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付属資料 1
TRIPS協定のポイント
資-1
資-2
TRIPS協定のポイント
第1部
一般規定及び基本原則
(1) ミニマム・スタンダード(第1条)
①TRIPS 協定が定める規範は全加盟国が一律に遵守することが要求される最低基準であり
国別の事情に応じた例外は認められないこと、
② 各国が国内法で TRIPS 協定に定める以上の水準の保護を与えることは何ら妨げられない
こと、
の最低基準原則を明示。
(2) 既存の条約との関係(第2条)
パリ条約(1967 年ストックホルム改正条約)の実体規定で定められた保護水準を最低基準と
し、それに+αするアプローチ(パリ・プラス・アプローチ)を規定。
(3) 内国民待遇(第3条)
他の加盟国国民への内国民待遇の付与が原則。パリ条約、ベルヌ条約、ローマ条約及びワシ
ントン条約中に既に規定されている例外を除く。
(4) 最恵国待遇(第4条)
従来の知的財産権条約にはなかった TRIPS 協定の特色の 1 つ。TRIPS 関連事項について、協
定の保護水準を上回る 2 国間取極を締結する場合には、他の国にもその利益を均霑しなければ
ならない。
ただし、ベルヌ条約及びローマ条約で認められているもの、著作隣接権のうち TRIPS 協定で
規定されていないもの、既存の国際条約に基づく措置、特許協力条約に規定された手続につい
ては例外となる。
(5) 消尽(第6条)
旧テキストは国際的権利消尽問題(並行輸入)について各国の自由としていたが、これに対
して米・スイスが強硬に反対した結果、TRIPS 協定上の各条項は権利消尽に関する紛争処理で
は援用できないとされた。
この結果、権利消尽問題について紛争が生じても、TRIPS 協定違反として WTO の紛争解決
手続を利用して解決することはできない。ただし、第 3 条(内国民待遇)及び第 4 条(最恵国
待遇)の原則には服する。
第2部
知的所有権の取得可能性、範囲及び使用に関する基準
1.著作権・関連の権利
(1) ベルヌ条約との関係(第9条)
①ベルヌ・プラス・アプローチ
ベルヌ条約(1971 年パリ改正条約)の実体規定で定められた保護水準をベースとし、それ
に+αするアプローチが取られている。
②著作者人格権の排除
著作者人格権については、米国が強硬に反対した結果、TRIPS 協定から除外された。(米
国はベルヌ条約に加盟しているものの、人格権の保護については明文の保護が存在しない。
人格権の導入については、映画産業界からの強硬な反対があった。)
(2) コンピュータプログラム・データベース(第 10 条)
コンピュータプログラムについて、ベルヌ条約の言語著作物 (literary works)として保護さ
れることが明記。最も重要な成果の一つ。
資-3
(3) 貸与権(第 11 条・第 14 条(4))
コンピュータプログラムについては貸与許諾権の付与が義務付けられるとともに、映画の著
作物については条件付(権利者の複製権を実質的に侵害するような広汎なコピー行為が生じて
いる場合)で貸与許諾権の付与が義務付けられた。
レコード製作者に対して、貸与許諾権を付与。但し、我が国のように TRIPS 協定採択時に
おいて、権利者に衡平な報酬請求権制度を有している国では、実質的な被害が生じていない
限り、この義務から免除される。
(4) 保護期間(第 12 条)
写真又は応用美術(ベルヌ条約上 25 年以上とされている)を除き、自然人の寿命以外を
基礎に算定されるものの保護期間は 50 年間とされた。
(5) 著作隣接権(第 14 条)
米国は、隣接権制度を持たず、レコード製作者を sound recording の著作権者として保護する
が、実演家・放送事業者には権利を付与していないため交渉が難航。
最終的に以下の通り合意。
①実演家に対し、実演の固定・固定物の複製権・放送・公衆への伝達に関する権利を認める。
②レコード製作者に対して、レコードの複製権を認める。
③放送事業者に対して、放送の固定・固定物の複製・再放送等の権利を認める。
④実演家・レコード製作者については 50 年間、放送事業者に対しては 20 年間の保護を規定。
2.商標
(1) 保護の対象(第 15 条)
商標・サービスマークの保護について、登録主義・使用主義ともに許容する規定。
(2) その他の要件(第 20 条)
商標の使用は、特別の要件(他の商標と共に使用、特別な形式で使用、出所識別能力を損な
う方法で使用等)によって不当に妨げられないことを規定。医薬品等の物品についての公益的
必要性にも配慮されている。
3.地理的表示
(1) 保護対象・保護内容(第 22 条)
①地理的表示の定義
単なる商品の出所地名ではなく、その商品の品質・名声・特性が原産地に主として起因す
る表示(名称に限られない)。
(例)ボルドー、ポルト、ピルゼン・ビール、マイセン磁器、スイス・チョコレート、
ゾリンゲン鋼製品、ペルシャ絨毯等
②公衆を誤認させるような地理的表示の使用の禁止、商標登録の拒絶・無効化
加盟国は、(a)地理的表示について公衆を誤認させる場合、これを防止するための法的手
段(民事裁判による権利行使)を利害関係人に付与しなければならず、(b)誤認を生じさせ
るような地理的表示を含む商標を、職権又は利害関係人からの申立により、登録を拒絶・無
効としなければならない。
(2) ワイン及びスピリッツの特別な保護(第 23 条)
ワイン等について、特に EC の要求を受けて、追加的な保護が講じられている。
ワインとスピリッツの場合には、第 22 条と異なり、公衆の誤認混同が要件とされず、地理
的表示と並んで正しい産出地名や「種類」「タイプ」「イミテーション」「風」等の表現を伴
っていても使用が認められない。
ただし、米国等の反対もあり、民事裁判の行使の代わりに、行政的な規制による保護でも協
定上許容されることになった(我が国は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」に基づ
く地理的表示の表示基準の告示で実施)。
資-4
(3) 国際交渉及び例外(第 24 条)
理事会が地理的表示に関する規定の適用を検討する(1 回目の検討は WTO 協定効力発効の
日から 2 年以内)こと、地理的表示の強い保護に対する例外を規定。例外規定としては、既得
権保護(1994 年 4 月 15 日の前少なくとも 10 年間又は同日前に善意で使用)、一般名称化やぶ
どう品種の名称となっている地理的表示の例外、申立の除訴期間(不正使用が知られるように
なってから又は商標登録から 5 年以内)等を規定。
4.意匠(第 25~26 条)
新規又はオリジナルであって、独自に創作された意匠を保護。複製品等の製造、販売、輸入
防止権の付与。10 年以上の保護期間。
5.特許
(1) 保護対象(第 27 条)
①物質特許保護、発明地等による差別の禁止を規定
方法特許のみならず物質特許保護の義務を規定。また、特許権の取得又は権利行使に関し、
内国民待遇を補完するものとして発明地・技術分野・輸入品か否かによる差別の禁止を、米
等の反対にかかわらず規定。
(例)
・発明地による差別…米国特許法第 104 条(米国外での発明については先発明の立証を
認めない)
・技術分野による差別…カナダでは医薬品の特許に対し、他の技術分野の特許よりも容易
に強制実施権が設定されることを認めていた。
なお、先願主義への統一については、米国の反対によって TRIPS 協定では取り扱わないこ
ととなり、WIPO 特許ハーモナイゼーション条約で検討されることになった。
②不特許事由
極力限定しようとする先進国と医薬品を含め大幅な例外を認めようとするインド等の途
上国の間の南北対立事項となったが、最終的に
(a) 人間・動物の診断・治療・手術方法
(b) 微生物以外の動植物、非生物学的・微生物学的方法以外の動植物の生産方法
に限定。医薬品・化学物質等の特許については不特許事由としないことが義務付けられた。
但し、(b) については、4 年後(1999 年)に見直すこととなった。
(2) 権利効力(第 28 条)
物の特許の場合には、製造、使用、販売の申出、販売、以上の目的の輸入を防止する権利を
付与。方法の特許の場合には、方法の使用、その方法により直接的に得られた製品の使用、販
売の申出、販売、以上の目的の輸入を防止する権利を付与。
交渉の際には、「輸入」の防止を含めることについて、権利消尽、並行輸入との関係が問題
になったが、第 6 条が権利消尽については本協定を援用しない旨の規定となったことから問題
はなくなった。
(3) 特許権者の許諾を得ていない他の使用(第 31 条)
強制実施権や政府使用等を認めるに当たっての条件を詳細に規定。
①商業的に合理的な条件による事前交渉
②政府使用
国家緊急事態や公的な商業的使用を理由とする政府使用の場合には、事前交渉の制限が緩
和され、特許権者は合理的に実行可能な限り速やかに通知を受ける旨規定。米国が政府使用
については協定上厳しい制限を課すべきではないと強硬に主張したのに対し、他国が反対し
たため、最終的にはこの点にのみ緩和規定が置かれた。
資-5
③半導体技術の限定
半導体技術に係る特許に限っては、強制実施権等の付与は、公的・非営業的使用の場合及
び反競争的行為を是正する場合にのみ認められる。
④非排他性
付与される強制実施権は、強制実施権者以外の実施を排除しない性格のものとし、強制実
施権が付与された後も特許権者は特許発明を実施することができる。
⑤利用関係にある特許の強制実施権
米国は禁止を主張したが(我が国反対)、結局、第 2 特許が第 1 特許との関係で相当の経
済的効果をもたらす重要な技術的進歩をもつ場合に限定する等、実施権の条件が厳しくなっ
た。
(4) 保護期間(第 33 条)
出願日から 20 年以上の保護期間を明示。我が国が主張した特許期間に出願日から 20 年の上
限を設定することについては、日米包括経済協議の場において米国が同意したため問題は一応
解決されている(ただし、米国の合意不履行状態が続いている)。
6.集積回路の回路配置
半導体チップの保護については、1989 年 WIPO においてワシントン条約が締結されたが、日米
両国は保護水準が低いとして参加しておらず、今回の TRIPS 交渉においても両国はワシントン・
プラス・アプローチをとり、韓国等との対立があったが、最終的には同条約を上回る保護水準が
規定された。
(1) 保護範囲(第 36 条)、保護期間(第 38 条)
回路配置、集積回路だけでなく、違法複製物を含む製品の輸入、販売、頒布行為が規制対象
とされた。保護期間は 10 年以上と規定。
(2) 例外(第 37 条)
違法チップや当該チップ組込製品であることを知らず、かつ、知るべき合理的理由なく取得
した場合には、差止の対象とはならないが、侵害警告を受けた時点から合理的なロイヤリティ
ーを支払うべき旨が規定された。
7.非公開情報の保護(第39条)
非公開情報(Undisclosed Information)として、いわゆる営業秘密(トレード・シークレット)
と政府提出データの保護が規定された。
(1) 営業秘密
(a)一般的に知られていないこと、(b)秘密であることから商業的価値があること、(c)秘密維
持のために合理的な努力が払われていることが要件とされて、この営業秘密について公正な商
慣習に反する方法(少なくとも契約違反、信義則違反、違反の教唆等の行為をいう)で行われ
る取得・使用・開示が禁止された。
(2) 政府提出データ
医薬品・農薬に係る政府への提出データについての不公正な商業的使用・開示が禁止されて
いる。公衆保護の必要がある場合には例外が認められている。
8.反競争的行為の規制(第 40 条)
途上国の要求として、知的財産権の反競争的ライセンス契約の規制が盛り込まれ、国内法で排
他的グラントバック条項、抱合わせライセンス等の規制を行い得ることとなった。なお、これら
の反競争的行為については既に先進国において規制されている。
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第3部
知的所有権の行使
知的財産権の権利行使手続について、民事手続、行政手続、刑事手続、水際手続についてそれ
ぞれの手続原則を規定。
(1) 一般的義務(第 41 条)
全ての手続の共通原則。公平かつ公正なものでなければならず、不合理な期間制限を禁止。
本案判断は、原則として書面かつ理由付記で、ヒアリングの機会を付与した証拠にのみ基づく。
(2) 民事・行政手続(第 42~49 条)
民事的司法手続の整備、手続における秘密情報の保護、証拠開示命令、差止命令、損害賠償
等について規定。民事手続の規定は行政手続に準用される。
(3) 暫定処分(第 50 条)
仮処分の手続を規定。
(4) 水際措置(税関における通関停止:第 51~60 条)
商標権・著作権については、水際措置の整備が義務付けられた。それ以外の権利については
任意であるが措置する場合には同一手続に服するとされている。
権利者が、権限ある当局(裁判所、行政機関、税関のいずれでも可)に差止めの申立をでき
るように措置することが義務付けられた(差止申立権の付与)。
第4部
知的所有権の取得及び維持並びにこれらに関連する当事者間手続(第 62 条)
知的所有権の取得及び維持の条件として、合理的な手続及び方式に従うことを要求することを
認めること、保護期間が不当に短縮されないように手続を合理的な期間内に行うことを確保する
こと等を規定。
第5部
紛争の防止及び解決(第 63 条、第 64 条)
従来、知的財産権関連条約には有効な紛争処理規定が欠けていたが、TRIPS 関連の紛争処理は、
WTO 協定が定める紛争解決手続に従って行われる。この紛争解決手続は、現行のガットの手続を
強化したものであり、手続の時間的な枠組みと手続の自動性を確保して手続の実効性を高めた。
また、クロス・リタリエーションにより、相手国の TRIPS 協定違反の行為に対してモノの分野で
対抗措置の発動が可能となっており、これによって TRIPS 協定の遵守が担保される。
第6部
経過措置(第 65~67 条)
・WTO 協定発効
・先進国への適用
・途上国・旧共産国への適用
・途上国の物質特許規定適用
・後発途上国への適用
1995.1.1
1996.1.1
2000.1.1
2005.1.1
2006.1.1
(1 年目)
(5 年目)
(10 年目)
(11 年目)
※2002 年7月の TRIPS 理事会非公式会合において、後発途上国の医薬品特許導入の義務免除
を 2016 年 1 月 1 日まで延長することが決議された。その後、後発途上国の協定の履行期間
に関し、2005 年 11 月 29 日の TRIPS 理事会で 2013 年 7 月 1 日まで延長することが決議さ
れた。
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第7部
制度上の措置・最終条項
(1) TRIPS 理事会の設置(第 68 条)、国際協力(第 69 条)
(2) 既存の対象の保護(第 70 条)
①遡及的な保護の付与
加盟国において協定の適用の日に既に存在しているもの(発明、商標等)で、協定が保護
の対象としているものについては、協定が定める保護を付与すべきことを規定。著作物及び
著作隣接権者に関する保護については、ベルヌ条約第 18 条(既存の著作物についても、自国
が定める期間遡及的に適用する)のみが適用される。
②医薬品及び農業用化学品のパイプライン保護
医薬品と農業化学品が特許対象となったが、制度導入まで長期の経過期間が設けられてい
るため、医薬品等を特許対象と認めていない加盟国に対する経過期間内の義務として、WTO
設立協定発効の日(1995 年 1 月 1 日)から、(a)医薬品等の物質特許出願を受理すること、
(b)医薬品等に対して販売承認がなされたときは、販売承認の日から 5 年間排他的販売権を
付与することを規定。
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2012 年 3 月発行
『国際知財制度研究会』報告書
(平成 23 年度)
―各国の知的財産保護制度及び運用の問題点等に関する調査分析―
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社
〒105-8501 東京都港区虎ノ門 5-11-2
(オランダヒルズ森タワー)
電話 (03)6733-1000
FAX (03)6733-1049
<ホームページ> http://www.murc.jp
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