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(ASTRO-G)プロジェクトについて 分割版(2) (PDF:1457KB)

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(ASTRO-G)プロジェクトについて 分割版(2) (PDF:1457KB)
11. フロントローディング状況
1.高精度9m展開アンテナ
Z
X
平成12~13年度 スケールモデルでの検証
・放射リブ・フープケーブル方式の確認
平成14年度~ フルスケール全周モデルの試作試験
・調整方法の試行
・メッシュ張架
・重力補償、測定手法、調整手法の確立
Y
1/2スケール
半周モデル
鏡面精度要求値(0.4mmRMS)を達成できる見通しが
得られた
平成19年度~ 主要部材の材料特性評価(継続中)
・放射線試験
・温度特性試験
1/2スケール
全周モデル
スタンドオフ
フープケーブル
放射リブ(CFRP)
周辺ケーブル
展開トラス
タイケーブル
フルスケール全周モデル
35
11. フロントローディング状況
2.高速データ伝送のための変復調方式の検討
Z
X
地上では実績のある技術であるが、宇宙では適用可能な実績技術が
ないため、ASTRO-Gで新規に開発
Y
平成14年度~15年度
「はるか」で実現した1チャンネルQPSKによる128Mbpsの広帯域伝送に
対して、多チャンネルによるOFDM変調(Orthgonal Frequency Division
Multiplex)方式のどちらで、1Gbpsのデータ伝送を実現するかの検討を
行うため、OFDM方式のBBM試験を行った。
BBMの試験結果に基づく両方式のトレードオフ
・ 1チャンネル QPSK
- 技術的には「はるか」の延長
- 高速デバイスの実現可能性が問題
→ その後の検討により、
高速デバイスの実現性に見通しがついた
・ 多チャンネル OFDM
- 各チャンネルのデバイスの速度は中程度でよい
- 1チャンネルQPSKに対してチャンネル数が増える分、電力重量
のリソースが必要
- 非線形デバイス(送信機)を通った後のチャンネル間干渉が
大きい
OFDM方式によるデータ伝送のBBM試験
以上より、1チャンネル QPSK変調方式を採用し、その技術成立性も見通しがついた
36
11. フロントローディング状況
3.フロントエンド部の円偏波分離器、MMIC HEMTデバイスの検討
Z
X
Y
平成16年度~17年度
・地上VLBI観測局や搭載用の他の周波数で実績のある技術を使った上で、円
偏波分離器、MMIC HEMTデバイスについて、ASTRO-Gで観測する周波数
での性能評価を行うために、BBMの製作を行った
BBM試験
・ 8,22,43GHzにおいてセプタム方式の円偏波発生器を試作し、
帯域内のおよび円偏波分離度を計測した
- 技術的には「はるか」の延長
- 高速デバイスが使用できるかが問題
・ 30-40GHzでカタログ品のある搭載用MMICデバイスの設計を基本
として、観測帯域の20-23GHz、および41-45GHzで使用できる
GaAsのMMICデバイスを試作し性能評価を実施
円偏波発生器BBM
円偏波分離器、およびMMIC HEMTデバイスについて、
所定の性能が得られ、搭載用の機器が製作できる見通しが得られた
BBM MMIC & data
大阪府立大、法政大による開発
MMIC HEMT & 22/43 LNA
37
11. フロントローディング状況
4.高速姿勢マヌーバ機能・CMG*
Z
X
平成13年度~高速姿勢マヌーバ制御アルゴリズムの検討
・シミュレーションにより、ASTRO-Gに要求される高速
スイッチング制御の実現性を複数のアルゴリズムを
用いて確認し、現在の姿勢制御則の基礎を構築
Y
*CMG : コントロールモーメントジャイロ
(Control Moment Gyro)
平成13年度 CMGの基本制御特性の評価
・我が国として技術蓄積が少ない衛星搭載用CMGに
ついて、Honeywell社の試験用CMGを用いて擾乱測定、
トルク特性測定等の基本制御特性実験を実施
平成19年度 CMGの選定
・Honeywell社製CMGとAstrium社製CMGについて詳細
検討を行い、主として出力トルクの制御精度の観点から
Astrium社製を選定
CMG基本制御特性評価実験
平成20年度 CMG使用部品の確認
・ 調達に先立ち,CMGに適用予定の部品情報の精査を実施
CMGによる高速姿勢マヌーバ制御の実現性に技術的な見通しが得られた
38
11. フロントローディング状況
5.高精度FOG-IRU*
Z
X
*FOG-IRU: 光ファイバジャイロをベースとした慣性基準装置
Y
平成14年度 高精度FOG技術方式選定
平成15年度 BBM・EM検討モデル試作試験
~18年度
EM検討モデル
(右:コイル外部/内部4式
下:光源部1式)
・目標ジャイロ性能(ランダムウォーク等)の達成
平成19年度 FOG EM試作/評価、IRU設計
・熱真空試験によるFOG性能検証
・光学部品のプロトン・γ線照射試験
・クリティカル部品の振動・衝撃試験
平成20年度 IRU製作/評価、認定(予定)
・IRU認定試験
・FOG部全体での放射線試験
・FOG部寿命試験(デモンストレーション)
全体を通じた信頼性確保の方策
・はるか搭載FOGの知見(放射線耐性)
・光通信部品の信頼性データ/検証手法
・れいめい・μLabsat搭載FOGの製造技術
・ロケット及び科学衛星用慣性基準装置の
信頼性/品質保証技術の活用
BBM, EMの試作評価により,FMの開発に移行で
きる見通しが得られた
光部品プロトン照射試験
DCDC電源振動試験
FOG-IRU FM外観(左:センサ部、右:エレキ部)
39
11.フロントローディング状況
6.軌道決定系
Z
X
Y
平成19年度~ 軌道決定アルゴリズムの詳細検討(継続中)
・高精度太陽輻射圧モデルの検討
・長楕円軌道における軌道決定技術を評価するため
GPS衛星の可視が軌道の特定箇所に集中する状況
における軌道決定精度を評価
・複数のGPSアンテナを使用した軌道決定アルゴリズム
の検証
*SLRA:衛星レーザ測距リフレクタアレイ
(Satellite Laser Ranging Array)
太陽輻射圧評価のための
256面ポリゴンモデル
平成19年度~ SLRA BBMの試作・試験
・ SLRA試作モデル(BBM)の製作、および機械環境試験
の実施
ASTRO-Gの要求を満たすSLRAの開発に関する、
技術的な見通しが得られた
SLRA試作モデル(BBM)
NICT, 一橋大との共同開発
40
12.開発計画
12-1.スケジュール
Z
X
Y
H20.6~7
宇宙開発委員会推進部会
開発移行の事前評価
H18.6.20
宇宙開発委員会推進部会
開発研究移行の事前評価
H18.9~10
メーカ選定
(RFP)H19.4
研究
開発研究
企画立案フェーズ
概念検討
H17.10~H18.4
『宇宙理学委員会評価』
・ミッション定義審査(MDR)
・システム要求審査(SRR)相当
開発
運用
実施フェーズ
計画
基本設計
詳細設計
製作・試験
決定
H19.7
プロジェクト発足
システム プロジェクト
詳細設計
基本設計
定義審査 移行審査
審査
審査
(SDR)
H19.4.5
(CDR)
(PDR)
H19.3.19
H22年3月
H21年3月
概念設計
運用
H24年度打上
41
12.開発計画
12-2.資金計画(1/2)
Z
X
Y
‰ ASTRO-G衛星および衛星運用地上系開発 120億円
‰ VLBIに必要な地上設備の整備を目的とした開発費*の設定 20億円
¾ リンク局10mアンテナの改修
¾ リンク局受信系、復調器、VLBI記録システムの広帯域化
(はるかでは128Mbps。ASTRO-Gでは、1Gbpsの伝送レートが必要)
¾ 高精度GPS軌道決定システム
など
*JAXA,NAOJ,ESA,NASA,KASI(韓国天文宇宙科学研究院)等による
総額100億円規模の整備計画を現在提案中
42
天体からの電波
12-2.資金計画(2/2)
衛星開発費
JAXA
約120億円
Z
X
天体からの電波
12.開発計画
天体からの電波
Y
テレメトリ
37 GHz
(1Gbps)
コマンド
VLBI地上設備費
JAXA担当分
約20億円
海外
リンク局1
40 GHz
基準信号
JAXA外
地上電波
望遠鏡群
リンク局
VLBIデータ記録
ドップラ取得
地上電波
望遠鏡
臼田 10 m
リンク局
臼田 64 m、
内之浦34m
地上系
運用局
衛星管制、QL,
姿勢運用ソフト
レーザ測距
JAXA SLR局
GPSデータ
JAXA
VLBI地上設備費
関係他機関
約80億円
海外
リンク局2
衛星
シミュレータ
GPS高精度
軌道決定系
他機関
SLR局
KASI,NAOJにより
製作中
相関局
国内外他機関
43
12.開発計画
12-3.実施体制(1/5)
Z
X
Y
JAXA実施体制
理事長
理事長
宇宙科学研究本部
宇宙科学研究本部
宇宙科学研究本部
宇宙科学研究本部 本部長
本部長
理事
理事 井上
井上 一
一
・宇宙科学研究本部の業務を掌理する
・宇宙科学研究本部の業務を掌理する
宇宙科学プログラムディレクタ
宇宙科学プログラムディレクタ
教授
教授 小野田淳次郎
小野田淳次郎
・本部長を補佐し、その命を受け、宇宙科学
・本部長を補佐し、その命を受け、宇宙科学
プログラムに関する業務を総括する
プログラムに関する業務を総括する
宇宙利用ミッション本部
連携・支援
ETS-VIII大型アンテナ
技術開発支援
宇宙科学研究本部内
専門技術組織
連携・支援
プロジェクトの技術
開発支援
構造・機構グループ
構造・機構グループ
連携・支援
ASTRO-Gプロジェクト
ASTRO-Gプロジェクト
ASTRO-G
プロジェクト
サイエンティスト
坪井昌人
プロジェクト共同研究員
・大学
・NAOJ
・NICT
研究開発本部
ASTRO-Gプロジェクトマネージャ
ASTRO-Gプロジェクトマネージャ
齋藤宏文
齋藤宏文
・プロジェクトチーム業務の統括
・プロジェクトチーム業務の統括
・衛星システム開発・運用
・衛星システム開発・運用
・上記に付帯する試験
・上記に付帯する試験
・上記に必要な施設・設備
・上記に必要な施設・設備
・プロジェクトの品質保証・安全管理
・プロジェクトの品質保証・安全管理
平成20年4月組織改正により各本部の組織名称を変更
誘導・制御グループ
誘導・制御グループ
熱グループ
熱グループ
宇宙輸送ミッション本部
追跡運用支援
安全・信頼性推進部
評価・支援
安全・信頼性に関する
チェック・提言
評価・支援
システムズ・エンジニアリ
ング推進室
・・・ ほか8グループ
コストを含めたプロジェクト推進
44
に関するチェック/提言
44
12.開発計画
12-3.実施体制(2/5)
Z
X
Y
衛星開発企業との責任分担
‰ ASTRO-Gプロジェクトのミッション達成の責任はJAXAが負う。
z
衛星システムの仕様をJAXAが決定し、衛星開発企業に衛星バス及び
ミッション機器の仕様を提示する。
z
衛星開発企業は、仕様に基づき衛星バス及びミッション機器の設計と製造を
行い、製造した物が仕様を満足することを試験などで立証する責任を有する。
・スペースVLBI技術はJAXAならびにNAOJが保有している技術であり、衛星開発企業が
責任を負うことができない。
・新規性の少ないサブシステムに関しては、メーカーに責任を持たせて開発を実施するが、
観測性能と密接に関わるサブシステムに関しては、JAXA主導の開発を実施する。
45
12.開発計画
12-3.実施体制(3/5)
Z
X
Y
評価体制
システム定義審査(SDR)における
外部評価実施の例
システム定義審査会(SDR)は、平成19年2、3月に12のサブシステム
分科会ごとの審査、3月19日に全体審査会が宇宙科学研究本部で
行われ、これらの審査会にはJAXA外部の専門家(*)も審査員として
参加した。
今後の審査会でも、JAXA外専門家を含む審査を行う。
(*)
NAOJ、NICT、大学
46
12.開発計画
12-3.実施体制(4/5)
他機関、国際協力
Z
X
国内の研究所、大学との協力
「はるか」プロジェクトでは、宇宙研とNAOJ(ミッション全般+相関局運用)との共同でミッション
を遂行した。ASTRO-Gではさらに強力な協力関係をもつ。さらに、「はるか」開始時と比較する
と、VLBI関係の大学拠点が、鹿児島大、山口大、岐阜大、北海道大、大阪府立大、法政大、
筑波大、一橋大、武蔵工大、防衛大、京都大、東京大、総研大など拡がっている。
Y
各大学
鹿児島大、山口大
岐阜大、北海道大
筑波大、大阪府立大、
法政大など
研究機関
国際協力
VSOP-2推進室
共同で
ミッション
遂行
JAXA
NICT, 国土地理院
など
関係機関等外部評価員
(NAOJ,NICTなど)
NAOJ
電波天文・VLBI
研究者コミニュティ
観測の提案
データの利用
電波望遠鏡の参加
VLBI観測機器開発
衛星の開発
共同利用の実施
宇宙科学研究本部
評価
ASTRO-G
プロジェクト
国際
協力
国外研究機関
天文台
米国(NASA,NRAO)
欧州(ESA,EVN)
豪州、韓国、中国、
南アフリカ、ロシア
世界の地上電波望遠鏡
+
スペースVLBI
ユーザー
47
12.開発計画
12-3.実施体制(5/5)
国際協力体制
Z
X
Y
EAVN
BEIJING
ENV
ENV
VLBA
YEBES
SRT
¥
ULMQUI
KUMING
MIZUSAWAA
KVN NOBEYAMA
YAMAGUCHI
TSUKUBA
KASHIMA
IRIKI
UCHIONURA
ISHIGAKI OGASAWARA
PERU
International Partners
•
•
•
•
•
•
VLBI 地上電波望遠鏡
JPL/NASA
リンク局
NRAO
相関器
EVN/JIVE
ATNF
China and Korea
And Individual Telescopes
LBA
( 4 countries, 5-stn tracking network)
観測に参加予定の電波望遠鏡
(14 countries, 32 telescopes)
(3 countries, 3 correlators )
48
48
13.リスク管理
Z
X
Y
(1)リスク管理方針
ASTRO-Gプロジェクトのリスクについては、衛星開発に係わる範囲で低減し、
衛星開発を確実に実行する
(2)リスク管理の実行
プロジェクトの開始から終了まで、継続的に以下のリスク管理を実行し、
フィードバックを図る
① リスクの識別
設計結果に基づく知見、既開発衛星からの知見、不具合情報システム、
信頼性解析手法、独立評価等からリスク項目を識別
② リスクの評価
発生可能性、影響度からリスクの大きさを数値化して評価
③ リスク項目への対処
許容できないリスクに対し対処策または代替策を準備、許容できるリスク
は監視を継続
④ リスク項目の監視
リスク項目の対処状況を監視し、リスク項目が完了基準を満たした場合は
完了とする。未完了のリスクについては、再度リスクの識別・評価を行う
49
13.リスク管理
13-1.技術リスク(1/3)
Z
X
Y
リスク項目
影響
開発研究段階までの処置
開発段階での計画
高い鏡面精度を要求する高精度9
m展開アンテナにおいて、十分な鏡
面精度が達成できない
〔カテゴリ3〕
劣化度合いに応じ
ては、高周波での
観測に影響が生じ
る
・BBMを用いた鏡面形成技術の評価を実
施した
・熱歪解析の実施
・EMの試作試験(機械・熱・放射線・RF特
性の詳細評価)
・EMの結果をFM詳細設計に反映
・熱歪解析の詳細化
・鏡面精度が十分に達成できない場合に
備えて、その他の要素によるアンテナ利得
の向上を図る
■関連フロントローディング:
「1. 高精度9m展開アンテナ」
放射線や温度サイクルにより、高精
度9m展開アンテナのRF特性が著
しく劣化する
〔カテゴリ3〕
ミッション後期の劣
化に応じて、高周
波での観測ができ
なくなる
・放射線環境の解析
・重要部材の材料特性評価(放射線、温
度)
・放射線環境解析の詳細化
・材料特性評価(放射線、温度)の継続実
施
■関連フロントローディング:
「1. 高精度9m展開アンテナ」
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの
カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
50
13.リスク管理
13-1.技術リスク(2/3)
Z
X
Y
リスク項目
影響
開発研究段階までの処置
観測信号用の通信において、高周波か
つ広帯域データ伝送に起因する原因に
より、通信回線の安定性が損なわれる
〔カテゴリ2〕
リンク局周辺の降
雨時には運用制
限が発生する
・通信回線成立性の詳細検討
・通信システムの信号伝送損失の低下を
図る
高高度での高精度軌道決定において、
十分な軌道決定精度が得られない
〔カテゴリ3〕
軌道決定精度の
劣化に応じては、
観測制限が発生
する
・GPS受信機については、軌道上実績
のある機関・メーカを検討
・SLRAのBBM開発
・2つの独立した手法により、軌道決定
アルゴリズムの検証を実施
・SLRAのEM試験、および、それに基づい
たFM製作
・軌道決定アルゴリズムの詳細設計及び
評価
・GPS受信機については、「衛星開発にお
ける海外部品・コンポーネント品質向上ガ
イドライン」に基づき適切なベンダ管理を実
施
■関連フロントローディング:
「6. 軌道決定系」
新規国内開発のFOG-IRUの開発過程で
技術的問題が生じる
〔カテゴリ3〕
・スケジュールお
よびコストへの影
響
・軌道上での精度
劣化が生じた場
合には観測制限
が発生する
・BBM、EMの試作試験
・代替品の調査、検討
開発段階での計画
・EM評価試験の継続実施
■関連フロントローディング:
「5.高精度FOG-IRU」
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの
カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
51
13.リスク管理
13-1.技術リスク(3/3)
Z
X
Y
リスク項目
影響
開発研究段階までの処置
国内にて初の本格使用となるCMGを用い
た姿勢制御系の開発過程で技術的問題
が生じる
〔カテゴリ3〕
高周波観測
において観
測制限が発
生する
・CMGを用いた高速マヌーバ制御について
複数の制御則を検討
・CMG基礎制御特性の評価
・CMGの代表ベンダー(2社)の製品仕様の
精査と選定
・CMG使用予定部品の精査と評価
開発段階での計画
・「衛星開発における海外部品・コンポー
ネント品質向上ガイドライン」に基づき適
切なベンダ管理を実施
・高速マヌーバ制御則の詳細検討、および、
姿勢系サブシステム試験での確認
■関連フロントローディング:
「4. 高速マヌーバ機能・CMG」
高レベル放射線の軌道を通る為、
部材の劣化により、性能を発揮できなくな
る
〔カテゴリ2〕
劣化の度合
いに応じて、
観測期間が
短くなる
・放射線環境の解析
・放射線強度の強い部品の選定
・重要部材の放射線試験の実施
・放射線試験の継続実施
・放射線耐性を考慮した回路設計
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの
カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
52
13.リスク管理
13-2.マネージメントリスク
Z
リスク項目
X
Y
開発研究段階までの処置
開発段階での計画
参加協力の国内外機関の予算獲得状況が悪
化して、スペースVLBI観測支援体制が整備さ
れない
〔カテゴリ1〕
・プロジェクト側と他機関の関係者との密な連携、広報活動。JAXAトップレベルから、各関連機関
(NASA、ESA、各地上電波天文台)への協力を要請
大学と連携した開発体制を敷いている事によ
り内在する、フロントエンド系の開発リスク(技
術、スケジュール)
〔カテゴリ2〕
・JAXAによる工程・製造管理支援
・FM製造は衛星経験の有るメーカに委託する
海外のリンク局・地上VLBI観測局が確保でき
ない
〔カテゴリ1〕
・リンク局・地上VLBI観測局として使用可能な局の調査
・複数の機関への支援要請を引き続き継続する
・JAXAでリンク局の新設を検討
米国の輸出規制や、契約メーカーの方針、財
務状況の変化などで、搭載機器の調達に支障
が出る
〔カテゴリ1〕
・海外調達品をノミナルにする機器に、国産品などによるバックアップも考える
・海外メーカーの客観的な情報収集に努める
外的要因(他のミッションでの不具合など)によ
り安全性、設計基準が変わる
〔カテゴリ1〕
・明らかになった時点でスケジュール及びコストのインパクトが最小になるように対策を実施
H-IIAロケット打上げの遅延
〔カテゴリ1〕
・H-IIA打ち上げの遅延に備え、代替ロケットを想定し、それらのロケットに適合できる衛星設計要
求とする。また、打ち上げ遅延の状況に応じた対応を取る計画とする。
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの
カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
53
14.まとめ
Z
X
Y
‰ 開発研究移行審査での助言に基づき、成功基準を明確化した
‰ 世界初を目指す先端的な取り組みを行うための挑戦的な新規技術の
開発を行うと共に、既存技術を活用し、低コスト化と信頼性向上を図った
衛星システムを選定した
‰ 新規開発技術については、開発研究段階までに、試作・地上試験および
解析等によるフロントローディングを実施し、技術の成立性・妥当性を確認した
‰ 開発研究段階までに識別されたリスクに対し対策を講じた。また、以上の
作業結果を反映して、開発計画(開発資金、スケジュール、実施体制)、
リスク管理計画を更新した
以上のように、開発研究段階での計画は順調に進んでおり、ASTRO-Gの開発段階
への移行は可能である。
54
付録
Z
X
Y
55
付録
ASTRO-Gにおける既存技術の継承による
低コスト化と信頼性向上の方策の例
補足説明1
Z
X
Y
9 「はるか」でスペースVLBIに必要な工学的技術の検証に成功した。この成果を
最大限利用する
9 「きく8号(ETS-VIII)」の展開アンテナ開発の成果を最大限利用する
9 電波望遠鏡を高感度化するために、宇宙用冷凍機を搭載する。宇宙での冷却
技術は、「すざく」、「あかり」、SMILESなどの成果や教訓を反映する
9 国際スペースVLBI観測運用システムについては、「はるか」プロジェクトで実績
のあるシステムを導入する
9 「はやぶさ」、「PLANET-C」、「WINDS」などのJAXA衛星のバス技術を活用する
56
付録
システム選定結果(詳細)1/5
補足説明2
Z
X
サブシステム
性能要求
技術方式
新規/既存
国内/海外
高精度9m展開ア
ンテナ
(展開機構)
口径9m相当の
大型アンテナの
展開
ラジアルリブトラ
ス展開・モジュー
ル方式(7モュー
ル構成)
既存
国内開発
「きく8号(ETS-VIII)」
(14モジュール)
1モジュール
EM
→PFM
・「きく8号(ETSVIII)」による軌道上
実証
・技術踏襲による信
頼性向上とコスト
低減
高精度9m展開ア
ンテナ
(メッシュ鏡面)
43 GHz帯での科
学観測に必要な
鏡面精度を有す
る大型アンテナ
の鏡面形成
放射リブ・フープ
ケーブル方式
新規
国内開発
BBMモデルによる地上
実証試験
1モジュール
EM
→PFM
BBMによる実証試
験および解析によ
り、鏡面精度要求
値を満足できる見
通し
フロントエンド部
(冷凍機系)
クライオスタット
の特定領域
(22GHz, 43GHz
LNA)を30Kまで
冷却
2段式スターリン
グサイクル冷凍
機
既存
国内開発
「あかり」
SMILES(予定)
EM
→FM
「あかり」での軌道
上実績
フロントエンド部
(43G観測系)
・観測帯域41-45
GHz
・LNA雑音温度
50K以下
・MMIC HEMTを
利用した低雑音
増幅器
・冷却による受信
機雑音温度の低
下
新規
国内開発
搭載冷却LNAについて
はSMILES
43GHz受信システムは
地上天文用フロントエ
ンド
EM
→FM
MMICを利用した増
幅器作成による、
回路構成の簡略化、
増幅器の小型化、
低消費電力
Y
HEMT :高電子移動度トランジスタ
LNA :低雑音増幅器
主な実績
開発方式
選定理由など
57
付録
システム選定結果(詳細)2/5
補足説明2
Z
X
Y
サブシステム
性能要求
技術方式
新規/既存
国内/海外
フロントエンド部
(22G観測系)
・観測帯域20.622.6
・LNA雑音温度40K
以下
フロントエンド部
(8G観測系)
観測信号系
主な実績
開発方式
選定理由など
・MMIC HEMTを利
用した低雑音増
幅器
・冷却による受信
機雑音温度の低
下
新規
国内開発
搭載冷却LNAにつ
いてはSMILES
22GHz受信システ
ムは地上天文用
フロントエンド
EM
→FM
MMICを利用した
増幅器作成による、
回路構成の簡略
化、増幅器の小型
化、低消費電力
・観測帯域8-8.8
GHz
・LNA雑音温度60K
以下
・HEMTトランジス
タによってLNAを
構成
・通信用X帯LNAと
同様の方式
新規
国内開発
X(7GHz)帯の搭載
用LNAは、通信用
として多くの実績
あり
EM
→FM
X帯通信で実績の
ある受信システム
・第1 IF 8GHz帯、
ベースバンド1~2
GHz, 128/256MHz
帯域, 2/1bit 2chサ
ンプリング, 1Gbps
のデータ送信。
・アップリンク信号
に準拠した動作。
ミリ波周波数変換
器、周波数チュー
ニング用シンセサ
イザ、高速A/D変
換器、1GbpsQPSK
変調器、高位相安
定LO信号系
新規
国内開発
システム構成は
「はるか」を踏襲
EM
→FM
「はるか」の機器構
成をベースに、
1Gbpsのダウンリ
ンクレート、広帯域
システムに対応
58
付録
システム選定結果(詳細)3/5
補足説明2
Z
X
Y
サブシス
テム
性能要求
技術方式
新規/既存
国内/海外
主な実績
開発方式
選定理由など
電源系
(制御部)
・電源系の制御
・発生余剰電力の消費
50V非安定バス、
Liイオンバッテリ
3系統、アナロ
グ・デジタル併用
シャント方式
既存
国内開発
従来衛星全般
PFM
・従来衛星で使用実績のあ
る方式
・Liイオンバッテリ制御は「は
やぶさ」設計を踏襲
電源系
(太陽電
池パドル)
・日照時の電力発生
・UV、放射線耐性
・温度サイクル環境下
における構造的耐性
・回転式パドル
3接合セル
展開パドル
既存
国内開発
「きずな」
PFM
コスト削減のため、すでに開
発・設計が終了しており、さ
らにASTRO-Gの要求に適
合している「きずな」の太陽
電池パドルを採用
電源系
(バッテリ)
・日陰時の電力供給
・ASTRO-Gの軌道上で
の、充放電サイクル
への適応
Liイオンバッテリ
既存
国内開発
「はやぶさ」
PLANET-C(予
定)
PFM
・実装面積、質量の点で搭
載性に優れた方式
・「はやぶさ」で搭載実績あり
推進系
・3Nスラスタ×8本
・比推力
連続200秒以上
パルス150秒以上
1液ブローダウン
方式(ヒドラジン)
既存
国内開発
海外品調達
従来衛星全般
PFM
シンプルな構造かつ低コスト
であるため、1液式を採用
59
付録
システム選定結果(詳細)4/5
補足説明2
Z
X
サブシステム
打上から軌道
上での機械環
境維持
CFRPスキンハ
ニカムパネル構
造方式
既存
国内/海
外
国内開発
熱制御系
各部の熱制御
(ヒータ、温度セ
ンサ、熱制御材、
ヒートパイプ、
HCE)
熱制御材を用
いた受動型熱
制御方式+
HCEによる温度
モニタとヒータ
制御
既存
国内開発
従来衛星全般
FM(一部PFM)
一部はMTM/
TTM試験後、
リハービシュ
従来衛星で使用実績のあ
る方式
熱制御系
(放射率可変型
熱制御デバイ
ス)
日陰時の放熱
を抑え、ヒータ
電力を節約し
電源容量を削
減
放熱面に温度
に応じて放射率
が変化する熱
制御デバイス
(SRD)を使用
既存:放射
率可変技術
新規:表面
多層膜
国内開発
「はやぶさ」
「れいめい」
EM
→PFM
・機構部を持たず信頼性が
高い
・「はやぶさ」、「れいめい」
でその有効性が実証された
データ処理系
(DHU,PIM,DR,
TCIU,OBS-RT)
データの符号
データバス方式
化、記録、伝送、
コマンドの実行
既存
国内開発
「はやぶさ」
PLANET-C(予
定)
PFM
従来衛星で使用実績のあ
る方式
バス通信系
(マルチモードト
ランスポンダ)
受信、復調、変
調、送信、測距
既存
国内開発
SDS-1(予定)
PFM
・今後のJAXA衛星の標準ト
ランスポンダとして、研究
開発本部にて開発
・SDS-1で軌道上実証予定
構造系
(衛星構体パネ
ル)
性能要求
Y
技術方式
Sバンド帯によ
る受信復調、変
調送信、測距
新規/既存
主な実績
開発方式
選定理由など
従来衛星全般
PFM
MTM/TTM試
験後、リハー
ビッシュ
・従来衛星で実績のある構
造方式
・CFRPスキンとし熱歪を抑
えた
60
付録
システム選定結果(詳細)5/5
補足説明2
Z
X
サブシステム
性能要求
技術方式
姿勢系
(RW,MTQ,
STT,GAS,
AOCU等)
精度 0.005度の3軸
姿勢制御
・STT, IRUによ
る高精度姿勢
計測
・RWによる高精
度姿勢変更
既存
海外品調達
・AOCU:
PLANET-C(予定)
・RW:「ひので」、
「すざく」、「きずな」
FM (一部
PFM)
・多くの搭載実績(搭載予
定を含む)
・ベンダー契約前解析の
結果による
姿勢系
(CMG)
大型柔軟構造物の
振動を抑制しつつ、
15秒で3°(衛星
MOIにより変動)の
高速姿勢変更
・CMGを用いた
高速姿勢変更
・振動が励起し
ない姿勢制御
則
既存:
H/W
新規:
アルゴリズ
ム
海外品調達
仏の災害監視衛
星Pleiadesで搭載
予定(H21年打上
予定)
EM
→FM
・RWだけでは、角運動量
が不足
・コスト、性能、ベンダー
契約前解析から総合的
に判断
姿勢系
(FOG-IRU)
・角速度計測範囲:
±10deg/sec
・ランダムウォーク:
0.0005 deg/rt-hr
光ファイバジャイロ
(FOG)をベース
とした慣性基準
装置(IRU)
新規
国内開発
なし
BBM
→EM
→FM
JAXA研究開発本部にて
試作試験が先行して実施
されており目標の性能を
満足する見込み
GPSR+SLRA
新規
海外品調達
(GPS受信機)
・「きく8号(ETSVIII)」でSLRを 用
いた高精度軌 道
決定が実現
・GRACE等海外衛
星でのGPS軌道
決定
EM
→FM
(一部BBM
制作)
・近地点近傍での軌道決
定精度10cm以下は
GPSにより達成出来る
見通し
・遠地点側の軌道決定を
SLRデータで補なう。
Y
軌道決定支
高高度軌道での
援系
10cm程度の軌道
(GPS受信機、 決定精度
GPSアンテナ、
SLRA)
AOCU :姿勢軌道制御ユニット
RW :リアクションホイール
FOG :光ファイバジャイロ
新規/既存
国内/海外
国内開発
(その他)
MTQ :磁気トルカ
STT :スタートラッカ
IRU :慣性基準装置
主な実績
GAS :磁気姿勢計
CMG :コントロールモーメントジャイロ
開発方式
選定理由など
SLR :サテライトレーザレンジング
61
付録
位相補償観測が必要な理由
補足説明3
Z
X
Y
位相補償観測とは比較的強度の強い基準天体と観測天体の2つの天体の観測を行い、
基準天体の信号を基準にして観測天体の信号を補正する手法である。この観測手法を
行うことにより、地球大気等の影響で星が瞬く効果をキャンセルアウトすることができ、
結果として検出感度の向上が見込める他、2天体間の距離を精度よく決定できる。
この観測手法の効果は絶大で、位相補償観測を行うための条件(近くに較正天体があること)を満たした
天体に対しては、以下の効果をもたらす。
観測天体
1.
2桁以上の検出感度の向上
2.
天体の絶対位置の保証
参照天体
ASTRO-G衛星
参照天体
観測時間
地上電波望遠鏡群
姿勢変更
位相補償観測無し
位相補償観測有り
観測天体
観測時間
62
付録
VERA・ALMA・ASTRO-G
補足説明4
Z
X
観測周波数帯
輝度温度感度
空間分解能
位置測定精度
地上の電波望遠鏡群と協力してスペース
VLBIを構成する。非常に高い空間分解能に
より、ブラックホール極近傍を直接撮像し、ブ
ラックホール重力場の検証などを行う
8G,22G,
43GHz帯
10,000,000 K
(対100m 鏡、
分解能 40 μ
秒角)
40μ秒角
等価直径は
、35,000km
約20μ秒角
水沢、入来、小笠原、石垣島の4つの観測局
によりVLBI観測を行う。非常に高い位置測
定精度により、銀河系内の電波天体の距離
と運動を明らかにする
2G, 8G, 22G,
43GHz帯
1,000,000 K
(分解能 600
μ秒角)
600μ秒角
等価直径は
、2,300km
10μ秒角
チリの標高5000m平原に80台のアンテナを
配置させ干渉計を構成し、ミリ波サブミリ波
による観測を行う。高い空間分解能と非常に
高い感度により、銀河や惑星系の誕生、生
命につながる物質の進化の解明などを行う
31.5 GHz
~950GHz
(ミリ波
サブミリ波帯)
< 10 K
10,000μ秒
角
等価直径は
、18.5km
Y
ASTRO-G
VERA
(NAOJ)
ALMA
(NAOJ)
※現在整備中
VERA (NAOJ )
目的
ASTRO-G
衛星の軌道決定
精度, 感度、天体
の強度に依存
非常に高い位置
測定精度に特化
したシステムを採
用
1,000μ秒角
天体強度等の
条件による。
ALMA(NAOJ )
63
付録
最もブラックホールに肉迫した領域の探査
補足説明5
Z
X
Y
観測できる現象から、現象の本質へ
活動銀河核でおこる極限状態の本質は活動銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールとそこへ落ち込む
ガスが形成する降着円盤であり、これらにより莫大なエネルギーが生成されるとともに、超相対論的な流れ
であるジェットが生成されていると考えられている。しかし残念ながら今日まで、空間分解能が不足している
という理由でエネルギー解放前の円盤やエネルギー解放後のジェットしか観測することができず、現象の本質
であるエネルギー解放の現場の観測ができなかった。ASTRO-Gがもたらす約40マイクロ秒角という
高空間分解能観測は、この領域 (重力半径の10-100倍程度)に直接撮像という手段によって肉迫することが
可能で、このエネルギー解放メカニズムの解明に大きく貢献できることが期待される。
ASTRO-Gで探る解放されたエネルギー
ASTRO-Gで探るエネルギー源
セントラルエンジンで生成されたジェットは
ものによっては光速近くまで加速され、
メガパーセクもの距離を伝播する。この相対論的
ジェットの観測はVSOPを始め、様々な波長、
様々な空間分解能で行なわれてきたが、VSOP-2
では史上最高の空間分解能を武器に、この領域
の研究の推進に貢献する。
地上VLBIで行なわれてきた水メーザー
円盤の観測やVSOP等で行なわれてきた
プラズマ円盤の観測で存在は示されて
きた。ASTRO-Gでも引き続きこの領域の
探査を行ないセントラルエンジンへの
エネルギー供給効率を探る
重
倍の
0
0
1
径
力半
ASTRO-Gで初めて探査可能になる領域
64
付録
ジェットの「超根元」の磁場の
空間構造の探査
補足説明6
Z
X
Y
ASTRO-Gでは下記の2手段により、ジェットの超根元における磁場の天球面に投影された成分、
視線に平行な成分の推定を行い、磁場の3次元的な空間構造の探査を行う
相対論的なジェットからの放射はシンクロトロン放射によることがわかっている。シンクロトロン放射は
高エネルギー電子が磁場の周りを旋回運動する際に放射され、観測される偏波と磁場の向きには強い
相関がある。ASTRO-Gでは両偏波受信機を搭載し偏波観測が可能となることにより、ジェットの超根元
での偏波の向きを特定し、天球面に投影された磁場の向きを明らかにする。
ジェットから放射された強く偏波した電波は、ファラデー回転によりその偏波角を変える。偏波角の
変化量は波長の2乗に比例するとともに、伝播領域の磁場の視線成分への感度を持つ。多周波スペ
クトル観測と両円偏波観測が可能なASTRO-Gではこの現象を利用して偏波角の変化量を測ることで
ジェットの超根元における磁場の視線成分の推定を行う。
物理量
磁場の投影成分
VSOP-2 観測量:
観測周波数 1.
観測周波数 2.
放射伝播の素過程
放射機構の素過程
各波長での偏光の強さと向き
3次元磁場構造の推定量とモデルとの比較
磁場の視線成分
65
65
付録
ジェットの「超根元」の
磁場強度の探査
補足説明7
Z
X
Y
ASTRO-Gでは以下の、ジェットの超根元における、磁場強度の探査を行う
シンクロトロン放射において、ある程度磁場、電子密度が大
きくなると、放射係数よりも吸収係数の方が大きくなる。この
吸収は波長が低い方が大きいために、観測されるスペクト
ルに折れ曲がりが現れる。この折れ曲がりのピークは磁場
の強度と強く相関があるために、これを求めることにより磁
場強度の推定が可能となる。ASTRO-Gではこのピークを求
めるための多周波スペクトル観測が可能である。この場合
にも上記の場合と同様に絶対位置の精度を補償するための
位相補償観測が必要となる。
電波強度 (Jy)
折れ曲がり周波数 → 天体の年齢が分かる
8.4 22
43
周波数 (GHz)
折れ曲がり周波数 → 吸収物質の存在が分かる
電波強度 (Jy)
高エネルギー電子が磁場の周りを旋回運動する際におこる
シンクロトロン放射での放射効率は磁場の強度および電子
のエネルギーの2乗に比例する。エネルギーの高い電子ほ
ど早く冷え、エネルギーの低い電子ほどゆっくり冷える(非熱
的プラズマの放射冷却)ので観測されるスペクトルに、この
違いに対応した特徴が現れる。多周波スペクトル観測が可
能なASTRO-Gではこの特徴を調べることにより、磁場強度
の推定を行うことが可能となる。また多周波での観測データ
を高い精度で重ね合わせる為には、絶対位置の精度を補償
できる位相補償観測が必要となる。
8.4 22
43
周波数 (GHz)
66
付録
星形成領域での3次元ガス運動の把握
補足説明8
Z
X
◇ 星形成領域のメーザで運動を調べる。
Y
・ 分子放射の静止周波数に対しての周波数ずれを計測
→ ドップラー効果により視線方向の速度が分かる
これは、VLBIでなくても基本的に計測可能
・ 複数回観測することにより、メーザの位置の動きを追う
→ 視線に垂直方向の動きを計測する
観測の位置精度が必要なため、VLBIによる高空間分解能観測が必須
メーザスポットと動き
動かない基準となる遠方の電波源を参照しながら観測する必要があるため、位相補償観測が必要
・ スペースVLBIによってさらに高精度計測が可能
→ VLBIよりも更に高分解能観測が可能。メーザの動きを高精度に捉えることが可能
22.235 GHz
(V=0km/s)
遠ざかっている
近づいている
H2O メーザスポットの線スペクトラム
VLBIで計測したW51のメーザの運動。
1999年に8ヶ月の間で5回観測した結果
(Imai 1999)
67
付録
用語説明
Z
X
Y
・メーザ(MASER) :Microwave Amplification by Stimulated
・JAXA :宇宙航空研究開発機構
Emission of Radiation
・ASTRO-G :JAXAの天文衛星シリーズ(ASTRO)の7機目
誘導放出によるマイクロ波増幅
・VERA :VLBI Exploration of Radio Astrometry
・ALMA :Atacama Large Millimeter/submillimeter Array ・偏波 :電磁波における電界の向き
・相関局 :VLBI観測データ処理に必要となる相関処理を ・秒角 :1秒角は1/3600[deg]
・NAOJ :国立天文台
行うための専用の大型計算機(相関器)を
(National Astronomical Observatory of Japan )
有する施設
・リンク局 :ASTRO-Gへ原子時計準拠の高精度基準信号 ・ETS-VIII :技術試験衛星VIII型。「きく8号」
を送信し、ASTRO-GのVLBI観測データを受信 ・BBM :Bread Board Model(試作試験用モデル)
・EM :Engineering Model(エンジニアリングモデル)
する地上局
・PM :Prototype Model(プロトタイプモデル)
・運用局 :ASTRO-Gに対して、コマンド送信、テレメトリ
・FM :Flight Model(フライトモデル)
受信、測距を行う地上局
・PFM :Proto Flight Model(プロトフライトモデル)
・VLBI :Very Long Baseline Interferometry
・MTM :Mechanical Test Model(構造試験モデル)
・スペースVLBI :Space VLBI
・TTM :Thermal Test Model(熱試験モデル)
・VSOP :VLBI Space Observatory Programme。
・RFP :Requirement for Proposal(メーカ選定)
「はるか」を用いたスペースVLBI計画
・SDR :System Design Review(システム定義審査)
・VSOP2 :ASTRO-Gを用いたスペースVLBI計画。
・PDR :Preliminary Design Review(基本設計審査)
VSOPの次の計画
・CDR :Critical Design Review(詳細設計審査)
・RF :Radio Frequency (~観測周波数)
・Galileo :EUにより開発中の衛星測位システム
・EOL :End of Life。衛星寿命の末期
68
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