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三 月 号 - 認知症高齢者研究所
キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 三 月 号 マウントサイナイ 医科大学 vol.3 2012.3 アルツハイマー病研究センター報告 【赤ブドウ酒派生薬品の新規臨床試験】 Judith Neugroschl, M.D. マウントサイナイ医科大学は軽度から中程度のアルツハイ マー病(AD)患者に対するレスベラトロールの効果を試験 する全国的な臨床試験に参加できることになり、大変楽し みにしております。この臨床試験の素晴らしい点は、従来 の筆記試験の他に、MRI(脳の各部位の容積を測定する) とADと関連性があると考えられる脳脊髄液(CSF)の生物 学マーカーで当該薬物の効果を測定することです。CSFは 脳と脊髄を包む液体です。CSFは当該部位を外傷などから 守るという機能があります。CSFは腰椎穿刺(または「脊 椎穿刺」)という方法-腰に針を刺し、CSFを少量抜き取る -で集めます。CSF採集は脳の新陳代謝と機能を測定するの にもっとも信頼できる採集方法のため、すぐに研究の一部 となりました。 レスベラトロールは植物由来で、特定種の赤ブドウ酒や赤 ブドウの皮に高濃度で含まれます。1日1杯赤ワインを飲む と記憶力がよくなる、という話を聞いたことがあるかもし れません。その原因がレスベラトロールではないかという ことを示唆する証拠があります。レスベラトロールにはAD の進行に関与する何らかのメカニズムがあると思われま す。実験では、レスベラトロールがβアミロイドにより誘 発される脳細胞損傷から細胞を保護していました。βアミ ロイドは凝集してアミロイド・プラークを形成するペプチ ドで、ADの特徴の1つとされています。さらに、研究で は、レスベラトロールは種々の細胞から形成されるβアミ ロイドの量を抑える効果があります。βアミロイドの分解 をも促進しているようです。マウスでは、レスベラトロー ルを与えると脳内のアミロイド・プラークが減少します。 レスベラトロールは加齢の遺伝的調節にも関与しており、 組織の寿命を伸ばすタンパク質によく似ています。これら のことから結果は期待できます。ただし、レスベラトロー ルの潜在的利点がAD患者に効果的かどうかをテストする大 規模な臨床試験が決定的に重要です。 当該薬剤は健康な男性に対して1回のみ、最大1000mg経口 投与することで試験されています。商業的には700mgまで の投与が可能ですが、商用製剤の配合におけるレスベラト ロールの量は分かっておらず、また規制もされていませ ん。一般的に、この薬はFDAが「一般に安全と認められて いる」と分類しており、FDAは現在予定投与の評価のため の臨床試験計画表を精査中です。マウントサイナイ病院で レスベラトロールの効果を試す予備実験が1回行われてい ますが、そこでのレスベラトロール投与量は新しい臨床試 験で計画されているよりずっと少ないものでした。予備実 験の結果は間もなく分析が始まります。近く実施されるレ ロールの臨床試験は1年間行われ、10回来院が必要で、そ のうち2回で腰椎穿刺を、3回でMRIを実施します。この試 験ではADの生物マーカーと脳萎縮に対するレスベラトロー ルの効果が評価されます。私達はこの試験に参加できるこ とを嬉しく思っています。 E RED WIN 【記憶力増進のヒント】 Margaret Sewell, Ph. D. 簡単なようですが、健康な高齢者の記憶力減退の元凶は注 意力散漫です。21世紀に生きる個人として、我々は大量の 情報にさらされ続けています。これは情報過多と呼ばれて います。しかしながら、日常生活の細かいことに注意する (覚える!)簡単なテクニックがあります。 ・スピードを落とす: スピードを落とすことで、脳で経験 したことを処理する時間ができます。そうすれば「記憶の 定着」にも役立ちます。 ・集中: 集中は記憶力強化の鍵です。 ・情報を大声で繰り返す: 覚えたいことを声に出すこと で、情報を取り込むことができます。 では、ブッククラブの本を覚えなければならないときは、 章をまとめて、声に出してみましょう。駐車場を覚えなけ ればならない? その時は階と番号を自分で繰り返してみ ましょう。新しい友人の名前を覚えるには? 一呼吸おい て名前と顔を一致させましょう。集中することで変わるこ とに驚くでしょう! キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 【ニュース】 ■酒を程々に飲むことでアルツハイマー病を防げるか? アルコール摂取と認知症に関する最近の研究のレビューで は、程々の量のアルコール、特にワインを飲んでいると、 認知症のリスクが小さくなる可能性があるということが言 われています。143件の研究のレビューでは、程々に飲む 人は、アルツハイマー病や認知障害などの認知症になる確 率が実際に23%も低く、またワインの方がビールよりわず かにその効果が高いという結果でした。一方で、深い飲酒 (1日に3~5杯より多く飲む)の場合、認知障害や認知症 にかかる確率が高くなりました。アルコールの好影響を報 告する論文はいくつかありますが、ADRCアソシエートディ レクターのSam Gandy, M.D., Ph.D.は、認知減退を防ぐた めにアルコールを摂取する人に対して、程々のアルコール 摂取と健康的な認知能力の関係を調査した臨床試験が実施 されたことはないと警告しています。 ■アルツハイマーの「ミルクシェイク」の効果について 医師が討論 アクソナはアルツハイマー病の新しい代替医療として議論 を呼んでいます。アクソナは薬ではなく「医療食品」と見 なされており、エネルギーとして使われる脂肪とケトンを 脳に供給します。アクソナのような代替医療に期待をかけ る人もいますが、Sam Gandy, M.D., Ph.D.も含め研究者の 多くは、こうした商品にそれ程楽観的ではありません。 「藁にもすがりたいアルツハイマー病患者やその介護者 に、証明されておらず可能性の低い物質を法外に売りつけ ることを制限する方法がほとんどないなんて、まったく常 軌を逸しています」とGandyは語っています。批判者の間 で大きな懸念となっているのは、「医療食品」に効果があ るというデータがないことです。 (引用:Mount Sinai School of Medicine / ’11 FALL Alzheimer’s Disease Research Center newsletter) 入浴して心も体もリフレッシュ! Kyomation Care 研究会 会員No.1108008 トラストガーデン用賀の杜 中尾 博信 に記録を具体的に書いてもらうように周知徹底した。 ○ご本人の何が出来て、何が出来ないのかを知るため、長 谷川式スクリーニングテストを応用した声かけを毎日実 施した。 【事例の問題点】 『65日間入浴されない』 入浴拒否が強く、足浴さえできず。入浴の際、暴力行為あ り、スタッフの介入しずらい状況。皮膚は掻かれて赤く なっている。 【アセスメントの結果】 ○対象者の行動と特徴① ・水分は、ジュースなど甘いもの以外あまり飲まれない。 ・体に触られる事や人が近くによる事を嫌う。 ・他人に対して配慮に欠ける発言をされる。 ・場所の見当識や計算、記銘などは得意。近時記憶や日時 の見当識が苦手。 ・ご自身で日記を書かれ ている。 【事例の対象者の紹介】 ○氏名:A様 81歳 女性 要介護度2 障害高齢者の日常生活自立度:A1 認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅱb ○病歴: 平成21年頃よりアルツハイマー型認知症、 近時記憶障害 ○生活歴: ・昭和4年11月 栃木県宇都宮市の旧家に生まれる。 ・18歳の時、栃木県では女性初の運転免許取得 雑誌の写真モデルとして掲載される。 レディス服装学院卒業。 ・22歳の時、医師だったご主人と結婚される。 (二男一女を育てられる。) ・33歳の時、ご主人が中野に医院を開業される。 (医院を手伝われる。) ・40代の時、ご長男様をご病気で亡くされる。 ・81歳の時、59年連れ添ったご主人様を亡くされる。 ・ご趣味は、三味線、小唄、和裁。 ○対象者の行動と特徴② ・「なにか試行錯誤しちゃったみたい。」「私何をすれば いいの?」が口癖。 ・集中力が無く、気づくと何処かに行ってしまわれる。 ・「お風呂なんて聞いてない。」と突然憤慨される。 ・自分の席に他人が座ると、機嫌を損ね、いつもと違うこ とを嫌う様子が見られる。 ・夕食後、ジュースを何度も要求される。(飲水量が不足 しているのでは?) 【仮説】 「不安をなくして入浴しよう!」 ○少し前まで何をしていたのか、次に何をしていいのかわ からないので不安になる。 【アセスメント】 ○問題点をどのようにアプローチするべきか探るため、対 象者の行動と発言についてポイントを絞り、今まで以上 2 キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 →「私何をすればいいの?」や「お風呂なんて聞いてな い。」 の発言から前後の記憶が無く、不穏になっている のでは ないか? ○毎日、いつもと違うから、不安になる。→入浴が突然の ことのように感じ、不穏になっているのではないか? ○飲水量が足りないから、イライラする。 →5月の飲水量の平均値は936.5ml/日。6月の飲水量は平均 値829.5ml/日。飲水量が足りないため不穏になっている のではないか? 【3~4週間の経過】 ○スケジュール表は、1日中携帯されポケットにしまわれ たり、机の上の目立つ所におかれたりする事が見られ た。また、自ら予定を書き込まれることもあった。 ○散歩は、誘導すると出かけられることが多くなった。拒 否する場合も「散歩なら行かないわよ」と散歩の時間だ という認識を持たれている様子が見られた。 ○スタッフの飲水の促しや薬を分けたことで、7月の飲水 量の平均値は、1165ml/日となり飲水量が増えた。ま た、徐々にではあるが、お茶などの甘くない飲み物も飲 まれようになった。 ○8月1日。本人自ら、「足浴したい。」と発言された。 ○7月28日~8月7日の計4回、入浴に成功した。 ○入浴前は、「今日は入りたくない」と仰るが、お風呂場 まで誘導すると、「私、どうしたらいい?」などと発言 される。「ここで服を脱いでください」と次にすること をお伝えするとやはり自主的に行動する様子が見られ た。 これらの不穏の要因となっている点を改善できれば、 入浴に対する拒否も減少するのではないか? 【仮説に対する援助方法】 ○今何をしていたのか理解し、次何をするべきかわかって いただけるようにスケジュール表を作成し、毎日お渡し した。 ○生活リズムを作る為、バラバラであった起床時間を一定 にし、毎日同じ時間、同じ声かけを実施。 ○また散歩の時間をつくり、同じ時間に誘導し、規則正し い生活を作るようにした。 ○服薬時にコップ1杯の水を飲まれるので、食前、食後に 薬を分け、水分を多く摂っていただくようにした。 お風呂の中にもスケジュール表のようなものがあれば、ご 本人にもわかりやすいはず!? ○8月6日。男性スタッフが風呂場まで誘導。 ○脱衣所に「脱衣所・こちらで服をお脱ぎく ださい」という貼り紙と、「A様のお風呂は こちらです」という貼り紙を貼った。 ○何度か「私どうしたらいい?」などと聞か れるが、次に何をするかの声かけと貼り紙 の効果もあり自主的にご本人で入浴された。 浴後「すっきりしたわ」と発言があった。 入浴成功! 【1~2週間の経過】 ○スタッフに「これどうしたらいい?」とスケジュール表 について質問された。 ○起床時の声かけは、本人がすでに目覚められていること が多い為、起床後声かけすることに変更した。 ○散歩は、拒否される事が多く、行かれたとしてもすぐに 「帰りたい。」と発言された。 ○飲水量は、日によってばらつきがある。お茶と水をすす めるが、甘いものを好まれた。 ○入浴は、朝からスケジュール表を見せながら「今日は○ 時からお風呂ですよ」と何度も声かけを行い、お風呂場 にお連れし、足浴はされた。しかし、湯船には入られな い。 ○7月14日。「こちらで服を脱いでください」の声かけ で、服を脱がれ、体を洗わず湯船につかった。しかし、 3分程で出てこられ、スタッフが洗髪しようとしたとこ ろ、激しく抵抗されスタッフが怪我をした。 【考察】 ○スケジュール表は、とても大切にされている事から、今 までの自分、これからの自分を確認する大きな役目を 担っていると思われる。 ○散歩と統一された声かけは、生活リズムをつくり、不安 を軽減した。 ○飲水量は、1日あたり200~300ml増えた。 ○事例に取り組む中で対象者とスタッフのなじみの関係が できてきたと思われる。 ○次にすることを理解してもらうことで、不安を減らすこ とができた。 【考察 1~2週間のまとめ】 ○7月14日のスタッフが怪我をした原因は、無理に洗髪を しようとした為だと思われる。記録より、スタッフが介 入するのでは無く、「次にこれをして下さい」などの様 に、今の状況を理解していただき、次何をするのかを伝 える事が重要であると考える。 ○散歩は、生活リズムを作るだけでなく、スタッフと対象 者の間がうちとける良い機会となった。 ○バラバラだった声かけがスケジュール表の活用で統一さ れるようになった。この事が対象者の不安の軽減に繋 がっていると思われる。 取り組みによって、徐々に入浴しやすい環境が整ってきた と思われる。 【今後として】 様々な視点から対象者を理解する為に各職種間と連携・協 力しあいアプローチしていきたい。 今回の事例は、当社が掲げる『科学的根拠に基づくトータ ルケア』に沿った認知症ケアの事例となった。今後も継 続してトラストガーデンとして、更に多くの事例に取り 3,990円(税込、300ml溶液付き) 日本フィトン・チッドTOKYO株式会社 お客様係 0120-510-154 3 キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 Kyomation Care 便り さて、認知症の方の看護・介護には、その方の生活機能や 認知機能に積極的に介入することで、認知症そのもの、あ るいはBPSD、あるいは日常生活動作の改善に役立ち、介護 者の負担を軽減させ、結果として介護者、本人双方のQOL を向上させるという重要な側面があります。しかし、認知 症の方は、その種類や程度によって差異はあるものの、一 般的には対人関係に困難をきたすことが多いと言われてい ます。そのため、介護者は認知症の方と接する時には、「 どのように接すればよいのだろうとか」「話が通じるのだろ うか」と言う不安や恐れがあったり、「認知症」と言う先入 観や思い込みを抱いてしまったりするのです。 そのため、不可解な言動を目前にすると途方にくれ、介護 者側の立場で対応してしまうことになるのです。落ち着い た穏やかな接し方は認知症の方に安定感をもたらし、叱責 や命令、操作的態度は不安や混乱を招きやすいことは実践 を通して経験則としてわかっているのですが、認知症の方 への関わり方に安定性をもち得ないのはなぜなのでしょう か。私は、認知症の方との接し方に於いては、その接し方 を導くいくつかの視点を確認しておくことが、関わりの質 に大きく影響すると考えています。そこで、認知症の方の 生活障害が行動として表れてくる行動・心理症状BPSDのア プローチについての視点を考えてみることにしましょう。 そのため、今回は行動・心理症状BPSDに関するアプローチ の原則を理解しておきます。 テリー(Teri L)やローガン(Logsdon R)によれば、対応の 原則を利用してBPSDに対処しようとするときには、次のよ うな一般的アプローチをとると良いと言っています。まず 始めに、認知症の方のBPSDを明確にすることが重要です。 これにより対応しようとする問題を明確にすることで行動 を修正するにあたっての第一歩になるからです。なぜなら ば、介護者にとって行動や心理の問題の捉え方が明確であ るほど、とるべき有効なケアの処置を明らかにしやすいか らだと言っています。 これらの具体的な問題を明らかにするためには、「馴染み の関係」と言うべき密な関係が認知症の方との間に必要に なります。そして、一度に扱うBPSDの対応は1つだけにし ます。一度に多くの対応は避けるべきです。 そのためには、BPSDに関する情報を集めます。 病は気からと言いますが -BPSDへの接し方(アプローチ)- Kyomation Care 研究会 会長 羽田野 政治 病は気からと言いますが、私達が健康に、そして快適に生 活するための条件を探してみると、実に多種多様にわたっ ている事にびっくりするくらいです。認知症になる原因だ けでも本人の遺伝的な要素から生活環境、栄養状態、生活 習慣、さらに大きな環境要因として気象や汚染など物理的 な要因が影響しているのです。人間は、このような環境か ら受ける内的・外的刺激によって生きているわけですが、 これは環境条件と共存していることでもあると言えます。 そして、そのための人間から環境への働きかけが行動と言 うことなのです。 しかも、行動は環境からの刺激により変容しますから、行 動とは人間の環境との相互作用であることになります。ま た、相互作用には呼吸や体温調整などの生理的反応から摂 食、排泄、性行動などの本能行動、さらに感情、意志、思 考など複雑な心理過程まで含まれているのです。リンド バーグ的な発想で認知症の方に置き換えて行動を考える と、日常生活そのものが環境として捉えられます。その環 境の中で習慣化された動作に支障をきたした生活障害が行 動として表れているのが認知症ではないかと私は考えてい ます。また、学術的にも認知症の方の行動に関しては、認 知症疾患や症状により誤った生活習慣や不適応行動の結果 生じる行動障害を認知症の行動・心理症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と いう用語を用いるとして1999年国際老年精神医学会 (IPA)でコンセンサスも取られています。 行動・心理症状BPSDの分類法は多数ありますが、簡単な分 類として行動症状と心理症状の2群に分けてお話します。 行動症状群は、通常は患者の観察結果によって明らかにさ れる、身体的攻撃性・喚声・不穏・焦燥・徘徊・文化的に 不適切な行動、性的脱抑制、収集癖、ののしり、シャドー イング(まつわり)などが入ります。心理症状群は、通常 は、主として患者や家族との面談によって明らかにされ る、不安・抑うつ気分・幻覚・妄想などがこれに入ると言 われています。 ①BPSDはどのくらいの頻度で起こるのか(2週間の頻度回 数) ②いつ起こるのか(起床時・朝食中・午前中・昼食時・午 後・夕方・夕食中・入浴中・就寝時・夜間・睡眠中・リク リエーション中・排泄時・何時何分・その他) ③どこで最もよく起こるのか(居室・居間・廊下・玄関・ 台所・トイレ・浴室・その他) ④誰がいるところで起こるのか(集団行動時・外出時・孤 立時・人前・特定人物前・介護者・医師・看護師・介護 士・療法士・家族・その他) ⑤起こっている時間の長さ(数秒○秒・数分○分・数時間・ ○時間・数日・○日) ガトー・デ・フェ 砂糖不使用で低カロリーなのにおいしい『メレンゲハートショコラ』 豆乳おからクッキー 1枚わずか20Kcal! 硬焼きで食物繊維が豊富! 美容と健康の杜 ヘルシーメイト http://www.rakuten.co.jp/healthy-mate/ Tel: 03-5652-6800 Fax: 03-5652-6799 4 キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 介護者は最低1~2週間の期間にわたり、これらの状態を 行動観察13項目の行動項目で記録していきます。また、 その他に関しては起こっている時間や場所を記録します。 毎日つける記録は、対象とするBPSDの発現、頻度、重症度 を把握するのに役立ち、医療・介護連携を行う上でも介護 計画や治療計画を作成するのにも助けとなります。そし て、BPSDが起こる前後について明らかにします。介護者は 問題のBPSDが「突然」起こるという印象を抱いているかも しれませんが、その行動の直前の出来事を注意深く観察す ると、引き金(トリガー)となる要因を認めることがよくあ ります。BPSDが単純であることは滅多にありません。通常 は、記憶、認知の障害によって、人的関係や環境、心の迷 いや不安などの複雑な要因が行動に関与しており、介護者 がこうした要因間の関係について理解することで、介入が うまくいきやすくなるのです。 ここで、BPSDへの具体的なケアの基本を示します。 (3)継続的に評価と計画の修正を行う。 ①介護計画は継続的に記録し評価していきます。なぜなら ばBPSDの対応が有効かどうかを明らかにする必要がある からです。 ②計画がうまくいっているかどうかをどのようにして確認 するかを決めます。 BPSDが起こる回数、あるいは起こっている時間の長さを 様子観察13項目の行動項目の記録から確認します。 ③介護者は計画の実行にあたって一貫性かつ柔軟性を持つ 必要があります。 すなわち、最初の対応方法がうまくいけばそのアプロー チを維持する必要があるからです。また、それが明らか にうまくいかないとわかったならば、それに固執すべき ではないからです。 ④ 対応方法がうまくいかないならば、介護者は別の対応 方法を実施する必要があります。 (4)BPSDに関する情報を分析します。 ①特定の症状のトリガー(引き金)、もしくはその結果とし て生じた事象や要因を分析し明らかにします。 ②現実的な目標を設定して計画を立てます。 介護者は、まず認知症の方の目標設定を行います。神経 科学では目標設定により前頭葉を助けると考えられてい ます。脳の司令官である前頭葉は理性と計画を司ってい ます。具体的な目標に集中することは脳の混乱を避けさ せ感情の中枢である扁桃体の働きを抑制し、不安感や恐 怖から来るBPSDを軽減します。例えば、毎朝起きたら「 朝食まで頑張ろう」、朝食になったら「昼食まで持ちこた えよう」、そして午後を何とか切り抜けようと目標をた てます。時間を細かく分けて一緒に小さな目標を一つ一 つ達成していきます。これこそが、本来の意味である短 期目標なのです。 ③目標を達成したならば認知症の方だけでなく介護者も一 緒にたたえ合い報酬を与えるよう奨励することが大切で す。 ④継続的な記録を基に介護計画の評価と修正を行い、必要 であれば医療・介護連携により治療計画の検討も行いま す。 (1)現実的な目標を設定し、計画を立てる。 ①認知症の方に出来る限り目標設定に参加させ、介護者と 協力して治療目標を設定する。 ②達成可能な小さな目標から始め、段階的に進める。 ③個々の認知症の方と介護者に合わせた計画を立てる。 ④現実のあり方に即した実用的な態度で臨み、変化が生じ るまで時間をかける。一晩で大きな変化が生じると期待 しないこと。 ⑤介護者と協力して、起こりそうな問題を基本観察13項目 から予測し、それをどう解決するか想定する。 ⑥可能であれば、介護者にいくつかの計画案を出してもら い、その中から最初に試みるものを選んでアプローチ し、その有用性を記録する。 次に、BPSDの予防介護や予防保全には何か作業をするとき にイメージトレーニングを行ってから、作業に入ることを 私は勧めています。掃除機をかける練習や食器を洗う練 習、食事を取る練習を手振りや身振りで介護者と一緒に行 います。イメージトレーニング、つまり頭の中で映像化す ることです。認知症の方には何回もこのイメージトレーニ ングを行ってください。これをリハーサルと言います。介 護者は一緒に頭の中でトレーニングして認知症の方のスト レスが掛る状況でどう対処するか想像し、一回予行演習 (リハーサル)しておけば実際そうなった時には2回となり 経験が生かされるのです。リハーサルによりストレス反応 が減ることで、認知症の方の不安感が軽減されBPSDが緩和 されます。 また私は、認知症の方との会話を重んじています。考えを まとめられず不安になってしまう認知症の方の話を介護者 がまとめるように手伝います。一般的には1分間に300~ 1,000文字のペースで「会話」を行います。介護者は聞き役 に徹します。認知症の方には自由に話しをして頂きます。 会話の導線として日用品や嗜好品を前もって用意しておく と良いでしょう。 介護者は後ろ向きではなく前向きの言葉で返事していくよ うに努めます。「最近何も出来なくなってしまって」などと 話す方には「○○さんは、裁縫がとても上手とみんな誉め (2)介護者が、目標を達成できた場合には自分自身や他の 者に報酬を与えるよう奨励する(誉める)ことはBPSDに対 する対応をより積極的にします。 ①どんな小さいことでもBPSDの対応がうまくいったのであ れば、介護者も一緒に喜び合うことは自分に報酬を与え ることでもあり、自信を付けるだけでなく「馴染みの関 係」の成立に繋がる重要なことです。更にその成功例を 記録することは非常に重要です。 ②BPSDの対応には共同注視(ジョイント・アテンション: joint attention)というコミュニケーション技法を用い てアプローチします。人は他者と同じものを注視できる 能力を利用するものです。乳幼児期からある能力で、生 後1年頃から発揮され成長に従い他者の考えを類推し、 自分の心とは異なることを理解する能力のことで「心の 理論」と呼ばれています。この共同注視は、横隣に座 り、同じ姿勢、同じ方向を見ることが基本です。暴力行 為などについては適度な距離を保つようにします。 5 キョウメーションケア研究会 機関誌「ライフ」 3月号 2012.3 ていましたよ」など、残存能力を引き出すような本人の出 来ないことではなく出来ることを答えていきます。これに より、扁桃体からの恐怖に対する信号に打ち勝つのを助け ます。前頭葉はいつも作動しているので、認知症の方は、 つらく悪いことを考えがちになります。「失敗するかも」 「自分は何をしているのだろ」と思いがちなのです。です から私は、タオルたたみや食器拭きなど本当に小さな簡単 なことから始め「出来ましたね」「上手ですね」など達成感を 味わえるような声掛けを行い、良いことを考えるように誘 導しながら返答していくように介護者に薦めています。 最後に興奮抑制です。これは呼吸を集中させることです。 ゆっくり落ち着いて呼吸することが、パニックで起こる反 応と戦うのを助けます。息を長くはいて体がリラックスし ている状態を真似して介護者と一緒に行えれば、より多く の酸素が脳に取り込まれうまく行動できます。行動の中に は、日中の活動や休息、夜間の睡眠も一つの行動として捉 える事が認知症の方には必要なのです。 認知症の方にとっては、1日の生活においてメリハリのあ るリズムを整えていくことが最大のケアでもあると私は 思っています。日中ぼんやりと過ごしたり、ベッドやソ ファにいるとつい眠ってしまったり、気分が滅入ったりし て昼夜のリズムが崩れやすくなり、いつも不安が付きまと う様子こそが、認知症の方の行動によるコミュニケーショ ンと言えるのではないでしょうか、その結果がBPSDとして 表出しているのではないかと私は考えています。 2012.4.4 START! 参考文献 (BPSD痴呆の行動と心理症状 15:98-99:104-105 2005.2.1 国際老年精神 医学会 日本老年精神医学会アルタ出版) (Teri L. Logsdon R.Assessment and management of behavioral disturbances in Alzheimer’s disease patients.Compt Ther 1990;16:36-42) 認知症高齢者研究所は、認知症高齢者に対する介護の あり方について、従来の介護者の経験や感覚だけに頼 る方法ではなく、長年にわたる臨床データを蓄積し、 科学的な分析に基づくケア理論として“Kyomation Care”を提唱・実践し、普及のための教育や研究を重 ねています。 このKyomation Care理論に基づき、施設や在宅介護と 医療の現場をつなぐ新しいケア・サポートシステム 「KCIS」(ケーシーズ)を開発しています。ICT(情報 通信技術)を活用した、ネットワークづくりです。2012 年4月から正規版の配布を予定しております。 http://japan-kcis.com NEWS この度、神奈川県 保健福祉局 福祉・次世代育成部によ る、地域連携拠点整備研究事業(連携等試行業務・ブラン チ試行業務及び連携等試行業務)にKCIS(ケーシーズ)が 採用されることが決定しました。 そこで、神奈川県では、介護基盤緊急整備等臨時特例基金 を活用して、地域包括ケアシステムを実現するため、医療 機関と介護分野における連携及び情報共有化並びに地域包 括支援センターのブランチ業務について研究モデル事業を 実施し、当該業務に係る拠点の整備を支援するとともに、 今後の検討材料を得ることとしました。 【事業内容】 県内における要支援・要介護認定者数は、高齢者人口の増 加に比例し、年平均約5%増で推移しています。こうした 中、国では、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続 けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活 支援サービスを切れ目なく提供する地域包括ケアシステム が必要であるとの認識を示しています。 社団法人 Kyomation Care 研究会ではKCISが活用され、真に地域社 会の連携と情報共有が円滑に進められるよう目指し、実質 的な地域包括ケアの実現に寄与できるよう願っています。 認知症高齢者研究所 Kyomation Care 研究会事務局 6 〒224-0032 横浜市都筑区茅ヶ崎中央20-14-401 TEL.045-949-0201 FAX.045-949-0221 e-mail : [email protected] http://www.kyomation.com