Comments
Description
Transcript
リーダーシップを育む広大型女性研究者支援
リーダーシップを育む広大型女性研究者支援 3.育成期間終了後における具体的な目標 実 施 予 定 期 間:平成 19 年度~平成 21 年度 1)女性教員比率を平成 18 年 5 月の 9.0%(146 名)から 11.5% 総 括 責 任 者:浅原 利正(広島大学長) (188 名)を上回るように女性教員の比率向上を図る。 2)CAPWR を本学における女性研究者支援の拠点とし,実施期 1.概要と目的 広島大学は,すべての構成員が男女を問わず能力を生かし 間終了時には,本学の男女共同参画推進の実践的組織となる 「男女共同参画推進室」へと発展させる。 て活躍できる環境づくりを重要な課題の一つと位置づけ,男 3) 「人材育成リーダーシッププログラム」を継続発展させ, 女共同参画の推進に取り組んでいる。本学は国立総合大学と 女性研究者の人材育成を強化する。休業中の代替教員の自給 しては学部や大学院に占める女子学生の比率が高いにもかか という利点と併せて「プロフェッサーシフト」を人事制度に わらず,女性教員の比率は国立大学平均を下回り,特に上位 活用し,学内にリーダーシップを備えマネジメントのできる の職階ほど女性比率が低い。リーダーシップを発揮する女性 女性教員の育成を図る。 研究者の育成は本学の発展にとって不可欠なものである。 4) 「キャリア支援担当員」を,女性研究者の研究支援を進め, 本課題は,全学的な取組みとして学長の強いリーダーシッ かつ柔軟で多様な勤務形態を可能とする新しい雇用システム プのもと, 「広島大学男女共同参画推進委員会」の直属組織と を提案する役割として学内の制度に組み込む。 して女性研究者支援プロジェクト(Career Advancement 5)両立支援の人材を担う「支援者バンク」の運営は,学内で Project for Women Researchers : CAPWR)を中核組織とし, の人材育成を中核に地域や学生との連携と併せて自立的に持 本学独自の人材育成のための「リーダーシッププログラム」 続可能な運営を図り,制度として確立する。 を中心に「両立支援環境形成プログラム」と「意識改革プロ なお,本プログラムは,当初,女性研究者を対象にスター グラム」の 3 つを遂行することにより,女性研究者が能力を トさせるが,終了時には男女を問わず学生・職員を含む大学 最大限に発揮できる環境を形成することで教育・研究活動で 構成員全員に対して個別の要求に合った支援を提供できるシ 著しい成果をあげることを目標としている。また従来の部局 ステムへと発展させる。 中心の研究者支援とは異なる全学組織横断的な支援であるこ 6)研究者を目指す女性を増やすために,女子学生・若手女性 とから,実施にあたっては本課題を男女共同参画推進のため 研究者のインターンシップ制度やキャリアパス支援を充実さ の行動計画の中に位置づけ,意識啓発や女性構成員の意見が せて次世代育成のための取組みを確立し,女子大学院生のエ 反映される組織運営など包括的な組織改革とともに,独自の ンパワーメントを強化する。 研究活動支援を進めることとした。これらの相乗効果によっ て女性研究者の能力開発とともに本学全体の研究・教育の質 の向上及び男女共同参画社会形成への貢献を目指す。 4.実施期間終了後の取組 「男女共同参画推進室」による包括的支援体制の強化, 「人 材育成リーダーシッププログラム」 , 「両立支援環境形成プロ 2.計画構想の内容 グラム」の自立的運営による両立支援の恒常化を目指し, 「キ 本課題は,地方にある総合大学において持続可能な人材育 ャリア支援担当員」制度を活用した,柔軟で多様な勤務形態・ 成(すなわち,優れた女性研究者の育成とリーダーとしての 新しい雇用システムを創出する。また,男女共同参画推進基 資質向上,自立した女性研究者の学内からの輩出)を目指し 本計画に基づく,女性研究者及び若手研究者の積極的登用に たものである。計画は,研究者及び学生を対象とした「人材 向けた部局ごとの女性教員比率数値目標の設定とその達成を 育成のためのリーダーシッププログラム」を基軸に,女性研 図る。 究者の研究と生活の両立及びキャリア形成や継続を支援する 本プロジェクト終了後に,地域の人材とともにリサーチア 「両立支援環境形成プログラム」 ,職場における男女共同参画 シスタント・インターンシップの修了生及びリーダーシップ の趣旨を浸透させ,男女を問わず能力を発揮できる環境を作 プログラム受講研究者が,支援要員の中核をなすことにより, ることを目的とした啓発を行う「意識改革プログラム」の 3 人材育成リーダーシッププログラムを自立的に運営できるよ 項目で構成している。これらを男女共同参画推進委員会と連 うにする。このような方法で,実施期間終了後も継続できる 携しながら CAPWR を実施母体として遂行する。 女性研究者支援体制を確立する。 5.期待される波及効果 6.実施体制 1)本プロジェクトは,優れた女性研究者が研究と家庭責任を 学長の強いリーダーシップのもと, 「広島大学男女共同参画 両立させつつ最大限の能力を発揮することと,本学が自前で 推進委員会」の直属組織として設置した CAPWR に,人材育成, 人材育成することを企図したものであり,本学と類似した環 両立支援,意識改革のサブグループを置き,次世代育成支援, 境にあって女性研究者支援を目指す地方の国立総合大学のモ 研究支援,育児・介護・復帰支援,広報・啓発・ネットワー デルケースとなりうる。 ク及びポジティブアクション等について本プロジェクトの具 2)本学が中四国地域の拠点となって魅力ある女性研究者を育 体的な実践策を検討する。また,CAPWR に, 「キャリア支援担 成し,女子中高生や研究者志望の女子学生に対するロールモ 当員」を配置する。 デルを提示することは,将来の科学の発展を担う人材の育成 キャリア支援担当員は,主に女性研究者の立場に立って研 という点からも有効である。 究支援・育児・介護・復帰の相談に応じる。また,次世代の 3)本プロジェクトによって,リーダーシップを有し,生き生 女性研究者の育成を目途に支援バンクへのサポーター登録及 きと活躍する広大女性研究者像を広く内外に示すことは,本 び女性研究者からの支援要請に応じたサポーターの配置等支 学の研究者全員にとって大きな刺激となり,研究・教育の質 援策と,女子学生・若手女性研究者のインターンシップ制度 の向上が期待できる。 やキャリアパス支援のマッチングを担当する。 4)本プロジェクトは,本学における男女共同参画推進のモデ プロジェクト実行にあたっては,学内の部局,理事室,学 ルという役割も担っており,取組みそのものが大学全構成員 内保育園,地域各団体,広島大学校友会,地域の小,中,高 の意識改革の重要な契機となる。 等学校とも連携し,地域連携及び社会貢献にも寄与する。 キャリア支援担当員の設置は,男女を問わず,従来の固定 なお,すべてのプログラムについては,PDCA( Plan Do Check 的な雇用-就労形態や長時間労働,キャリア中断などの問題を Action)サイクルによって内容の検討及び改善を実施する。 見直すことになり,ワーク・ライフ・バランスの観点からも, 女性研究者のニーズを常に的確に把握するため,アンケート キャリアを継続しつつライフステージや職階に応じた柔軟な 調査や広島大学男女共同参画ホームページ等を介して情報を 働き方を創出することができる。また,次世代の女性研究者 収集し,本プロジェクトへ反映させる。 の育成を目標に,研究支援と研究者育成のマッチングという 新しいワークシェアの創出を可能とする。 平成 20 年度の実施体制図 平成 20 年度の担当責任者 業 務 項 目 実施場所 業務総括 広島大学 担当責任者 浅原 利正 (学長) 業務主任 広島大学 相田 美砂子 (副理事(男女共同参画担当)) (1)リーダーシッププログラム ①学生を対象とした「リサーチアシスタント・インターンシップ」 ・ 広島大学 坂田 桐子 「フェニックスサポーター認定プログラム」の実施 (総合科学研究科・准教授) ②女性研究者対象のリーダーシップ育成セミナー及び広島大学女性 広島大学 研究者奨励賞の実施 升島 努 (医歯薬学総合研究科・教授) ③女性研究者を対象とした「プロフェッサーシフト・プログラム」 広島大学 の試行 坂田 桐子 (総合科学研究科・准教授) ④女子大学院生の情報交換・交流会の実施 広島大学 横山 美栄子 (ハラスメント相談室・教授) (2)両立支援環境形成プログラム ①「支援者バンク」の運営(利用者と支援員の募集・派遣) 広島大学 横山 美栄子 (ハラスメント相談室・教授) ②キャリア支援担当員による女性研究者・女子学生を対象としたキ 広島大学 ャリア相談と本プログラムの利用促進 横山 美栄子 (ハラスメント相談室・教授) ③学童保育の試験的運用 広島大学 中坪 敬子 (理学研究科・助教) ④ユビキタス研究環境の整備 広島大学 中矢 礼美 (留学生センター・准教授) (3)意識改革プログラム ①大学訪問・出前講義・地域連携による女子中・高校生対象の科学 広島大学 講座 泉 俊輔 (理学研究科・教授) ②意識啓発のためのシンポジウム及び男女共同参画セミナーの開催 広島大学 北仲 千里 (ハラスメント相談室・准教授) ③学内女性研究者の研究環境に関する調査 広島大学 北仲 千里 (ハラスメント相談室・准教授) 7.各年度の計画と実績 児・介護の両立を支援するため,1)「支援者バンク」の構築 a.平成 19 年度 と試験的運用,2)キャリア支援担当員の配置,3)子育て支援 (1) 計画 の拡充,4)ユビキタス研究環境の整備 を実施する。 女性研究者が研究と出産・育児等を両立し,その能力を十 分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みを構築するモデルと なるような優れた取組みを支援する。CAPWR を中心に,次の 3 つのプログラムを推進する。 (a) リーダーシッププログラム 地方にある総合大学の特徴を活かし,優れた女性研究者の (c) 意識改革プログラム 意識啓発セミナー,シンポジウムを開催する。加えて,女 性研究者ネットワークの構築,充実を図る。 (2) 実績 (a) リーダーシッププログラム (1 リサーチアシスタント・インターンシップ 育成とリーダーとしての資質向上を図るため,リサーチアシ 9 月から学生を対象としたリサーチアシスタント・インタ スタント・インターンシップの試験的運用(学生対象)と, ーンシップ参加者の募集と研究支援員としての支援者バンク 女性研究者対象のリーダーシップ養成講座を実施する。 の登録を開始した。この取り組みは,対象となる学生に対し (b) 両立支援環境形成プログラム 女性研究者がキャリアを継続できるように研究・教育と育 ては人材育成プログラムの位置づけであり,支援者を雇用す る女性研究者にとっては,両立支援プログラムの位置づけで ある。90 名が支援者バンクに登録し,延べ 42 名の女性研究 勤務時間に制約がある女性研究者に,大学以外でも研究,教 者に対し,79 名が研究支援員として雇用された。 育を可能にする「ユビキタス研究環境の整備」支援を行うこ フェニックスサポーター認定講義は,今年度は支援者バン ととした。支援内容は,モバイルのノートパソコン,データ ク登録者を対象として,平成 20 年 2 月 23 日(土) ,情報メデ 同期ソフト,ウェブカメラのリースである。平成 19 年度は3 ィア教育研究センター(東広島キャンパス)及び原医研(霞 回にわたって,利用者を学内に公募した。その結果,計 12 名 キャンパス)において実施した。参加者数は,東広島地区 8 が利用した。ウェブカメラの利用によって,在宅でゼミ指導 名,霞地区 6 名で女性研究者支援に関心のある男子学生の参 が可能となった女性研究者の実践報告も行った。 加もあった。 14 名をフェニックスサポーターとして認定した。 (2 リーダーシップ養成のための講座 (c) 意識改革プログラム (1 次世代の女性研究者育成のための啓発活動 女性研究者が独自に研究資金を獲得し,研究リーダーとし 本課題の説明会を学内で 2 回(東広島キャンパス及び霞キ て活躍できる機会を広げることを目的として,連続 3 回の「女 ャンパスにおいて,それぞれ 1 回)開催した。また,本課題 性研究者のための研究資金獲得実践セミナー」を実施した。 の独自HPを,平成 19 年 9 月に立ち上げた。明るいイメージ セミナー参加対象は,本学で研究を行う女性研究者とし, 常勤,非常勤,職位は問わないこととした。各自,企画から 書き方までワークショップを通して完成させ,相互評価を行 って,独自の研究資金が獲得できるようになる実践的な力を 養うことを目的とした。セミナー参加者は 21 名であった。 で好評である。 次世代女性研究者育成を目的として,高校で出前授業をお こなった。平成 19 年度は,計 2 回,実施した。 さらに,女子大学院生を対象とした交流会を,東広島キャ ンパスにおいて実施した。これは,当初具体的な計画にはな このセミナーに参加し提出した提案書に基づいて, 「広島大 かったが,キャリア支援担当員や研究支援コーディネーター 学女性研究者奨励賞」 を設け, 13 名を受賞者として採択した。 の活動の中から,研究室で孤立しがちで女性同士の情報交換 准教授 2 名,講師 3 名,助教・助手 8 名であった。受賞者に を必要としている女子院生のニーズに応える形で取り組むこ は,学長裁量経費から計 300 万円が授与された。 ととなった。計4回開催し,各回 5~10 名,のべ 27 名の女子 (b) 両立支援環境形成プログラム (1 「支援者バンク」の運営と研究支援員の派遣 女性研究者の両立支援を行う人材を学内外から確保するた め,9 月より「支援者バンク」の運営を開始した。支援者バ 学生が参加した。毎回好評で,次世代女性研究者のエンカレ ッジを促進する試みとなった。 (2 ペアリングチューター制による女子学生と女性研究 者の意識啓発 ンクに登録した研究支援員には,各人の経歴やフェニックス 女性研究者と研究者希望の女子学生が,一緒に学会や他大 サポーター認定の有無に応じて,フェローAからフェローD 学等が主催する男女共同参画関連のセミナーに参加すること の種別をつけた。平成 19 年度の支援者バンクの登録者数は, によって,交流を深め,かつ男女共同参画の意識を高めるこ 計 90 名で,当初目標の 40 名を超えた。 とができた。平成 19 年度は,計 6 組が利用した。 (2 キャリア支援担当員及び研究支援コーディネーターの 配置 (3 男女共同参画意識啓発のためのシンポジウム・セミナ ーの実施 CAPWR では,キャリア支援担当員(2 名)が常駐し,キャリ 第1回広島大学男女共同参画シンポジウム『女性が活躍す ア形成や継続,両立支援等に関するさまざまな相談に応じな る広島大学 -その環境づくりに向けて-』を平成 19 年 11 がら,本プログラムの利用を促進した。とくに産休や育休か 月 4 日に開催した。教職員・学生に対する啓発はもとより, らの職場復帰に不安をもつ女性研究者に対して,職場の上司 地域や地元企業との連携という点においても,大きな効果が と交渉を行いつつ,両立が可能となるような職場環境形成の あった。約 450 人の参加者があったので,広島大学における ための支援を行い,キャリア継続が可能となった例もあった。 男女共同参画の取り組みのキックオフとしての当初の目的は また,研究支援コーディネーター(2 名)は9月当初より 支援者バンクの構築と研究支援員雇用制度の運用を担当した。 大いに達成できた。 第1回 CAPWR セミナー『大学で女性をどう育てるか ―リ とくに研究支援員の雇用にあたっては,研究者と支援員のコ ンダ・ウェルズ学部長との日米対話―』を,平成 20 年 1 月 7 ーディネートの他,人事資料の作成,業務管理,報告書の作 日に開催した。約 50 名の参加者があり,約 1 時間の講演のあ 成等多岐にわたる業務を担当した。 と,活発な質疑応答が行われた。 (3 子育て支援の拡充 (4 本学の女性研究者ネットワークの活性化 ニーズ把握のための職場環境調査や自治体等の学童保育実 全学男女共同参画推進委員会の協力を得て,本学女性教 施状況等を調査し,学童保育実施のための課題をまとめた。 員・研究員等のメーリングリストを作成した。ほとんどの女 (4 ユビキタス研究環境の整備 出産予定,産休,育休,育児,介護等により大学における 性研究者を網羅したメーリングリスト作成は初めての試みで あり,女性研究者支援に関する情報提供に大変役立っている。 b.平成 20 年度 c.平成 21 年度 ・計画 ・計画 CAPWR の活動を本格化し,前年度に引き続き各プログラム の充実を図る。また,保育・子育て支援の方策を検討,試行 継続して,各プログラムの充実を図る。また,本取組み終 了後のあり方を検討し,全体の評価改善を行う。 し,次世代育成支援の試行・改善を行う。 8.年次計画 取組内容 1 年度目 2 年度目 3 年度目 【実施体制】 CAPWR の活動開始 4 年度目以降 男女共同参画推進室へ と発展 【リーダー リサーチアシスタント リサーチアシスタント・イ リサーチアシスタン リサーチアシスタン シッププロ インターンシッププログ ンターンシップ ト・インターンシップ ト・インターンシップ グラム】 ラムの履修試行 修了生(広大フェニックス 修了生 (広大フェニック 修了生 (広大フェニック サポーター)輩出 スサポーター)輩出 スサポーター)輩出 プロフェッサーシフト・プ プロフェッサーシフト・プ プロフェッサーシフ ログラム希望調査 ログラム試行 ト・プログラムの制度化 【両立支援 両立支援環境形成プログ 両立支援環境形成プログ 両立支援環境形成プロ 両立支援プログラムの 環境形成プ ラム立ち上げ, ラムの改善 グラム本格的運用 自主運営 発展・継続 支援者バンク登録開始 支援者バンク登録者によ 支援者バンク登録者 (イ キャリア支援担当員の 希望調査,試験的運用 る支援,評価, ンターンシップ修了生 存続 改善 含む)による支援の試 ログラム】 キャリア支援担当員の配 行,評価,改善 置 ユビキタス環境整備の公 募,支援 保育,子育て支援ニーズ調 【意識改革 査 保育,子育て支援試行 次世代育成支援のニーズ 次世代育成支援の試行,改 プログラム】 調査 保育,子育て支援改善 保育, 子育て支援の継続 次世代育成支援の継続 善 意識啓発セミナー,シンポ 男女共同参画推進室に ジウムの開催 より継続 女性研究者ネットワーク の構築,充実