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ガラロにジャトロファの明りを!

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ガラロにジャトロファの明りを!
ガラロにジャトロファの明りを!
持続的発展のための新しいエネルギー利用
1万人のガラロ市民のための
ジャトロファを燃料とした地域電化プロジェクト
フォトジャーナル
MFC ∼輝く未来∼
2007 年 10 月
ジャトロファナーサリーの 32 万本の苗(左)、ジャトロファ種子を採集する地元女性(中)とガラロ
村の発電室に装備された3基の100kWジャトロファオイルディーゼル発電機(右)
概要
気候変動がかつてないほどの話題になるにつれて、バイオ燃料は南半球におけるエネルギー
利用開発プロジェクトの熱い話題となりました。バイオ燃料プロジェクトに関するエネルギ
ー自給、地位経済と社会利益のポテンシャルは、今や際限なく広がるように見えるものの、
下降傾向もまた見られてきました。多くの国々、特にアジアでは、バイオ燃料プロジェクト
は輸出の観点から思いついたものであり、その主眼は北半球のバイオ燃料消費のための安い
原料調達です。これでは生産のための新たなフィールドを作るために大量の単一栽培、広大
な焼畑の慣例化を誘発し、地域によっては人々は自らの土地で賃金奴隷になってしまうばか
りです。そのようなシナリオでは通常、大きな国際企業の経済的利益が重要視される反面、
バイオ燃料利用の潜在的環境利益は非持続的な土地利用によって完全に無視され、地域共同
体は少しも利益を感じなくなってしまうでしょう。マリ・フォルケセンター(MFC)にとっ
てのバイオ燃料の視点とは、環境面で持続的な CO2 中立な代替燃料で、手つかずの森に大
きなダメージを与えたり食の安全にリスクを及したりすることなく、南半球の人々に電力を
もたらしたり、交通セクターに公平な方法で経済的利益をもたらすエネルギー提供の方策で
あると考えています。
MFC は目下の所、マリ南部のガラロ村で ガラロにジャトロファの明りを∼植物油プロジェ
クト を実施し、300kW の電力を活力ある村に供給するとともに、電力に関わる社会利益
と向上した生活レベルをもたらしています。加えて、村の人々は、自分たちの土地でジャト
ロファを生産することで収入を向上するチャンスを得ます。地元に奥深く根ざす支援と所有
権を持つ本プロジェクトでは、脆いサヘルサバンナの生態系にダメージを与えることなく、
社会経済的な利益をもたらす先駆的役割を果すものと言えるでしょう。
本プロジェクトは、地方市(コミューン)ガラロの明確な要望に基づいて始り、国際パート
ナーとの連合体により進められたもので、現在は実施段階にあります。3 機の 100kW 発電
機が導入され、ジャトロファの純オイル(非精製=非エステル化)で運転できるよう改造され、
市内の 1000 ヘクタールに定植するために百万苗の苗が生産されるようナーサリーが作られ
ました。この数量は電力生産に必要以上の量です。プロジェクトが将来、真に持続可能なバ
イオ燃料プロジェクトになることを祈っています。一方で持続不可能で環境にダメージを与
えるバイオ燃料プロジェクトのモデルがどんどんと勢いを増しつつあることに思いを巡らす
ことは大切です。もし建設的なモデルが与えられなければ、バイオ燃料の概念は批判の下に
さらされ続けるでしょう。そして潜在的にとても有意義なこの新しいセクターは、報道対象
の悪者として犠牲になってしまうでしょう。持続可能および持続不可能なバイオ燃料開発の
違いがはっきりと認識される必要があります。そして、持続可能なバイオ燃料プロジェクト
では、地域共同体が最初に利益を得る保護と優先付けが必要です。
本プロジェクトの主な狙いは、地域住民に高品位な近代的なエネルギーサービスをもたらし、
地域経済を活性化することです。電気そのものは多くの中小商業の機会の触媒となり、ジャ
トロファ種子の売上は、新たな収入を生みます。これは商業を中核に置いたプロジェクト∼
MFC の経験による能力開発と参加共同体の開発を組合わせた AREED プログラムによる地
域エネルギー商業開発∼と一体化した戦略になっています。
AFRICAN CENTRE FOR PLANT OIL TECHNOLOGY
A division of MFC Nyetaa
1
本プロジェクトのパートナー達:
マリ・フォルケセンター(MFC:マリの先導的クリーンエネルギーNGO)
アクセス(ACCESS S.A.R.L.:革新的なマリの地域エネルギーサービス会社)
ファクト基金(FACT:国際バイオ燃料エキスパートの先駆的グループ)
アマダー(AMADER:地域エネルギー開発を支援するために結成されたマリ国内エネ
ルギー開発&地域電化局、世界銀行/地球環境ファシリティー(GEF)
緑の森基金(Stichting Het Groene Woudt、オランダ)
プロジェクトの場所
ガラロ村はマリ南部にあり、地方
市ボゴニから車で2時間の所にあ
ります。人口約 10,000 人、主要
な経済活動は農業(食料作物およ
び綿などの換金作物)、畜産業と
地域市場交易などです。
ガラロの地勢(右)
写真
ガラロにジャトロファの明りを プロジェクトは、村落電気委員会、ジャトロファ植林委
員会の結成や、MFC と ACCESS の監修下で発電機器の導入を含む力強い活動と共に予期し
な い程 の 活 力 で前 進 し て いま す 。 マ リ共 和 国 の エネ ル ギ ー ・鉱 物 ・ 水 資源 省 の 大 臣も
AMADAR スタッフ代表らと共にガラロを訪問しました。本フォトジャーナルは、ガラロで
進んでいる活動の記録をまとめたものです。
マリ共和国エネルギー・鉱物・水資源省大臣によるプロジェクト開始式
横断幕 ありがとう SHGW & FACT 基金 (左);
トゴラ MFC 所長にサイトを案内される大臣(右)
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ガラロ村
ガラロの表通り.向い側へボゴニへ、手前側へコートジボアール国境へ続き、村を重要な接点に位置づける(上左).樹齢
50 年以上になるジャトロファの老木(上右).
人々の意識へ 電気を支払う 概念の植付け
婦人代表、青年と村の組合の代表らが地方行政官らと一同に集う(上左).料金制度を説明するイブラヒム・トゴラ博士
(MFC 所長、上右).
集会に集う民衆と婦人達(上右、左)
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3
発電エンジン(ジェンセット)設備導入チームのガラロ市入り
設備導入チームが役場の地方政府代表者らと面会(左)
チームは村の伝統に従い長老達とも面会(右)
発電ユニットの設置
クレーンで発電エンジンを発電室進入口に下ろす(左)
ローラーで設置場所に移動(右)
2タンクシステムの電磁バルブ.今年1タンクシステムに変更される予定(左).エンジン排熱でジャトロファ油を加熱する熱
交換器(右).
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発電エンジン初めての試運転
発電エンジン初の試運転(左).婦人組合が訪問、電気の到着とジャトロファ生産の可能性に興奮気味(右)
定位置に据えられた3機の発電エンジン(左).設備導入チーム記念写真(右)、トゴラ MFC 所長と FACT スタッフ(前列)、
発電所を維持・管理する現地人技師達(後列).
整然と植えられたジャトロファ苗床
発電小屋前のジャトロファ苗床(左)
耐乾性をテストされるジャトロファ苗(右)
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雨期の到来とともに定植を待つ苗(左).雨期まで人の手で水をやる(右).種を圧搾すると発電機の燃料油が得られ、絞り
滓は有機肥料として活用でき、この農業地帯で生産性の向上に寄与する.
ジャトロファ委員会が集会で来るべき活動に備える.全ての利害関係者(左)と村の婦人達(右)
電線設備の設置作業
ガラロ村中の民家と商店・事務所のために建設された電柱(左).そして電線はついにはガラロに引かれ、設備導入が前進
してゆく(右).
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エネルギー・鉱物・水資源省大臣の訪問
マリ共和国エネルギー・鉱物・水資源省大臣のハメド・セメガ閣下は本プロジェクト立上げ以来の熱心なサポーターである.
大臣は公式な着工式に参加するとともに、2007 年6月に省庁と AMARDER の代表を伴って進捗状況の視察に来た.代表
一行は電力棟(左)を訪れ、導入過程で訓練を受けた技師による発電エンジンの詳細説明を受けた(右)
ガラロ村の長老達に会う大臣(左)
イブラヒム・トゴラ MFC 所長と議論する大臣(右).
ジャトロファ苗床のガイドツアーを受ける省庁代表一行(左右)
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婦人組合のメンバーとプロジェクトの進捗を討論するイブラヒム・トゴラ MFC 所長(左).婦人達はプロジェクト遂行に際し、
とりわけ苗床作りのカギとなる役者となっており、ジャトロファ種子の採取やプロジェクトにつながる収入創出活動でも重要
な役割を果し、ついにはジャトロファ電力の拠所でもある.マリ国営 TV 局のカメラの前でガラロ市長とインタビューを受ける
大臣(右).
村の婦人達とプロジェクトにおける彼女たちの役割について議論する大臣(左).村のリーダー達に別れを告げる大臣(右).
ガラロにおけるプロジェクト前のエネルギーサービスは大きな大気汚染であった
村における目下のエネルギーサービスは古典的なディーゼル技術によるもので、一般的な化石燃料利用に伴う CO2 と汚
染物質の排出を伴い、その貧困状態ゆえの古い設備で一層大量の排出を招いている(写真中の排ガス黒煙に注目)
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新たな収入源となるジャトロファ種子
プロジェクトは家族、とりわけ婦人達にとって新しい収入を生む.燃料コストが村や国から流出する通常のディーゼル電化と
違い、ジャトロファ燃料システムでは、この経費が地域共同体に再注入され、貧困家庭は種子を生産して自分たちのエネル
ギーコストを賄うことができる.燃料代を垂流す国内経済に代り、追加経済となる.従ってジャトロファのマイクロおよびマク
ロ経済は優れているといえる.ジャトロファの種を収穫する婦人(左)、種を選別する婦人達(右)
有機肥料 − ジャトロファ油生産の副生産物
4kg のジャトロファ種子が絞られると、1kg の油と3kg の絞りかす(これも販売すること
ができ、ジャトロファ技術システムの経済効果全体を向上させる)を生み出します。絞りか
すから得られる肥料は、下表を見れば分るように、特に窒素とリン成分が牛糞よりも多く含
まれています。
ジャトロファ
絞りかす内の含有
率(%)
牛糞
対牛糞比率
N (窒素)
5.7 - 6.48
2
280-320 %
P2O5 (5酸化リン)
2.6 - 3.1
1.5
170-200 %
K2O(酸化カリウム)
0.9 - 1.0
2
43-45 %
CaO(酸化カルシウム)
0.6 - 0.7
4
15-16 %
成 分
MgO (酸化マグネシウム)
1.26 - 1.34
1
出展:Jatropha oil as fuel, GTZ Jatropha Energy Project, October 1995.
126-134 %
1ヘクタールのジャトロファは、成木になると年間3トンの収量をもたらします。これは約
0.75 トンの油と 2.25 トンの絞りかすを生み、絞りかすは高品質の肥料として利用すること
が出来ます。よって、1000 ヘクタールの植林されたジャトロファは、年間 2250 トンの有
機肥料が期待でき、化学肥料の使用を抑え、土地の生産性を向上させることができます。
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故にプロジェクトは農業やガーデニング活動を元気づけ、地域の食料安全と食料品質を向上
させます。また、生産量の増加は売上利益を増加させるので、人々にとってより多くの収入
を意味することになります。
スクリュー圧搾機での油しぼり(左)
手のひらの上の絞りかす(右)
むすび
プロジェクトは電力販売のための最良のビジネスモデルを作り出すとともに、MFC がマリ南
部で何年にも渡って培った地域共同体との経験に基づいた、共同体の開発に必要不可欠な要
素を含む好ましい技術や訓練を組合わせています。このような考察と人々への継続的な支援
の努力なしにジャトロファ電化プロジェクトは成功できないでしょう。MFC は全ての協力者
各位、とりわけ SHGW にこの革新的なプロジェクトへの関わりを感謝申上げます。
本プロジェクトは村の状況を変えるでしょう。電力を得ることは、人々に照明、冷蔵、ラジ
オやテレビを、小規模商業や工場に溶接装置や農業機器電化ツールへのアクセスを可能にす
ることです。プロジェクトはまた、改善された生活環境や電気の重要な生産的利用をもたら
し、それは村落レベルでは付加価値、雇用の創出を生み、一般的には地域経済の成長と貧困
の軽減を呼込むでしょう。ただし、この成長はプロジェクトが域内オイル流通型の地域共同
体での利用に根ざした利用においてのみもたらされるものでしょう。
ジャトロファ種子生産とオイル利用のミクロ/マクロ経済効果が組合わされた本アプローチ
は、他の手法とは異なるものであり、それはこのプロジェクトが何故「エネルギーと持続可
能な開発の新たなパラダイム」と呼ばれるかの所以なのです。
バイオ燃料プロジェクトが、マリの地域人民の生活において前向きな変化の力とみられるこ
とはとても大切なことです。地域生産、エネルギー自給、CO2 中立な再生可能エネルギー源、
環境保護、女性のエンパワーメント(地位権利向上)、地域経済発展や雇用創出など内に秘
める可能性は計り知れません。
反対にもし、地域の人々のための持続的な実践と利益の授受が現実的になれないなら、この
せっかくの機会は失われ、ジャトロファと他のバイオ燃料穀物はあたかも他の換金作物、綿
やコーヒーのように国際市場の貿易に利用されることでしょう。付加価値は生産者の外部に
作られ、アフリカ人民には比較的限定された利益しか届かなくなってしまうでしょう。
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ガラロ・ジャトロファの明りプロジェクト が他のマリ国内およびアフリカの村々で模倣
されるべきモデルとなり、バイオ燃料の利益が地域の人々にもたらされんことを切に願いま
す。(終)
MFC ∼輝く未来∼
事務所所在地:Faladié SEMA, Rue 851, Porte 181,
BP E4211, Bamako, Republic of Mali
Tel. +223 220 0617
Fax. +223 220 0618
www.malifolkecenter.org
プロジェクトのパートナーたち
SHGW
Stichting Het Groene Woudt
MFC Nyetaa
African Centre for Plant Oil
Technology
– a division of MFC
ACCESS S.A.R.L.
AMADER
Agence Malienne de Développement de
l’Energie Domestique et l’Electrification
Rurale
FACT
Fuels from Agriculture in Communal
Technology
© MFC Nyetaa (マリ・フォルケセンター)は、
全ての肖像権と文章について著作権を有します。
いかなる図・写真や文章も MFC の許可無く引用することを禁止します。
許可を得たい場合は MFC まで連絡下さい。
(訳:マリ・フォルケセンター友の会)
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