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名古屋市の因子生態分析
1. 2. 3. 4. 5. 社会地区分析とは 因子生態分析とは 因子分析とは これまでの研究 研究の目的 1 研究の目的 1-(1) 社会地区分析とは • 都市の内部における居住者特性の空間パ ターンや居住分化に関する研究の一つ • 分析の枠組みとして3つの次元(都市化、社 会的地位、隔離)を考える • これらの次元が種々の社会指標(ex. 職業、 女子就業率、種族集団・・・)によって測定され るとする • 社会指標を分析し次元を算出、それに基づき 都市内部を社会地区に類型化 1-(2)因子生態分析とは • 社会学の社会地区分析を地理学が取り入れ る • 社会地区分析の枠組み(都市化、社会的地 位、隔離)が妥当かを帰納的に検証 • 種々の社会指標を因子分析して得られる因 子を次元とみなす • クラスター分析などによって因子得点の空間 パターンを分析 1-(3)因子分析とは • 未知の因子によっていろいろな程度に影響を 受けていると想定される多数の測定資料間 の相関関係を数学的に解析することによって 因子の数、種類、ウエイトなどを決定する方 法。 1-(4)これまでの研究(1) • 家族状況を表すとされる「都市化」次元は同心 円状に分布する 山口(1976)より 1-(4) これまでの研究(2) • 社会経済的地位を表すとされる「社会的地位」 次元は扇形状に分布する 山口(1976)より 1-(4) これまでの研究(3) • 民族・人種的な状況を表すとされる「隔離」次 元は日本の都市においては析出されない 因子分析が盛んに行われたのは1980年代。 日本における外国人研究は80年代~。 外国人に関する指標を多く採用した桐村(2006)では「1970年における京都 市においても民族的状況次元が抽出された」 1-(5) 研究の目的 • 既往の研究で明らかになった社会次元の空 間パターンが現代の名古屋市においても妥 当するかを検証する • 地理学の研究方法として確立されていると思 われる因子分析を実際に行うことで、計量的 な地理学研究に対する理解を深める 1. 2. 3. 採用する変数 分析の対象地区 因子分析の方法 2 研究の方法 2-(1)採用する変数 • 指標のデータは「名古屋市公式ウェブサイト、 平成17年国勢調査 名古屋の学区別人口」 より得た。 • 森川(1976)を参考に30の指標を採用した • 森川が採用した指標のうち、次の指標は用い ることができなかった 「準世帯比」「死離別女子率」「出生率」「中卒率」「大卒率」「高 卒率」「土着者率」「昭和34年以後以前入居率」「昭和40年以後 入居率」「〃のうち市内転入者率」「〃県内〃」「〃県外〃」 2-(2)分析の対象地区 • 森川では国勢統計区を分析の単位とした • しかし、国勢統計区別の値が入手できなかっ たため、総人口などの点からそれに近い単位 だと思われる小学校区を、分析する地区の単 位とした • 名古屋市全域の261の小学校区(平成17年 10月1日現在)を対象とした 2-(2)因子分析の方法 • 統計ソフト「R 2.14.0」を用いた • 各指標を標準化し、関数factanalで因子分析 を行った。 • 各指標間の分散共分散行列を関数corで得 た後その固有値を関数eigenで求めたところ、 1以上の固有値は7つであり、これを因子数 とした • バリマックス回転をした • 回帰法により因子得点を求めた 1. 2. 3. 寄与率 因子1の解釈 因子2の解釈 3 因子分析の結果 地区ごとの人口、老年人口、世帯数、就業率などの社会指 標の数値がある 変数(既知) これらは住民の「家族状況」と「社会的地位」によって決まっ ている・・・・と考える 因子(仮定) 例えば・・・ 人口= ×「家族状況」+ ×「社会的地位」 就業率= ×「家族状況」+ ×「社会的地位」 のように・・・ A地区の人口56 =0.8×「 」 因子負荷量(仮定) 」+0.4×「 因子得点(仮定) 3-(1)寄与率 • 各因子の寄与率(=各因子の説明力)を表に 示す 因子1 寄与率 0.252 因子2 因子3 因子4 因子5 因子6 因子7 0.128 0.099 0.092 0.092 0.050 0.043 • 因子1と因子2を主要な因子とし、この2つが どの指標に高い因子負荷量を持っているか をみていく • 以後、()内に因子負荷量を示す 3‐(2)因子1の解釈 • 「金融保険不動産業就業率(0.87)」「サービ ス業〃(0.89)」「専門的技術的管理的職業〃 (0.84)」などに正の相関 • 「建設業〃(-0.73)」「製造業〃(-0.88)」「技能 工単純労働者率(-0.97)」などに負の相関 • よって、因子1は社会経済的地位と考え られる 3-(3)因子2の解釈 • 「幼年人口率(0.85)」「中年人口率(0.85)」な どに正の相関=幼い子供がいる核家族? • 「老年人口率(-0.92)」「自営業主家族内従業 者率(-0.62)」などに負の相関=老人世帯ま たは地元の商店経営者? • 核家族世帯率(0.56)にも正の相関を示すの で、因子2は家族状況と考えられる 1. 2. 因子1の得点分布 因子2の得点分布 4 因子得点の地図化 4-(1)因子1の得点分布 • 因子1は社会経済的地 位 • 栄付近の都心部から見 て千種区の方向の値 が高い • 扇形的に分布している 4-(2)因子2の得点分布 • 因子2は家族状況 • 都心部から遠ざかるほ ど値が高くなる • 同心円状に分布してい ると言える 5 まとめ • 既往研究で明らかになっていた次元とその空 間分布が、名古屋市でも検出された • 計量的手法は入力する数値が違うと結果も 全く違うと思っていた。しかし、今回は変数や 地区の単位が異なるにもかかわらず、既往 研究と同じ結果が出て意外だった • 因子生態分析は欠点も多いらしく、より適切 な計量的手法を学んでいきたい 参考 桐村喬「居住地域構造研究に対する自己組織化マップの適用可能性: 1970年の京都市において民族的状況次元は存在するのか?」『立命館地 理学』18号、2006、55~67頁 森川洋「都市社会地理研究の進展:社会地区分析から因子生態研究 へ」『人文地理』27巻6号、1975、638~666頁 森川洋「広島・福岡両市内における因子生態(Factorial Ecology)の比較 研究」『地理学評論』49巻5号、1976、300~313頁 山口岳志「札幌市の社会地域分析: 因子生態学的研究」『人文科學科 紀要. 人文地理学 』5号、1976、83~105頁 名古屋市:名古屋市公式ウェブサイト、平成17年国勢調査 名古屋市 の学区別人口(市政情報)、 http://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000004360.html 名古屋市:名古屋市公式ウェブサイト、名古屋の学区別昼間人口、 http://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000003/3984/CB100 2E.PDF 採用した変数と因子負荷量 因子 1 因子 1 因子 2 0.27 1 人あたり延べ面積 0.52 -0.38 -0.27 0.17 女子就業率 0.05 -0.12 -0.56 0.48 労働力人口率 -0.07 0.18 -0.44 -0.31 0.15 -0.61 人口 0.10 性比 1 世帯あたり人員 人口密度 因子 2 0.28 -0.17 失業率 若年人口性比 -0.08 -0.03 自営業主家族内従業者率 幼年人口率 -0.33 0.85 建設業就業率 -0.73 0.27 老年人口率 -0.03 -0.92 製造業就業率 -0.88 0.04 若年人口率 0.30 0.14 運輸通信業就業率 -0.55 0.01 中年人口率 0.11 0.85 卸小売業就業率 0.66 -0.08 核家族世帯率 -0.46 0.57 金融保険不動産業就業率 0.87 0.01 夫婦世帯率 -0.32 0.19 サ-ビス業就業率 0.89 -0.15 持ち家率 -0.08 0.00 公務就業率 0.21 0.05 公営借家率 -0.27 0.84 0.13 民営借家率 0.41 0.04 事務的職業就業率 0.66 0.14 給与住宅率 0.32 0.03 技能工単純労働者率 -0.97 -0.02 -0.02 専門的技術的管理的職業 就業率 以下、各指標の算出方法を「名古屋市:名古屋市公式ウェブサイト、平成 17 年国勢調査 名古屋市の学区別 人口(市政情報) 」 (http://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000004360.html)の統計表の、表番号と列の見出し によって示す。 人口=第 1 表「平成 17 年」/性比、1 世帯あたり人員、人口密度=それぞれ第 2 表「性比(男/女×100)」、 「1 世帯当たり人員」 、 「人口密度(人/Km2)」/若年人口性比=第 3 表(男)「15~19」 「20~24」 「25~29」の 合計を第 3 表(女)「15~19」 「20~24」 「25~29」の合計で除した/幼年人口率、老年人口率、若年人口率、 中年人口率=それぞれ第 3 表(総数)「0~4 歳」「5~9」「10~14」の合計、「65~69」「70~74」「75~79」 「80~84」「85~89」 「90~94」「95~99」「100~」の合計、 「15~19」「20~24」「25~29」の合計、 「30 ~34」 「35~39」 「40~44」の合計を同「総数」で除した/核家族世帯率、夫婦世帯率=それぞれ第 6 表「一 般世帯 親族世帯 核家族世帯 総数」 、 「同 夫婦のみ」を同「一般世帯 総数」で除した/持ち家率、公 営借家率、民営借家率、給与住宅率=それぞれ第 9 表「一般世帯数 住宅に住む一般世帯 主世帯 持ち家」 、 「同 公営・都市機構・公社の借家」 、 「同 民営の借家」、 「同 給与住宅」を同「一般世帯数 総数」で除 した/1 人当たり延べ面積=第 11 表「1 人あたり延べ面積(m2)」/女子就業率=第 12 表(女)「労働力人口 就業者 総数」を同「総数」で除した/労働力人口率、失業率=それぞれ第 12 表(総数)「労働力人口 総数」、 「同 完全失業者」を同「総数」で除した/自営業主家族内従業者率=第 13 表「自営業主(家庭内職者を含 む)」「家族従業者」の合計を同「総数」で除した/建設業就業率、製造業〃、運輸通信業〃、卸小売業〃、 金融保険不動産業〃、サービス業〃、公務〃=それぞれ第 14 表「E 建設業」 、 「F 製造業」 、 「H 情報通信業」 「I 運輸業」の合計、 「J 卸売・小売業」 、 「K 金融・保険業」 「L 不動産業」の合計、 「M 飲食店、宿泊業」 「N 医療、福祉」 「O 教育、学習支援業」 「P 複合サービス事業」 「Q サービス業(ほかに分類されないもの)」の合 計、 「R 公務(ほかに分類されないもの)」を同「総数」で除した/専門的技術的管理的職業就業率、事務的職 業〃、技能工単純労働者率=それぞれ第 17 表「A 専門的・技術的職業従事者」 「B 管理的職業従事者」の合 計、 「C 事務従事者」 、「I 生産工程・労務作業者」を同「総数」で除した