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構造物メンテナンス研究センター

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構造物メンテナンス研究センター
CAESAR
Center for Advanced Engineering Structural
Assessment and Research,
Public Works Research Institute
国⽴研究開発法⼈⼟⽊研究所
構造物メンテナンス研究センター
道路橋の安全管理の司令塔
構造物メンテナンス研究センター (CAESAR) は、⼟⽊研究所
の5つの研究組織の1つです。⼟⽊研究所は、⼤正10年に内務
省⼟⽊局に道路材料試験所が発⾜したことに始まり、国の研究
機関、独⽴⾏政法⼈、そして国⽴研究開発法⼈として90年の歴
史を有します。その間、今⽇に⾄るまで、構造物の建設に関わ
る技術基準の策定、技術開発、災害対策の司令塔として無くて
はならない存在となりました。
⽇本の⼟⽊構造物は、厳しい交通需要や⾃然環境にさらされて
きただけでなく、⽼朽化が始まっており、構造物の健全性を評
価し、維持管理・更新する技術の確⽴を急ぐ必要があります。
⽊曽川⼤橋のトラスの破断
そこで、⼟⽊研究所は、研究組織を改組・発展さ
せ、新設橋梁の設計施⼯、維持管理技術の⾼度化、
⻑寿命化、これらに伴うトータルコスト縮減、災
害時復旧の更なる迅速化をはじめとする、道路橋
の安全管理のための構造技術に関わる総合研究機
関であるCAESARを2008年4⽉1⽇に設置しました。
1995年兵庫県南部地震における阪神⾼速3号神⼾線の倒壊
<CAESARの使命>
1.現場の⽀援
損傷・変状の発⽣といった技術的課題を抱える個別橋の診断・処⽅など現場の技術⽀援を⾏う。また、
この過程で蓄積された知⾒をとりまとめ、現場技術者等へ還元する。
2.研究開発
既設橋に対して、通⾏⽌めをさせず橋としての機能を保持させる「計画的な保全」と、落橋させず利⽤
者の安全を図る「安全管理」の2つを⽬的として、橋の社会的重要度や求められる管理レベルに応じた技
術の開発を⾏う。特に、撤去橋などの既設橋を活⽤して⾏う調査研究を「臨床研究」と称して重点的に
実施する。
また、⼤規模な地震等に対して安全安⼼な社会を実
現するため、耐震性の⾼度診断・評価技術、補強対
策技術、損傷橋の機能回復技術等の開発を⾏う。
これらの研究成果について、技術基準その他の技術
資料に反映・公表する。
3.情報交流の場
維持管理技術の集積拠点として、現場の道路管理者
や⼤学、⺠間、海外の機関との連携を通じて、最新
の技術情報が集まり、技術交流・情報発信が⾏える
場を整える。また、広く技術者や研究者を受け⼊
れ、ともに問題解決に取り組むとともに、⼈材の育
成を継続的に⾏う。
表紙の写真
上段左 = PC橋下床版に⽣じたPC鋼線の腐⾷
下段左 = ASRによる被害を受けたRC橋
1
上段右 = 鋼橋の主桁に⽣じた疲労⻲裂
下段右 = 東北地⽅太平洋沖地震における津波による落橋
CAESARの組織
⼟⽊研究所
つくば中央研究所
寒地⼟⽊研究所
⽔災害・リスクマネジメント国際センター (ICHARM)
構造物メンテナンス研究センター (CAESAR)
橋梁構造研究グループ
グループ⻑
上席研究員 (管理システム・下部構造担当)
上席研究員 (補修技術・耐震技術担当)
上席研究員 (予測評価技術・上部構造担当)
上席研究員 (検査技術・コンクリート構造物担当)
必要に応じた臨時専⾨対策ユニット
耐震研究監
先端材料資源研究センター (iMaRRC)
CAESARは、橋梁のメンテナンスに関すること、⼟⽊構造物の地震被害の防⽌、軽減に関すること、橋
梁の上部構造、下部構造及びその他コンクリート構造に関する技術開発、研究を⾏います。橋梁の補修、
健全性予測評価、点検・検査技術、また、設計施⼯や耐震設計、これらを統合する総合的な維持管理体
系に関する専⾨技術者・研究者からなる総合⼒に富む組織です。また、道路管理者から緊急かつ集中的
に⾼度な技術協⼒が求められる課題については、専従の専⾨対策ユニットを臨時で編制するなど、柔軟
性を有しています。
なお、橋梁に関して必要な研究のうち、⼟を含む材料の性質に関するもの、塗装に関するもの、また、
寒地特有の事象が主であるものについては、CAESARの⽅針・コーディネイトのもと、⼟⽊研究所の総
合⼒を活かし、つくば中央研究所、寒地⼟⽊研究所からの併任職員と⼀体となり研究を実施したり、関
連分野との連携を図りつつ課題の解決を図っています。
2015年8⽉1⽇現在
在籍研究者数 職員 24名、専⾨研究員 2名、交流研究員 18名
研究課題数 26件、産官学との連携・共同研究数 21件
主な実⼤実験施設 臨床研究⽤撤去部材保管施設、輪荷重⾛⾏試験機、1000kN疲労試験機、
部材耐震載荷試験機、30MN載荷試験機
英語略称について
常に斬新な政策のもと、確かなグランドデザインにより1000年にも及ぶ⼤ローマ帝国の礎を築いた英
雄 Gaius Julius Caesar (ラテン語ではカエサル、英語ではシーザーと読みます) にちなんでいます。
2
行政機関等への技術支援
アメリカやカナダでは、ある⽇突然橋が崩落し、犠
牲者を出すという事態がすでに発⽣しています。橋
を守るためには、⼈の病気と同じように、症例と検
査技術、治療の試みとその結果をできるだけ蓄積し、
分析することが重要であり、今、まさに取り組みが
始まったところです。
しかし、⾼度な技術案件については、個々の⾏政機
関がそれぞれに知⾒を蓄積することに限界がありま
す。また、それぞれの⾏政機関が技術開発や基準の
整備を⾏うことは、効率的でなく、新たな事態への
対処が遅くなります。そこで、各⾏政機関の情報を
集約し、そして問題への対処を⽀援するための組織
としてCAESARが中央に整備されています。
地域拠点
情報・相談
⽀援・情報
研修
ブロック拠点
情報・相談
⽀援・情報
研修
CAESAR
⾏政等への技術⽀援実績 ― 供⽤中の橋の安全性に関わる相談が⼤半を占める
平成18,19年度 合計
(CAESAR発⾜前)
設計時
施工時
供用後
供⽤中の橋に
関する相談依頼
平成25,26年度 合計
(CAESAR発⾜後)
0%
20%
40%
60%
コンクリート橋における
PC鋼線の破断
80% 100%
技術相談の割合
地震による落橋
⾼速⾃動⾞国道
約7,500橋
約1%
パイルベントの腐⾷・断⾯⽋損
直轄国道
約21,000橋
約3%
補助国道
約30,300橋
約4%
⻲裂
全橋梁
約680,000橋
亀裂
都道府県道
約52,900橋
約8%
市町村道
約568,000橋
約84%
鋼床版で発⾒された⻲裂
3
ASRによる損傷
全国の道路種別別の橋梁数(2m以上)
道路統計年報2014より
「荒廃する日本」にしないための研究
〜 橋梁に関する臨床研究に挑戦します 〜
アメリカで1930年代のニューディール政策により⼤量に
建設された道路構造物では、50年後の1980年代になる
と、⽼朽化による崩落、損傷、通⾏⽌めが相次ぎ、「荒廃
するアメリカ」と呼ばれる状況に陥りました。
わが国の⼟⽊構造物は、昭和30〜40年代 (1955〜1974
年) の⾼度成⻑期に⼤量に建設されました。そのため、建
設後50年以上を経過した構造物が、今後⾶躍的に増加しま
す。既に、道路橋では、鋼部材の疲労、コンクリート部材
の塩害、アルカリ⾻材反応といった耐荷性能に重⼤な影響
を与える損傷事例も増加しています。今、⾏動を起こさな
ければ「荒廃する⽇本」になりかねません。
CAESARは、臨床研究的なアプローチで問題の解決に挑み
ます。
検査技術・維持管理システム
橋梁数
600 00
1980年代に多く高齢化
500 00
400 00
300 00
200 00
100 00
0
1901
~ 05
1911
~ 15
192 1
~25
1931
~ 35
1941
~ 45
1951
~ 55
19 61
~ 65
※全橋梁を対象
1 971
~ 75
1981
~ 85
199 1 2 001
~ 95 ~ 04
建設年度
出典:(社)国際建設技術協会
橋梁数
300 00
約30年遅れて高齢化
250 00
200 00
150 00
100 00
50 00
0
1901
~ 05
構造物内部の状態を把握する⾮破壊検査技術、損傷の発
⽣と進展を適時に効率的に検知する計測・モニタリング
技術など、橋梁の状態を効率的かつ合理的に把握するた
めの検査技術や、情報の蓄積・活⽤技術をはじめとする
維持管理システムの研究に取り組んでいます。
1911
~ 15
19 21
~25
1 931
~ 35
1941
~ 45
※橋長15m以上の全橋梁を対象
19 51
~ 55
1 961
~ 65
1971
~ 75
1981
~ 85
199 1 2 001
~ 9 5 ~ 04
建設年度
出典:道路施設現況調査(国土交通省)より作成
健全性の予測・評価・診断技術
鋼部材の疲労等、⾼度な診断を必要とする損傷のメカニ
ズム・挙動を解明し、部材の損傷が橋全体系の健全性に
及ぼす影響を的確に評価し、最適な対策判断につなげる
ための研究に取り組んでいます。
見えないところを見える化
橋の点検
⽬指すは⾼度化と簡易化
超⾳波探傷の適⽤性を検証
補修・補強等対策技術
剛性増
アスファルト舗装
局部変形・応力 = 大
SFRC 舗装
局部変形・応力 = 小
<施⼯例>
鋼繊維補強コンクリート (SFRC) による疲労対策
耐久性を向上させ⻑寿命化を図るために提案された補修補
強技術が要求性能を満たすかどうかを検証する⽅法、個々
の橋梁の状態・条件に即した適⽤性の判断、適⽤⽅法な
ど、対策技術の標準化の研究に取り組んでいます。
臨床研究のフィードバック
維持管理しやすい橋への誘導
臨床研究を通して得られた経験、知⾒に基づいて、⻑寿命
化を図るとともに維持管理しやすい橋の実現に向けて、橋
梁構造の改善を図るための研究に取り組んでいます。
4
臨床研究
橋の点検の法制化
道路法
2013年年9⽉に改正道路法が施⾏され、道路の維持・修繕に
関する取り組みの強化が図られました。また、道路法施⾏規
則の⼀部を改正する省令が2014年3⽉31⽇に公布(7⽉1⽇
施⾏)され、5年に1回の頻度における近接⽬視等が道路の
点検基準として規定されました。2014年4⽉には社会資本整
備審議会道路分科会建議、「道路の⽼朽化対策の本格実施に
関する提⾔」がとりまとめられました。また、地⽅公共団体
における円滑な点検の実施のための技術的助⾔として、
2014年6⽉には「定期点検要領」が策定され、2014年9⽉
には地⽅公共団体管理の⽼朽橋梁に「道路メンテナンス技術
集団」が派遣され、全国3橋梁で直轄診断が施⾏されまし
た。CAESARでは各地⽅整備局からの要請により技術指導の
⽀援を実施しています。
政令
省令・告⽰
橋梁点検要領
メンテナンスサイクルの構築
このような流れを受け、道路橋の安全管理は、
点検  診断  措置  記録  (次の点検)
というメンテナンスサイクルの構築が不可⽋です。点検と
は、橋の状態を把握すること、劣化や損傷を発⾒すること、
診断とはその程度を把握し、それに続く措置について判断す
ることです。措置とは、交通規制を実施したり、補修などの
対策をすることです。既設橋の劣化損傷・変状の要因は多岐
にわたるので、実験室で再現するには限界があります。そこ
で、医学にならい、症例の蓄積、撤去橋解体例の蓄積、標本
を⽤いた残存強度実験や補修・補強効果実験の蓄積、さらに
は、年代別の損傷形態を分析するなどの疫学的分析が必要で
す。このような、実際の橋を⽤いた⼀連の研究を、『臨床研
究』と呼んでいます。
点検
診断
記録
措置
臨床研究
そこで、CAESARでは、国⼟交通省国⼟技術政策総合研究所とも連携しながら、道路管理者である国⼟交通
省地⽅整備局や⾃治体と協⼒して、橋梁にセンサーを設置して、劣化や損傷の進展を観測したり、劣化や損
傷が原因で撤去された橋の部材の収集を⾏っています。
そして、このような臨床研究で得られた最新の知⾒を、国や⾃治体への技術⽀援に惜しみなく投⼊して⾏き
ます。
地⽅整備局
⾃治体
情報・撤去橋の部材等
中央研究機関へ集約
集積・蓄積した情報をフィードバック
5
撤去橋梁を⽤いた臨床研究
撤去橋
撤去橋の載荷試験
撤去前の載荷試験による全体挙動計測
(桁と床版の合成効果、荷重分配等
構造解析との⽐較)
荷重⾞による試験
撤去橋の⼀部を⽤いての載荷試験
・損傷状況調査
・⽬視調査等による損傷状況
損傷状況に応じた耐⼒評価技術の確⽴
撤去桁の解剖調査
撤去桁での⾮破壊調査
実橋に適⽤可能な
⾮破壊検査技術の
開発
・各種⾮破壊検査技術による調査
・⺠間へ実橋での調査機会提供
⾮破壊検査による調査項⽬例
・コンクリート部材中の鋼材の配置、腐⾷状況
・鋼部材の残存鋼材量
⺠間開発のメンテナンス技術の適⽤性を検証する
ことにより、実⽤的な技術開発が促進する。
鋼材の腐⾷状況
(外部損傷状況と残存鋼材等)
コンクリートの状況
(塩分量、⻲裂進展状況)
鋼材の配置
(古い時代の配筋法)
抽出鉄筋の引張り試験
(古い時代の材料の強度試験)
解体後、撤去桁の⼀部を⽤いての調査、部材の⼀部を室内へ持ち込ん
で徹底的に解剖することで損傷状況を把握する。
撤去橋梁の保管・展⽰
臨床研究のために収集した撤去橋の部材を、⼟⽊研究所の屋外・屋内施設にて保管・展⽰しています。これ
らは、⾮破壊検査技術の性能検証フィールドとして提供しているほか、技術者の研修にも活⽤しています。
また、研究所の公開にあわせて⼀般の⽅々にも⾒学いただいています。
塩害による損傷を受けたコンクリート橋
実際に落橋した橋のサンプル
⽼朽化した撤去橋梁
(ASRによりひび割れた橋脚)
塩害による損傷を受けたトラス橋
6
「災害脆弱国家・日本」としないための研究
〜 ⼤地震に対する総合対策技術を開発・結集します 〜
1995年の兵庫県南部地震において社会基盤施設が受けた甚⼤な被害経験を踏まえ,⼤地震に対する橋の耐震
設計や耐震補強に関する研究がさらに進められ、我が国の橋の耐震性も向上してきました。しかし、その
後、2004年新潟県中越地震、2008年岩⼿・宮城内陸地震をはじめとする内陸直下を震源とする⼤規模な地
震や、2011年の東北地⽅太平洋沖におけるマグニチュード9の巨⼤地震により、まだ多くの検討課題が残さ
れていることも明らかになってきています。また、⾸都直下地震、東南海地震等の⼤地震発⽣の切迫性が指
摘されているなか、このような⼤規模な地震に対しても安全安⼼な社会を実現するためには、限られた財政
の中で効率的に耐震対策を⾏っていくための技術が必要となります。そこで、構造物の地震時挙動及び地震
時における構造物の抵抗特性・脆弱性をより精緻に評価する技術、これを適切に補強あるいは損傷が⽣じた
場合に迅速に機能を回復するための技術の開発を⼤きな柱として研究を⾏っています。
補強済み
(被害なし)
2011年東北地⽅太平洋沖地震における
古い時代に建設され、未補強だった橋の被害
未補強
被害→
⼟⽊研究所が構築してきた耐震補強技術が実証されました
(2004年新潟県中越地震)
耐震性の⾼度診断・評価技術
現況の橋の状態や橋の位置における地盤条件を適切に評価
するとともに、動的挙動、地盤の液状化や流動化が橋とし
ての耐震性能に与える影響など、橋全体系の耐震性能の⾼
度診断・評価技術のための研究に取り組んでいます。
橋脚の傾斜
補強対策技術
限られた資源と時間の制約の下で、⽬標とする橋の耐震性
能を確保するために必要となる、構造部材の補強を⾏う技
術に関する研究に取り組んでいます。
震災経験のフィードバック
耐震性の⾼い橋への誘導
損傷
基礎の変状により傾斜が⽣じた橋脚の耐震安全性
評価及び復旧対策について技術指導を⾏いました
(2011年東北地⽅太平洋沖地震)
震災経験の蓄積に基づくとともに、⾼度
性能評価技術、耐震性を向上させる技術
に関する研究成果については、基準化・
標準化を図り、新設構造物の合理的な設
計にも反映します。
7
開発技術の実験検証
地震後の早期点検・機能回復技術
災害直後の被災地では、地域住⺠の避難、救援物資の輸送などのために交通機能の確保は不可⽋です。地震
後に短時間で被災構造物の機能回復を図るための点検、診断、復旧技術の研究に取り組んでいます。夜間や
⽬視不可能な状況でも被害の有無を発⾒するための⽀援システムの研究に取り組んでいます。
照明柱
無線通信
中継器
親機
⾞載端末
地震被災度
判定センサ
無線
接続
橋桁
⼦機
橋脚 被災度
判定
センサ
橋座部のせん断破壊に対する応急復旧技術
(調達が容易なH形鋼を⽤いた応急復旧⼯法)
東北地⽅太平洋沖地震で下部構造に損傷が⽣じ、
震災後に応急復旧した橋の監視対策への適⽤
津波の影響を受ける橋の挙動に関する研究
東北地⽅太平洋沖地震における津波による橋の被害を受け、流出した橋及び流出しなかった橋それぞれの挙
動メカニズムを⽔路実験や数値解析等を通じて解明するとともに、⽀承部の抵抗特性の評価法や津波による
影響を軽減させる対策技術の研究に取り組んでいます。
津波を模
擬した波
橋の模型
橋桁の断⾯形状を
変化させて実験
4主桁の桁橋が段波状の津波により受ける影響に関する⽔路実験
<⼤規模地震発⽣後の技術⽀援>
⼤規模な地震等により被災した橋梁の調査と復旧を⽀援することは、
CAESARの重要な役割のひとつです。たとえば、2008年6⽉に起きた
岩⼿・宮城内陸地震の際には、余震の中、橋梁の被災調査を実施して
います。また、2011年3⽉の東北地⽅太平洋沖地震では、同年8⽉
までに180橋を超える橋をのべ150⼈以上により調査を⾏い、津波で
被災した橋の復旧⽅法、津波の影響を受けたが流出しなかった橋の供
⽤可能性の評価、地震動により損傷した橋の耐震安全性の評価及び復
旧対策等について技術⽀援を⾏いました。
8
要求性能の提示、評価の基準化
CAESARは、これまでの仕様規定から脱却し、設計・施⼯の精度向上に向けた技術的な努⼒が報われるよう
な、新しい基準体系の実現を⽬指します。個々の要素技術に対して求める性能やそれを満⾜することを検証
するための⽅法を基準や指針、 CAESARが出版する技術資料を通じて提⽰します。
1. 信頼性に基づき安全係数や制限値を設定する設
計体系を実現するための研究
2. 要求性能を評価するための評価技術の確⽴のた
めの研究。たとえば、
- 床版の疲労耐久性を検証するための輪荷重⾛
⾏試験機による標準試験法
- 橋脚柱の地震時変形性能を評価するための標
準試験法
などは⼟⽊研究所が開発したものです。
供⽤中の構造物の維持管理 (点検、診断、補修・補
強などの措置) や耐震補強の技術についても、将来
の標準化や基準化に向けて、様々な技術資料を提供
しており、CAESARのホームページから⼊⼿するこ
とができます。
輪荷重⾛⾏試験機
ナレッジの共有・技術支援
個別の既設橋に対してCAESARが技術⽀援を⾏い、問題解決が⾏われた事例についても、広く役⽴ててい
ただけるように、雑誌「⽉刊 ⼟⽊技術資料(発⾏:⼟⽊研究センター)」において「現場に学ぶメンテナ
ンス」というタイトルで連載されていますのであわせて御覧下さい。また、道路管理者のインハウスエン
ジニアへの技術研修、⺠間研修機関の技術研修、及び広く⼀般の技術者を対象とした各種の技術講習会に、
講師を派遣して、道路橋の設計・施⼯・維持管理について講義を⾏っています。
実務者向け講習会(⾹川⾼等
専⾨学校)
⼟⽊技術資料
9
撤去部材展⽰施設における部
材調査実習
情報発信・交流-技術開発のマネジメント
道路橋の維持管理の技術開発は、補修⼯事を⾏うための⼟⽊技術、補修に⽤いる材料の劣化や損傷を把握す
るための検査機材やセンサ技術、総合的なアセットマネジメントを⾏うためのソフト技術など、多くの分野
にまたがります。また、対象とする材料も、鋼、コンクリート、接着剤や防⾷材料まで多岐にわたります。⼟
⽊以外の分野で開発が先⾏する技術もありますが、実際の道路橋の構造安全管理という観点から必要とされ
る技術の内容、要求される精度や操作性は先⾏する分野が要求するものと必ずしも⼀致しません。そこで、
CAESARは、道路橋の構造安全管理に求められる技術開発のニーズについて情報を発信しています。
2011年8⽉、構造物メンテナンスに関する各種技術開発を促進させるために、「CAESARメンテナンス技術
交流会」を設⽴しました。国、地⽅⾃治体、⾼速道路会社といった施設管理者と、産業界、学界の技術者・
研究者が⼀堂に会し、ニーズとシーズが出会う場、最新の技術情報が⾶び交う場となっています。
また、モニタリング技術研究組合(RAIMS)への参加を通じ、
モニタリングシステムの現場適⽤のためのマニュアル化を⽬
指しています。
メンテナンスに関する動向
やCAESARの研究成果を知っ
ていただくため、講演会の
開催やニュースレターの発
⾏を⾏っています。
第7回 CAESAR講演会 (2014年9
⽉) の様⼦
⼟⽊分野以外の機関も含め約500
名の⽅にご来場いただきました。
国際的な情報収集と連携
CAESARは、⽇本の技術を発信するとともに共有する技術課題に関しては海外の機関と情報交換をする、わ
が国のポータルサイトとして活動しています。
先進国の主要な道路網は2度の世界⼤戦以降、急速に整備され、今では建設後50年を超える橋梁が殆どに
なってきています。その間に、建設時には想定もしなかったような⼤きな⾞両の通⾏や、交通量の増⼤など
により、橋の傷みが激しくなっています。そこで、平成21年には、先進 14カ国による 国際橋梁管理者会
議の設⽴に協⼒し、第1回会議に参画しております。また、⽇⽶政府間の「天然資源の開発利⽤に関する⽇
⽶会議 (U.S.-Japan Cooperative Program in Natural Resources = UJNR) 」の耐⾵・耐震構造専⾨部
会の枠組みの下で、毎年⽇⽶橋梁ワークショップを主催し、橋梁に関する幅広い課題について、⽶国連邦道
路管理局 (FHWA)、各州交通局など政府系機関、道路管理者間との情報共有を図っています。
その他、ドイツ連邦道路交通研究所 (BASt) 等、海外の政府系研究機関や⼤学と定期的、または不定期に情
報交換、技術交流を⾏っています。その他、海外からの要請に応じて、(独) 国際協⼒機構 (JICA) を通じて
専⾨家を海外へ派遣するなど、技術協⼒を⾏っています。
第30回⽇⽶橋梁ワークショップ (2014年10⽉、ワシントンDC)
ネパール・ゴルカ地震に対する現地での復興
技術⽀援(2015年5⽉)
10
お問い合わせ
道路管理者
技術指導
⾼度技術案件等
CAESAR
⺠間技術者
連携、
共同研究
学識経験者
CAESAR で は、 道路 構 造物 の設 計 、耐 震補 強 、損 傷等
(塩害・アルカリ⾻材反応、疲労等)への対応について、
従来蓄積してきた豊富な知⾒をもとに、道路管理者に対
する技術指導・⽀援を⾏っています。また、道路構造物
の設計、耐震補強、損傷等への対応に関する研究拠点とし
て、必要に応じて産学とともに共同研究を⾏います。こ
れらに関するお問い合わせ先は以下の通りです。
国⽴研究開発法⼈⼟⽊研究所
構造物メンテナンス研究センター
〒305-8516 茨城県つくば市南原1番地6
TEL: 029-879-6773
Email: [email protected]
URL: http://www.pwri.go.jp/caesar/index-j.html
施設の貸し出しについては⼟⽊研究所企画部業務課まで、
施設⾒学のご希望やその他に関しては⼟⽊研究所総務部
総務課までお問い合わせください。
TEL: 業務課 029-879-6754、総務課 029-879-6700
CAESARへのアクセス
CAESAR
2015.8.1
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