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FISCHERSCOPE
No.
07
01
J A PA N
10/09
FISCHER NEWSLETTER
Coating Thickness
Material Analysis
Microhardness
Material Testing
論説
株式会社フィッシャー・インストルメンツからのお知らせ
読者の皆様
代表取締役社長交代のお知らせ
FISCHERSCOPEニュースレター最新号をお届
けします。
今年もまた当社はヨーロッパ、アジアそして南
米でお客様に密着し、専門性を高めるべく投
資を行ってきました。ブラジル/サンパウロ、韓
国/ソウルという2ヶ所の現地法人開設と、イタ
リア/ミラノ、スペイン/バルセロナでのオフィス
移転によって、当社はグローバルなサービス、
専門性、販売のネットワークをさらに拡大しま
した。他のエリアでも当社はお客様に一層密
着した営業展開を図っています。例えばフィッ
シャーはここ数年で初めてバーゼルワールド
2012に参加し、「測定」のテーマで数多くのカ
スタマーセミナーを行い、新たなスタッフ採用
という形でアプリケーションラボのリソースを増
強しました。
本号の内容について: 世界的に安定した価
値への傾斜傾向から、ゴールド価格が最高レ
ベルになっています。フィッシャーの新製品
XAN 220型蛍光X線測定器は、迅速に非破
壊的方法で、そして何よりも信頼性のある形で
金含有量を調べるのに適したソリューションで
す。この装置の精度はこれまでに最高レベル
になりました。正確さは、フィッシャー所有のゴ
ールドスタンダードによって保証されます。これ
については最後のページの記事のほか、装
飾用宝石類やアクセサリ向け材料の簡単で
迅速な微量元素分析に関する最初の記事も
ご覧下さい。
測定器のほかにフィッシャーはそれらのため
の高品質のキャリブレーションスタンダードを
製作しています。それらを使用することによっ
て測定が正確であることを確信できます。例と
して3ページに新しいSnPbスタンダードをご紹
介します。
記事に対する皆様のフィードバックやコメント、
特別な測定課題についてのご質問など、お気
軽にお寄せ下さい。喜んでアドバイスさせて頂
きます。
Walter Mittelholzer
Shuji Kashiyama
いつもフィッシャー製品をご愛用いただき誠に有難うございます。
さて私儀、この度 樫山周治 は2012
年12月末日を以って当社代表取 締役
社 長を 退 任する ことに なりました 。日
本法人の設立から20年間の長きに亘
り、皆 様 方の温 かい ご 支 援 のお蔭を
もちまして、無事に業務を行うことが出
来ましたことを大変感謝しております。
なお、後任の社長職には 野中等 が
就 きま す が、関 係 各 位、特にフィッ シ
ャー製品をお使いの皆様方にはこれ
ま で以 上に ご 満 足いた だ け ま すよ う
努力して参りますので、私樫山周治 同様、何卒宜しくお引き立てのほどお願い申
し上げます。
《新社長 野中等より御挨拶》
謹啓 皆様におかれましては、益々ご
盛業のこととお慶び申し上げます。
この度、樫山周治前社長の後任とし
て、株式会社フィッシャー・インストルメ
ンツの代表取締役社長に就任いたし
ました。
創業者ヘルムート・フィッシャーによる
会社設立(ドイツ)から今年で60年。お
蔭様をもちまして、「膜厚測定と材料試
験装置分野の業界トップ企業」として、
世界的規模で成長を続けながら還暦
を迎えるに至りました。これもひとえに
皆様方のご愛顧の賜物と厚く御礼申し上げます。また私自身、現下の経済情勢の
大変厳しい折、新たな時代を迎える節目の年に、このような大役を仰せつかり、そ
の責任の重大さに身の引き締まる思いです。
弊社は、お客様の信頼を得てこそ事業が成り立つ会社です。これまで以上にお
客様に信頼され、ご愛顧いただけるよう、新たなソリューションの提供を鋭意推進
し、進化し続けて参りますので、今後とも倍旧のご高配を賜りますよう、衷心よりお
願い申し上げます。
謹白
CEO
社長
Helmut Fischer Holding AG
Fischer Instruments K.K.
Helmut Fischer AG
1958年 愛知県生まれ、1982年 防衛大学校 航空工学科卒業
1983年 丸文株式会社 入社、2003年 同社 中部支社長
2004年 株式会社フォーサイトテクノ 代表取締役副社長
2007年 同社 代表取締役社長、2010年 同社 相談役
2013年1月吉日
代表取締役社長
野中 等
実務の現場から
宝飾品やアクセサリ用材料の微量元素分析
図1: 宝飾品は人の皮膚に常時接触します。このため然るべき材料では有害物質含有量が制限されています。
消費財中の特定の化学元素の濃度を制限しようとする試みが世
界中で進められています。電子製品からの鉛、水銀などの元素の
「除去」の成果を受けて、今度は類似の規準が他の製品について
も導入されようとしています。対象は例えば宝飾品、時計部品、さら
にはハンドバッグ、財布あるいは衣服に付いている金属部品のよ
うなアクセサリです。それを推進しているのは、例えば米国の CPSC
のような国の機関のほかに、例えば有害物質を 含まない繊 維品
を目指して自ら尽力している組織のひとつである Oeko-Tex® のよう
な業界団体もあります。
微量元素
マトリックス
標準偏差
[ppm]
Pb
ABS
Al
0.5
2
Pb
Cu
Zn
Sn
真鍮、実マトリックス
SnBi2, 実マトリックス
SnBi50, 実マトリックス
13
20
0.6
10 – 30
5 – 15
50 – 100
制限の目標になっているものには多様な有機有害物質のほかに
重金属、とりわけ鉛、カドミウムおよびニッケルもあります。限界値
には国ないし業界によって大きなばらつきがあります。世界市場を
相手に生産を行っている企業にとっては、商活動を簡素化するた
めに世界的に最も厳しい規準に従う方が有意義です。つまり例え
ばカドミウムなら最大 100 ppm、鉛なら最大 90 ppm ということにな
ります。宝飾品やアクセサリに使われている金属部品はコスト上の
理由からむく材では製作されません。母材は特別に加工性の良
い適当な合金で作られ、これに後から装飾的な皮膜が施されま
す。この場合皮膜だけでなく母材も鉛やカドミウムを含まないもの
でなければなりません。ところがこのことを個別に検査するのは容
易なことではありません。そこで真鍮、亜鉛合金などのような母材
の 分析は、成 形や皮 膜 処 理に先立って行 うのが最 も効 率 的 で
す。
分析は ICP 光学発光分析装置または蛍光X線分析装置を使って
行うのが普通です。これらふたつの方法の長所は全く異なり、補
完的です。EDXRF 分析は非常に効率的且つ有利であり、検証力
は原則的に充分といえます。
(表1参照)。
より困難な XRF 測定課題については分析評価の際に簡単な統計
的な考察が重要です。分析は必ずいくつかの個別値の平均値を
ベースにすべきでしょう。
表1: 微量元素測定時の個別値の繰返し精度に関する代表値 (EDXRF)。標準偏
差は、ひとつの材料でなお検証できる最小濃度の直接的な尺度です (検証限界
~標準偏差の3倍)。
FISCHERSCOPE®
この表は、 SnBi はんだ、または真鍮中の微量の鉛よりもアルミ中
の微量の鉛を検証する方がはるかに簡単であることを示していま
す。何故そのようなことになるのでしょう? もしくはどうすればそのよ
No. 07
うな測定課題の難しさを査定できるのでしょう? 原則的に重い元
素(大きい原子番号)は軽いマトリックス材料(小さい原子番号)の
中では充分な検証性があります。 EDXRF によって、プラスチック、軽
金属または酸化物含有材料中での Pb 検証は大変良く機能しま
す。これに対し Fe, Cu, Zn 合金中ではこの検証はより難しくなりま
す。より正確な考察のためには蛍光スペクトル中での具体的な状
況を見なければなりません(個々の蛍光ラインの正確なエネルギ
ー、相互の吸収 / 励起挙動)。検証限界が深いことが、この方法の
能力にとってのひとつの重要な前提条件です。但しさらに測定値
の正しさも懐疑的に考察する必要があります。これを様々な測定
課題について調べました。
図2: XRF Pb 濃度測定と認証済みの設定値の相関関係。数値の正しさはキャリ
ブレーションする前にすでに非常に良好です。このことは労力の要する測定プロ
ここでは例として FISCHERSCOPE XDV®-SDD による ZnAl 鋳物合金
の複雑な XRF 分析のいくつかの結果を示すことにします(図2参
照)。測定値はキャリブレーション無しでもすでに、認証済みの設
定値に非常に近似しています。 FISCHER X-RAY シリーズは世界中
で宝飾品やアクセサリの製作材料のスクリーニングに採用されて
います。
セスには重要です。実際のコンポーネントにおける測定値のばらつきは純元素
ダニエル・スッター(博) 記
Dr. Daniel Sutter,
Helmut Fischer AG, スイス
におけるよりも大であるため、いくつかの個別測定値の平均値を使って作業しな
ければなりません(ここに示したのは 10 件の個別測定値の平均値、95 % 信頼区
間)。
詳しく見てみると
高信頼性領域での蛍光X線分析のための新しい
SnPb キャリブレーションスタンダード
図1: 装備済みの様々な基板。例えば電子カードのはんだ接合部や皮膜は FISCHERSCOPE® XDAL® で測定できます。
非破壊の蛍光X線法は錫はんだや錫皮膜の組成分析に最適で
す。とくにはんだ用錫合金中の Pb の分析は FISCHERSCOPE®
X-RAY シリーズが広く普及している重要な用例のひとつです。一方
では健康上の理由から Pb の許容量は制限されていますが、他
No. 07
方、Pb が最小濃度ではんだ用錫に含まれていなくてはならない
用途もあります。指令 RoHS は、電子部品に含まれ環境を侵害す
る 様々な有 害 物 質が増えないよう、それ ら の 使 用を 規 制してお
り、Pb もそのひとつです。こうして近年、Pbを含むはんだが Pb を含
FISCHERSCOPE®
まないものに置き換えられると共に、Pb が 1,000 ppm という限界
値未満であるかどうかの検査が義務付けられました。消費者製品
安全性向上法 (CPSIA) も、Pb の使用を規制し、2011 年には許容
限界値を 100 ppm に下げました。
ソフトウエア WinFTM を使うことによって、基板、プラグ、接点、BGA
あるいは SMD 抵抗やコンデンサといった様々な電子部品のSnPb
皮膜の膜 厚を測定でき、そうしてはじめて正しい組成も確定でき
ます(図1)。SMD 部品の最上皮膜の SnPb 組成を測定する際に
は、セラミックまたは隠れている皮膜の中の Pb も現れることがあり
得るという点に留意しなければなりません。このような場合、このこ
とに配慮した特別な測定課題があります。Sn とPbは共晶合金を
形成します。その場合必ず Sn の豊富な位相と Pb の豊富な位相
が隣り合って見られます。Sn 中の Pb の最大溶性は 2.5 % (質量)
、 Pb 中の Sn のそれは 19% (質量)です。このときこの合金の位相
の実際の組成と均一性ないし組織はいずれにせよ極めて様々な
要因に依存します。影響を及ぼすのはとりわけ製作過程、例えば
合金を急冷したかそれともゆっくり冷却したかの違い、表面の機
械加工、サンプルの貯蔵や経年劣化などです。
しかしながら航空や医療技術の領域(高信頼性用途)ではもっぱ
ら Pb を含有するはんだが求められています。そこでは、はんだ用
合金中に少なくとも 3% のPbが含まれていることを証明しなくては
なりません。その理由は純粋なSnではひげ結晶(ウィスカー)が形
成される傾向があるためです。ひげ結晶とは針状の Sn 単結晶で、
或る期間を 経て表面に発生し、短 絡 の引き金に なり得 るもので
す。従ってこれらの成分の検査は、大抵の場合全ての部品の全品
チェックを必要とする、重要で責任ある課題のひとつなのです。蛍
光X線分析によってはんだ用錫合金の組成を迅速に且つ非破壊
式で測定できます。
基準サンプル A
SnPb3
サンプル
SnPb3
サンプル
SnPb8
共晶SnPb38
10 μm
10 μm
10 μm
50 μm
Pb 設定値、質量 %
3,1 (+/- 0,15)
3,0
8,5
38
測定 Pb、質量 %
3,0
2,8
7,5
33,6
3
6
12
12
0,05
0,11
0,3
1,0
ワイヤ
SEM
後方散乱電子像
設定値と測定値の
相対的な相違
Sinh (不均一性)
表1: FISCHERSCOPE® XDAL® による様々な SnPb 合金の測定 (50 kV, Niフィルタ、 0.2mm × 0.2 mm スクリーン、面積は 64 の点のある 3 mm × 3 mm、 測定時間 100 s、非均
一性 sinh は sinh2 = sges2 – swdh2 から計算)。
図2: FISCHERSCOPE®
XDV®-μ(約
20㎛のFWHMのポリキャピラリ、50 kV、Al
フィルタ、50×25 s、繰返し精度0.031%)に
よるSEM後方散乱電子像、並びに表1の
基準材料A(上)と新しいSnPb材料(下)の
長さ1
mmにわたるライン走査をそれぞれ
示しています。
FISCHERSCOPE®
No. 07
表1は、Pb 含有量が 3% よりも大きい様々な SnPb サンプルの
SEM 後方散乱電子像と、それに付属するスタンダード無しの結果
を示しています。明るい「島」が Pb の豊富な位相、暗灰色の「マトリ
ックス」が Sn の豊富な位相です。「島」は広さがまちまちであり得る
こと、そして多かれ少なかれ均一に分布していることも分かります。
大きさないし 不均一 性は蛍光 X 線ライ ンの強 度比にも影響しま
す。均一な基準サンプルの場合にはスタンダード無しの XRF 値が
設定値と非常に良く一致するので、Pb 値をスタンダード無しでもす
でに充分にチェックできます。ところが不均一性が高まると、設定
値に対する偏差がより大きくなります(表1参照)。
文献にも記されている経年劣化効果は、Pb 含有量が ppm 領域
の SnPb 合金で目につくことがあります。例えばとくに不適切に(例
えば高過ぎる温度で)保管されたサンプルでは数年後に Pb 濃度
の増大が見られました。Pb は表面付近で豊富になっていました。
このようなときこの経年劣化したサンプルの表面は測定の前に再
度研磨しなければなりません。但しその際にはサンプルに異物が
混入しないよう注意する必要があります。この問題は、SnPb 系に
関する基準 材料を念入りに準 備し、定期的にチェックすることが
いかに重要であるかをはっきりと示しています。Helmut
Fischer
GmbH は両方の用途 (RoHS および高信頼性) 向けに、材料の均
一性に充分に傾注して製作した基準材料を提供しています。
新しい製造方法によって 3 % の Pb を含む SnPb 合金の品質を
今や大幅に向上させることができたため、50 μm 未満のスポットサ
イズしか無い蛍光 X 線装置 (例えばポリキャピラリ光学系を備え
たXDV®-μ)を使用した場合でさえ、Pb が豊富な位相を非常に良く
均一に分布させることができました。図2 は、条件付きでなければ
微量分析には適さない従来の SnPb3 基準材料との対比で、この
新しい合金に付属する SEM 後方散乱電子像と、サンプル全体に
わたるライン走査を示したものです。FISCHER の基準材料は、考え
られ る経 年 劣化効果を排除し、高品質を保証するために、定 期
的な間隔でチェックもしています。
ジモーネ・ディル(博) 記
Dr. Simone Dill
詳しく見てみると
原子間力顕微鏡を備えたPICODENTOR®:
ナノメートル領域の組織の可視化と定量化
図2: BK7 ガラス上での最大力 5 mN による硬さ測定
残留押込み深さは 100 nm 未満。
ここ数年で非常に多様な材料の表面特 性に関する要求が大幅
に高まっています。傷が付かず、汚れを撥ね、静電帯電防止性が
あり、反射性があり、あるいは記憶能力のある表面を実現するため
に、高度に複雑な皮膜系が開発されてきました。
これらは超薄膜であることが多いのですが、それらの力学的特性
を明らかにするには、皮膜の硬さあるいは弾性の特性値を提 供
する計装化された押込み試験が採用されます。そのためにはピコ
メートル 領域 での正確な移動量測定と数 マイクロニュートンレベ
ル未満までの力発生が必要になります。加えて、極めて小さい組
図1: 原子間力顕微鏡を備えた PICODENTOR® HM500。
No. 07
FISCHERSCOPE®
織を測定するためには、サンプルを正確にポジショニングできなく
てはなりません。材料特性について更なる説得力あるデータを得
るために、オプションとして PICODENTOR® HM500 に原子間力顕
微鏡 (AFM) を装備することもできます (図1)。再起動精度が
に加えて、AFM を使えば、極めて小さな最大力で圧子の位相やと
りわけ押込み深さも理想的に提示することができます。BK7 ガラス
板上で Fmax = 5 mN で測定を行いました (図2)。選択したこの最大
力で生じた残留押込み深さは 50 nm 未満です。
図3: 最大力 5 mN での押込み深さ (Z軸の目盛りは 50 nm) の AFM 測定
図4: 明らかに膨れが認められるタングステン上の押込み (Fmax = 50 mN)。
(3Dプレゼンテーション)。
< 0,5 μm のプログラミング可能なXYテーブル、アクティブな振動
減衰テーブルおよび密閉式の測定チャンバを備えることにより、
そのほかの AFM 測定を行うための理想的な前提条件を整えて
います。
「原子間力顕微鏡」とは、光学顕微鏡と違ってサンプル表面を物
理的に走査する測定針を備えた顕微鏡群の総称です。そこで使
われているのは、高さの相違を測定するために非常に細いシリコ
ン針を備えた「キャンティレバー」構造です。測定面が直線的に走
査され、点毎の高さ情報が高精度で把捉されます。その場 合X Y
方向の分 解能は測定 針 先端 の丸味に よって規 定 されま す が、
10 nm 程度が普通です。得られるデータは様々な形で提示するこ
とができます。すなわち高さ断面を示す表面のトポグラフィーのほ
か、 AFM では一連のその他のサイズも測定できます。キャリブレ
ーションしたZ軸 (基本ノイズ < 0.05 nm) による高精度の距離測定
図5: タングステン上での測定の光学撮影 (Fmax = 50 mN, 100 倍に拡大)
細部は明らかに分かりにくくなっています。
3D のプレゼンテーションによって、AFM でなければもはや見ること
のできない細部が可視化されます (図5)。こうして一定のケースで
測定結果の正確な分析評価を行うことができます。
ターニア・ハース(博)、
Dr. Tanja Haas,
ベルント・ビンダー(博) 記
Dr. Bernhard Nensel
FISCHERSCOPE®
No. 07
実務の現場から
貴社の膜厚測定器の正しいキャリブレーショ
ン状態をご存知ですか?
それとも調整する方がよいかを選択します。ほかの情報と並んで、
求めた測定不確実性が表示されますが、これはその時点のシステ
ムのキャリブレーション状態を表します (図3参照)。この装置不確
実性は、それに続く測定値について全体不確実性を確認しようと
するときにひとつの必要な要素になります。
もちろん測定システムの不確実性が、使用する基準スタンダード
のそれよりも小さいということは決してあり得ません。たとえ測定器
の調整が必要であっても、キャリブレーション状態は基準スタンダ
ードの不確実性の枠内でしか改善できません。つまり、より正確な
測定を追及するのであれば、相応により小さい不確実性の基準ス
タンダード も必要になります。確認された不確実性が厳密な意味
で該当するのは、基準スタンダードの膜厚範囲そのものの中だけ
です。膜厚の間隔が比較的大きな測定が予想されるときは、測定
範囲をカバーする 2 つの基準スタンダードを使用すべきでしょう。
キャリブレーションのチェックと必要な場 合の調整は基準箔を使
って、同じく予想される母材(材料特性と形状)上で実施すべきで
しょう。こうすることによってそれに続く測定の重要な影響要因がす
図1: プローブは常に正しくキャリブレーションしなければなりません。
キャリブレーションチェック
数多くの極めて多様な用途で接触性の膜厚測定器が採用されて
います。但し測定対象が薄い電気めっきであるか、自動車塗装で
あるか それとも厚い防食皮膜であるかに関わり無く、求められ る
のは大抵の場 合品質管理上の測定値です。というのはそれらの
測定値は所望の公差が守られていることをお客様に対して証明
するのに役立つからです。同様に、例えばサプライヤーとユーザー
の間での測定値の比較において、測定器の結果の対比性が確保
されなくてはなりません。それには、実施した測定の不確実性を
ISO/IEC ガイド 98-3 に従って確認し、それと共に第一歩としてプロ
ーブの現実のキャリブレーション状態を調べることが必要です。必
ずしも実際のユーザーの誰 もがこのような確 認を問題無く正しく
行えるわけではありません。
結果
キャリブレーション
はOKです
詳細
差異
0.125 µm
不確実性 (k=2):
0.955 µm
試験値 E:
0.131
Repeat
そこで当社の測定器はこれらの課題を実現するための簡単で実
際的な補助手段を提供します。プローブのキャリブレーション状態
は基準スタンダードによって確認できます。これは大抵の場 合膜
厚データと不確実性データを備えた測定済み箔です。さてチェッ
クはどのように行うのでしょうか? メニュー「キャリブレーション」でフ
ァンクション「キャリブレーションのチェック」を有効にしてから、基準
スタンダードの膜厚値と不確実性を入力 (図2参照) し、続いて数
回の測定を実施します。これが終わり完了です。測定器は続いて、
求めた膜厚が測定不確実性の枠内で基準値に合致しているか、
キャリブレーションのチェック
図3: キャリブレーションチェ
KAL
OK
ックの結果。
でに一緒に把捉され、不確実性の面で考慮され、ないしは調整に
よって最小化されます。そうでなければこれらの余計なエラー要素
を別個に把捉せざるを得ないと思われます。さらに、とりわけ母材
表面が粗い場 合には、繰返し 測定の回数を 増やすことによって
不確実性を低減できることが多くあります。実施した個別測定の
回数は自動的に把捉され、不確実性計算の中で考慮されます。
不確実性の確認を伴う正しい品質管理上の膜厚測定は決して難
しい理屈ではありませんが、多くのユーザーにとっては問題になり
ます。紹介した補助手段は実際的な解決策になると共に、このス
テップを本質的に簡素化します。
不確実性
不確実性の種別を入
力して下さい
公差(㎛)
ハンス・ペーター・フォルマー(博) 記
Dr. Hans-Peter Vollmar
相対的公差(%)
U(k=2) (㎛)
図2: キャリブレーションの
チェック時のFMP100の表
Uncertainty =
OK
N o . 0 7 µm
Delete
示例
これは箔の不確実性
の入力。
FISCHERSCOPE®
実務の現場から
新しい技術とイメージのXAN®測定器シリーズ
FISCHERSCOPE X-RAY® XAN® 220とXAN® 250
XAN® 220
XAN® 220 は貴金属合金の分析に特化して設計してあります。これ
は直径 1 mm (オプションで他のサイズもあり)の固定式スクリーン、
タングステン陽極および固定式一次フィルタから成るマイクロフォー
カスX線管を装備しています。各 XAN® 220 はそれぞれ貴金属分析
用のセットアップにして納入します。それには工場でのキャリブレー
ションによる代表的な測定アプリケーションが含まれています。上
の表 (図3) は 12 件のスタンダードによるキャリブレーションの結果
を示したものです。ここでは、スタンダードの設定値 (Au(%)比率) と、
WinFTM® ソフトウエアによってキャリブレーション無しで、つまりスタ
図1: 様々な新しい XAN® 測定器によって、金の測定から複数元素が絡む複雑な
材料分析まで、多様な測定が可能。
測定器シリーズ FISCHERSCOPE X-RAY XAN® が発売されたのは12
年前です。
この測定器シリーズはコンパクトで高性能な分析システムとして設
計されたものであり、発売以来好評いただいております。その主要
な用途のひとつは汎用の研究用測定器として、もうひとつは貴金属
分析あるいは有害物質分析といった特別なアプリケーション用途
です。これまで発売以来僅かな変更しか行って来なかったこの測
定器シリーズですが、今回根本的にリニューアルし、数多くの技術
的改善を施しました。これにより FISCHERSCOPE X-RAY XAN® は、今
後益々高度化するお客様のご要求にお応えいたします。
新技術の内容
XAN® 220 と XAN® 250 には検出器にシリコンドリフトディテクター
(SDD) を使用しており、これによって性能が大幅に向上しています。
これにより、従来の XAN 測定器の少なくとも倍のカウントレートで検
出することができ、同じ精度でも測定時間を半減できます。当然な
がら、優れたエネルギー分解能、高いカウントレートでの検出の可
能性、低エネルギーに対する感度の向上といった SDD のその他
の利点もすべて利用できます。ほかにも新技術はありますが、それ
らは何よりも先ず、測定器を使用する日常的な作業効率を向上させ
ます。例えば今や測定点観察のための USB カメラが標準装備にな
っています。これによって分析値計算用の追加のビデオカードが無
くなりました。その上、どの測定器も非常に静かなファンを備え、オフ
ィスやショールームでも問題無く使用できます。
図3: 12 件のスタンダードによる XAN® のキャリブレーション結果。
ンダード無しで求めた値 (Au(%)理論値) の比較が示されています。
スタンダード無しの値でさえすでに設定値と非常に良く一致するこ
と、キャリブレーションでは僅かな補正を行うだけでよいことが分か
ります。このことによってキャリブレーションには含まれていない合金
タイプについても高精度が保証されます。
XAN® 250
XAN® 250 は XAN® 220 に加えて 6 個の交換式の一次フィルタを
装備しており、そのことによって一次励起放射線を多くの様々な測
定課題について最適に適応させることができます。そのほかに直径
が 0.2 ~ 2 mm の電動の選択式スクリーンを 4 つ備えています。こ
れにより、非常に様々なサイズのサンプル面を1台の測定器で調べ
ることができます。つまり XAN® 250 を使えば、合金分析、有害物質
含有量の確認、 nm 領域までの金属皮膜の測定あるいは原子番
号の小さな軽元素の調査といった、非常に様々な測定課題を解決
できます。このため本装置は汎用の研究所向けの装置としても最
適です。
ベルンハルト・ネンゼル(博) 記
Dr. Bernhard Nensel
Fischer Instruments K.K.
Shinmei 1-9-16, Souka-shi | Saitama-ken 340-0012 / Japan
Tel: (+81) 48 929 3455 | Fax: (+81) 48 929 3451
[email protected]
図2: 新しい XAN® 測定器による測定
この例では、金の試料を載せるだけで非破壊測定。
FISCHERSCOPE®
No. 07
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