コンピュータグラフィ ックスによる遺跡の復元

奈 良大学
研究助 成概要報 告
コ ン ピ ュー タ グラ フ ィ ッ クス に よる遺 跡 の復 元
湊
敏
教養部 、奈 良大学
要 旨:コ
ン ピ ュ ー タ の ハ ー ドウ ェ ア と ソ フ ト ウ ェ ア の 進 歩 に よ り、 近 年 多 くの 古 代 遺
跡 が 復 元 さ れ て い る。 本 報 告 で は 、 パ ー ソ ナ ル ・ コ ン ピ ュ ー タ を 用 い て 遺 跡 の 復 元 が
可 能 か 、 ま た 実 際 に 個 人 レ ベ ル で 復 元 を 行 っ た 場 合 、 コ ソ ピ ュ ー タ上 で 復 元 の 完 成 ま
で に ど れ く らい の 時 間 を要 す るか を 検 討 した。 そ の結 果 、小 規 模 の復 元 な らば 、 パ ー
ソ ナ ル ・ コ ソ ピ ュ ー タ で 可 能 で あ り、 遺 跡 の 復 元 完 成 ま で に 約60日 程 度 必 要 で あ る こ
と が分 か っ た。
コ ソ ピ ュー タ グ ラ フ ィ ッ クス(CG)は
近 な分 野 で は、SFXに
でCGは
代 表 さ れ る映 画 で あ ろ う。 学 術 面 で は、 医 学 、 物 理 、 化 学 と い った分 野
有 効 に利 用 され て い くまた 、 考 古学 の分 野 で も、遺 跡 や 遺 物 の復 元 に利 用 され て い る。
古 代遺 跡 の 復 元 に関 して は 、NHKを
考 古学"と
CGに
、 現 在 多 くの分 野 で 利 用 され て い る。 私 達 の最 も身
は じめ 民 法 の テ レ ビで 紹 介 され て い る。 最 近 で は 、"CG
言 う言 葉 も現 わ れ て き て い る1)。
よ る遺 跡 の 復 元 は、 現 在 目にす る こ との で きな い 過 去 の もの を 目に 見 え る形 に して く
れ る。 もち ろん 、過 去 の 遺 跡 を 目に見 え る形 に す るた め に は 模 型 を 作 る とい う手 段 が あ る。 し
か し、模 型 で は一 旦 作 成 した 遺 跡 の色 彩 や遺 跡 の存 在 す る環 境 を 簡 単 に作 り替 え る こ と はで き
な い。 一 方 、CGは
模 型 に比 べ る と一 旦 形 さえ作 成 す れ ば 、 色彩 や 環境 を比 較 的 容 易 に変 更 す
る こ とが で き る とい う利 点 を 持 って い る。
これ ま で は 、 コ ソ ピ ュー タの 能 力 に限 界 が あ るた め 、通 常 の コ ソ ピ ュー タの利 用 環 境 で は 、
CGに
よ る遺 跡 の復 元 は 不 可 能 で あ っ た。 こ れ は 、復 元 した遺 跡 の形 状 に色 を つ け た り、 遺 跡
を照 らす 光 の効 果 等 を再 現 す るた め に非 常 に多 くの計 算時 間 を要 す るた め で あ る。 また 、 遺 跡
の 形 状 デ ー タの入 力 に は 多 くの 人 が 必 要 に な る。 現 在 で もテ レ ビ等 で紹 介 され て い るCGに
よ
る古 代遺 跡 の復 元 は 、多 くの 人 と時間 を か けた もの で あ る。 しか し、 近年 の コソ ピ ュー タの ハー
ドウ ェ ア と ソフ トウ ェア の進 歩 を 考 え る と、 通 常 の コ ソ ピ ュー タ利 用 環 境 で も形 状 デ ー タの 少
な い小 規 模 な遺 跡 の復 元 は 可能 に な って きた と思 わ れ る。
本 報 告 で は、 パ ー ソナ ル コ ソ ピ ュー タ を用 いて 小 規 模 な遺 跡 の復 元 が可 能 か、 ま た個 人 レベ
ル で は 復 元 の完 成 まで に ど れ く らい の 時 間 を要 す る か を検 討 した。
一一273-一
総
合
研
究
所
所
報
復元対象の選択
本報 告 で は、 復 元 の対 象 と して 中 国 明代 の 南 京城 の聚 宝 門 を選 ん だ。 復 元対 象 の選 択 に当 た っ
て は 、遺 跡 の 図面 が簡 単 に 手 に は い り、 遺 跡 の形 状 を表 す た め の入 力 デ ー タが 少 な い こ と を条
件 に した。
コ ン ピ ュー タグ ラ フ ィク ス に よ る 聚 宝 門 の 復 元
(1)図 面 の作 成
コ ソ ピ ュー タ を用 い て 南 京 城 の聚 宝 門 を復 元 す るた め の3面 図 は 、 「中 国 都 城 歴 史 図 録 第 三
集 」2)に 記 述 され て い る 図面 を 参考 に して 作 成 した。 図面 で は、 城 門 が城 壁 に 対 して 傾 い て 突
き出 て い る が 、今 回 の復 元 で は コ ン ピ ュー タ へ の入 力 を簡 単 にす るた め に城 門 は 城 壁 に対 して
垂 直 に 出 て い る もの と仮 定 した 。 また 、 図 面 に具 体 的 に示 され て い な い 大 き さは 、 具 体 的 に示
され た 大 き さ と図面 上 で の長 さに基 づ いて 求 め た 。 聚 宝 門上 に設 置 され て い る城 楼 に関 して は 、
参 考 とな る もの は 「中 国都 城 歴 史 図 録 第 三 集 」 の鳥 瞼 図 しか な い の で 、甘 粛 嘉 峡 関 城 楼 復 元 図
2)に 基 づ いて3層 の城 楼 の 図面 を作 成 した
。
(2)使
用 機 器
パ ー ソ ナ ル
PentiumPro200で
ボー
(3)復
・コ ソ ピ ュ ー タ は 、 日本 ゲ ー
ト ・ ウ ェ イ2000社
、 主 な メ モ リ ー は128MBで
ド は 、MATROXMillennium4MBで
のG6-200を
用 い た 。CPUCは
あ る 。 ま た 、 グ ラ フ ィ ッ ク ・ア ク セ ラ レ ー タ ・
あ る。
元
聚 宝 門 の 復 元 は 、3DStudioMAX3)を
用 い た 。 復 元 の 手 順 は 、 ま ず3次
元 立 体 の作 成 を 行
な っ た 。 立 体 の 構 造 は 、 主 と して プ リ ミ テ ィ ブ を 用 い た 。 プ リ ミ テ ィ ブ に よ り作 成 さ れ た 立 体
を メ ッ シ ュ編 集 お よ び ブ ー リ ア ソ を 適 用 す る こ と に よ り変 形 ・加 工 を 行 な っ た 。 次 に3次
体 に 材 質 感 や 色 彩 を 与 え 、 さ ら に は テ ク ス チ ュ ア を 張 り付 け る こ と に よ り3次
し く し た 。 立 体 に 張 り付 け た テ ク ス チ ュ ア は 、 階 段 を 除 い て3DStudioMAXが
元立
元 立体 を城 門 ら
標 準 で持 って
い る もの を 利 用 し た 。 さ ら に ラ イ テ ィ ン グ を 行 な っ た 。 最 後 に 見 る 方 向 を 決 め て レ ソ ダ リ ン グ
を 行 な い 、2次
元 画 像 を 得 た 。 得 ら れ た2次
元 図 形 を 図1に
一274一
示 した。
湊:コ
ソ ピ ュー タ グ ラ フ ィ ック ス に よ る遺 跡 の 復 元
＼
鯉^
図1復
元 された南京城聚宝 門の鳥瞼 図
今 回 の 復 元 の 作 成 日数 一図 面 作 成 開 始 か ら最 終 的 な 図1を 得 る まで の 日数 は 、 約60日 で あ っ
た。 この 復 元 に あた って 最 も 日数 を要 した の は 、 図 面 の 作 成 と形 状 デー タの入 力 で あ る。 も ち
ろ ん 、 コ ソ ピュー タの 能 力 を必 要 とす る レ ン ダ リン グに は 時 間 が か か った が 、 今 回使 用 した コ
ソ ピ ュー タで もそ れ ほ ど問 題 を感 じる こと は な か った 。
結
果
今 回 の 復 元 に よ り、 形 状 デー タ の少 な い遺 跡 や遺 物 な らば 通 常 の コ ソ ピ ュー タで もCGに
よ
る復 元 が 十 分 可 能 で あ る こ と が示 され た。 今 回 の 復 元 に 用 いた コソ ピ ュー タの能 力 は 、 現 在 本
学 情 報 処 理 セ ソ ター 実 習 室 に設 置 して あ る ク ライ ア ソ ト機 と同 じまた は それ 以 下 で あ る。 今 後
CGに
よ る遺 跡 ・遺 物 の 復 元 を本 学 の授 業 に取 り入 れ る こ とが 出 来 るか ど うか を検 討 す る こ と
が望 まれ る。
謝
辞
本 研 究 は 、 平 成10年 度 奈 良 大 学 研 究 助 成 の補 助 を受 け て 行 った 。 なお 、研 究 成 果 は奈 良 大 学
情 報 処 理 セ ソ ター 年報10号 に 発 表 した 。
一一275一
総
文
1)大
研
究
所
所
報
献
成 建 設 設 計 本 部CGデ
市 」、 日経BP社
2)「
合
建 築 デ ジ タ ル ブ ッ ク ス ・02CGで
、1998.
中国 都 城 歴 史 図 録
3)「3DStudioMAX2.5」
ザ イ ソ室 、 「日 経BP・
第 三 集 」、 博 遠 出 版 有 限 公 司 、1977.
、Autodesk、1998.
一276-一
一
よ み が え る古 代 都