Comments
Description
Transcript
経済危機下のロシアにおける 消費者心理と行動の変化
経済危機下 の ロシアにお ける 消費者 心理 と行動 の変化 小 崎 晃 義 2010 創価大学 ロシア・スラヴ学会 経済危機下 のロシアにおける消費者心理 と行動の変化 (小 崎)33 経済危機下の ロシアにおける消費者心理 と行動 の変化 小 崎 晃 義 は じめ に 米国発 の金融危機 は 100年 に一 度 といわれ るほ どの世界的な経済危機 をもた らし、 と りわ け日本 とロシアに大 きな衝撃 を与 えた。 ロシ アヘ の危機 の影響 につ いては、その経路や金融 。生産 セ クターに与 えた衝撃、 または 政府 による危機克服 のための諸政策 に関す る論考 を多 く目にす ることがで きる。 しか し、家 計 セ クターに どの ような影響 を与 えたのか についてはあま り論 じられ ていないように思 える。 本稿 では、今回の世界経済危機 が ロシ アの家計セ クター に どの ような影響 を もた らしたの か、 そ してそれ によって ロシ アの消費者の心理 と行動 が どの ように変化 したのか とい う問題 を、 い くつかの社会 。経済的調 査 を基 に して考察 してみた い。 1.世 界 経 済 危 機 と ロ シ ア 1-1.衝 撃 の 大 き さ 米国 のサ ブプライ ム・ローン問題 が世界的な金融不安 を広 げつつ あ つた 2007年 の後半、ロ シアではその衝撃 が ロシ アの実態経済 に与 える影響が軽視 されて いた。 さらに、 ロシ ア企業 の株価 の下落傾 向が明 らかになった 2008年 8月 にな り、9月 に リーマン・ シ ョックが起 こっ て も尚、その影響 は限定的 と見 られて いた 1。 年 が 7¨ 7.5%、 2009年 が 5.7%と 公表 して いた その頃、ロシア財務省 は経済成長率予測 を 2008 2。 しか しなが ら、その後 も株価 の下落 は止 まらず、ついに 5月 の ピー ク時の 25%∼ 30%の 水 準 にまで暴落す る と、 ロシ ア政府 も大規模 な緊急危機対策措置 を実施 せ ぎるを得 なかつた。 だが、 この危機対策 に もか かわ らず、 ロシア経済 に対す る世界経済危機 の衝撃 は、歴史的に も他国 との比較 において も当初 の予想 よりはるかに深刻 な もの となった。 ロシ アは 1998年 に金 融危機 を引き起 こし、デ フォル トに陥ったが、2009年 の ロシアの リ セ ッシ ョンはその時 よ りも深刻 な もの となつた。すなわち 1998年 の成 長率 が -5.3%で あ つ たのに対 して、2009年 は -7.9%も 落 ち込んだ のである 3。 この経済不振 によってイ ンフレー シ ョン│ま 10%を 下回 つたが、ロシ ア中銀が繰 り返 し政策金利 を切 り下 げたため、実質金利 は ほぼゼ ロとなった。 また ロシ ア政府 は危機対策 として巨額の財政出動 を行 い、 その結果、財 34 政収支 は 2008年 の GDP比 4.3%の 黒字か ら 2009年 の GDP比 7%の 赤字 へ と転 じた 4。 さらに、表 1に 示 され るように、国際的な比較 において も、 ロシ アの落 ち込 みは際立 って い る。特 に BRICsと 呼 ばれ る新興国ブラジル、 ロシ ア、イ ン ド、中国の 4カ 国 の うち、イ ン ドと中国は金融危機後 も比較的高 い成長率 を維持 して い るのに対 して、 ロシ アはブラジルに も水 をあけられ、IMFの 見通 しでは、世界 経済 が回復 へ 向か うと予想 され る 2010年 も、 ロ シアの経済成長率 はわずか 1.5%と 推定 されている 表 1 米国、 日本、BRICsの 経済成長予測 2008 S。 (2009、 2010年 ) 2009* 2010* -2.7 米国 -07 日本 -54 130 中国 インド 94 64 ブラジル -07 ロシア -75 キ 2009と 2010年 は推 計値 出所 :IMF World Eco∞ mに Outi∞ k(WEO),OctOber 2009,p2 1-2.消 費 の 役 割 の 増 大 ロシアは 1998年 の金 融危機以後、2008年 までの 10年 間 に平均 6.9%の 高度成長 を達成 し た。 これにはもちろん石油価格 の高騰 による輸 出の増大 の貢献が大 きいが、 それ とともに、 国内の投資 と消費 の伸 びが大 きな役割 を果た した と言える。 特 にこの間 の実質家計消費 は平均約 9.0%で 成長 してお り、実質 GDPの 支出構成項 目に 占 める家計支出の割合 も 1999年 の 46.8%か ら 2008年 の 62.1%へ と増加 して い る。 これはロシ アの経済構造が先進国型 にな りつつ あることを示 して い る。 一 方、 この ことは今回の ような経済 の収縮局面 においては、消費の減少がその成長の減速 に大 き く寄与 するとい うことで もある。例 えば世 銀 の分析 によれば、2009年 の ロシ アの実質 GDPの 減少 は、外部要因であるロシ アの主 要貿易相手国の輸入 需要 の減少 (-15%)と 内部要因である投資 れて い る 共 に、 (-18%)と 個人消費 (-4.7%)の 収縮 によって もた らされた と推計 さ 6。 この ような ロシ ア経済 にお ける消 費 の動向の重要性 を踏 まえた上で、次章以降では、 ロシ アの消費者が この危機 を どの ように受 け とめて、 どう対処 しようとしてい るのか とい う問題 を考 察 してみたい。 経済危機下 のロシアにおける消費者心理 と行動 の変化 (小 崎)35 % 図1 実質 GDPの 支出構成項 目の害1合 700 600 家 計消費 政 府消費 総資本形成 ― 500 400 在 庫変動 輸 出 輸 入 300 200 100 00 2000 2001 2002 2003 20042005 2006 2007 2008 年 -100 出所 :ロ シア国家統計局 ,httノ/Ⅶ Wttks ttfree_doc/ncw she/vvpた ab25 xlsか ら作成 2.収 入 と支 出 の 変 化 この章 では、 まず消費 に影響す る国民の収入 と支出が、今回の経済危機 で どの ように変化 したかをマ ク ロの観点 か ら概観 してみ よう。 2-1.収 入 の 変 化 実 質 所 得 の 伸 びの 鈍 化 まず 2008年 1月 か ら 2009年 6月 までの実質所得の変化 を前月比で見てみ よう。そ こでは 最近数年間 に見 られた年内の変化のパ ター ンが繰 り返 されて い る。すなわち、2008年 1月 の 実質所得 は、イ ンフレの昂進 と経済活動 の減 少、12月 にお ける大量 の国民 へ の支 払 いのため に、約 2分 の 1に 減少 し、その後回復 す る。 これは毎年見 られ る変動で、 いわば季節要因で ある。 しか し、以前 と違 って、2008年 の この プ ロセス は後半 にかな り不安定 とな り、毎月 2-3% 程度 の低下 が見 られた後、 12月 は H月 に比 べ て 29.4%(2007年 では 37.4%)増 加す る。だ が、2008年 の 9月 に対す る 12月 の増加率 は、2007年 の 同時期 と比 べ て約半分程度 であつた (23%対 46%)。 次 に実質所得 の変化 を前年 同月比で見 ると、図 2に 見 られ るように、2008年 の年初 か らそ の増加率 は緩やかに低下 して い ることが分か る。そ して、急激 な所得の減少が H月 (-6.1%) 36 と 12月 に (― H.6%)に 見 られた。モス クワ とサ ンク ト・ペ テルブルグさらに急激 な減少 (― -38%)を 記録 した。 40%と 2008年 全体で、国民の実質可処分所得 は 2.9%増 加 したが、これ は 2007年 の 12.3%に 比 べ て著 しく低 い。 ここ数年高度成長 とともに順調 に増加 して きた ロシ ア国民の実質所得 は、経 済危機以後、 その伸びが鈍化 して い る ことが分 か る。 図 2.実 質可処分所得の変化 (前 年同月比 ) 150 100 50 00 -50 -100 -150 lF 2F 3,8 4F 5E 6E lE 8E 9,H 10.8 11812F lF 2E SE 4n 5E 20os+ 6E 2o0e+ 出所 :ロ シア国家統計局 hゆ tl′ … m/tee doc/new Ste/population/urov/urov 12hhmか ら作成 ・参・ 2008年 には 2007年 と比 べ て 9,7%増 加 した。 所得の もっ とも大 きな源泉である実質賃金 は、 実質賃金の最 も高 い増加率 は、昨年 と同様 に、 12月 に見 られ、その増加額 は前月比で 14.2% であった。 しか しなが ら、 これ は 2007年 の 12月 の増加 (25.5%)に 比 べ ると著 し く低 い。 また、賃金 に関 しての注 目すべ き変化 は、賃金支払 いの遅延 の増加 である。その人数が増加 し、経済全体 に広 まった。支払 い遅延の増加 は 2008年 9月 にはすでに見 られたが、2008年 1 月か ら9月 にか けて、賃金 の支 払 い遅延 に直面 した労働者の人数 は実質的 に一定 に とどま り、 約 20万 人であった。しか し、H月 にはその人数 は急激 に増加 し約 30万 人 にな り、12月 には すで に 60万 にまで増加 した 7。 経済危機下 のロシアにおける消費者心理 と行動 の変化 (小 崎 )37 所得源 泉 の 構造 表 2に 見 られるように、2008年 にお ける所得源泉の構造変化 の特徴 は、財産所得 の減少で あ り、その割合 は 2007年 の 8.9%か ら6.6%に 減少 した。しか しなが ら、もっとも注 目すべ き 財産所得の割合の減少は 2009年 第 1四 半期 であ り、それ は 3.8%ま で減少 した。財産所得の 絶対額 はロシア国家統計局 の評価 によれば、2007年 第 4四 半期で 6430億 ルーブルで、2008 年 の第 4四 半期 は4850億 ルー ブルであった 8。 この ような財産所得の減少は、主 に預金利子 の受取 りの減少 によって もた らされた と考え られる。それは、銀行制度の安定性の低下によって引き起 こされた大量の期 日前のルーブル 預金 の引き出 しに関連 して いる。その他の重要な要素は株価の暴落 による証券市場 における 損失である と考えられ る。 この財産所得 の減 少傾向は 2009年 にはさらに顕著 になった。所得 に占める割合 は、2009 年第 I四 半期 は前期比で約半分 にな り、それは第 2四 半期 まで続 いた。 表2 源泉別金銭所得構造 (%) 20094平 20084「 Ⅱ I 事業所得 102 96 就労所得 684 684 社 会 的支 給 133 その他 の 所 得 20 103 124 74 財産所得 Ⅲ Ⅳ 99 102 68.5 69.4 130 14.7 64 20 I Ⅱ 712 3.8 20 20 出所 :ロ シア国家統計局 ,httptilぃ 、 3kS証 能 e doc/nw s競 /popul江 lon/urov/urcDv 13kv htmか ら作成 2008年 の産 業間 の賃金格差 の程度 は原則的には変化 しなか つた。最低 の賃金水準 は農業で あ り、次 いで教育、お よび保健である。最高 は採掘 工業 と金融業である。 また、賃金の増加 率 は燃料 ・エ ネ ル ギー企業 と金融分野 において経済全体 の平均 よ りも著 しく低 かつた。 2008年 に最低所得水準以下 で生 活 して い る人の人数 も変化がなかった。そのグルー プの割 合 は、総人 口に対 して 13.2%で あ り、2007年 は 13.3%で あつた。 しか しなが ら、 ロシ アの貧 困 の水準 と所得 の不均衡 の程度 は先進国や 中欧諸国 に比 べ て著 しく高 い ことを指摘 してお く 必要があるだ ろう。 ロシ ア国家統計局 による家計調査 による と、ジニー係数 か ら導かれ る所 得 の集中化指数 は事実 上変化 せず、2007年 の 0.423に 対 して 2008年 は 0.424で あ つた 9。 これ らの ことか ら分か ることは、経済危機が国民 の収入 に与 えた影響 は、 その全体的な伸 び率の減少、特 に輸 出産業 と金融部門に関連す る所得の減少が大 きかつた とい うことがで き るだろう。 38 2-2.支 出の変化 金銭支 出の構 造 2008年 は 2007年 と比較 して国民の総所得に対する財の購入 とサー ビスの支払いの割合は 69.6%か ら73.1%へ と著 しく増加 した。一方、この期間に貯 蓄の割合は 9.6%か ら6%へ と低 下 した。 2008年 には国民の支出はわずかに所得を超過 した。所得 に対する支出の超過は前年 にすで に見 られていたが、急激な所得 に対する支出の超過は H月 と 12月 にみ られ、それは新生 ロ シアの歴史始 まってい らいの規模であった 。 1° 2008年 の支出構造 に見 られる特徴は、 9月 か ら 12月 にか けて国民の預金 と有価証券 による 貯蓄が減少 した ことで ある。特 に著 しい貯蓄の減少が見 られたのは、1998年 の第 3四 半期で あつた。 これは、12月 に銀行の倒産 の恐れがより強 まつたためである。依然 として預金者 に とってのもっとも大 きな脅威は、インフレと1998年 のデフォル トの再来である。 図 3.金 銭所得の支出構造 商 義 100 ― 外 品購入とサービス支払い 務的支払いと納付 貯蓄 資購入 80 60 40 20 0 -20 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 20084「 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 20094F gks・ Jfrcc_doc/new_sitc/population/urov/urov 14b htmか ら作成 出所 :ロ シア国家統計局 hゅ .11呻・ 経済危機下 の ロシアにおける消費者心理 と行動 の変化 (小 崎)39 預 金 と外 貨 へ の 支 出 ここで留意 しなければな らない ことは、ロシ ア国民 の 32%が 銀行預金 を有 して いた とい う ことだ。国民金融調査会 のオ リガ・ クージ ナは 、 1600人 の一般 市民 と 400人 の裕福 なモス ‖ クワ居住者 へ のアンケ ー トを実施 した 。それ によれば、2008年 10月 か ら 2009年 1月 にか けて約 6%の 回答者 が預金 口座 を閉 じたが、1月 には 3分 の 2の 回答者 が銀行 に資金 を戻 し た。また、2008年 の 10月 か ら 12月 にか けて回答者 の うち銀行預金 の保持者 の割合 は 32%か ら 26%に 低下 したが、 1月 には 30%に 再び増加 した。「預金者 へ の最初 のパニ ックの波 は終 わった」 とクー ジナは指摘 して い る 12。 また 1998年 のロシア金 融危機 の時 とは違 って、現在 は預金保険制度 があるが、その預金者 行動 に対す る影響 はきわめて限定的 である とクー ジナは述 べ ている。つ ま り、預金者 の 18% のみが補償制度 の機能 について十分認識 して い るだ けあ り、さらに 26%が それ につ いて一 般 的な知識 を持 つているにすぎな い。 しか しなが ら、2007年 12月 の段 階 では預金保険制度 に つ いて十分 を持 つているのは預金者 の 3%で あ り、一般的な知識 に関 しては 12%が 知 ってい たにすぎなかった。 結局、大部分 の預金者 は預金 を守 るためになにもして い ない。少数 の人々は回座か ら預金 を引 き出 し、耐久消費財 の購入 にあてているが、 これはモス クワだけの特徴で、 ロシ ア全体 の ものではな い ともクージナは述 べ ている。 貯蓄 の減少 と同時 に、2006年 か ら 2007年 にか けて外貨 の購入 の減少傾 向が見 られた。同 時期 の支 出 に対す る割合 は 2006年 が 6.8%、 2007年 が 5.2%で あつた。2008年 にはその割合 が最初 は安定 してお り、最初 の 9ケ 月 は約 増加 し、10月 には 12.8%、 5%で あつたが、 その後第 4四 半期 には跳躍的に H月 には 12.1%、 12月 には 14.9%と なる。結果 として、2008年 全体 として外貨の購入国民 の金銭所得 の総額 に対 して 7.9%と なった 13。 また、2009年 1月 には預金 の減少 と同時 に外貨 の購入 が増 えて い る。 これ は、一時的に ド ルが高騰 したためであ って、かつての ようなルー ブル資産 か らの逃避 とはい う訳 ではな い。 クージナの調査 によれば、 ロシ ア人 に とって もっ とも信頼で きる資金の投資先 は不動産 の 購入 であ り、次 に金や貴金属の購入である。外貨 の購入 を信頼で きるお金の投資先 と考 える 人 はすでに少数である。 したが つて、 経済危機 の外貨購入 に対す る影響 は限定的 であると言 える 14。 3.消 費者 心理 と行動 の 変化 この章では、経済危機がロシアの消費者の心理 と行動 にどのような変化 をもたらしたかに ついて、各種 の調査 に基づいて考察 してみたい。 3-1.消 費者 心理 の変化 消費者 心理 指数 第 1章 で述べたように、 ロシア経済 において消費の役割 が増大 するにつれて、消費者の心 40 理の変化 を知 ることの重要性 が増 して きた。特 に、企業経営者 に とっては消費者 の心理 と購 買意欲 を知 る ことは、生産 ・流通・ 販売を効率化 し、 よ り効果的なマー ケテ イングや広告 を 展 開す るために必 要不可 欠 な情報 となった 。 そ して、 その 目的 のため に消費者 心理指数 (И Щ eК ΠoTpe6И TttЬ CК ИX HaCTPOeHИ Й(И ΠH))が 注 目され るようになった。 ここでは、世論調査会社の レベ ダ・ センターが発表 してい る消費者心理指数を利用 して、 経済危機を受けて ロシアの消費者 の心理が どう変化をしたのかを見てみたい 15。 消費者心理指数の方法論 は単純である。指数は 5つ の質問 に対する回答者の答えを基本に して算出される。それぞれの質問 には独立 した肯定的、否定的な答えの割合の差 として指数 が算出され、 looが 加算 される。総合的な消費者心理指数はそれぞれの指数 の算術平均か ら 導かれる。消費者心理指数は 0か ら 200の 間で変化する。100以 下の指数 の意味は社会にお ける否定的評価が優勢であることを意味 してい る。 消費者心理指数は以下のよ うな項 目の調査 を基 に算出され、それは都市部 と農村部の 16 歳以上の住民約 2000人 の 自己評価を反映 している。 ロシアでは、90年 代 の半 ばか ら調査 さ れている。 消費者心理指数の算出のための質問項 目】 【 1.最 近のあなたの家族の経済状態はどう変化 しましたか ? ① む しろ改善 した ② 変化がなかつた ③ む しろ悪化 した 2:あ なたの意見では、近 い将来あなたの家族 の経済状態はどう変化 しますか ? ① いずれ改善する ② 変化 しない ③ む しろ悪化する 3.国 の経済全体について、今後 12ヶ 月は良 い時期 になると思いますか、それ とも悪い 時期 に な る と思 い ます か ? ① 良い ② 良い、 しかし全体ではない ③ 良くない、 しかし悪 くもない ④ 悪い、 しかし全体ではない ⑤悪い 4。 今後 5年 間は経済にとつて良い時期になりますか、それとも悪い時期になりますか ? ① 良い ② 良 くない、 しかし悪 くもない ③ 悪い 5.家 庭にとつて大きな買い物 (例 えば家具、冷蔵庫、家電製品、テ レビなど)に つい て、現在は購入するのに良い時期と思いますか、それとも悪い時期と思いますか ? ① 良い ② 良 くない、 しかし悪 くもない ③ 悪い 消費者 心理 の 悪化 消費者心理指数 の直近の調査は、2009年 5月 22-26日 、 レバ グ・ センターによって、 ロ シア全国の 46地 域、128居 住地で 1600人 に対 して行われた その結果を要約すると以下 16。 のようになる。 消費者心理指数 は リーマン・シ ョック前の 2008年 3月 の 123%か らその後 の 9月 の調査で 経済危機下のロシアにおける消費者心理 と行動の変化 )41 (小 崎 6%ポ イ ン ト低下 したが、 これ はまだ楽観的な領域 であった。 しか し 2008年 第 4四 半期 に実施 された国民 へ のアンケー トの結果 は、消費者心理 の急激 な 悪化 を示 して い る。か つて これ よ り悪 かったのは 1998年 と 1999年 のみであつた。そ してそ れは 2009年 の 2月 にはさらに低下 し、76%に まで落 ち込んだ。 これは、2009年 に入 ると危 機 の影 響 が 消費者 の心理 に大 き く影響 し始 めた ことを示 して い る。 2009年 の 5月 の調査 では、消費者心理指数 がわずか に上 昇 し 79%と なったが、これは季節 的要因であ つて、状況 が好転 したわけではな い。 レバ ダ・ セ ンター所得 ・ 消費調査部部長 の マ リーナ・ クラシ リニ コヴァによれば、 このわずかな好転 は、近 い将来 に個人的な経済状 況 が好転す ると答 えた人が若干増 えたためである 17. 以上の ことか ら、2009年 の 5月 の段階で、 ロシ アの消費者の大部分 は経済 の展望 を悲観的 に評価 して い ると考 え られ る。 ほ とん どす べ ての回答者が 自分 の個人的な経済状態 の悪化 を 予想 して いてお り、向上 を期待 して い るのは H人 に 1人 の割合であつた。また若者 は現在の 経済状態 をさらに悲観的 に評価 して い るとい う。 図 4.消 費者心理指数 の 変化 140 120 100 80 60 40 20 0 2008年 12月 出所 :レ バ ダ 。セ ンター・ httpノ Ⅵ甲w.levada.m/press/2009060305.html 3-2.消 費者行動 の 変化 前述 のように、ロシア経済 に対する消費者 の心理は2009年 に入って大 き く悪化 した。この ような主観的な経済状況の評価 は現実の指標の悪化 に先行す ると考えられる。 したがつて幾 らかの遅れを伴 つて実際の消費行動が変化す るはずである。では、消費者心理 の変化 は実際 42 の消費者 の行動 に どの ような変化 をもた らしたのだろうか ? この疑間 に対す る答 えを得 るためには、「危機 :消 費者 の心理 と行動 」 と題 して ロシ ア国立 高等経済大学院 と市場 および世論調査協会の共催で開催 されたセ ミナーでの議論 が大 いに参 考 になる。本章ではそのセ ミナーに参加 した専 門家 たちの意見 を参考 に して、危機 に対す る ロシ アの消費者 の行動の変化 につ いて考察 してみた い ]8。 頭 の 中の 危 機 このセ ミナ ー は 2009年 と 2月 と 4月 に 2回 にわたって開催 された。興 味深 いのは、 この 2 ヶ月間 にロシアの消費者 の行動 についての評価 が大 き く変化 した ことだ。 2月 の第 1回 セ ミナ ー は、2008年 末 までのデ ー タを基 に して議論 が行われた。その結論 は、 司会の ロシ ア国立 高等経済大学院第 1副 学長 の ワジム・ ラダーエ フによれば、「危機 は人々の 頭 の 中 に存在す るとい うことが確認 された。人 々の期待 に影響 を与 えつつ も、危機 は消費 の 分野 にそれほ ど影 響 しなかった」 とい うものであった また、大手市場調査会社 Gfk‐ Rusの 19。 アレクサ ン ドル・ デ ミドフ会長 も 「危機 は人々の心理 と期待 に影響 を与 えて い るが、 まだ ロシ ア人の大 半 に影響 を与 えて いな い」 の ように評価 し てぃた 20。 デ ミ ドフの主張の根拠 は 2008年 12月 の調査結果 に あ り、その時点では 74%の 回答者が危 機 はすでに始 まって い ると答 え、18%が 2009年 に危機が始 まる と予想 して いた。しか し、 70% の 回答者 は、個人的には危機 はまだ関係な い と答 えた とい う。 しか しなが ら、デ ミドフも消費者の行動 に変化 の兆 しがあることは認 めている。 つ ま り、 消費者 は商品を選択す る際に、 よ り価格 を重要視す るようにな り、衝動的な買 い物 を避 け、 よ り合理的 になった とい う。 また、2008年 12月 までに、生 活必需品の市場 は危機 の影響 を受 けて い ないが、 耐久消費 財、特 に家電製品 については消費の低下が見受 けられ る。 さらに、今後 2年 間 に 自家用車 の 購入 を予定 して い る人 は約 2分 の 1に 減少 し、今後 1年 か ら 7年 間 に住宅 の購入 を予定 して い る人 は、4分 の 1に 減少 した との ことであった。 一 方、 この ような主張 に対 して、危機 は人々の頭 の 中 に あるだ けではな く、すでにそれ は 急激 な消費行動 の修正 を もた らして い るとの反 論 もあった。 チモ フェイ・バ ル ソフ cOmcOm 21調 査部長 は、人 口 loo万 人以上の都 市 で 18歳 か ら 45歳 までの looo人 に毎月 アンケー ト調査 を実施 した結果 を基 に次の ように主 張 した 22。 すなわち、「人 々 はすでに娯楽や旅行 を節約 し始 めてお り、カ フェや レス トランヘ通わな く なっている。 その代わ りにマ ク ドナル ドに行 く人が増 えた。 また、人々は新 しい商品を買わ な くなった。大 都市で公共交通 機関を利用す る人の割合が 2007年 の 73%か ら 84%へ 上昇 し た」等である。 また、 ロシ ア国立 高等経済大学院のタチアーナ・ コ ミサーロヴァも多 くの市場 において需 要が減少 した と報告 した。すなわち、「不動産 に対す る需要 はほ とん どゼ ロに まで落 ちた。ま 経済危機下のロシアにおける消費者心理 と行動の変化 た、大型 の家電製品 は 70%か ら 80%、 (小 崎)43 自動車 に対 しては最低で も 40%減 少 した。 この こと は、 消費者金融 が よ く発達 した市場 ほ ど、現在需要が減少 して い る ことを示 して い る」等 で ある 23。 この ような高額 な商品の需要の減退 は、銀行 か らの消費者 へ の融資 の停滞 と関連 がある。 レベ ダ 。セ ンターの ナタリア・ ボング レン コの ア ンケー ト調査 によれば、2008年 12月 の おける未返済の融資 を有 して い るのは、ア ンケー ト回答者 の 28%で あ つた 24。 この調査 によ る と、4-5%の 回答者 が融資 の返済 に大 きな困難 に直面 した。未返済 の融資がある、解雇や 給与 の遅配 に直面 した回答者で、貯蓄がな いのは H%で 、大部分 の回答者 (77%)は 小都市 や農村部 に住 んでいる。 また、 それ らの人 々の 33%は 食料品 の購入 には金が足 りているが、 9%は 食料品 の購入 に も金が不足 して い る。 また、ここ 2年 で融資 を受 けた人で、12月 までにその返済がで きなか つたのは 82%で あ つ た。回答者 の 34%が ここ 2年 間で融資 を受 け、 その うち 6%が 3つ かそれ以上の融資 を受 け た とい う。融資 の うち 4分 の3を わずか に下回 る部分が家電製品 の購入 のための融資 であ り、 21%が 自動者、6%が 不動産であ った。回答者 の 3分 の 2が 現在物品購入 のために融資 を受 け な い方が良 い と考 えて い るとい う。 金融危機 によって銀行 の業績 が悪化 し、消費者 へ の クレジ ッ トの供与 はきわめて困難 にな った。それ によつて不動産や 自動車 な ど、消 費者 クレジ ッ トが整備 されて い る市場 ほ ど消費 が大 き く減少 した。 頭 の 中 か ら現 実 ヘ 以上の ように、2009年 2月 の第 1回 のセ ミナーの総括的 な結論 は、消 費者 の行動 は、不動 産や 自動車、大 型の家電 な どの買 い控 えや外食 を減 らすな ど、 い くらか の変化 は認 め られ る とは い え、全体的 には大 きな変化 は見 られな い とい うものであつた。 ところが、その 2ケ 月後 に行われ た第 2回 目のセ ミナーでは、評価が大 き く変わ つた。 例 えば、第 1回 のセ ミナ ーで「危機 は単 に人々の頭の中だ けにある」と主張 した GFK― RUS の ア レクサ ン ドル・ デ ミドフ会長 も、第 2回 セ ミナ ーでは 「危機 は現実の もの となつた」 と 自身 の見解 を変 えた 25。 彼 の新 しい調査 によれば、2008年 の 12月 では 68%の 回答者 が、危機 はまだ感 じられな い 2009年 3月 には危機の影響 を受 けて い な い と答 えた人 は 46%と な り、24% と答 えて いたのが 、 の回答者 は賃 金が削減 され、6%が 解雇 された と答 えた とい う。2008年 12月 で はこれ らの指 標 は、それぞれ 9%と 3%で あつた とい う。 以上 の ことか ら推察 され る ことは、2009年 の初頭 にロシアの消費者が危機 の影響 を受 けて、 大 き くその行動 を変化 させた とい うことで ある。 これは、第 2章 でみた マ ク ロの国民 の金銭 支出構造 の変化 と符号 して い る。 しか しなが ら、注 目すべ き ことは、1998年 の ロシ ア金融危機 と違 って、現 在 の経済危機 下 の ロシ アの消費者 は生活必需品の買 占めや ドルを求 めて両替所 に殺到 す るようなパニ ックを 44 起 こ して いな い とい うことで ある。 その理 由の一つ として興 味深 いのは、新 しい タイプの消費者が ロシ アに生 まれて い る とい う指摘である。 第 2回 のセ ミナーの 中で、世論基金 の 消 費 者 を 「リフ レクテ ィ ブ 26の ロマン・ アブラーモ フはその ような新 しい タイプ (思 慮 深 い )・ コ ン シ ュ ー マ ー (pelJIcKCИ BHЬ Ie KOHCЬ Ю MepЬ I)」 と呼んで い る。 アブラモ フによれば、 これ らの人々は ロシ アの人 口の約 13か ら 15%を 占め る高等教育 を 受 けた若者たちで、彼 らはインターネ ッ トを積極的 に利用 し、平均 よ りも所得が多 い。彼 ら に とっての消費 とは、社会空間の開拓であ り、彼 らは自分の将来 を熟考 し、 自分 の経済状況 は 自分 にだ け依存す る と考 えて い るとい う。また、 この 「21世 紀人」 は、危機 に対 してすで に その対策 を準備 している (す なわち貯蓄があ る)。 そ して、彼 らは経済危機 の下で も慣親 し んだ ライ フ・ス タイル を諦 めた りしな い し、高 い消費水準 を落 とした りしな い。したがって、 所得が減 少 して も追加的な所 得 を探 し、新 しい職業的 ス キル を習得 しようとす る とい う。 これ らの人々は、市場経済 へ の移行後 のロシアで生 まれ育 つた人々で、おそ らく経済 の激 変 に素早 く適応す る術 を 自然 と身 に付 けて い るのであろ う。 おわりに 前述 のロシア国立 高等経済大学院のオ リガ・ クー ジナが ロシ ア とヨーロ ッパ と米国で行 っ た調査 によると、危機 の終結時期 に関 して最 も楽観的なのはポ ー ラン ド人 とロシ ア人だそ う だ 27。 この ような楽観 主 義 は どこか ら生 まれて くるのだろうか ?そ の理 由の一つ は、経済危機 ヘ の 「耐性」ともい うべ き資質であろうか。一般 にはロシアの消費者 はこの 10年 間 に 2度 の経 済危機 と直面 した と言われて い る。だか ら危機 に強 いのだ と。 しか し、 そ うで はない。 ロシ ア人の多 くは、9o年 代前半の もっ と過酷な破局的経済状況 を生 き抜 いて きた。だか ら今回の ゛ 危機 は 3度 目といえる。 したがって 当然、経済危機 に対す るす く れた 「耐性」 を身につ けて い るはずである。 また、 自国を震源地 とす る過去 2回 の危機 とは違 って、今回は外部か らの衝撃であ り、国 内的には政治的な安定性 も保 たれている点 も、 ロシアの 消費者 の冷静 さ と楽観主義 に影響 し ているのだ ろう。 ともあれ、本稿 で述 べ た ように、2009年 に入って、米国発の経済危機が ロシ アの消費者 に とつて も 「現実の もの」 となった ことには間違 いが ない。 しか し、多 くの人々は消費 を抑 え つつ も、パニ ックは起 こ して い な い。まさしく「危機 はある。しか し破局 はない (KpИ 3И C eCrL. Kttampoф Ы Hm)」 とは的を射た表現である。 経済危機下の ロシアにおける消費者心理 と行動の変化 (小 崎)45 注 1.「 国際金融危機の影響 を被 るロシ ア経済」、 V.シ ュ ヴィ トコ、『ロシア NIS調 査月絶 2∞ 8年 12 月号、p.12 2.「 金融危機 :ロ シアヘ の影響 は間接的」2008年 10月 24日 、 http:巧 p.ibtimcs.com/article/bizncws/081024/23478.html 3.2∞ 9年 2月 1日 にロシア国家統計局が発表 した速報値。後 に修正 され る可能性が ある。 4.Global Economic Prospccts 2010:C」 Ss,Finance,and Gronth(PRE‐ PUBLICAr10N DRAFT),¶ hc World Bant Januay 21,2010,p.126 5.IMF World Economic Outlook(WEO),OctObCr 2009,p.2 6.4と 同 じ 7.「 江独 apE T(Hり ЧHЫ Й pttaKrop),KpИ 3И CHtt rrcpecneК TИ BЬI,И 3Д 《 IIP()EKT〉 〉2010 8。 ЭKOHOMЖ a COBpcMcHHOЙ POCcИ И;TcH/1cHЦ ИИ И p338 同上 、p.339 9. 同上、p.340 10. 同上、P340 H.HalIMOHa」 12. IЬ HoC areHrttBo ф ИHaHCOBЬ IX ИCCЛ 釧 OBaHИ Й (ル噸 )И ),(h岬 《Φ ИHaHcoBЬ IЙ KpИ 3И C rЛ a3aMИ pOccИ ЯH》 ,http:〃 、 v、 v、 MopCC.ru/docs 13.「 Ч HЫ Й pcЩ aKrop),KpИ 3И CHaЯ ЭKoHoMИ Ka mapE.(H● :〃 naCin.ru/about html) asPx?id=389&ob oo=87997 CoBpcMcHHoЙ PoccИ И;TcHД cHЦ ИИ И ncpccΠ cKrИ BЫ ,И 3Д .〈 く ΠPOEKT》 2010,p.340 14. Кン3И Ha.0.,《 B」 IttHИ e KpИ 3И Ca Ha oЖ Щ aHИ ЯИ фИHaHcOBoe noBЩ cHИ C pOccttH〉 〉 , .hSe.ru/o=典sC/CVCnts/ncwダ 6087099.html httpt′ ′ … 15.《 ИЩ cК c Π∝pc6ⅧrcЛ ЬcMx HacrpocHИ Й(И IIH)》 ,http:〃 w、ぃv.lcvada ru/indcxipn html 16. く く Д ИHaMИ Ka nCyrpc6И TcЛ ЬCKИ X HaCTpOcHИ Й B Mac2009〉 〉 , http.11… .に Vada ru/prcss/2009060305.htlnl 17.KpacИ ЛЬHИ Ю B■ M.《 ′聯 HaMИ Ka n∝ pe6mcЛ ЬcК Иx HttpOcHИ Й B Mac 2009》 http://Ⅵ n″ 1lcvada.nノ ∼ 18。 ロ シ ア 国 立 高 等 経 済 大 学 院 は正 式 名 称 ocyД apcTBcHHbIЙ 「 (「 y‐ BШ Э )、 , prcss/2009060305.html ttmepcИ Ter‐ BЫ cШ "Ш KoJIa ЭKOHOMИ 期 世 論調 査協 会 は 2003年 に 13の 調 査会 社 に よって設 立 され た協 会 で正 式名称 は 0“ 釧 ИHeHИ e Иcc」leЮ BaTeЛ cЙ 《Φ ИHaHcoBЫ Й KpИ 3И C Ⅲ 観 MИ pЫ HM И06Щ ccTBCHHOm MHm"(OIIPOM)。 pOccmD〉 , http=││… 回 セ ミ ナ ー の 要 約 は 《KpИ 3И C eCTЬ _opeC・ ru/docs aspx?id=389&ob n∝ 87997。 KaTac叩 oф Ы H∝ 》,h中 ノ ¬ . 第 1回 セ ミナ ー の 要約 は 第 'VhSe Wnews/recent/7508197.htmlを "ヽ 参考 に した。 19.《 Kp"И c ccTЬ .Kttacttф ЫHer》 ,http:′ ′ … .hse」 ncws/rcccnυ 7508197.hml 20.1934年 に設立 された、世界 4位 の市場調査会社 GfKグ ルー プの ロシアでの活動拠点。 http:〃 w、vwgtt nノ 。 21.1991年 に設立 された市場調査会社。htp:′′ 湘 wcomcon… 2 22. く く OИHaHcoBЫ Й КpИ 3И C r」 ru/ la3aMИ pOccИttH〉 〉, http:〃 w、ぃw.OpeC.ru/docs.aspx?id=389&ob 23.同 上 24. БOHД apcHК o.H,《 http:〃 w、ゃ 、 vhsc KpИ 3И C И 口po6Л cMЬ I ΠOTpc6И TcЛ ЬCKO「 O KpcД ИToBaHИ Я〉 〉 , ru/org/hse/cventダ news/6087099.html no=87997 2 25. <Kpnruc ecrr. Karacrporfu ner>, htp://www.hse.nr/new Vrecent/7508197.htm1 26. @oru (O6uecrBeHHoe MHeHr.re)), http://wwwfom.ru/ 27. KytuuaO. "Poco{.r, Enpon4 CIIIA: rr,rr.Iponofi rpnsxc t,t HacrpoeHl,te nmpe6rrelefi (pesylrraru cpaBHrrenbnoro Mex.qyHapoAHom lrccne.[oBaHrr)", http://www.hse.ru,/newVrecent/7508197.htm1