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子どものいのちを守るために(PDF 2.27MB)

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子どものいのちを守るために(PDF 2.27MB)
事故予防ガイドブック0805.qxd 09.2.13 9:24 AM ページ 1
事故予防ガイドブック0805.qxd 09.2.13 9:24 AM ページ 2
子どものいのちを守るために
*
幼い子をもつ親にとって一番恐いのは、わが子が病気になったり、
事故や事件に巻き込まれるなど、いのちの危険にさらされることではないでしょうか。
普段はこのような「縁起でもない」ことはあまり考えず、
赤ちゃんの寝顔を見ながら様々な夢を託したくなりますが、
INDEX
それも、
「安全・安心な環境」があってこそ。
安全で安心できる時間と空間をつくりだし、そこで楽しく過ごす、
子どものいのちを守るために………………………………………3
事件・事故を
「不安」だけで見ない…………………………………………4
見通しをたてた子育てを ……………………………………………………5
「事故」をさまざまな視点でとらえる ……………………………………7
事故は親だけの責任ではない………………………………………………8
column ものづくりの立場から住宅内の事故を見直してみる………………9
そのかけがえのなさを感じながら、子どもの成長を見守ることが、
わたしたち親が、子どもたちのためになすべきことではないでしょうか。
・
■第5の欲求
自己実現の欲求
「自分の生き方を確立したい」
■第4の欲求
・
自我の欲求
「よりよい子育てや生き方がしたい」
*家庭内の事故を防ぐ
住宅内の事故予防 ここに注意 …………………………………………10
室内環境 ここをチェック …………………………………………………11
column CO・OP共済でもこんな事故が報告されています………………13
応急処置と救急時の対応 …………………………………………………14
*屋外での事故から子どもを守る
外出時の事故予防…………………………………………………………… 16
事故を防ぐために……………………………………………………………18
*災害から子どもを守る
他人事ではない、災害被害 ………………………………………………20
生きた情報が支えになる …………………………………………………21
CO・OP共済からのお知らせ ……………………………………………22
・
■第3の欲求
親和の欲求
「仲間たちと楽しく子育てしたい」
・
■第2の欲求
安全の欲求
「安全・安心なところで子育てしたい」
・
■第1の欲求
生理的欲求
「衣食住を満たしたい」
[マズローの欲求の5段階の図]
アメリカの心理学者マズローは、人間は衣食住といった生きているうえで必要な「生理
的欲求」が満たされると、
「 安全の欲求」がわき、次に集団に帰属したいという「親和の欲
求」、集団の中で認められたいという「自我の欲求」、
そして、
最終的には自分の力を発揮
して向上したいという
「自己実現の欲求」に至るという欲求段階説を唱えました
(図参照)
。
これを子育て環境に当てはめると、子育ての仲間をみつけたい、
そのなかで子育てした
いというのは「親和の欲求」、子どもにしつけや学習習慣を身につけさせたり、
自分の子育
てする力をアップさせたいというのは「自我の欲求」
を満たすものということが言えるでしょ
う。
こうした子育ての欲求も、日々の暮らしの安全・安心があってこそ。衣食住を満たす生
理的欲求や安全の欲求は、人が生きていくうえでの基礎となる大切な欲求といえます。
2
3
事故予防ガイドブック0805.qxd 09.2.13 9:24 AM ページ 4
赤ちゃんのための
事故予防ガイドブック
子どものいのちを守るために
事件・事故を「不安」だけで見ない
子育てしている親たちは、わが子を
今、
産むまで、子どもというものに接し
して転んだり転落したりします。
なるような情報が、今、必要とされている
のではないかと考えました。
たことがほとんどなかったとも言われてい
りたそうなことを想像しながら、少し引い
うにして防ぐかについて考えるきっかけに
が生きていくうえで、何一つリスク
人 がない状態…というのは、ありませ
ん。
見通しをたてた子育てを
その時期の子どもがやりそうなこと、や
「ちょっと目を離したすきに、子どもが転
わたしたちは親になり、生まれて初めて
ます。そのため、経験も知識もゼロの状態
たところからフロア全体を見渡して、危険
んでケガをしてしまった」といった軽症の
赤ちゃんを腕に抱いたとき、喜びと同時に
から、子育てを始めている人がほとんどの
がないかチェックする習慣を日ごろから身
事故から重大事故、また、事故ばかりでは
今まで感じたことのなかった重さを実感し
ようです。
につけておくことが有効です(具体的なポ
なく、夫の会社が倒産し家族がみんな路
ました。それは、
「わたしは一生この子の
そのため、ちょっとでも何かあると、つ
頭に迷ってしまった…、台風による水害で
親なのだな」
「親であることからは、逃げ
い「パニック」になってしまうようです。
建てたばかりの家が水に浸かってしまった
られないのだな」という覚悟の重さでもあ
しかし、事故に関しては、できるだけ冷静
…等々、いつどこで、何が起こるかわかり
ったのではないでしょうか。
に対応を考えることが予防につながるとい
子どもを育てることから逃げないという
ません。
イントはP10参照)
。
親の環境・心境の変化も
事故につながる…
お母さんたちの話を聞いていると、事故
うことをおさえておいてください。
各地で起こる事故や事件、災害のニュー
ことは、
「これから先どうなるんだろう?」
まず、おおまかな子どもの発達と環境の
になりそうなときは、夫とけんか中で考え
スを見ながら「とても他人事とは思えない」
というばく然とした「不安」から逃げない
変化をイメージしておくことが、子どもの
ごとをしていた、気がかりがあった、第2
と感じる人は少なくないでしょう。しかし、
ということでもあります。
事故予防の大きな助けになります。
子妊娠中で自分のことで頭がいっぱいだっ
た等々、
「普段と違っていた」
「気持ちが揺
子どもは発達の過程で必ず「やること」
最近はそうした「不安」につけこんで、下
「この子に何かあったときは、最後まで守
世話な好奇心を満たし、不安を煽っている
りぬく」
があり、そのときに事故が起こりやすくな
れていた」
「油断していた」という人が少
だけの内容の報道も少なくありません。
「この子が何かしでかしたときは、最後ま
ります。例えば、
「もうすぐ寝返りをうつ
なくありません。
で責任をとる」
かな?」という時期にベビーベッドの柵を
そのため、事故が起こると「わたしがも
テレビをつけただけ、ネットをつないだ
だけ、新聞を広げただけで、そんな情報に
という「心構え」のようなものを、わた
しないで寝かせていたら、寝返りをうった
っとちゃんとしていれば…」と自分を責め
さらされてしまう昨今ですが、そうした情
したち親は、子どもの誕生から少しずつつ
拍子に転落してしまいます。赤ちゃんは指
る人が後を絶ちません(P8、9を参照)
。し
報から「わが身とわが子を守り」
、
「必要な
くりながら「親」になっていくのではない
先が動くようになり、ものをつまむように
かし、人が生きていくなかで、環境の変化
情報を選ぶ」ことも、この情報化社会にお
でしょうか。
なると、それを口に持っていきます。その
やこのような気持ちの浮き沈みの波がある
時期にタバコや小さなおもちゃなどが手の
のは当然です。ましてや家族の真ん中に赤
届くところにあると、誤飲につながります。
ちゃんがいるような家庭であれば、大人だ
また、幼稚園から小学校低学年ぐらいの子
けで暮らす以上に(喜びや楽しいことも多
どもは、
「やっちゃだめ」といったことを
い反面)
、ささいないさかいや感情のずれ
やりたがる時期です。
が生じてしまうのが普通です。
いては必要と言えそうです。
子どもを育てるという
「心構え」
では、どのような情報が必要な情報なの
でしょうか。わたしたちは「事故や事件は
その気持ちを封じ込めて、一人がまんを
大人に比べ頭が重いため、バランスを崩
起こるもの」としてとらえ、それをどのよ
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赤ちゃんのための
事故予防ガイドブック
子どものいのちを守るために
「事故」をさまざまな視点でとらえる
重ねるのではなく、
「今日はどうもいつも
いるのはわたしだけではなかったんだ」と
の調子が出ないから、言動には気をつけよ
う」とか、
「気持ちがざわつくな」と察し
分析すれば、防ぐことができた事故がかな
気づくだけで、だいぶ気持ちのもちようが
40 年以上前から、日本における小児の
死亡原因の第1位は「不慮の事故」
変わってきます。
りあるのではないかという観点から、近年、
です。そして、死亡事故1件の背景には、
小児科医の世界では、事故を避けられない
ながら、
「車で出かけるのはやめて、買い
先輩のお母さん、お父さんから、何気な
入院が必要なケースが40件、外来で診察し
ものではなく、
「予測ができて予防が可能
物は歩いていける八百屋ですまそう」
「公
いけれど、ためになる具体的なアドバイス
たケースが4000件、家庭で処置したケース
なこと」と位置づけ、重要な健康問題とし
園に行く時間を少しずらしてみよう」とい
をもらうことで心が軽くなるものです。身
が10万件、無処置ですんだ軽い事故が19万
て取り組んでいこうという動きが出始めて
うようにセルフコントロールするよう心が
近に助けてくれる人、子育ての先輩や一緒
件あったのではないかと考えられていま
います。
けることも大切です。
に子育てする仲間がいることで、親として
す。
の心構えが育ち、余裕をもった子育てがで
だからこそ、
子育ての仲間が必要
具体的には以下の4つの事故について優
こうした事故に関するデータを収集し、
先的に取り組んでいます。
きるようにもなります。
優先して取り組む事故
ぜひ、そんな子育てコミュニティづくり
にあなたも参加してください(P20、21参
子育ては「イベント」ではありません。
照)
。
安定した当たり前の日常のなかで、衣食住
を満たし、
「ぼくは、わたしは安全で安心
できる環境のなかで愛されて育っているん
(1)重症度が高い事故
(ちょっとしたかすり傷より、
溺水や、
死に至りやすい交通事故等の対応を優先する)
(2)発生頻度が高い事故
だなあ」という実感を子どもたちに伝える
(誤飲等あちこちで起こっている事故への対応を急ぐ)
作業といえます。
そのために、親としての心構えや先々を
(3)増加している事故
(車中での事故など、
社会の生活様式の変化により
増えている事故への対応を急ぐ)
見通す視点、自分の状態を客観的に知って
対応する余裕が必要ということを書きまし
たが、赤ちゃんを産んだばかりの新米のお
(4)具体的な解決方法がある事故
(車の事故なら「チャイルドシートを正しく着用する」など、
すでに解決方法がわかっている事故への対応を急ぐ)
母さん、お父さんにすぐにそれらができる
わけではありません。
だからこそ「こんなときどうしたらい
い?」と気軽に聞ける子育ての仲間や支え
監修 山中龍宏先生
がたくさん必要なのです。
緑園こどもクリニック院長。20年前から子どもの事故予防について積極的に発言しています。現在
は、
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会委員、日本小児保健協会事故予防委員会委
員長、
子どもの事故予防情報センター代表。著書に
『子どもの誤飲・事故を防ぐ本』
(三省堂)
など。
時々襲ってくるさまざまな「不安」や
「気持ちの揺れ」も、
「こんなふうに思って
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赤赤ちゃんのための
事故予防ガイドブック
子どものいのちを守るために
事故は親だけの責任ではない
「目を離さないで」いることなどできるわ
ることができます。親たちの関心は、どう
けがありません。事故は一瞬「目を離した」
しても「起こる瞬間」に向けられがちで、
すきに起こるものですから、
「目を離して
専門家の関心は「起こった後」に向けられ
いても安全な環境をどうつくるか」につい
ています。どの「相」についても対策が必
て、親や周囲の大人たち、そして、社会全
要ですが、特に手薄になっている「事故が
体として対応していくことが事故予防には
起こる前(=予防)」について、社会全体
るかに効果があるのです。
で取り組む必要性が叫ばれています。
セーフコミュニティの取り組み
[事故における3つの相と取り組み]
安全な環境づくり、
器具の整備、
法的な規制づくり、
安全教育等
事故が起こる瞬間
心肺蘇生等、
救急処置等
事故が起こった後
救急医療体制、
各種の治療、
リハビリ、
事故の被害者への
心的ケア等
ものづくりの立場から
住宅内の事故を見直してみる
しかし、24時間一瞬たりとも子どもから
故は起こる前、起こる瞬間、起こっ
事 た後の3つの「相」に分けてとらえ
事故が起こる前
column
日
本大学理工学部の八藤後猛さんが
感じたら、クレームとして設計者やメー
「子どもが窓やベランダ柵、階段
カーに伝えていくことが必要です。それ
などから転落・墜落した場合、その責任
を、消費者教育や安全教育を通して親子
はどこにあると考えているか」といった
に伝えていく必要があります」と、八藤
意識調査を保育園児等の保護者対象に行
後さん。
また、ベランダ柵の周囲に踏み台にな
なったところ、すべての年齢において、
「子どもの事故は保護者(自分)の責任
りそうなものを置いてしまい、それに上
である」と認識しているという結果が得
ってベランダ柵から墜落する事故も多く
られました。
見られていることから、
「物を置くのは建
こうした傾向が強いことから、日本で
築設計者の責任ではありませんが、
『置
安全に暮らすためには、地域コミュニテ
は仮にベランダ柵や窓、階段などに設計
かれてしまう』という前提で設備を考え
ィ全体での取り組みが必要だと考える動き
上の問題があっても、親からメーカー等
なければならない」と作り手側の意識喚
が世界各地で広がっています。WHO(世
にクレームがいくことはほとんどなく、
起を促しています。
界保健機関)では、きちんと体系づけられ
メーカー側も製品の問題に気づかず販売
子どもも同居する住宅であるにもかか
た方法によって、地域の安全の向上に取り
し続けるといった状況が続いてしまって
わらず、デザイン先行で安全面を無視し
組むコミュニティをつくっていこうと、
いるようです。
た住宅が建築の専門雑誌などでも数多く
紹介されているようです。
「セーフコミュニティ」の認証を行なって
また、この調査からは、例えばベラン
います。定義には「不慮の事故」だけでは
ダ柵の高さや足がかりの高さも、子ども
「建築ジャーナリズムも、設計者も、子
なく、自殺や虐待、災害なども含まれてい
の成長や関心、動きを予測して設計され
どもの安全に対する意識はまだまだ低い
るようです。日本でもこの認証を受けよう
たものは、ほとんどないということも明
と言わざるを得ません。保護者だけでな
と、横浜市や京都府を始め各自治体がすで
らかになりました。
く子育てに日ごろから関心を持っている
に動き始めています。
「子どもの身の回りにあるものは、たと
人たちが、積極的に声をあげていく必要
え事故が起こっていなくても、危ないと
があります」と、話してくれました。
監修 八藤後 猛先生
子どもの事故が起こると、必ず「目を離
国立職業リハビリテーションセンター研究部研究員等を経て、日本大学理工学部建築学科助手、
2005年より専任講師。バリアフリー環境を広くとらえ、
子育て環境の整備(子育てバリアフリー)
、子
どもの住宅内安全計画などにも従事(工学)。子育てバリアフリーマップづくりの全国展開にも専
門家として協力。今回紹介されている調査は、2003年から04年にかけて実施されたものです。
した親が悪い」といった非難が寄せられる
し、親側も「自分が悪かった」と自分を責
める人が多いようです。
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