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車両診断技術をリードする Vetronix
O P E R AT I O N A L U S E AND SERVICE SOLUTIONS 車両診断技術をリードする Vetronix Vetronix車両エンジニアリンググループマネージャへのインタビュー Vetronix Corporationは、20年以上に渡り車両診断の分野で業界を積極的に主導してきました。同社がこの分野で果たしてきた重要な役割について理解を深めるた めに、車両エンジニアリンググループのマネージャであるバーナード・カー氏に、会社が現在の地位を築くに至った要因などについて話を伺いました。Vetronix在職 16年を超える同氏は、社を代表して各種の業界委員会に出席しています。また車両診断分野のエキスパートとして、世界各地で行なわれる会議・会合でもたびたび講 師を務めています。 Vetronixのスタッフの皆さんは、カー イニシアティブにも関わっています。 氏ご自身を始め、ジャック・フォーク、 ツール分野では、私たちはETI トム・コーキンス、デビッド・ハンター (Equipment and Tool Institute)のプロ 各氏ともSAE、ISO、IEEE、ETI と ジェクトグループに参加しており、ス いった委員会に社を代表して出席してお キャンツール、Under Hoodテクノロジ、 られます。現在どれほどの委員会に出席 点検・整備、整備工場管理、情報ソフト されていますか? ウェアなどのテーマを扱っています。さ 私にさえ、その数を把握できないとい らに近年当社では、整備工場にWLAN うのが現状ですが、最も重視している委 (無線ローカルエリアネットワーク)を取 員会の1つがSAE全米自動車技術協会で、 り入れることで車両診断技術の拡張を ジャック・フォーク、トム・コーキンス、 図っています。その関係でWLANに関す そして私がメンバーとして参加していま る委員会のIEEE 802.11と、メディア依存 の無い通信規格を実現するIEEE 802.21と す。委員会の仕事にはチーム形式で取り いった委員会で、デビッド・ハンターが 組んでおり、作業を分担して互いをサ 精力的に活動しています。こうした委員 ポートしています。具体的には、ジャッ 会の活動は、「未来を知る一番の方法は、 ク・フォークがデトロイトで開かれる運 未来を創造することである」というスタ 営委員会に出席し、私がSAE J1939の会 ンスを表しています。 議に参加するといった具合です。スケ ジュール次第で、全員が国内会議から国 そのようなスタンスは、Vetronixの活 際会議に至るまで担当しなければならな 動にも当てはまるように思われます。80 いこともあります。つまり、車両の電気/ 年代初めにTech 1を発表し、車両診断 電子システムに対する診断の標準規格の のパイオニアとして登場したVetronix 策定や、データ通信の標準規格となる車 ですが、知名度が向上した背景にOBD II 両アーキテクチャの構築といったSAE委 があったのでは? 当時の事情をお聞か 員会に出席する一方で、ISO TF5グルー プの会議にも参加しなければなりません。 せください。 90年代初めにCARB(カリフォルニア トム・コーキンスはISOのMVCIに関する 大気資源局)は厳しい自動車排出ガス基 準を制定し、続くOBD II 規制において も、排出ガス関連のサブシステム/コン ポーネントをオンボードモニタする際の 非常に複雑な要件を打ち出しました。強 制力のある規制として導入されたことか 12 RT J1.2005 らもわかるように、この新たな機能に対 する要件は、当時すでに人口が過密状態 にあったカリフォルニア州の人々の健康 と福祉の改善を狙ったものです。そして このOBD II は、乗用車やトラックなど全 車両の排出ガスシステムを、1台のスキャ ンツールで診断できるようにするという 間接的な効果をもたらしています。 Vetronixは1993年、OBD II のもたらすビ ジネスチャンスに着目し、OBD II 対応車 両の量産が本格化する前にソフトウェア ソリューションの開発に成功しました。 また同じ1993年に、米国自動車修理業界 のアフターマーケット向けに、MTS 3100 Mastertechスキャナの発売も開始してい ます。ゼネラル・モーターズ(GM)の 車両向けに診断ソフトウェアを提供して いた関係で、Vetronixは自動車メーカに 引けを取らない診断技術を有していただ けでなく、組込み型やPCベースの強力な 診断アプリケーションの開発によるエン ジニアリングノウハウの蓄積もありまし た。そこで私たちは、フォード、クライ スラー、トヨタ、レクサス、ホンダ、ア キュラ、日産、インフィニティ、現代、 ダイハツ、いすゞ、起亜、三菱、スバル、 スズキといったさまざまな自動車メーカ に向けて、乗用車とトラック用の診断ソ フトウェアを開発する方針を決めたので す。もちろん、これだけのソフトウェア 開発に要した労力は生半可なものではあ りません。これらソフトウェアのアップ デートは現在も続いています。 O P E R AT I O N A L U S E AND SERVICE SOLUTIONS SERVICE ENGINE SOON ! その後Vetronixは、Mastertech Global OBD-II といったアプリケー ションソフトウェアを開発しています。 市場の人気を集め、広く利用されるよう になった車両診断アプリケーションの1 つですが、成功の裏には何か秘密があり ますか? 秘密というほどのことではありません が、面白い話はあります。自動車業界が SAE J1978/ISO 15031-4の中で定義した OBD II スキャンツールの機能要件に対す る回答として、Vetronixは Mastertech Global OBD II といったアプリケーション を用意したわけですが、その人気は専門 家とエンジニアの間に瞬く間に浸透しま した。Vetronixは当時、小規模な装置 メーカではありましたが、自分たちの診 断テスタをサービスエンジニアが車の不 具合修理に使用していることを十分に認 識していました。社内エンジニアの力や、 業界委員会への積極的な参加、自動車 メーカとの太いパイプなどを利用して、 Vetronixは車両の排出ガスシステムを診 断する上で欠かすことのできないさまざ まな機能を開発してきました。実績のあ る組み込みエンジニアリングをベースと した設計手法を維持して開発した1台の 診断機から、やがて今日使用されている すべての汎用スキャンツールの「スタン ダード」へと発展してきたのです。 CHECK ENGINE 現在ではCARBとEPA米環境保護局が 制定したOBD基準に対する検証手段とし て、すべての自動車メーカが MastertechとGlobal OBD II ソフト ウェアを使用しているように思われます。 その経緯について教えてください。 CHECK 90年代初め、自動車メーカは乗用車と 中小トラックに関して、OBD規制への対 応を早急に実施する必要を認識していま した。そこで多くのメーカが94年型の車 両について、取り急ぎ前倒しでOBD II シ ステムの実装に取り組みました。その結 OBD関連の 故障に対応した 見やすい インジケータ ➔ ■ MTS3100 Masterteck 業界標準スキャンツール 13 J2005.1 RT O P E R AT I O N A L U S E AND SERVICE SOLUTIONS バーナード J. カー(42 歳) 同氏の経歴は、彼の自動車産業にかける情熱や自己研鑽に励む姿勢をよく表して います。サービスエンジニアとして職業生活の第一歩を踏み出した彼は、米国およ びカリフォルニア州の政府機関が優れた才能と専門知識に対して授与する資格と認 定 を い く つ も 取 得 し 、 1985年 に は National Institute of Automotive Service Excellenceにて、マスタ車両サービスエンジニアの資格を取得しています。職業人 として経験を深めるかたわら大学にも籍を置き、1989年にサンタバーバラ市立大学 から電気/電子工学の準理学士号を授与されました。1992年にはカリフォルニア州 立工芸大学(サンルイスオビスポ)の電気工学課程を修了し理学士号を取得、さら に2000年にはサンタバーバラ市立大学からコンピュータアプリケーション(ビジネ スアプリケーションが中心)の準理学士号を取得しています。 1989年にVetronix Corp.に入社し、現在Automotive Engineering Groupのマネー ジャとして、診断テスタの統合やアプリケーションソフトウェアおよび先端技術の 開発を担当しています。また8年前からサンタバーバラ市立大学の自動車エレクト ロニクス応用分野で教鞭をとっています。 果、一部のメーカはその初期型システム に対して2年間のフィールドテスト期間 を手にすることができましたが、一方で は量産型システムのリリースを1996年ま で待つことになりました。ご想像の通り に、自動車メーカでは、ECUに組み込ん だOBD II 対応プログラムがSAEとISOの 定めた仕様通りに機能しているかをテス トする際、外部に接続するテストツール を必要としていました。そこで MastertechとGlobal OBD II ソフトウェア に白羽の矢が立てられたわけです。事実、 OBD II の発効を目前に控えた段階でのこ とですが、ある自動車メーカのECUソフ トウェアで、 「PID $0E 点火時期の進角」 に関するエンコードが誤っていたことが あり、Vetronixのエンジニアがこれを発 見・指摘して、そのメーカではGlobal OBD II ソフトウェアを使用して不具合の 検証を行ないました。彼らがOBD II シス テム実装の初期段階で不具合を素早く発 見したこのツールを高く評価したことは 言うまでもありません。 14 RT J1.2005 自動車メーカの側でMastertechと Global OBD II ソフトウェアが必携の ツールであることはよく分かりましたが、 CARBやEPAなど監督官庁はどうだっ たのですか?自身の規定する要件の遵守 を公正な立場で検証するには、やはり Mastertechを評価せざるを得なかった のでは? ご指摘の通りです。自動車メーカに とって自社のOBD II システムが規制の要 件を満たしていることを確認する必要が あったように、監督機関の方でも自らの 定めた規制要件をメーカが本当に守って いるかを検証しなければなりませんでし た。1993年後半には、汎用スキャンツー ルの機能に関する推奨規格SAE J1978に 対応するソリューションを求めて、 CARBからVetronixに対して初めての接 触がありました。もちろん私たちは彼ら の要請に応え、以来CARBは当社の顧客 リストの上位に名を連ねています。 サービスエンジニアや自動車メーカ、さ らには監督官庁に至るまで、Vetronix のMastertechスキャンツールが「クラ ス最高」の製品として認められたという ことですね。Vetronixのテスタ出荷台 数は全世界で20万台を超えているそうで すが、今後の見通しはいかがですか?立 場を異にするユーザグループからの要求 に対し、会社はどのようにバランスを 取っていくのですか? すべての顧客が実施するOBD II の検証 作業をサポートしていく一方で、現在の CARBや自動車メーカ各社との重要な協 力関係も維持していきます。Vetronixは、 利害を異にするこれら顧客の間で、他社 とは一線を画した独自の立場を貫く考え です。そのために良好なコミュニケー ションを保ち、職業倫理を守り、何より も健全なエンジニアリングサービスを通 じてソフトウェアの実装と問題解決に取 り組んでいきます。こうした企業の姿勢 がやがて大きな違いを生み出していくと 考えています。Mastertech用Global OBD IIの開発・販売に携わるチームでは、車 両のライフサイクル診断を確立していく プロセスの中で、自分達の製品が業界に 広く受け入れられていることに大きな誇 りを感じています。