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ガンマ帯域活動を対象とした ADHD 研究の新展開
大 村 一 史
(山形大学地域教育文化学部)
山形大学紀要(教育科学)第15巻第 3 号別刷
平成 24 年(2012)2 月
山 形 大 学 紀 要(教育科学)第15巻 第3号 平成24年2月
Bull. of Yamagata Univ., Educ. Sci., Vol. 15 No. 3, February 2012
ガンマ帯域活動を対象としたADHD研究の新展開
25
ガンマ帯域活動を対象としたADHD研究の新展開
大 村 一 史
山形大学地域教育文化学部
(平成23年10月3日)
要 旨
注意欠陥・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD)は衝動性、注
意散漫、多動を主要な特徴とする発達障害である。その生物学的メカニズムの解明が進む
につれて、様々なニューロイメージング技法を利用して、ADHD 固有の生物学的マーカー
を探索しようとする研究が始まっている。従来の脳波(electroencephalogram: EEG)を
用いた研究においては、これまでは対象とされていなかった周波数帯域(1.5Hz 以下や
30Hz 以上)に焦点をあてた新しい手法によるアプローチが登場し、ADHD の認知機能に
関する研究が進められるようになってきた。本論文では特に、高次認知機能を反映すると
されるガンマ帯域活動(Gamma-band activity[GBA]:30-80Hz)を取り上げ、これまで
の先行研究を ADHD 研究中心に概観するとともに、今後の ADHD の生物学的マーカー
としての発展可能性を検討する。
1 はじめに
注意欠陥・多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD)は、衝動性、
注意散漫や多動を特徴とする発達性の行動障害であり、その行動特徴の組合せから、不注
意優勢型、多動性-衝動性優勢型および混合型の3種類のサブタイプに分類される1-3)。こ
の障害の背景にある生物学的メカニズムとして、神経伝達物質であるドーパミンの異常や、
前頭葉-線条体(fronto-striatal)のシステム不全が指摘されており4-10)、近年では、単に
注意や多動といった一見顕著な行動特徴だけに注目するのではなく、将来の目標遂行のた
めに目前の反応を制御していくことに主眼をおいた実行機能の観点から障害を捉えること
により11)、ADHD が示す本質的な認知行動特徴の理解に迫ることが重視されるようになっ
てきた1, 2, 12)。しかし、ADHD の生物学的メカニズムが徐々に明らかになってきたものの13)、
未だに ADHD の診断の基本は「診断と統計の手引き・第4版(DSM-IV)」14)の行動に基
づく判断基準に依っている。そのため、適切で精度の高い客観的診断の実現を目指す
ADHD 固有の生物学的マーカーの発見が急務となっている2)。
近年の認知神経科学の精力的な研究から、ヒト高次脳機能に関する様々な知見が得られ
るようになってきた。この背景には、心的メカニズムを産出する脳機能を非侵襲的に測定
可能な計測方法の劇的な進歩がある。計測方法の中でも特に注目を浴びているのが、空間
分解能が高く、ミリメートル単位で脳深部の活動までを測定できる機能的磁気共鳴画像法
(functional magnetic resonance imaging:fMRI)である1, 4)。当然のことながら、ADHD
の生物学的マーカーの探索方法としても、関連遺伝子と表出された表現型である ADHD
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大村 一史
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症状との間に中間表現型を仮定したジェノミック・イメージング(genomic imaging)の観
点から、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)に代表さ
れるニューロイメージングを用いた認知神経科学研究には大きな期待がかかっている1)。こ
のように ADHD の生物学的マーカー探索を含めたヒト高次脳機能研究に fMRI を用いるメ
リットは多大であるが、一方、従来から広く利用されてきた脳波(electroencephalogram:
EEG)を用いた研究も fMRI にはない有利な点がいくつか存在する。脳波は、ランニングコ
ストの高い fMRI よりも比較的安価で手軽に利用しやすく、ミリ秒単位で時々刻々と変化す
る脳活動を捉えることが可能なほど時間分解能に優れている2, 15-19)。また fMRI が脳神経細
胞の活動と関連した BOLD(blood oxygen level dependent)信号20)の変化を捉えるのに対し、
神経活動の同期的な律動を直接測定している21)と考えられている脳波の方が、神経活動の
振る舞いを捉えるには直感的には理解しやすい面もある。
脳波を用いた研究には、ある課題を行い、その事象に関連した脳の反応電位(事象関連
電位、event-related potential: ERP)を導き出す方法と、何も課題を与えずに数分から数
十分にわたり脳波(EEG)を測定する方法に大別される。前者の ERP は刺激の物理特性
のみならず、刺激に対する内因的な認知処理も反映し、実行機能を検討するのに適した指
標と考えられている22, 23)。ERP の解析は主に、呈示される刺激時点を基準として加算平均
を行う処理方法が中心に展開され、潜時と振幅の属性から各種の成分(たとえば、P3、
N2など)と認知機能の関係が検討されてきた2, 16)。後者の EEG では、代表的な周波数:
デルタ([δ]:4Hz 以下)、シータ([θ]:4-7Hz)、アルファ([α]:8-12Hz)、ベータ([β]:
13-30Hz)をターゲットとして、その周波数帯域のパワーを検討する周波数解析を用いて、
精神機能や疾患との関係で検討が行われてきた15, 17-19)。近年、脳波計が進歩し、小型軽量
化および電極の多チャンネル化とともに、直流電流(direct current: DC)計測が可能な
高性能・多チャンネルの DC-EEG アンプが登場したことによって、安静時の超低周波数
帯域(very low frequency: 1.5Hz 以下)24-26)や認知課題遂行中のガンマ帯域(Gamma-band
[γ]:30Hz 以上)27-29)の脳波記録が可能になってきた。脳波計自体の進歩と解析手法の
進展とが相まって、測定の困難さ故にこれまで注目されることの少なかった周波数帯域を
対象に、高次認知機能との関連を検討することに期待が高まりつつある。
本論文では、このような新しい展開を見せている周波数解析のうち、ガンマ帯域活動
(Gamma-band activity[GBA]:30-80Hz)に着目し、この手法を用いた ADHD 研究を概
観するとともに、ADHD の生物学的マーカーとしての視点を盛り込みつつ今後の研究の
可能性を論じる。
2 ガンマ帯域活動と認知機能
従来の ERP 研究では、対象とする脳波帯域を約0.01-30Hz にフィルタ設定し、刺激呈
示のトリガに同期(phase-locking)させた加算平均法により、認知課題遂行中に惹起さ
れるある特定の成分にターゲットを絞って研究を展開していた。特に ADHD 研究では、
認知処理を反映するとされる後期陽性成分 P3(または P300)に注目した研究が数多く行
われてきており、ADHD 児は健常児より P3の振幅が低下しており、その潜時の延長が見
られることが一貫して報告されている30)。さらに、この P3が ADHD における生物学的マー
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カーとして利用できうることも指摘されている30,31)。P3以外でも、N2成分32)、随伴陰性変
動(contingent negative variation: CNV)の振幅低下33,34)やミスマッチ陰性電位(mismatch
negativity: MMN)の振幅低下22)も ADHD における認知課題遂行中に観察されることが
報告されている。先行研究の知見から、これら ERP 成分の ADHD 生物学的マーカーと
しての可能性はある程度の信頼性を持って利用していくことができることが示唆されて
いる2)。
上記のような従来からの研究に加えて、近年では、高性能 DC-EEG アンプの登場により、
これまでは微小な振幅のために計測が困難であった30Hz 以上の帯域の活動を捉えること
が可能となり、特に30-80Hz のガンマ帯域活動(GBA)による認知機能の検討が盛んに
行われるようになってきた27-29)。ガンマ帯域活動(GBA)は、皮質におけるオブジェクト
表象の形成の基盤となる神経活動の律動的でアッセンブルされた同期的活動を反映すると
されており、動物を対象とした電気生理学研究などからは、物体の知覚に関係することが
示唆されてきた29)。さらに、近年のヒトを対象とした認知神経科学的な研究からは、ガン
マ帯域活動(GBA)は単に知覚過程を反映するだけではなく、注意、記憶などより高次
の認知機能と関連することが示されるようになってきた。
ガンマ帯域活動(GBA)を30-80Hz 間(あるいは30-100Hz 間とする場合もある)の周
波数帯域で生じる一般的な律動を指すのに対して、入力された感覚刺激に対して、惹起さ
れるガンマ帯域の神経細胞の同期的活動をガンマ帯域反応(Gamma-band response:
GBR)という場合が多い。本稿でもその例にならい、ガンマ帯域活動一般を指す場合は‘ガ
ンマ帯域活動(GBA)’を用い、刺激関連のガンマ帯域活動をより限定的な意味合いで‘ガ
ンマ帯域反応(GBR)’を用いて使い分けることにする。ガンマ帯域反応(GBR)を惹起
する刺激となる感覚モダリティは、ヒトにおいては、視覚、聴覚、体性感覚などがあげら
れる27)。刺激によって惹起されるガンマ帯域活動(GBA)は2つのメカニズムからなるとさ
れていて、一つが潜時の早い段階で惹起される evoked GBR、もう一つがより遅い潜時で
引き起こされる induced GBR である。前者の evoked GBR(eGBR)は ERP のように刺
激に関連して惹起される反応を指し、刺激の呈示に合わせて phase-locking されることに
なる27)。その潜時のピークは研究者によって多少範囲が異なるが、おおよそ約150ミリ秒
以前、大体が約90~110ミリ秒の間であり、視覚刺激に対する初期反応 C1(70~100ミリ秒)
に似ている。そのため、早い潜時でのガンマ帯域反応(GBR)は初期知覚段階の ERP 成
分との関連で議論されることが多い。これに対して、後者の induced GBR(iGBR)は、
神経活動の付加的なパワーのアッセンブルによるものと考えられ、evoked GBR のように
ERP 様の可視的な活動ではなく、phase-jittered な反応である27)。時間領域において試行
を平均することでは観察できないが、まず単一試行を周波数領域に変換してから、phase
情報を取り除いた後に平均することで定量化できるようになる35)。この induced GBR は
潜時200ミリ秒以降に出現し、オブジェクト認識中に現れる表象的な活動の神経学的な特
徴を反映していると解釈される29)。また、Hermmann らによる‘match-and-utilizationmodel’(MUM)によると evoked GBR はオブジェクト知覚における記憶との照合を反映
し、induced GBR は反応選択や文脈更新といった記憶の利用過程を反映すると仮定され
ている28)。
ここでは、まず先行研究の総説27-29)を参考に、ガンマ帯域活動(GBA)と知覚、洞察、
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大村 一史
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記憶といったヒト認知機能との関連をまとめておく。種々の認知課題に対して、ガンマ帯
域反応(GBR)がどのような振る舞いを示すのかを現時点で得られているコンセンサス
を中心に記述する。
⑴ 知覚
これまでに、多くの知覚に関する認知課題を用いた研究が行われてきたが、その詳細は
Rieder らによる総説論文に詳しくまとめられている29)。Evoked GBR は初期知覚段階の
脳内処理を反映し、特に、記憶照合との文脈で捉えられることが多い。一般的に、視覚刺
激または聴覚刺激において意識的に知覚できる場合の方が、意識的に知覚できない場合よ
りもガンマ帯域反応(GBR)が増大することが知られている。さらに、ガンマ帯域反応
(GBR)の強度は知覚経験と関連し、親近性の高い刺激や、正確さが高い反応において強
まる傾向があることがわかっている。
⑵ 洞察
アハ体験に代表されるような洞察を伴う問題解決において、正しい洞察を導いた時にガ
ンマ帯域反応(GBR)が増大することが報告されている29)。与えられた情報を統合して、
正答を導き出すような場合に、ガンマ帯域反応(GBR)が強まるということは大変興味
深く、洞察という非常に高次な認知機能に脳波からアプローチできる可能性を提供してい
る点は、今後の研究の進展が期待される領域である。さらに、パズルを解く際に、ヒント
を与えられた後に、そのヒントを上手に使い解決に結びつけることができた場合には、ヒ
ントを上手に使えなかった場合よりもガンマ帯域反応(GBR)の活動が強くなることも
示されていることから36)、ガンマ帯域反応(GBR)は後に続く、洞察や課題成績の予測な
どにも活用できる可能性がある29)。発達場面や学習場面でガンマ帯域反応(GBR)を指標
として応用することにより、効果的な指導法や学習法の評価や開発につなげていくことが
できるかもしれない。
⑶ 記憶
記憶に関するガンマ帯域活動(GBA)のモデルとして前述の Hermmann らによる
MUM がある28)。MUM では初期のガンマ帯域反応(GBR)である evoked GBR(150ミリ
秒以前:約100ミリ秒程度)が、オブジェクト認知において感覚器官からボトムアップ処
理されてきた情報と記憶情報との照合(matching)を反映し、後期のガンマ帯域反応(GBR)
で あ る induced GBR(200ミ リ 秒 以 後: 約300ミ リ 秒 程 度 ) が、 記 憶 情 報 の 活 用 過 程
(utilization)に関係していることを仮定している28)。記憶情報の活用過程とは、記憶内容
を更新したり、記憶にあわせて行動反応を選択したり、注意の再配分を行ったり、あるい
はこれらの組み合わせを実現したりすることを促すことができる心的過程とされる28)。こ
の記憶の照合と活用によって後に続く反応が適切に選択され、場面に応じた適応行動をと
ることが可能となる。
Rieder らはガンマ帯域活動(GBA)と記憶との関連を短期記憶と長期記憶に分けてま
とめている29)。短期記憶を検討する認知課題を用いた場合は、Reider ら自身の研究によ
ると、聴覚領域では、選好性の高い聴覚刺激の方が、高くない刺激よりも induced GBR
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を強めること、課題成績とガンマ帯域反応(GBR)強度は正の相関を示すことが報告さ
れている。視覚領域では、正答した試行の方が不正答した試行よりも強いガンマ帯域反応
(GBR)を示すことを報告している。これらの結果は、短期記憶における課題関連の情報
を正しく処理することがガンマ帯域反応(GBR)の強度と深く結びついていることを支
持しているといえる。
長期記憶を検討する課題では、符号化課題と再認課題を設定し、符号化課題で憶えた刺
激を再認課題で以前見たことがあるか、全くの新規なものかを判断させる、いわゆる old/
new 効果や known/unknown 効果を利用するパラダイムを用いることが多い。一般的に、
記憶表象が存在する old・known 刺激の方が、new・unknown 刺激よりもガンマ帯域反応
(GBR)が増大する傾向が知られている。
3 ADHDにおけるガンマ帯域活動
前章で述べたようにガンマ帯域活動(GBA)は、知覚、洞察、記憶といった認知過程
を反映する指標として多くの知見を提供しつづけている。この章では ADHD 研究におい
て、どのようにガンマ帯域活動(GBA)が利用されているかをまとめ上げることにする。
アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学
分 野 の学術文献検索サービス PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)を用いて、
「gamma-band AND ADHD」をキーワードに検索すると、2011年9月25日現在で8件の
文献がヒットする。このうち、英語以外で執筆された論文、ADHD 以外の精神障害を対
象とした論文、安静時の各周波数帯域に関する論文37)および総説論文38)を除外すると最
終的に4件の実験研究論文35,39-41)が出版されていることになる。この4件の論文の特徴を、
表1にまとめておく。ここで取り上げる論文は刺激に関連して惹起されるガンマ帯域活動
(GBA)を取り上げているので、この章では、特に断りのない限り、ガンマ帯域反応(GBR)
に絞って議論を展開する。まだまだ研究の数が少ないのが現状であるが、今後はより多
くの論文が出版されていくであろうことが予想される。
表1 ガンマ帯域反応を利用したADHD研究
⪺⠪
Yordanova et al. (2001) 41)
39)
ⵍ㛎⠪
⹺⍮⺖㗴
⣖ᵄ⸘
Ꮺၞ▸࿐
evoked GBR
ADHDఽ⟲14ੱ䇮ஜᏱఽ⟲14ੱ
Auditory target detection
ਇ᣿: 8ch
31-63Hz
0-120ms; ↑ ADHD
induced GBR
-
⣖ㇱ૏
frontal-central
ஜᏱ⠪50ੱ(ㆮવሶᄙဳ)
Auditory target detection
ਇ᣿: 16ch
30-70Hz
30-150ms; ↑ DRD4, COMT
40)
ADHDఽ⟲13ੱ䇮ஜᏱఽ⟲13ੱ
Visual memory (old/new)
NeuroScan SymAmp: 32ch
30-80Hz
0-150ms: ↑ ADHD
-
parieto-occipital
Lenz et al. (2010) 35)
ADHDఽ⟲13ੱ䇮ஜᏱఽ⟲13ੱ
Visual memory (known/unknown)
Brain Products BrainAmp: 31ch
30-80Hz
0-150ms: known = unknown ADHD
-
parieto-occipital
Demiralp et al. (2007)
Lenz et al. (2008)
150-300ms; ↑ DRD4 frontal
ガンマ帯域活動(GBA)を ADHD 研究に応用した初めての論文は2001年に Yordanova
らのグループにより発表された41)。この研究では、ADHD 児および健常児を対象に、左
耳または右耳にターゲット刺激(1500Hz, P = 0.4)または非ターゲット刺激(1000Hz, P
= 0.6)をランダムに呈示し、ターゲット刺激にボタン押し反応を求める際に、聴覚刺激
によって惹起される初期のガンマ帯域反応(GBR)、つまり、evoked GBR(0-120ms, 3163Hz)を検討した。どちらの群も、非ターゲット刺激よりもターゲット刺激に対して、
前頭-中心領域(fronto-central)に強い evoked GBR を示した。さらに ADHD 群は、特
に右耳呈示条件において、健常児群よりも強い evoked GBR が見られることを報告した。
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運動プログラムの出力に先立ち、入力された感覚情報の統合過程において、evoked GBR
は初期聴覚処理過程の統合的側面を反映すると推察し、ADHD に関しては運動コントロー
ルの不具合が感覚入力という前処理段階における evoked GBR の増大となって観察され
るのではないかと結論づけている。
その後、直接 ADHD に関係する論文はしばらく出版されなかったものの、2007年に
Demiralp らは健常児を対象に、生物学的個人差と言える遺伝子多型による群分けを取り
入れた研究を発表した39)。この研究では、ADHD を直接の対象にしていないものの、従
来の研究から ADHD の関連遺伝子とされているドーパミン D4受容体(DRD4)、ドーパ
ミントランスポーター(DAT1)、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)8, 42)に着目
して、それぞれの多型による evoked GBR の検討を試みている。ターゲット刺激(1500Hz,
P = 0.2)または非ターゲット刺激(1000Hz, P = 0.8)を聴覚呈示し、ターゲット刺激に
ボタン押し反応を求める古典的な Auditory detection task を用い、evoked GBR(30-150ms;
30-70Hz)と induced GBR(150-300ms; 30-70Hz)を検討した。非ターゲット刺激よりも
ターゲット刺激に対する evoked GBR は前頭部で有意に増大していたが、特に、DRD4の
第3エクソンにおける48-bp の反復多型の7回反復対立遺伝子を含む7/7、7/X 型とそれ以
外(others)の比較、および DAT-10回反復対立遺伝子を含む10/10型とそれ以外(others)
の比較において違いが見られた(DRD4: 7/7, 7/X 型 > others; DAT1: 10/10 > others)。
さらに、DRD4の7/7、7/X 型のみが強い induced GBR の増大を認めた。これらの結果から、
DRD4の多型は抑制機能の低下に関連し、DAT1の多型は、ターゲット検出に関連するこ
とを推察している。DRD4の7回反復対立遺伝子および DAT1の10回反復対立遺伝子は
ADHD の有力な候補遺伝子であるだけに、非常に興味深い結果であり、これまでの遺伝
子研究とニューロイメージング研究を結びつけるジェノミック・イメージングの好例とい
える1, 8, 42)。統合失調症やてんかんなどドーパミンの異常と関係する他の疾患を対象とし
た研究からもドーパミンがガンマ帯域活動(GBA)を修飾しうることが示唆されており38)、
今後は ADHD の観点からもジェノミック・イメージング研究が進展していくものと思われ
る。
これまで聴覚刺激を用いた知覚課題を中心に展開していた ADHD 研究は、Hermmann
らのグループの Lenz によって記憶課題を利用したより高次の認知機能を扱った研究へ移
行していくことになる35, 40)。Lenz らの初報では、処理の深さが異なる符号化条件(shallow:
rectangle vs. oval; deep: human vs. picture)と呈示された刺激が既知(old)か新規(new)
かを判断させる再認条件からなる視覚記憶課題を用いて、それぞれのガンマ帯域反応
(GBR)を検討した40)。その結果、頭頂-後頭領域(parieto-occipital)で符号化条件中の
刺激に対する evoked GBR は健常児群よりも ADHD 群の方が強い反応を示した。さらに、
健常者では符号化条件中の evoked GBR はその後の再認課題の正答と有意な正の相関が
あったが、ADHD 群ではそのような相関関係は見られなかった。Lenz らは evoked GBR
と再認課題の成績間の無相関関係を、ADHD における強められた興奮レベルと処理資源
の特異的でない賦活を反映している結果であろうと解釈している40)。
2010年の Lenz らの論文では、ADHD における初期視知覚の機能不全を調べるために、
evoked GBR(0-150ms; 30-80Hz)を利用した35)。呈示された線画が現実に存在する既知
のものかどうかをボタン押し反応により選択する視覚記憶課題(known vs. unknown)を
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用 い、ADHD 児 群 と 健 常 児 群 で evoked GBR の 差 異 を 比 較 し た。ADHD 児 群 で は、
known と unknown では刺激に対する evoked GBR に差は見られなかった。しかし、健常
児群では、記憶に蓄えられている情報と刺激が照合したとき(known)に evoked GBR の
増大が認められた。この結果は、ADHD 児における初期知覚処理の不全を示しており、
この ADHD 児の示す初期段階での刺激分類機能の不全は、関連する対象に注意を適切か
つ素早く割り当てを行う選択的・持続的な注意の配分に原因があるのではないかと結んで
いる35)。
4 今後のADHD研究への活用に向けて
ガンマ帯域活動(GBA)を利用した ADHD 研究の取り組みはまだまだ少ないが、一貫
して、ADHD の初期知覚段階では、ガンマ帯域反応(GBR)、特に evoked GBR の増大が
認められている。一般に、健常児者を対象とした研究からは、特定の刺激に対して注意を
割り当てた場合に、そうでない刺激よりもガンマ帯域反応(GBR)が増大することが明
らかになっている。そうすると、ADHD におけるガンマ帯域反応(GBR)の増大は、一
見優れた処理能力を反映しているかのように捉えられるかもしれないが、その実は注意を
配分すべき刺激に特異的に資源を割り当てているのではなく、過剰な注意資源を無駄に配
分していることが背景にあるためのように考えられる。今のところ、多くの研究は
evoked GBR を中心に展開されているが、今後、記憶情報の利用過程に関連する induced
GBR を用いた研究も増えていくのではないかと思われる。
従来の ERP 後期成分である P3や N2などから ADHD の神経メカニズムの解明が進み、
それらが ADHD の生物学的マーカーとして機能しうることは拙著にて述べているが2)、
初期知覚段階での ADHD 病理は未だに解明されていないままであった。そこで、初期知
覚処理に関連する evoked GBR を利用した ADHD の神経メカニズムの解明が行われるよ
うになってきたのだが、今後さらに ADHD の神経メカニズムと evoked GBR との関連が
より明らかになってくれば、その生物学的マーカーとしての機能には注目が集まってくる
ことになるだろう。先行研究から、evoked GBR の振る舞いは被験者内では比較的安定し
ているが、被験者間ではその振る舞いがばらつくことが知られており43)、それらが個人の
特性に応じて変化しうることが指摘されている44)。また異なる研究室間かつ異なる EEG
アンプ間で、同一の視覚記憶課題を用いてガンマ帯域活動(GBA)を比較した研究によ
ると、ほぼ同一の結果が得られたことが報告されている45)。これらのガンマ帯域活動
(GBA)の特徴に関する知見は、ガンマ帯域活動(GBA)が認知機能の指標としての頑健
性を持ち合わせていることと、生物学的マーカーとしての重要な機能を果たしうることを
示唆している。
ADHD は遺伝子多型を含め、さまざまな生物学的多因子から構成される表現型であり、
単一の原因や単なる類型論では記述できない複雑な障害であるため8, 42, 46, 47)、当然ながら
従来の ERP 成分やガンマ帯域活動(GBA)のみをもって絶対的な生物学的マーカーとす
ることはできない。今後は様々な行動特性の複合体としての表現型の1タイプとして
ADHD を多角的に捉えるアプローチから2)、遺伝子研究からニューロイメージング研究、
心理行動研究までを包含した統合的な生物学的マーカーのあり方が求められている1, 2, 42)。
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その中で、ガンマ帯域活動(GBA)の検討は、これまで積み上げられてきた知見に新た
な方向性を見いだす契機となり、ADHD 理解のための遺伝子-脳-行動の統合的アプロー
チの一翼を担う存在になっていくであろう。
最近、刺激に対するガンマ帯域反応(GBR)だけではなく、安静時のガンマ帯域活動
(GBA)に焦点をあてた研究も報告された37)。これまでのニューロイメージングを用いた
研究では、被験者がある認知課題を遂行中の脳活動を捉えることを主眼とし、対象とする
認知活動を行っている条件(実験条件)とその認知活動を含まない条件(対照条件)ある
いは何も認知活動を行わない条件(安静条件)との線形回帰による差分をとることで、対
象とする認知活動を司る脳部位を明らかにしてきた。ところが、実際の脳活動には全くの
安静状態というものは存在せず、認知活動を何も行っていない安静状態でも脳そのものは
何かしらの活動を自動的に行っている。fMRI を用いた研究では、この安静状態を次に行
う行動に対する構えとして位置づけ、安静時の脳活動のモデルを ‘default-mode network’48)
と定義し、精神疾患との関連で検討することが盛んになってきている24)。さらに、この時
の状態を超低周波数帯域(very low frequency)の脳波律動から推し量ろうとする研究も
おこなわれている25, 26)。このような研究のトレンドを考慮すると、今後は安静時のガンマ
帯域活動(GBA)による研究に関しても同様の興味深い報告が出てくるものと考えられる。
さらに近年は fMRI と EEG の同時計測に代表されるマルチモーダルの計測技術を用いて、
両者の利点を生かした研究が精力的に展開されている44)。こういったマルチモーダル計測
により、ガンマ帯域活動(GBA)のメカニズムの解明がより一層進み、その知見が
ADHD 研究への応用へとつながっていくことが予想される。しかし、将来いくら生物学
的マーカーの解明が進んだとしても詳細かつ慎重な観察に基づく行動的評価が必要である
ことには変わりがない19)。注意すべきことは、表出された行動特徴を抜きにしては、せっ
かくの生物学的マーカーも役に立たないという点である。生物学的メカニズムに基礎を置
き、ADHD が示す行動特性にも慎重に目を向けた上で、遺伝子-脳-行動を総合的に捉
えたアプローチが推進されることが期待される。
謝 辞
本論文は科研費(若手研究(A): 21683007)の援助を受けたものである。
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大村 一史
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Summary
Kazufumi Omura:
A new horizon for ADHD research focusing on gamma-band activity
Attention-deficit/hyperactivity disorder(ADHD)is a behavioral-developmental disorder
characterized by a cluster of behavioral symptoms including impulsivity, inattention, and
hyperactivity. Studies using various neuroimaging techniques have provided insight as to
the neural basis of ADHD and have motivated the design of models that relate biological
markers to ADHD vulnerability. Recent electroencephalogram(EEG)studies have began
to investigate the neurocognitive function in ADHD by utilizing analyses based on low-(<
1.5Hz)or high-band(> 30Hz)frequencies. This article reviews selected studies of gammaband activity(GBA: 30-80Hz)associated with cognitive functioning in ADHD and discusses
the potential efficacy of biological markers as a tool to assess cognitive functioning in ADHD.
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