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GLOVIA smart
中堅企業向け新ERPソリューション GLOVIA smartにおけるSOAへの取組み Approach to SOA in GLOVIA smart, Newly-Released ERP for Mid-sized Businesses あらまし 57, 6, 11,2006 年商規模が30億円から100億円クラスのお客様は,必要な機能を持つパッケージをそのと きの状況に合わせて導入(ガートナー調査資料2005年11月)される傾向があり,このプロ セスを意識したシステム構築が求められる。そこで,富士通は,経営環境の変化に合わせて パッケージを入れ替えられる仕組み,つまり増改築型でパッケージを導入できる仕組みであ るGLOVIA smart SOAを提供する。 このGLOVIA smart SOAは,.NET FrameworkをベースにSQL Server 2005を用い, XMLをデータ交換の基本としたXML-DBからできている。さらにパッケージ間を接続でき るようにしたデータ交換Webサービス(データ交換属性,項目の意味なども含めた標準レイ アウトも用意)を提供し,人の介在を減らすとともに,データの正確性,網羅性,妥当性の 向上を図っている。 本稿では,パッケージ間の新たな連携の仕組みとしてGLOVIA smart SOAの概要と連携 の仕組みについて述べる。 Abstract Customers with annual sales of 3 to 10 billion yen tend to request packages with customized functions (Gartner, Nov. 2005), and manufacturers must be able to flexibly construct systems that are tailored to individual customers. To give manufacturers this ability, Fujitsu provides the GLOVIA smart SOA, which is a structure for replacing packages when business environments change. With this structure, customers can easily and flexibly improve their systems by adding and rebuilding packages. GLOVIA is based on the .NET Framework. It uses MS SQL Server 2005 and Oracle XML-DB, which supports XML-based data exchange. By providing data-exchange Web services that enable packages to be interconnected, GLOVIA helps reduce the need for human intervention and improves the accuracy, completeness, and validity of data. Standard layouts, including data exchange attributes and field meanings, are also provided. This paper gives an overview of GLOVIA and describes its structure for linking multiple packages. 堀 学(ほり まなぶ) 中堅ソリューション事業本部商品開 発部 所属 現在,GLOVIA smart 製品のイン フラ基盤の共通化に従事。 FUJITSU.57, 6, p.615-621 (11,2006) 615 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み 図り,製品群の拡大を行う予定である。 ま え が き 本稿では,パッケージ間の新たな連携の仕組みと 中堅市場のIT投資は年5.6%伸長で,今後の有望 市場になると見られている(図-1)。また,日経ソ リューションビジネスの調査では中堅ERP市場の パッケージライセンス売上高の伸びは11.2%と,大 してGLOVIA smart SOAの概要と連携の仕組みに ついて述べる。 GLOVIA smartのコンセプト 手の2.5%を大きく上回っており,富士通として是 GLOVIA smartは,中堅市場シェアNo.1(1)のERP 非取り組まなくてはならないマーケットであるとの パッケージGLOVIA-Cの豊富な実績を基に更なる 認識を強めている。 進化を遂げた統合ERPパッケージソリューション 今まで富士通の中堅企業向けパッケージは,オー として製品化したものである。今までのGLOVIA プン化に伴い,多種・多様なパッケージを用意し, ブランドイメージを生かしつつ,新たな中堅企業向 お客様に対する選択肢を広げた反面,パッケージ間 けブランドとして,GLOVIA smartをGLOVIAブ の接続性に大きな課題を残していた。つまり,パッ ランドのサブブランドと位置付けるとともに,富士 ケージが各開発元の考え方で作成され,お客様の課 通の中堅企業向けパッケージにはすべてこれを冠す 題をトータルに解決する状況にはなかった。その結 ることとした。GLOVIA smartの特長を一言で言 果の一つが,「パッケージ間でのデータ連携が簡単 うと,「中堅企業向け統合ERPを『増改築型』で提 にできない」という現象として現れ,パッケージ導 供する富士通の新しいパッケージソリューション」 入SE作業量の増大の一因となっていった。このよ である。以下にGLOVIA smartのブランドコンセ うな環境から脱皮すべく,GLOVIA smart開発規 プトと製品体系について述べる。 約の策定を行い,具体的には開発基盤の統一,エル ● ブランドコンセプト ゴノミクスを意識したGUIの統一,設計ドキュメ (1) スマートに「選べる」・・・豊富なパッケージ ントの統一,製品マニュアルの統一など,各種標準 ソリューションが選択できる。パッケージ製品 化を図った。そしてSE会社で構築する業務パッ 群をGLOVIA smart SOA(後述)との接続性を ケージから標準化の適用を開始し,その後連携技術 図ることで,お客様の状況に合わせた製品選択 部分を生かしてパートナ様,ISV様製品との連携を の幅を広げる。 (2) スマートに「つながる」 ・・・つなげたいシス テムとスムーズに連携できる。GLOVIA smart 年5.6%の伸長が期待できる 製品と連携が可能な製品をGLOVIA smart SOA を介して接続することにより,短期間での導入 IT投資の推移 中堅市場(従業員数 1000人未満) 大企業(従業員数 1000人以上) 1.60 (3) スマートに「見えてくる」 ・・・会社の「今」 がリアルタイムに可視化できる。例えば, 1.50 1.40 IT投資伸長倍率 が可能となる。 GLOVIA smart会計情報システムに集約される 平均 年5.6%伸長 1.30 1.20 データを蓄積・活用することで,見えにくかっ 1.10 た経営状況の今を見ることが可能となる。 1.00 0.90 ● GLOVIA smartの製品体系 0.80 GLOVIA smart製品は図-2示すように大きく3種 0.70 0.60 類のソリューションに分かれる。 0.50 2005 2006 2007 2008 2009 2010 年度 出典:IDC Japan,6/2006「国内産業分野別IT市場:企業規模別 2005年下半期分析と 2006年∼2010年の予測」 (J6151004) (1) フロントソリューション ポータル,CRM,COMMERCE,ワークフロー があり,パッケージ全体の顔となる部分である。 図-1 IT投資の推移 Fig.1-Transition of IT investment. 616 (2) 細業種ソリューション 製造業向け(組立,加工,装置),卸売業向け FUJITSU.57, 6, (11,2006) 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み 製品体系 フロント ソリューション サービス業 パートナ様 パッケージ テ ル ホ テ ル ホ enabled 商品 人材 材派 派遣 遣 人 (サービス連携,ルーティングなど) ・・・ ワークフロー ワークフロー 配 送 輸 配 送 輸 サービスバス 門 店 専 門 店 専 既存業務 パッケージ ・・・ 販 店 量 販 店 量 工 加 工 加 ・・・ certified 商品 ショ ョッ ッピ ピン ング グ シ セ セン ンタ タ 小売業 産 財 卸 生 産 財 卸 生 卸売業 費 財 卸 消 費 財 卸 消 製造業 食品 品製 製造 造・ ・ 卸 食 卸 COMMERCE COMMERCE 置 装 置 装 CRM CRM 立 組 立 組 業種 ソリューション ポータル ポータル ・・・ ・・ ・ Interstage Service Integrator ・・・ ・・・ お客様システム 既存 既存 システム システム SOA 共通業務 ソリューション ISV様 商品 会計,人事・給与 会計,人事・給与 開発規約に準拠した富士通の取り扱い商品 開発規約に準拠したパートナ様の商品 certified商品: enabled商品 : 図-2 GLOVIA smart製品体系 Fig.2-Product system of GLOVIA smart. (食品製造・卸,消費財卸,生産財卸) ,小売業向け (量販店,ショッピングセンタ,専門店) ,サービス 業向け(輸配送,人材派遣,ホテル)などがあり, ぞろ 細業種ごとの深い品揃 えが必要である。この品揃 GLOVIA smart SOAの概要 ● GLOVIA smart SOAの考え方 年商規模が30億円から100億円クラスのお客様は, えに関しては,パートナ様の得意技製品との連携な 必要とするすべてのパッケージを同時に導入するこ くしてできない部分である。 とはなく,「予算に合わせ,かつ業績という時間軸 (3) 共通業務ソリューション で,順次導入する」つまり「必要な機能を,必要な どこの会社にも必要で,かつ,法的なルールを意 ときに導入する(組み合わせて使う)」というスタ 識した製品群(会計,人事・給与)のため,競合も イルを前提とした製品展開が求められている。 多い分野である。そのため,会計情報システムの場 GLOVIA smart SOAは,この製品展開をスムーズ 合は,会計専用のデータウェアハウスを持つなど, に行うためのものである。 一味違った機能を持たせ,差別化を図っている。 例えば,最初に会計パッケージを導入した場合, これらのデータ交換の土台がGLOVIA smart SOA 会計パッケージは独立して動作し(マスタ,トラン である。また富士通だけではすべてのソリューショ ザクションデータは各パッケージで持つ),その後 ンを揃えることができないため,パートナ様の製品 販売パッケージの導入に合わせてGLOVIA smart との連携を図り,ソリューションの広がりを求めた SOAをインストールし,会計と販売とがWebサー 「certified(保証)/enabled(認定)」という認定制 ビスを利用してデータ連携が開始される。つまり, 度を設けた。これによりパートナ様製品を核とした 図-4に示すように,交換するデータは仲介者である 品揃えと提案範囲の広がりに貢献でき,パートナ様 GLOVIA smart SOAを意識したXML形式のデータ ビジネスの機会損失を減らしていけると考えている。 交換方式となるため,相手先業務の関係で項目が追 (4) GLOVIA smartの規約体系 加されても他業務に影響を与えることはない。さら 新規開発品,既存パッケージ改版品,certified製 に,交換するデータがGLOVIA smart SOAに一時 品,enabled製品に分けて,開発時に守るべき規約 的に蓄積されるため,各業務の運用に合わせたデー を一覧化して一部公開している(図-3)。 タ交換が可能となるなど,今まで以上に柔軟な連携 が可能となる。 FUJITSU.57, 6, (11,2006) 617 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み GLOVIA smart 開発規約 章項目 インフラ 規約 画面デザイン 規約 新規開発品 既存PKG改版品 certified商品 プラットフォーム ミドルウェア 開発ツール セキュリティ etc. 画面フレームワーク ロゴ・ロゴ背景 画面表示 画面レイアウト 画面遷移 マイレイアウト etc. プラットフォーム ミドルウェア セキュリティ etc. 画面フレームワーク ロゴ・ロゴ背景 画面構成(配色) IE6.0以降 業務共通処理 方式規約 マスタ規約 コード定義 締め日処理 帳票設計 etc. コーディング 規約 連携方式 規約 命名規約 ログ出力 フォルダ構成 コーディング規約 SQL規約 業務系API etc. シングルサインオン GLOVIA smart SOA連携規約 必須ドキュメント および記載内容 開発ドキュメント GLOVIA準拠 第三者検証 シングルサインオン GLOVIA smart SOA連携規約 規定内容と同等の ドキュメント GLOVIA準拠 第三者検証 − ドキュメント 規約 品質規約 (基準) − GLOVIA smart SOA連携規約 − − − − enabled商品 − − − − GLOVIA smart SOA連携規約 − − − − 図-3 標準化規約 Fig.3-Development agreement. 基 幹 人事給与 系 SQLServer2005 (XML-DB) API GLOVIA smart SOA 会計 てマスタ系データ交換フォーマットの規定から開始 ポータル API COMMERCE 情 した。 報 ● GLOVIA smart SOAの動作環境 系 OS:Windows 2003 Server以上 XML XSL 販売 .NET Framework 動作環境は,以下のとおりである。 CRM 新 システム 図-4 GLOVIA smart SOAの考え方 Fig.4-Concept of GLOVIA smart SOA. .NET Framework 2.0以上 DB:SQL Server 2005(XML-DBを利用) GLOVIA smart SOAによるマスタ情報交換 人事・給与システムからのマスタ情報配布例 (データを中心に)について図-5を基に説明する。 ● データ交換フォーマットを標準化し共通APIで Webサービスを利用 将来への接続性を考え,データ交換フォーマット を個別に考えるのではなく,想定される接続先との 【前提】 製造業A社に,即戦力として「田中 学」さんが 中途採用され,会計データの管理と販売データの管 理を担当することになった。 フォーマットの擦り合わせと標準化を行った。そし 【流れ】 てこのフォーマットでデータを作成し,Webサービ (1) 田中 学さんの入社に伴い,人事・給与シス ス経由でデータ処理を依頼することで,データ交換 テムへの情報登録が最初に行われる。この人 を非同期で実現できる。企業のあり方を考えて会計 事・給与システムは,「従業員姓・従業員名・生 処理を中核にした形で品揃えを行い,これに合わせ 年月日・年齢・性別」を持っているが,性別は 618 FUJITSU.57, 6, (11,2006) 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み ほかのシステムと異なり数値形式のフラグ 異なる)を用意したWebサービスで吸収する仕組み 「0/1」で管理されている。またデータ交換に備 え,ロジックが必要な処理(この場合は姓名を が組み込まれている。 (2) 人事・給与システムはマスタ登録/事前処理を 一つにする前処理)を事前に行う。 行 っ た 後 , Web サ ー ビ ス を 用 い て , GLOVIA なお,GLOVIA smart SOAでは,設計/実装レベ smart SOAへデータを受け渡す。 ルでの分かりやすさを考え,項目名のつけ方,項目 (3) GLOVIA smart SOAは,入手したデータを標 の意味付けなどを標準化してある。また今回の人 準フォーマットに変換した後,XML形式で一時 事・給与システムは,渡したいデータフォーマット 的に格納しておく。 とGLOVIA smart SOAが持っている標準フォー (4) 販売/会計システムはマスタ更新の運用に従っ て,GLOVIA smart SOAへデータを取りに行く。 マットの違い(項目の意味は同じだがデータ表現が 取出しフォーマットに従い,XSLが必要項目, 連 携 API EMP_LNM ソリューション田中 A EMP_FNM 学 EMP_BDY 1978/11/11 EMP_AGE 27 EMP_SEX 0 EMP_NM 田中学 EMP_BDY 1978/11/11 EMP_AGE 27 EMP_SEX 0 データ表現形式を揃えて,販売/会計システムに API GLOVIA smart SOA Web サービス マスタデータをXML形式で渡す。 ソリューション B (5) 渡されたマスタデータは,それぞれが持つマ スタ更新データとし,各パッケージが取り込ん XML XSL で,自分のマスタを更新する。 このようなプロセスを経ることで,各パッケージ 0⇒男性 / 1⇒女性 従業員名 田中学 生年月日 1978/11/11 年齢 27 性別 male 住所 − S_NAME 田中学 S_SEI M のマスタの整合性が順次取れていくことになる。 GLOVIA smart SOA連携パターン M⇒男性 / W⇒女性 「.NET Framwork」上で動作するアプリケー ション連携パターンの例(制御を中心に)を,図-6 図-5 GLOVIA smart SOAによるマスタ情報交換(例) Fig.5-Master information interchange by GLOVIA smart SOA (example). を基に説明する。 事前準備として業務アプリケーション側は,Web アプリケーション側から特定情報を更新する場合の例 GLOVIA smart SOAが提供するWebサービスAPI群 Webサービス GLOVIA smart SOA 会計 PKG (1)受付API ターコイズ ターコイズ 販売管理 共通 XML 例)人事・給与 販売管理 (2)登録API OFFICE 他PKG,既存 システムなど 仮想テーブル 例)会計仕訳連携 販売 管理 検索API 共通 XML (3)登録結果 確認API 受付API 登録API PKG側 マスタ類 検索API 登録結果確 認API GLOVIA smart SOA 提供のAPIの組込 .NET Framework 図-6 GLOVIA smart SOA連携パターン Fig.6- GLOVIA smart SOA structure for linking multiple packages. FUJITSU.57, 6, (11,2006) 619 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み ① SOAでつながるパッケージを増やす⇒連携APIの拡充 GLOVIA smart 商品の品揃え強化(2006年度∼) ② 他社パッケージ,顧客資産との接続性の強化(2007年度1Q∼) ③ SaaSビジネスへの対応(2007年度∼) 〔迅速で柔軟な顧客システム統合化の実現〕 ① 品揃え強化 (連携APIの拡充) ・細業種整備 ・パートナ様得意技との連携 GLOVIA smart 他社 PKG 会計 顧客 資産 GLOVIA smart SOA 販売 自社システム でのSOA活用 他社 PKG 人事 enabled ③ SaaSビジネスへの対応 ・自社導入型システムでの SOA活用に加えて ・オンデマンド型での サービスビジネス開始 他社PKG・顧客資産 certified 生産 〔自社導入型+SaaS型へ〕 ② 接続性強化 ・他社パッケージ ・顧客の既存ソフト資産 SaaSビジネス基盤 他社SOA (SAP,Oracle ) など) 顧客 資産 他社 PKG 販売 会計 人事 certified ・・・ enabled 図-7 今後の展開 Fig.7-Development in the future. サービスの中で利用したい機能に合わせて,APIを のだろうか。一言で言えば「所有から利用へ」いか 順序だてて業務アプリケーション内に記述する。 にスムーズにシフトできるかである。以下,GLOVIA (1)人事・給与システムは,渡したいすべてのマ smartとGLOVIA smart SOAの今後の展開につい スタ情報ができ上がった時点で,順次APIを呼び て述べる。 出し,GLOVIA smart SOAにデータを渡す。 ● なお,このタイミングで,人事・給与システムか SOAとISIとの統合(一本化)を開始 現在,GLOVIA smart SOAとISI(Interstage らマスタ情報のコントロールは外れる。その後,確 実に渡ったかを登録結果確認用APIで行う。 所有から利用に備え,基盤であるGLOVIA smart Service Integrator)とは,役割分担をして共存関 (2) GLOVIA smart SOA は , XML 個 別 フ ォ ー 係にある。中堅企業向けに設計すると, 「.NET環境 マット(人事・給与フォーマット)から,XML とJ2EE環境」が同一サーバとなり,中堅のお客様 標準フォーマットに変換した後,マスタ情報交 には装備が大き目である。そこで,軽量かつ使いや 換が完了するまで一時的にデータをXML-DB形 すく,そしてマスタ情報交換用のWebサービス機能 式で保存する。 を持つGLOVIA smart SOAの特長を生かしつつ, (3) 利用したい側(例:会計)が自分のDBだけで 将来の維持管理コストの削減を念頭に,標準的な なくGLOVIA smart SOA内の一時テーブルも参 サービスを呼び出す機能を持つISIとの統合化へ向 照することで,タイムリにマスタ変更に対応し け動き出した。この統合は,標準的なサービスバス た処理を提供することも可能となる。このとき, に加え,事前に用意されたWebサービス(中堅企業 XML標準フォーマットから,会計が必要とする 向けマスタ交換サービス)が付加されることで,他 XML個別フォーマットに変換して提供される。 社との差別化要因として大いに期待できる。 GLOVIA smartとGLOVIA smart SOAの今後の展開 ● 所有から利用へ,GLOVIA smartビジネスをシ フトチェンジ GLOVIA smartは発展途上にある製品であり, 現時点でのビジネスモデルは,ライセンス購入& まだまだ拡張すべき点,強化すべき機能など課題も 自社設置型で,各パッケージをWebサービスで接続 ある。 するという,お客様ごとに閉じた範囲内を想定して GLOVIA smartの目指すべき方向はどこにある 620 いる。しかし,今後更なる拡大を考える上でのポイ FUJITSU.57, 6, (11,2006) 中堅企業向け新ERPソリューションGLOVIA smartにおけるSOAへの取組み ントは,「所有から利用へ」ではないかと思われ, む そのベースはやはりSOAである。 す び つまり「ライセンス購入&自社設置型」から「第 中堅市場の激しい変化に追随し,企業の抱える経 三者が提供するサービスを,使用量に応じた支払 営課題をいかに解決に導くかが,近年の業務システ い」へ徐々にシフトしていくものと考えている。こ ムに求められてきている。これを解決する一つが標 れがSaaS(注1)/BPO(注 2)である(図-7)。中でもSaaS 準化(コードの統一,データの統合化,仕事の仕方 は,利用者にとって使いたいサービスを選んで業務 の統一など)であり,これを推し進めたのがSaaS プロセスが構築でき,提供者は自分の手元のサーバ モデルである。パターン化することが標準化の基本 から全国のお客様にサービスが提供できることによ であるが,技術の進歩に合わせてデータの持ち方, る保守性の向上が図れるなど,利用者・提供者側に 処理の方式などを変化させていく柔軟性がGLOVIA とってWin/Winになれる仕組みである。 smartには必要で,それがGLOVIA smart製品体系 技術的に解決しなければならない問題も多いが, へ参画していただける仲間を増やすポイントにもな 今後市場規模が大きくなると期待される分野である。 ると考えている。つぎにSaaSモデルは,その第一 歩を踏み出したばかりではあるが,富士通および富 (注1) Software as a Serviceの略。お客様が開発者などからソ フトウェア提供を受けるに当たり,必要な機能のみを選 択してインターネット経由で利用できるようにしたソフ トウェア。また,それを実現するためのメカニズム,あ るいはそのようなソフトウェア提供形態。 (注2) Business Process Outsourcingの略。社内業務そのもの を情報システムの運用とともに,外部に委託する形態。 士通グループの技術とノウハウを生かし,さらに新 たな仕組みを創造・融合させることで,中堅市場へ の素早い対応を目指していくつもりである。 参 考 文 献 (1) 2004-2005 機能拡張するERP市場の実態と戦略展 望.矢野経済研究所(2005) . FUJITSU.57, 6, (11,2006) 621