▶モノラルの場合 パイロット信号ならびに 38kHz で変調されている成 分が存在しません.モノラルの場合は,15kHz 以下を そのままモノラル 1 チャネル分として使えば OK です. ステレオ復調 PLL 処理 FM 復調された信号から,ステレオ信号を取り出す ためには,若干込み入った手順が必要です.まずは信 号に含まれているパイロット信号を取り出す必要があ るのですが,周波数と位相を正確に合わせなければな り ま せ ん. こ れ に は ソ フ ト ウ ェ ア 的 な PLL(Phase Locked Loop)を使用します.PLL は,基準となる信号 に合わせて,新たな信号を生成するための代表的な方 法です.マイコン内部でクロックを逓倍するのに使わ れているため,言葉を目にする機会は多いと思います. ● ステップ1:19kHz パイロット信号を抽出する ステレオ分離処理の全体像を図 2 に,しくみを図 3 に示します.PLL はクロック逓倍以外に,狭い帯域の フィルタとして使うことができます.PLL 内にはソフ トウェア的な発振器 NCO があり,ステレオ分離前の マルチプレクス(MPX)信号の中に音声信号とともに 含まれているパイロット信号と同じ周波数と位相に同 期 す る よ う 制 御 さ れ て い ま す. パ イ ロ ッ ト 信 号 と NCO の IQ をそれぞれ乗算,平滑化し,I 側がゼロに なるように NCO を微調整しています. PLL がロック状態になると,NCO の発振周波数と 位相が,入力のパイロット信号と一致します.たくさ んの成分が含まれた MPX 信号の中から,パイロット 信号とそのごく近傍の周波数の信号だけが取り出され る狭帯域のバンドパス・フィルタとして動作している ことになります. ● ステップ 2:周波数を 2 倍の 38kHz にする パイロット信号と同期した 19kHz が得られたら, 2015 年 7 月号