...

92 - 情報規格調査会

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

92 - 情報規格調査会
No. 92
2011 年 12 月
目
次
標準活動トピックス:
地デジと MPEG...................................................................... 2
中須 英輔(日本放送協会)
2011 年 12 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................. 4
最近の国際会議から:
JTC 1/WG 6(Corporate Governance of IT:CGIT)会議報告 ...................................... 5
平野 芳行
JTC 1/SWG on Planning 会議報告 ............................................................. 5
鈴木 俊宏(日本オラクル(株))
JTC 1/SWG on Accessibility 会議報告......................................................... 6
野村 茂豊((株)日立製作所)
SC 22(Programming languages, their environments and system software interfaces)総会報告 ... 8
石畑 清(明治大学)
SC 24(Computer Graphics, image processing and environmental data representation)総会報告 .. 9
青野 雅樹(豊橋技術科学大学)
SC 29(Coding of Audio, Picture, Multimedia and Hypermedia Information)総会報告........... 11
高村 誠之(日本電信電話(株))
SC 35(User interface)総会報告 ........................................................... 12
山本 喜一(慶應義塾大学)
SC 36(Information Technology for Learning, Education and Training)総会報告............... 13
仲林 清(千葉工業大学)
SC 37(Biometrics)総会報告 ............................................................... 16
瀬戸 洋一(産業技術大学院大学)
平成 23 年度 工業標準化事業表彰の紹介................................................. 20
声のページ:
標準化活動で学んだこと・得たこと .......................................................... 22
岡崎 靖子(日本アイ・ビー・エム(株))
国際規格開発賞の表彰 ................................................................ 22
解説: 標準化エンジニアリング........................................................ 23
山中 豊(経済産業省)
解説: ディレクトリ標準の最新状況.................................................... 28
戸部 美春(NTT アドバンステクノロジ(株))
編集後記 ............................................................................ 30
<標準活動トピックス>
地デジと MPEG
中須 英輔(日本放送協会)
1. はじめに
2011 年 7 月 24 日,東日本大震災
で大きな被害を受けた東北 3 県(岩
表 1 SC 29/WG 11 で標準化された主な国際標準
規格名
タイトル
手,宮城,福島)を除く 44 都道府
Coding
of
moving
pictures
and associated audio for
県で地上アナログ放送が終了し, MPEG-1 ISO/IEC 11172
digital storage media at up to about 1,5 Mbit/s
60 年近い放送の歴史に幕を閉じた.
Generic coding of moving pictures and associated audio
また,放送衛星による BS アナログ MPEG-2 ISO/IEC 13818
information
放送も同日終了し,テレビがデジ
MPEG-4 ISO/IEC 14496 Coding of audio-visual objects
タル放送に完全移行する新たな放
MPEG-7 ISO/IEC 15938 Multimedia content description interface
送の時代を迎えることとなった.
MPEG-21 ISO/IEC 21000 Multimedia framework
地上デジタル放送は 1998 年にイ
MPEG-A ISO/IEC 23000 Multimedia application format
ギリス,アメリカで開始され,い
まや世界中でアナログ放送からデ
通の参照モデルをもとに透明性の高い技術検討が行
ジタル放送への移行が進められている.デジタル放送
われ,当時急速に普及が進んだインターネットや E
方式の検討は 1990 年頃より本格的に始められたが,
メールを活用して会議の合間にも熱心な議論や意見
MPEG-2 の国際標準化とほぼ同じ時期となったため,
交換が行われた.また,文書の電子化,アーカイブス
多くの放送関係者が SC 29/WG 11 会合に参加して
化によって標準化作業がより効率的に進められるよ
MPEG-2 の標準化作業に寄与した.こうしてできあが
うになった時期でもある.
った MPEG-2 規格(ISO/IEC 13818)は世界中で使わ
MPEG-2 規格は,当初,標準テレビを対象に標準化
れ,デジタル放送とハイビジョンの進展に大きく貢献
が始まったが,その後 MPEG-3 として予定していた
した.
HDTV の符号化を統合する形となり,1994 年末に標
MPEG-2 は,アプリケーションに依存しない汎用符
準化された.また,MPEG-2 規格は共通文書で ITU-T
号化(Generic coding)として標準化が進められ,現在,
(国際電気通信連合-電気通信標準化部門)H.262 規
放送,通信,DVD や Blu-ray Disc などの民生用機器の
格としても勧告化された.
符号化方式として広く用いられている.MPEG 規格の
MPEG-2 以前の符号化規格は,DSM(Digital Storage
採用により,放送・通信連携サービス,携帯端末によ
Media)用の MPEG-1 規格,CCITT(国際電信電話諮
る屋外でのテレビ視聴,HDD ビデオレコーダによる
問委員会,現 ITU-T)の TV 電話会議用 H.261 規格,
タイムシフト視聴,VOD(Video On Demand)等,今
CCIR(国際無線通信諮問委員会,現 ITU-R 国際電気
日の魅力的な放送サービスが実現した.
通信連合-無線通信部門)の TV 番組素材伝送用勧告
ここでは,MPEG-2 標準化当時のデジタル放送立ち
723 など,対象とするアプリケーションや映像信号に
上げ期を振り返るとともに,デジタル放送と MPEG
よってそれぞれ異なる方式が標準化されていた.
との関係について紹介する.
MPEG-2 規格では,デジタル技術の利点を活かして,
2. MPEG 規格の概要
通信,放送,民生用機器などで共通に使用する汎用符
“MPEG”は,映像,音声,マルチメディアの符号
号化方式として標準化が行われた.広範なアプリケー
化に関する国際標準化を推進する ISO/IEC JTC 1/SC
ションに対応するため,各アプリケーションの要求条
29 傘下の WG 11 で標準化された規格の総称であるが, 件を整理し,プロファイルとレベルの規定によって仕
その名前はデジタルビデオ,オーディオの普及ととも
様が決められた.プロファイルでは使用できる符号化
に,一般の人にも大変馴染み深い言葉となった.
ツールや符号化機能などを規定し,レベルでは HDTV
SC 29/WG 11 で標準化された,主な MPEG 規格を
や SDTV,縮小動画などを想定して画素数やフレーム
表 1 に示す.
周波数,ビットレートなどの上限値が定められた.
MPEG-2 の標準化は 1990 年に始まり,その後,年 4
また,技術的な仕様が決まった後も,放送局や研究
~5 回のペースで会合が開かれて毎回 200 人以上の幅
機関などが中心となって各プロファイル・レベルの画
広い分野の専門家が参加した.提案方式の審議では共
質・音質評価実験を実施して公平な性能確認を行った
ことも世の中の信頼につながった
表 2 MPEG とデジタル放送規格
と考える.標準化された技術が市
規格名
デジタル放送規格
場に広まるためには,関連特許の
MPEG-2 Part 1: Systems
多重化
ライセンス条件の明確化,実機の
Part 2: Video
映像符号化(テレビ)
相互接続性の確保なども重要であ
Part 7: Advanced Audio Coding (AAC)
音声符号化
る.それぞれ MPEG-LA,Pro-MPEG
MPEG-4
Part
10:
Advanced
Video
Coding
(AVC)
映像符号化(ワンセグ)
などの組織が立ち上がり,多くの
関係者がこれらの課題に取り組ん
た.
だ点も大きい.
国内のデジタル放送規格は ARIB(電波産業会)を
その後,画像中の人物などの任意形状の被写体映像
中心に策定が進められ,表
2 に示すように,映像符号
を符号化可能なオブジェクト符号化 MPEG-4 の標準
化,音声符号化,多重化に MPEG 規格が採用された.
化が始まり,1999 年に映像符号化として MPEG-4
デジタル放送は,サービスや品質に応じて映像フォ
Visual(ISO/IEC 14496-2)が標準化された.MPEG で
ーマットやビットレートを比較的自由に選べるなど,
は,さらに高い圧縮率を実現する映像符号化方式を目
柔軟で高い機能を実現している.MPEG-2 システム規
指して ITU-T ビデオ符号化専門家グループ(VCEG:
格の多重化技術により,
ハイビジョンと複数の標準テ
Video Coding Experts Group)と合同で検討を行い,
レビ放送との時間による切替え,5.1ch 音響やステレ
2003 年に MPEG-4 Part 10(AVC: Advanced Video
オ,モノラルなどの多様な音声サービスが可能となっ
Coding)が標準化された.
この規格は ITU-T 勧告 H.264
た.また,映像,音声だけでなく,様々なデータを統
としても規格化されている.H.264/AVC 規格は,
一的に扱うことができるため,文字や静止画,簡易動
MPEG-2 の 2 倍程度の圧縮率を実現し,新しい映像サ
画などのデータ放送,音声多重や字幕放送など,多様
ービスやシステムに広く使われている.
で柔軟な放送サービスやデジタルの利点を活かした
3. デジタル放送と MPEG
人にやさしい放送も可能となった.
MPEG-2 の標準化では,当初より CCITT と協力し
MPEG-2 映像規格では様々なプロファイルが標準
て作業が進められたが,さらに CCIR をはじめ,EBU,
化されたが,日本の放送では,国際的に各種応用で広
VADIS,ATSC,SMPTE,Grand Alliance,Cable Labs.
く用いられ高い圧縮率が可能なメインプロファイル
などの放送およびケーブルテレビ関連の標準化機関
が採用された.MPEG-2 映像符号化により地上波でも
やプロジェクトとも協力して標準化が行われた.日本
ハイビジョン放送が可能となり,一般家庭で高画質・
国内でも SC 29 専門委員会の下の MPEG 国内委員会
高音質のハイビジョンが楽しめる時代が到来し,大画
に BTA(放送技術開発協議会,現 ARIB)からリエゾ
面の薄型テレビやディスクレコーダの普及につなが
ン委員が参加して放送応用への対応に貢献した.
った.音声符号化は,1997 年に MPEG-2 Part7(ISO/IEC
MPEG へは BTA 等から,以下のような放送応用の要
13818-7)として標準化された AAC(Advanced Audio
求条件が提出され,方式を決める上で考慮された.
Coding)が採用された.ヨーロッパでは,MPEG-1 と
・ 標準テレビ,HDTV など各種映像信号に対応
互換性のある MPEG-2 Part3(ISO/IEC 13818-3)の BC
・ 幅広いビットレートに対応した符号化が可能
(Backward Compatible)方式が採用されたが,日本で
・ 低遅延モードを含む
は,高品質で符号化効率の高い AAC を選択した.ア
・ HDTV と標準テレビの階層的な符号化が可能
メリカの ATV では,Dolby 社の AC-3 が音声符号化と
・ 伝送路エラーに応じた段階的な画質低下
して採用されていたので,AAC 規格を採用した放送
映像・音声符号化および多重化方式を共通化すること
は日本が初めてであった.
で,コンテンツや符号化データの交換や流通,運用が
地上デジタル放送の ISDB-T 方式は,1 チャンネル
容易になるため,デジタル放送への大きな潮流のなか
当たり 6MHz の周波数帯域を 13 のセグメントに分割
で多くの国が MPEG-2 方式を採用することとなった.
し,12 セグメントはテレビ放送で,残る 1 セグメン
また,通信や民生用機器との方式の共通化により,メ
トを携帯・移動体向けサービス「ワンセグ」で使用し
ディア横断的な連携サービスの促進や受信機,復号
ている.ワンセグにより,携帯電話やカーナビなどで,
LSI 等の共通化が図られた.
外出先でも地上デジタル放送が楽しめるようになり,
日本では,2000 年 12 月 1 日に BS デジタル放送が
災害時などで情報を得る有力なメディアともなって
スタートし,その後,地上デジタル放送(地デジ)が
いる.ワンセグの映像符号化は,当初 MPEG-4 visual
2003 年 12 月 1 日に東名阪で開始され,2006 年 12 月
が検討されたが,特許ライセンスの条件などが課題と
に全都道府県に広がった.移動体端末向けの簡易動画
なり,新たに標準化された AVC が採用されることと
放送サービス「ワンセグ」も 2006 年 4 月から始まっ
なった.
放送の要求条件にある階層的なサービスや伝送路
エラーに対する耐性については,符号化だけでなく伝
送方式(変調方式,誤り訂正,階層伝送など)も含め
てシステム的な見地から検討された.MPEG-2 では各
種の階層符号化方式が標準化されたが,いずれも遅延
時間やハードウェアの規模が増大するなどの課題が
あったため,トータルシステムとして検討すると階層
符号化の利点は少ないと判断された.このため,衛星
放送において降雨減衰に対処する階層伝送では,解像
度の異なる映像を同時に伝送することとし,階層符号
化が実際の放送サービスで用いられることはなかっ
た.
デジタル放送では,アナログ放送で実現できなかっ
た多くの機能と高品質なサービスが可能となったが,
一方で高い圧縮率を達成する映像符号化と安定した
受信を可能とする伝送技術の原理的な理由により,番
組が家庭に届くまでの時間が長くなったり,チャンネ
ルを切り替えてもすぐに映像が出なかったりするな
どの傾向も生じることとなった.
映像符号化では,動画の時間的な冗長性を利用する
ことによって大幅なデータ圧縮を実現している.一般
に,時間的に連続した画像(フレーム)は類似した性
質を示すので,近傍のフレームを参照し,その差を符
号化することで圧縮率を向上している.MPEG-2 符号
化では,時間的に前後のフレームを参照し,処理を行
うフレームの順序なども変えて符号化を行う.このた
め,映像信号を一度メモリに蓄えた後に複数のフレー
ムを参照して符号化を行う処理やメモリバッファか
らのデータの読み出しタイミングの調整などにより
遅延が生じる.また伝送では,安定した受信が可能な
ように送信データを時間的,周波数的に並べ替えるイ
ンターリーブ処理などを行って伝送で誤りが発生し
ても受信機で訂正できるようにしている.これらの処
理により,地デジでは送出から受信までに 2 秒程度の
遅延が生じている.
ただし,放送では災害時などにできるだけ迅速に情
報を視聴者に伝えることが求められるため,緊急地震
速報では文字スーパをチャイム音とともに送出する
など,通常の放送番組よりも短い時間で送る方法がと
られている.緊急地震速報をテレビの映像情報とは別
の方法で伝送することで,圧縮処理等のデジタル信号
処理にかかる時間を短縮し,アナログ放送のときとほ
ぼ同じタイミングで表示されるようにしている.
4. あとがき
デジタル放送では,コンピュータや他のデジタルメ
ディアとの整合性が高まり,通信やネットワークなど
と連携した新たなサービスが始まりつつある.また,
広帯域ネットワークや高速大容量伝送技術の研究も
進展し,ディスプレイの大画面化,高精細化が進み,
HDTV を越える高精細映像や立体テレビの開発も進
んでいる.SC 29/WG 11 では,VCEG(ITU-T SG16)
とジョイントで,さらに高い圧縮率と高品質な高精細
映像符号化を目指した HEVC(High Efficiency Video
Coding)符号化の標準化を進めており,スーパーハイ
ビジョンなどの超高精細映像や高臨場感映像音響シ
ステムへの適用も期待される.
∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪
<2011 年 12 月以降
JTC 1 2012-11-05/10
JTC 1/WG 6
2012-05-21/25
SWG-Accessibility
2012-04-16/19
SC 2
2012-10-26
SC 6
2012-02-24
SC 7
2012-05-20/25
SC 17 2012-10
SC 22 2012-09-10/11
SC 23 2012
SC 24 2012-08-20/24
Jeju,韓国
Jeju,韓国
Lexington, KY,US
Chiang Mai,Thailand
広州,中国
Jeju,韓国
New Orleans, LA,US
Geneva,Switzerland
(未定)
Germany
国際会議開催スケジュール>
SC 25
SC 27
SC 28
SC 29
SC 31
SC 32
SC 34
SC 35
SC 36
SC 37
SC 38
2012-09-14
2012-05-07/15
2012-06
2012-07-21
2012-06-07/08
2012-06-04/08
2012-06-25/29
2012-02-20, 24
2012-09
2012-07-16/17
2012-05-21/25
US
Stockholm,Sweden
London,UK
Stockholm,Sweden
Pittsburgh, PA,US
Berlin,Germany
Brasilia,Brazil
京都,日本
Busan,韓国
Paris,France
Berlin,Germany
<最近の国際会議から>
■ JTC 1/WG 6(Corporate Governance of IT:CGIT)
会議報告(JTC 1/SC 7/WG 40 合同)
JTC 1/WG 6 小委員会
主査 平野 芳行
1. 開催場所: ロンドン(英)
2. 開催期間: 2011-09-19/22
3. 参加国数/出席者数: 7 か国,1 団体/15 名
Convenor(J.Graham,豪),セクレタリ(A.Mckay,
豪),豪(4,ISACA 兼任を含む)
,蘭(1),南ア(1)
,
スウェーデン(1),韓(1),英(2),日(1: 平野芳
行),ISACA(2)
WG 40 からの参加: 6 か国/10 名,Convenor(A.
Holt,ニュージランド),豪(1),蘭(1),韓(1),
ニュージランド(1),印(2)
,日(3:原田要之助[IISEC]
,
力 利則[NEC フィールディング],清水恵子[コン
シスト])
4. 結果
今回 JTC 1/WG 6 の会議に SC 7/WG 40(CGIT-IT
Operations)が合流することにより,初めての合同会
議が開催された.
JTC 1/WG 6 で は , JTC 1 へ の 次 の 推 奨 事 項
(Recommendation)が決められた.
(1) JTC 1/WG 6 は,JTC 1/WG 6 と SC 7/WG 40 を単一
のグループにして「IT のガバナンス」の適用範囲に
合 流 す る よう に 適 切 な行 動 を と るよ う 要 請 する .
(WG 6 Rec.2/6)
(2) JTC 1/WG 6 は,WG 6 の中期的な解決策として JTC
1 内の「情報技術のガバナンス及びマネジメント」と
いうグループを 12 か月以内に形成する.(WG 6
Rec.3/6)
本件については,SC 7/WG 40 から SC 7 の決議へ提
案を行う方向になったが,日本の WG 40 から提案し
た作業項目(IT Audit)の作成活動を行う関係から日
本は棄権の投票を行った.
(3) JTC 1/WG 6 は , ISO/IEC TS 38501 ( CGIT Implementation Guide)の規格開発期間の 2 年間延長
(CD まで 2013 年/1 月)を要請する(WG 6 Rec.1/6)
.
今回は,規格案のハイレベルのモデルに関する議論し
た結果,3rd WD を準備し,次回までにコメント募集
する.
(4) JTC 1/WG 6 は,ISO/IEC TR 38502(Governance of IT
-- Framework and Model)の規格開発期間の 2 年間延長
を要請する(WG 6 Rec.6/6).今回は,DPTR のコメン
ト処理を行ったが,技術的変更点が多かったため,次
回も 2nd DPTR とする.
(5) JTC 1/WG 6 は,WG 6 の事業計画を承認し,JTC 1
に追認するように要請する(WG 6 Rec.7/6).
そのほか,ISO/IEC 38500(CGIT)は,改訂の作業が
時間切れでキャンセルになったため,次回の改訂に向
けた問題点の抽出のため,意見募集を行うことになっ
た.
5. 所感
JTC 1N10595 ( Notification from Australia of the
Resignation of the JTC 1/WG 6 Convenor)で公開されて
いるように,豪州が幹事国及び主査からの退任を表明
してから最初の会議である.JTC 1/WG 6 と SC 7/WG
40 の 2 重構造による問題があり,今回の合同会議を
開催して今後の対応を決めることになった.結果とし
て,1 つのグループへの統合を JTC 1 へ持ち上げるこ
とになったが,新 SC を設立するか,SC 内へ落とす
かなどの着地点の議論はされたが結論が出なかった.
後任の立候補も今のところ決まっていないので,11
月の JTC 1 総会での議論の結果を待つことになった.
6. 次回予定
2012-05-21/25 済州島(韓)
SC 7/WG 40 との合同会議,
■ JTC 1/SWG on Planning 会議報告
鈴木 俊宏(日本オラクル(株))
1. 開催場所:ベルリン(独)
2. 開催期間: 2011-06-27/28
3. 参加国数/出席者数: 7 カ国,1 団体/15 名
議 長 ( Michael Breidthardt ), セ ク レ タ リ ( Cord
Wischhofer,DIN),ISO CS, 加(1),仏(3),独(1)
,
英(1),米(2),韓(2),SC7, 日(1: 鈴木俊宏)
4. 概要
この SWG on Planning 会議の目的は JTC 1 サンディ
エゴ総会に向けた報告書作成のためのネタ作りにあ
る.具体的には今年実施した Environmental Scanning
結果の取りまとめ,JTC 1 ベルファスト総会で決議さ
れた技術調査の検討,JTC 1 Standing Document 2 History のメンテナンス,などが行われた.以下にそ
れぞれの概要を報告する.
4.1 Environmental Scanning 結果の取りまとめ
米,独,仏,SC 29,SC 37,SWG-A,SG-GICT,
SG-EEDC,The Open Group から結果の報告があり,
以下の技術領域について興味度合いの高さが窺い知
れた.
・ Social Publishing and Feedback
・ Growth in popularity of video
・ Applications for tablets/smartphones
・ Ubiquitous Computing
しかし,結果の報告数が極端に少ないことから,調査
方法について再検討することとなった.また,JTC 1
サンディエゴ総会期間中に各 SC 議長を招待し F2F 会
合を企画することになった.更には,
総会に Ubiquitous
Computing と Social Network 関連の 2 つの講演(講演
者未定)を要請することになった.
4.2 JTC 1 ベルファスト総会で決議(Resolution 29)
された技術調査の検討
以下の技術領域について担当 Editor から現時点の
報告書作成状況の説明があった.
(1) Green of ICT
SG-GICT からの報告を中心に説明があった.JTC 1
が担当している技術領域全てに Green に対する配慮
を検討するよう,JTC 1 サンディエゴ総会で各 SC に
対し要請を検討することになった.
(2) Social Network and Web Collaboration
これまで担当 Editor が決まらなかった(一旦,米国
が引き受けを表明していたが有耶無耶になった)が,
韓国が引き受けることを表明した.
(3) Mobile Applications
報告書の中に製品名や企業名が多数存在すること
を問題視するメンバがいるため,配慮することになっ
た.担当 Editor から JTC 1 サンディエゴ総会では最終
報告が出来ないことの表明があり,中間報告となる可
能性が出てきた.
(4) Augmented Reality
現報告書が一般的な AR の解説になっているため,
SC 24 や SC 29 活動を配慮したギャップ分析を行うな
ど更なる検討を要請した.
(5) 3D Image Technology
提案していた韓国から,IEEE での活動開始のため
リソース的にこれ以上 JTC 1 での活動は難しい,との
見解が示された.そもそもこの件は韓国から提案され
SWG-P は具体的な調査報告を待っていた矢先であっ
たため,メンバからは不快の念が示された.
4.3 JTC 1 Standing Document 2 -- History のメン
テナンス
現在の JTC 1 SD 2 - History に記載される各活動の
報告は自由形式となっているため,記載内容や詳細度
がバラバラであると報告があった.今後,テンプレー
トを提供するなどを行ない,内容の充実と均一感を持
たせてはどうかといった議論があった.また,まだ提
供の無い SC については催促を行うこととなった.
5. 所感
JTC 1/SWG on Planning の活動も数年を経過し,各
NB の意向や各 SC の活動を中心に情報を入手し纏め
上げるといったスタイルが定着してきた感がある.今
後,Environmental Scanning 方法の再検討や新たな検
討課題として Incubation 機能が実施される可能性もあ
り,SWG on Planning も次のステップに移っていくよ
うである.また,会議中に SC 24 と SC 29 の関係につ
いて取り沙汰されるなど,各 SC に影響を及ぼすよう
な事態に陥る可能性も否めない.情報規格調査会にお
いては,技術委員会直下にプランニング小委員会を設
置するなどを行い,各専門委員会からの参加(と意見
交換の場)を検討すべきと考える.
■ JTC 1/SWG on Accessibility 会議報告
アクセシビリティ SWG 小委員会
幹事 野村 茂豊((株)日立製作所)
1. 開催場所: パリ(仏)
2. 開催期間: 2011-09-06/09
3. 参加国数/出席者数:7 カ国,6 団体/18 名(電
話参加者含む)
Convener(Mr. Alex Li),セクレタリ(Ms. Jennifer
Garner),仏(1),加(1,兼 JTC 1/SC 35),独(1),
英(3,兼 JTC 1/SC 29, ITU-T FG AVA),米(5,兼 ITI),
ノルウェー(1),W3C/WAI(1),Linux Foundation(1),
日(鈴木俊宏[日本オラクル],野村茂豊)
4. 主な合意事項
(1) TR 29138 の更新方法と公表方法
今年の JTC 1 総会に,SWG-A が作成した TR 29138
の更新方法と公表方法について,次のように提案をす
る.
(SWG の作成文書を,その性質によりふたつに分
類し,ふたつの手続き(Process Type 1 と Process Type
2)にて,更新,公表する.ふたつの手続きの主な相
違は,公表の実施が,SWG の合意か,JTC 1 の承認か,
のどちらに基づくかである.)
「Process Type 1」
・適用文書
a. Collecting, presenting, cataloging, classifying and
providing references to existing information
b. (e.g., specifications and standards, such as the
existing Standards Inventory)
・承認手続き
a. Decision to initiate and identification of interested
parties
b. Drafting within the SWG
c. Submission for review by the SWG members and
other interested parties, for corrections and/or
additions
d. Potential redrafting and re-review until the SWG
decides that the document is mature
e. Recommendation by the SWG that JTC 1 Secretariat
request ISO/IEC publication of document and
establishment of a maintenance cycle target date
f. Publication by ISO/IEC based on the SWG
recommendation
g. Initiation of maintenance cycle no later than the
target date identified (in step e.)
「Process Type 2」
・適用文書
a. providing information, background and context to a
topic area
b. (e.g., such as the existing User Needs Summary or
Guidance on User Needs Mapping)
・承認手続き
a. Decision to initiate and identification of interested
parties
b. Drafting within the SWG
c. Initiation by the SWG of a review cycle, including a
call to the existing SWG members and other
interested parties
d. Potential redrafting and re-review until the SWG
decides that the document is mature
e. Initiation by the SWG of a final review call to the
existing SWG members and other interested parties
and establishment of a maintenance cycle target date
f. Recommendation by the SWG that JTC 1 approve
publication of the document
g. Decision by JTC 1 on approval
h. Publication by ISO/IEC based on JTC 1 decision
i. Initiation of maintenance cycle no later than the
target date identified (in step e.)
(2) SWG-A 発行文書の識別子案の提案
Mr. Alex Li による SWG-A 発行文書の識別子案につ
いて次回 4 月 SWG-A 会合で審議する.
(3) 今年の JTC 1 総会提案の SWG-A の業務(Terms of
Reference)の改定案
これまでの業務のひとつである Gap Analysis(アク
セシビリティに関連する標準化活動が行われていな
い領域を特定する作業)は、実施方法がいまだ見出せ
ないため、これを今回外した.
The JTC 1 SWG on Accessibility will:
1. Determine an approach, and implement, the
gathering of accessibility-related information, being
mindful of the varied and unique opportunities
including direct participation of user organizations,
workshops, and liaisons
2. Maintain and disseminate up-to-date information of
all known accessibility-related standards efforts, i.e.
the standards inventory
3. Maintain and disseminate up-to-date information on
accessibility-related user needs, i.e. the user needs
summary
4. Through wide dissemination of the SWG materials,
encourage the use of globally relevant voluntary
accessibility-related standards
5. Together with PAS mentors, advise consortia/fora, if
requested, in their submission of accessibility-related
standards/specifications to the formal standards
process
6. Provide support when JTC 1 needs assistance related
to Accessibility (such as duties for WSC Accessibility
Strategic Advisory Group and input on accessible
ISO web content)
(4) 次期 3 年間の議長
引き続き Mr. Alex Li を議長とすることを JTC 1 総会
に申請を行う.
(5) Ad Hoc 16 の設立
電子文書をアクセシブルにするためのガイドライ
ン案を作成する.
(6) ISO Web Site Accessibility に 関 す る ISO
Central Secretariat Task Force
SWG-A の代表者として Mr. Alex Li を指名する.
(7) Ad Hoc 13 の対応範囲
JTC 1 とのアクセシビリティに関する相互交流に拡
大する.
(8) Ad Hoc 15 の改称
“Evolution of the Standards Inventory"とすることを
次回 SWG-A 会合に提案をする.
ISO or IEC サイトでのデータベース案,作成工数の
提案をする.
(Ad Hoc 15 まとめ)
(9) Standards Inventory の更新案の作成と意見提出
Dr. Jim Carter が,今回の打合せに基づいて,9 月 15
日までに Standards Inventory を更新し,メンバは,そ
れに対する意見,追加を 2 月 29 日までに提出する.
(Ad Hoc 15 まとめ)
(10) Standards Inventory の更新版の仮称の決定
更 新 版 の 仮 称 を "Inventory of accessibility and
accessibility-related standards and specifications"とした.
(11) User Needs Summary の更新案作成のための Ad
Hoc 14 メンバの再募集
(12) User Needs への追加項目の関連団体への 2 月 29
日までの提案要請 (AdHoc14 まとめ)
(13) User Needs への追加項目の 2 月 29 日までの提
案(AdHoc14 まとめ)
immersive technologies,3D technologies,emerging
technologies,converging technologies の分野での追加が
考えられる.
(14) User Needs Summary の更新案の作成と意見提出
Dr. Jim Carter が,今回の打合せに基づいて,11 月
20 日までに User Needs Summary を更新し,メンバは,
それに対する意見を2月 29 日までに提出する.
(15) プロジェクト計画書の 30 日以内の更新
Mr. Ken Salaets
(16) ISO/TC 159 に SWG-A への代表者の問合せの実施
5. 次回開催
(1) 電話会議
2011 年 12 月 15 日(木)14:00~16:00 UTC
議題: 電子書類をアクセシブルにする規則案策定
(Ad Hoc 16 まとめ)
2012 年 2 月の SWG-Directives meeting の議題である
「JTC 1 Standing Document on Electronic Document
Preparation, Distribution and Archiving」に関して,電子
書類をアクセシブルにするフォーマットについて,意
見をまとめ,1 月 3 日までに SWG-Directives に提案す
る.
(2) 2012-04-16/19 Lexington, Kentucky(米)
■
SC 22 ( Programming languages, their
environments and system software interfaces/プ
ログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアイ
ンタフェース)総会報告
SC 22 専門委員会
委員長 石畑 清(明治大学)
1. 開催場所: コペンハーゲン(デンマーク)
2. 開催期間: 2011-09-19/20
3. 参加国数/出席者数: 7 か国/17 名
議長(Rex Jaeschke,米)
,セクレタリ(代理,米)
,
米(5,うち Convener 2),加(1),英(2,うち Convener
1),デンマーク(1),蘭(1),スペイン(1),日(4:
石畑清[HoD],高木渉[日立,WG 4 Convener],黒
川利明[CSK],吉田秀逸[IPA])
4. 概況と主な決議
いくつかの言語規格の改訂作業が進行しているが,
SC 22 のレベルで議論すべき大きな問題点はない.総
会でも特に論争はなく,坦々と進んだ.
昨年の総会で,POSIX(Portable Operating System
Interface)に関係する組織の実態を調べ,必要な整理
をすることを議長の宿題として決議した.調査の結果,
SC 22 の中に設けてある POSIX Advisory Group は動き
がなく,期待される報告はリエゾンから得られること
が分かったので,POSIX Advisory Group を解散するこ
とにした.
WG 11(Binding Techniques)と WG 16(LISP)の解
散を決めた.昨年の総会で 1 年後に解散する予定であ
ることを表明していたものである.WG 11 には進行中
の作業(10967-1 Language independent arithmetic -- Part
1: Integer and floating point arithmetic)があるが,編集
作業は終わっており,投票進行に関する作業は SC 22
に委ねる.また,進行していない作業(10967-2 Part 2:
elementary numerical functions,10967-3 Part 3:Complex
integer and floating point arithmetic and complex
elementary numerical functions)はキャンセルすること
を決めた.
吉田がプログラミング言語 Ruby の規格化について
報告した.規定に従って BRM(電話会議形式)の予
定を決めるが,コメントを出したのは日本だけなので,
実際には開かれない公算が大きい.今までどおり,日
本のグループが中心になって保守も進めるが,国際メ
ンバを加えた拡張グループも作る.
SWG Directives の作業経過の報告に時間を費やし
た.かなり活発な質問が出たが,SC 22 からの要求は
特に出なかった.
WG 23 から提案があった Software Code Signing の
NP 投票を進める.1 年前にも NP 投票があったが,参
加国不足のため成立しなかった(日本は何を規格化す
るか不明であるとして反対した).今回は,working
draft を用意して,規格のねらいを明確化している.
定期見直し対象となっている規格のうち,13568(Z)
,
15145(FORTH),20970(JEFF file format)の三つは
stabilize することを勧告する.見直しに関する SC の
勧告は,各国に伝えられておらず,無意味なものにな
っていた.これを改めるよう JTC 1 に要求する.
Web を利用した総会のリモート参加を推し進める
ことにした.十分な機能を持つ電子会議システムが存
在するので,2012 年の総会からこれを利用したリモ
ート参加を認める.リモート参加でも直接参加と同等
と認めることにした.事前に電子会議システムの訓練
のための会議を開催する.
なお,今回も電話を通したリモート参加が 3 名いた
(出席者リストには挙げていない).今回はまだうま
く機能したとは言い難い状況である.
5. WG の活動状況
(1) WG 4(COBOL)
投票時のコメントに基づく改訂の作業が遅れてい
る.期限を守れない恐れがあるので,現時点で 1 年間
延長する.OWG2 を結成して,新しい分野の調査を始
めた.
(2) WG 5(Fortran)
Fortran 本体の改訂が終わった.Interoperability with
C の PDTR 投票が進行中である.
作業が遅れ気味だが,
期限には間に合いそうである.TR で始まったプロジ
ェクトなので,これまでは TR として進行してきたが,
今後は TS として扱うことを決めた.
(3) WG 9(Ada)
規格本体の Amendment に関する投票を間もなく始
める.Vulnerability に関する TR の Ada 固有の部分を
記述した Annex の起草作業を終えた.
(4) WG 14(C)
改訂作業が進行中である.
(5) WG 17(Prolog)
Mutable Terms に関する NWI が 2 回失敗した.作業
の中心は DCG(Definite Clause Grammar)に置く.
(6) WG21(C++)
改訂作業が進行中である.
(7) WG 23(Programming Language Vulnerabilities)
Vulnerabilities に関する TR の改訂を進めている.
Software Code Signing に関する NWI を改めて出す.
(8) Ecma International とのリエゾン
ECMAScript が完成した.無料配布を要請する.CLI
(Common Language Infrastructure)の改訂作業が最終
段階に入っている(BRM を予定).C#と Eiffel は動き
がない.
6. 決議一覧
11-01 規格化作業の期間延長を求める(COBOL).
11-02 NP 投票を始める(Software Code Signing).
11-03 Further Interoperability of Fortran with C は今後
TS として扱う.DTS 投票を 2012 年 6 月までに
始める.
11-04 10967-2 と-3(言語共通算術)をキャンセルす
る.
11-05
WG 11(Binding Techniques)を解散する.
11-06
WG 16(Lisp)を解散する.
11-08
POSIX Advisory Group を解散する.
11-09
16262 ECMAScript language specification の
free availability を要求する.Ecma International から無
料入手できることが理由である.
11-07,-10,-11 次のリエゾンを再確認する.
-07 external liaison ( Ecma International ,
Linux Foundation)
-10 Austin Joint Working Group
-11 internal liaison ( TC37 , SC2 , SC7 ,
SWG/Smart Grid,SWG/Directives),他に SC
27 とのリエゾンを新たに設ける.
11-12
現 SC 22 議長の任期を 3 年間延長する.
11-13
WG convener の任命(4 名再任=WG 5,WG
14,WG 17,WG 23).
Project editor の任命(C++).
規格の定期見直し(Z,FORTH,JEFF を
stabilize とし,他は confirm).
11-16
定期見直しに関する SC の勧告を各国に伝
えるよう JTC 1 に要求する.
11-17
JTC 1 Form の置き場所について(単なるお
知らせで決議とする価値があるかどうか疑
わしい.)
11-18
SC 22 総会や WG 会議を電子的に行うため
に利用できるシステム(WebEx)の訓練を
行う.日を決めて,多くの国が訓練に参加
できるようにする.
11-19~21 次回以降の SC 22 総会
-19 2012 年は Geneva(スイス).IEC がホ
スト.
-20 2013 年以降の開催国を求める.
-21 2012 年には Web 参加が可能になるよ
うに準備する.Web 参加も直接参加と同じ
資格を認める.
11-22~33 通例の感謝.
11-14
11-15
■ SC 24(Computer Graphics, image processing and
environmental data representation/コンピュータ
グラフィクス,画像処理及び環境データ表現)総会報
告
SC 24 専門委員会
委員長 青野 雅樹(豊橋技術科学大学)
1. 開催場所: ラピッドシティ(米)
2. 開催期間: 2011-08-21/26
以下の日程で開催された.アンダーラインは報告者
が参加した会議.
8 月 21 日(日)午前: 拡張現実(Augmented Reality)
のスタディグループ会議,午後: モバイル スタデ
ィグループ会議
8 月 22 日(月)午前: WG 7 会議,WG 8EDCS PDAM
Review 会議,午後: WG 7 Plenary,WG 8 EDCS
PDAM Review 会議,夜: HoD/C リエゾン会議
8 月 23 日(火)午前: WG 6 会議,WG 8 SRM PDAM
Review 会議,午後: WG 6 会議,WG 8 SRM PDAM
Review 会議,夜: Social Event
8 月 24 日(水)午前: WG 7/WG 8 合同 registry 会
議,午後: WG 6 Plenary,WG 8 SRM PDAM Review
会議
8 月 25 日(木)午前: WG 8 Plenary,午後: Drafting
会議,夜: HoD/C Drafting Committee 会議
8 月 26 日(金)午前~13:30 SC 24 Plenary
3. 参加国/参加者総数: 6 ヵ国/38 名
議長(Ha-Jine Kimn 韓),セクレタリ(David Hyde,
英)米(14)
,英(2)
,韓(13)
,中(1),豪(1),日
(1, 青野雅樹[HoD])
Liaison: SEDRIS(1),Web3D(2),OGC (Open
Geospatial Consortium)(1)
4. 特記事項
4.1 WG 6(Multimedia Presentation and Interchange)
WG 6 のワーキンググループ会議は 8 月 23 日(火)
の午前 9 時から,また Plenary は翌日 24 日の午後に行
われた.15 名の参加者があり,内訳は,UK2,Korea7,
China 1,Australia 1,Web3D コンソーシアム 1,USA1,
OGC(Open Geospatial Consortium)1,および日本 1
名であった.韓国からの 7 名の参加者のほとんどは,
WG 6 に関連するトピックのプレゼンで参加した関係
者であった.
会議に先立ち, WG 6 コンビーナの Dick Puk 氏か
ら,WG 6 で現在文書が回覧,もしくは,まもなく回
覧予定の X3D (19775) Edition 2 revision,X3D encodings
(19776)
Edition
2
revision,
X3D
language
bindings(19777) な ど の 現 状 説 明 が あ り , H-Anim
(19774)や Open Geospatial Consortium からの空間地
理情報などのプレゼン,および,それに続く約 10 名
からのプレゼンテーションに関する説明があった.ま
た,X3D の Scene Access Interface では,これまでの Java
や ECMAScipt に加え,C++に関する言語結合が New
Work Item Proposal として準備中との報告があった.
ただし,X3D で記述された三次元のオブジェクトか
らなるシーンで,オブジェクトにアクセスするために
必要な Script ノードは,リアルタイムにイベントに基
づき,物体の動作を翻訳する必要があるため,C++の
ようなコンパイル形式の言語でどう実現するかが疑
問である,とのコメントがあった.さらに,現在 PDAM
中の X3D には,医療応用を意識した三次元のデータ
をそのまま三次元で表現するボリュームレンダリン
グなどの機能が追加され,これが新たなプロファイル
として追加されているので,X3D Edition 2 revision の
投票までに,内容に関してコメントを準備しておくよ
うにとの連絡があった.
各種提案に関するプレゼンで,韓国と中国ならびに
OGC から,拡張現実(augmented reality)ならびに混
合現実(mixed reality)に関して,機を同じくして興
味深い発表があった.中国からは,拡張現実のプレゼ
ンというより,この分野で中国政府が支援をしていく
という宣言に近いものであった.なお,韓国から参加
して発表された G. Kim 氏は,現在韓国大学教授であ
るが,この分野の世界的な研究者のひとりであり,昨
年の釜山会議でも,関連する話題をプレゼンしたとの
ことであった.その後 WG 6 Plenary 会議で,拡張現
実や混合現実は,三次元コンピュータグラフィクスの
技術に深く関係し,今後も重要な分野と位置付けられ
るので,これらをまとめ,SC 24 の中で新たな Working
Group にする方向で,JTC 1 会議に提案するという結
論になった.
各種リエゾン報告では,X3D 関連規格で中心的役
割を果たしている Web3D コンソーシアムから,X3D
Earth プロジェクトが紹介された.これは,ワールド
ワイドに地理空間上の位置を処理できるインフラ構
造を与えるものであるとの紹介があった.また,現在
PDAM 投票中の X3D 19775-1 第 2 版の補遺 1 にて,
Web3D のメディカルワーキンググループの活動が紹
介された.これに関して DICOM からのリエゾン報告
でも医療分野ではボリュームレンダリングは有用で
あるとの報告があった.ISO/TC 211 からのリエゾン報
告では,地理情報のメタデータやオントロジーに関す
る報告と,大災害時の支援のために,国連が委員会を
形成中であるとの報告があった.SC 29 のリエゾン報
告は,韓国の M. Kee 氏からあり,拡張現実に関する
規格を SC 29 から JPEG や MPEG の延長線で考案中で
あるとの報告があった.なお,これに関して,WG 6
Plenary に参加していた SC 24 の韓国のキム議長から,
SC2 9 のスコープはあくまで符号化であり,三次元の
拡張現実のレファレンスモデルや API 等の規格化を
行うのは,SC 24 がふさわしいとの意見があり,これ
は SC 24 Plenary 会議で最終的に議論されることとな
った.また,WG 6 のコンビーナである R. Puk 氏から
も,過去に MPEG-4 の規格の中の 3D 部分に関して,
SC 29 で独自の規格を作るのではなく,当時,VRML
を規格化していた SC 24 の規格を使うようにとの JTC
1 決議になった事例が紹介された.
4.2 WG 7 ( Image Processing and Interchange,
Registration)
8 月 22 日(月)午前 9 時半から 12 時まで,まず
WG 7 の Working Group セッションが行われた.議長
はコンビーナである韓国の Y. K. Chung 氏で,このほ
か,中国から 1 名,韓国から SC 24 委員長の Kim 氏,
USA から前コンビーナの Laura Moore 氏など 3 名, オ
ーストラリアから 1 名,それと日本から 1 名参加した.
WG 7 ではこれまで BIIF,PIKS などの国際標準を出
しているが,議長から現在,フリーソフトで,インテ
リジェントな画像処理ソフトとして定着している
OpenCV の Study Group を考えたいという提案あった.
また,ISO SCIT,NATO JCGISR,OMG Robotics DTF,
augmented reality のスタディグループなどとのリエー
ゾンの話が出た.レジストレーションに関しては,
Graphical Items のレジストレーションに関する New
Work Item Proposal が Laura Moore 氏から紹介された.
このほか,ISO 9973 の改訂, BIIF にセンサ画像処理
機能の拡張, センサネットワーク機能や Replacement
Sensor Models (RSM)を New Work Item Proposal にした
いといった意見が出された.これらに関してコンビー
ナから,WG 7 はスコープとして画像処理をカバーす
るので,センサ画像(たとえば CT,MRI などから得
られる 3D 画像)は「画像処理」に関するもので,こ
こで規格化するのがふさわしいとの意見があった.
4.3 WG 8(Environmental Representation)
WG 8 の会議は日本からは,最終日前日の午前に開
催された Plenary だけ参加した.このため,各国やリ
エゾンからなる参加者の構成は N 文書の議事録が出
るまで不明である.コンビーナの Jack Cogman(UK)
は,遠隔会議の形で UK から参加していた.WG 8 で
は,SRM(Spatial Reference Model)の改訂版に関する
CD 投 票 後 の コ メ ン ト の disposition や , EDCS
(Environmental Data Coding Specification)に関する
PDAM など,幾つかの進行中のプロジェクトに関する
状況が報告された.この中で,日本から技術的コメン
トつきで投票された SRM の改訂版に関して,4 つ提
出された技術コメントがすべて採択されたとの報告
があった.日本以外からの技術コメントは,オースト
ラリアから 3 件あり,うち 2 件採択され,SEDRIS か
らは 100 件を超える技術コメントがあり,こちらも適
宜 disposition が行われたとの報告があった.なお,こ
れまで WG7 で行われていた registry は,今後 WG8 に
移行することになるであろうとの報告があった.
4.4 HoD (Head of Delegation)and Liaison Meeting
HoD/リエゾン会議は,1 日目現地時間の月曜日,午
後 6 時から行われた.参加者は各国の HoD,各 WG
のコンビーナ,ならびに各種リエゾン担当者と SC 議
長と SC 24 セクレである.目的は,それぞれから,現
在の課題や懸念事項を出し合い,最終日の Plenary ま
でに決議できるものは決議し,同時に問題意識を共有
することである.韓国を除くほとんどの参加国からは,
懸念事項として委員の高齢化とメンバの減少を述べ
ていた.なお,中国からは,SC 24 で現在ワーキング
を立ち上げようとしている Augmented Reality/Mixed
Reality 関係で,政府からの強いサポートがあるとの報
告があった.
4.5 SC 24 Plenary meeting
38 名の参加者.6 か国(Korea,US,Australia,China,
Japan,USA)から参加があったことが議長のキム氏
から報告された.その後,11 か国ある P メンバで,
SC 24 総会に参加しないエジプト,ポルトガル,ロシ
アに関して懸念事項が述べられた.その後,今回の各
ワーキング会議からのまとめ,リエゾンからのまとめ,
National Body からのレポートが行われた.最後に,会
議の Resolution が,今回の会議のホストでもある R.
Puk 氏から読み上げられた.全体を通して,今年の SC
24 総会の最大のトピックは,SC 24 のスコープ自体を
見直し,『拡張現実/混合現実』に関する新しいワー
キンググループ(WG 9)を作り,コンビーナに韓国
の Gerard Kim 氏を迎え,9 月中旬までに各国からのコ
メント投票を行い,その後提案書を 9 月末までにまと
め,JTC 1 の 11 月の会議に提案しよう,という動きが
あったことだ.
5. 今後の開催予定
2012 年は,8 月 20~24 日にドイツ(または UK)
での開催を予定し,2013 年はオーストラリアの予定
であるとの報告があった.
6. その他
SC 24 への日本からの参加は,ロンドン会議以来 2
年ぶりで,米国での総会は,2008 年の Monterey 会議
以来であるが,日本からは不参加だったので 2004 年
の Breckenridge 会議(コロラド州)以来 7 年ぶりであ
った.全体としての大きな動きは SC 24 Plenary の項
目で述べたが,別な感想として,参加者の半分近くが
リエゾン委員(中に National Body との兼任も有)で
あり,その種類も参加人数も毎年増えていることを感
じた.ソーシャルイベントは,今回の開催地がラピッ
ドシティからも推察できるように,4 人の大統領の大
彫刻で有名なラシュモア山で行われた.
■ SC 29(Coding of Audio, Picture, Multimedia and
Hypermedia Information/音声,映像,マルチメディ
ア,ハイパーメディア情報の符号化)総会報告
SC 29 専門委員会
委員長 高村 誠之(日本電信電話(株))
1. 開催場所:トリノ(イタリア)
2. 開催期間:2011-07-23
3. 参加国数/出席者数:10 カ国/15 名
議長(浅井光太郎[三菱電機]
)
,セクレタリ(小倉
由紀子[ITSCJ/IPSJ])
,AGM コンビナ(兼/スイス)
,
WG 11 コンビナ(兼/伊)
,米(3)
,英(1),独(1)
,
仏(1),日(1),韓(1),豪(1),スウェーデン(1),
SMPTE(1)
,欠席:WG 1 コンビナ
4. 審議事項:
JTC 1 総会報告,各 WG からの報告,リエゾン等か
らの報告,NB からのコメントを審議した結果,下記
事項が決議された.
4.1 標準化案の承認等 (Res. 1)
* IS/AMD/TR/COR の承認 19 件
*
FDIS/FDAM の承認 18 件
* DIS/DAM/DTR の承認 20 件
* WD/CD/PDAM/PDTR の承認 19 件
4.2 標準化項目の見直し,変更 (Res. 2)
*
Subdivision: MPEG-B(1 件)
*
Minor Enhancements: MPEG-4&JPEG2000(1 件),
MPEG-4(1 件),MPEG-7(2 件),MPEG-A(1 件)
,
MPEG-B(1 件)
* タイトル変更: MPEG-A(1 件)
4.3 スケジュール(Res. 3)
標準化スケジュール SC 29 N 12230 を承認.
4.4 プロジェクトエディタ (Res. 4)
13 件のべ 20 名の就任と 1 名の離任を承認.
4.5 SC 29 ビジネスプラン (Res. 5)
SC 29 N 12126 を更新し AGM レビューを経た後
JTC 1 に提出することで承認.
4.6 DIS 投票 (Res. 6)
FCD 投票が 5 ヶ月の DIS 投票となったことで,標
準化策定の遅延を引き起こし,SC 29 の標準化全体に
悪影響が及ぶことを懸念.この解消のため以下の両方
または一方の変更を JTC 1 に要請する.
* DIS 投票期間の短縮も選択可能とすること
* 従来の FCD 型の投票(FDIS 化前に JTC 1 P メン
バ他の投票でなく SC 投票を経るもの)に戻すこと
SC 29 議長は次回 JTC 1 総会(サンディエゴ)にて本件
の検討を要請することとなった.
4.7 標準化プロセスに影響する JTC 1 Directive の変
更 (Res. 7)
JTC 1 Directive 変更(投票期間中の議論に関する
JTC 1/SWG-D Rec.9)に関する最近の投票をレビュー
し,JTC 1 に対し,標準化策定に影響する変更を行う
ときは全 SC に打診することを要請.
4.8 Augmented Reality (Res. 8)
AR 分野において SC 29 と SC 24 の活動には重複が
なく,共同作業は現状不要であることを確認.
4.9 Study Group on Digital Content Management and
Protection (SGDCMP) 関連 (Res. 9)
JTC 1/SGDCMP N042(WG on Digital Preservation
Interoperability (DPI) の設立推奨)を確認.SC 29 の現
行・予定プロジェクトと重複すると思われる本 WG
の設立理由と計画について,SGDCMP は evidence を
追加提出するよう JTC 1 に対し要請.
4.10 IS 5 年毎見直し (Res. 10)
2012-2013 年に見直しとなる以下の IS を確認するよ
う要請.
2012 年見直し 16 件
2013 年見直し 32 件
4.11 リエゾン (Res. 11-16)
* 締 結 ( リ エ ゾ ン C ) WG 11&(AFPC, OGC,
QUALINET), WG 11&(3D Quality Assessment,
HbbTV)
* 変更 なし
* 解消 なし
* 関係リストの定期的更新を各 WG コンビナに
要請.
4.12 委員任命 (Res. 17-19)
WG 1 コンビナ: Dr. Daniel T. Lee, USA
WG 11 コンビナ: Dr. Leonardo Chiariglione, Italy
JTC 1 アクセシビリティ SWG 委員: Dr. Kate Grant,
UK
4.13 前回議事録
承認 (Res. 20)
4.14 ITTF に報告 (Res. 21)
P メンバの参加状況を ITTF に報告
4.15 SC 29 Web/FTP サイト
パスワード更新プレナリ会合後(Res. 22)
4.16 次回会合
WG11 会合(ストックホルム)直後の 2012 年 7 月
21 日(土)(Res. 23)
4.17 Editor に 対 す る ISO/IEC Certificate of
Appreciation の授与推薦
45 件のべ 136 人(Res. 24)
■ SC 35(User interface/ユーザインタフェース)
総会報告
SC 35 専門委員会
委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)
1. 開催場所: ワルシャワ(ポーランド)
2. 開催期間: 2011-08-29/09-02
3. 参加国/参加者数:10 カ国/38 名
議長(Yves Neuiville,仏),セクレタリ(Philippe
Magnabosco,仏),韓(7),デンマーク(1),英(1)
,
スウェーデン(1),独(2)
,加(3),中(4),米(4)
,
仏(5)
,日(8:山本喜一[慶大]
,中尾好秀[JBMIA],
池田宏明[千葉大],関喜一[産総研],中野義彦
[JBMIA],野村成豊[日立],鈴木俊吾[経産省],
大野克行[JBMIA])
4. 審議概要
プロジェクトの通常の進行計画以外の事項及び日
本が主体になって進めているプロジェクトについて
述べる.
(1) 韓国提案の Project 30113 Gesture-based interface -Navigation gestures common between mice, touch pads,
touch screens, tablets and similar devices は,マルチパー
ト規格として再構成し,Part 1: Framework,Part 2:
Mouse gestures をまず進めることになった.この方向
は日本が当初から提案していたもので,積極的に協力
する.
(2) 池田がプロジェクトエディタを務めている FDIS
11581-40 User interface icons -- Part 40: Management of
icon registration は 100%の賛成で承認されたので,VT
(Validation team)を正式に発足するため幹事から各
国に委員の推薦を正式に依頼する.
(3) 日本から提案した NWIP “Navigation methods for
ladder menus with 4-direction devices”は Project 17549
として承認され,WD に基づいて議論した結果,韓国
提案の表形式メニューのナビゲーションも含めるこ
とになり,タイトルを“Information technology -- User
interfaces -- Guidelines on menu navigation with
4-direction devices”に変更して作業を進める.また,
池田がプロジェクトエディタに指名され,規格の構成
についての議論を行うための Ad Hoc グループが仏,
英,韓及び日本(中尾,山本)を加えて作られた.こ
の議論に基づき,韓国提案を含めた WD を作成し,
2012 年 2 月の京都会議で CD を発行する.
(4) 日 本 提 案 の 2 件 の NWIP “ Principal voice
commands -- Part 1: Framework and general guidance”
及び“Part 4: Management of spoken commands”のプロ
ジェクトエディタに関が指名され,京都会議で CD を
発行する.
(5) 野村がプロジェクトエディタを務める Project
29136 User interfaces -- accessibility of personal computer
hardware は,FCD 文書の disposition of comments 及び
修正版と共に直ちに FDIS 投票に進める.
(6) 山本,鈴木,大野が総会の最後に 2012 年 2 月の
京都会議への参加を要請するプレゼンテーションを
行った.各国とも大いに期待しているとのことであっ
た.
5. 今後の予定
2012-02-20/24 京都(日)
2012-08-27/31 (仮)Paris(仏)
2013-02-25/03-01 (仮)韓国
6. その他
SC 35 設立当初から議長を務めてきた Dr. Yves
Neuville があと 1 年で議長を退任する意向を表明し,
任期を 1 年間だけ延長する申請を行った.
仏国 AFNOR が幹事を務めているが,最近の事務処
理の遅れに対して各国から非公式に非難の声が上が
り,総会に提案されたときには日本で引き受けるよう
打診された.今回は公式に提案されなかったが,日本
として今後の方針を決めておく必要がある.
■ SC 36(Information Technology for Learning,
Education and Training/学習,教育,研修のための
情報技術)総会報告
SC 36 専門委員会
委員長 仲林 清(千葉工業大学)
1. 開催場所: 上海(中)
2. 開催期間: 2011-09-08/16
3. 参加国数/出席者数: 13 カ国,3 団体/61 名
議長(Bruce E. Peoples,米),セクレタリ(Channy Lee,
韓)
,豪(3)
,加(6)
,中(17),デンマーク(1)
,仏
(7),独(1)
,日(4: 仲林清(HoD)
,岡本敏雄[電
通大,WG 2 コンビーナ],西田知博[大阪学院大],
鷹岡亮[山口大]
),ケニア(2),韓(4)
,ルクセンブ
ルグ(2)
,ノルウェー(2)
,露(8)
,英(4)
リエゾン(人数の無い団体は NB 代表が兼務)
: AUF,
CEN/ISSS,DCMI
4. 議事内容
SC 36 総会および WG が前回 2011-03 の総会に続い
て開催された.主な審議内容を以下に示す.
日時:2011-09-10 0900/1800
出席者:上記の通り
総会での主要な審議議事項は以下の通りである.
(1) 電子教科書・デジタルコンテンツに関する NWI
と Ad Hoc の設置
教育の分野でも電子教科書が各国の話題となって
おり,SC 36 では WG 6 で中国が中心に 1 年前からス
タディピリオドを設けていた.今回,スタディピリオ
ドを終了し,NWI を提案することとなった.一方,
電子教科書は韓国が積極的に取り組んでおり,電子書
籍の標準化に関して SC 34 とのリエゾンを務めてい
る.このように中国と韓国の綱引きの状態が生じつつ
あった.今回,電子教科書は,コンテンツ,プライバ
シーなど SC 36 の他の WG の活動とも関係するという
理由で,韓国が電子教科書に関する Ad Hoc を設置す
ることを提案した.会期中に,2 回ほど関係者の打ち
合わせが実施され,最終的に,デジタルコンテンツに
関する Ad Hoc を設置することとなった.韓国・中国
に加え,デジタルコンテンツのフレームワークを提案
していたオーストラリアが Rapporteur を務める.
(2) ISO TC232 との関係
2006 年に設立された ISO TC232 Learning services for
non-formal education and training が策定中の ISO 29990
シリーズは教育の質保証に関するものであるが,すで
に SC 36 から IS 化された ISO/IEC 19796 ITLET -Quality Management, Assurance, and Metrics シリーズ
との内容の重複が指摘されていた.このような重複に
ついて,すでに JTC 1 経由で ISO TMB に申し入れを
行い,関係の正常化に向けた努力が行われてきたが,
今回,TC232 が 6 月の北京総会で,タイトルから
“ non-formal education and training ” を 外 し て ,
“Learning services”とすることとなったことが紹介さ
れた.これについて,SC 36 の Scope との重複のリス
クの拡大が指摘され,TC232 の Secretariat に対して,
上記のタイトルの変更に関する件でコンタクトを取
ることが議決された.
(3) 議長の交代
現在,議長を務めている B. Peoples 氏は,すでに 2
期目であり,今後の体制をどうするかについて議論が
行われてきた.議長を務めるには,この分野の標準化
に関する知識だけでなく,JTC 1 の標準化プロセスに
習熟していることが必要である,といったことが指摘
され,Peoples 氏の任期中に Vice Chair を置くことな
どを含めて検討してきたが,今総会でノルウェーの
Erlend Overby 氏を次期の議長として指名するよう,
JTC 1 に要請することが議決された.
(4) 次回総会
次回総会は 2012 年 2 月にオーストラリアで開催予
定であったが,財務的な問題で開催が不可能となり,
他に引き受け国がなかったため中止となった.このた
め,次回は 2012 年 9 月開催となる.
4.1 WG 1(ボキャブラリ)
・ 日時:2011-09-11/12 09:00~18:00
・ 参加国数/出席者数:8 カ国・2 団体,11 名:コ
ンビーナ(仏/AUF),豪(1)
,加(2)
,中(1),仏(2)
,
日(1:仲林清),韓(1)
,ノルウェー(1),露(1)
WG 1 で は ボ キ ャ ブ ラ リ 規 格 で あ る ISO/IEC
2382-36 を扱っている.既に出版されている第 1 版の
コリジェンダは DCOR 投票が行われ承認されている.
また,ボキャブラリを各国語に翻訳したアメンドメン
トを作成することとなり,ロシア,韓国,中国,日本
が翻訳を持ち寄った.これらを集約した PDAM の投
票がおこなわれ,今回,BRM が完了した.
今後,この内容を踏まえて第 2 版の作成を提案する.
また,SC 36 の他のプロジェクトで用いられている語
彙をもとに第 3 版の検討を行った.掲載する語彙の選
択を行い,各国に確認の上で作業を進める.今回,ア
クセシビリティ関連の語彙の検討作業を行った.
4.2 WG 2 ( Collaborative and intelligent
technology)
・ 日時:2011-09-15 09:00~18:00, 2011-09-16 09:00
~13:00
・ 参加国数/出席者数:6 カ国,1 団体/17 名:コ
ンビーナ(岡本敏雄),セクレタリト(西田知博),
メンバ:豪(1),加(2),中(5)
,日(1:鷹岡
亮),韓(2)
,露(3)
,SC36 議長(1)
(1) ISO/IEC 19778 Part.4 (Type3 TR)
Collaborative workplace(ISO/IEC 19778-1,2,3)およ
び Collaborative learning communication ( ISO/IEC
19780-1)について,その普及を図るためのユーザガ
イド作成の議論を行っている.日本,オーストラリア,
中国から,各国でのユースケースや規格の拡張の方向
性について議論が行われた.WD を 2011 年 12 月 31
日までに作成し,その後の PTDR 投票開始を目指すこ
とが合意された.
(2)
Study
period:
“Integration
of
Ubiquitous-devices
for
adaptive
and
collaborative learning”
表記のスタディピリオドについて韓国から提案が
あった.12 か月の期間とし,次回の釜山会議で NP
提案の議論を行う.
(3) Study period: “Web 2.0 in collaborative ITLET
environments”および“the integration of automated
processes
for
supporting
collaborative
activities”
表記のスタディピリオドについて,次回の釜山会議
まで延長することとなった.
4.3. WG 3(学習者情報)
・ 日時:2011-09-11 09:00~18:00, 2011-09-15 09:00
~13:00, 2011-09-16 14:00~18:00
・ 参加国数/出席者数: 10 カ国,23 名:コンビ
ーナ(仏),豪(2),加(4),中(6),独(1),
仏(2),日(平田謙次),ケニア(1),韓(2),
ノルウェー(2),英(1)
(1) ISO/IEC 29187 Identification of Privacy
Protection Requirements
Part 1: Framework Model について FCD 投票の BRM
が行われた.これを受けて FDIS 投票に向けた準備を
進めることとなった.また,新しいパートについての
プロジェクトに関して議論が行われたが,結論は出ず,
AdHoc を作って検討することとなった.
(2) ISO/IEC 20013 ITLET - e-Portfolio Reference
Model
学習者の学習履歴の管理に関するプロジェクトで
ある.2011-03 に PDTR 投票の BRM が行われたが,
このコメントを吸収したドキュメントが作成されて
いない.各国のユースケースから共通の要素を取り出
したリファレンスモデルを盛り込んだドキュメント
を,2011-11-30 までに作成することとなった.
(3) ISO/IEC 20006 ITLET―Information Model for
Competency
学習者のスキル・コンピテンシーの管理に関する日
本提案のプロジェクトである.
・ Part 1: Competency general framework and
information model (IS)
・ Part 2: Proficiency information model (IS)
・ Part 3: Guidelines for the aggregation of competency
information and data (TR)
の構成である.Part 1,Part 2,及び part 3 についてド
ラフト CD の議論を行い,CD 投票を準備することと
なった.これらのプロジェクトに対して NBLO から
のインプットを求めることとなった.
4.4 WG 4(MDLET, Management and Deliverly for LET)
・ 日時:2011-09-09 0900/1800, 2011-09-13 0900/1800,
2011-09-15 0900/1800,
・ 参加国数/出席者数: 11 カ国・団体,27 人 コ
ンビーナ:カナダ(1)豪(2),加(2)
,中(6)
,
デンマーク(1),仏(4)
,独(1),日(2: 仲林
清,平田謙次),韓(2),ノルウェー(2)
,露(1),
英(3)
WG 4 は MLR(Metadata for Learning Resources),CP
(Content Packaging)の標準化を行っている.
MLR については,Part 1: Framework が 2011-01-15
に IS として出版された.Part 2: Dublin Core elements
は今回 FDIS の BRM が行われ完了した.Part 3: Basic
application profile は,Part 1 と 2 を基にしたアプリケ
ーションプロファイルで,現在 FDIS 段階である.
Part 4: Technical elements は BRM を電話会議で実施
予定である.
Part 5: Educational elements は今回 FCD 投票の BRM
が行われた.日本は No で投票したが,問題になって
いた概念を明確化することなどが BRM で検討され,
Yes に変更した.
Part 6: Availability, distribution, and intellectual
property elements は CD 投票の BRM が行われ CD2 に
進めることとなった.Part 7: Bindings,Part8: Data
elements for MLR records は WD 段階にある.
CP については,広く用いられている IMS の規格に
基づいており,Part1: Information Model が IS となって
いる.Part 2: XML Binding, Part3: Best practice and
implementation guide についてはそれぞれ FDIS,DTR
段階にある.
なお,カナダの現コンビーナの任期が終了し,次の
コンビーナ候補者を募ることとなった.当面,韓国が
Acting Convener を務める.
4.5 WG 5(Quality Assurance)
・ 日時:2011-09-12 0900/1800, 2011-09-13 0900/1800
・ 参加国数/出席者数: 10 カ国・団体,20 名,
セクレタリアト(独),豪(1),加(2),中(2),
日(平田謙次),韓(2),ルクセンブルグ(1),
露(8),英(1)
(1) ISO/IEC 19796 ITLET - Quality Management,
Assurance, and Metrics
教育の質保証に関する規格である.Part 1: General
Approach については第 2 版の検討を開始しており,
今回 WD が議論された.2012-04 の CD 投票を目指す.
Part 2: Quality Model は CD2 ドラフトのレビューを継
続して行っており,2012-04 の投票を目指している.
Part 4: Best Practice and Implementation Guide は PDTR,
Part 5: Guide "How to use ISO/IEC 19796-1"は DTR 段
階にある.Part 6: Conformity Assessment Model for
ISO/IEC 19796-1 は CD 投票を実施することとなった.
(2) ISO/IEC 30119 Quality Standard for the
Creation and Delivery of Fair, Valid and Reliable
e-Tests
NWI の BRM が行われ,CD 段階に進めることとな
った.
4.6 WG6(Supportive Technology and Specification
Integration)
・ 日時:2011-09-09 0900/1800, 2011-09-16 1400/1800
・ 参加国数/出席者数: 6 カ国/16 人,コンビー
ナ(Zhu Zhiting, Wu Di,中),豪(1)
,加(2)
,
中(9)
,仏(2),独(1)
,日(西田知弘),ケニ
ア(2),韓(1),ノルウェー(1),露(2)
WG 6 で は , ISO/IEC 24725 ITLET supportive
technology and specification integration のプロジェクト
が進められている.それぞれ TR に向けた作業が行わ
れている.
Virtual Experiment(学習用の仮想実験)のスタディ
ピリオドに関しては,期間が終了し,NWI 投票の準
備を進めることとなった.e-Textbook のスタディピリ
オドに関しても,期間が終了し,NWI 投票の準備を
進めることとなった.
また,WG のタイトル,スコープの変更の議論が行
われ,タイトルは “Platform, Services, and Specification
Integration”,スコープは“IT related standardization that
supports development, integration and use of platforms,
services and specifications where specific LET stakeholder
requirements must be fulfilled. This involves the creation
of standards that detail how specific technologies may be
integrated in an ITLET system.”とすることとなった.
5. その他
5.1 日本提案の進展
WG 2 で長らく進めてきた協調学習関係の 4 つの規
格については,ユースケースドキュメントを作成する
プロジェクトが立ち上がっており,引き続き日本が中
心となって作業を進
めていく必要がある.また,WG 3,WG 5 ではスキル
標準関係,品質保証関係の活動で日本が中心になって
進めていり.今回 WG 3 で議論が行われた.今後,国
内への普及も含めて推進していきたい.
5.2 電子書籍・電子教科書関連
電子書籍に関して,今回様々な動きが出てきた.国
内でも電子教科書については様々な動きがあり,関係
者の方々との情報交換など連携を進めていきたい.
5.3 今後の予定
2012-09 釜山(韓)
2013-02 (未定),2013-09 ロシア
■ SC 37(Biometrics/バイオメトリクス)総会報告
SC 37 専門委員会
委員長 瀬戸 洋一(産業技術大学院大学)
1. 開催場所: 京都(日)
2. 開催日時: 2011-07-11/12
3. 参加国数/出席者数: 15 カ国/45 名
議長(Fernando Podio,米),セクレタリ(Lisa Rajchel,
米)
,米(10)
,英(7),紐(1),露(1)
,泰(5),新
(1),西(1)
,波(1),芬(1),仏(2)
,韓(3),独
(3),中(2)
,豪(1),日(3,瀬戸 HoD[産業技術
大学院大学]
,浜壮一[富士通研究所]
,新崎卓[富士
通研究所]
),および BioAPI コンソーシアム,IBIA,
ITU-T,SC27,SC31 各リエゾン
4. 報告案件
4.1 会議開催に関し
当初,東京開催で準備していたが,3 月 11 日に発
生した東日本大震災および原子力発電所事故の影響
により,ISO Central Secretariat から「5 月末まで日本
で開催される TC/SC/PC/WG の会議の,中止,延期,
日本外の場所への変更をアドバイスする」旨のレター
が発行された.日本開催の可否を検討した結果,日本
開催について各 NB からの賛同が得られたため,京都
での第 10 回総会開催になった.P メンバの一部が欠
席することになったが,ポーランドが総会,WG に初
参加など,例年なみの参加者数となった.
4.2 WG 活動報告
各主査より 1 年間の活動(1 月のストックホルム会
議,7 月の京都会議)の総括が報告された.
(1) WG 1(Harmonized Biometric Vocabulary/調和
のとれたバイオメトリクス専門用語,主査 S. Clarke
(豪))
用 語 に 関 す る 開 発 ド キ ュ メ ン ト ( DIS 2382-37
Information Technology -- Vocabulary -- Biometrics)は,
エディタによって 2011 年 7 月 30 日までに ITTF に提
出されることになった.
(2) WG 2(Biometric Technical Interface/バイオ
メトリックテクニカルインタフェース,主査 Y.B.
Kwon(韓))
現在の主たる開発案件は,以下の通りである.
WD 30108 Biometric Identity Assurance Services (BIAS)
米国がエディタを務めており,日本では中村(OKI
ソフトウェア)がコエディタを担当している.BIAS
は,今後注目される SOA など Web 技術との親和性の
高いバイオメトリックインタフェース規格であり,ア
イデンティティ管理システムへの組み込みも可能な
重要案件である.
現 在 は Encounter Centric/Person Centric ,
Biometric/Biographic 等の概念,言葉の定義について
の議論を行っている.
・ WD 30106-1 Object Oriented BioAPI - Part 1:
Architecture
・ WD 30106-2 Object Oriented BioAPI - Part 2: Java
Implementation
・ WD 30106-3 Object Oriented BioAPI - Part 3: C#
Implementation
BioAPI をオブジェクト指向言語に対応させるマル
チパート規格である.現在は,Part1 にクラス図やシ
ーケンス図を追加する等の議論を先行し進めている.
(3) WG 3(Biometric Data Interchange/バイオメト
リックデータ交換仕様,主査 C. Busch(独))
現在の主たる開発案件は,以下の通りである.
○19794-x : Biometric data interchange format
・ CD 19794-7 Part 7: Signature/sign time series data
・ DIS 19794-11 Part 11: Signature/sign processed
dynamic data
・ WD 19794-13 Part 13: Voice data
・ CD 19794-14 Part 14: DNA data
データ交換フォーマット 19794 シリーズの第 2 世代
である.ほとんどのパートが FDIS 投票中,あるいは
IS 発行されており,浜(富士通研究所)がエディタお
よび緒方(日立オムロン)がコエディタを担当し,日
本が主導する 19794-9:血管画像データも FDIS 投票
中である.新崎(富士通研究所)がエディタを担当す
る 19794-8:指紋スケルトンパターンデータは FDIS 投
票待ちである.
○19794-x AMD 1 : Biometric data interchange formats
Amdt. 1: Conformance testing methodology
・ DAM 19794-1 AMD 1 Part 1: Framework Amdt. 1
・ PDAM 19794-2 AMD 1 Part 2: Finger minutia data
-- Amdt. 1
・ PDAM 19794-4 AMD 1 Part 4: Finger image data -Amdt. 1
・ WD 19794-5 AMD 1 Part 5: Face image data - Amdt.
1
・ PDAM 19794-6 AMD 1 Part 6: Iris image data -Amdt. 1
・ WD 19794-8 AMD 1 Part 8: Finger pattern skeletal
data -- Amdt. 1
・ DAM 19794-9 AMD 1 Part 9: Vascular image data
Amdt. 1
・ PDAM 19794-11 AMD 1 Part 11: Signature/sign
processed dynamic data -- Amdt 1
・ PDAM 19794-14 AMD 1Part 14: DNA data -- Amdt.
1
データ交換フォーマット 19794 シリーズ(第 2 世代)
の適合性試験に関する追補規格である.浜(富士通研
究所)がエディタおよび緒方(日立オムロン)がコエ
ディタを担当し,日本が主導する 19794-9 AMD 1 は
DIS に進んだ.19794-8 AMD 1 は,新崎(富士通研究
所)がエディタを担当している.
○19794-x AMD 2 : Biometric data interchange formats
Amdt 2: Framework for XML encoding
・ WD 19794-1 AMD 2 Part 1: Framework -- Amdt 2
データ交換フォーマットの 19794 シリーズ(第 2 世
代)の XML 記述に関する追補規格である.XML に
ついては,WG 2,WG 5 とのジョイント会議で議論が
おこなわれた.現在は,Part 1 のフレームワークのみ
であるが,Part 4(指紋画像データ)の NP 提案が予定
されている.19794 の第 3 世代では全パートが XML
化される予定である.
○ 29109-x : Conformance testing methodology for
biometric interchange format records
・ DIS 29109-5 Part 5: Face image data
・ WD29109-2 AMD 1 Level 3 Conformance Testing
for Finger Minutiae Data
第 1 世代のデータ交換フォーマットのための適合
性試験に関する規格である.浜(富士通研究所)およ
び緒方(日立オムロン)がコエディタを担当する
29109-9:血管画像データフォーマットの適合性試験
は,IS 発行待ちである.
○29109-x : Biometric sample quality
・ WD 29794-6 Part 6: Iris image data
第 1 世代のデータ交換フォーマットのためのデー
タ品質に関する規格である.
○ 30107: Anti-Spoofing and Liveness Detection
Techniques
偽造弁別および生体検知に関する規格で,新崎(富
士通研究所)がコエディタを担当.WG 2,WG 5 との
ジョイント会議で議論がおこなわれた.
また,2009 年のモスクワ会議で,19794 シリーズの
改版による後方互換性欠如が電子旅券に影響するこ
とを避けるために,日本から 19794 データ交換フォー
マットの旧規格の保持方法を具体的に提案して承認
された.この結果を受けて ISO に向けた旧規格保持の
要請が本総会の決議書に盛り込まれた.
(4) WG 4(Biometric Functional Architecture/バ
イオメトリック機能アーキテクチャ,主査 M. Hogan
(米))
現在の開発案件は以下の通りである.
○WD 29195 Technical Report on Traveler Processes for
Biometric Recognition in Automated Border Crossing
Systems
入国管理における自動化ゲートの標準である.TR
であるが重要な案件である.
○WD 29196 Technical Report on Guidance for Biometric
Enrolment
バイオメトリックシステムは,登録が正しく行われ
ていないと認証精度が劣化する.このため,適正な登
録を行う指針を TR として開発している.日本の特有
の技術である静脈認証に関し,積極的な対応を行って
いる.
○NWI Amendment to 24713-3 to Define a LDS for a
Chip-enabled SID(Seafarer's Identity Document)
船員手帳の IC カードに関する NP 投票は成立し開
発を進める状況になっているが,1 月のストックホル
ム会議で,ICAO で開発した電子パスポート仕様と密
接な関係があり,詳細の検討を進める前に ILO と
ICAO の事前調整が必要との結論に至った.このため,
作業は一時中止状態となっており,京都会議では審議
対象にならなかった.
さらに,システムにおける実装のベストプラクティ
スの NP 提案,およびモバイル端末関係の SG が設置
され,NP 提案の準備を行っている.
WG 4 は今後重要なシステムアーキテクチャの開発
が進む予定である.
(5) WG 5(Biometric Testing and Reporting/バイ
オメトリック性能評価と報告,主査 N. Gordon(英))
現在の主たる開発案件は以下の通りである.
○WD 29197 Evaluation methodology for environmental
influence in biometric system performance
試験実施の各種条件の違いでバイオメトリックシ
ステム性能にどのような変動があるかを含めて性能
評価する方法に関する標準である.
○ WD 29198 Characterization and measurement of
difficulty for fingerprint databases for technology
evaluation
精度評価における指紋データベースの照合困難性
に関する TR である.技術的に難しい開発案件であり,
困難性の定義や定量化に関して提案国の韓国以外か
らの貢献が少なく進捗が遅れている.このため期限延
長申請をしている.日本から照合結果を用いて経験的
困難性の異なるデータベースの構成法を寄書した.溝
口(NEC)がコエディタを担当している.
○Base document 19795-2:2007/NP Amd 1 Amendment 1:
Testing of multi-modal biometric
マルチモーダルシステムに特有な性能評価方法に
関して,技術・シナリオ試験の標準 19795-2 に対して
追補を行うものである.日本が NP 提案し,Base
Document の主要部分を寄書している.高田(日立)
がコエディタを担当している.
○PDTR 29189 Evaluation of examiner assisted biometric
applications
鑑識官などの専門家がデータ入力や結果の判断を
支援するバイオメトリックシステムでの性能評価に
関する TR である.
○ PDTR 29156 Guidance for specifying performance
requirements to meet security and usability needs in
applications using biometrics
バイオメトリックシステムではセキュリティと利
便性はトレードオフ関係にあり,他の認証手段と併用
することもある.実際の応用に際して確認すべき性能
に関わる要求事項をガイドする TR である.
○CD 29120-2 Machine readable test data for biometric
testing and reporting -Part 2: Test input data
バイオメトリックシステムの性能試験のコンピュ
ータで電子的に可読な入力データフォーマットの仕
様である.
○ FDIS 19795-6 Biometric performance testing and
reporting - Part 6:Testing methodologies for operational
evaluation
バイオメトリックシステムの運用時の性能評価法
と試験結果の報告方法に関する標準である.運用時特
有の制約の中で評価可能な項目や注意事項が示され
ている.
○DIS 29120-1 Machine readable test data for biometric
testing and reporting-Part 1: Test Reports
バイオメトリックシステムの性能試験において,コ
ンピュータで電子的に可読な試験結果レポートのフ
ォーマットに関する仕様である.山田(東芝ソリュー
ション)がコエディタを担当している.
(6) WG 6 ( Cross Jurisdictional and Societal
Aspects/バイオメトリクスに関わる社会的課題,主査
M. Savastano(伊))
29144 The use of biometric technologies in commercial
Identity Management applications and processes(商業利
用のアイデンティティ管理に関するバイオメトリッ
ク技術の利用)
(PDTR 2011-04→2012-07)など,エデ
ィタの変更による開発期間の変更が 2 件あった.
現在の開発案件は,以下の通りである.
・ WD 24779-1 Cross jurisdictional and societal
aspects of implementation of biometric technologies
-- Pictograms, Icons and Symbols for use with
Biometric Systems -- Part 1: Basic principles
・ WD 24779-2 Cross jurisdictional and societal
aspects of implementation of biometric technologies
- Pictograms, icons and symbols for use with
biometric systems -- Part 2: Fingerprint applications
・ WD 24779-3 Cross jurisdictional and societal
aspects of implementation of biometric technologies
- Pictograms, icons and symbols for use with
biometric systems - Part 3: Vascular applications
バイオメトリック装置と関連して使用されるアイ
コンとシンボルを規定するためのマルチパート標準
である.Part1 は,シンボルやアイコンを開発する際
のアプローチの規定,シンボルやアイコンの開発・評
価時の手法,アイコンを考える際のシナリオ,シンボ
ル例やアイコン例を規定すべく開発している.Part2
は指紋認証,Part3 は静脈認証に関わる標準である.
Part3 は,宇都宮(日立 ICS)がエディタを担当して
いる.今後,Part4(顔認証)の提案が検討されている.
これらの開発には国際標準に準拠したデザイン原則
の知識が必要であり,デザインの専門家の協力が必要
である.
○ WD 29144 The use of biometric technologies in
commercial Identity Management applications and
processes
商用アイデンティティ管理におけるバイオメトリ
ック技術の利用に関する TR である.エディタの変更
などがあり,2010 年 1 月より大幅な見直し議論の後,
京都会議で最終案が策定された.
○ WD 29194 Guidance on the Inclusive Design and
Operation of Biometric Systems
バイオメトリックシステムのデザインと調達にお
けるアクセシビリティとユーザビリティのガイドラ
インの TR である.障害のある方などの取り扱いを考
慮したときのバイオメトリック機器・システムにおけ
る配慮点をまとめている.2011 年 7 月のエディタの
交代に伴い,スコープの大幅な見直しが行われた.
4.3 リエゾン報告
(1) Podio 議長より JTC 1 情報が紹介された
・ JTC 1 November 2010 Plenary Resolutions of
Interest to SC 37
・ the JTC 1 SWG on Planning に関連する活動
・ the JTC 1 Ad Hoc on Structure に関連する活動
・ 2011 年度 JTC 1 Plenary meeting (San Diego)で
報告する SC 37 Business Plan の紹介
(2) SC 17 の活動について A. Bazin(英)より報告があ
った.WG 3,WG 11 の活動を中心に状況説明がおこ
なわれた.ILO の船員手帳について,ICAO と ILO と
SC37/WG4 との討議の場の設定,及び,SC37 と SC17
の SG の設置についての要望があった.
(3) SC 27 の活動について M. Young(米)より報告が
あった.SC 27 としては,WG 2(19784-1),WG 5(29124,
291956),WG 6(29144)のプロジェクトに関心があ
る.
(4) その他,SC 31(Kwon(韓)
)ITU-T SG 17(Kim
(韓)
)
,BioAPI Consortium(Tilton(米)
)
,International
Biometric Industry Association(IBIA)
(Cannon(米)
),
OASIS BIAS TC(K. Mangold(米)
),SC 36 より活動
紹介があった.
5. 審議案件
5.1 主査の承認
WG 5 の暫定主査 Nigel Gordon(英)が正式に主査
として承認された.
5.2 会議スケジュールに関し
現在 WG は 6 ケ月ごと,総会は 12 ケ月ごとに開催
されているが,Directives 修正に伴い,ドキュメント
開発・審議に余裕がなくなることを理由に,会議スケ
ジュールを変更してはどうかという提案が米国から
提出された.米国提案は WG を 9 ケ月ごと,総会を
18 ケ月ごととするものであるが,スペインからは従
来通りの 6 ケ月/12 ケ月開催を支持する発言があり,
投票が行われた.その結果,米国提案に対し,5 ケ国
賛成(米国,英国,ドイツなど)
,5 ケ国反対(日本,
韓国,スペインなど),棄権(5 ケ国)となり,京都
総会に参加していない国も含めた投票(letter Ballot)
を実施することになった.
5.3 スペインから追加 Agenda
スペインから Request for Rule on Progressing from
CD to DIS in SC37 Project という審議提案があった.
FCD がなくなり CD-DIS になったことにより,ドキュ
メント開発が厳しくなったため,DIS 進行に際し,何
等かのルールが必要であるとの提案である.その結果,
下記の事項を含む場合には,National Bodies と Project
Editors は CD から DIS へ進行させるべきではないと注
意が促された.
・ call for contributions がある
・ 展開する文書に Editor's notes がある
・ ドキュメントに missing sections あるいは TBDs
がある
5.4 Mobile Biometrics for Personalization and
Authentication に関する Special Group の設置
C. Waggett(英)より今後モバイル関係での標準の
必要性に関し問題提起された.既存の WG2,WG3 の
開発案件との重複がどのようになるか不明であるが,
検討委員会の設置が決まった.
2012 年 7 月の総会までに mobile biometrics for
personalization and authentication に 関 す る Special
Group を設置することになった.
議論の対象となる項目は以下の通り.
・ To develop the scope and content outline of a TR
・ To develop a draft New Work Item Proposal
・ To identify candidate profiles
さらに WG Road Maps を作成することになった.
5.5 XML に関して
XML はすべての WG に関係する横断的なテーマと
なっている.このため,WG 2,WG 3,WG 5 のジョ
イント会議の結果,XML schemes に関する Editors’
Group を設けることになった.Editors’ Group は,次
のドラフト提出期限に先立って電話会議を行い,共通
項目の調和について議論する.また,W3C に向けた
RFC5141 に関する変更要請をまとめる.当面対象とな
るプロジェクトは以下の通り.
・ 19785-3 Rev1, CBEFF Patron Formats (XML Patron
Format)
・ 19794-1/Amd2 Data Formats Part 1, Framework
(XML Amendment)
・ 19794-4/Amd2 Data Formats Part 4, Finger image
data (XML Amendment)
・ SD16, SC37 XML namespaces, data elements,
schemas, and related items
・ 19794-13 Data Formats Part 13, Voice data
・ 19794-14 Data Formats Part 14, DNA data
・ 29120, Machine readable test data
5.6 英 NB より情報提供
C. Waggett(英)より BSI が開発した Code of practice
for the implementation of a biometric system (Overview
of PAS 92:2011)の紹介があった.バイオメトリック
認証システムを構築する際考慮すべき規範が網羅的
にまとまったもの.新規開発案件として NP 提案する
方針となった.
6.次回ホスト国からの紹介
タイ NB からプーケット WG 会議(2012-01-16/20)
に関する紹介があった.
フ ラ ン ス NB よ り パ リ 総 会 & WG 会 議
(2012-07-9/17)に関する紹介があった.
7.会議開催予定
2012-07-16/17
2013
パリ(仏)
未定(独)
<平成 23 年度
工業標準化事業表彰の紹介>
2011 年 10 月 17 日(月)に都市センターホテル「コスモスホール」において、工業標準化に貢献した個人及
び事業者に対する表彰が行われました.
● 内閣総理大臣表彰
平成 18 年 11 月に策定・公表された「国際標準化戦
略目標」などを受け,平成 19 年度から特に国際標準
化活動に率先して取り組み,その功績が顕著な者を表
彰するものです.
本年度は,個人 1 名が受賞し,その 1 名は当調査会
SC 29 専門委員会委員の安田氏です.
● 経済産業大臣表彰
昭和 28 年以来,工業標準化事業に率先して取り組
み,その功績が顕著であると認められる者及び組織を
表彰するものです.
本年度は,個人 20 名,組織 4 団体の受賞です.
当調査会からは,個人 1 名と 1 団体が受賞されまし
た.
受賞者: 安田 浩(東京大学名誉教授,東京電機大学
未来科学部長)
画像情報の世界での流通のためには,画像圧縮符号
化方式の国際標準化が不可欠.その標準化を議論する
ISO/IEC JTC 1/SC 29 にて委員長を務め,我が国産業
界の意向を審議に反映させるとともに,技術の進展が
早く,利害調整が大変困難な分野の国際標準策定作業
の中心的役割を果たした.画像圧縮符号化アルゴリズ
ムの統一化,早期標準化に指導力を発揮し,静止画圧
縮 符 号 化 方 式 ( JPEG ) 及 び 動 画 圧 縮 符 号 化 方 式
(MPEG)の国際規格化を実現するなど,その功績は
極めて大きい.
また,国内の活動としても,インターネットの普及
に欠かせない「安全性」「安心感」を実現する安心・
安全インターネット推進協議会の会長等も歴任して
おり,その活発な活動は国内外を問わず高く評価され,
デジタルコンテンツ流通の分野において,研究,教育,
国際標準,産業への展開など幅広く貢献.さらに,デ
ジタルコンテンツの健全な流通のためのコンテンツ
管理・保護を目的とした cIDf(Content ID Forum)の
会長や DMP(Digital Media Project)のボードメンバと
しても活動を行っている.
受賞者: 吉岡 稔弘(株式会社 AI 総研)
流通や商品管理向け電子タグの標準化を行う JTC
1/SC 31(自動認識)の WG 2(データ構造)および
WG 4(RFID)のコンビーナとして,電子タグ利用時
の要求事項や固有識別子の構造などの多数の規格を
開発し,国際標準化に貢献.国際委員会における日本
のポジションを確保に尽力.国内においては,各種セ
ミナーや著書を通して電子タグの普及促進に大きく
寄与.
受賞者: 株式会社日立製作所
IEC における電力やデバイス分野,ISO における環
境分野,JTC 1 における記録媒体や情報セキュリティ
分野など,幅広い領域の国際標準化に積極的に参加.
IEC の副会長,IEC/TC の議長及びコンビーナ,JTC
1/SC の議長及びコンビーナなどを歴任し,さらに JTC
1 においては多数がエディタに就任.また,電子タグ,
暗号,バイオメトリックスなどの分野で日本開発技術
の国際標準化を実現.国内においても,情報技術の JIS
規格開発において多大な貢献.
● 産業技術環境局長表彰
平成 19 年度から国際標準化活動を幅広い側面から
支える関係者を表彰するものです.
本年度は,貢献者表彰 23 名,奨励者表彰 5 名の受
賞です.当調査会からは,5 名が貢献者表彰を,3 名
が奨励者表彰を受賞されました.
[貢献者表彰]
受賞者: 小林 龍生(有限会社スコレックス)
JTC 1/SC 2(文字コード)において,15 年間にわた
り標準化活動に参画.その間,2004 年から 2010 年ま
での 6 年間,SC 2 の国際議長を務め,国際レベルで
の文字コードの標準化活動において,リーダーシップ
を発揮してきた.国際議長時代には,UNESCO など
との協調による少数民族固有の言語や文字などへの
対応,ISO の開発途上国専門委員会 DEVCO への働き
かけなどを通じ,いわゆるデジタルデバイド問題への
取り組みという面でも大きく貢献.
受賞者: 篠木 裕二(一般社団法人情報処理学会)
JTC 1/SC 7(ソフトウェア技術)において,20 年間
にわたり標準化活動に参画.その間 3 つの WG に継
続的に委員として参画して,ソフトウェアの設計・開
発技術等の標準化に尽力.また,ISO/IEC 11411:1995
(ソフトウェアの状態遷移)及び ISO/IEC 15476
(CDIF
意味論的メタモデル)のプロジェクトエディタを歴任
するなど,ソフトウェア技術の規格開発に大きく貢献.
受賞者: 関口 正裕(富士通株式会社)
JTC 1/SC 2(文字コード)において,18 年間にわた
り標準化活動に参画.2009 年から現在まで SC 2 の国
内委員会の委員長として貢献.また,国内の文字コー
ド関係 JIS 改正にも積極的に参画し,現在行われてい
る常用漢字表改定に併せた文字コード JIS の改定委員
会ではWG主査を務めるなど,国内外において,国民
生活を支える基盤技術である文字コード規格の普
及・促進に多大な貢献.
受賞者: 妹尾 孝憲(独立行政法人情報通信研究機構
ユニバーサルコミュニケーション研究所超臨場感映
像研究室専攻研究員)
JTC 1/SC 29(音声,画像,マルチメディア,ハイ
パーメディア情報符号化)において,21 年間にわた
り標準化活動に参画.その間,情報符号化方式,著作
権保護方式,コンテンツ特徴記述,立体映像符号化方
式など,円滑な動画,静止画像等の流通に必要な幅広
い分野での規格策定に多大な貢献.
受賞者: 山田 昭雄(日本電気株式会社)
JTC 1/SC 29(音声,画像,マルチメディア,ハイ
パーメディア情報符号化)に 1998 年から参画.音響
映像(AV)コンテンツのメタデータに関連する各種
国際標準化(15938 シリーズ,23000 シリーズ,24800
シリーズ)について,19 件にも及ぶプロジェクトで
プロジェクトエディタを務めた.音響映像コンテンツ
メタデータ関連の規格策定により,当該分野での世界
レベルでの技術向上に大きく貢献.
[奨励者表彰]
受賞者: 原田 登(日本電信電話株式会社)
JTC 1/SC 29(音声,画像,マルチメディア,ハイ
パーメディア情報符号化)において,2004 年から標
準化活動に参画.ひずみを許さずに情報量を圧縮でき
る音響ロスレス符号化規格の主要な技術提案を行い,
アーカイブ用フォーマット規格の策定では筆頭エデ
ィタやアドホックグループ議長として起案から完成
まで中心的役割を担った.これらの規格の普及にも尽
力しており今後も国際標準化活動への積極的な貢献
を期待.
受賞者: 盛合 志帆(ソニー株式会社)
安全性と実装性能の高い共通鍵ブロック暗号の研
究開発に従事し,その成果を元に JTC 1/SC 27(情報
セキュリティ)における低消費電力で動作可能な軽量
暗号の日本提案と国際規格開発に寄与.国際標準化で
日本の高い暗号技術力を発揮することに貢献.
受賞者: 山本 英朗(日本電信電話株式会社)
JTC 1/SC 17/WG 8(非接触 IC カード)国際会議の
日本代表として,国際標準化活動に参画.測定方法や
超高速伝送技術などにおける日本からの提案や寄書
を作成し,国際会議で積極的に意見表明して国際規格
に反映することに貢献.
<声のページ>
標準化活動で学んだこと・得たこと
岡崎 靖子(日本アイ・ビー・エム(株))
このたび 2011 年 7 月に標準化貢献賞という栄誉あ
る賞をいただきました.これまでの活動を支えていた
だきました SC 7 の皆様と事務局の皆様にこの場をお
借りして御礼申し上げます.
私が標準化活動に関わりを持つようになって,15
年になります.この間に SC 7 の複数の小委員会に参
画させていただき,SC 7/WG 10 小委員会幹事,
ISO/IEC 15504 シリーズと ISO/IEC 33000 シリーズ(プ
ロセス・アセスメント)のエディタを務めさせていた
だきました.振り返ると,標準化活動を通じて私は多
くのことを学びました.標準化活動で感じたこととと
もに,得たことをご紹介したいと思います.
まず,JTC 1 は,国際標準規格を策定する仕組み・
プロセスがしっかりしていると思います.例えば,投
票コメントのカテゴリー分類や,各コメントには変更
後の自案をつけるようになっていること,投票ステー
ジが決まっている点など,とてもよくできています.
このやり方は,他でも参考にさせていただいておりま
す.
次に,SC 7 の国際会議は,英語を母国語としない
私たちにも広く開かれていると感じます.私が最初に
国際会議に出席したのは,2001 年の SC 7 総会(名古
屋)です.それまでは,国際会議は英語が堪能でない
と出席できない雰囲気だろうと気後れをしていたの
ですが,国内での開催ということで参加をしてみると,
皆が英語力よりも発言内容の方を重視して,私の意見
に耳を傾けてくれました.その後,エディタを担う機
会にも恵まれ,担当する国際標準規格の審議では,つ
たない英語ながら,会議を仕切る経験をしました.度
胸だけはついて,英語での会議に自然体で臨めるよう
になったのは,これらの経験のお陰です.
また,国内委員会,および,国際会議には,豊富な
経験をお持ちの IT 業界の専門家の方々が参画されて
います.標準化活動を通じて知り合った,これら世界
中の第一人者の方々とのネットワークは,私にとって
大切な財産です.標準化活動においてだけでなく,そ
こを離れた IT 業界の場でも交流をさせていただき,
ソフトウェア工学関係の書籍を共著で出版するなど,
皆様にお世話になっております.
微力ながら,今後も国際標準規格の審議や策定のお
手伝いをさせていただき,自らも学んでいけたら幸せ
です.
∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪
<国際規格開発賞の表彰>
国際規格開発賞は,当会に所属する Project Editor または Project Co-Editor の貢献に対して授与されるものです.
受賞者は表彰委員会で審議決定し,受賞対象の規格が発行された後に授与されます.
佐藤 慶浩(日本ヒューレット・
パッカード㈱)
2011 年 10 月の受賞者
ISO/IEC 27035 Security techniques -- Information security incident management
(SC 27,2011-09-01 発行)
2011 年 11 月の受賞者
緒方 日佐男(日立オムロンターミ ISO/IEC 29109-9:2011
ナルソリューションズ㈱)
Conformance testing methodology for biometric data interchange formats defined
浜 壮一(㈱富士通研究所)
in ISO/IEC 19794 -- Part 9: Vascular image data (SC 37,2011-07-15 発行)
<解説: 標準化エンジニアリング>
山中
①原案作成 ②規格調整
③発行承認
1. はじめに
技術の進歩や社会的な要請などから,標準化の対象
範囲は拡大しており,発行される規格数も増加する一
方である.このため各組織においては,有限の標準化
リソースを効果的に活用できるように,全体像を定量
的に把握して戦略を立てることが求められている.そ
こで,標準化活動を定量化し,そのデータに基づいて
戦略を立案・実行することを「標準化エンジニアリン
グ」と名付け,手始めとしてデジュール標準化活動の
定量化を試みた.以下に,JIS 規格および ISO・IEC
の国際規格に関して,調査・分析した結果を報告する.
2. JIS 規格の開発について
国内デジュール標準である JIS 規格の,新規制定お
よび改正における基本的な手順を,図 1 に示す.大き
く分けて,JIS 原案作成委員会を設定しての①原案作
成,規格書様式へ沿った修正を行う②規格調整,規格
発行の是非を審議する③発行承認の,3 段階より成る.
実際には,原案作成委員会発足前にも規格化の検討が
行われているが,統一的なデータ取得が難しいので,
今回は原案作成委員会開始以降を調査対象とした.
図 2 は,JIS の X 部門(情報処理)で最近 2 年間に
発行した 62 件の規格について,全体の開発期間が短
い順に並べたものである.①原案作成と②規格調整の
長さが,全体の長さをほぼ決めていることがわかる.
開発期間の長さは規格書のページ数とも相関があり,
両者の間の相関係数は 0.34 となった.
図 3 は,最近 1 年間における JIS の全部門と X 部門
の開発期間を比較したヒストグラムである.縦軸は,
年間発行総数を1として正規化した発行頻度を示す.
X 部門は,JIS 全部門に比べて長めの期間となってい
る.これは,後の表 1 に示すように,X 部門の規格書
のページ数が多いことも一因である.
次に,図 1 の開発期間に費やすコストを,X 部門に
ついて求めた.規格開発コストの大半は,作業担当者
や参加委員の人材コストなので,それぞれの開発段階
や各委員会における,人的工数(時間×人数)の実績
を調べた.そして,各人の所属機関(企業,大学,経
産省等)における経費・間接費などの財務データより,
各人の単位時間あたりのコスト(ローディング)を見
積もり,工数とローディングの積算によりコストを求
めた.X 部門における規格開発の総コストは,1 件あ
たり約 5 百万円となった.図 4 に,各委員会等のコス
ト比率を示す.原案作成委員会のコストが 2/3 を占め
ており,経産省と日本規格協会における事務的処理に
かかるコストよりも大きい.この結果をもとに,JIS
豊(経済産業省
情報電子標準化推進室)
原案作成委員会開始
規格調整提出
規格調整分科会
経産省提出
JISC 専門委員会
官報公示
図 1 JIS 規格開発の手順
全部門の平均的な規格開発コストをページ数依存に
より推定したところ,1 件あたり約 4 百万円となった.
これを,年間総額に換算すると約 27 億円と見積もら
れる.
JIS 規格の開発に関するデータを,表 1 にまとめて
示す.表には,法令に引用されている JIS 規格数の割
合も記載しており,発行規格全体の 20%の引用実績と
なっている.
3. JIS 規格の利用について
日本工業標準調査会(JISC)の Web ページ(*1)では,
発行済の全 JIS 規格の本文を閲覧することが出来る.
そこで,規格の利用状況を定量的に示す指標の1つと
して,各 JIS 規格の閲覧アクセス数について調査を行
った.まず,データの信頼性を確認するために,各規
格アクセス数の 2009 年度分と 2010 年度分のデータの
相関係数を求めた.結果は,0.97 と非常に高い相関が
得られ,経時変化の少ない安定したデータであること
が確認された.
図 5 は,全部門約 1 万件と X 部門約 5 百件の JIS 規
格について,アクセス数の高いものから順に並べた結
果である.全部門と X 部門の順位は,それぞれの最
大順位を 100%として横軸をそろえており,アクセス
数は全部門での平均値を1として正規化している.縦
軸は対数スケールであり,アクセス数は順位によって
桁違いの開きがある.X 部門は全部門と比べて,上位
の一部の規格を除き,全般に利用率が低くなっている.
60 ①原案作成
所要月数
48 ②規格調整
36 ③発行承認
24 12 0 JISX部門制定・改正案件
図 2 JISX 部門の規格開発期間
経産省
7%
規格発行頻度
0.3
全部門
総コスト
~5百万
X部門
0.2
原案作
成委員
会 67%
0.1
日本規
格協会
22% 専門委
員会
1%
規格調
整分科
会 3%
図 4 JISX 部門の規格開発コスト
0
0
1
2
3
4
5
アクセス数(平均=1)
規格開発期間(年数)
図 3 JIS 開発期間ヒストグラム
表 1 JIS 規格開発に関するデータ
規格発行数*
522 件
10259 件
年間制定・改正数*
34 件
672 件
規格ページ数平均
105 ページ
35 ページ
規格開発期間平均
34 ヶ月
25 ヶ月
~5 百万円
~4百万円
7%
20%
*2010 年度末実績
1
全部門
0.1
X部門
0.01
20%
40%
60%
80%
100%
部門内順位
図 5 全部門と X 部門のアクセス数比較
1000
Webサイト数(平均=1)
全部門
法令引用規格数割合
10
0%
X 部門
開発コスト平均
100
100
10
1
0.1
0.01
0%
20%
40%
60%
80%
100%
順位
図 6 JIS 規格番号記載の Web サイト数
もう 1 つの利用状況の指標として,JIS 規格番号を
記載している Web サイト数を,規格番号ごとに検索
エンジン(*2)を用いてカウントする調査を行った.
Web への番号記載の目的は,規格の解説であったり,
製品の仕様説明であったりと多様であるが,出現頻度
の高いものは,関心や利用頻度が高い規格であると考
えられる.図 6 は,約 1 万件の JIS 規格を,規格番号
を記載するサイト数の多い順に並べたものである.
Web 上の記載は,利用頻度の高い規格の情報が集中的
に参照される傾向が強いためか,上位の規格のサイト
数が突出している.
図 5 と図 6 の傾向は多少異なっているが,同一規格
のアクセス数とサイト数のデータの関係について,相
関を調べてみた.広い桁数域での比較となるので,そ
れぞれの値の log を取って相関係数を求めたところ,
0.46 となり相関があることが確認された.さらに,検
索エンジンでカウントされる Web ページには外国語,
特に中国語のページが多く含まれていたので,日本語
ページ限定の条件を加えた検索でサイト数を求め,こ
のサイト数とアクセス数の相関を調べた.相関係数は
0.67 となり,さらに高い相関となることが確認された.
80
300
FT案件
60
通常案件
50
40
30
20
10
通常案件
200
150
100
50
0
1
2
3
4
5
6
0
1
規格化プロジェクト審議期間(年)
4
5
6
表 2 IS 規格化のデータ
FT案件
JTC1
ISO/TC
IEC/TC
1.7 年
3.2 年
3.1 年
13%
~7%
~7%
調査対象 IS 件数
665 件
3635 件
777 件
規格ページ数平均
110
42
67
通常案件
50
3
図 8 ISO/TC 規格化プロジェクト審議期間
70
60
2
規格化プロジェクト審議期間(年)
図 7 JTC 1 規格化プロジェクト審議期間
IS発行件数(件)
FT案件
250
IS発行件数(件)
IS発行件数(件)
70
IS 審議期間平均
40
ファーストトラッ
30
ク件数割合
20
10
0
1
2
3
4
5
規格化プロジェクト審議期間(年)
6
表 3 国際規格への対応 JIS 発行状況
JTC1
ISO/TC
IEC/TC
IS 発行数
1601
13585
4424
対応 JIS 発行数
381
3473
1148
対応 JIS 割合
24%
26%
26%
図 9 IEC/TC 規格化プロジェクト審議期間
4. JTC 1・ISO・IEC での規格開発について
JTC 1,ISO/TC,IEC/TC それぞれの国際標準化委員
会において,最近の約 4 年間に発行した IS の規格化
プロジェクトの審議期間を調査した.尚,以降のデー
タにおいて,ISO/TC および IEC/TC に,JTC 1 は含め
ないものとして扱う.また,条件をそろえるため IS
のみを対象とし,Amd,Cor,TR,TS は対象外とし
た.図 7,図 8,図 9 にそれぞれの審議期間のヒスト
グラムを示す.通常プロセスの案件では NP 登録から
IS 発行まで,ファーストトラック案件(FT 案件)は
プロジェクト登録から IS 発行までの期間を示す.尚,
ファーストトラック案件かどうかは明記されていな
いので,JTC 1 については全件確認したが,ISO と IEC
については一部推定も含まれている.
表 2 に,それぞれの国際標準化委員会のデータをま
とめて示す.JTC 1 は,審議期間が短くファーストト
ラック割合が高いこと,規格書ページ数の多いことが
特徴である.
図 10 は,表 2 の JTC 1 調査対象 IS の中のファース
トトラック提案 82 件について,提案元を調べた結果
である.各国 National Body (NB)からの提案は ANSI
を除くと少なく,大半は標準化組織からとなっている.
図 11 は,JTC 1 における最近 4 年間の NP 提案 286
件の提案元である.JTC 1 では,委員会名での提案が
半数近くあり,国別では韓国が米国についで 2 番目の
件数となっている.
JISC BSI KATS
リエゾン 4
ITIC
FiSMA
SEDRIS
IFPUG
OASIS
TCG
米国 45
韓国 29
委員会 120
日本 17
IEEE
ANSI
ITU‐T
NB
フォーラム
国際標準
化機関
ICAO
準国際
標準化団体
UK 17
ECMA
その他NB 19
ニュージー
ランド 4
カナダ 14
オーストリ
ア4
ドイツ 9
中国 4
図 11 JTC 1 における NP 提案元
図 10 JTC 1 におけるファーストトラック提案元
100
JTC1規格Webサイト数(平均=1)
1000
100
Webサイト数(平均=1)
10
1
0.1
0.01
0.001
0.0001
0%
20%
40%
60%
80% 100%
順位
図 12 国際規格番号記載の Web サイト数
10
1
0.1
0.01
0.001
0.0001
0.001 0.01
0.1
1
10
100
JIS規格Webサイト数(平均=1)
図 13 JTC1 規格と対応 JIS 規格の Web サイト数相関
5. JTC 1・ISO・IEC 規格の利用について
日本国内で必要性が高い国際規格は,国際規格の英
語を日本語翻訳する形で,対応する JIS 規格を作成す
る場合が多い.表 3 は,2011 年 7 月時点における,
国際規格への対応 JIS の発行状況である.国際規格の
約 1/4 には対応する JIS 規格が発行されており,JIS
側からみると全規格の半分ほどの 5 千件強が国際規
格への対応 JIS となる.国際の英語規格をそのまま利
用する国を除くと,日本は他国と比べて,自国語での
国際規格対応の国内規格整備が進んでいる方だと思
われる.
国際規格については,規格利用を直接把握するよう
なデータがない.そこで,JIS 規格においてアクセス
数と相関があることが確認された,規格番号を記載し
ている Web サイト数を,検索エンジンを用いて調査
した.図 12 は,対応 JIS 規格が存在する国際規格約 5
千件における調査結果を,サイト数の多い順に並べた
ものである.JIS 規格の場合と比べて,さらに上位と
下位との差が大きくなっている.国際標準化委員会で
は,規格の内容や対象分野が国内以上に幅広いことも,
規格利用状況の差を広げる原因の 1 つと考えられる.
ちなみに,調査した国際規格の中で突出したサイト数
となったのは,品質管理規格の ISO 9001 であった.
前記の国際規格の Web サイト数について,対応す
る JIS 規格の Web サイト数との相関係数を求めたとこ
ろ,0.21 と低い値となった.また,JTC 1 発行分の 380
件に絞って対応する JIS 規格との相関係数を求めたが,
0.15 となり情報分野に限っても相関の低さは変わら
なかった.
そこで,国際規格と対応 JIS 規格の整合性区分(*3)
が MOD(修正)の規格を除き,IDT(一致)である
2206 件の規格ペアのみを選び,さらに JIS 規格の Web
サイト数は日本語のみに制限したもので,国際規格の
Web サイト数と対応 JIS 規格の Web サイト数の相関係
数を求めた.この結果は,0.46 となりほどほどの相関
関係が確認された.図 13 は,このような条件下で求
めた JTC 1 発行規格と対応 JIS 規格のペア 314 件分の
相関関係をプロットしたものである.この図における
相関係数は 0.47 となった.
6. まとめ
標準化エンジニアリングの一環として,デジュール
標準化における規格開発や利用状況の定量的なデー
タを調査・分析してまとめた.これらのデータを各個
別分野の状況と比較することにより,効果的な標準化
の戦略検討を実現することが期待される.
尚,本レポートに掲載した内容は,筆者個人の責任
においてまとめたものであり,所属部門が保証するも
のではないことを付記しておく.
(*1) 日本工業標準調査会 JIS 検索
http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html
(*2) Google 日本 http://www.google.co.jp/
(*3) http://www.jisc.go.jp/newstopics/1999/g21_taio.pdf
訃 音
小松 尚久先生(早稲田大学教授)におかれましては,去る平成 23 年 10 月 17 日
に御逝去なさいました(享年 55 歳).生前の活動に感謝し,ご冥福をお祈りいたし
ます.
所属委員会: SC 29/WG 11/AUDIO 小委員会,SC 37/WG 1 小委員会
<解説: ディレクトリ標準の最新状況>
SC 6/WG 8 小委員会
主査 戸部 美春(NTT アドバンステクノロジ(株))
1. はじめに
ディレクトリはネットワーク上の資源の属性を管
理し,検索できるようにしたシステムである.各種通
信サービスの容易かつ効率的な実現に資するため,ネ
ットワーク資源に関する情報を世界規模で提供でき
ること目指し,世界規模で 1 つの分散データベースと
して構築できるようにシステムの標準化が進められ
てきた.
標準化作業は ISO/IEC JTC 1(国際標準化機構: ISO
と国際電気標準会議: IEC の第一合同技術委員会)と
ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門,旧
CCITT)の合同作業で進められ,開放型システム相互
接続(OSI:Open Systems Interconnection)標準の 1 つ
「The Directory」として規定されている.
最初の標準が 1988 年に規定されて以降,ネットワ
ークやセキュリティ等の関連技術の進展をタイムリ
ーに取り込む形でディレクトリの拡張検討が継続的
に実施されている.
本稿では,ディレクトリ標準の構成と標準化経緯を
概観し,最近の拡張検討状況について解説する.
(注)ディレクトリ標準の内容については下記を参照
下さい.
「第 66 回情報処理学会全国大会 標準化セッション
報告:ディレクトリの標準化動向(2004/3/10)」
http://www.itscj.ipsj.or.jp/session/zentai66/sc6/tobe.pdf
表 1 ディレクトリ国際規格,国際勧告
国際規格
ISO/IEC 9594-1
ISO/IEC 9594-2
ISO/IEC 9594-3
ISO/IEC 9594-4
ISO/IEC 9594-5
ISO/IEC 9594-6
ISO/IEC 9594-7
ISO/IEC 9594-8
ISO/IEC 9594-9
ISO/IEC 9594-10
国際勧告
ITU-T X.500
ITU-T X.501
ITU-T X.511
ITU-T X.518
ITU-T X.519
ITU-T X.520
ITU-T X.521
ITU-T X.509
ITU-T X.525
ITU-T X.530
タイトル
ディレクトリ-第1部:概念、モデル及びサービスの概要
ディレクトリ-第2部:モデル
ディレクトリ-第3部:抽象サービス定義
ディレクトリ-第4部:分散操作の手順
ディレクトリ-第5部:プロトコル仕様
ディレクトリ-第6部:代表的な属性型
ディレクトリ-第7部:代表的なオブジェクトクラス
ディレクトリ-第8部:公開かぎ証明書及び属性証明書の枠組み
ディレクトリ-第9部:複製
ディレクトリ-第10部:ディレクトリ管理のためのシステム管理の利用
表 2 標準化の経緯
ITU-T
ISO/IEC
第1版
1988年
1990年
第2版
1993年
1995年
第3版
1997年
1998年
第4版
2001年
2001年
第5版
2005年
2005年
第6版
2008年
2008年
第1部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第2部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第3部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第4部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第5部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第6部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第7部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第8部
制定
改定
改定
改定
改定
改定
第9部
―
制定
改定
改定
改定
改定
第10部
―
―
制定
改定
改定
改定
表 3 各版の制定/改定のポイント
版
制定/改定のポイント
第1版
ディレクトリの最初の標準,基本機能を標準化
第2版
複製,アクセス制御,スキーマ管理,サービス拡充
第3版
セキュリティ拡張,コンテキスト概念,サービス拡充,システム管理の利用
第4版
証明書拡張,TCP/IP写像,分散エントリ,サービス拡充
第5版
LDAP整合,証明書拡張,フレンド属性,分散ページ化結果
第6版
TCP-IP使用,URIサポート,属性定義追加(RIFD含むNID),文字列長上限削除
検討中
通信サポート拡張,パスワードポリシー,ディレクトリID管理サポート
表 4 拡張作業項目と検討状況
拡張作業項目
改定パート 進展状況と日本の対応
通信サポート拡張
1~9
パスワードポリシーサポート 1~9
ディレクトリID管理サポート
3rd PDAM,2011/8/11投票:賛成
3rd PDAM,2011/8/4投票:賛成
1~2,6~8 1st PDAM,2011/8/24投票:6~8パート反対
2. ディレクトリ標準の構成と標準化の経緯
ディレクトリ標準は,10 パートから成るマルチパ
ート構成の文書であり,ISO/IEC JTC 1 と ITU-T で技
術的に同一文書となっている.表 1 にディレクトリ標
準文書(ISO/IEC 9594 シリーズ国際規格,ITU-T X.500
シリーズ国際勧告)を示す.
ディレクトリ標準は第 1 版が 1988 年(CCITT:現
在 ITU-T)/1990 年(ISO/IEC)に制定されてから既に
5 回改版され,現在 2008 年版が最新となっている.
表 2 に標準化の経緯概観を,表 3 に制定/改定のポイ
ントを示す.
3. 検討中の拡張機能
現在進行中の 3 項目の拡張作業の状況を表 4 に示す
とともに,その概要を以下で紹介する.
(1) 通 信 サ ポ ー ト 拡 張 ( Communication Support
Enhancements)
LDAP 環境と ISO ディレクトリ環境の融合を実現す
ることを目的とし,DUA 及び LDAP クライアントが
DSA,LDAP サーバが混在するディレクトリアクセス
を行ったとき,DSA と LDAP サーバが連携して,そ
のリクエストを処理することを可能とする.
従来のディレクトリ分散モデルは,サービス要求す
る DUA とサービスを提供する複数の DSA で構成し
ていた.LDAP 環境と融合可能とするため,LDAP ク
ライアントや LDAP サーバと通信できるように DSA
を機能拡張する.このような DSA を LDAP リクエス
タと呼ぶ.LDAP 環境と融合したディレクトリ分散モ
デルを図 1 に示す.
LDAP クライアントや LDAP サーバと LDAP リクエ
スタ(DSA)は,IETF RFC 4511 で規定されるプロト
コル LDAP を使って通信する.DSA は必要に応じて
LDAP クライアント要求をプロトコル DSP.または
LDAP を使ってチェインする.
(2) パスワードポリシーサポート(Password Policy
Support)
ディレクトリのセキュリティ向上を目的とする.デ
ィレクトリ内でパスワードが使われ.管理される方法
を制御する規則の集合を規定することにより.次のよ
うなパスワードポリシーの実施を保証する.
・ 利用者が定期的にパスワードを変更する
・ 古いパスワードの再使用を制限するという品質
要件を満たす
・ ある回数以上の失敗後は利用者をロックアウト
する
(a)パスワード更新
ディレクトリ利用者がパスワードを更新するため
のパスワード変更操作(changePassword)を規定しパ
スワード変更を実現する.また,ディレクトリ管理者
がパスワードを設定・更新するためのパスワード管理
操作(administerPassword)を規定し,パスワード管理
を実現する.
(b)パスワードポリシー,パスワード品質
セキュリティポリシーを実装するためのメカニズ
ムを規定し,パスワードに関するセキュリティ向上を
実現する.具体的には以下を保証するメカニズムを規
定する.
・ パスワード定期更新
・ パスワード品質要件(最小パスワード長,文字
種組合せ,容易なパスワード回避)
・ 古いパスワード再使用制限
・ 特定回数以上のログイン失敗時のロックアウト
(3) ディレクトリ ID 管理サポート(Directory-IdM
support)
オブジェクト識別子(OID)とユニフォームリソー
ス名(URN)をディレクトリに収容するため,これら
をディレクトリ識別名(DDN)にマッピングする方
法を規定する.
OID と URN は,どちらもオブジェクトを一意に識
別するために使われ,階層構造を持つ.DDN もオブ
ジェクトを一意に識別するために使われ,ディレクト
リ情報木(DIT)と呼ばれるデータ格納構造を反映し,
相対識別名(RDN)を構成要素とする階層構造を持つ.
これらをマッピングすることにより,OID や URN に
より識別されるオブジェクトに関する情報をディレ
クトリに格納可能とする.この拡張では,マッピング
対象として次の識別子が検討されている.
・ OID(Object Identifier)
・ URN(Universal Resource Name)
・ UII(Unique Item Identifier)
・ EPC(Electronic Product Code)
・ AFI(Application Family Identifier)
図 1 ディレクトリ分散モデル
4. おわりに
以上,本稿では,ディレクトリ標準の拡張経緯を概
観するとともに作業中の拡張内容について紹介した.
∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪∽♪
<編集後記>
本 ITSCJ の広報委員会,そして NEWSLETTER の編
集に関わるようになって 1 年半ほどが過ぎた.本来の
専門はどちらかというとハードに近い分野(物性物理
学)であったが,その実験結果解析やシミュレーショ
ンにおいて,Fortran 特殊関数 Library のお世話になる
などソフトウェア的な関わりがあったことより,前任
者より引き継いだ.しかしながら,色々と異なる分野
の専門用語や規格化手順の用語が多く四苦八苦した
次第である.物理学は,自然界の法則,それこそ共通
な自然科学のスタンダードを見出すことであると言
えるかも知れない.そして世の洗礼を受け,広く受け
入れられた法則のみが生き残っていける.
2011 年は,まさに日本経済を直撃する「災い」の
多い年であった.3 月の東日本大震災を始め,夏の電
力危機,戦後最高値を更新した対ドル円高,欧州ユー
ロ危機による対ユーロ円高,タイ大洪水による日本企
業生産拠点の打撃,そして TPP は日本経済への救世
主,はたまたパンドラの箱となるのであろうか.2012
年は,人知を尽くして情報処理技術を駆使し,広く世
の中に受け入れられるスタンダードを確立し,それこ
そスマートに明るい年としたいものである.
(SH 記)
発
行
人
一般社団法人 情 報 処 理 学 会
情報規格調査会
広報委員会
〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8
機械振興会館 308-3
Tel: 03-3431-2808
Fax: 03-3431-6493
[email protected]
http://www.itscj.ipsj.or.jp/
Fly UP