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ITによる生産性向上の加速化に向けて (ITフロンティア

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ITによる生産性向上の加速化に向けて (ITフロンティア
資料2−2
ITによる生産性向上の加速化に向けて
(ITフロンティア・イニシアティブ)
2 0 0 7 年 6 月
産 業 構 造 審 議 会
情 報 経 済 分 科 会
IT による生産性向上の加速化に向けて
(ITフロンティア・イニシアティブ)
目 次
Ⅰ.IT活用の現状と課題 ..............................................................................................................................................1
Ⅱ.IT投資の効率性の向上(競争領域と非競争領域の峻別による選択と集中).................................3
1.現状と課題 ..............................................................................................................................................................3
2.解決の方向性 ........................................................................................................................................................4
3.具体的施策 .............................................................................................................................................................6
Ⅲ.組織を超えた情報共有(電子商取引や電子タグによる企業情報の「ネットワーク化」) .............8
1.現状と課題 ..............................................................................................................................................................8
2.解決の方向性 ..................................................................................................................................................... 10
3.具体的施策 .......................................................................................................................................................... 10
Ⅳ.中小企業・サービス産業の底上け ................................................................................................................ 12
1.現状と課題 ........................................................................................................................................................... 12
2.解決の方向性 ..................................................................................................................................................... 13
3.具体的施策 .......................................................................................................................................................... 13
(参考)生産性向上を加速させる「IT革新」を支える技術と市場の変化 ................................................. 15
1.「IT革新」を支える技術 .................................................................................................................................... 15
2.近年の技術と市場の変化 .............................................................................................................................. 16
(1)サービス化の進展 ....................................................................................................................................... 16
(2)オープンイノベーション............................................................................................................................... 17
(3)検索・解析技術のインフラ化 ................................................................................................................... 18
Ⅴ.IT活用を支える基盤の整備 ............................................................................................................................. 19
1.選択と集中に基づくIT人材戦略の展開.................................................................................................... 19
2.安心・安全の確保(情報セキュリティ) ....................................................................................................... 21
3.制度的課題への対応....................................................................................................................................... 23
4.テレワークなどの活用促進によるワーク・ライフ・バランスの実現................................................. 25
5.環境調和型 IT システムの確立 ................................................................................................................... 27
i
Ⅰ.IT活用の現状と課題
IT は、生産性の向上や経済成長に大きく寄与している。我が国でも、労働力人口が減
少する中、経済成長に占めるIT投資とTFP1の寄与度は近年増加傾向にあり、特に、2000
年以降、ほぼTFPと IT 投資の2要素により経済成長を牽引してきている。
5
(% )
TFP
労働投入
非 IT資 本 投 入
IT資 本 投 入
4
3
2
1
0
1985-90
1990-95
1995-00
2000-04
-1
(出所)Kanamori and Motohashi(2007)
"Information Technology and Economic Growth : Comparison between Japan and Korea"
しかし、日本の場合、米国と比べると、①全資本の中での IT 資本のウェイト、②IT投資
と生産性上昇の相関係数は、ともに低い(特に非製造業)。世界最先端のブロードバンド
環境を始めとする世界トップクラスの「ITインフラ」を有する我が国であるが、これらの環境
やITの技術革新の成果を活かし切って生産性の向上につなげられていないのが現状で
ある。今後、ITを有効に活用することで、我が国の生産性を米国並みに向上させる余地
があると考えられる。
《日米比較》
【全資本中の IT 資本ウェイトの変化】
【IT 投資と生産性上昇の相関係数(※)】
(%)
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
米国 14.5
日本
10.6
非製造業
0.19
0.03
米国
0.35
0.41
(出 所 )J C E R デ ー タ ベ ー ス
米 商 務 省 "F ixed A ssets T ab les''、
「日本経済の生産性革新」(2005)
宮川 "G
努D P by Industry D ata''
(※)1995/1990 と 2000/1995 のIT化率(=IT資本ストック/全資本ストック)の
変化と TFP 変化率の相関係数1
1980
1985
1990
1995
2000
2005 (年)
(出所) JIP2006 データベース
米国:BEA(Bureau of Economic Analysis)
1
製造業
日本
Total Factor Productivity:全要素生産性
1
我が国の生産性の向上を加速化するためには、①中小企業・サービス産業などの底
上げにつながるIT資本投入の拡大、②IT投資効率を向上させるようなIT活用の促進を図
ることが必要である。
IT投資効率の向上につながるようなIT活用としては、①IT投資の対象を、機能毎に、差
別化が必要な競争領域、各社が協働して対応すべき非競争領域を峻別し、「選択と集
中」を通じてIT投資の効率性の向上を図ること、②組織を超えた情報共有を進めるため
に、電子商取引や電子タグを利用した企業情報の「ネットワーク化」を進めること、が特に
重要と考えられる。
また、IT活用を支える基盤の整備として、人材育成、情報セキュリティの確保、制度的
課題への対応などを進めていく必要がある。さらに、情報基盤強化税制等が一定の効果
を上げてきているが、IT資本投入の拡大等を図るため、制度改革やIT投資を加速する税
制などの支援措置の充実・強化が必要である。
2
Ⅱ.IT投資の効率性の向上(競争領域と非競争領域の峻別による選択と集中)
1.現状と課題
知識、ノウハウ、製品やサービスの機能がデジタル化され、ソフトウェアやシステムに
組み込まれていく傾向が強まっている。研究・開発、設計、製造、販売、流通、バックオフ
ィスといった様々な企業活動から、企業活動の成果である最終製品そのものまで、ますま
す多くの機能がソフトウェア化しており、その開発規模も年々増大している(2015 年には
自動車に占めるソフトウェア、電子部品のコストが 40%になるとの指摘も有る)。その結果、
ソフトウェア開発を中心としたIT投資コストも飛躍的増加している。
プログラム行数
プログラム行数
500万行
∼1000万行
5∼10倍
500万行
6,400万行
5倍以上
10倍以上
100万行
100万行
2000年当時
プログラム行数
プログラム行数
携帯電話
自動車
500万行
現在
現在
2001年当時
DVDレコーダ
プログラム行数
100万行
金融機関システム
80年代半ば当時
(第三次オンライン計画)
郵貯システム改修
(見通し)
金融機関システム
6,400 万行
5倍以上
10 倍以上
20万行
500 万行
2002年当時
80 年代半ば当時
(第三次オンライン計画)
現在
郵貯システム改修
(見通し)
他方、我が国産業は「垂直統合・囲い込み」による差別化戦略が特色。これが競争力
を支えていることも事実であるが、ITの導入に際して、他社との差別化につながる部分も
そうでない部分も、全てオーダーメイドで開発し、汎用製品(パッケージ)を使わない傾向
が強い結果、IT投資の生産性が低い要因となっている可能性がある。
(物流管理ソフトの例)
○
日本 汎用製品をそのまま導入:10.8%
○
米国 汎用製品をそのまま導入:51.2%
また、自前開発したソフトウェアは囲い込むことを基本としているが、社内ユースだけで
はスケールメリットが発揮しにくい。その結果、バージョンアップ費用の問題のみならず、
機能や信頼性の観点からも、自前開発ソフトウェアを途中で放棄する事例が多い。逆に、
自社で開発したソフトウェアを外部のユーザに展開する場合には、当該ソフトウェア(モジ
ュール)の機能や信頼性の向上を複数のユーザからのフィードバックを得ながら行うこと
3
が可能となり(オープンイノベーション)、個々の顧客のオーダーメイドに対応した受託開
発中心の形態では難しいソフトウェアのグローバル展開や、信頼性の強化の実現につな
がる。
以上のような状況下で、海外では、ユーザ企業発のソフトウェア製品が世界的に大きな
シェアを占める例が多く見られ、我が国ユーザ企業でも、グローバルに展開している海外
製ソフトウェア製品に置き換える傾向が現れてきている。
また、他社との差別化につながらないIT投資に必要以上のコストをかけることにより、
米国等と比べて、付加価値の向上や市場拡大につながる「攻めのIT投資」の割合が低く
なっている可能性がある。これもIT投資の生産性を下げている要因である可能性があ
る。
2.解決の方向性
ユーザの利用するソフトウェアが実現する機能について、差別化につながる競争領域
に関わることなのか、あるいは、各社が協働して対応することでコスト削減や効率化が図
られる非競争領域に関わることなのか、という観点から、ユーザにとっての「IT投資の選
択と集中」を促すことによって、生産性向上と競争力強化を図る。
4
具体的には、企業内や政府内の情報システム、ものづくりにおける組込ソフト、企業間
連携を可能とするための EDI2システムの構築、研究開発等に必要な開発環境の構築等
について、IT投資の種別にかかわらず、
① 囲い込む分野(Make)
② 共同開発あるいは外販パッケージで対応する分野(Buy)
③ 自社開発ソフトウェアを外部展開する分野(Sell)
の3つの分野の戦略的な使い分けが重要である。
¾
“Make”の戦略をとるのは、ソフトウェアで実現する機能自体が商品やサービスの差別化につな
がり、競争力の源泉となる場合であって、作り込みに要する費用を上回る収益が十分見込まれ
る分野。→ 「付加価値増大型の生産性向上」
¾
“Buy”の戦略をとるのは、競争領域でないコモデイティとしての機能をコモディティとしてのITで実
現する場合であって、外部からの調達や協調的な取組によって開発コストを抑えたりすることが
重要な分野。行政の電子化、中小企業のIT導入など、ITによる差別化ではなく、ITによる効率化
を目指す場合には、これを原則とするのが適当と考えられる。→ 「コスト削減型の生産性向上」
¾
“Sell の戦略をとるのは、自ら”make”の戦略をとった上で、競合状況を勘案しつつ価値のある間
に一定のモジュールを製品化して外部展開を行い、外部と開発費用をシェアすることに戦略的な
意味がある場合。具体的には、業界プラットフォームの獲得、他のユーザのノウハウの吸収など
が期待できる場合。→「オープンイノベーション型の生産性向上」
自前主義にとらわれずに、ユーザ産業のニーズに基づくモジュール製品の外販・共同
開発やインターフェースの公開により、外部リソースを活用したオープンなイノベーション
が実現し、その成果をグローバルに展開することができれば、IT 産業の生産性・国際競
争力向上も期待できる。
【ユーザー企業が開発したソフトウェアが世界標準
となった海外事例】
○仏の航空機メーカーは、自社開発した設計支援
ソフトウェア(CAD)を製品として外販し、世界のほ
とんどの自動車メーカーに普及。
ユ ー ザ ー企業
による開発
改良要望
多くのユー
ザー企業に
普及
ソフトウェ
アの再利用
による生産
性向上
○NASAが開発した構造解析用ソフトウェアは、米
国ベンチャー企業により製品化され、世界標準に。
グローバル展開
2
Electronic Data Interchange
5
IT 企 業 と
の連携
ソフトウェ
ア製品とし
て外販
3.具体的施策
(1)業種・製品毎(業務手順や仕様)の標準化とイノベーションの促進
① 標準化・共同化の取組の促進
米国における業種毎の業務プロセスや製品アーキテクチャの標準化の動向を
参考にしつつ、我が国でも対応が遅れている業種や製品(組込)毎に、業務プロ
セスや製品アーキテクチャの標準化の議論を促すことが必要である。政府による
標準化議論のための場の設定、標準化につながる研究開発の支援も検討するこ
とが必要である。
② 簡易カスタマイズの検証・検討
サービスの購入や容易にカスタマイズすることのできるアーキテクチャーについ
て検証・検討することが必要である。
(2)ソフトウェアの生産性向上のための環境整備
① ユーザ業務に精通したIT人材の育成
個々のユーザのそれぞれの業務内容に精通した人材の育成を促進することが
必要である。
② 新たな契約のあり方の検討
「情報システム・モデル取引・契約書」(受託開発(一部企画を含む)、保守運用
〈第一版〉)(経済産業省 2007 年 4 月公表)においては、「汎用モジュールの著作
権はベンダ留保」を原則としており、この原則の適用が進むことにより、モジュー
ル化・パッケージ化等による再利用が進展することが期待される。さらに、共同開
発、SaaS3等のサービス購入などについても同様に、契約のあり方等についても
検討することが必要である。
③ ソフトウェア工学手法の研究
企業情報システム構築や組込システム開発において、ソフトモジュールの再利
用を促進するためのソフトウェア工学手法を研究することが必要である。具体的
には、外部調達部品を含む複雑なシステム開発において信頼性を保証できる開
発手法や組込ソフト資産を再利用するための開発プロセス、設計手法等を検討
することが必要である。
(3)政府における取組の推進
政府調達においても、ソフトウェア製品の購入、政府内での再利用、民間への
知財移転・外販を推進することが必要である。具体的には、本年度通常国会で成
立した「産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律」を踏まえ、「ソフトウ
ェア・バイドール」の具体的な適用を促進することが必要である。
3
Software as a Service
6
また、ソフトウェアの調達だけでなく、サービスの調達やアウトソーシングの有
効性についても政府が率先して有効性の検証を実施することが必要である。
(4)組込ソフトウェアの生産性向上のための対応策
組込ソフトウェア製品を開発し、グローバルに展開することのできる組込ソフト
ウェア部品産業の競争力の強化のために、ユーザー産業と組込ソフトウェア部品
産業の対話の場の設定、標準ドキュメントの策定整備、用語の標準化等を行うこ
とが必要である。
(5)産業界の業種横断的な情報交換の推進
ユーザ産業及び IT 産業の経営者の IT 戦略への理解度の向上、業種横断的な
情報交換の促進等を進めるための場の設置を検討することが必要である。
7
Ⅲ.組織を超えた情報共有(電子商取引や電子タグによる企業情報の「ネットワーク化」)
1.現状と課題
デジタル化と IP4化の進展、標準言語としての XML5の普及などにより、技術的には電子
商取引などを利用した各企業間の情報流通がより容易になってきており、取引の迅速化
や事務コストの削減、在庫の圧縮等が実現されている。
¾ これまで、電子商取引の推進のため、14 業種について、「情報処理の促進に関する法律」に基
づく「電子計算機の連携利用に関する指針」(以下「連携指針」という。)を策定し、標準化等民間
での利用普及に向けた取組を促進してきた。
¾ 近年では、インターネットを利用した EDI が普及しつつあり、電子商取引を実施している企業のう
ち、インターネットを用いて EDI を行っている企業の割合は、48%(2005 年 3 月末時点)となって
いる。電子商取引を行っている企業は、実施の効果として、事務処理コストの削減(56%)、社内
の情報化・業務標準化推進の契機となったこと(50%)を挙げている。
¾ 電子タグについては、関連規格の国際標準化(2006 年 6 月に ISO 等の国際機関において採択)
と価格低減(「響」プロジェクトにより、UHF 帯電子タグについて、月産1億個で1個 5 円)が実現。
市場規模も 2003 年から 2006 年までに、電子タグ国内出荷枚数が 1.4 倍に拡大している。
他方、企業や業界を超えた情報の共有は未だ不十分である6。
具体的には、以下のとおり。
¾ 企業間の情報のやりとりが増大している中で、標準化されている情報は、商品コードなど商取引
の基本的な情報に限定されている。
Internet Protocol
Extensible Markup Language
6 部門や企業の壁を越えて IT を最適に活用している企業の割合は、米国が 54%であるのに対し、日本
では 26%に留まっている(経済産業省調査(平成 19 年 3 月))。情報処理実態調査の分析によると、
企業内で IT を最適に活用している企業(第3段階)、企業を越えて IT を最適に活用している企業(第
4段階)は、部門内で IT を活用している企業(第2段階)よりも、企業レベルでの全要素生産性の成
長率が、それぞれ 3%、5%高くなっている。
4
5
8
¾ 電子商取引のシステムの多くは、各業界毎の「自前システム」として構築されており、業界を越え
た情報共有は不十分である。
¾ 電子タグの利用も、現状では、企業内の利用が中心である。
また、ITを活用した新たな経済社会的課題への対応の必要性も顕在化してきている。
特に製品安全、含有化学物質管理、資源有効利用などの分野で、複数の関係者間での
情報共有や、製品販売後の製品の流れの捕捉等が必要になり、情報システムの利用に
よる対応が始まりつつある。今後、社会全体として重複投資を避け、相互運用性を確保し
ながら、情報を共有する仕組みを構築することが必要となっている。
《製品安全分野における課題》
¾ 「消費生活用製品安全法」の改正により(本年 5 月施行)、重大な製品事故発生を知った製造事
業者等による行政への報告義務規定の創設など、行政の関与による事故情報の報告・公表制
度を構築。
¾ 加えて、消費生活用製品の販売事業者、修理事業者又は設置工事事業者による製造事業者又
は輸入事業者への重大製品事故の通知や、製造事業者、輸入事業者又は小売販売事業者に
よる製品事故情報の消費者への提供を努力義務化。
¾ これにより、製品事故が発生した場合には、必ずしも直接の取引関係にはない製造事業者と製
品販売後の修理事業者等の間で事故情報の共有を行うことが求められることとなる。さらに当該
事故原因を究明するにあたっては、過去に遡って、当該製品の製造プロセス(設計、素材、部
品、組立、物流等)全般の検証にとどまらず、製品販売後の設置、保守・修理等のプロセスにつ
いて、安全面からの検証を個品単位で行うことが必要となる。
¾ 加えて、製品事故再発防止の観点からは、事故原因を踏まえた上で、同種の型式製品、同種の
保守・修理対象製品等について、消費者に情報提供を行うとともに、膨大な製品群の中から、交
換等を要する型式・ロットを速やかに確定し、その回収等を迅速に行うことが求められている。
《化学物質対策分野における課題》
¾ EU では、昨年 7 月から RoHS 指令7を導入。電気電子製品に含まれる6種類の化学物質8につい
て、一定の含有量以下に規制されることとなった。
¾ 加えて、本年 6 月には、新たに REACH9規制が導入される予定であり、同制度の下では、製品分
野を限定することなく、約 3 万種にのぼる化学物質について、年間 1 万トン以上製造又は輸入す
る事業者に対し、化学物質に係る安全性評価と行政への登録や届出を義務づけられている。
“DIRECTIVE 2002/95/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27
January 2003 on the restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and
electronic equipment”であり、Restriction of Hazardous Substances(危険物質に関する制限)の頭
文字から RoHS と呼ばれる。日本語に訳すと”電気/電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関
する欧州議会及び理事会指令”
8 鉛、
水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェミル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
。
9 Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals
9
7
¾ また、REACH 規制では、危険性の高い化学物質について、当該化学物質を含有する製品の供
給者が、受給者に対して、当該化学物質の安全性に関する情報を提供することが義務づけられ
ている。
《資源の有効利用における課題》
¾ 「資源の有効な利用の促進に関する法律」(資源有効利用促進法)では、事業所で生じる副産物
発生抑制対策(事業者単位でのゼロミッション推進)や、使用済み製品に関する対策(製品単位
での環境配慮設計の義務付けや自主回収・リサイクルの義務付け)等を規定し、事業者の取組
を推進している。
¾ しかしながら、これまでの措置は個社による取組が中心となっており、製品ライフサイクル全体を
視野に入れたものとなっていない。サプライチェーンの川上・川下間での連携を強化し、製品のラ
イフサイクル全体における環境負荷を評価することの必要性が指摘されている。
¾ また、「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)でも、製造業者や小売業者等に対し
て、テレビ等の家電引取、再商品化等が義務付けられているが、製品のライフサイクルにおける
情報共有を進め、再商品化を推進し、一層の資源の有効利用を図ることが必要とされている。
2.解決の方向性
(1)標準化情報の拡大
直接の商取引に必要な情報のみならず、製品安全、環境リサイクル、化学物質管
理など様々な社会的課題への対応上必要となる情報を含め、取引関係を超えた複数
の関係者間で必要となる様々な情報を標準化して共有するためのルールを策定し、
対象を拡大する。
(2)業界を超えた標準化の推進
特定の大企業及びその系列企業間のみならず、幅広く中小企業も含め、特定の業
界のみならず「業種を超えた」情報流通を円滑に行うための標準的なルールを、各産
業界、産業界間で策定する。
(3)業務プロセスの標準化
情報共有の仕組みを構築するにあたり、関係業界での業務プロセスの標準化を促
すことにより、より効率的な情報共有を可能とし、生産性の向上を実現する。
3.具体的施策
(1)「業種を超えた情報共有の仕組みの標準化」の促進・支援
①幅広い分野への取組の拡大
電気・電子、繊維、建材・住宅設備産業において先行的な取組を既に開始して
おり、さらに、関係省庁と連携しつつ、幅広く他の分野に拡大していくことが必要で
10
ある。
②国際標準戦略の展開支援
これまでにも商品コード、通信プロトコル等の標準化は進展してきている。
さらに、プライバシー保護、情報管理などの運用ルールについても国際標準化
をリードしていくことが必要である。
③業種横断的課題の検討
化学物質情報等分野を超えて用いられる情報項目の定義の共通化、業界毎に
異なる共通辞書の変換の仕組みのルール化、セキュリティ確保のルールの標準
化、電子タグと他システムのデータ連携のための技術的課題など業種横断的な課
題の検討を進めることが必要である。
④産業横断的なコンセンサスの醸成
情報共有は、社内システムへの追加投資のみならず、業務手順の標準化、「競
争と協調」の考え方の変更を伴いうるものであることから、広く産業横断的なコンセ
ンサス形成を行うことができる「場」づくりも必要である。
11
Ⅳ.中小企業・サービス産業の底上げ
1.現状と課題
我が国の 99%以上を占める中小企業のIT化、我が国の GDP の 70%を占めるサービ
ス産業におけるIT活用は、我が国経済全体の生産性の向上に必須である。しかしなが
ら、両者ともに十分なIT投資・活用がなされていない状況であり、「底上げ」が必要であ
る。
● 大企業では一社当たりのIT投資額が増加傾向にあるのに対し、中小企業では横ばい
が続いている。
資本金別「1社当たりの」IT投資額の推移
6 ,0 0 0
(単位:百万円)
5 ,0 0 0
4 ,0 0 0
∼1 億円
1 ∼5 億円
5 ∼1 0 億円
1 0 ∼1 0 0 億円
1 0 0 億円∼
全体
大企業は増加傾向
3 ,0 0 0
2 ,0 0 0
1 ,0 0 0
中小企業は
ほぼ横ばい
0
2000年
2 0 01 年
2 0 02 年
2 0 0 3年
2 00 4 年
出典:経済産業省
「情報処理実態調査
(平成18年9月)」
● 大企業では「売上高に占めるIT投資」の割合は概ね 5%以下であるのに対し、中小企
業では 10%を越える水準で推移しているため、中小企業にとってIT投資は大きな負
担になっていることも見て取れる。
25.0%
1∼10億円
10∼100億円
20.0%
100∼1,000億円
1,000億円∼
15.0%
全体
10.0%
出典:経済産業省
「情報処理実態調査
(平成18年9月)」
5.0%
0.0%
2000年
2001年
2002年
2003年
12
2004年
● また、IT資本ストックの日米比較では、製造業に比してサービス産業のIT化率の低さ
が目立つ。
IT資本ストックの日米比較
サービス産業
(%)
20
製造業
米国
18.8
18
16
14
12
日本
12.8
10.5
10
(%)
14
12
10
日本
11.4
米国
10.3
8
10.3
8
6
6
4
4
2
2
96年
0
(年)
0
(年)
1980 1985 1990 1995 2000 2005
1980 1985 1990 1995 2000 2005
(備考) 日本:IT 資本ストック比率=IT資本ストック(1995 年価格実質ベース)/資本ストック(1995 年価格実質ベース)
米国:IT 資本ストック比率=IT資本ストック(2000 年価格実質ベース)/資本ストック(2000 年価格実質ベース)
(資料) JIP2006 データベース、米国:BEA
2.解決の方向性
中小企業・サービス産業のIT活用の促進のためには、企業が直面する課題へのきめ
細かなフォローを草の根的、かつ継続的に展開する。その際、中小企業の規模、業種の
多様性、取り巻く厳しい経営環境などを鑑み、それらの実情を反映し、かつ将来への事業
展開を促していくという観点から、施策を具体化していくことが重要である。
3.具体的施策
(1)「中小企業 IT 経営ロードマップ」の策定・普及
中小企業の規模、業種に応じたIT導入のベンチマークとして「中小企業IT経営ロー
ドマップ」を策定・普及することが必要である。
¾
中小企業の規模別・業種別のIT化のロードマップを関係業界、専門家の知見を活用して作成。
¾
「IT経営百選」等の優秀な成功事例を、上記ロードマップとリンクさせたデータベースとして提供
13
し、IT導入による具体的な成功事例をわかりやすく提示することで、ITを導入することによる利点
を具体的に示す。
(例) 中小企業が、自社の業種、業態や売上規模に即して、必要なIT投資の概要を理解した上で、ITの導入により実
際に成功した企業の例をデータベースから検索できるようなデータベースを提供する。
(2)地域密着・出前型支援の展開の充実化
中小企業が直面するIT活用の問題・課題について、地域に配置した専門家を企業
の求めに応じて派遣又は常駐させて、継続的に必要な指導・助言を行うことにより解
決し、IT活用を促進することが必要である。
(例) 商工会議所又は商工会に、IT企業、IT関連企業のOB等を登録し、相談を求める企業がITと経営に精通した専
門家の派遣を受けられるようにする。
(3)インターネットを活用したサービスの提供(※)の促進
① インターネットを活用し、経営・財務管理に手軽に取り組めるサービスの活用を中
小企業に促すことが必要である。
¾
「IT経営応援隊」「IT経営ポータルサイト」等を通じて、「ネット de 記帳」を始めとする、中小企
業向けITソリューションの内容、利用方法に関する説明会を実施する。
¾ 各都道府県単位で専門家による「中小企業生産性向上推進キャラバン」を展開、便利なITサ
ービスの内容やその利用方法について説明する。
② セキュリティの確保、当事者間の契約関係の明確化等、サービス提供の円滑な普
及を促す環境整備の推進が必要である。
¾
ネットワークを経由したサービス提供という形態をとるため、企業データなどがサービス提供
企業に管理されることに伴うセキュリティの確保、サービス提供企業へのアクセス及びレスポ
ンス時間、サービス提供企業によるデータ消失や負荷集中によるネットワークのダウン等に
係るサービスレベルの事前合意が重要となる。このため、かかる事項を規定する際のガイド
となるチェック項目を整理し、公表する。
(※) 具体的には ASP10、あるいは、SaaS などの「IT革新」の中で提供される新たなサービスの活用があ
る(次の(参考)参照)。
(4)IT経営研修の充実、サービス産業向け重点化
ITを活用して経営改革するための中堅・中小企業向け研修会について、特にサー
ビス産業向けの研修内容の充実を図るとともに、研修開催数を倍増することが必要
である。
10
Application Service Provider
14
(参考)生産性向上を加速させる「IT革新」を支える技術と市場の変化
1.「IT革新」を支える技術
「IT革新」を支える情報技術(IT)の本質は、「情報のデジタル化」と「ネットワークのIP
(インターネット・プロトコル)化」による情報の共有・処理の容易化にある。特に、近年の
技術革新の中で、①デジタル化される情報の種類・量の飛躍的な増加、②ネットワークの
ブロードバンド化により、情報の共有と処理が、より容易になってきている。
(1)デジタル化される情報の種類・量の飛躍的な増加
¾ 世界中において、情報量が飛躍的に伸びている。
¾ 2002 年には 5 エクサバイト(エクサバイトは 1018 バイト、1 ギガの 10 億倍)の情報が人類によって
産出され、その後の 2 年間の情報増加は、人類のこれまでの歴史全体の情報の総量よりも多い
との調査結果もある。
世界情報産出量(テラバイト)
2002年
媒体
紙
マイクロフィルム
磁気ディスク
上限値
327
1,200
240
36%
28
124
25
11%
420,254
7,669
431,690
58,209
-3%
5,187,130
3,416,230
2,779,760
2,073,760
87%
103
51
81
29
27%
5,609,121
3,416,608
3,212,731
2,132,238
74.5%
2002年
媒体
上限値
テレビ
上限値
の増加
率
下限値
138
光ディスク
計
下限値
1,634
うち新聞
2002 3.4∼5.6
エクサバイト
1999∼2000年
上限値
下限値
68,955
39,841
(注)テレビは流通量。1時間当たり
1.3ギガバイト∼2.25ギガバイト
で換算。
(出所)UC Berkeley. (2003). How much information 2003.
(http://www.sims.berkeley.edu/research/projects/how-much-info2003/execsum.htm#summary).
(出所)文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/08/05083006/002/014.pdf
(注)上限値は世界で産出される情報が全てそのまま電子情報として格納され
た場合の容量として表示、下限値はその情報がデータ圧縮された場合の容量と
して表示。
(2)ネットワークのブロードバンド化
¾ ブロードバンドの普及率は急速に拡大し、今や 6 割強と高い数値に達している。
ブロードバンド普及率
事業所
世帯
企業
80
70
62.061.1
55.2
60
50
68.1
65.0
47.8
42.7
49.6
40
30
20
10
0
15年末
16年末
15
17年末
2.近年の技術と市場の変化
「IT 革新」は、主に「情報のデジタル化」「ネットワークの IP 化」によって可能となったが、
さらに「IT 革新」を促進する技術や市場における最近の変化の潮流としては、①サービス
化、②オープンイノベーション、③検索・解析技術のインフラ化が重要である。IT 活用を生
産性の向上につなげていくためには、これらの新しい潮流を的確に捉え、活用していくこ
とができるかどうかも、重要な鍵となる。
(1)サービス化の進展
IT 化、とりわけ、ブロードバンド化の進展の中で、これまでユーザ企業における情
報システム/ソフトウェアによって提供されていた機能を、ネットワーク経由のサービ
スとして提供することが容易になりつつある。
【ASP/SaaS のサービス形態】
従来システム
A社
A社
B社
B社
社内システム
ASP/SaaSサービスベンダー
ASP/SaaSサービスベンダー
運用・保守は
サービスベンダー
社内システム
アプリケーションソフト
顧客
管理
ASP/SaaS
人事
管理
財務
管理
アプリケーションソフト
人事
管理
A社ユーザ
顧客
管理
財務
管理
B社ユーザ
人事
管理
財務
管理
アプリケーションソフト
品揃え
Internet
情報処理サービス
そのものを購入
各社個別にシステム構築
A社ユーザ
B社ユーザ
①ASP/SaaS のサービス形態のメリット
・コストパフォーマンスがよい
¾ 初期導入費用が少ない/必要なサービスを定額制で買うだけでよい
・コンピュータの設置・運用・保守を自ら行うことが不要
¾ 高度な専門 IT 技術/知識がユーザ企業に必要がない
¾ 災害・ネットセキュリティ・人的管理の高度な環境を装備したデータセンターでベンダ企業が
運用
②ASP の活用状況
・事業者数:約 600 社(2002 年)→約 1,000 社(2005 年)に増加。回答事業者の 7
割が 100 人未満の中小事業者
16
・ASP 関連市場規模予測: 2004 年で 4,280 億円
③SaaS の活用状況
・SaaS 関連市場規模:2004 年で 2,000 億円強 → 2010 年には 9,500 億円強と予
測
④中小企業の IT 導入にあたっての課題を解決する ASP/SaaS
(a)コスト
一般的に、ASP/SaaS はパッケージソフトに比べて導入・運用管理コストが
安い。特に初期導入コストは安く、また運用コストもユーザ数などの条件にもよ
るが安い場合が多い。
(b)ヒト、知識
ユーザ企業側で、システム導入・運用、障害対応などに係る高度な専門 IT 技
術・知識を必要としないため導入が容易。
(c)セキュリティ
災害・ネットセキュリティ・人的管理の高度な環境を装備したデータセンターで
ベンダ企業が運用するため、低コストで高いセキュリティを得ることができる。
⑤今後の展開
世界最先端のブロードバンド環境を有する我が国において、初期投資が少なく、
ユーザの柔軟な IT 活用を可能とする ASP/SaaS の形態の IT 活用の普及は、中
小企業の IT 活用の促進や、ベンチャー企業による新たな市場参入の促進という観
点からも重要性が増している。
他方、ネットワークを経由したサービス提供という形態をとるため、企業データな
どがサービス提供企業に管理されることに伴うセキュリティの確保、サービス提供
企業へのアクセス及びレスポンス時間、サービス提供企業によるデータ消失や負
荷集中によるネットワークのダウン等に係るサービスレベルの事前合意が重要と
なる。
(2)オープンイノベーション
知的財産を生み出す源泉である企業の研究開発活動に関し、主に社内リソースを
使った従来型に加えて、外部リソースと連携したオープンイノベーションが有力手段と
して認識されるようになってきた。
【事例】
■自動車組込システムの共同開発
日本国内の主要自動車メーカーや自動車部品メーカー等を中心とするコンソーシアム
(Jaspar)において、自動車の制御システムに係る基盤的な組込ソフトウェアの共同開発に
17
着手。開発コストの削減を目指す。
■生産管理システムの外販
国内化学メーカーが、自社で開発した生産管理システムを、他社と協働して、同業他社に販
売するとともに、導入のためのコンサルを実施。
こうした取組が成功する場合には、
開発・保守・運用コストの低下 → ユーザからのフィードバックの蓄積による機能と
信頼性の向上 → さらなるコストの低下 → ユーザの拡大とフィードバックの増加」
→ さらなる機能・信頼性の向上
という、正のスパイラルが実現することが期待される。
(3)検索・解析技術のインフラ化
IT 化による情報量の「大爆発」が起こり、必要な情報を簡便に検索・解析することが
できるかどうかが、個人の消費活動のみならず、IT を利用した企業活動の生産性・競
争力の観点でも重要な課題となっている。
¾
デジタル情報の蓄積は、ネット上の文字情報にとどまらず、製造・流通・販売等の企業の経済活
動に係る情報、個人の消費活動に係る情報など、多種多様な情報が日々大量に蓄積されつつ
ある。加えて、例えば GPS を活用した位置情報・移動情報、デジタルテレビで流される番組に係
る情報など、デジタル化され、蓄積されていく情報の種類・量は、今後も際限なく増加していくと
思われる。今後は、従来の文字情報に加え、画像情報、位置情報などの様々なデジタル情報を、
どのように連携させて活用していくかということが鍵となる。
¾
高付加価値労働者は、知的活動時間の 30%を情報の検索に費やしている。仮に検索時間を
1%減らすことができれば、我が国全体の経済成長率を 0.5%程度押し上げる効果が期待され
る。
我が国においては、例えば情報家電、携帯電話、カーナビ、電子タグ、交通機関な
どで使われる IC カードなどの多様な高機能端末の普及により、様々なデジタル情報
が蓄積しており、加えて世界最先端のブロードバンド通信環境を有している。これらわ
が国の優位な環境を生かし、文字情報に加え、画像情報、位置情報などの様々なデ
ジタル情報の連携を図りながら、必要な情報を簡便かつ的確に検索・解析する技術を
有効に活用することができれば、新たなサービスの展開などのイノベーションが促進さ
れ、わが国産業全体の生産性の向上や国際競争力の強化につながると考えられる。
¾
医療分野では、電子化された医療情報が共有されることによる疾病管理の向上、個々人に適し
た医療サービスの展開、新しい保険商品の開発などの動き。
¾
流通分野では、携帯電話による位置情報、移動情報、購買履歴などの把握を利用した個人向け
サービスの充実などの動きがあるなど、デジタル化された情報に係る検索・解析技術の活用が
生活全般に拡大していく動き。
18
Ⅴ.IT活用を支える基盤の整備
1.選択と集中に基づくIT人材戦略の展開
(1)現状と課題
あらゆる経済活動へのITの浸透及びITの社会インフラ化、産業全般のグローバル
競争の激化等の構造変化の中で、情報サービス・ソフトウェア産業はもとより、ユーザ
産業も含めた広義のIT産業において、IT関連人材の供給・育成についての将来展望
が不透明になっている。
まず何より、国内において、人材難が深刻化しつつある。IT投資の増大によりIT人
材に対する需要は高まりつつある一方で、IT産業あるいはユーザ企業のIT部門での
働き方(処遇)についての不安・不満等からIT職種の人気が低迷し、各企業とも慢性
的な人材不足に悩んでいる。他方、海外に目を転じると、インドや中国においては、毎
年、多数の優秀なIT人材が輩出されている。
¾
例えば、IT人材の一大供給源である情報工学系卒業者は、我が国においては年間2万人程度
であるところ、インドや中国においてはその10倍以上となっている。
¾
しかも、これらの高いスキルを有するIT人材は比較的低コストで活用できる状況にあるため、近
年、欧米先進国は、戦略的にインド、中国等の優れた人材を活用するようになっており、優れたI
T人材を巡る世界規模での囲い込み競争が始まっている。
なお、このようなIT人材獲得のグローバル競争と並行して、人材スキルに関する国
際標準化が進みつつある。
¾
例えば、ソフトウェア技術者認証の国際規格化に向けた検討や、デファクトベースでの組込み技
術者資格試験の世界展開が進められている。
(2)解決の方向性
我が国の労働力人口が減少を始める一方、世界規模で優秀なIT人材の囲い込み
競争が始まっていることを踏まえると、我が国としても、今後は、国内人材の「育成」の
みに焦点をあてるのではなく、諸外国の人材の有効活用も含めた「選択と集中」戦略
が重要となる。
その際、我が国において育成すべき人材がどのような類型か、また、活用可能な海
外の人材はどのような類型かを見極めた上で、国内で必要な人材については戦略的
な育成を、活用可能な海外の人材については戦略的な活用を進めることが求められ
る。
具体的には、諸外国の人材育成の戦略を踏まえつつ、我が国が中長期的に必要と
する高度IT人材像を確立した上で、そのような人材に求められるスキルを重点的に育
成する。
19
¾
我が国において育成すべき人材としては、まず、戦略的コンサルタントやマーケティングの専門
家等があり、このような人材には、ITに関する知識に加え、経営や金融、製造、流通といった、個
別の業務分野の製品やサービス、ビジネスモデルに関する深い知識が求められる。なお、これら
の人材は、ソフトウェア産業の競争力強化に向けた、 Make or Buy or Sell
戦略を有効に
展開する上でも、極めて重要である。
¾
また、情報システムやソフトウェアの開発に携わる人材として、ITシステムの全体構造を設計す
るアーキテクトや、大規模で複雑なプロジェクトを管理するプロジェクトマネージャの育成も重要
である。これらの人材には、例えば、最先端のテクノロジやアーキテクチャモデルに関する知識、
優れたコミュニケーション能力が必要となる。
¾ さらに、IT分野における技術イノベーションをリードする人材の育成も不可欠である。このような
人材には、最先端のITが向かう方向性についてのビジョンのほか、開発環境や開発言語、開発
プロセス等、メタレベルのIT概念の構想能力が求められる。
(3)具体的な施策
① 高度IT人材の具体像(キャリアとスキル)の可視化、共有化
・ めざすべき高度IT人材を、①経営における付加価値を創造する「基本戦略系人
材」、②信頼性や生産性の向上を実現する「ソリューション系人材」、③技術イノベ
ーションを創造する「クリエーション系人材」の3つに区分し、それぞれの人材に必
要なスキルを明確化することが必要である。
・ また、各人材のキャリアを7段階に区分し、ミドルレベル(3段階)までは、レベル
判定のツールとして情報処理技術者試験を位置づける。
② 実践的かつ先端的な人材育成手法の確立、実践
・ 業務分野の知見が重要となる基本戦略系人材育成のため、情報工学系知識と
金融工学や経営学等の非情報工学系知識の同時獲得をめざすダブルメジャー教
育を推進することが必要である。
・ また、ソリューション系人材に必要となる、ソフトウェア工学手法やモデリング手法
等の実践的かつ先端的なソフトウェア開発・管理手法について、独立行政法人情
報処理推進機構において開発を進めるとともに、その開発成果のより一層の普及
を図る。
・ さらに、創造性に富んだ優れた人材(天才クリエータ)の早期発掘を進めるととも
に、発掘された人材のデータベース化及び人材間の連携支援、海外展開支援等を
行い、その起業を支援することが必要である。
③ 客観性の高い人材評価メカニズムの構築
・ 現行の情報処理技術者試験及びITスキル標準その他のスキル標準の参照モデ
ルとなる共通キャリア・スキルフレームワークを構築することにより、各企業の枠を
超えた客観的な人材評価メカニズムを構築することが必要である。
20
・ また、情報処理技術者試験における新たな試験区分として、広く社会人一般に
求められる基礎的な知識を問うエントリ試験を創設することが必要である。
④ 我が国発の人材育成・評価システムの国際展開
・ IT人材の評価手法の標準化に関する国際的な議論をリードしつつ、情報処理技
術者試験及びITスキル標準その他のスキル標準の海外展開を積極的に推進す
る。
・ また、現在、アジア5ヶ国で実施している情報処理技術者試験のアジア統一試験
を拡充強化するとともに、専門家の派遣等を通じ、アジア諸国におけるIT人材の育
成を支援する。
・ さらに、グローバルに活躍できる人材を国内で育成するため、企業の若手・中堅
を対象に国際標準に即した最先端のIT開発手法等を英語で教えるなど、高度なIT
スキルを実践的に教育する研修機関の創設を検討する。
⑤ 高度IT人材育成のための推進体制づくり
・ 高度IT人材育成のロードマップと行動計画を作成するなど、高度IT人材育成に関
する諸課題を審議する手法の開発を行う常設の組織として、産業界、教育界、政
府それぞれの代表者が集まる「産学官協議会」(仮称)を設置することが必要であ
る。
・ また、ストラテジストやアーキテクト等、各専門分野の高度IT人材による自立的な
コミュニティ活動を支援することが必要である。
2.安心・安全の確保(情報セキュリティ)
(1)現状と課題
我が国の国民生活・経済社会活動においてITへの依存度が高まっている今日、IT
を安心・安全に活用するための取組み、すなわち情報セキュリティ確保に向けた取組
みが不可欠である。
¾
情報セキュリティに係る政府の施策が「縦割り」構造での「独自対応」となっている等の問題意識
の下、本審議会情報セキュリティ部会は、「世界最高水準の『高信頼性社会』実現による経済・文
化国家日本の競争力強化と総合的な安全保障向上」という基本目標の下、「内閣機能強化によ
る統一的推進」等を掲げた「情報セキュリティ総合戦略」を 2003 年に策定した。現在、内閣官房
情報セキュリティセンター及び情報セキュリティ政策会議が設置され、同会議で「第1次情報セキ
ュリティ基本計画」が決定される等、国内の統一的推進体制の整備が進展しつつある。
しかしながら、
「情報セキュリティ総合戦略」が策定されてから 3 年以上が経
過した現在、情報セキュリティ問題の変質・多様化・国際化が進展するなど、我々
21
を取り巻く環境は大きく変容している。
特に、近年、企業のガバナンスや内部統制確保に対する要請の高まりにより、企業
活動の基盤となっているITに係る統制の確保が更に求められている。企業において
は、調達、製造、販売、物流といった基幹業務から、財務、人事、給与等の管理業務
に至るまで、多くの業務で IT への依存度が増大しており、情報セキュリティの確保は、
社会的責任にも配慮したコーポレート・ガバナンスと、それを支えるメカニズムである
内部統制の構築・運用の観点からも不可欠となっている。
このような環境変化等を踏まえ、国際化する脅威への対応に加え、我が国の国際
競争力強化基盤を整備し、かつ、国内外で経済社会が直面し続けるであろう多面的
「変化」に的確に対応していくため、本審議会情報セキュリティ基本問題委員会にお
いては、2007 年 5 月に新たな戦略として「グローバル情報セキュリティ戦略」が取りま
とめられた。
グローバル展開
グローバル展開
・脅威への国際的対応
・脅威への国際的対応
・国際競争力強化の基盤
・国際競争力強化の基盤
・国内外の多面的「変化」
・国内外の多面的「変化」
への対応
への対応
国内の統一的推進
国内の統一的推進
体制の整備
体制の整備
各省庁の縦割り
各省庁の縦割り
構造下での対応
構造下での対応
・情報セキュリティ政策会議
・内閣官房情報セキュリティセンター
・第1次情報セキュリティ基本計画 等
情報セキュリティ総合戦略
国内展開からグローバル展開へ
(「情報セキュリティ総合戦略」から「グローバル情報セキュリティ戦略」へ)
情報セキュリティ対策の状況をかんがみれば、特に、企業については、基本的な対
策のレベルは全体的に向上しつつあるものの、先進的な企業とそうでない企業、大企
業と中小企業の間で格差が存在している。また、競争力強化等の視点から情報セキ
ュリティ対策を戦略的に捉えようとする企業が少ない中、一部において負担感等も増
加しつつあり、対策が形骸化するおそれもある。
また、すべての主体を支える横断的基盤についても、脅威への国際対応体制、IT
製品等や組織のマネジメントに関する評価制度等が徐々に充実・強化されつつある
が、関連基準等の整理、国際的な評価基盤の整備、情報の収集・分析能力等が十分
でない可能性がある。
さらに、ITと経済社会システムの融合化が進展し、密接不可分のものに進化を遂
げつつあることから、経済的視点、社会的視点、技術的視点からの多面的「変化」が
22
情報セキュリティ問題に、より直接的な形で影響を与えつつある。
(2)解決の方向性と具体的施策
以上を踏まえ、「グローバル情報セキュリティ戦略」においては、「世界最高水準の
『高信頼性社会』実現による経済・文化国家日本の競争力強化と総合的な安全保障
向上」と、「我が国経済社会が直面し続ける『変化と挑戦』を支える情報セキュリティの
実現」という基本目標の達成に向け、以下のような施策を含む、3 つの戦略(戦略 1:情
報セキュリティ先進国の実現、戦略 2:情報セキュリティ政策のグローバル展開、戦略
3:国内外の変化に対応するメカニズムの確立)を提示している。
① 業務効率化、技術流出防止等に資する情報セキュリティ対策をベストプラクティス
事例集として提供
② 中小企業向け簡易チェックツールの作成等を通じた中小企業の対策の底上げ
③ ソフトウェアの機能をインターネット経由でサービスとして提供する SaaS の普及に
対応し、サービス提供者が具備すべきセキュリティ上の要件や評価手法等に関す
るガイドラインの作成
④ 国内外の関連データ等の収集、分析、発信等を行うための中核組織として、国内
関係機関に「情報セキュリティ分析部門」(仮称)を創設
今後、IT 化を通じた生産性の向上等とITの安心・安全な利用の両立に向け、情報
セキュリティ政策会議、内閣官房情報セキュリティセンターを中核としつつ、官民のあ
らゆる主体が連携・協力して、当該戦略を踏まえた施策を講じていくことが必要
である。
3.制度的課題への対応
ブロードバンドの普及及びデジタル技術の発展により、ⅰ)電子商取引の発展、ⅱ)イ
ンターネット上の情報の増大、ⅲ)画像・動画の共有等が進みつつある。
こうした中で、例えば以下のような論点が生じている。
(1)電子商取引に関連する課題
① 仲介業者等、関連事業者が取引の適正化のために果たすべき役割
インターネット通信販売に関する消費者トラブルの増加や、1 つの取引に複数
の関係者が関与するなど取引形態の多様化・複雑化の進展に伴い、電子商取
引の仲介業者等、関連事業者が取引の適正化のために果たすべき役割が論点
となっている。
② ネットショップ等における電子ポイントに関する課題
同一のポイント制度への他業種の事業者の参加やポイント相互間の連携の強
23
化等に伴い、企業ポイントに対する消費者の期待や信頼をどこまで保護すべき
か、消費者等の本人の想定外の個人情報の活用がなされていないかが論点と
なっている。
③ 国際取引で発生したトラブルの裁判管轄
国際裁判管轄に関する包括的な条約の作成作業が実施されたものの、結局
作成は見送りとなったため、包括的な国際裁判管轄規定の整備が論点となってい
る。
(2)インターネット上の情報の取扱いに関する課題
① 検索エンジンサービスに必須なデータベース作成・提供行為に関する著作権法上
の考え方
検索用データベースの構築に際して必要となる複製や検索結果としての検索
対象の一部表示が著作権侵害となる可能性があることから、著作権法上の扱い
が論点となっている。
② インターネット上の広告に対する、薬事法等各種広告規制の適用に関する考え方
アフィリエイトの活用等、多様な者による提供が行われる中で、虚偽広告・誇
大広告の問題や薬事法等の各種広告規制に違反した広告が散見されるとの指
摘があり、規制の在り方等が論点となっている。
③ インターネット上における共有著作物及び匿名発信者による作品の商業的利用の
方法
インターネット上における共有著作物や匿名発信者による商業的利用に当た
り、使用許諾の交渉相手が匿名かつ多数に分散している場合、全員から使用許
諾を得ることが事実上不可能であることが商業的利用の障害になるかが論点と
なっている。
④ ネット上のデータにおける財産的価値の増大に伴う使用ルールの在り方
アメリカ・韓国において、オンラインゲームのアイテム等サーバー上でのみ利
用可能なデータに対し、主観的に大きな価値を見出だす者が増加し、サービス
提供会社のルールを遵守せず金銭を用いてこれらの取引を行う者が登場してい
る。日本においても同様の取引実態が見られることから、これらの行為への対応
の在り方が論点となっている。
(3)デジタルコンテンツに係る課題
① 権利保護を実現しつつ P2P11、遠隔地視聴サービス、動画共有サイト等を活用し
たデジタルコンテンツ流通多様化と効率化を促進する制度の在り方
放送を受信しネット経由で送信する行為やP2Pファイル交換ソフトウェア提供
行為等については著作権法上の取扱いが不明確であり、何が違法行為なのかの
明確化が論点となっている。
11
Peer to Peer
24
② 携帯型録音機器等での音楽利用の増大と、技術的保護手段の進展に伴う私的録
音録画補償金制度の在り方
ブロードバンド化・デジタル化によるネット配信・携帯型録音機器といった新た
なサービス・製品による音楽利用の増大及び、録音録画を管理する技術的保護
手段の進展に伴い、私的録音録画補償金制度の前提が変化しており、同制度の
在り方が論点となっている。
③ ユーザの利便性も考慮した地上デジタル放送におけるコピー制御運用方式の在
り方
基幹放送である無料の地上デジタル放送における著作権保護ルールの決定
方法等に関する議論が十分行われないまま、コピーを一律一個に制限したことに
より、録画に関するユーザの利便性がアナログ放送時に比して大きく損なわれて
おり、ユーザの利便性の向上と権利保護とのバランス等が論点となっている。
(4)個人情報保護に係る課題
「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)については全面施行後 3 年を
目途として施行状況に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることが求
められているところ、個人情報保護法に対する誤解等に起因して、必要とされる情報
提供までが行われないいわゆる「過剰反応」への対応や、後を絶たない個人情報漏
えい事案を抑止するための安全管理措置の在り方等、諸環境の変化を踏まえた評価
が論点となっている。
また、新たなビジネスの誕生、技術の進展等IT分野の環境変化が急速であることから、
上記以外にも、新たな制度的課題が生じてくることも考えられる。
これらの課題については、イノベーションの創出、安心・安全な情報経済社会の実現、
取引関係者等の予見可能性の向上、国際的な制度調和、コンテンツ流通促進と権利保
護とのバランス等との視点に立った検討が必要である。また、これらの制度的課題や課
題に対する取組について、普及啓発を実施していくことは、消費者保護の観点からも重要
である。
このため、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改定等を含め、本分科会
の下の「ルール整備小委員会」等で議論を深めるとともに、政府における対応を促すこと
が必要である。
4.テレワークなどの活用促進による「ワーク・ライフ・バランス」の実現
(1)現状
少子高齢化が急速に進む中で、仕事と、介護、育児等を始めとする家庭生活のバラン
ス、すなわち「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が高まっている。
25
「ワーク・ライフ・バランス」を実現する手段の一つとして、テレワークを始めとする、IT の
効果的な活用が期待されている。
¾
テレワークには、労働者にとっては就労機会の拡大、移動時間の短縮や業務能率の向上等によ
る生産性向上、執務時間・場所の自由度の拡大による労働環境の改善といったメリットが存在す
る。
¾
政府では、「IT新改革戦略」等において、2006 年 1 月に 10.4%であったテレワーカー率を倍増さ
せ、2010 年までに 20%を実現することを目標としている。
・ テレワークは、IT関連企業においても拡大。あるメーカーでは、テレワークを推進する担当部
署を設置し、2006 年 4 月より「モバイル勤務制度」を導入し、社員約 4000 人が活用している
例がある。
・ また、サービス業の地方展開にも貢献。福島県では、自宅を拠点に働く委託スタッフを「在宅
ワーカー」として登録し、06 年 7 月現在で約 100 名がデータエントリや web リサーチなど様々
なアウトソーシング業務に参画、併せて、共同利用型のテレワーク環境の整備、ITスキルや
財務会計など人材育成のためのプログラムの整備、具体的な業務を通じたプロのテレワー
カー育成の支援を行い、地域活性化・地域人材育成に貢献している例がある。
(2)今後の課題
「テレワーカー倍増」の実現に向けては、依然として以下のような課題があり、解決に
向けた検討が必要である。
①ユーザにとって必要十分なセキュリティポリシー、ITツール等に関する情報提供の
拡大
¾
オフィス外での勤務となるテレワークでは、通常、インターネットを活用してオフィスと連携体制を
構築する。したがって、ウイルス等への感染、企業内情報の改ざん、機密情報の漏えい等のリス
クが存在。こうしたリスクに対応するためには、VPN12やシンクライアントなどの様々な方策が存
在する。しかしながら、どこまでのセキュリティ確保を、どのようなITのツール、ポリシーにより実
現すべきか等、新たに事業者がテレワークを導入しようとする場合の技術面の手法等について
の道筋が必ずしも分かりやすいものではない。一方、セキュリティ上のリスク回避に慎重になる
あまり、本来実現しうる柔軟な就労形態が実現しないおそれがあり、他方では、適切なセキュリ
ティポリシー、ツールの適用を行わないことにより、セキュリティ上の問題が深刻化するおそれも
ある。
¾
このため、テレワークの普及に向けては、利用者にとってわかりやすい形で、セキュリティ確保と
両立するテレワークを実現するためのITツールに関する情報収集、提供を強化することが必要
である。
②労務管理・評価方法の確立
¾ オフィス外で働くテレワーカーについても、テレワーカーの上司(管理者)は、執務環境の確保や
12
Virtual Private Network
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労働時間の管理を行うことの難しさの指摘がある。例えば、自宅での在宅勤務中の負傷に対し
て労災が適用されるか否かについて、現行の制度では必ずしも明確ではない。こうしたケースに
おいて、関連制度の適用について関係をできる限り明確化することが必要と考えられる。
¾ また、テレワーカーの上司(管理者)は、離れて業務を行っている部下の評価を行うこととなる。
人材評価手法の標準化等により、テレワーカー個々人のスキルを可視化するとともに、管理者
側においてこうしたスキルを向上させることが必要となると考えられる。こうした取組について、企
業のベストプラクティスを広く共有する取組が必要と考えられる。
③情報サービス産業における人材の活用を通じた労働生産性等の向上
¾
テレワークを実施するためには、対象となる業務を全体の業務から切り出し、個々のテレワーカ
ーがそれぞれにおいて業務を進められるようにすることが必要(この際、容易に業務の切り出し
を行えるようにするためには、業務プロセスの標準化が有効)。こうした中からテレワークがメリッ
トを発揮する業務を選定して、当該分野においてテレワークを積極的に推進することが重要であ
る。
¾ テレワークは労働者の自由な働き方を認める一方、深刻な人材不足の課題を有する産業分野
において、その課題克服にも役立つ可能性がある。情報サービス産業においては、育児・介護
従事者などに代表される通勤困難者であっても、テレワークにより実質的に参加・貢献できる業
務が多くあり、これらの人材を新たな労働力として活用していくことが可能となる。また、テレワー
クは、創造性が求められるソフトウェア開発業務など職場を選ばない一方より大きな創造性が求
められる分野において、必要とされる個々の労働者にとって最も生産性が高い労働環境を作り
出すことも可能である。
これらの課題解決に向けた検討を行うに当たり、ユーザ企業及びITベンダ、有識者、関
係団体からなる検討の場を設け、ベストプラクティスの抽出・共有を促進することにより、
テレワークの実施主体である民間事業者の自主的な取組を促進することが有効であると
考えられる。
こうした取組を通じて、新たにテレワークを導入しようとする事業者に対して、利用者に
とって分かりやすい形で、大企業、中規模企業、小規模企業それぞれの企業規模や投資
余力等を踏まえつつ、テレワークの頻度や場所、他の企業等への業務の広がり、業務内
容等企業の態様に応じた、効果的なテレワークシステムの構築例を示すこと必要である。
5.「環境調和型ITシステム」の確立
(1)IT化と環境負荷
ITの利用によって、生産性の向上に加え、テレビ会議、テレワークや遠隔医療など国民
生活に新たな利便性や豊かさをもたらすことが期待されており、今後も、IT利用が大幅に
増大することが見込まれている。
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ITによる地理的・空間的制約の克服は、CO2削減などの効果も期待されているものの、
IT利用の増大は、それを支えるルータやサーバ、ストレージ、ディスプレイ等のIT機器の
消費する電力量の増加として、既に問題になりつつある。
今後、このまま放置すると、これら機器による消費電力量のさらなる増大によって、IT
の利活用を抑制せざるを得ない状況に追い込まれ、ITのポテンシャルを生かし切れなくな
る可能性も捨てきれない。
(参考)
米国では、データセンターの消費電力量が過去6年間で倍増しており、大きな問題となっている。
Googleなど、大きなデータセンターを運営しているところでは、電力を確保するために、データセン
ターを水力発電所の近くに立地するような事例も出てきているとの指摘もある。
(2)米国の動向
こうした状況に対して、米国ではコンピュータ資源を有効活用する動き(Green
Computing)が活発化している。チップベンダーは、マルチコアプロセッサ等低消費電力型
CPUの開発に注力し、また、サーバーベンダーは単に低消費電力型サーバーを開発する
だけに留まらず、データセンター全体の冷却最適化技術も顧客に提案するなどしている。
この他、サーバー仮想化技術やグリッド・コンピューティング、高効率電源装置といった技
術も注目されている。
(3)我が国の対応と今後の課題
こうした動きに対して、我が国IT企業は遅れを取っているとの指摘もある。今後、省エ
ネルギーはIT分野において必要不可欠の要素となると考えられることから、我が国IT企
業も、国際競争力確保の観点から、IT分野での省エネルギー技術の開発を強力に推進し、
拡大するマーケットにおいて有利なポジションを確立していく必要がある。
また、ITによる新たな社会的便益を継続的に享受できる社会を実現するためには、国
内に省エネルギー技術の普及を進め、環境調和型ITシステムを確立することが不可欠で
ある。政府としても、IT機器の基盤となる半導体の省エネルギー技術を含めたIT分野での
省エネルギー技術に関する研究開発を強化するとともに、省エネ法・トップランナー制度
の対象製品の拡大、更なる目標値の引き上げ等を通じて、省エネ技術の普及を図ること
が必要である。
(参考)
現在、電子計算機、磁気ディスク装置、液晶・プラズマを含むテレビ等 21 機器が省エネ法・トップラ
ンナー制度の対象となっている。また、小型ルータ(ブロードバンドルータ)については、2007 年度中
に対象機器となる予定。
大型ルータについても、対象機器化を念頭に、関係業界等での議論が進められている。
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産業構造審議会
情報経済分科会委員
名簿
(敬称略)
分科会長
村上
輝康
(株)野村総合研究所理事長
委員
淺野
正一郎
国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系教授
〃
池上
徹彦
宇宙開発委員会委員
〃
大歳
卓麻
日本アイ・ビー・エム(株)代表取締役社長執行役員
〃
大山
永昭
東京工業大学像情報工学研究施設教授
〃
小川
善美
〃
片岡
政
アルプス電気(株)代表取締役社長
〃
勝俣
恒久
東京電力(株)取締役社長
〃
畔柳
信雄
(株)インデックス代表取締役社長兼COO
(株)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ取締役社長
(株)三菱東京 UFJ 銀行頭取
〃
國領
二郎
慶應義塾大学総合政策学部教授
〃
佐々木
幹夫
三菱商事(株)取締役会長
〃
島崎
憲明
住友商事(株)代表取締役 副社長執行役員
〃
庄山
悦彦
(株)日立製作所 取締役会長
〃
田島
優子
さわやか法律事務所弁護士
〃
田中
英彦
情報セキュリティ大学院大学研究科長・教授
〃
棚橋
康郎
新日鉄ソリューションズ(株)代表取締役会長
〃
寺島
実郎
〃
中村
正武
日本労働組合総連合会中央執行委員・電機連合中央執行委員長
〃
中山
信弘
東京大学大学院法学政治学研究科教授
〃
野原
佐和子
(株)イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長
〃
原
丈人
デフタパートナーズ・グループ取締役会長
〃
藤元
健太郎
ディーフォーディーアール(株)代表取締役社長
〃
牧野
二郎
牧野総合法律事務所所長・弁護士
〃
松本
恒雄
一橋大学大学院法学研究科教授
〃
宮本
一子
〃
森嶋
正治
(財)日本総合研究所会長・(株)三井物産戦略研究所所長
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問
日本労働組合総連合会副会長・情報労連中央執行委員長
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ITによる生産性向上の加速化に向けて(ITフロンティア・イニシアティブ)
に関する検討経緯
≪第1回≫
日時:2007年1月18日(木)
議題:「ITフロンティア・イニシアティブ」について
≪第2回≫
日時:2007年3月20日(火)
議題:「ITフロンティア・イニシアティブ」について
≪第3回≫
日時:2007年4月19日(木)
議題:「ITによる生産性向上の加速化に向けて(ITフロンティア・イニシアティブ)」
(案)について
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