...

抄録はこちら[PDF 67KB]

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

抄録はこちら[PDF 67KB]
ST3 『感染と免疫』
ST3-1
微生物由来リポタンパク質により誘導される Toll-like receptor 2 を介した細胞応答に
ついて
引頭 毅 北海道大院・歯・口腔分子微生物学
Toll-like receptor (TLR)は,細菌やウイルス,真菌等が有する特定の構成成分を認識し,NF-κB
等の種々の転写因子活性化を通して,宿主の自然免疫機構活性化を誘導しうる生体防御分子群であ
る。現在哺乳類の TLR は 11 種同定されているが,TLR2 は最も多様な分子パターンの認識に関与
することが報告されており,
グラム陽性菌のペプチドグリカン,
種々の細菌由来のリポタンパク質,
結核菌のリポアラビノマンナン,酵母のザイモザン等がそのリガンドとして知られている。細胞壁
の無い微生物であるマイコプラズマの細胞膜リポタンパク質(LP)も TLR2 リガンドとして作用
し,種々の宿主細胞応答を誘導しうるが,我々は特に LP が TLR2 を介して誘導する細胞死につい
て検討を行ってきた。LP による TLR2 を介した細胞死誘導には,MyD88 や FADD,caspase-8 を
介したデスシグナル経路,さらには活性酸素産生,ASK1,p38 を介したストレスシグナル経路が
重要な役割を果たし,これらのシグナルの発動には一定量以上のリガンドの存在が必要であること
が明らかとなった。本シンポジウムでは,TLR2 のデスレセプターとしての機能に着目しながら,
微生物センサーである TLR2 の細胞応答における役割について考察していきたい。
ST3-2
LPS シグナルの抑制因子 SOCS の新たな機能の解析
舛廣 善和
九州大院・歯・口腔感染免疫学
細菌成分の LPS は宿主細胞の TLR4 に結合し,下流のシグナル伝達を活性化する。このシグナ
ル伝達により活性化された NF-κB は様々な炎症性サイトカインの発現を誘導し,患部では炎症が
起きる。
サイトカインシグナル抑制因子 SOCS は,サイトカインや成長ホルモン依存的に発現し,主に
JAK-STAT 系においては,活性型(リン酸化型)JAK に直接相互作用し,そのシグナル伝達を抑
制する。近年,SOCS が LPS シグナル伝達系においても抑制因子として働くことが報告された。
しかし,この抑制機構については,IRAK や NF-κB(p65)との相互作用の報告があるものの,詳細
は明白ではない。
更に近年,SOCS と病態との関連が次々と報告され,SOCS がアトピー性皮膚炎,喘息,リウマ
チ,癌に深く関与していることが明かとなってきてた。しかし,これらの病態と SOCS がどのよう
な分子メカニズムで関連しているのかは,未だ明らかではない。そこで本研究では,これらの分子
機構を明らかにする目的で SOCS 相互作用因子群の解明を試みている。本講演ではこの解析を中心
に,今後の展望も交え報告する。
ST3-3
A 群レンサ球菌のフィブロネクチン結合タンパク FbaB の機能解析とその発現調節機
構
寺尾 豊 大阪大院・歯・口腔細菌学
A 群レンサ球菌(GAS)は咽頭・喉頭から感染する扁桃炎や猩紅熱の起因菌として知られている。
近年,世界規模で発症が認められる劇症型 GAS 感染症(STSS)は,病態の進行が急激で死亡率も高
いため,発症機構の解析や治療法の確立が求められている。これまでの生化学的手法により,数多
くの病原因子が報告されたが,STSS 発症の機序は不明な点が多い。その理由としては,未知の病
原因子が数多く存在していることが考えられる。はじめに,感染の第一段階である付着・侵入に関
与する新規病原因子を,ゲノムデータベースから同定した。付着・侵入に関与する菌体表層タンパ
クは,フィブロネクチン(Fn)を介して宿主細胞のインテグリンと結合することが知られている。Fn
fbaB 遺伝子を得た。
結合ドメインとグラム陽性球菌の菌体結合 LPXTG モチーフによる検索を行い,
次に,
菌株が分離された病態ごとに FbaB タンパクの有無を Western blot 法で解析した結果,
STSS
由来株において有意に発現していることが示された。本シンポジウムでは,FbaB の機能解析に加
えてゲノムデータベースを用いた発現調節機構の解析結果についても報告したい。
ST3-4
Porphyromonas gingivalis の血小板凝集および赤血球凝集の機構
内藤 真理子
長崎大院・医歯薬学総合・口腔病原微生物学
歯周疾患は心血管疾患のリスクファクターである事がいくつかの疫学調査で指摘されている。
近
年,遺伝子改変技術を用いて開発されたアテローム性動脈硬化症のモデルマウスを用いた実験によ
り歯周病関連細菌 Porphyromonas gingivalis が動脈硬化症の発症および進行を増進させる事が明
らかになった。
また,
細菌性心内膜炎の患部より P. gingivalis が検出されることも報告されている。
アテローム性動脈硬化症の発症初期には血小板の活性化による凝集形成が重要なステップである。
P. gingivalis の血小板凝集活性については本菌の蛋白分解酵素 gingipain の関与が示されているが,
実際の血漿中での血小板凝集活性については明らかにされていなかった。我々は P. gingivalis の
gingipain の遺伝子を破壊した変異株を用いた実験により蛋白分解活性とは別の新たな血小板凝集
のメカニズムを明らかにした。また本菌の赤血球凝集活性の活性についても同様のメカニズムが関
与していることが示唆された。これらの知見は動脈硬化症や細菌性心内膜炎の予防法の開発におい
て意義深いと考えている。
ST3-5
口腔トレポネーマ由来複合糖質の化学構造と免疫生物学的作用
朝井 康行
朝日大・歯・口腔微生物学
運動性らせん状細菌であるスピロヘータは,歯周病患者の歯肉縁下プラ−クより高頻度に分離さ
れるが,その病態形成への関与については不明な点が多い。本研究は口腔トレポネーマの一つであ
る Treponema medium 菌体から複合糖質画分(Tm-Gp)を抽出し,その化学構造ならびに免疫生
物学的作用について検討した。その結果,Tm-GP は,4 糖 2 アミノ酸を繰り返し構造とする多糖
にホスファチジルグリセロ−ル(PG)が結合した構造であった。Tm-GP は,病原因子関連分子パ
ターンであるリポ多糖(LPS)やペプチドグリカンによる単球/マクロファージの活性化を
CD14/LPS 結合タンパク(LBP)機能阻害により抑制することを明らかにした。また,種々の歯周
病原細菌由来温水・フェノール抽出物による歯肉線維芽細胞からの IL-8 産生および ICAM-1 発現
誘導は,Tm-Gp により抑制された。さらにこれら抑制作用は,Tm-Gp 構造中の PG によって担わ
れることを明らかにした。これらの結果から,T. medium は歯周病巣において病態の慢性化に関与
していることが示唆される。
ST3-6
口腔粘膜のペプチドグリカン認識機構—特に NOD と PGRP—
上原 亜希子 1・2,高田 春比古 1
1 東北大院・歯・口腔微生物学,2 東北大院・歯・口腔分子制御学
ペプチドグリカン(PGN)はほとんど全ての細菌種の細胞壁骨格をなす。免疫強化作用をはじめ
とする PGN の多彩な生物活性がムラミルジペプチド(MDP)で再現される。PGN は Toll-like
receptor (TLR)2 のリガンドとされるが,MDP は TLR2 非依存的に作用する。最近,
nucleotide-binding oligomerization domain (NOD)2 と NOD1 分子がそれぞれ PGN の MDP 部分
とジアミノピメリン酸(DAP)含有ペプチド部分(グラム陰性菌の PGN に一般的)を認識する細
胞内レセプターであることが証明された。本講演では,ヒト口腔上皮細胞での PGN recognition
protein (PGRP; PGRP-L, -I alpha, -I beta および-S)発現に対する各種 TLR ならびに NOD1/2 リガ
ンドの作用とヒト単球系細胞に対するNOD 系とTLR 系リガンドの相乗作用を紹介してPGN の免
疫生物活性を展望したいと考えている。
Fly UP