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花ひらく創造都市へ 私たちがやるべき事

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花ひらく創造都市へ 私たちがやるべき事
資料3
第6回札幌市文化芸術基本計画検討委員会
花ひらく創造都市へ
私たちがやるべき事
札幌市文化芸術基本計画
<平成 26 年度見直し案>
はじめに
文化芸術活動の成果が次々と花ひらくように
循環して生み出されていく、
「花ひらく創造都市」の実現を目指します。
(平成 21 年度「札幌市文化芸術基本計画」第 1 章より)
この 5 年間で、どれくらいの「花」がひらきましたか?
この先の未来に、どれくらいの「花」をひらかせることができますか?
「札幌市文化芸術基本計画」( 以下「基本計画」という。) は、
札幌市文化芸術振興条例(以下「条例」という。)第 6 条の規定
に基づき、アンビシャス札幌 21 制定以降、行政と民間の役割
分担が変化するなど、文化芸術を取り巻く社会的背景等に対応し、
文化芸術に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための指
針として平成 21 年に策定されました。基本計画は、条例第 6 条
の規定に基づき、おおむね 5 年おきに見直しを行います。
本見直し案は、平成 21 年に策定された基本計画が初めて見直
しされるものであり、今後 5 年間(平成 26 年度~平成 30 年度)
の札幌市の文化芸術施策推進の指針となります。
1
目 次
はじめに
第 1 章 基本計画策定の前提
第 2 章 前基本計画期間における取組みの検証と社会状況等の変化
1 前基本計画における取組
2 社会状況等の変化
3 見直しの方向性
第 3 章 重点取組項目と計画推進のための視点
1 重点取組項目
2 計画推進のための視点
第 4 章 重点取組項目
1 重点施策
① アートセンター機能の推進
② 市民交流複合施設計画推進
③ 国際芸術祭の開催
④ 次世代博物館計画策定
⑤ 文化資産の整備と活用
2 環境整備
① 基本計画の推進・評価の取組に向けた検討
② 情報発信・共有システムの整備
第5章
個別施策
1 土を耕す・・・・基盤整備
2 種を蒔く・・・・未来への布石、育成
3 実らせる・・・・支援、保存・活用
4 蓄え、伝える・・情報の蓄積と発信
おわりに
参考資料
前計画における事業の点検・評価表
円卓会議からのメッセージ(2 期分)
文化芸術意識調査の概要報告 etc...
2
■本基本計画の全体像
第1章
1
第2章
基本計画策定の前提
札幌市の目指すところ・・・・・・・・
「花ひらく創造都市の実現」
前基本計画期間における取組の検証と社会情勢の変化
1
前基本計画の検証
2
社会状況等の変化
3
見直しの方向性・・・・・・・・・・・
○文化芸術を継承
○土を耕す
○社会基盤の整備
○種を蒔く
○文化芸術の社会
的展開
○実らせる
○蓄え・伝える
○共創で取り組む
第3章
重点取組項目と計画推進のための視点
1
重点取組項目・・・・・・・・・・・・・
2
計画推進のための視点・・・・・・・・・
1
第4章
重点取組項目
(1) 5つの
(2) 2つの
重点施策
環境整備
2
個別施策
計画推進のための視点
「共創」
第4章
個別施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第4章
個別施策
3
第1章 基本計画策定の前提
1 札幌市の目指すところ
札幌市は昭和 38 年(1963 年)に制定した「札幌市民憲章」において、
「世界とむ
すぶ高い文化のまちにしましょう」との理念を掲げ、早くから文化芸術施策の重要性
に着目し、平成 9 年(1997 年)には長期的な視点に立った文化芸術振興の指針を体
系的に明らかにした「札幌市芸術文化基本構想(通称:アンビシャス札幌21)
」を策
定し、文化芸術都市として様々な成果をあげてきました。
平成 19 年(2007 年)には「札幌市文化芸術振興条例」が制定され、改めて「市
民が心豊かに暮らせる文化の薫り高き札幌のまちづくりを目指す」ことが掲げられ、
そのための指針として、基本計画を策定する条項が盛り込まれました。これを受け、
平成 21 年(2009 年)に「文化芸術活動による成果が次々と花ひらくように循環し
て生み出されていく「花ひらく創造都市」の実現を目指す」ことを掲げた「札幌市文
化芸術基本計画」を策定しました。
前基本計画が目指すところとした、文化芸術活動による成果が次々と花ひらくよう
に循環して生み出されていく「花ひらく創造都市」の実現を、平成 26 年度からの基
本計画でも継続的に目指します。
2 基本計画の位置付け
札幌市文化芸術基本計画は、平成 19 年(2007 年)に制定された「札幌市文化
芸術振興条例」第6条に基づき策定するもので、文化芸術を取り巻く社会的背景など
に対応し、文化芸術に関する施策を総合的・計画的に実施するための指針です。
また、平成 25 年度に、これまでの札幌市基本構想と札幌市長期総合計画に代わる
最上位計画として策定された「札幌市まちづくり戦略ビジョン」を受けた個別計画に
位置付けられます。
ビ
4
3 なぜ見直しを行うのか
前基本計画策定の際に掲げた社会的背景「行政と民間の役割分担の変化」「新たな
担い手の育成」
「地方分権の進展」
「コミュニティの変化」に加え、策定後の5年間で
は、東日本大震災の発生や劇場法の施行など、様々な社会情勢の変化がありました。
札幌市文化芸術基本計画は、「札幌市文化芸術振興条例」第6条に基づきおおむね
5年おきに見直しを行うこととなっており、本基本計画は、「花ひらく創造都市」の
継続的な実現に向け、平成21年に策定された前基本計画策定後5年間の社会的背景
の変化や国の文化芸術振興施策の変化などを踏まえ、今後5年間(平成 26 年度~平
成 30 年度)の指針として、策定するものです。
5
第2章 前基本計画期間における取組みの検証と社会状況等の変化
1 前基本計画期間における取組
この章では、「札幌が文化芸術を振興することによって街を元気にし、元気な街が新
たな創造を生み出していく『花ひらく創造都市』」の実現に向けて、様々な観点から、
前基本計画の成果、5 年間の社会状況の変化を確認するとともに、見直しの方向性をし
めします。
(1)前基本計画の検証
まず最初に、前基本計画が掲げた 4 つの基本目標
「札幌市の文化芸術を育てる」
「札幌市の文化芸術をつなぐ」
「札幌市の文化芸術を発信する」
「札幌市の文化芸術を継承し、活かす」
のもとで計画された施策の取り組み状況に関して検証を行います。
検証にあたっては、特に、前基本計画策定時に社会的背景として挙げられた「行政
と民間の役割分担の変化」「新たな担い手の育成」「地方分権の進展」「コミュニティ
の変化」をふまえ、NPO、ボランティア、各種教育機関等との新たな担い手による
様々な活動の広がり、協働による新たな取組の状況にも着目し、分析します。
◎札幌の文化芸術を育てる
札幌が文化芸術を通した創造活動を続けていくためには、文化芸術活動の新たな担
い手を育成し、活躍できる環境づくりを進めることが必要との視点に立ち、①多様な
芸術イベントの開催、②文化芸術のための施設の整備・活用等、③子どもたちの文化
芸術活動の充実、④アーティストのステップアップ促進の取組みを進めてきました。
<具体的な成果>
①多様な文化芸術イベントの開催
○さっぽろアートステージ事業では、文化芸術団体や民間企業、学校などと連携し
て、演劇や音楽、美術などを中心に多彩なイベントを展開しました。
②文化芸術のための施設の整備・活用等
○あけぼのアート&コミュニティセンターを整備し、NPO 法人による管理運営、
文化芸術活動を行う個人、団体や地域住民に活用されています。
○500m 美術館を常設化することで現代アートが市民にとって身近なものとなる
とともに、アートマネージャー養成の現場として、大学教授、学芸員、アート
ディレクター、アーティストなどのアドバイスを受けながらボランティアによ
6
る企画立案、管理・運営を実践的に体験する協働の取組みが実現しています。
○札幌駅前通地下歩行空間広場を活用し、札幌駅前通まちづくり株式会社の管理運
営のもと、文化芸術関連のイベント、展示、情報発信など、個人から企業に幅
広く活用され、にぎわいを生み出しています。
③子どもたちの文化芸術活動の充実
○Kitara ファーストコンサート、おとどけアート、ハロー!ミュージアム、子ど
もの映像制作体験事業による、こころの劇場などの事業を実施し、若者や子ど
もたちが文化芸術に親しむきっかけづくりに取り組んできました。
④アーティストのステップアップ促進
○演劇公演・創造活動支援事業による演劇作品の創造活動拠点や、優れた演劇作品
を再演する機会に対する補助、本郷新賞を若手芸術家を対象とする賞への見直
しなど、アーティストのステップアップのための支援、環境整備に取り組んで
きた。また、札幌演劇シーズンでは、公益財団法人、NPO 法人、民間企業等に
よる実行委員会により、定期的な公演が開催され、札幌の演劇文化の振興に寄
与しています。
◎札幌の文化芸術をつなぐ
施設活用を中心とした文化芸術振興から、文化芸術活動の幅の広がりや価値観の多
様化に応えていくために、①連携による新たな事業の構築、②文化芸術をつなぐ新た
な役割の育成・支援、③アートセンターの検討、④意見交換の仕組みの構築に取り組
んできました。
<具体的な成果>
①連携による新たな事業の構築
○既存の観光イベントと連携した様々な文化芸術的要素を含むイベントの実施や、
道内の地域や団体との新たな連携事業として NPO 法人アルテピアッツァ美唄
との協力により、安田侃野外彫刻展—街に触れるーを開催しました。
○モエレ沼公園においては、市民団体と連携した音楽イベントモエレのホワイトク
リスマス、冬のアートイベント SNOW SCAPE MOERE、市民による市民のた
めの夏祭りモエレサマーフェスティバルなどが開催されました。
○産業振興分野との連携として札幌国際短編映画祭では、文化振興・国際交流・映
像教育等において重要な役割を果たしてきました。
②文化芸術をつなぐ新たな役割の育成・支援、③アートセンターの検討
○平成 21 年~22 年の2年間、芸術家や学識経験者など外部委員からなるアート
センター検討委員会を設置し、そこでまとめられた提言書をもとに具体化に向
けて検討を進めているほか、アートセンター機能のひとつである情報発信の一
7
環として、「アーティストバンク」の試行を始めています。
④意見交換の仕組みの構築
○札幌の文化芸術のあり方について、市民・芸術家・関係団体等が自由に意見交換
し、芸術文化に関する生の声を施策に活かすことを目的に、札幌文化芸術円卓
会議を設置しました。
◎札幌の文化芸術を発信する
市民や国内外の観光客がいつでもどこでも必要に応じて文化芸術に関する情報を
得ることができる仕組みづくりや、効果的な情報発信により札幌の都市発展につなげ、
文化芸術イベントを集客交流資源としていくために、①情報発信機能の強化、②国際
イベント・活動団体に対する支援に取組んできました。
<具体的な成果>
①情報発信機能の強化
○観光文化情報ステーションの移設・機能拡大に向けた検討をすすめました。また、
イベント登録件数も増加しており、利用者に多くの情報提供を行ってきました。
②国際イベント・活動団体に対する支援
○PMF(パシフィックミュージックフェスティバル)の開催により、世界レベル
の質の高い文化芸術の取組を継続し、広く発信してきました。
○サッポロ・シティ・ジャズは、平成 25 年度の開催にあたり、会場であるテント
の規模の拡大や東京公演の開催により、札幌市民、道内、国内へ魅力を発信し
てきました。
○文化振興に重要な存在となっている札幌交響楽団への支援等を行ってきました。
◎札幌の文化芸術を継承し、活かす
札幌において長い歴史の中で育まれてきた文化遺産や自然遺産の価値を認識し、再
評価していくとともに、五感を使った体験を通して新たな感動が生まれる場を提供し、
次世代に継承していくことを目標に、①文化遺産・自然遺産の保存・継承と理解促進
に取り組んできました。
<具体的な成果>
①文化遺産・自然遺産の保存・継承と理解促進
○文化財保護指導員による文化財普及講座を継続して実施しました。
○市民、事業者、行政が互いに協力して、札幌の歴史的な景観資源を街並みづ
くりを行うためのガイドブック、歴史を活かした景観まちづくりガイドの作成、
文化財や景観重要建造物等の景観資源を一体的に紹介する小冊子「れきけん×ぽ
8
ろたび」を発行しました。
○札幌市アイヌ施策推進計画に基づく、小中高生向けアイヌ文化体験講座の継続開
催を実施しました。
○重要文化財「豊平館」の保存修理および集客交流資源としての整備について、専
門家、市民等からなる検討委員会による検討を開始しました。
○様々な人や期間との連携・交流を図りながら、市民参加・ソフト重視の博物館づ
くりを進め、市民主体の企画展示の開催、年間を通じた各種講座、体験学習など
の普及交流を継続的に行いました。
9
(2)「文化芸術意識調査」結果
平成 23 年度に実施された「文化芸術意識調査」
(調査対象:①無作為抽出した 15
歳以上の市民 10,000 人<回答総数 2,895 件>へのアンケート郵送、②文化芸術施
設における対面式アンケート<回答総数 3,485 名>)からは、札幌市の文化芸術施
策に対して市民がどのような意識を持っているのかを知ることができ、今後の大きな
参考となりました。
○札幌市の文化芸術環境(文化芸術施設、鑑賞機会、参加機会)に対する満足度調
査結果は、郵送アンケートでは「満足している」5.0%、「どちらかと言えば満
足している」34.4%、会場アンケートでは、
「満足している」18.6%、
「どちら
かと言えば満足している」46.3%。
○札幌市が他都市よりも優れている、または他都市に誇れると思う文化芸術分野と
して、
「クラシック」
「ミュージカル」
「ジャズ」
「彫刻」が多く回答されました。
○日常生活の中で、優れた文化芸術体験をしたり、自ら文化芸術活動を行うことの
重要性について、「非常に大切だと思う」「ある程度大切なことだと思う」の合
計が、郵送アンケートでは 86.0%、会場アンケートでは 90.0%といずれも高
い結果となりました。
○札幌市の文化芸術環境がより良くなることにより期待する効果として、子供が心
豊かに成長する」
「市民が生きがいや楽しみを見いだせる」が多く回答されまし
た。
○公演や展覧会を鑑賞しやすい環境づくりに対するニーズとしては、「チケット・
入場料が安くなる」が一番多く、続いて「情報がわかりやすく提供される」が
多く回答されました。
○札幌市の文化芸術環境をより良くするために必要だと思う取組みとして「子供が
文化芸術に親しむ機会の充実」「情報発信の充実・効果的な広報の実施」が多く
回答されました。
これらより、市民は、文化芸術に親しむ機会の充実に加え、市民に情報を伝えるシ
ステムのさらなる工夫を求めていることがわかります。
10
(3)「円卓会議」からのメッセージ(2期分)
平成 21 年度から設置された「札幌市文化芸術円卓会議」は、札幌市文化芸術振興
条例第 10 条に規定する自由な意見交換の仕組みに位置づけるものとし、前基本計画
からスタートした札幌の文化芸術のあり方について議論を進める場です。平成 24年
度までに、2 期分の会議が終わり活動報告がなされています。
◎現状の評価システムをもっと有効なものに変えていく必要がある
・文化芸術施策の総花化を防ぎ、有意義な振興をはかるためには「行政評価」とは別
の新しい総括・検証システムの構築が必要。
◎行政・市民(企業)・アーティストという担い手の明確化と循環・補完
・コミュニティ(札幌市)の主体として文化的生活を営み、文化芸術の享受・支援者
として機能する「市民(企業)」、新しい価値を創造し、コミュニティに提供し、文
化芸術の発信者として機能する「アーティスト」、コミュニティの文化的な成長の
指針を構築・維持し、文化芸術の環境整備者として機能する「行政」の3つの主体
を明確化。
・これら3つの担い手を軸とした施策がスムーズに循環して、互いを補完し合うイメ
ージをつくる必要がある。
◎芸術の産業化というキーワード
・この循環を力強く推進させるための核となるキーワードとして「芸術の産業化」を
設定。
・「産業化」のキーワードのもと、「市民(企業を含む)」「アーティスト」「行政」の
三者の間で芸術に関する欲求や願い、価値や便益が滞りなく循環。その結果、札幌
が世界的に「文化・芸術の街」となり、市民や子供たちが誇りを持ち、世界中から
アーティストが集まり、文化人が多く住む街としての魅力アップにつながり、「文
化・芸術」が観光資源となり、観光客が増えるといった効果を期待できる。
◎アーツセンター機能の整備
・こうしたプラスの循環を軌道に乗せるために、札幌の中心部にアーツセンターとい
う仕組みを整備し、市民とアーティスト、行政の拠りどころ、協働する場に。
・アーツセンターの4つの機能「札幌らしい芸術を創りだす機能」「プロデューサー
やマネージャーなど実務の担い手を育てる機能」「芸術のつくり手を元気づけ、お
くり手・うけ手を世話するサポート機能」「より良い文化芸術政策・実務のあり方
を研究する機能」を有機的に紡いで実現させるために、だれがなんのためにどう働
くか、必要な仕組みやハードをどうつくるか、アーツセンターの性格を掘り下げて
考える必要がある。
11
2 社会状況等の変化
(1) 国の文化芸術振興の動向
この 5 年間の国の文化芸術振興の動向を踏まえ、札幌市もこの動向を念頭に置いた
取組を行っていく必要があります。
文化芸術の振興に関する基本的な方針(第 3 次基本方針)の閣議決定(平成 23 年 2 月)
「文化芸術振興を国の政策の根幹に据え、今こそ『文化芸術立国』を目指す」
・ 文化芸術への公的支援を社会的必要性に基づく戦略的投資とし捉え直す
・ 教育、まちづくり、観光・産業等周辺領域への文化芸術の波及効果を視野に入れる
・ 国、地方、民間等各主体の役割を明確化し相互の連携強化を図る
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律の施行(平成 24 年 6 月)
「実演芸術の水準の向上等を通じて実演芸術の振興を図り、心豊かな国民生活及び活
力ある地域社会の実現等に寄与する」
・ 劇場、音楽堂を地域の文化芸術の文化拠点として専門的な人材を配置
・ 公演等の企画や普及啓発等を行うことで活力ある地域社会の実現に寄与
クール・ジャパン戦略の推進(平成 22 年 6 月クール・ジャパン室設置/経済産業省)
・ アニメやマンガ、食文化、旅館、伝統
クール・ジャパンに係る文化庁の取組
工芸品など、欧米やアジアで人気の高
◯海外に向けて日本文化を発信
い日本の商品・サービス(クリエイテ
◯海外から人を呼び込める文化拠点の形成
ィブ産業)が多数存在
◯人材育成、人的ネットワークの形成
・ こうした「クール・ジャパン」の人気
を活かし、各省庁間連携により、内需掘り起こし、外需取り込み、産業構造転換に
よる新たな収益源・雇用の確保と地域経済活性化を目指し、コンテンツ海外展開、
国際共同製作促進、海外ロケ誘致、コンテンツ特区などを進める
(2)社会情勢の変化
この 5 年間、そして今後社会情勢には以下のような大きな変化が予想され、札幌市
の文化芸術施策もこの変化を念頭に置いた取り組みを行っていく必要があります。
文化芸術の新たな役割に社会が注目
・ 文化芸術を戦略的に活用し、まちづくりや地域活性化を行うアートプロジェクトが
12
全国各地で開催
・ 市民参加のもと、文化芸術の力により地域の活性化に取組み特に顕著な成績をあげ
ている市町村を文化庁が表彰(国も文化芸術を他分野に活用することを推進)(平
成 19 年より)
文化資源・文化財継承の重要性再認識
・ 平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災において、多くの尊い人命と財産が失われ
た中、文化芸術が心に安らぎを与え、地域の絆を強め、明日への希望を与えた
・
また、文化財を始めとした文化資源も数多くが被災し、復旧に長い時間を必要と
したり中には滅失したものがありました
・ 文化資源は、人類が未来にわたって共有すべき貴重な財産であり、これらを後世に
伝えていくことが、私たちの責務であることを再認識しました
「国から地方へ」、「官から民へ」
・ 地方分権の推進等。
・ 民間と行政の役割分担の見直し。
・ 非営利活動やボランティア活動等の活発化、企業のメセナ活動等の広がり。
人口減少・少子高齢化
・ 札幌市の人口は、平成 27 年 (2015 年)前後をピークに減少傾向に転じる。
・ 少子高齢化が急速に進行し、高齢化率は平成 27 年からの 10 年間で 25.1%から
30.5%へと上昇する見込み。
・ 少子高齢化、単身世帯の増加による、地域コミュニティの衰退や、文化芸術の担い
手不足の懸念。
・ 生産年齢人口の減少による経済規模の縮小、財政状況逼迫等により、地域の文化芸
術を支える基盤の脆弱化に対する危機感の広がり。
グローバル化・情報化社会の進展
・ アジア諸国の経済成長。
・ 札幌市を訪れる外国人観光客の増加。
・ Twitter、SNS の普及に代表される ICT(情報通信技術)の発展により、個人レベ
ルにおいて、地球規模での情報発信・収集が可能に。
・ これら世界が密接に結びつく中、アーティストがこれまで以上に世界とつながり、
鑑賞者も文化芸術に惹かれて移動。
・ 文化芸術が世界の人々と直接結びつく契機となっているほか、観光やまちづくり面
でも大きな注目。
13
(3)札幌市の動向
これらをうけて、札幌市においても以下のような動向がありました。
◯まちづくり戦略ビジョンの策定(計画期間:平成 25 年度-34 年度)
・ 「行政計画」から「市民計画」への転換。
・ 実施型から未来実現型への転換。
・ 市民、行政の役割の明確化。
○札幌における文化芸術の国際的な展開
・ 札幌国際映画祭では、毎年、国内外から 2000 を超える短編映画が札幌に集積し、
国際交流が活発化。
・ また、擬人化されたボーカル音源でユーザーが自由に歌声合成させることのできる、
札幌発バーチャルアイドル「初音ミク」の世界的な流行など、ICT の進展により、国
境の垣根を超えた新たなスタイルの文化が生まれている。
◯創造都市さっぽろ
・ 平成 18 年 3 月の宣言ののち、文化芸術の多様な表現に代表される創造性を活かし、
産業振興や地域の活性化などのまちづくりを進めている。平成 20 年度には、文化
庁長官表彰「文化芸術都市部門」を受賞した。
・ 現在は、「ユネスコ創造都市ネットワーク」加盟に向けて取り組んでいる。
◯札幌コンテンツ特区(平成 24 年 6 月特区計画認定)
・ 映像産業の振興、映像のプロモーション効果を活かした観光客の誘致や道産食品の
海外輸出など多様な産業への波及効果により、地域全体の活性化を目指している。
◯国際芸術祭(平成 26 年開催予定)
・ 「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、平成 26 年に札幌国際芸術祭を開催。
◯(仮称)市民交流複合施設の検討(平成 21 年度より)
・ (仮称)市民交流複合施設内に本格的な舞台や様々なジャンルの公演の鑑賞の場、舞台
芸術の創造の場となる「高機能ホール」や、札幌の文化芸術活動全体を支え育て、
一層推進するための拠点となる「(仮称)アートセンター」の設置に向けた検討。
◯重要文化財豊平館保存活用に向けた工事及び検討(平成 21 年度より)
・
耐震補強を含む保存活用工事の開始、リニューアルオープン後の活用方法の検討を
行うため、検討委員会を設置。
◯次世代型博物館計画の策定に向けた検討(平成 24 年度より)
・
活動成果の蓄積や新しい時代に求められる博物館について検討を行いながら、札幌
にふさわしい博物館像を構築。
14
3 見直しの方向性
前基本計画策定後の 5 年間で、先に挙げたとおり、様々な社会状況の変化がありまし
た。
「花ひらく創造都市」を実現していくために、以下に整理する方向性のもと、今後 5
年間の取組を進めていきます。
(1)札幌の文化芸術を継承する
札幌は、先人による厳しい自然との共生や闘いの歴史を経て発展した豊かな自然と
高度な都市機能が両立する日本有数の都市です。こうした自然環境や歴史の中におり
て、情報に鋭敏な感性と進取の気風がはぐくまれ、多様な文化が重なりあい、既存の
価値観にとらわれない独創性あふれる文化芸術が創造されてきています。
こういった歴史を知ることは札幌を再発見することでもあり、また、未来を見据え
るヒントが隠されています。さらに、東日本大震災を経て、文化資源が人々にとって
欠くことのできない貴重な財産であることを再認識したことをふまえ、先人達の様々
な息吹や自然の変遷を意識していく中で積み重ねられてきた文化遺産や自然遺産の
重みを社会全体で感じ、大切に守り、活用し、引き継いていく必要があります。
(2)文化芸術に関する社会的基盤の整備
①文化芸術施設における取組の充実
市民が多様な文化芸術を享受し、また、文化芸術を市民が主体となり発展させてい
く際には、文化施設が果たす役割には大きなものがあります。新たな地域の文化芸術
拠点の形成や、各施設と地域社会が有機的に結びつくよう、一層の取組の充実を図っ
ていくことが必要です。
②文化芸術に関する情報環境の充実
札幌市では、新たな文化芸術の息吹がいたるところで芽生えてきていますが、それ
らの情報が市民に十分に行き渡っているとはかぎりません。また、今後さらなる、市
民主体による文化芸術の発展を推進していくためには、情報発信・情報共有の仕組み
を整えていくことが必要です。
(3)文化芸術の社会的展開
①市民・企業等との協働のコーディネート機能の充実
札幌市主体の事業だけでなく、市民や民間の文化芸術団体等による事業が活発化し
てきている現在、行政の役割も明確にしながら、市民、企業、アーティストが多様な
15
役割を担い連携を強化していくためのコーディネート機能の充実が必要です。
②さらなる子どものきっかけづくりが必要
若者や子どもたちが文化芸術に親しむきっかけづくりを進めてきました。将来にわ
たり文化芸術活動を継承し、発展させ、活力ある地域社会の繁栄をもたらすためには、
こうした新たな創造の芽を大切に育み、発展させていく取組が今後も必要です。
③様々な分野と結びつく取組が必要
文化芸術を札幌の産業振興や地域活性化につなげていくために、文化芸術と市民生
活、産業など、様々な分野との結びつきや関係の変化にも目をむけながら、文化芸術
の持つ豊かな活力を社会に向けて展開していくことが求められています。
以上の方向性を念頭に、私たちは『花ひらく創造都市』の「花」をひらかせるために、
今後5年間で、「もっと土を耕し」、「もっと種をまき」、「もっと実をみのらせ」、次世代
にむけて「蓄え・伝え」ていきます。それを、「市民・企業・アーティスト・行政が一
体となり共創で」取り組くんでいきます。
この先の 5 年間で、もっと土を耕そう。
この先の 5 年間で、もっと種を蒔こう。
この先の 5 年間で、もっと実らせよう。
この先の 5 年間で、もっと蓄え・伝えよう。
市民・企業・アーティスト・行政が一体となり共創で取り組もう。
16
第3章 重点取組項目と計画推進のための視点
この章では、前章をふまえながら、本基本計画が目指す『花ひらく創造都市』の実現
に向けて、効果的・効率的と考えられる「重点取組項目」と「計画推進のため視点」を
示します。
1 重点取組項目
「花ひらく創造都市」の実現に向けた推進力を高めるため、以下の5つの「重点施策」
と、2つの「環境整備」を重点取組項目とします。
(1)重点施策
【5つの重点施策】
① アートセンター機能の推進
② 市民交流複合施設計画推進
③ 国際芸術祭の開催
④ 次世代博物館計画策定
⑤ 文化資産の整備と活用
(2)環境整備
【2つの環境整備】
① 基本計画の推進・評価の取組に向けた検討
② 情報発信・共有システムの整備
17
2 計画推進のための視点
本基本計画を効果的に推進していためには、「共創」が必要です。
なぜ、共創が必要なのでしょうか?
それは、前章でもふれた通り、これまで文化芸術を主に享受する側であった市民の立
ち位置が変化したことにあります。まちづくりや文化芸術への関心の高まりとともに、
ときには市民が主体となる事業や市民アーティストの出現など、関わり方が多様化して
きており、札幌の文化芸術振興は、行政だけではなく、市民も担う未来へと変化が求め
られています。
また、成熟期を迎える札幌において、文化芸術が持つ豊かさの価値を再認識し、さら
に発展させていくためには、市民、企業、アーティスト、行政による双方向による情報
発信や情報共有、共に取り組むための環境づくりが必要となっています。そのためには、
各主体が多様な役割を担い、一体となって、文化芸術振興のための未来への布石、投資
に力を注いで行かなければなりません。
今後は市民一人一人が文化芸術を支え、支援していく新しい担い手となることも見据
え、市民、アーティスト、企業、行政が文化芸術を共に創り、育てていくことが求めら
れています。
【運営・実施する側の視点】
(満足度や納得度はどうか、
創造的取組みか)
共創
【享受する側の視点】
【支える側の視点】
(質の高いサービスか、市民や
企業の力は活かされているか)
(ニーズを捉えているか、市民
のレベルはあがっているか)
18
第4章 重点取組項目
この章では、第2章で示した重点取組項目(5つの「重点施策」と2つの「環境整備」)
の取組内容について示していきます。特に、重点施策については、行政、市民・企業、
アーティストの各主体がどのような関係で、またどのような役割を担うのかを示します。
1 重点施策
①アートセンター機能の推進
②市民交流複合施設計画推進
③国際芸術祭の開催
④次世代博物館計画策定
⑤文化資産の整備と活用
① アートセンター機能の推進
・様々な主体や様々な施設、事業等の相互の連携をコーディネートしていくアートマ
ネジメントに取組み、札幌の文化芸術を一層推進するための拠点となる「アートセ
ンター」の実現にむけ、「(仮称)市民交流複合施設整備基本計画」(平成 25 年 5
月策定)に基づき、施設計画や運営体制などの管理運営計画の検討を進めます。
・市民、アーティスト、文化芸術団体、大学等教育機関などの様々な主体や、様々な
施設及び事業等との連携・協力により、①実演や展示などの企画や公開、②講座や
インターンシップ等による人材創出、③各主体のネットワーク形成・交流促進など
の活動支援、④様々な文化芸術の催しを紹介する情報提供などに取り組みます。
② 市民交流複合施設計画推進
・開館後 40 年以上を経過して老朽化により維持管理が困難である「さっぽろ文化芸
術の館」の後継施設となる「高機能ホール」のほか、アートセンター、都心にふさ
わしい図書館を基本機能とした「(仮称)市民交流複合施設」の実現にむけ、
「(仮称)
市民交流複合施設整備基本計画」(平成 25 年 5 月策定)に基づき、施設計画や運
営体制などの管理運営計画の検討を進めます。検討にあたっては、アートセンター、
図書館、民間施設の複合化のメリットも踏まえていきます。
・高機能ホールの整備については、さっぽろ芸術文化の館が担っていた①「様々なジ
ャンルの公演の鑑賞の場」としての役割を継承し、劇場法の策定も踏まえ、市民、
文化芸術団体、大学等教育機関などとの連携により、②「舞台芸術の公演の鑑賞の
場」、③「舞台芸術の創造の場」としての役割を担うことを踏まえた事業を行います。
19
③ 国際芸術祭の開催
・札幌の魅力をもとに、創造性に富む市民の力で、国内外との交流により新しい産業
や文化を生み出そうという理念の「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として、札
幌国際芸術祭を平成 26 年度から開催する。
・市民には単に文化芸術を見て楽しんでもらうだけではなく、ボランティア活動やワ
ークショップなどを通じて積極的に芸術祭に参加し、来客者を迎え入れもてなす立
場になってもらうよう働きかけていく。
・市全体で芸術祭を盛り上げていくために、産学官民が協力して実行委員会を組織し、
3 年に一度の継続的な開催となるよう目指していく。
④ 次世代型博物館計画策定
・札幌の自然と人との関わりなどを市民とともに探究し、札幌への理解を深め、創造
性を育む、街や市民に開かれた博物館づくりに向け、
「次世代型博物館計画」を平成
26年度に策定します。
・市民が資料の収集・保存、調査研究や体験学習会へ参加するなど、市民の参画と協
働、また、他の博物館や学校等教育機関、公共施設・観光施設などの関連機関との
連携・協力による、ネットワーク型の博物館を目指します。
⑤ 文化資産の整備と活用
・札幌において長い歴史の中で育まれてきた文化遺産の価値を再評価していくととも
に、体験を通じて新たな感動が生まれる場を提供します。また、次の世代に承継す
るために市民と一体となった保存、活用に取り組みます。
1)文化財の整備と活用
・豊平館、旧三菱鉱業寮等の歴史的建築物については、整備・活用に当たって、カフ
ェの導入や、現在、時計台で行われているボランティア団体等の活用による案内や
イベント企画への参加など、市民・企業と連携した取組みを検討していきます。
2)埋蔵文化財の整備と活用
・サッポロさとらんど内に保存されている縄文時代の遺跡を活用して、古代の食と文
化を体験できる遺跡公園を、市民参加による発掘調査を実施するワークショップな
どの事業を通じて、市民と協働で整備をすすめます。
20
2 環境整備
① 基本計画の推進・評価の取組に向けた検討
② 情報発信・共有システムの整備
① 基本計画の推進・評価の取組に向けた検討
・基本計画を着実に推進していくため、庁内関係部局との連携に向けた体制の検討を
進める、また、市民、NPO、大学、企業等や、芸術文化財団をはじめとした各種団
体等と引き続き連携を深める。
・国の動向や他都市の取組状況を踏まえながら、基本計画の取組状況の点検・評価に
向けた手法や仕組について検討を進める。
② 情報発信・共有システムの整備
・「文化芸術意識調査」の結果から、市民に対して様々な文化芸術に関する情報提供
について、さらなる工夫が求められている現状が浮かび上がっている。
・市民や国内外の観光客がいつでもどこでも必要に応じて文化芸術に関する情報を得
ることができる仕組みをさらに拡充する。また、札幌市が持つ情報については、都
市発展の戦略的な見地から、様々な情報伝達の媒体を活用しながら効果的な発信に
努める。
・一方向ではない市民との双方向性のある情報共有・発信や、観光情報との同時発信
などにより、市民や観光客に魅力的な発信方法を検討する、また、「観光文化情報
ステーション」に代表される情報発信機能の検証と機能強化についても検討を行う。
21
第5章 個別施策
「花ひらく創造都市」に向けて、重点取組項目に取り組むとともに、第4章では個別施
策を定めます。
重点取組項目が、創造都市の実現に向けた原動力となる取組であるのに対し、ここにあ
げる施策は、文化芸術を市民の暮らしに根付かせ、創造都市の基盤を固めるための総合的
な施策となります。
なお、先に述べた重点施策についても再掲します。
1
土を耕す・・・・基盤整備
2
種を蒔く・・・・未来への布石、育成
3
実らせる・・・・支援、保存・活用
4
蓄え、伝える・・情報の蓄積と発信
22
1 土を耕す・・・・基盤整備
・
市民の誰もが文化芸術に親しむことができるよう、文化芸術を鑑賞、体験、発表したり、芸
術家と交流するため、様々なイベント開催や施設の整備を行ってきました。今後は、地元文
化芸術団体の活動とさらに連携しつつ、これまでの取組を継続していきます。
・
また、将来の札幌の文化芸術活動の活性化につながるように、文化芸術に関わるデータの収
集や道内や道外他都市との情報交換、市民ニーズの調査分析などの調査研究に向けた取組を
行います。
①多彩な文化芸術イベントの開催
音楽、美術、演劇、メディア芸術などの文化芸術イベントを集中的に開催するとともに、
街のいたるところに文化芸術による賑わいを創出していきます。民間の主体的な取組とも連
携しながら、札幌の文化芸術活動に刺激を与え、多くの市民に親しまれる取組を進めます。
<事業例>
・ さっぽろアートステージ事業(継続)
11 月を文化芸術月間と位置付け、文化芸術団体や民間企業、学校などと連携し、美術、演劇、メ
ディア芸術などの文化芸術イベントを集中的に開催し、街のいたるところに文化芸術による賑わい
を創出していきます。特に全国トップレベルのスクール音楽祭については、今後さらに内容の充実
を検討します。
・ 札幌国際芸術祭の開催(継続)【再掲】
②文化芸術のための施設の整備・活用等
札幌市が有する文化芸術施設について、これまでの行政評価などの論点や市民議論を踏
まえ、市民が一層利用しやすく、さらに各施設と地域との一層のつながりを目指して、有
効な施策や施設運営を進めて行きます。新たに建設する文化芸術施設については、学識経
験者、専門家、利用者などの意見を取り入れながら検討を進めます。
また、様々な施設について、地域活性化の観点から、市民の文化芸術活動の拠点として
開放するとともに、施設の存続目的が終了したものについても、必要な改修を行うことに
より、自由な創作活動の場等への活用を検討します。
<事業例>
・ 文化芸術施設における自主事業の充実(継続)
劇場法の趣旨を踏まえ、文化芸術施設においては地域の文化芸術創造の拠点として、地域との
つながりを目指した自主事業の充実や、様々な形で市民が一層利用しやすい施設をめざし取組を
進める。
23
・(仮称)札幌国際芸術祭交流施設の運営(新規)
旧天神山国際ハウスを活用し、国内外のアーティストが滞在し、作品制作やワークショップな
どを行い、市民とアーティストとの交流の場として運営します。また、札幌国際芸術祭の時期は、
アーティストやその関係者が利用し、芸術祭の内容を充実させるよう各種取組や情報発信などを
行います。
・ 文化活動練習会場学校開放事業の実施(継続)
音楽、演劇などの文化芸術活動を行う市内のアマチュアグループや市民などに対して、小
学校の音楽室などを開放し、練習会場や創作の場として提供するとともに、利用者の利便
性の向上を図る取組みを継続します。
・ 道路や公園などの公共施設の活用(継続)
これまで 500m 美術館の常設化やさっぽろアートステージなど、地下歩行空間を活用し、市民
がより気軽に文化芸術を楽しめるような基盤づくりに取り組んできました。今後も、道路や公園
などの公共施設を自由な創作活動の場としてより一層活用し、市民がより気軽に文化芸術を楽し
めるよう、民間の主体的な取組とも連携しながら、取組を行います。
【再掲】
・ 市民交流複合施設計画の推進(新規)
③将来の文化芸術活動を活性化させるための調査・研究
将来の札幌の文化芸術活動の活性化につながるように、文化芸術に関わるデータの収集
や道内や道外他都市との情報交換、市民ニーズの調査分析などの調査研究に向けた取組を
行います。
<事業例>
・ 定期的なリサーチの実施等による市民ニーズの把握と活用(新規)
市民の文化芸術活動・ニーズに関すアンケート等を行い、検証や新規事業の企画等に関する調査
研究に取り組みます。
24
2 種を蒔く・・未来への布石、育成
・
文化芸術の本質として、これまで創りだされてきたものを基礎として、次々と新しい価値
を生み出されていきます。こうした新たな芽を育み、発展させていく必要があります。
①子どもたちの文化芸術活動の充実
文化芸術を継承し、発展させていくため、市民特に感受性豊かな子どもの頃から、文化芸
術に親しみ、その楽しさを実感する様々な機会を通じて、芸術的感性や豊かな心を育んでい
く必要があります。今後も、子どもたちがこのような体験をできるよう、広く民間の文化芸
術団体の活動とも連携しつつ、様々な機会を提供していきます。
<事業例>
・ 子どもの美術体験事業(継続)
学校に芸術家を派遣して一緒に創作活動を行う「ハロー!ミュージアム」、子どもたちを美
術館に招待して作品への興味や関心を高める「おとどけアート」などのプログラムにより、様々
な機会を通して楽しみながら美術を体験してもらう取組みを引続き行います。
・ K itaraファーストコンサート(継続)
市内の小学6年生全員を対象として、札幌コンサートホールKitaraでオーケストラ演
奏を鑑賞・体験する機会を引続き提供します。
・ こころの劇場(継続)
本格的なミュージカルの素晴らしさを感性豊かな子どもたちに体験してもらうため、市内
の全小学6年生を対象に鑑賞する機会を提供します。
・ 市民交流複合施設を活用した子ども事業の推進(新規)
市民交流複合施設のイベント等を活用し、次世代の文化芸術活動を担う子どもたちの豊かな
感性をはぐくむ取組に向けた検討を進めます。
②連携によるあらたな事業の構築
文化芸術の効用を点から面へと広げて行くため、教育、地域社会、福祉、経済など様々
な分野との連携に向けた取組を進めます。取組に当たっては、ボランティア、NPO団体
などの様々な主体や、北海道内の他市町村などの幅広い地域などとの連携をしながら、進
めて行きます。
<事業例>
・ 文化イベントと観光イベントの連携による賑わいの創出(継続)
PMF、サッポロ・シティ・ジャズなどの文化イベントはもとより、ライラックまつり、Y
OSAKOIソーランまつり、オータムフェスト、雪まつりといった札幌の四季を彩る様々な
観光イベントに文化芸術的要素をこれまで以上に加えることにより、集客交流資源としてより
25
一層魅力を高めていきます。
・ 北 海道内の地域や団体との新たな連携(継続)
道内には富良野市の演劇、東川町の写真、夕張市の映画、美唄市や洞爺湖周辺の彫刻など、
広く知られている文化資源があり、これらと札幌市が連携し、新たな創造を見出していきます。
・ ア ートによる地域活性化事業(新規)
文化芸術活動を通じ、地域の魅力再発見・活性化、課題解決などの取組をアーティストと連携
して進めます。また、こうした取組を行うNPO法人等に対する支援に向けた検討を進めます 。
・ 産業振興分野との連携(継続)
若手クリエイターやデザイナー、IT関連分野で起業を目指す人たちの支援を目的に、平成
13 年(2001 年)に札幌市デジタル創造プラザ(通称「ICC」インタークロス・クリエイティ
ブ・センター)を開設しました。
また平成 18 年(2006 年)からスタートした札幌国際短編映画祭は世界各国から多くの作品
を集め、日本初のショートフィルム見本市が開かれています。
札幌発の映像やデザインなどのコンテンツ産業の振興は、今後とも大きく成長していくこと
が期待され、札幌の産業全体の発展にも寄与することから、この産業分野と文化芸術がしっか
りと連携することで、札幌の発信力を確かなものとしていきます。
・ 文化芸術とビジネスとの連携強化(新規)
経済局との連携強化を行い、アーティスト支援の取組を進める。また、メセナカード等の有効
と考えられる仕組みについては、他都市事例等の研究を行うなどして導入に向けた検討を行いま
す。
・ 空き家・空き店舗などの活用支援(新規)
地域コミュニティの活性化を図るため、文化芸術活動の場所として、空き家や空き店舗な
どの活用に対する支援に向けた検討を行います。
26
3 実らせる・・支援、保存・活用
・
アーティストが育ち、定着していくように支援するため、アーティストがステッ
プアップするための支援や環境整備を行う。
・
文化芸術の活動の幅の広がりや多様な価値観へ対応するため、文化芸術の需要と
供給をコーディネートする仕組みを構築する。
・
札幌において長い歴史の中で育まれてきた文化遺産や自然遺産の価値を、再評価
していくと共に、体験を通して新たな感動が生まれる場を提供する。また、次の
世代に継承するために市民と一体となった保存と活用の仕組みを構築する。
① アーティストのステップアップ促進
文化芸術活動をさらに充実・発展させたいという意志を持っている個人・団体に対して、
活動拠点やプロモーションの機会を提供するなど、アーティストがステップアップするため
の支援や環境整備を行っていきます。
<事業例>
・ アートセンター機能の推進(新規)【再掲】
・ 演劇公演・創造活動支援事業費(継続)
広く市民に対し優れた演劇作品の鑑賞機会を提供するため、一定の評価を得た演劇作品の公演を
一定期間・集中的に行う「札幌演劇シーズン」の開催経費の一部を補助するとともに、優れた演劇
作品の創造活動拠点として、劇団が稽古場を借り受けた場合、当該賃借料相当額の一部を一定期間
補助します。
・ アーティスト・イン・レジデンス事業(継続)
市内の創造性を高め、まちの活性化を図るため、アーティスト・イン・レジデンスの実施を通
じて、国内外から芸術家を招き、市民が身近に文化芸術に触れ合う機会を提供します。
・ 若手を対象とした表彰制度の検討(継続)
将来に大きくはばたく可能性を秘めた若手の芸術家を表彰する制度や、継続的な活動を支援に
向けた取組を検討します。
・ パブリックアートを支える仕組みづくり及び若手アーティストが活躍する場の提供(継続)
野外彫刻などのパブリックアートについては、長い年月をかけて札幌市内に数多く設置されて
きましたが、全体を把握するシステムがなく、また、それぞれの作品が良好な状態で保存されて
いるとは言えない状況にあります。そこで作品を良好な状態に保ち、鑑賞するため、全市的に支
える仕組みづくりを行うとともに、札幌市内の空間を若手作家の発表の場として一定期間提供す
るなど、アーティスト支援の仕組みを検討します。
27
・ 助 成制度のあり方の検討(継続)
文化芸術活動団体に対して文化芸術振興助成金等の助成制度がありますが、現行の助成制度を
検証し、活動している個人や団体に対して、より重点的・効果的な支援を行うことが可能となる
仕組みを検討します。
② 文化芸術をつなぐ新たな役割の育成・支援
これからの文化芸術を推進していくためには、これまで以上に文化芸術を社会との関わり
の中で振興していく必要があり、創造する側、鑑賞する側、場の提供者、支援者など、様々
な関係者との間に入り、事業全体の仕組みを調整し、創り上げていくアートマネジメントは
なくてはならない機能です。また、これまで関わりの少なかった市民が一歩踏み出して、文
化芸術に参加してみようという機運を醸成し、受け止め、発展させていく体制も構築してい
く必要があります。こうした機能をアートセンターにおいて取り組むため、検討を進めます。
<事業例>
・ ア ートセンター機能の推進(新規)【再掲】
・ アートマネジメントの人材育成・活動支援のあり方の検討(継続)
アートマネジメントに関する教育プログラムや研修を行っている大学など関係機関と連携して、
人材を積極的に受け入れ、札幌市の文化芸術施設などの場を「鍛錬の場」として提供するなど、
アートマネジメント能力を有する人々を育成し、支援するためのあり方を検討します。
・ アートボランティアへの支援(継続)
PMF、サッポロ・シティ・ジャズ、Kitara、札幌交響楽団などには、その事業の趣旨
に共感し、ボランティア活動に参加する人たちも増えてきています。様々なアートイベント等に
関わってもらえるボランティア登録制度の検討や、団塊の世代を中心とした社会貢献活動に対す
る情報提供やきっかけ作りに向けた検討を進めます。
③ 文化資産・自然資産の保存と活用
札幌の貴重な文化資産や自然資産を大切に保存していくとともに、活用していくことで、
次の世代への橋渡しを行っていきます。
<事業例>
・ 文化財保護の担い手の育成と個性ある地域づくりの推進(新規)
文化財は地域のまちづくりに寄与する財産であることから、積極的な活用が必要です。そのた
めには、歴史的な価値を適切に評価し、まちづくりに活かすマネジメントができる人材を育成し、
その人材を中心として個性ある地域づくりを行う仕組みを検討します。
・ 伝統文化保存伝承事業(継続)
長年にわたり培われてきた地域に伝わる伝統芸能等の新たな担い手を育成し、末永く伝承して
いくことが必要です。関係機関と連携して学校や地域における体験学習など伝統文化に身近に触
れる機会を設け、広く市民に親しまれるよう積極的な普及活動に努めます。
28
・ アイヌ文化の保存・継承・振興(継続)
先住民族であるアイヌの人たちの伝統文化の保存・継承・振興については、これまでも南区小
金湯にある「札幌市アイヌ文化交流センター」においてアイヌ民族の文化を学ぶ体験学習など、
様々な取組みを進めてきましたが、今後もこうした取組みを継続して実施していくとともに、よ
り一層、アイヌ民族の歴史・文化・自然観などへの市民理解を推進し、アイヌ民族の誇りが尊重
されるまちづくりを進めます。
・ 都市景観・歴史的建造物等の保存と活用(継続)
歴史的建造物等については、都市景観条例に基づく景観重要建造物等に指定するなど保存に向
けた取組みを進めるとともに、歴史的な価値のある建造物等への景観的配慮を示したガイドライ
ンにより、街づくりに活用することが求められます。
また、文化財と景観など施策を一体的に進めていくため、情報の共有化をはじめ、連携した取
組みを行います。
・ 文化資産の整備と活用(継続)【再掲】
【再掲】
・ 次世代型博物館計画策定(継続)
29
4 蓄え、伝える・・情報の蓄積と発信
・ 市民や国内外の観光客がいつでもどこでも必要に応じて文化芸術に関する情報を得る
ことができる仕組みをさらに拡充します。
・ また、札幌市が持つ情報については、都市発展の戦略的な見地から、様々な情報伝達
の媒体を活用しながら効果的な発信に努めます。
・
さらに、文化芸術イベントの実施にあたっても、札幌市民はもとより、道内、国内、
海外を志向し、集客交流資源として積極的に発信します。
① 情報発信機能の強化
市民や観光客が文化芸術活動に触れ、参加するためのきっかけづくりとして、文化情報や
観光情報を集約するとともに、報道機関やホテル等の観光関係産業とも連携しながら、より
分かりやすく効果的に提供・発信します。
<事業例>
・ 情報発信・共有システムの整備(新規)【再掲】
・ 積極的な情報発信(新規)
イベント等について、地下歩行空間や市民交流複合施設など、集客力の高い空間で効果的な実施に
努める。
・ 観 光文化情報ステーションの移設・機能拡大(継続)
市民や観光客を対象に、文化・観光に係る情報を集約し、引き続き提供します。大通交流拠点の整
備による平成 26 年度末のオープンに向けて、
より快適で利便性の高い施設となるよう検討を進めます。
・ 文化芸術に関するデータバンクの構築(継続)
札幌市内には市民、企業、行政それぞれが文化芸術に関する膨大なデータや作品を有しており、
それらを有機的に活用することが期待されています。これらの情報を一元化し、文化芸術に関わる人
たちが自由に検索・閲覧、活用できるデータバンクの構築に向けた検討を進めます。
② 札幌の魅力を発信する国際的イベント・活動団体に対する支援
札幌の名前を世界に向けて発信し続けているイベントや活動団体に対しては、国際都市と
しての魅力を一層高めていく必要性から、札幌の対外的な顔として引続き支援します。
<事業例>
・ PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の開催(継続)
世界三大教育音楽祭として成長を続けているPMFは、世界の若手音楽家の憧れとなっています。
こうした世界レベルの質の高い文化芸術の取組みを継続し、広く発信し続けます。
30
・ サッポロ・シティ・ジャズ事業の拡充(継続)
札幌独自の都市型ジャズフェスティバルとして、芸術の森での野外ライブや市内各所で行う市民
参加型のライブなどを実施しています。今後は、海外ジャズフェスティバルとの交流などを一層促
進し、世界に向けて「ジャズが似合う街札幌」を発信していきます。
・ 札幌交響楽団の運営支援(継続)
Kitaraを中心に広く札幌市民に優れた音楽鑑賞機会を提供するとともに、学校や福祉施設
を巡回して行う演奏会の開催など、札幌の文化芸術振興に大きく寄与している北海道内唯一のプロ
楽団である札幌交響楽団を引続き支えていきます。
31
おわりに
本基本計画は、平成 26 年度~平成 30 年度までの 5 年間の基本計画です。第 1 章
2 節の「社会状況の変化」でも述べたように、札幌市の人口は平成 27 年を ピークに減
少傾向に転じます。人口における 65 才以上の割合は現在が 25%、10 年 後の平成 35
年には 35%にもなります。札幌は成熟した都市となり、若年層が減り、 税収不足も本格
化します。
だからこそ、この5年間は時代が大きく変わる節目であり、社会の仕組みを変えるチャ
ンスであるとも言えます。 札幌の文化・芸術施策・活動は、従来の行政主導型の取り組み
から、市民を中心とした 民間と行政が共に作り上げていく共創型の取り組みに移行してい
くはずです。
基本計画の次回見直しは平成 31 年度。予定通りならば、市民、企業、行政が一体と
なってそれぞれの知恵と工夫を出し合い相乗効果を発揮させているような「共創の姿」を
今よりももっと多く見られるようになっているはずです。そして、今回の重点施策と環境
整備にあった 5 つの施策はそれぞれ次のような成果を上げているはずです。
<重点施策>
① アートセンター機能の推進
と
② 市民交流複合施設計画推進
・・前年、平成 30 年にオープンした『市民交流複合施設』、特にその中核である 『ア
ートセンター』はまさに札幌の文化・芸術施策の中心的存在として、アートマネジメ
ントの領域で機能しはじめている・・
③ 国際芸術祭の開催
・・2 回目の開催も無事終わり、市民にもすっかり定着。3 回目への準備が進む・・
④ 次世代博物館計画策定
と
⑤ 文化資産の整備と活用
・・主な整備は終了し、市民や観光客に向け札幌の歴史を伝える新しい取組が行われてい
る・・・
<環境整備>
① 基本計画の推進・評価に向けた検討
・・設立に向けた具体案が出来上がる・・
② 情報発信・共有システムの整備
・・市民のみならず、観光で訪れた道外の人々にも使いやすい新しいシステムが稼働・・
はたして、予定通りに進んでいるでしょうか?
「共創の姿」はどうなっているでしょうか?
5年後にはこれらの施策が総括・検証され、その時の社会背景などを鑑みながら、 次の 5
年に向けた見直しを行います。札幌の文化芸術が花ひらき、実をつけ、また新しい芽を出
す・・ 札幌がそんな豊かな街になるように。
32
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