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165 2.5.4.1.3 SMES の動作回数の計数方法 SMES の動作回数の計数
2.5.4.1.3 SMES の動作回数の計数方法 SMES の動作回数の計数方法について検討を行った。 動作回数としては、変換装置が電力を出し入れする事で計数することが妥当と考えられ、そ の計数方法としては、設定した出力を超える出し入れが行われた場合に 1 回と数えることが適 当であるとし、計測精度等から考えて、有意な出力レベルとしては、200kW 程度であれば確認 が可能とした。 2.5.5 10MVA/20MJ 級 SMES システム構成機器の工場試験 2.5.5.1 電力変換システム (1) 電力変換器の評価試験 10MVA 級変換器を製作し、10MVA 相当の電圧電流を印加することにより 3 レベル GCT イ ンバータおよびチョッパの動作を確認した。また、実機と等価な通電電流およびゲートパター ンにてインバータ通電(AC)、チョッパ通電(DC)の評価試験を実施し、変換器の損失を評価 した。 a. 試験回路 大容量電力変換装置の試験では、全体を組み合わせた試験が設備上困難な場合、各構成機器 を個別に試験しても良いことが「JEC-2440 る。図Ⅲ-1-2.5.5.1-1 自励半導体電力変換装置」規格で規定されてい の試験回路にて 2 台のユニットを使用し、1 台を力行(進み)運転、も う 1 台を回生(遅れ)運転させることにより、ユニット 1(評価)側の動作が実機と等価な電 圧、電流、通電率となるような条件で評価試験を実施した。 ユニット 1 ユニット 2 6600V /3150V 6.6kV 1020μ ×18 並列 IVR 6600V /3150V 1020μ ×18 並列 <工場設備> <変圧器> <コンデンサ盤> <整流器> <チョッパ盤> チョッパ評価時:9.5mH インバータ評価時:1.335mH 図Ⅲ-1-2.5.5.1-1 1040A~1925A:チョッパ 1700A:インバータ <模擬負荷リアクトル> 電力変換装置評価試験回路 165 b. 動作試験波形の一例 インバータ試験およびチョッパ試験の通電波形の例を図Ⅲ-1-2.5.5.1-2、図Ⅲ-1-2.5.5.1-3 に 示す。 力率1(1,700Arms, 変調率 0.91) 図Ⅲ-1-2.5.5.1-2 充電モード(1,925A,導通率 0.49) インバータモード通電波形 図Ⅲ-1-2.5.5.1-3 チョッパモード通電波形 c. 変換器動作時の損失評価 実機と等価な通電電流およびゲートパターンにてインバータ通電(AC)、チョッパ通電(DC) の評価試験を実施した。 ・ インバータ 力率 1(充電)、力率-1(放電)、の各モードにつき、10MVA 運転と同等の : PWM パターン、電流(1,700A rms )にて損失を測定。 参考測定として、 力率 0(進み)、力率 0(遅れ)についても測定した。また、インバータに ついては系統連系試験で使用する特別 5 パルスの他に、100MW 級変換器 設計で想定した特別 3 パルスについて損失を測定した。 ・ チョッパ : 10MW 運転と同等の電流及び導通率にて損失を測定。 損失評価方法としては、①の方法の測定値にタイし、②、③での方法の値を比較し、値の整 合性を確認するとともに、設計計算した値と比較、評価を実施した。 166 ① 各素子の電圧、電流波形から発生損失を算出し、付属回路の損失(注)を加算 ② 各素子のフィン温度から発生損失を算出し、付属回路の損失(注)を加算 ③ 冷却水の出口温度上昇から2ユニット全体の損失を算出し、1/2 として1ユニット分 の損失を計算 ④ GCT 素子電流特性、スイッチング損失、P-N ジャンクション損失等の個々の損失デー タを基に演算式を用いて損失を設計計算 (a) インバータ損失結果 イ ン バ ー タ に 関 し て は 、 定 格 10MVA 相 当 の 電 流 を 流 し た 場 合 の 損 失 を 測 定 し 、 表 Ⅲ -1-2.5.5.1-1、表Ⅲ-1-2.5.5.1-2、図Ⅲ-1-2.5.5.1-4 の結果が得られた。 表Ⅲ-1-2.5.5.1-1 運転モード インバータ特別 5 パルス発生損失 変調率 (1)波形より (2)温度より (3)冷却水より (4)設計計算 力率1 0.91 25.8kW 22.4kW 25.9kW 25.1kW 力率-1 0.89 27.5kW 27.2kW 25.9kW 26.1kW 表Ⅲ-1-2.5.5.1-2 インバータ特別 3 パルス発生損失 (1)波形より (2)温度より (3)冷却水より (4)設計計算 運転モード 変調率 力率1 0.91 18.7kW 17.0kW 17.9kW 17.9kW 力率-1 0.89 19.7kW 21.6kW 19.9kW 18.6kW 30,000 発生損失(W) 25,000 20,000 5パルス 3パルス 15,000 10,000 5,000 0 力率1 図Ⅲ-1-2.5.5.1-4 力率-1 インバータ損失結果 (b) チョッパ損失結果 チョッパに関しては、直流電流を変化させた場合の損失を測定し、表Ⅲ-1-2.5.5.1-3、図Ⅲ 167 -1-2.5.5.1-5 の結果が得られた。 表Ⅲ-1-2.5.5.1-3 電流値(A) 正電圧出力(GCT 通電モード)発生損失 導通率 (1)波形より (2)温度より (3)冷却水より (4)設計計算 1,040 0.95 7.5kW 6.8kW 8.0kW 7.8kW 1,240 0.69 8.9kW 10.4kW 10.0kW 9.5kW 1,420 0.57 10.4kW ― ― 11.3kW 1,650 0.48 12.8kW ― ― 13.7kW 1,925 0.49 16.0kW 15.1kW 17.9kW 16.3kW 通電電流vsユニット損失 ユニット損失(W) 18000 16000 正電圧出力 負電圧出力 14000 12000 10000 8000 6000 1000 1200 1400 1600 1800 2000 通電電流(A) 図Ⅲ-1-2.5.5.1-5 チョッパ損失結果 2.5.5.2 超電導コイルシステム (1) 超電導マグネット a. インダクタンス測定 コイル通電中の電流変化に対してのコイル電圧を測定しインダクタンスを算出し、表Ⅲ -1-2.5.5.2-1 の結果が得られた。 表Ⅲ-1-2.5.5.2-1 インダクタンス測定 電流変化(電流変化量) 発生電圧 インダクタンス 400A~500A(2.9A/s) +15.1V 5.07H 500A~400A(2.9A/s) +15.1V 5.07H b. 耐電圧試験 超電導コイルが液体ヘリウムにより冷却され超電導状態を維持した状態かつ、電流リードが 冷凍機により冷却されクライオスタット断熱真空が超真空を維持された状態で耐電圧試験を実 施した。 168 超電導コイル・電流リードに交流 5.3kV を 1 分間印加した結果、絶縁破壊はなかった。 c. 定格通電試験 超電導コイルを液体ヘリウムに浸漬させ 4.2K まで冷却した後、定格電流(1,350A)を超過 する 1,447A まで通電を確認し健全性を確認した。定格 1,350 A に対し、最大 1,440A までコイ ルトレーニングを実施した。コイルトレーニング時には、1,350 A までに 7 回、1,440 A まで に 12 回のクエンチ(トレーニング)が発生した。さらにその後、定格電流にて、5 時間の電流 保持を行い、異常のないことを確認した(図Ⅲ-1-2.5.5.2-1 参照)。 1600 1447(A) 1400 1200 電流(A) 1000 試験電流(A) 定格1350(A) 800 600 400 200 0 0 200 400 600 800 時間(s) 1000 1200 1400 1600 図Ⅲ-1-2.5.5.2-1 コイル通電試験 d. 交流損失試験 (a) 交流損失算出方法 交流損失の測定については、通電中の電流リードの熱負荷によるヘリウム液量変化 V DC とヒ ータを加熱し、液体ヘリウム蒸発量から発熱量を測定し、ヘリウム液量変化と発熱量を換算し 求めた。電流リードに熱負荷と液体He液量変化の関係を図Ⅲ-1-2.5.5.2-2 に、ヒータ加熱量と 液体He液量変化の関係を図Ⅲ-1-2.5.5.2-3 に示す。 3.8 Current [A] 3.6 200 150 3.4 100 3.2 50 0 -500 0 500 1000 Time [s] 1500 2000 Heat input [W] LHe level 250 LHe level sensor output [V] 300 ヒータ加熱量 液面計出力 25 Current 6.4 20 6.3 15 6.2 10 6.1 5 3 2500 6 0 0 図Ⅲ-1-2.5.5.2-2 電流リード熱負荷-液体 He 200 400 600 Time [s] 800 1000 5.9 1200 図Ⅲ-1-2.5.5.2-3 ヒータ加熱量-液体 He 液量変化 液量変化 169 LHe level sensor output [V] 4 350 (b) 交流損失試験結果 コイルに三角波を連続通電して、ヘリウム蒸発量 VALL を測定した。そのときの交流損失測 定回路を図Ⅲ-1-2.5.5.2-4 に、三角波連続通電パターン例を図Ⅲ-1-2.5.5.2-5 に、三角波通電前 後のヘリウム液面計出力の変化を図Ⅲ-1-2.5.5.2-6 に示す。 シャント 質量流量 IGBT回路 300A±200V電源 液面計 保護抵抗0.5Ω ヒ ー タ クライオスタット 図Ⅲ-1-2.5.5.2-4 交流損失測定回路 350 300 Current [A] 250 Current 200 150 100 50 0 -50 -20 0 20 40 60 80 100 Time [s] 図Ⅲ-1-2.5.5.2-5 三角波連続通電パターン例 170 300 4.4 Current [A] 250 200 4.3 150 4.2 Current 100 LHe level 50 4.1 0 -50 -500 0 500 1000 LHe level sensor output [V] 4.5 350 4 1500 Time [s] 図Ⅲ-1-2.5.5.2-6 三角波通電前後のヘリウム液面計出力の変化 電流振幅 0~300A,電流変化率 30A/s、三角波通電の交流損失 QCOIL :ユニットコイルの交流損失 [W] f :発熱/ヘリウム液量の換算係数 2.62±0.67 [J/cc] VALL :三角波通電によって減少したヘリウム液量 VDC :通電中の電流リードの熱負荷によるヘリウム液量変化 QSUS :ヘリウム容器の渦電流発熱の計算値 6.17 [cc/s] 1.30 [cc/s] 5.86 [W] 測定結果 QCOIL = QAC - QSUS = f(VALL-VDC )-QSUS 6.9 ± 3.3[W] = 計算結果:15.05 [W] (ヒステリシス損失:14.88[W]、結合損失:0.17[W]) 導体はユニットコイルに用いた線材の実測データを使用 (c) 実機運転条件での交流損失の推定 ⅰ) 実機運転条件 最大電流値 : 1,350 A 最小電流値 : 930 A 電流変化幅 : 420 A 周期 : 20 sec 実機における熱負荷の推定(ユニットコイル試験条件の計算結果 15.05W から換算) ユニットコイルのヒステリシス損失 8.08 W ユニットコイルの結合損失 0.34 W ユニットコイルの全交流損失 8.42 4 コイルの全交流損失 8.42 W×4 コイル ⇒ 33.7 W ヘリウム容器渦電流損(設計値) 3.9 W 定常通電時侵入熱(設計値) 8.7 W 冷凍機能力 連続運転時発熱量 46.3 W < 171 70W 2.5.6 基本性能試験 2.5.6.1 電力変換システム (1) 10MVA/20MJ 級 SMES システム基本性能確認試験 10MVA/20MJ 級 SMES システムの基本性能確認試験として、電力変換システムを超電導 コイルシステムと組み合わせ下記の試験を実施した。 ① 過渡応答特性試験 ② 制御応答特性試験 ③ 高調波電流測定 ④ 効率測定 a. 過渡応答特性試験 SMES システムの電力制御の過渡応答特性評価として、有効電力、無効電力のステップ応答 試験を実施した。図Ⅲ-1-2.5.6.1-1 に試験結果を示す。SMES 電力制御のステップ応答として は、約 20msec の応答性が確認できた。 P指令 [ 1MW/div ] P出力 [ 1MW/div ] Q 出力 [ 1MVar/div ] コイル電圧 [ 3kV/div ] Q 指令 [ 1MVar/div ] P出力 [ 1MW/div ] Q 出力 [ 1MVar/div ] コイル電圧 [ 3kV/div ] 図Ⅲ-1-2.5.6.1-1 ステップ応答試験結果〈20msec/div〉 172 b. 制御応答性測定試験 SMES システムの制御応答性として、P、Q 指令値を約 500kW、500kVar の振幅の正弦波状 (0.05Hz ~ 20Hz)で変化させ応答性を測定した。試験結果を図Ⅲ-1-2.5.6.1-2 に周波数応答 特性を図Ⅲ-1-2.5.6.1-3 に示す。 周波数 f = 0.1 Hz INV 電流 周波数 f = 1 Hz 周波数 f = 10 H [ 500A/div ] P指令 [ 1MW/div ] Q 指令 [1MVar/div] P出力 [ 1MW/div ] Q 出力 [1MVar/div] DC コンデンサ電圧[6kV/div ] コイル電圧 [ 3kV/div ] コイル電流 [ 675A/div ] INV 電流 [ 500A/div ] P指令 [ 1MW/div ] Q 指令 [1MVar/div] P出力 [ 1MW/div ] Q 出力 [1MVar/div] DC コンデンサ電圧[6kV/div ] コイル電圧 [ 3kV/div ] 図Ⅲ-1-2.5.6.1-2 周波数応答試験結果 振 幅 比 [dB ] 1 1 振幅比 [dB] 00 --1 1 -2 -2 -3 -3 振幅 位相 -4 -4 -5 -5 0 .00.01 1 0 .1 0.1 11 周周波数[Hz] 波 数 f [H z ] 位相差 40 40 [deg] 3 300 無効電力応答 2 0 20 10 10 00 -10 -10 -20 -20 -30 -30 -40 -40 -50 -50 -60 -60 -70 -70 -80 -80 11 周波数[Hz] 110 0 1100 00 1 振幅比 1 [dB] 00 -1 -1 -2 -2 -3 -3 -4 -4 振幅 位相 -5 -5 0 .00.01 1 00.1 .1 図Ⅲ-1-2.5.6.1-3 位 相 差 [de g] 位相差 4 0[deg] 40 30 30 有効電力応答 20 20 10 10 00 -10 -10 -20 -20 -30 -30 -40 -40 -50 -50 -60 -60 -70 -70 -80 -80 10 100 100 10 SMES システムの周波数応答特性 173 c. 高調波電流測定 SMES シ ス テ ム 動 作 状 態 で の 出 力 の 高 調 波 電 流 の 測 定 を 実 施 し た 。 高 調 波 は 、 P=1MW,-1MVar,Q=1MVar,-1MVar および 17MJ での待機状態の各出力状態で測定した。測定 結果と設計抑制基準とした 1MW 設備でのガイドライン値(設計基準値)と比較した結果を図 Ⅲ-1-2.5.6.1-4 に示す。 含有率 [%] 8 基準値 P=+1MW P=-1MVar Q=+1MVar Q=-1MVar 待機状態 7 6 5 4 3 2 1 39 37 35 33 31 29 27 25 23 21 19 17 15 13 11 9 7 5 3 1 0 次数 図Ⅲ-1-2.5.6.1-4 高調波電流測定値 d. 効率測定 SMES システムの損失に関する評価を実施した。図Ⅲ-1-2.5.6.1-5 に示すように 1MW 放電 8 秒、1MW 充電 8 秒の運転を行った結果、コイル電流は 1,319.8A から 1,293.8A に変化した。 充放電電力の制御は系統接続点にて行っているため、16 秒間の運転ロスによりコイルの蓄積エ ネルギーが消費される。この結果より、コイルエネルギーの減少分は 716.91kJ であり、16 秒 間の平均消費電力は、44.81kW が求められた。 今回の試験に使用した SMES システム各部の損失の設計計算値は、表Ⅲ-1-2.5.6.1-1 に示す とおり充放電試験時の平均消費電力とよく一致した結果であった。 出力 電力 1MW -1MW コイル 電流 1,319.8A ΔI= -26.0A 1,293.8A 984.4A コイル エネルギー 18.37MJ ΔE= -716.91kJ 17.65MJ 10.22MJ 時間 0s 8s 図Ⅲ-1-2.5.6.1-5 16s 平均電力 44.81kW 充放電試験結果 174 表Ⅲ-1-2.5.6.1-1 SMES システムの各構成機器の損失設計値 各構成機器の損失設計値(±1MW 8 秒出力平均) 充放電試験 平均電力 44.81kW 設計値 比 設計値 合計 102.7% 43.64kW 変圧器 フィルタ 6.95kW 3.37kW ACリアクト ル 1.50kW インバータ チョッパ 10.78kW 21.05kW 2.5.6.2 超電導コイルシステム (1) コイル初期冷却 コイル冷却の状況をコイル冷却特性として、図Ⅲ-1-2.5.6.2-1 に示す。 また、クライオスタット内圧平衡運転確認を行い、クライオスタット内圧が 105~109kPa (液体ヘリウムの減少無し)で、結果:良であった。 コイル冷却特性 350 140 コイル上面温度 300 120 He容器底温度 温度(K) 100 200 80 150 60 100 40 50 20 0 2007/5/8 0:00 2007/5/10 0:00 2007/5/12 0:00 2007/5/14 0:00 2007/5/16 0:00 2007/5/18 0:00 2007/5/20 0:00 2007/5/22 0:00 2007/5/24 0:00 2007/5/26 0:00 コイル抵抗(Ω) コイル抵抗 250 0 2007/5/28 0:00 日時 図Ⅲ-1-2.5.6.2-1 (2) コイル冷却特性 基本性能試験 a. 直流絶縁耐力試験 試験対象 :直流回路部(超電導マグネット、保護装置) 試験電圧 :DC4.7kV – 10 分 ※電気設備技術基準第 17 条による。 最大使用電圧 2.2kV×1.5 倍×√2 ≒ 4.7kV ⇒ 異常なし b. 絶縁抵抗測定 直流絶縁耐力試験前後で絶縁抵抗測定を実施、変化のないことを確認した。 試験前 2,000MΩ以上 試験後 2,000MΩ以上 ⇒ 異常なし 175 c. 通電電流上昇試験 通電電流上昇時の結果を表Ⅲ-1-2.5.6.2-1 に示す 表Ⅲ-1-2.5.6.2-1 通電電流上昇結果 電流値 励磁電圧 圧力 〔A〕 〔V〕 〔kPa〕 0→ 450 180 107 ノークエンチ 0→ 720 180 107 ノークエンチ 0→ 933 180 107 ノークエンチ 0→1100 180 107 ノークエンチ 0→1150 180 107 ノークエンチ 0→1225 180 107 ノークエンチ 0→1430 180 107 クエンチ 0→1432 180 105 クエンチ 0→1440 180 107 ノークエンチ 結 果 備 考 He 液面 88.9%→34.3% 圧力 105kPa→135kPa 結果:良(定格電流以上の通電を実施し、問題がないことを確認した。) 2.5.7 負荷変動補償制御試験 (1) 有効電力補償制御 実際に計測された波形の例を図Ⅲ-1-2.5.7-1 に示す。 図Ⅲ-1-2.5.4.1.1-1 の工場の変動負荷(黒線)に応じて SMES が変動を抑えるように出力(赤 線)し、その結果、図Ⅲ-1-2.5.4.1.1-1 の3台の変圧器負荷(青線)の負荷変動は変動負荷の変 動に比べ変動が抑えられている状況が現れている。なお、SMES の出力がないとした場合は補 償分を引いた値(桃線)となり、変動負荷と大きさが同じで向きが逆のもとなっている。 SMES 出力あり、なし(ほぼ同等な SMES 出力なしにおける波形)で変動負荷と変圧器(補 償後)の周波数分析を比較したものを図Ⅲ-1-2.5.7-2 示す。 図Ⅲ-1-2.5.4.1.1-2 に示す有効電力補償制御ブロックでの変動分検出の T1 の数値の変更によ り補償効果が変わることを比較したものを図Ⅲ-1-2.5.7-2 に示す。また、図Ⅲ-1-2.5.7-1 と同様 の項目で T1 = 20、T1 = 1 と比較したものを図Ⅲ-1-2.5.7-3 に示し、周波数分析を比較したも のを図Ⅲ-1-2.5.7-4 に示す。 176 コイル 有効 電流 電力 [kA] [MW] 1,350 20 SMESコイル電流 950 15 発電機出力 550 10 変動負荷 150 5 変圧器(補償後) 補償分を引いた値 -250 0 SMES出力 -650 -5 0 50 100 150 200 250 300 350 時間[s] 図Ⅲ-1-2.5.7-1 負荷変動補償動作波形例 電力 [ MW ] 0.4 黒 : 変動負荷 赤 : 変圧器 0.3 補償なし 0.2 0.1 0.0 0.001 0.01 0.1 1 電力 0.4 [ MW ] 10 周波数 [ Hz ] 黒 : 変動負荷 赤 : 変圧器 0.3 補償あり 0.2 0.1 0.0 0.001 0.01 図Ⅲ-1-2.5.7-2 0.1 1 10 周波数 [ Hz ] 負荷変動補償動作波形の周波数分析 177 (a) T1 = 20 (b) 左図の時間軸部分拡大 (c) T1 = 1 (d) 左図の時間軸部分拡大 図Ⅲ-1-2.5.7-3 負荷変動補償動作波形の周波数分析 図Ⅲ-1-2.5.7-4 の中の右側の小さなグラフにはそのときの変動負荷(黒)と変圧器(補償後) (青)の波形の様子を示している。T1 = 20 では変動負荷の変動を全体に補償し、変動を抑制 し、T1 = 1 では変動負荷の変動の初期のみ補償していることが判る。また、図Ⅲ-1-2.5.7-4 の 周波数分析からは変動負荷と有効電力補償がなされた変圧器との差が発生する周波数帯に差が でている。 電力 [ MW ] 電力 [ MW ] 0.6 T1=20 0.5 黒 : 変動負荷 赤 : 変圧器 0.4 0.3 黒:変動負荷 0.2 青:変圧器(補償後) 0.1 0.0 0.001 0.01 0.1 1 電力 [ MW ] 0.6 T1=1 0.5 10 周波数 [ Hz ] 黒 : 変動負荷 赤 : 変圧器 0.4 0.3 黒:変動負荷 0.2 青:変圧器(補償後) 0.1 0.0 0.001 0.01 0.1 図Ⅲ-1-2.5.7-4 1 10 周波数 [ Hz ] T1の変更による補償効果の変化 178 変動分検出の時定数(T1)を変えると、負荷変動にその時定数のフィルタをかけたような負荷 変動になるように補償が行われることになる。時定数を長くすることで負荷変動が平滑化され 周波数成分でみても補償領域が広がることが確認できた。一方、SMES には電力量、エネルギ ー量の制約があるため、負荷変動量によっては補償範囲を超えてしまう事象が生じることにな る。負荷変動のパラメータを調整しながら、効果的な変動補償データを得ることができた。 また、SMES 実機の動作による負荷変動補償制御による実測波形が、シミュレーション解析 により想定された負荷変動補償波形と比較してよく一致していることが図Ⅲ-1-2.5.7-5 のよう に確認でき、シミュレーションの確かさを確認した。 図Ⅲ-1-2.5.7-5 負荷変動実測波形例とシミュレーション解析との比較 (2) 無効電力補償制御 無効電力補償制御は超電導コイルのエネルギーを使用せず、電力変換器の位相制御により行 われる。SMES の大きな性能として、有効電力制御および無効電力制御が同時にできる特徴が ある。 発電機は力率一定制御運転中において、SMES の無効電力補償制御を行った。 図Ⅲ-1-2.5.7-6~図Ⅲ-1-2.5.7-8 は図の左側が制御なし、右側が無効電力 Q のみ補償制御した もので、それぞれ同時期のもので、SMES の無効電力制御効果の比較を示す。図Ⅲ-1-2.5.7-6 では変動負荷無効電力 Q に応じて SMES の無効電力補償制御出力の Qsmes が現われている。 図Ⅲ-1-2.5.7-7 は変動負荷により SMES から無効電力補償制御出力の Qsmes を行ったが、 補償しきれてないところを発電機無効電力 Q により運転補償されている状況が現われている。 変圧器無効電力 Q 合計(補償後)は SMES と発電機の制御により無効電力変動が小さくなっ た状況が、また系統電圧の変動が小さくなった状況が現われている。 図Ⅲ-1-2.5.7-8 は無効電力制御の効果のある発電機界磁電圧、発電機界磁電流の変動が、 SMES から無効電力補償制御出力がなされたために、小さくなっている状況が現われ、SMES からの制御により発電機における制御負担が軽くなっていることが現われている。 179 変動負荷 有効電力 P 変動負荷 無効電力 Q SMES 有効電力 P 出力 SMES 無効電力 Q 出力 Q のみ補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-6 SMES の Q 補償制御効果(1) 発電機無効電力Q 1G、2G 発電機無効電力Q 合計 変圧器無効電力Q 合計 系統電圧V Q のみ補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-7 SMES の Q 補償制御効果(2) 2G界磁電圧 1G界磁電圧 界磁電流 1G、2G 発電機有効電力P 1G、2G Q のみ補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-8 SMES の Q 補償制御効果(3) 180 (3) 有効電力補償、無効電力補償の同時制御 図Ⅲ-1-2.5.7-9~図Ⅲ-1-2.5.7-11 は図の左側が制御なし、右側が無効電力 Q と有効電力 P の 同時制御したもので、それぞれ同時期のもので、SMES の有効電力制御と無効電力制御の同時 制御効果の比較を示す。 図Ⅲ-1-2.5.7-6~図Ⅲ-1-2.5.7-8 と同様に無効電力制御がなされ、無効電力制御は有効電力制 御の同時制御によって影響を受けず、それぞれ独立制御ができている状況が示されている。な お、系統電圧においては、上位系統側の系統状況の変化が生じた影響が加わっていると推定さ れる。 変動負荷 有効電力 P 変動負荷 無効電力 Q SMES 有効電力 P 出力 補償制御なし PQ同時補償制御 SMES 無効電力 Q 出力 PQ 同時補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-9 SMES の PQ 同時補償制御の効果(1) 発電機無効電力Q 1G、2G 発電機無効電力Q 合計 変圧器無効電力Q 合計 系統電圧V PQ 同時補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-10 SMES の PQ 同時補償制御の効果(2) 181 2G界磁電圧 1G界磁電圧 界磁電流 1G、2G 発電機有効電力P 1G、2G PQ 同時補償制御 補償制御なし 図Ⅲ-1-2.5.7-11 SMES の PQ 同時補償制御の効果(3) (4) 取得データからの SMES 動作回数 取得データの SMES 有効電力出力から、SMES 動作回数を評価した。 計測精度等から考えて有意な出力レベルとしたしきい値 200kW として、動作回数は 51,391 回(平成 19 年 8 月 6 日から平成 19 年 12 月 1 日までのデータから)となった。 SMES 動作回数は図Ⅲ-1-2.5.7-12 のように SMES 有効電力出力信号が設定しきい値を+側、 -側の両方を超えたときに回数を進める方法とし、具体的には以下の方法で行った。 ・最初に P=0 をクロスした時点からカウントを開始 ・0 側から設定したしきい値よりも絶対値が超えた場合にフラグをセット ・0 側から上記と逆の極性側しきい値を絶対値で超えた場合に次のフラグをセット ・その後、0 をクロスした点でカウントを 1 アップし、フラグを全てリセット ・上記の時点から次のカウントを開始 なお、計測信号にスパイク状のノイズが含まれている可能性があるので、しきい値を超えた という判定の際に、連続した 3 サンプリングデータが全て超えた場合で判断した。 182 これで 1 回 SMES出力信号にしきい値を設定し、 上下しきい値を超えた時にカウントす る。 図Ⅲ-1-2.5.7-12 SMES 動作回数のカウント方法(しきい値は例) (5) まとめ a. SMES システムの基本性能 負荷変動に対する制御応答性、動作特性を検証し、数 Hz までの高速追従性があることを確 認した。 故障検出、監視機能、保護インターロック等の有効性、SMES 動作時の電力ネットワークへ の影響を確認した。 b. 有効電力制御 (a) SMES の有効電力の入出力により変動負荷の変動が軽減されていることを、上位系統と の連系点にて確認した。 (b) 周波数分析により、SMES は数 Hz までの高速応動が可能で、制御定数の設定変更によっ て実態に即した補償(負荷変動補償の周波数領域を調整)が可能であることを検証した。 c. 無効電力制御 (a) SMES の無効電力の入出力により、発電機の無効電力制御が軽減されていることを確認 した。 (b) 同様に発電機界磁電流、界磁電圧の低下を確認した。 d. 有効電力・無効電力同時制御 他に類のない、有効,無効電力の入出力を同時に制御可能な SMES の特性を確認した。 e. 動作回数 保護動作、制御、運転( 200kW 以上-5 万回以上の繰返し補償動作による)を通し、システ ムとしての完成度や信頼性の高さを検証した。 183 2.5.8 系統安定化試験 2.5.8.1 実系統における系統安定化制御の検証 実系統における系統安定化制御の検証・試験項目を表Ⅲ-1-2.5.8.1-1 に示す。 表Ⅲ-1-2.5.8.1-1 検証・試験項目 試験項目 概 要 ②発電機遮断時の SMES 制御 ・系統安定化制御装置(新ロジック)と SMES の制御信号 ・保護協調 ・ステップ、周波数応答 ・発電機負荷遮断時の SMES による動揺制御の実証 ③SMES 試験の解析 ・安定化試験結果の解析による制御技術の最適化・確立 ①SMES 制御のための応答性 確認 2.5.8.2 試験装置 実系統連系試験での系統安定化試験の回路構成と制御装置を図Ⅲ-1-2.5.8.2-1 に示す。使用す る系統安定化制御装置は事前に電力系統安定化解析アナログシミュレータの SMES モデルと 組合せて基本制御特性を検証し、実系統での試験を実施した。 発電機諸元 1G 2G 定格出力 7.5MVA 14.5MVA 水車型式 ペルトン フランシス 回転数 300rpm 750rpm 慣性定数 84t-m 43t-m 系統安定化制御装置 系統情報 ・v,i(P,Q)、 ・ω 他 回転数ω 安定化制御対象 1号発電機 SMES 情報 SMES 指令 ・v,i (Ps,Qs)、Id ・Pref,Qref 電圧、電流 変換装置制御盤 ほか 2G 1G 10MVA/20MJ 級 負荷遮断 66kV 工場 工場負荷線(1,2,3,号線) 11kV 2号発電機 図Ⅲ-1-2.5.8.2-1 系統安定化試験の回路構成と制御装置 184 SMES 2.5.8.3 計測・制御システム 試験に使用した計測・制御システム(Ⅲ-1-2.5.8.3-1)は、系統電圧、工場負荷(P,Q)、変換器電 流、発電機電流・回転数等を計測し、これらの値を基に系統安定化制御を行う。 2号機 1号機 G G Gov.盤 回転数計 (発電機室) 電力演算 信号中継盤 (受信側) 信号用ケーブル データ記録装置 データ レコーダー (電気信号、 約 100 芯) 回転数計 電流/電圧変換 信号中継盤 (送信側) 系統制御装置 負荷変動補償 制御装置 電圧/電流アンプ 界磁電圧 界磁電流 水槽水位 絶縁アンプ 変換装置制御盤 監視・ 制御盤 コイル 計装盤 電圧/電流アンプ クランプ CT 光リンクケーブル SMES 試験棟 電流/電流アンプ 配電盤 (配電盤室) 凡例 信号線(1 本で表記) 工場負荷 1,2,3 号線 等 信号線(系統安定化関係) 主回路 (関係分のみ表示) 屋外開閉所 図Ⅲ-1-2.5.8.3-1 系統安定化制御装置 ※電源線は除く 系統連系試験計測システム概要 計測システム図 本システムは SMES の貯蔵エネルギーを有効に活用するため、発電機の電力動揺抑制装置 (Power System Stabilizer:系統安定化装置)で用いられる発電機角速度偏差Δω及び発電機 出力偏差ΔP により制御している。更に、SMES 残存容量の過不足に伴う入出力位相のずれを 補正制御する新しい制御ロジック追加した(図Ⅲ-1-2.5.8.3-2(a))。本制御ロジックを多機系統 (500kV 系統を模擬した 3 機系統)でのアナログ解析結果を同図(b)に示すが、他の制御方 法に比べ本制御は SMES 小出力での限界送電電力が大きくなり有利である。 今回:位相補正 SMES 有効電力 — 0.4 Kc 1+0.2S -0.3 + + 発電機 P, ω — P0, ω0 + 1 + IN 1+ST7 Line V, Q + 1 64S 1.0 1 INQ 1+ST7 (1) AP +1.0 ∞ OUT OUTQ ÷ AP 1 (2) 1S 1+1S 0.0 0.3 1.0 Id -1.0 0.05 P Id (コイル電流) (OUT2+OUTQ2) — V0, Q0 + — — + + 0.7 1 (A) jQ ÷ AQ (3) 1 1+0.02S 位相検出 (B) 発電機 ΔP 5S 1+5S 1+ST1 1+ST2 1+ST1 1+ST2 KP 1+ST3 +1.0 発電機 Δω 5S 1+5S 1+ST4 1+ST5 1+ST4 1+ST5 Kω 1+ST6 +LΔω - LΔω +1.0 -1.0 -1.0 (1)直流リセット回路 (2)位相調整回路 SMES 有効電力 指令 P 今回 (3)ゲイン、検出器特性回路 (a)系統安定化制御ブロック 図Ⅲ-1-2.5.8.3-2 (b)多機系統でのアナログ解析結果 系統安定化の制御ブロック 185 2.5.8.4 系統安定化制御の応答性試験 基本性能試験としてステップ応答試験と周波数応答試験を実施し、この試験をもとに系統安 定化制御も含んだ SMES システムの応答性を測定し、解析モデルへ組み込んだ。 (1) ステップ応答試験 10MVA/20MJ 級 SMES と系統安定化制御装置を組合せた過渡応答特性を評価するために 1MW ステップ時の応答試験を実施(図Ⅲ-1-2.5.8.4-1)し、以下の結果を得た。 1.2 1 ① ④ 0.8 有効電力(MW) ① 指令値と変換器指令値の遅れ時 間:約 3ms ② 指令値 1MW の 50%までの遅れ 時間:約 8ms ③ 指令値 1MW の 10%から 90%ま での立上り時間:約 11ms ④ 指令値 1MW の 63%までの遅れ 時間:約 9.8ms (カットオフ波数 fc=1/2π・9.8ms=16Hz) ② 0.6 0.4 ③ 0.2 系統安定化制御装置指令値 変換器指令値 SMES出力 0 -0.2 -0.04 -0.02 0 図Ⅲ-1-2.5.8.4-1 0.02 0.04 時間(秒) 0.06 0.08 0.1 0.12 ステップ応答試験結果(1MW) (2) 正弦波応答試験 上記ステップ応答試験に加え、正弦波応答試験による制御特性評価を行った。変換器指令値 と SMES 出力値の応答特性を図Ⅲ-1-2.5.8.4-2 に、ボード線図を図Ⅲ-1-2.5.8.4-3 に示す。本シ ステム正弦波応答特性は、10Hz 程度で振幅比が小さくなり、位相差が大きくなる。またステ ップ応答におけるカットオフ周波数は 16Hz であった。この値は、発電機動揺周波数(本試験 サイト:2Hz、基幹系統:0.5Hz~1Hz 程度)に比べ十分大きな値であり、今回のシステムで 十分と考えられる。 □:測定値 -:測定値を基にSMESの応答特性を一次遅れで表現 □:測定値 :時定数 0.012s の一次遅れ 1 振幅比(db) 0 -1 -2 1 0.012S + 1 -3 -4 -5 0.01 0.05Hz □ 実測値 一次遅れ 12ms 0.1 周波数(Hz) 1 10 位相差(deg) 10 10Hz 図Ⅲ-1-2.5.8.4-2 正弦波応答試験結果 0 -10 -20 -30 □ 実測値 -40 -50 0.01 一次遅れ 12ms 0.1 図Ⅲ-1-2.5.8.4-3 186 周波数(Hz) 1 正弦波応答のボード線図 10 2.5.8.5 発電機遮断に伴う動揺の抑制試験 発電機遮断に伴う発電機動揺の SMES による抑制効果の検証及び本プロジェクトで開発し た制御ブロックの安定化効果について確認した。 (1) 試験方法 図Ⅲ-1-2.5.8.2-1 に示す発電機のうち1号機(出力 1,5MW)を遮断し、それに伴い動揺する 2 号機(出力 12MW)を SMES の有効・無効電力により抑制させる。試験ケースは以下の通りとし た。 ①SMES 無制御 ②ΔP(発電機有効電力偏差)検出 SMES 有効電力制御 ③Δω(発電機回転数偏差)検出 SMES 有効電力制御 ④ΔP+Δω検出 SMES 有効電力制御 ⑤Δω検出 SMES 無効電力制御 なお、ΔP 入力制御は SMES コイル電流の低下を防止でき、また制御ゲインが低く電気信号 のためノイズが混入し難い特徴を有し、Δω入力制御は、発電機励磁制御と協調でき、また、 発電機の動揺周期変動の対応能力が高い特徴を有す。 (2) 試験結果 a. 発電機回転数偏差検出による SMES 有効電力制御 図Ⅲ-1-2.5.8.5-1 に試験結果を示す。このうち、発電機の有効電力(中心値約 12MW)と回転数 (中心値約 750rpm)は、遮断時刻(1 秒)からの偏差で表している。減衰率(3 波/2 波)及び動揺周 期で制御効果を評価すると、以下のとおり SMES 制御により発電機が早く安定している。 ① 無制御 :減衰率 41%、動揺周期 0.48 秒 ② Δω検出―SMES 有効電力制御 :減衰率 22%、動揺周期 0.35 秒 有効電力(MW) 0 .6 0 .5 T 2’ = 0 . 3 5 s 0 .4 0 .3 0 .2 T 2= 0 . 4 8 s 0 .1 0 - 0 .1 - 0 .2 P P 3’ 2 P 2’ - 0 .3 - 0 .4 0 .5 P 3 P 1 1 .5 ⊿ ω - P 制 御 無 制 御 無 制 御 3/ P 2= 4 1 % P Δ ω - P 制 御 3’ / P 2’ = 2 2 % 2 2 .5 3 時 間 (秒 ) ( a ) # 2 発 電 機 有 効 電 力 0 .3 ⊿ ω - P 制 御 無 制 御 回転数(rpm) 0 .2 0 .1 0 - 0 .1 - 0 .2 - 0 .3 0 .5 1 1 .5 2 2.5 3 時 間 (秒 ) ( b ) # 2 発 電 機 回 転 数 1 ⊿ ω -P 制 御 無 制 御 有効電力(MW) 0 .8 0 .6 放 電 0 .4 0 .2 0 - 0 .2 - 0 .4 充 電 - 0 .6 - 0 .8 - 1 0 .5 1 1 .5 2 2 .5 3 時 間 (秒 ) ( c ) 図Ⅲ-1-2.5.8.5-1 S M E S 有 効 電 力 SMES 制御による安定化試験結果(無制御とΔω制御-有効電力制御) 187 なお、回転数計のノイズ除去のため、平均化処理による検出遅れが 60~80ms 程度あり、第 2 波目まで検出遅れの影響があるが、それ以降は、SMES の効果が現れている。 b. その他の制御結果 Δω検出 SMES 有効電力制御以外の試験ケースの結果を図Ⅲ-1-2.5.8.5-2 に示す。図は、① 無制御、②Δω検出-SMES 有効電力制御、③ΔP検出-SMES 有効電力制御、④Δω+ΔP 検出-SMES 有効電力制御、⑤Δω検出-SMES 無効電力制御の結果を遮断時刻(1 秒)からの 偏差で示している。#2G 発電機有効電力偏差中心は、約 12,500kW、#2G 発電機回転数偏差中 心は、約 750rmp である。各制御とも無制御と比較すると動揺抑制効果があった。また、今回 の試験においては、有効電力制御と無効電力制御の差は見られなかった。この理由としては、 ±150kW の範囲内では、変換器の有効電力制御と無効電力が干渉するため無効電力制御試験時 も有効電力が出力され、これが効果的な制御となったと考えられる。 無制御 ⊿ω-P ⊿P-P ⊿ω+⊿P-P ⊿ω-Q #2発電機 有効電力変動 有効電力(MW) 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 遮断時出力12.5MW 0.5 1 1.5 時間(秒) 2 2.5 #2発電機 回転数変動 (a) #2 発電機有効電力 回転数(rpm) 0.4 3 無制御 ⊿ω-P ⊿P-P ⊿ω+⊿P-P ⊿ω-Q 定格回転数750rpm 0.2 0 -0.2 -0.4 0.5 1 1.5 2 2.5 3 時間(秒) 有効電力(MW) (b)SMES出力 (有効電力) #2 発電機回転数 無制御 ⊿ω-P ⊿P-P ⊿ω+⊿P-P ⊿ω-Q 1 放電 0.5 0 -0.5 充電 -1 0.5 1 1.5 2 2.5 3 時間(秒) 無効電力(Mvar) (c)SMES出力 (無効電力) SMES 有効電力 1 無制御 ⊿ω-P ⊿P-P ⊿ω+⊿P-P ⊿ω-Q 遅れ 0.5 0 -0.5 進み -1 0.5 1 1.5 2 2.5 3 時間(秒) (d) SMES 無効電力 図Ⅲ-1-2.5.8.5-2 SMES 制御による安定化試験結果(各種制御結果) 2.5.8.6 系統安定化試験結果の解析的検証 試験サイトの系統構成をデジタル解析(Y 法)及びアナログシミュレータ上でモデル化した。 モデル化にあたっては、SMES の無い状態での実測波形を再現できるように、系統モデルの調 整を行ったうえで、SMES 特性を追加した。 (1) Y法による解析 図Ⅲ-1-2.5.8.6-1 に負荷遮断によるΔω-SMES 有効電力制御試験時の実測結果と Y 法解析を 188 重ねて示す。この結果、動揺振幅、動揺周期もほぼ一致する結果が得られた。回転数について も波形的には、ほぼ一致している。電圧変動率は、Y 法が 0.3%、実測値が 0.2%と若干異なる が、これは Y 法の初期値を遮断時刻でなく遮断前 60 秒であわせていることによる。事前解析 時の 0.3%ともほぼ一致しており、シミュレーション手法の妥当性が確認できた。 実測値 Y法結果 #2発電機有効電力変動 有効電力(MW) 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 0 0.5 1 1.5 2 時間(秒) 2.5 3 3.5 4 4.5 (a) #2発電機無効電力変動 #2 発電機有効電力 0.5 無効電力(MVar) 5 実測値 Y法結果 0.4 0.3 0.2 0.1 0 -0.1 0 0.5 1 1.5 2 時間(秒) 2.5 3 3.5 4 4.5 回転数(rpm) (b) #2#2発電機回転数変動 発電機無効電力 0.4 0.3 0.2 0.1 0 -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 5 実測値 Y法結果 フィルタ等の計測遅れ80ms 0 0.5 1 1.5 2 時間(秒) 2.5 3 (c) #2 発電機回転数 母線電圧 3.5 4 4.5 5 実測値 Y法結果 母線電圧(V) 11.4 11.38 11.36 11.34 11.32 11.3 0 0.5 1 1.5 2 時間(秒) 2.5 3 3.5 4 4.5 (d) SMES有効電力 系統電圧 有効電力(MW) 5 実測値 Y法結果 1 放電 0.5 0 充電 -0.5 -1 0 0.5 1 1.5 2 時間(秒) 2.5 3 (e) SMES 有効電力 SMES直流電流 3.5 4 4.5 5 実測値 Y法結果 1220 1210 電流(A) 1200 1190 1180 1170 1160 1150 0 0.5 1 図Ⅲ-1-2.5.8.6-1 1.5 2 時間(秒) 2.5 (f) SMES 直流電流 3 3.5 4 4.5 5 負荷遮断試験データによる解析比較結果 (2) アナログシミュレーションよる解析 アナログシミュレータを用い、2.5.8.5(1)に示す試験ケースによりシミュレーションを行った。 シミュレータの変換器は電流アンプで模擬し、Y 法と同じ一次遅れ 12ms を使用した。また、 SMES の 制 御 装 置 は 、 実 系 統 連 系 試 験 時 に 使 用 し た 系 統 安 定 化 制 御 装 置 を 用 い た 。 図 Ⅲ -1-2.5.8.6-2 に示すとおり、各制御とも動揺振幅、動揺周期も実測値と比較するとほぼ一致する 結果が得られた。なお、ΔP検出-SMES 有効電力制御は、遮断後も充電制御をおこなってい るが、これは、遮断前の変動による充電動作によるものである。アナログシミュレータは初期 値及びモデルの調整に時間を要するため、初期値等が異なるケースもある。この点を除けばほ ぼ発電機の動揺特性と SMES の制御特性を再現できた。 189 1PU=20MVA #2有効電力 有効電力(PU) 0.66 無制御 Δω-P制御 ΔP-P制御 Δ(ω+P)+P制御 Δω-Q制御 0.65 0.64 0.63 0.62 0.61 0.5 1 1.5 2 2.5 3 時間(秒) (a) #2 発電機有効電力電力 #2無効電力 無効電力(PU) 0.3 3.5 0.25 無制御 Δω-P制御 ΔP-P制御 Δ(ω+P)+P制御 Δω-Q制御 0.2 1PU=20MVA 0.15 回転数(PU) 0.5 1 0.0001 0 1.5 2 2.5 時間(秒) (b) #2 発電機無効電力電力 #2回転数 3 -0.0001 -0.0002 0.5 1 1.5 2 2.5 時間(秒) 3 (c) #2 発電機回転数 #2smes P or Q 0.02 3.5 4 無制御 Δω-P制御 ΔP-P制御 Δ(ω+P)+P制御 Δω-Q制御 1PU=750rpm -0.0003 -0.0004 電力(PU) 4 3.5 4 無制御 Δω-P制御 ΔP-P制御 Δ(ω+P)+P制御 Δω-Q制御 0.01 0 -0.01 1PU=20MVA -0.02 0.5 1 図Ⅲ-1-2.5.8.6-2 1.5 2 2.5 時間(秒) (d) SMES 電力 3 3.5 4 アナログシミュレーション結果 2.5.9 クエンチ検出対策 (コイルと電力変換器の組合せで見出された課題(クエンチ検出、ノイズ)) クエンチ検出回路に低周波の揺らぎノイズが重畳し、クエンチ検出レベルにいたる場合が発 生した。その現象は、SMES による負荷変動補償中において、SMES の P 出力、Q 出力がほぼ 同等の出力であっても、クエンチ検出信号が動揺することもあれば、しないこともある。動揺 する場合でも、出現する周波数が同じでないものであり、クエンチ検出信号の想定外のノイズ への対応が必要となった。 (1) クエンチ検出方法 図Ⅲ-1-2.5.9-1、図Ⅲ-1-2.5.9-2 に示すように、超電導コイルは P 側超電導コイルと N 側超電 190 導コイルがあり、コイルの中点で接地をとっている。クエンチ検出回路は、P-N 極の中間電 位と超電導コイルの中点の接地箇所のE極電位をブリッジ回路を作りクエンチの検出を行って いる。図Ⅲ-1-2.5.9-3 に示すような回路で絶縁を図りクエンチ電圧を引き出している。 P 極または N 極のどちらかの超電導コイルにクエンチ電圧が発生した場合、P-N 極中間電 位がクエンチ電圧の半分の電位に上昇し、E極電位との電位差を検出する。その電位差が設定 電位以上で設定時間継続したことをもってクエンチ検出を判定している。 P側超電導コイル クライオスタット E極電位 P極 超電導コイル チョッパ インバータ 接地抵抗器 E極 E極 電位差 フィルター クエンチ 検出器 N側超電導コイル 変換器 図Ⅲ-1-2.5.9-1 超電導コイルのクエンチ コイル No.1 No.4 コイル コイル P極 ~/- 中間電位 No.3 コイル E/O N極 P-N極 No.2 図Ⅲ-1-2.5.9-2 検出回路 N極 超電導コイルのクエンチ 検出回路の具体的接続 電圧表示 差電圧 フィルター E/O 絶縁アンプ 図Ⅲ-1-2.5.9-3 O/E 光変換器 ADC LD ディジタル変換器 クエンチ判定器 クエンチ電圧検出回路 (2) クエンチ検出信号ノイズ インバータがコモンモード電圧を出しているため、超電導コイル P、N 極の対地電位が 150Hz の周波数で約±1,000V 変動し、超電導コイルの P-N 極中間電位が変動することになる。 チョッパーが 180Hz の周波数で ON/OFF しているためクエンチ電圧信号にノイズが現れ る。 チョッパーノイズが正負同レベルであればフィルタによりキャンセルされてクエンチ電圧と しては 0V が計測される。しかし、チョッパーノイズが正負同レベルでは無くなるとクエンチ 電圧に揺らぎが発生する。 ノイズは数百 mV の信号レベルに対して、大きなノイズとなっており、図Ⅲ-1-2.5.9-4 に示 すようにクエンチ検出信号はに対してほぼ DC とみなせるためフィルタを挿入してノイズの低 191 減を図ることで検出は可能である。ただし、フィルタにより信号自体の応答も遅くなるため、 フィルタには限度があり、適切なフィルタを挿入することで対応している。 クエンチ電圧 クエンチ電圧 約1000V 2000V ノイズ ノイズ フィルタでノイズを低減 フィルタでノイズを低減 インバータ動作時 図Ⅲ-1-2.5.9-4 チョッパ動作時 クエンチ電圧とノイズ低減方法 (3) クエンチ検出レベルの調整 インバータのみ起動した場合にはシフト現象は発生しないが、チョッパを起動するとクエン チ電圧波形がランダムにシフトする現象が発生した。図Ⅲ-1-2.5.9-5 は、クエンチ試験時にク エンチが発生したときのクエンチ電圧波形であるが、その前の段階でもクエンチ時と波形が酷 似しているがクエンチしていない状況もがあったり、周波数がランダムに変化する現象があり、 クエンチ検出レベルの調整は単純には設定できなかった。 有効電力制御時はクエンチ検出の電圧設定値を極力高く(850mV)して電位シフトによる誤 検出を回避すると共に設定時間を短時間(7ms)にしてクエンチ保護の整合性を確保した。 クエンチ 発生 クエンチ電圧波形 500mV 4秒 クエンチ時と波形が酷似して いるがクエンチしていない 周波数が0.1~1.2Hz にランダムに変化 図Ⅲ-1-2.5.9-5 クエンチ電圧波形(コイルトレーニング時のクエンチ検出動作例) 192 (4) クエンチ検出信号揺らぎ現象推定原因 クエンチ電圧検出回路の健全性の確認、検出回路のバランス調整の確認を行い、実際に発生 しているクエンチ検出信号の揺らぎ現象を推定するための測定を行った。 クエンチ検出信号と変換器直流コンデンサのアンバランス電圧(Vpc-Vcn)(P 極ーコモン 間コンデンサ電圧、コモン-N極間コンデンサ電圧の差電圧)を超電導コイルに充電時から放 電時までの間で測定したものを図Ⅲ-1-2.5.9-6 に示す。クエンチ検出信号は、超電導コイルの 電流を充電時および放電時の電流を大きく変化させるあたりで大きく振れている。 電圧変動局面においてはチョッパーの ON 時間が変化しコンデンサ電圧の変動量も大きくな るため P 側コンデンサ電圧、N 側コンデンサ電圧の差分も大きくなる。P 側 N 側コンデンサ電 圧はインバータのフィードバック制御系によりバランスを取っているが、この摂動をトリガー として P 側 N 側コンデンサ電圧の差分が振動する。P 側 N 側コンデンサ電圧が常時完全に一 致していればコイルに対地電位変動があっても電圧検出器のフィルターでクエンチ検出信号は 鈍り 0V になるが,P 側 N 側コンデンサ電圧に微小な差が生じるとクエンチ検出信号に揺らぎ が発生する。電力変換システム構成とコモンモード発生電圧について図Ⅲ-1-2.5.9-7 に示し、 次のような原因を推定する。 ・変換器が主回路的には浮いており制御時に大地電位に対しコモンモード電圧が発生する。 ・クエンチ検出器のコモンモード電圧に対するフィルタ効果に限界がある。 以上から低周波(0.1Hz~1Hz 程度)の揺らぎがクエンチ検出信号に発生する。 図Ⅲ-1-2.5.9-6 クエンチ検出信号と変換器直流コンデンサアンバランス電圧(Vpc-Vcn) の傾向比較 193 チョッパのON/OFFにより PNコンデンサ電圧が交互 に印加されるためコイルの 対地電位が±に変動する インバータ盤 コンデンサ盤 チョッパ盤 DCリアクトル盤 RCフィルタ サイリスタ短絡回路 変換器用変圧器 ACリアクトル盤 1500kVA 11kV/2.1kV 超電導コイル 21.1H 1350A-930A 高調波フィルタ インバータは三相出力の PWM制御を行なっており、 系統周波数の3倍(今回は 150Hz)で主回路がコモ ンモード電圧で振られる。 直流遮断器盤 保護抵抗器盤 初期充電器盤 電力変換装置は大 地から浮かせてお り、絶縁協調上の 問題からコイルの 中性点を接地して いる→コイル電流 が接地に流れるパ スがある チ ョッパ は 直 流 電 圧 の PW M 制 御 を行 な って お り、 キ ャ リ ア 周 波 数 (今 回 は 1 8 0 H z)で 主 回 路 が コ モ ンモ ー ド電 圧 で 振 られ る。 電力変換装置 電力変換システム 図Ⅲ-1-2.5.9-7 電力変換システム構成とコモンモード発生電圧について (5) クエンチ検出信号ゆらぎ現象改善策 クエンチを確実に検出するためにクエンチ検出信号が揺らがないような対策を提案すること が求められる。クエンチ検出信号ゆらぎ現象を改善するため、図Ⅲ-1-2.5.9-8 に示すように、 SMES コイルでの不平衡電流を排除するためコイルの中性点接地をやめ、コイル電流が接地に 流れるパスを無くすこと、コイル側での中性点接地なしに伴いコイルは電流遮断時の対地電位 に耐えるように絶縁設計を行うことを提案する。 改善前 変換器 ~/- 改善後 変換器 ~/- V 中性点を接地していると差電圧が生じる 図Ⅲ-1-2.5.9-8 V 接地点を変更すると差電圧が生じない 接地点の変更によるクエンチ検出信号 194 本現象が起きるのはチョッパ動作中に限定されていることから、チョッパ動作頻度の極めて 短い瞬低補償用途・系統安定化用途・核融合用途といった SMES においては、クエンチ検出装 置の整定変更(時定数)や、用途動作中はクエンチ検出信号をブロックするなどのソフト的な 現地対応で回避可能である。 それに対し、負荷変動補償用途・周波数調整用途といった SMES においては、チョッパ動作 がほぼ連続的に継続することから、本現象へのハード的な抜本的対策が設計・製作段階から必 要となる。本プロジェクトにて実系統連系による負荷変動補償試験を実施したことで初めて顕 在化したことであり、本件を知見として得たことは、本プロジェクトの大きな成果の一つと考 えられる。 195 2.6 システムコーディネーション技術の開発 本章では酸化物系超電導線材を用いた負荷変動補償・周波週調整用ならびに系統安定化用 SMES のシステム最適化検討結果と、そのコスト分析による経済性評価結果について述べる。 2.6.1 負荷変動補償・周波数調整用 SMES コーディネーション技術開発 2.6.1.1 システム概略検討 概略のシステム検討を実施し、負荷変動補償用 SMES システムを構成する機器の、主要諸元 を検討した。 a. システム諸元 (1) 検討条件 表Ⅲ-1-2.6.1.1-1 システム諸元 1 用途 負荷変動補償 2 定格出力 100MVA 3 運転パターン 矩形波 18sec 周期 4 系統条件 AC77kV-60Hz (2) 運転パターン 運転パターンは、SMES を構成する機器の仕様を定める上で重要な仕様である。一般的に、 運転パターンは以下の機器仕様に影響を与える。 ① システム定格の決定 ② 超電導コイル冷却設計条件 100MW 負 荷 変 動 補 償 用 SMES の 基 本 運 転 パ タ ー ン を 図 Ⅲ -1-2.6.1.1-1 お よ び 図 Ⅲ -1-2.6.1.1-2 に示す。利用エネルギーの半分のエネルギーで待機を行い、系統負荷からの要請に より、充電・放電の両方向から運転を開始することを想定したパターンである。この運転パタ ーンは、フェーズⅠの運転パターンの考え方をベースとしており、多目的 SMES に対応するも のである。 18sec 出力 (MW) 100 9 18 27 36 45 0 9 時間(sec) -100 -100 蓄積エネルギー (GJ) 2.4 蓄積エネルギー (GJ) 2.4 1.5 1.8 0.6 0 9sec 100 0 1.8 18sec 出力 (MW) 9sec 18 27 36 45 時間(sec) 1.5 0.6 0 9 18 27 36 45 0 時間(sec) 図Ⅲ-1-2.6.1.1-1 放電パターン 0 9 18 27 36 45 時間(sec) 図Ⅲ-1-2.6.1.1-2 充電パターン 196 (3) 直流定格 SMES の基本パラメータを表Ⅲ-1-2.6.1.1-2 に示す。SMES の直流定格は、SMES 装置とし ての要求機能から一義的には定まらないため、変換装置方式、超電導コイル方式、および、保 護方式全体で整合がとれる定格を設定する必要がある。 表Ⅲ-1-2.6.1.1-2 要求仕様パラメータ システムパラメータ 制約パラメータ SMES の基本パラメータ 項目 備考 定格出力 p(MW) 利用エネルギー e(MJ) 運転パターン - 電流利用率(充放電率) - 設備容量 P(MVA) 最大蓄積エネルギー E(MJ) モジュール分割数 - 定格直流電圧 Vop(kV) 定格直流電流 Iop(kA) 遮断電圧 Ipro(kV) 設置面積・外形・重量 今回なし 輸送制限 道路交通法申請なし 漏洩磁界制限 今回なし SMES の装置としての要求仕様を以下に示す。 ① 定格出力 :100MW ② 利用エネルギー :1.8GJ ③ 運転パターン :図Ⅲ-1-2.6.1.1-1、Ⅲ-1-2.6.1.1-2 を参照 2.6.1.2 システム構成 (1) 設備構成 図Ⅲ-1-2.6.1.2-1 に負荷変動補償用 SMES の設備構成案を示す。また、以下に各設備の機能 分担を、表Ⅲ-1-2.6.1.2-1 に示す。本表は、機能分担の一例である。個々の機器間で、取合条件、 I/O を具体化し、機能入替を行うことも可能である。 ① 受電設備 ② 制御装置 ③ 変換装置 ④ 保護装置 ⑤ 超電導コイル ⑥ 冷凍機設備 ⑦ 補機設備 197 (2) システム構成 図Ⅲ-1-2.6.1.2-2 に制御信号、インターロック信号、監視・操作信号に関わるシステム構成例 を示す。中央でインターロックを統括する構成である。SMES の場合は、直流回路の保護を大 きな割合で変換装置のゲート操作が絡み、また、抵抗保護では、保護時間がシビアなため、後 者の選択も考えられる。 制御装置 系統 制御盤 受電設備 SMES 制御盤 監視 ・操作盤 変換装置 保護装置 変換器 制御盤 超電導コイル設備 計装中継盤 冷凍機設備 冷凍機 制御盤 DCCB 抵抗 VCB 変換器盤 短絡 回路 保護抵抗 回路 冷凍機 CE 変圧器 接地 回路 純水冷却 装置 補機電源設備 VCB UPS 冷却水設備 DC電源 商用電源 冷却塔 図Ⅲ-1-2.6.1.2-1 198 設備構成 表Ⅲ-1-2.6.1.2-1 設備 受電設備 制御装置 構成機器 ①VCB ②PT、CT、各種 Ry ③アレスタ(必要時) ④高調波フィルタ(必要時) ①制御用マイコン ②保護インターロック盤 ③操作・監視盤 ④データロガー ⑤計装中継盤 ⑥冷凍機制御盤 設備の主要構成機器と機能分担(例) A) B) C) D) A) B) C) D) E) 機能 系統との連系機能、 系統異常の検出・絶縁・出力機能 系統異常時の保護・切り離し機能 系統情報・負荷情報の検出・絶縁・出力機能 F) G) H) I) J) 系統制御機能 基準値の作成・出力(試験モード) シーケンス制御機能 保護インターロック機能 運転操作機能(運転モード・設定値等の選択・入力、 起動・停止操作等) 監視・表示機能(運転操作、運転状況、異常表示など) 伝送機能(運転状況・異常などを外部へ出力) データログ機能 マグネット信号の電源・変換・中継・絶縁、警報設定機能 冷凍系の制御、警報設定機能 PQ 制御機能(制御装置からの Pref、Qref に追従) 直流電流制御機能 変換装置の警報設定 変換装置の現場操作・表示・設定値等の入力機能 モジュールの保護インターロック機能(必要により) 交流・直流回路の電流・電圧の検出・変換・中継・絶縁機能 直流回路の接地、地洛検出機能 直流回路の過電圧検出、短絡保護機能 超電導コイルのエネルギー処理 保護装置の警報設定 エネルギーの蓄積機能 超電導コイルの冷却・保冷機能 高圧容器の保護機能 冷媒流量・圧力のバルブ操作機能 変換装置 ①変換器用変圧器 ②変換器盤 ③変換器用制御盤 ④保護回路盤 ⑥純水冷却装置 保護装置 ①直流遮断器盤 ②保護抵抗器 A) B) C) D) E) F) G) H) A) B) 超電導コ イル ①超電導コイル ②クライオスタット ③電流リード ④真空排気装置 A) B) C) D) 冷凍機設 備 ①コールドボックス ②コンプレッサ ③バッファタンク ④精製器 ⑤冷凍機制御盤 ⑥CE ⑦トランスファーチューブ ⑧小型冷凍機(必要により) ①分電盤 ②UPS、直流電源 ③冷却塔(又はチラー) ④計装空気 A) 冷媒供給機能 B) 冷却装置の制御、警報設定 補機設備 備考 A) 制御・動力電源の供給(商用電源、UPS、直流電源他) B) 二次冷却水の供給 C) 計装空気の供給 本表は、機能分担の一例である。個々の機器間で、取合条 件、I/O を具体化し、機能入替を行うことも可能である。 199 SMES制御機能 保護機能 運転・操作 ・監視 中央 現場 変換器制御盤 補機電源設備 受電盤 変圧器盤 変換器盤 図Ⅲ-1-2.6.1.2-2 保護装置 計装中継盤 冷凍機制御盤 クライオスタット 冷凍機 屋外チラー システム構成例(中央統括) 2.6.1.3 Bi2212 システム検討 2.6.1.3.1 はじめに 2005 年度までに実施した Bi2212 ラザフォード導体に関する各種実験結果に基づいた特性を 用いて、負荷変動補償用 SMES の概念設計を実施することが本検討の目的である。検討する当 該 SMES の設計条件を下記に示す。 最大通電電流値 :3,000 A 利用エネルギー :2.0 GJ 充放電率 :75% 周期 :20 秒 冷却温度 :4.2 K ⇒最大蓄積エネルギー:2.67 GJ ユニットコイル外径:φ3.0 m 以下 2.6.1.3.2 Bi2212 ラザフォード導体諸元 本章では、2005 年度までに実施した Bi2212 ラザフォード導体に関する検討結果に基づき、 本検討に用いる導体構成、Ic-B 特性(4.2K)、n 値-B 特性(4.2 K)、導体許容ひずみについて 記述した。 200 (1) 導体構成 SMES 向け導体の臨界電流値を調整するために、ラザフォード導体を構成する素線の本数を 連続的に変動させた。下記に、素線 30 本の場合の諸元を示す。また、素線数を変動させた場 合の導体幅も合わせて表示する。 素線径(sd) :0.81 mm 素線数(sn) :30 撚りピッチ(sp):90 mm 導体幅(cw) :13.5 mm 導体厚(ct) :1.62 mm (cw=(sn/2+1)×sd) ct cw 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-1 ラザフォード導体構成(裸線構成) 蓄積エネルギーが 2GJ を超える超電導コイルでは、フープ力などの電磁力が大きく、上記の ラザフォード導体単体では許容応力を超えてしまうことが予測される。そこで、導体厚さ方向 にラザフォード導体と同じ幅の SUS 補強板を配置することとした。その際の導体構成は下記 のとおり。 tin(絶縁層厚) ct(ラザフォード導体厚) st(SUS 補強板厚) 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-2 ラザフォード導体構成(SUS 補強板、絶縁層を含んだ構成) (2) 臨界電流特性 導体の臨界電流特性については、2005 年度実施のダブルパンケーキコイル試験結果に基づい た 近 似 式 を 使 用 し た 。 使 用 し た 臨 界 電 流 特 性 を 図 Ⅲ -1-2.6.1-7 に 示 す ( T. Tosaka, et al.,” Excitation Test of Prototype HTS Coil with Bi2212 Cables for Development of High Energy Density SMES”, IEEE Transactions on Applied Superconductivity , Vol.17, No.2, pp.2010-2013, 2007)。 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-3 Bi2212 ラザフォード導体の Ic およびn値の磁場依存性@4.2 K 201 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-3 より求めた素線 1 本あたりの Ic および n 値の近似式は、次のとおり。 Ic = 242.5B-0.3031 [A] 式(2.1) n 値 = 9.0-3.0B (B≦1 T) 式(2.2) 6.0 (B>1 T) (3) 導体許容ひずみ Bi2212 ラザフォード導体 5 サンプルの引張り試験結果を図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-4 に示す。 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-4 ラザフォード導体引張り試験結果 試験で用いたサンプル形状は、下記のとおりである。 素線径 :0.8 mm 撚り本数 :30 撚りピッチ:87 mm 外径寸法 :1.6 mm×13.4 mm×200 mmL 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-4 に示すように、5 サンプルでの破断ひずみは 0.25~0.38%である。そこで、 本検討では、Bi2212 ラザフォード導体の許容ひずみを 0.2%とした。 (4) 交流損失特性 素線径φ0.81 mm を 30 本撚り合わせた Bi2212 ラザフォード導体では、ヒステリシス損失が 支配的で、フィラメント間および素線間の結合損失は無視でき、その際の有効フィラメント径 は、素線径と同等であることが分かっている。この結論に基づいてモデル化されたヒステリシ ス損失の磁場振幅依存性を図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-5 に示す。 202 図Ⅲ-1-2.6.1.3.2-5 Bi2212 導体のヒステリシス損失 2.6.1.3.3 コイル概念設計検討 コイル形状は、ユニットコイル 12 個を等配のトロイダル形状に配置したものを想定してい る。図Ⅲ-1-2.6.1.3.3-1 で、r a はトロイド中心半径、a0 はユニットコイルの電流中心半径、g c はユニットコイル間ギャップである。a0 をパラメータとして、2 GJ 級負荷変動補償用 SMES の概念設計検討を行った。なお、ユニットコイル間ギャップ gc については、ユニットコイルお よびユニットコイル間の電磁力支持材の配置スペースとして 200 mm とした。なお、ユニット コイルは、シングルパンケーキコイル(ダブルパンケーキコイルでも可)を積層した形状を想 定した。 ユニットコイル a0 ra gc 図Ⅲ-1-2.6.1.3.3-1 負荷変動補償用 SMES コイル概観図 203 (1) 最適形状 最適と考えられるコイル形状を表Ⅲ-1-2.6.1.3.3-1、コイル構成を表Ⅲ-1-2.6.1.3.3-2 にまとめ る。また、本コイルの縮尺図を図Ⅲ-1-2.6.1.3.3-2 に示す。 表Ⅲ-1-2.6.1.3.3-1 導体構成 素線径 :0.81 mm 素線数 :38 撚りピッチ :90 mm 導体幅 :16.2 mm 導体厚 :5.42 mm(SUS 補強材厚 3.80 mm 含む) 導体絶縁層厚:0.02 mm 表Ⅲ-1-2.6.1.3.3-2 コイル構成 【ユニットコイル構成】 ユニットコイル内径 :2.05 m ユニットコイル外径 :2.99 m ユニットコイル高さ :0.66 m ユニットコイル巻厚 :0.47 m シングルパンケーキコイルターン数 :80 シングルパンケーキコイル数/ユニットコイル:40 ユニットコイルターン数 :3,200 【トロイダルコイル構成】 ユニットコイル数 :12 トロイド中心半径 :3.2 m トロイダルコイル最外径 :9.4 m コイル重量 :219.2 トン 導体総長 :304.0 km 素線総長 :11,552 km 通電電流 :3,000 A 最大経験磁場 :12.0 T コイル負荷率(max 値) :69% 導体ひずみ(max 値) :0.2% フラックスフロー損失 :2,489 W 交流損失 :52.5 kW(18 秒周期) 204 0.47 m 0.66 m 2.05 m 2.99 m 3.2 m 9.4 m 図Ⅲ-1-2.6.1.3.3-2 2 GJ 負荷変動補償用 SMES コイルの縮尺図 2.6.1.3.4 まとめ Bi2212 ラザフォード導体を用いることを想定し、2005 年度までに評価した当該導体の基礎 特性に基づいて、2 GJ 負荷変動補償用 SMES コイルの概念設計検討を実施した。検討の際の 設計条件は下記のとおりである。 最大通電電流値 :3,000 A 利用エネルギー :2.0 GJ 充放電率 :75% 周期 :20 秒 冷却温度 :4.2 K ⇒最大蓄積エネルギー:2.67 GJ ユニットコイル外径:φ3.0 m 以下 10 ケースの設計検討を実施し、トロイドコイル最外径、素線全長、コイル体積、コイル重量、 ヒステリシス損失特性について総合的に判断し、現状導体で最適と考えられるコイル形状を導 き出した。現状技術的に最も問題になる点として、100 kW を超える交流損失の低減と、コイ ル冷却システムの構築が挙げられる。 2.6.1.4 イットリウム系負荷変動補償 SMES システムの検討 (電圧型大容量変換素子直並列方式) a. 基本設計 SMES システムに適用可能な変換器は大きく分けて、電圧形と電流形があるが、現在広く普 205 及しており、今後も他システムとの技術の融通が期待できる電圧形変換器で SMES 用電力変換 シ ス テ ム の 検 討 を 実 施 し た 。 100MW 級 電 力 変 換 シ ス テ ム に 求 め ら れ る 仕 様 を 下 表 Ⅲ -1-2.6.1.4-1 に示す。 項目 表Ⅲ-1-2.6.1.4-1 仕様 電力変換システムへの要求仕様 備考 システム容量 100MW 連系点電圧 制御応答性 77kV 20ms 以下 系統短絡容量(2 ケース) 資源エネルギー庁ガイ ・ 無限大 ドライン以下 ・ 2169MVA にてシュミレーション実施 98%以上 片道 発生高調波 運転効率 b. 100MW 電力変換装置の設計 決定した電力変換装置の仕様を表Ⅲ-1-2.6.1.4-2 に示す。今回設計した電力変換装置のチョッ パ側の並列数は、コイルの特性に合わせて任意に変更することが可能である。コイル 10 個の 場合の回路構成を図Ⅲ-1-2.6.1.4-1 に示す。 項目 表Ⅲ-1-2.6.1.4-2 100MVA 電力変換装置の仕様 インバータ側 チョッパ側 備考 定格容量 100MW 200MW 直流電圧 6kV 6kV 直流電流 ― 3.5kA~17.6kA スイッチング周波数 180Hz 180Hz 直流回路の電圧変化範囲 直流回路の電流変化範囲 (並列数) 適用素子 5.7kV~2.85kV 5.7kV~2.85kV 8.8kA~17.6kA(2)、4.4kA~8.8kA(4)、 3.5kA~7.0kA(5)、1.75kA~3.5kA(10) GCT GCT 適用素子電圧 6kV 6kV 適用素子電流 6kA 6kA 変換器構成 4 段多重 2,4,5,10 並列 アーム構成 3 レベル構成 3 レベル構成 冷却方式 純水冷却 特定高調波抑制パルス 適応型保護方式 ― 純水冷却 その他の機能 DCL 206 120μH コイル定格による コイル定格による 単 相 3レベ ル x 3 x4 段 3レ ベ ル 5 並 列 チ ョ ッ パ 1 .7 5 kA ~ 3 .5 k A 6kV dc ± 5.7 k V ± 5 .7 k V 77 k V 1 .7 5 k~ 3.5 kA ± 5.7k V ± 5 .7 k V 図Ⅲ-1-2.6.1.4-1 コイル 10 個の場合の主回路構成図 c. 2GJ 級 Y 系コイルの設計 電磁力や空間制約等により輸送制限以内の大きさのコイル 10 個をトロイド配置とするコイ ルシステムにより2GJ を実現する。ユニットコイル 10 個を変換器チョッパ回路と組み合わせ るシステムとする。表Ⅲ-1-2.6.1.4-3 と図Ⅲ-1-2.6.1.4-2 にその諸元とイメージ図を示す。 表Ⅲ-1-2.6.1.4-3 2GJ トロイダルコイル諸元例 運転温度 最大電界 フロー損 要素コイル数 要素コイル位置 要素コイル内半径 要素コイル外半径 要素コイル高さ 使用線材長 素線電流 最大磁界 最大フープ応力 20 K 0.032μV/cm 66.7 W 10 2.95 m 0.945 m 1.40 m 0.72 m 2010 km 412 A 13.0 T 600 MPa 8.7 m 2.8 m 図Ⅲ-1-2.6.1.4-2 207 2GJ 級 Y 系トロイダルコイル イメージ図 2.6.1.5 イットリウム系負荷変動補償 SMES システムの検討(マルチセル変換器方式) 2.6.1.5.1 マルチセル変換器を用いたシステム検討 Y 系 SMES のコイルは、線材固有特性を最大限に活かす事を念頭に、特に最優先すべき物と して、伝導冷却システムの置かれた条件として交流損失の低減を最重要課題とし、ダブルパン ケーキ型要素コイルのトロイダルコイル配置を基本的な設計条件とした。 系統連系仕様 50MVA 77kV,100MVA セ ル モ ジ ュ ー ル 50MVA 560kVA×180 台 単相インバータ 25MVA 電流電圧変換器 電流電圧変換器 平滑 コンデン 平滑 コンデン SMES コイル 25MVA 単相インバータ セルモジュール 13.4MJ セルモジュール ×180 台 25MVA 3P 1620A セルモジュール セルモジュール セルモジュール セルモジュール セルモジュール セルモジュール 25MVA SMES コイル ;13.4MJ×180 台=2.4GJ セルモジュール;560kVA×180 台=100MVA (5 台/相×3 相×6 直/2 トランス×2 ユニット) 図Ⅲ-1-2.6.1.5.1-1 2GJ / 100MW 負荷変動補償用Y系 SMES システム (1) 変換器側の計画 マルチセル変換器システムの特長は以下のとおりである。 a. 最新技術による高速、小型のパワー半導体を使用し、パワー素子冷却の空冷化、変換器の モジュール化を実施済の、低コスト、低損失のインバータハードウエアが利用出来る。 b. 変換器の立て積み構成により、高調波成分の少ない高品質の電力変換が可能で、高電圧、 大出力化が容易である。 208 c. モジュールの立積み構成による変換器で、低電圧入力モジュールの直並列の組合せにより、 入力電圧対応について柔軟性を持たす事が出来、通常の大出力変換器では必須であった、回 路の高電圧化が必ずしも必要では無く、SMES コイル側の仕様に応じ、コイルや電流リード の耐電圧値の低減が可能である。 d. 出力側についても、セルモジュールの直並列対応を行う事により、10MW から 100MW の 出力範囲に対し変換器モジュール数の増減で柔軟な対応が可能である。 e. 10MW 以下の出力に対しても、更にセル数の少数化調整により、細かい対応が可能と成っ ている。 SMES 用マルチセル変換器の計画は以下の通りである。 変換素子冷却を水冷より空冷に変更の為、素子仕様を 3,300V×1,200A より 1,200V× a. 1,400A(2 in ONE)の2並列 2,800A に変更した。 素子容量が若干小さくなった為、セルモジュール単機容量は 840kVA より 560kVA に変更 したが、モジュール数を 10MVA 当たり 12 台から 18 台に増やす事により対応した。 100MVA の場合は、560kVA モジュール 180 台により構成した。 PU = 100MVA / (18 台×10 ユニット) = 560kVA 変換器の直流中間電圧は、素子の耐電圧値が 1,200V より 750V で計画した。 b. この時の直流中間の平均電流は 560kVA セルモジュールに於いて次式より 747A となる。 DI = 560kVA / 750V = 747A 変換器モジュールとコイルを 1:1 の対応に計画、SMES 側超電導コイル電流即ち変換器 c. チョッパの最小電流は、直流中間の定格平均電流に約8パーセントの裕度を見込み 810A と した。 コイル最大電流は、コイル最小電流の 2 倍の 1,620A より、巻線は 1 本当たりの設計電流 値を 540A とした場合、3 条並列で対応可能となった。 50%エネルギー貯蔵時のコイル電流である平均電流は、次式で計算され、1,150A となる。 DIA = 810A×√2 = 1,150A d. 変換器モジュールの系統側仕様は、直流中間電圧より出力電圧を 480V とし、その時の実 効電流値は、次式により 1,170A となる。 PIA = 560kVA / 480A = 1,170A e. モジュール 6 台を 1,400×2,400×1,500(幅×高さ×奥行き)の基本単位盤に収納し、本 盤が 10MVA の 1 相分に相当し、本盤 3 面で 10MVA の対応とした。 更に 100MVA に対しては、10MVA 機を 10 台を組合わせ 100MVA を出力する構成とした。 この時の総モジュール数 180 台に対し収納盤面数は 30 面で、床面積 63m 2 となった。 100MVA 実機でのセルモジュール組合せ計画は、50MVA 機 2 台並列構成とし、50MVA f. 機は、各相が 6 セル直列とし、各相のセルは、5 台のセルインバータの並列対応とした。 又、出力トランスの容量より、3 セル直列の 25MVA 機を 2 台直列により対応の事とした。 g. セルインバータのメンテナンスの便を図る為、SMES コイルの監視保護を実施の 32 台の 変換器入力盤及び変換器の並列制御保護を実施の 12 台の変換器出力盤により、10MVA 単位 209 でインバータの解列も実施出来る様にした。 (2) 巻線側の計画(負荷変動補償用 100MW / 2GJ システム) SMES 巻線は、使用線材料の量に対しネルギー貯蔵量を最大にする事が必要であり、システ ムを構成する超電導コイルの磁場回路を出来るだけ共通にする事となり、結果としてコイル装 置単機の大型が実施される。 しかしながら、大型化については、製作や輸送の問題の他に、単一線材長の増加や冷却パス の増加による制約も考えられる事より、十分な検討が必要となる。 SMES コイルの最適形状は、基本的に変換器の仕様には影響されず、冒頭の基本計画巻線に よりマルチセル変換器との組合せコイルの詳細仕様について検討を実施した。交流損失の低減 を図るため、トロイダルコイルを非常に多くの要素コイルに多分割した。 a. マルチセル変換器の合計台数 180 台に対し、基本計画コイルは、180 個の要素コイル構成 で、1 個の要素コイルは 2 個のダブルパンケーキ単位コイルにより構成により、1 個のコイ ルに許容される高さは、次式の通りであり、問題無く 360 個の単位コイル組合せ構成が可能 である。 HEC =(3.71 -1.4)×10 3 ×2×π/(180×2)= 40.3mm > 37mm b. トロイダルコイル配列のコイルの総数は、360 個となり、その時のトロイダル配列での最 小内径は、次式で計算される。 DTIF =37×360 /π = φ4,240 計算された内半径に 10%弱の裕度を付け実際の内半径を決める。 DTI = φ4,240×1.1=φ4,650 この 10 %の裕度は要素コイルの高さ方向にも 10 %の裕度を与える事となり、単位コイル 1 個当たりの高さ方向の裕度増加分は約 4 mm となる。 c. トロイダル配置の外径は、要素コイルの外径をφ2,300 とした場合、次式で計算される。 DTO = DTI+DEO×2 = 4,650+2,300×2 = φ9,250 d. SMES 巻線を単位コイル 360 個で構成の場合は、1 個当たりの線材長は、次の通り計算さ れる。 L = 2,090km / 360 個 = 5.81km 変換器のチョッパ側仕様により、540A 線材の3条巻対応により1条当たりの線材長は次 式により計算される。 LS = 5.81×10 3 / 3 = 1,937m(3 条巻線) e. 要素コイルの内外径に対し巻線時の線材厚さを補強材、絶縁物も含め 0.82mm とすると、 ダブルパンケーキ要素コイルの内径は、次の通り計算される。 DEI =((π / 4×(2.3×10 3 ) 2 -0.82×5.81×10 6 / 2)×4 / π) 1/ 2 =φ1,500 要素コイル内外径比は、0.65(=1,500 / 2,300)となる。 f. 単位コイル 2 個の要素コイル当たりの最大蓄積エネルギー量は、13.4MJ (2.4GJ / 180 台)に計画する。 210 以上の単コイル構造、全体コイル構成、コイル冷却システム、クエンチ保護システム、電流 リード冷却システムの各計画を 2GJ 級 SMES 用 YBCO コイルシステムに全て反映し、クライ オスタット構造を決定した。図Ⅲ-1-2.6.1.5.1-2 にその鳥瞰図を示す。トロイダルコイル構成 を基本構造に採用し、コイル本体、接続導体、電流リードに対しては極低温冷凍機からの伝導 冷却を行い、外壁の内側に輻射伝導断熱材および遮熱シールドを設けたクライオスタットを採 用し、内部全体が高真空で運転される計画とした。また、トロイダルコイル配置、無冷媒伝導 冷却方式の採用により、コイル基礎からの支持構造の簡略化および冷媒タンク省略等の冷却シ ステムの簡略化を行うことを可能とした。また、組立作業や輸送の便宜に配慮し、クライオス タットの分割組立を可能とし、工場内や最終設置場所での取扱い最小単位を小さくした。 Φ10 m コイル用冷凍機 電流リード・シールド用冷凍機 YBCO コイル 電流リード接続端子 図Ⅲ-1-2.6.1.5.1-2 2GJ-100MVA 級負荷変動補償用 Y 系 SMES クライオスタット鳥瞰図 (3) まとめ a. 2GJ の SMES を 1 台のトロイダルコイル配置 SMES で対応の場合、構成の 180 台の要素 コイルは 2 個のダブルパンケーキの単コイルにより構成され、各単位コイルは 3 条巻線で、 1 条当たり 1.94km の単一線材が必要になる。 b. ダブルパンケーキの単位コイルの機械仕様は、内径 1.5m、外径 2.3m、線材総長 5.8km で、単位コイル 2 個の組合せで要素コイルを構成、SMES 1 台分では 180 台の要素巻線とな る。 c. ダブルパンケーキ 2 個組合せの要素コイルの電気的仕様は、最大蓄積エネルギー13.4MJ、 インダクタンス 10.2H、直流電圧 750V、直流電流 1,620A となる。 d. トロイドコイルを非常に多く分割した結果、転倒力等の電磁力や誘導電流・誘導電圧が低 減されるため、クエンチ等によるコイル保護の場合に一部の要素コイルのみを切り離したコ イル保護方法が選択肢として期待される。 211