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第5章 ヒアリング調査結果
第5章 ヒアリング調査結果 Ⅰ 山形市成年後見センター (山形県山形市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶山形市の面積は381.58㎢、人口は249,888人、世帯数は97,598世帯である。高齢化率は25.4%、単身高齢者 は6,840人、高齢者夫婦のみ世帯8,813世帯である。療育手帳所持者は1,500人、精神保健福祉手帳所持者は 1,015人である(平成25年4月1日現在)。 ▶人口は減少傾向だが世帯数は増えており、核家族化が進んでいる。また、山形県は三世代同居全国1位と いう統計があるが、単身または高齢者夫婦のみ世帯は右肩上がりで増えている。障害者手帳所持者数も障 がい種別にかかわらず増加傾向にある。 ▶高齢者の社会資源は、居住系施設を中心に増加傾向にあるが、障がい者の社会資源はまだ十分とは言いき れず、特に常時介護が必要な障がい者、精神障がい者のサービスが不足していると感じられる。 ▶後見活動に関わる社会資源として、県全体でみるとNPO法人等も活動しているが、山形市内では、弁護 士会、リーガルサポートセンター、ぱあとなあといった専門職団体のみである。東京大学の講座修了者が 山形市民後見サポートセンターとして活動しているが、後見制度に関する広報、研修会の開催等にとどま っている。そのほか、遺言作成や任意後見サービスに向けた検討を始めている機関もみられる。 2 センター設置のきっかけ・経緯、運営方針 ▶平成12年度から日常生活自立支援事業の基幹的社協となり、平成15年頃からさまざまなところで広報した 結果、契約者が増加した。その中には、次第に判断能力が低下し、日常生活自立支援事業で支援を継続す るのが難しいケースもあったため、親族申立てをして専門職後見人に引き継ぐ対応を取っていた。 ▶しかし、本人にとって、日常生活自立支援事業で顔見知りだった職員が所属する組織が継続して支援する ことで安心して生活できるケースもあったため、平成16年度に山形市社協として成年後見制度移行につい ての方向性を確認した上で、平成17年度から日常生活自立支援事業の利用者の成年後見申立て支援を行い、 申立て後の受け入れ体制の整備を図った。 ▶平成18年度から法人後見の受任を開始し、現在61件を受任している。ケースの概況を見ると、日常生活自 立支援事業からの移行者が多く、その中でも最近では首長申立てのケースが中心となっている。 ▶毎年10件程度の受任をしてきた結果、平成22年頃には、以下のような課題が明らかになってきた。 ・成年後見制度に関する総合的な相談窓口がなく、家庭裁判所や市役所等の公的機関の窓口の説明だけで は足りず、市民の立場の合わせて分かりやすく対応してくれる場所が必要である。 ・首長申立ての増加とあいまって、後見候補者が決まらず申立てから審判が下りるまで1年以上待つケー スが出始めた。 ・今後、首長申立ての増加が予想され、ますます後見受任者不足が深刻化する。 ・専門職後見人であっても新規で受ける際は不安があるため、常時相談できる窓口を確保することととも に、後見候補者が安心して受任できるバックアップ体制が必要である。 ・後見制度、任意後見制度について地域住民に浸透しておらず、周知が必要である。 ・後見候補者拡大のため、市民後見人の養成をどうするか検討する必要がある。 ▶平成18年度に社協が法人後見を始めて以降、現場の困難ケースを市の担当者と一緒に解決してきた実績を 通じて、 「権利擁護には社協との協働が効果的である」という認識が市の担当課に浸透していたので、平 成22年から、市主催で、長寿支援課、後見を受任しているリーガルサポートセンター、ぱあとなあ、社協 が集まり、各団体の受任状況や成年後見をめぐる課題について意見交換する会を設けた。この中で、候補 者を増やすこと、社協に窓口を置くことが提案されたため、これを具体化するべく、平成23年には先進地 76 第5章 ヒアリング調査結果 視察(品川区、杉並区、世田谷区、立川市)も実施した。 ▶平成24年度からの「山形市高齢者保健福祉計画」に「成年後見センターの設置」を盛り込んでもらい、推 進していくことになった。 ▶意見交換会での検討をふまえ、平成24年度には市主催で、山形市成年後見制度利用者支援検討会を開催し た。この検討会には、平成22、23年度の意見交換会参加者に加え、障がい福祉課、生活福祉課、弁護士、 医師会、民生委員・児童委員、地域包括支援センター運営協議会の代表、障がい者の代表、山形県にも参 画してもらい、山形市の成年後見制度がどうあるべきか検討し、先進地視察(品川区、千葉市、越谷市) を実施した上で、後見活動の実績がある社協にセンターを開設するという結論を得た。 ▶こうした検討経過を経て、平成25年度に山形市が成年後見センターを立ち上げ、社協が受託した。 3 社協におけるセンターの位置づけ ▶社協の地域福祉部門の生活支援第二係が、成年後見センター、法人後見事業、福祉サービス利用援助事業、 生活困窮者自立相談支援事業、生活福祉資金等貸付事業を所管している。部門には、他に福祉のまちづく り係(ボランティアセンター、ふれあい総合相談所)、生活支援第一係(地域包括支援センター2か所、 障害者相談支援センター)がある。特徴は、生活支援第一係と第二係があらゆるニーズを吸い上げてまち づくりに反映していく部門ということである。 ▶社協内には、そのほかに法人運営部門、在宅サービス部門、保育部門があり、職員は合計260人程度であ る。また、小学校区単位に地区社協があり(30地区) 、小地域福祉ネットワーク活動を展開している。 4 センターで実施している事業 ⑴ 成年後見センターとしての業務 ▶成年後見センターとしては、山形市内に住所を有する者を対象に、以下の業務を実施している。 ・成年後見制度の利用に関する相談:制度や利用方法についての相談を行う。 ・相談ケースへの対応:相談ケースの状況把握、本人や家族等のアセスメントを実施して課題を明らか にし、親族による申立てが見込まれない相談ケースについては、市に報告しケース会議の調整を図り、 支援方策の検討を行う。 ・成年後見制度の利用に関する申立て手続支援:本人及び親族による申立ての手続についての助言、書 類の作成等の支援を行う。必要に応じて申立ての際に同行して支援を行う。 ・後見人等受任者調整:親族による申立てが見込まれない相談ケースについて、ケース方針調整会議を 開催し、課題にあった第三者成年後見人が受任されるよう調整を行う。 ・広報・普及:センターのパンフレットを作成・配布しPR活動を行う。関係機関及び市民向けの研修 会等を開催し、制度の普及を図る。 ・後見人等のサポート:親族後見人や後見人初任者等の相談受付、支援を行う。 ・市民後見人の養成に関する情報収集:市民後見人の養成について、市と連携を図りながら調査・研究 を行う。 ⑵ 法人後見 ▶法人後見はあくまでも社協が後見人等になって活動すべきものであり、相談調整機能をもつセンターと は別の独自事業として継続することとした。 ▶法人後見については、社協は、形式的には、リーガルサポートセンターやぱあとなあと横並びの位置づ けである。ただ、実際には、他で受けられない人の最後の砦となっており、被後見人等の状況に大きな 変化がなく落ち着いているケースは他の機関で受けてもらうようにしている(社協が受ける例:認知症 高齢者と精神障がい者の世帯で、家族全体の支援が必要、かつ、頻回な電話があったり、何度も呼ばれ 第5章 ヒアリング調査結果 77 るケース。父の首長申立て、息子の本人申立てを支援したが将来的に報酬は見込めないケース等) 。 ▶こうした難しいケースばかりを受けていくと、将来的には報酬が見合わないという課題が出てくるかも しれないが、社協の役割として対応すべき事業と認識している。 ⑶ 日常生活自立支援事業 ▶日常生活自立支援事業は、県社協委託事業として、センターとは別の事業として実施している。 ▶利用件数は平均120件程度(解約が40件程度)で推移しており、生活保護受給者(全体の1/3程度)、精 神障がい者が増えている。なお、生活保護受給者は行政ワーカーからよりも、介護保険ケアマネジャー 等から紹介されるケースが多い。 。全員が後見 ▶生活支援員は35人で、委嘱期間2年の有償ボランティアである(活動1回1,300円/時間) 支援員と兼務しており、担当ケースが成年後見制度に移行しても継続して支援してもらう。社協や行政 のOB、民生委員・児童委員、福祉協力員、ボランティアセンターで活動していた人に個別に声かけし ている。 ⑷ その他 ▶市民後見人養成については、今年度、センターが立ち上がったばかりなので、まだ模索中である。生活 困窮者自立相談支援事業を新たに受託し、権利擁護との関連も今後見極めていく必要がある。センター を受託し、首長申立てだけではあるが第三者後見候補者の受任調整会議が開けるようになった結果、弁 護士による後見人の幅が広がったことは良い傾向と思われる。 5 センター運営のバックアップ体制 ▶運営委員会を設置し、年2回開催を予定している。委員構成は、学識経験者、弁護士会、司法書士会、社 会福祉士会、医療機関、民生委員・児童委員、知的障害者福祉協会、県地域包括・在宅介護支援センター 協議会、市障害者自立支援協議会、山形県で、事務局を山形市、山形市社協が担う。 ▶また、首長申立てが必要と思われるケースについて、速やかに受任者の調整を進め、本人及び親族が安心 して生活できるよう支援するため、ケース方針調整会議を随時開催している。委員構成は、山形県弁護士 会、リーガルサポートセンター、ぱあとなあ、山形市社協法人後見事業の四者である。 ▶一方、法人後見事業のバックアップ体制としては、上記とは別に法人後見事業業務監督審査会を設置し、 年2回開催している。委員構成は、弁護士、精神科医、公証人、県社協、行政である。 6 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶長寿支援課とは、個別ケース対応で連携を積み重ねてきており、社協がセンターを運営することの意義 を理解してもらうことができ、円滑に連携できている。 ▶一方、障がい福祉課は、センターの活動内容や事業効果は理解しているが、障がい種別ごとに担当が分 かれており、申立ての事務担当者がケースワーカーと異なることがあり、首長申立てまで時間がかかる のが現状である。今後、障がい者のニーズにも応えられる行政と社協の協働が求められている。 ⑵ その他関係機関 ▶地域包括支援センター(市内に12か所)は連携状況にばらつきがある。 ▶障がいの相談支援事業所(市内に10か所)も連携状況にばらつきがあり、個別支援での連携で終わって いる。 ▶金融機関は、法人後見を始めた当初は色々と煩雑な手続き等を求められたが、今はお互いに慣れてきた 78 第5章 ヒアリング調査結果 ので連携は円滑である。本店や核になる支店が音頭を取ってくれている。また、窓口に印鑑も通帳も持 たずに訪れる顧客がいた場合等、センターに連絡が来るようになった。これは地域包括支援センターの ネットワーク連絡会の中で圏域の金融機関と関係づくりをしてきた成果といえる。 ▶民生委員・児童委員や福祉協力員とは、研修会で制度の周知を図ったり、個別ケースで連携している。 また、センターができてからは、地域で気になるケースについて相談が来るようになってきた(地縁が 残っているため、ぎりぎりまで近隣の人が食事や金銭管理の支援をしていて、どうにもならなくなって 初めて相談が持ち込まれるケースもある) 。 ⑶ 県社協 ▶県社協は他市町村の立ち上げ支援に注力しており、山形市は平成16年~18年に協働して取り組んできた が、現在は特に支援は受けていない。県社協が主催する研修に職員を派遣している状況である。 7 センターの運営体制 ▶社協が入居する山形市総合福祉センターの一角に窓口がある。 ▶成年後見センター、法人後見、日常生活自立支援事業を一体的に運用しており、これに従事する職員は合 計7人である(うち正規職員4人、全員が社会福祉士資格を有する) 。 ▶職員の中には、新規採用者や社協のデイサービスから異動してきた職員で、相談業務は初めてという人も いるので、OJTで育成している。個別支援とまちづくり・地域福祉の両面の視点と業務経験を持った人材 を配置したいが、現実的には難しい。 ▶社協内部の研修として、平成25年度は、実務研修を2回(講師:リーガルサポート、公証人) 、基幹型社 協生活支援員対象研修会、月1回程度の事例検討会を実施している。事例検討会は、プレゼン能力、アセ スメント能力、課題の分析能力等を総合的に向上させるために有用である。できれば外部講師によるスー パーバイズもあるとよい。 ▶外部研修として、県社協や全社協の研修に可能な限り職員が参加している。 8 センターの運営財源 ▶平 成25年度予算の収入は、センター運営に係る市町村単独補助金13,000千円、法人後見報酬11,120千円、 日常生活自立支援事業受託金5,468千円、日常生活自立支援事業利用料2,675千円である。 9 センターを社協が運営していることの意義 ▶センターができたことで、要支援者が発見されやすくなった。とりあえず社協に相談すれば糸口が見える かもしれないと、色々な相談が持ち込まれるようになった(例:重度障がいの子どもを入院させたまま、 母親が行方不明になったケースの対応について病院から相談を受ける等) 。 ▶判断能力が低下し契約による支援が難しくなった時どう対応するかという課題は、日常生活自立支援事業 を実施している以上、どの社協も避けて通れない問題である。制度創設時に判断能力の低下にどう対応す るかが整理されないまま事業がスタートしてしまった。事業を実施している社協として問題を解決する必 要があるし、社協しか実施できない事業スキームになった以上、その先をどうするかは社協が考えなけれ ばならない。 ▶市は相談は受け付けるが、実際に市民を助ける受け皿として動くには限界がある。地域福祉の視点から、 フォーマル・インフォーマルのサービスを組み合わせて個別支援を行うこと、関係機関との連携を促進す ることの両面を担えるのは社協だけではないか。もちろん、市民活動の認知度が高い都市部等ではNPO 法人等がその担い手となりうるだろうが、小規模市町村になればなるほど、公的な位置づけがあり、母体 がしっかりした社協が受け皿になるのが望ましい。 第5章 ヒアリング調査結果 79 10 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶全ケースについて、職員全員が対応できるように、日々の記録は確実にファイルに残すようにしている。 ▶金銭管理は総務係のチェックを受けるようにしているが、業務負荷はかなり高い。 11 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶平成25年度モデル事業を受託しているが、11月に始まったばかりのため、 「生活困窮者」の具体的な対 象者像を模索中である。 ▶成年後見センターと同じ部署に位置付けたのは全社協の方針に沿ったものである。 ▶生活困窮者自立支援事業は、11月に立ち上がったばかりであり、現時点では、成年後見制度や日常生活 自立支援事業につながったケースはない。しかし、相談の中では、障がい等を持っていることから生活 困窮が発生している疑いのあるケースは見受けられるので、生活全体を見つめながら対応を検討している。 ▶成年後見センターの職員と求められるスキルは重複する部分も多いので、人材育成等を中心に協働でき るところはあるのではないか。 山形市社会福祉協議会 成年後見制度法人後見事業に関する実施要綱 (趣旨) 第1条 この要綱は、社会福祉法人山形市社会福祉協議会(以下「市社協」という。 )が実施する成年後 見制度法人後見事業について必要な事項を定めるものとする。 (事業の目的) 第2条 この事業は、認知症である高齢者や知的障がい者、精神障がい者など判断能力が不十分なため、 意思決定が困難な者の判断能力を補うため、成年後見制度等を活用し、財産管理や身上監護を中心とす る権利擁護サービスを市社協が提供することにより、地域福祉の推進に寄与することを目的とする。 (業務監督審査会の設置) 第3条 市社協は、事業の適正な運営を確保するため、成年後見制度法人後見事業業務監督審査会(以下 「業務監督審査会」という。 )を設置する。 2 業務監督審査会の設置運営に関する必要な事項は、別に定める。 (事業の内容) 第4条 第2条の目的を達成するため、市社協は、任意後見人、成年後見人、保佐人及び補助人(以下 「成年後見人等」という。 )の業務を行う。 (事業の対象者) 第5条 市社協が行う成年後見人等の業務(以下「法人後見業務」という。 )の対象者は、山形市、山辺 町及び中山町に居住する者であって、次の⑴⑵のいずれかに該当する者とする。 ⑴ おおむね65歳以上の認知症である高齢者又は20歳以上の知的障がい者若しくは精神障がい者であっ て、判断能力が不十分な者 ⑵ 法人後見業務による支援が必要と市社協が認める者 (法人後見業務) 第6条 市社協は、法人後見業務として次に掲げる業務を行う。 80 第5章 ヒアリング調査結果 ⑴ 任意後見及び成年後見にあっては、別表に掲げる事務のうち任意後見契約の委任者、成年被後見人、 被保佐人及び被補助人(以下「被後見人等」という。 )の心身の状態及び生活の状況に応じて市社協 が必要と認めるもの ⑵ 保佐及び補助にあっては、民法(明治29年法律第89号)第13条第1項に規定する行為又は同法第17 条第1項の規定による家庭裁判所の審判により付与される同意権及び代理権に係る事務 2 前項各号の業務及び裁判所に提出する報告書の作成等事務の実施は、市社協職員及び市社協会長が委 嘱する生活支援員が行うものとする。 3 生活支援員に関する要綱は別に定める。 4 市社協は、法人後見業務を実施するにあたり、必要に応じ法人後見事業受任等に関する検討委員会を 開催する他、専門家等に意見を聴くものとする。 (後見事業の利用申し込み) 第7条 山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業を利用しようとする者は、山形市社会福祉協議 会成年後見制度法人後見事業利用申込書(様式1「山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業法 定後見人利用申込書」 、様式2「山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業任意後見人委任申込 書」 )を本会に提出しなければならない。 (利用の決定等) 第8条 市社協は前条の申込や裁判所から依頼があった場合には、その内容を本会において審査し、利用 が適当と認めたときに、山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業利用許可決定通知書(様式3 「山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業利用許可決定通知書」 、様式4「山形市社会福祉協議 会成年後見制度法人後見事業任意後見人受任決定通知書」 )により、不適当と認められたときは、山形 市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業利用不可決定通知書(様式5「山形市社会福祉協議会成年 後見制度法人後見事業利用不可決定通知書」 、様式6「山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事 業任意後見人受任不可決定通知書」 )により申込者あてに通知する。 (任意後見契約の締結) 第9条 判断能力が不十分な状態になった場合に備え、市社協と任意後見契約を締結しようとする者は、 代理権付与等の契約内容について事前に市社協と協議を行い、その合意した内容に基づき公正証書によ る任意後見契約を締結する。 2 市社協は、前項の規定により公正証書による契約を締結した場合には、業務監督審査会に報告する。 (任意後見監督人の申立て) 第10条 前条の規定による任意後見契約締結後、任意後見契約の委任者が判断能力が不十分な状態になっ たときは、市社協は、本会において検討したうえで、家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任申立を行 うものとする。 2 市社協は、前項の申立に伴う費用を任意後見契約の委任者が支弁することを求めることができる。 (財産目録の調整等) 第11条 市社協は、成年後見人等に就任したときは、速やかに財産調査を行い財産目録を調整するととも に、財産管理計画及び身上監護計画を作成する。 (居所の訪問) 第12条 市社協は、前条の規定により作成した計画に基づいて法人後見事業を行うとともに、適宜に被後 見人等の居所を訪問し、安否の確認、心身の状態及び生活の状況の把握に努めるものとする。 (財産の保管) 第13条 被後見人等の財産のうち、次に掲げるものは市社協が契約する金融機関の貸金庫において保管する。 第5章 ヒアリング調査結果 81 ⑴ 預貯金通帳(日常的に使用する普通預貯金を除く。 ) ⑵ 有価証券 ⑶ 保険証書 ⑷ 登記済権利証 ⑸ 実印 ⑹ その他前各号に準ずると市社協が認めるもの 2 被後見人等の財産のうち、次に掲げるものは市社協の事務所に備える金庫に保管する。 ⑴ 預貯金通帳(日常的に使用する普通預貯金に限る。 ) ⑵ 印鑑(実印を除く。 ) ⑶ 印鑑登録証 ⑷ その他前号に準ずると市社協が認めるもの (費用) 第14条 法人後見業務に要する費用については、被後見人等の負担とする。ただし、やむを得ない事情に より市社協が市社協の財産から立て替えて費用を支出した場合は、これを求償することができる。 (台帳等の整備) 第15条 市社協は、法人後見業務の処理の状況を記録するため、被後見人等について個人ごとにケース記 録及び金銭管理の台帳等を整備しなければならない。 (報酬付与審判の申立て等) 第16条 市社協は、成年後見人、保佐人及び補助人の報酬については、家庭裁判所に報酬付与の審判を申 し立てるものとする。 ただし、被後見人等の事情により報酬を付与されることが困難であると市社協会長が認めるときは、 この限りでない。 2 任意後見人の報酬については、別に定めるものとする。 (辞任) 第17条 市社協は、被後見人等が第5条に規定する市町以外へ転出し、又はその他の特別な事情により法 人後見業務を継続して行うことが困難になったときは、任意後見契約の解除又は家庭裁判所に後見人等 の辞任を申し出るものとする。この場合において、当該被後見人等について必要があると認めるときは、 当該被後見人等の住所を管轄する家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立てるものとする。 (法人後見業務の終了) 第18条 市社協は、被後見人等が次のいずれかの事項に該当する場合は、法人後見業務を終了するものと する。 ⑴ 被後見人等が死亡したとき。 ⑵ 後見開始、保佐開始及び補助開始の審判が取り消されたとき。 ⑶ 市社協が適切な後見業務の遂行に支障があると判断し、家庭裁判所に成年後見人等の辞任の許可の 申立を行い、家庭裁判所により辞任を許可する審判がされたとき。 ⑷ 市社協が本事業を廃止したとき、又は法人組織を解散したとき。 (財産の引き渡し) 第19条 市社協は、法人後見業務に係る保管財産の引き渡しについては、民法の規定に従うほか、家庭裁 判所の指示に従うものとする。 (個人情報の保護) 第20条 市社協は、被後見人等の個人情報に十分留意しなければならない。 82 第5章 ヒアリング調査結果 2 市社協は、個人情報が記載された書類等を適切な方法により保管し、みだりに他人に閲覧させ、また はその写しを提供してはならない。 3 事業の実施に関わる職員は、申込者及び利用者のプライバシーの保護に十分配慮するとともに、業務 上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 (委任) 第21条 この要綱に定めるもののほか、この要綱の施行に関し必要な事項については別に定める。 附 則 (施行期日) この要綱は、平成18年7月1日から施行する。 附 則 この要綱は、平成19年5月1日から施行する。 附 則 (施行期日) 1 この要綱は、平成22年4月1日から施行する。 (事業対象者の特例) 2 この要綱による改正前の山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業に関する実施要綱に基づき、 天童市及び上山市に居住する者で、平成22年3月31日以前に市社協が成年後見人等を受任している者に ついては、この要綱による改正後の山形市社会福祉協議会成年後見制度法人後見事業に関する実施要綱 第5条第1項の規定に関わらず、なお、従前の例による。 第5章 ヒアリング調査結果 83 Ⅱ 燕市福祉後見・権利擁護センター (新潟県燕市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶燕市は新潟県のほぼ中央部に位置する市で、2006年3月に西蒲原郡吉田町、分水町と合併して新しい燕市 が発足した。 ▶日本を代表する金属製洋食器の産地で、世界的なシェアを誇る工業都市(職人のまち)である一方、越後 平野の広大な田園風景が広がるのどかな穀倉地帯でもある。 。ま ▶面 積は110.94㎢、人口83,079人、世帯数27,937世帯、高齢化率26.4%である(平成24年10月1日現在) た、療育手帳所持者488人、精神障害者保健福祉手帳所持者303人である(平成24年4月1日現在) 。 ▶市内3つの社会福祉法人が地域包括支援センターを受託し、高齢福祉分野のサービスを展開している(社 協は虐待対応等で24時間体制をとることが難しいため、地域包括センターは受託せず) 。一方、障害福祉 分野は、日中活動の事業所はそこそこあるものの、入所系としては知的障害者の施設が1か所あるのみで 社会資源が乏しく、障害児については、新潟市、長岡市等の近隣大都市の事業所・機関を利用せざるを得 ない状況である。 2 センター設置のきっかけ・経緯、運営方針 ▶2006年の市町村合併に伴い、社協も法人合併することになった。あわせて、合併後の社協のあり方を検討 することになり、合併以前から個人の社会福祉士の活動として後見業務を行っていた社協職員が、社協組 織として権利擁護に取り組むべきではないかと提案を行った。その意見が取り上げられ、全社協から市町 村社協の法人後見の取り組みを後押しする冊子が出されていたこと等もあって、平成18年度に策定された 社協発展・強化計画に、成年後見制度等の活用について積極的に取り組むことが盛り込まれた。 ▶この計画に基づいて平成19年度にセンター設置に向けた準備委員会を立ち上げ、福祉・医療機関関係者、 法律関係者、行政職員等と一緒にセンター設置の具体的な内容について検討を行ったうえで、平成20年度 からセンターとしての活動を開始した。 ▶当初は、側面的にぱあとなあ新潟や司法書士、弁護士の第三者後見人につなぐ、申立て支援、そのための 啓発活動に注力し、法人後見まで実施するつもりはなかった(平成19年度に視察した三重県伊賀市社協の 進め方も参考にした)。ただ、センター設置に向けた検討と並行して、平成18年度から成年後見制度や日 常生活自立支援事業等の利用に係る相談対応や助言・情報提供、手続き支援及び個別支援会議等への参加、 関係機関(家庭裁判所等)への同行を行い、市民を対象とした講座等を進める中で、こうした相談助言、 啓発研修をきっかけに、実際申立てをしたい人の支援や受任後の手伝いも頼まれるようになってきた。 ▶その結果、関係機関から社協に後見を受けてもらえないかという要望が出たり、社協として日常生活自立 支援事業の利用者を後見につなぎたいが担い手が見つからないという課題に直面するようになり、社協も 後見の受け皿として受任後にも関わる体制を整えなければ、十分なセンター機能を果たすことが難しいと いう実感を持ったため、平成21年度に法人後見受任団体として家庭裁判所の名簿に登録し、法人後見の受 任を開始した。 ▶その意味では、センターを作ろうとしてスタートしたわけではなく、権利擁護支援を進め、取り組みを重 ねていく中で法人後見に行きついたという経過である。 ▶また、日常生活自立支援事業について、隣接の三条市が基幹的社協として、周辺の燕市を含む5市1町1 村のケースに1人の専門員で対応しており、即応性に欠ける実態があった。このため、日常生活自立支援 事業が利用できるまで待つよりは補助類型を活用して成年後見を進めたほうが総合的・主体的かつに迅速 に対応ができるという、地域の社会資源の状況もセンター設置の要因の一つとなった。 84 第5章 ヒアリング調査結果 3 社協におけるセンターの位置づけ ▶福祉・後見権利擁護センターは社協内で、総務、地域福祉、介護保険事業、障害者就労支援事業と並び、 課として独立した一部所となっている。 4 センターで実施している事業 ⑴ 法人後見 ▶平成23年度末時点で6件を受任し、うち4件は首長申立て案件である。 ▶1年に1~3件ペースで受任しており、首長申立て案件を受任するという方針があるわけではないが、 今は結果的に首長申立て案件が多くなっている。 ▶現在の受任案件の概要は以下のとおりである。 ①保佐、認知症高齢者、男性、親族申立て ②後見、認知症高齢者、女性、首長申立て ③後見、認知症高齢者、女性、首長申立て ④後見、知的障害者、男性、親族申立て ⑤後見、認知症高齢者、女性、首長申立て ⑥後見、認知症高齢者、男性、親族申立て ▶現時点では、死亡終了者の報酬しか受け取っていない。年度ごとに報酬申立てをしていかなければなら ないと考えており、申立ての準備を整えつつある。 ⑵ 制度の利用支援(相談・助言、手続きの支援等) ▶関係機関にはセンターの存在が徐々に浸透してきており、社協の総合相談窓口ではなく直接センターに 対する相談が増えている。最近では、地域包括支援センター等から後見の依頼だけではなく、個別ケー スの対応に関する相談、ケース会議への出席依頼も来るようになってきた。 ▶首長申立てについては、行政が書類を準備して候補者を依頼されるケースと、センター主導で申立て手 続きを進めるケースがある。日常生活自立支援事業から後見に移行する場合は、基幹的社協と連携しな がらセンターが主導で進める場合が多い。 ▶親族後見人について積極的に把握はしていないが、家裁への定期的な報告の際に書類の作成方法等につ いて相談が入ることがあるので、随時支援している。 ⑶ 啓発・研修 ▶市民を対象とした講座、家族会、民生委員、支援機関の定例会等における研修を実施している(平成23 年度は合計6回実施) 。 ▶こうした活動の中で、一般市民の中で市民後見人の担い手となりうる人を探したが、適性のある人を確 保するのは難しい印象である。今後、行政の市民後見人に対する方針を見極めたうえで、センターとし て市民後見人のバックアップ体制を整えるとともに、日常生活自立支援事業の生活支援員等の中から市 民後見人を育成する等のあり方を検討していきたい。 5 センター運営のバックアップ体制 ▶センター設置に向けた検討を行った準備委員会が、ほぼそのままスライドする形で運営委員会となった。 会議の構成メンバーは、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、福祉関係者、医療機関、基幹的社協(隣 接の三条市) 、県社協、市の高齢・障害部署の行政、県行政、市民であり、概ね年4回定期開催している。 ▶また、一部の委員による小委員会(受任検討委員会)を随時開催している。 ▶全国権利擁護支援ネットワークに加入し、同ネットワーク主催事業への参加・協力を通じて、他地域に相 第5章 ヒアリング調査結果 85 談できる仲間がいることはとても心強い。 6 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶センター立ち上げ時には、社協主導で社協単独事業として取り組みを始めた。 ▶ただ、センターの準備委員会、運営委員会に行政担当者を呼び、センターの活動実績について情報共有 することで、この活動が市民の利益に資することを実感してもらった結果、行政から委託費による財源 措置がなされることとなり、継続性と安定性が確保された。 ▶具体的には、初年度は50万円/年であったが、今年度は、社協の人件費補助のうち1人分をセンター運 営委託費に切り替え、680万円/年の財源が措置された(社協全体としての収入は前年度と比べ増減な し) 。 ▶行政は、市町村事務が色々降りてくる中で手いっぱいな状況で、社協がやってくれるならと任せてくれ ている。ただ、社協が主体的に動きすぎると、市が自ら主体的に動くべき業務という意識が薄れるおそ れがあり、留意が必要である。 ⑵ 社協の他部所 ▶日常生活自立支援事業の利用者が社協の各種サービスを利用している場合は、必要に応じて連携してい る。たとえば、社協が受託している障害相談支援事業所から、権利擁護が必要な人をつないでもらう等 の連携ができつつある。 ▶なお、社協内での利益相反については、日常生活自立支援事業を親子(高齢の母、障害のある息子)で 利用しており、母親に後見人が必要になったケースで、世帯状況に精通している社協を候補者として申 立てをするに当たり、ケアマネ・ヘルパー事業所を社協から別の事業所に変更したケースがある。また、 受任が見込まれる場合は、初めから社協以外のサービスを利用するように調整するケースもある。ただ し、社協のサービスがその人になじんでいて、その生活を維持するために必要なものであれば、必ずし も利益相反等になるわけではない。 ⑶ その他関係機関 ▶権利擁護に関わる専門職としては、昨年度2人の弁護士が市内で開業した。うち、一人は、県内の権利 擁護の先進地である佐渡市での勤務経験があり、権利擁護に対する理解は深く、色々な相談がしやすい。 ▶また、司法書士は、県の司法書士会の役員やリーガルサポート支部長を歴任した人が市内に後見に特化 した事務所を構えているため、ここに相談すれば、よほど仕事が立て込んでいたり遠隔地でない限り、 たいていの相談には応じてもらえるし、圏域の司法書士と連携できるネットワークができている。 ▶社協内に社会福祉士が複数おり、個人として後見活動をしている例もある(4人で5ケースを受任) 。 ただし、これはぱあとなあに所属しての職員個人の活動であり、社協とぱあとなあの組織的なつながり にはなっていない。 ▶専門職団体で受任調整する場はない。裁判所から職能団体に振られるのではなく、地域の中で受任調整 の仕組みがあれば裁判所も楽だが、結果的に個人・事業所間でかかわっている事例について連絡を取っ ている程度である。受任状況にゆとりがあるわけではないが、まだ相談には応じてもらえる状況である。 ▶関係機関が一同に会する場としては、運営委員会が有効に機能している。 ▶警察は当初から関係機関として連携していたわけではないが、被後見人等の生活を支援する中で相談し たり、お世話になったりしてやり取りが始まっている。具体的なケースを通じて、こうした制度につい て知ってもらうことは重要である。 ▶金融機関は、相互理解を進めるために立ち上げ当初から連携を模索しているところだが、具体的な形に 86 第5章 ヒアリング調査結果 は至っていない。いまだに金融機関によっては窓口で長時間待たされたり、支店によって対応が異なる といった実態がある。ただ、地元に根差した農協や信用組合は理解を示してくれるようになり、集金時 に本人の様子を知らせてくれたりするようになってきたので、最近はこうした金融機関に口座を移す対 応を取るケースもある。 ▶県内の市町村社協のなかで法人後見の実施やセンターの設置を進めるところがいくつか出てきており、 それぞれに考え方や取り組み方に違いや特色があって非常に刺激になっている。折に触れての情報交換 や、講師派遣で職員を呼び合うなどの交流もある。 ⑷ 県、県社協 ▶県社協は運営委員会のメンバーではあるが、立ち上げに当たってのバックアップや業務遂行上の具体的 な連携はほとんどない。 ▶最近になって、県社協として権利擁護の専門部所が設置され、有資格者の職員を配置して、全県対象の アンケート調査やバックアップの取り組みが始まってきたので、今後は必要に応じて連携を取りながら 進められることが望ましいと考えている。 ▶県行政については成年後見制度を扱う部署が定まっていない印象だが、障害福祉領域にあっては虐待対 応を含む権利擁護センター機能が設置されていることもあり、市町村行政と相まって、地域生活支援事 業の実施等、より積極的な権利擁護支援の取り組みを期待するところである。 7 センターの運営体制 ▶センターは社協本所の一室にある。なお、支所については、日常生活自立支援事業の中継、補完場所とし て活用している。 ▶職員は、常勤専従1人、パート専従2人体制であり、受任件数10数件程度まではこの体制で対応できると 見込んでいる。 ▶センター立ち上げ当初からかかわっている常勤専従職員は、個人でも後見受任経験があるので、業務の流 れを理解しているが、それ以外に配属された職員はOJTで育成する必要がある。 ▶できれば、福祉の資格を有した職員が配属され、社会福祉士会等の研修を受けて業務につけば即戦力にな りうるが、実際の人のやりくりの中ではなかなか難しい。 ▶可能な限り、県社協、社会福祉士会等の研修に参加させ、基礎的な知識を習得できるよう配慮している。 8 センターの運営財源 ▶平成24年度決算における収入は、法人後見報酬820千円、市町村単独委託金500千円であった。 ▶平成25年度予算における収入は、法人後見報酬1,000千円、市町村単独委託金6,800千円(人件費をセンタ ーに付け替え)を見込んでいる。 9 センターを社協が運営していることの意義 ▶民生委員から、独居高齢者宅に悪質商法業者が接近しているという情報が寄せられたことをきっかけに、 地域包括支援センター等と協働して業者の排除、見守り体制を構築した。関係機関職員がチームを形成し、 生活課題を抱える当事者にアプローチし、信頼関係を構築する中で公共料金・税金等の滞納を徐々に解消 することに寄与したケースがある。 ▶一般の社会福祉法人やNPO法人の事業と同じでは、社協が実施する意味がない。 「社協であるからこそ」 という点を追究していきたい。その意味では、法人後見の受け皿にとどまらず、地域福祉担当部所や相談 支援、居宅介護支援、またサービス提供部門等とも連携して、生活困窮者や障害者、高齢者の相談を受け 付けた中で権利擁護が必要な場面があれば関係機関のつながりを社協主導でつくっていく、社協の名前で 第5章 ヒアリング調査結果 87 仕掛けていくことが一つの道ではないか。 ▶ただし、利益相反という視点から見ると、権利擁護については、理事会共通の別法人で実施したほうがよ いかもしれないという考えもある。 10 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶施設入所で身上監護の一定部分を施設にお願いできるケースもあるが、在宅で生活する知的障害者で行動 障害のあるケースは、近隣等とのトラブルが起きる可能性もあり、一定の備えが必要と考えている。 ▶後見実務については、全国権利擁護支援ネットワークの保険に加入している。 ▶現在は、センター内の職員複数で出納チェックを行う体制を取っているが、今後、社協の総務課にもチェ ックしてもらい、法人内部のセンターと総務課で牽制できる体制強化を検討している。 11 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶平成26年度モデル事業に燕市が手を上げる予定であるが、相談窓口は当面、行政直営で、社協は障害者 就労支援等のノウハウを生かし、任意事業の一部を受託することになるのではないか。 ⑵ その他 ▶日々の業務に追われているが、今後は明確な後見支援計画を策定し、その人の将来展望をふまえた後見 活動を展開できるとよい。 ▶現在は財産保全に汲々としているが、本人の生活の質を高めるために、本人の意思をふまえて、いかに 有効に財産を使うかも今後の課題である。 ▶現時点では時期尚早であるが、将来的には権利擁護の活動にどう市民に参画してもらうかを構想する必 要がある。 社会福祉法人 燕市社会福祉協議会 福祉後見・権利擁護センター運営規程 (趣旨) 第1条 この規程は、社会福祉法人燕市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )が実施する福祉後見・ 権利擁護センター(以下「センター」という。 )に関し、必要な事項を定めるものとする。 (目的) 第2条 センターは高齢者や障がい者等の意思能力や生活状況に応じ、成年後見制度や日常生活自立支援 事業等を活用して、高齢者や障がい者等の権利擁護支援の推進を図ることにより、地域福祉の推進に寄 与することを目的とする。 (センターの名称及び場所) 第3条 センターの名称及び場所は次のとおりとする。 ⑴ 名称 「燕市社会福祉協議会福祉後見・権利擁護センター」 ⑵ 場所 新潟県燕市大曲4336番地 社会福祉法人燕市社会福祉協議会事務局内 (開設日及び開設時間) 第4条 センターの開設日及び開設時間は、次のとおりとする。 88 第5章 ヒアリング調査結果 ⑴ 開 設 日 月曜日から金曜日。ただし、国民の祝日及び12月29日から翌年の1月3日までを除く。 ⑵ 開設時間 午前8時30分から午後5時15分まで (事業) 第5条 センターは本規程第2条の目的を達成するため、次の各号に掲げる事業を行う。 ⑴ 成年後見制度や日常生活自立支援事業等の利用に関する相談、助言、情報提供及び手続き支援 ⑵ 成年後見制度等の普及、啓発 ⑶ 地域における権利擁護支援ネットワークの構築 ⑷ 法人後見人等の受任 ⑸ その他センターの運営に関し必要な事業 (対象者) 第6条 前条の事業の対象者は燕市内に住所を有する高齢者及び障がい者等であって、成年後見制度や日 常生活自立支援事業等の利用を必要とする者、及びその関係者とする。 (運営委員会) 第7条 センターが行う事業の適正な運営を確保するため、本会部会及び委員会設置規程に基づき「福祉 後見・権利擁護センター運営委員会」 (以下「運営委員会」という。 )を本会に設置する。 2 本会はセンターが行う事業の実施にあたって、運営委員会の意見を聞くことができる。また、事業の 運用について、運営委員会の評価、助言を受ける。 (秘密の保持) 第8条 センター事業の実施に携わる職員及び運営委員会の委員は、事業を行うにあたって知り得た個人 情報を正当な理由なく他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。 2 事案の検討、制度の啓発及び教育等の目的で情報を使用する場合は、本会が定める個人情報保護規程 に鑑み、個人のプライバシーの保護に十分配慮しなければならない。 (委任) 第9条 本規程に定めるもののほか、センターの運営に関して必要な事項は、会長が別に定める。 附 則 この規程は、平成22年4月1日から施行する。 社会福祉法人 燕市社会福祉協議会 福祉後見・権利擁護センター法人後見事業実施要綱 (目的) 第1条 この要綱は、社会福祉法人燕市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )が実施する福祉後見・ 権利擁護センターにおける法人後見事業(以下「本事業」という。 )に関し、必要な事項を定めること を目的とする。 (事業の趣旨) 第2条 本事業は、判断能力が不十分な認知症高齢者、知的障害者及び精神障害者など、意思決定が困難 な人の判断能力を補うため、本会が成年後見人、保佐人若しくは補助人となることにより、本人の権利 第5章 ヒアリング調査結果 89 擁護を図ることを目的とする。 (対象者の要件) 第3条 本事業の対象者は、燕市内に在住し、他に適切な法定後見人を得られない者でなければならない。 (成年後見人等の選任、又は候補者となることの承諾) 第4条 本会は、次の各号に掲げる状況が生じたとき、本会を成年後見人、保佐人又は補助人とする法人 後見を受任すること、又は候補者となることができるものとする。 ⑴ 家庭裁判所から法定後見の受任の依頼があったとき。 ⑵ 関係者及び関係機関等から後見等候補者の依頼があったとき。 2 本会は法定後見受任の適否を決定するときは、本会が設置する福祉後見・権利擁護センター運営委員 会(以下「運営委員会」という。)に諮問することができるものとする。 (従事職員の配置) 第5条 本会は、後見業務について一定の知識又は経験を有する職員の中から、本事業に従事する職員を 配置する。 (財産目録の調製等) 第6条 本会は、法定後見人に就任したときは、すみやかに財産調査を実施して財産目録を調製するとと もに、財産管理計画及び身上監護計画を策定する。 (後見業務) 第7条 本会は、本事業に係る後見業務として、補助及び保佐にあっては家庭裁判所の審判により付与さ れる同意権及び代理権に係る事務を、後見にあっては本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必 要と認められる事務を適正に行う。 2 本会は、業務の実施にあたって、運営委員会の意見を聞くことができる。 (財産の保管・管理) 第8条 被後見人等の財産の保管は、本会が契約する金融機関の貸金庫において行う。ただし、日常的に 使用する財産については本会に備える耐火金庫において保管できることとする。 (財産管理の考慮事項) 第9条 本会は、被後見人等の財産を管理するにあたっては、専ら被後見人等の利益のみを考慮してその 内容を決定するものとし、当該被後見人等の親族の同意を求めないものとする。ただし、意見を聞くこ とを妨げない。 (定期訪問) 第10条 本会は、後見業務を行うため、原則として月1回、被後見人等の居所を訪問し、被後見人等の安 否の確認を行うとともに、心身の状態及び生活の状況の把握に努める。 (費用) 第11条 本会が、後見業務を行うために被後見人等の財産から支出する費用には、次に掲げる費用を含む ものとする。 ⑴ 後見業務のための、本会職員の移動に係る交通費(本会の事業所から被後見人等の居所までの移動 を除く。 ) ⑵ 後見業務のうち税金の申告、不動産の登記、訴訟の遂行その他の専門的な事項を処理するために行 う事業者等への委託に係る費用 (台帳の整備) 第12条 本会は、後見業務の処理の状況を記録するため、被後見人等について個人毎に台帳を整備しなけ ればならない。 90 第5章 ヒアリング調査結果 (類型の移行の申立) 第13条 本会は、被後見人等について、意思能力の程度に変化があったと認める場合において必要あると きは、当該被後見人等が成年被後見人である場合にあっては補助開始又は保佐開始の審判を、被保佐人 である場合にあっては後見開始又は補助開始の審判を、被補助人である場合にあっては後見開始又は保 佐開始の審判を、それぞれ家庭裁判所に申立てるものとする。 (事業の評価・助言) 第14条 本事業の運用については、運営委員会の評価、助言を受ける。 (秘密の保持) 第15条 本事業の実施に携わる職員及び運営委員会の委員は、本事業を行うに当たって知り得た個人情報 を正当な理由なく他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。 2 啓発、教育等の目的で情報を使用する場合は、個人のプライバシーの保護に十分配慮しなければなら ない。 (報告及び報酬付与の審判の申立て) 第16条 本会は、本事業に係る後見業務の内容について、原則として1年毎に家庭裁判所に書面をもって 報告するとともに、被後見人等の収入及び財産の状況に応じて、報酬付与の審判を申立てるものとする。 (辞任) 第17条 本会は、被後見人等が遠隔地に転出し、又はその他の特別な事情により後見業務を継続して行う ことが困難になったときは、家庭裁判所に法定後見人の辞任を申し出るものとする。この場合において、 当該被後見人等について必要があると認めるときは、当該被後見人等の住所を管轄する家庭裁判所に法 定後見人の選任を申立てるものとする。 (委任) 第18条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は会長が別に定める。 附 則 この要綱は、平成22年4月1日から施行する。 第5章 ヒアリング調査結果 91 Ⅲ 上伊那成年後見センター (長野県伊那市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶伊那圏域の8市町村(2市3町3村)をセンターの活動エリアとしている。圏域人口は合計186,000人で、 減少傾向にある。市町村別人口は伊那市が最大で70,000人、最小の村は5,000人程度である。委託を受けて いる。 ▶伊那市の高齢化率は28.3%である。圏域内では、信州大学が立地する南箕輪村が伊那市のベッドダウンで もあり、県下で高齢化率が最も低いが、他市町村においては、伊那市よりも高齢化率が高い市町村が多く、 大きな課題になっている。 ▶圏域の面積は非常に広く、山間部がほとんどで、市の中心部から市の端まで車で1時間程度かかる。 ▶社会資源については、特に障害者のサービスが不足している。小規模市町村ほど資源の不足が顕著である。 ▶5、6年前までは司法の専門職が少なかったが、近年、弁護士の開業が続き増加してきた。また、司法書 士も増えており、行政書士会も成年後見に取り組むようになってきている。 2 センター設置のきっかけ、経緯 ▶伊那市社協が運営する総合相談窓口「ふれあい相談センター」が、リーガルサポートながの伊那支部に委 託して、月1回の頻度で「高齢者・障害者の財産管理についての相談」を実施していた。 ▶この相談会の終了後に、3か月に1回の頻度で権利擁護相談定例会を開催し、リーガルサポート、行政書 士会、社会福祉士会、社協等で事例検討や情報交換を行い、司法と福祉の連携を進めていた。その後、定 例会のメンバーは、地域包括支援センター、圏域障害者総合支援センター、弁護士会に拡大している。 ▶平成18年度後半に、南箕輪村社協の日常生活自立支援事業の専門員から、事業の延長として法人後見の受 け皿を用意する必要があるという声が上った。圏域では伊那市と駒ケ根市が基幹型社協、南箕輪村が準基 幹として活動しており、専門職による後見人の不足、報酬が出ないケース、一人では対応しきれない精神 障害者ケースへの対応等に苦慮していたので、課題意識を共有できた圏域内の社協担当者が集まって、成 年後見制度、特に法人後見に関しての検討会議を開催するようになった。ここでは、法人後見検討会議を 10回開催するとともに、市民、職員向けセミナーを2回開催し(参加者合計250人) 、先進地として品川区 の視察等を行った。 ▶平成21年度に、上伊那ブロック社協事務局長・地域福祉担当者会議が開催され、県社協からの打診を受け て、成年後見相談支援体制構築モデル事業(成年後見制度促進事業)を受け入れることになった。 ▶モデル事業では、社協職員と司法書士が一緒に、各市町村から出されたケースに対して成年後見等相談、 アドバイザーの派遣を行い、相談件数は159件に上ったが、実際に成年後見制度の利用に至ったケースは なかった。この時点では、各市町村の窓口にいる職員が「成年後見」について十分理解できておらず、首 長申立て等の実績もなかったので、どのようなケースを出せばよいか分からなかった点が大きな課題であ った。 ▶同時に、上伊那圏域成年後見相談支援体制構築検討会議を6回開催し、多治見市東濃成年後見センターへ の先進地視察、上伊那広域連合福祉町村会でのモデル事業に係る説明等を実施した。検討会議の構成メン バーは、全市町村の行政担当者8人、市町村社協4人、弁護士1人、司法書士1人、行政書士1人、社会 福祉士1人、医療機関1人、圏域障害者総合支援センター1人、当事者団体1人である。 ▶平成21年度のモデル事業の検討結果を受けて、平成22年度に上伊那8市町村の福祉担当課長9人を中心に 上伊那圏域成年後見検討会を立ち上げ、伊那市社協が事務局となった。 ▶検討会議では、センター設置の必要性を行政が具体的にイメージし、財政担当部署と折衝できるよう、高 92 第5章 ヒアリング調査結果 齢化の状況や成年後見の利用対象者見込数をデータで示した(何らかの後見が必要と思われる対象人数は 総人口の1%と見積もり、認知症高齢者や療育・精神の手帳所持者で後見が必要な人を市町村に照会した 上で、県内の成年後見のうち第三者後見が32%という実績をかけ合わせて人数を試算。あわせて、近い将 来成年後見が必要になる人を抽出するために日常生活自立支援事業者の全数調査を実施。今後2〜3年の うちに18~78人のニーズがあると見込んだ) 。 ▶また、センターの運営形態別に、利益相反に配慮した一般社団法人・NPO法人等の独立組織型、社協の 正規職員2人型、社協の正規職員1人型、社協の嘱託職員1人型の複数パターンの運営費試算をして、行 政が検討しやすいよう配慮した。 ▶この会議での検討の結果、圏域の中心で会議の事務局も務めていた伊那市社会福祉協議会に委託し、平成 23年度から8市町村で協定書によるセンター共同設置を行うことが決まった。 3 センターの運営方針 ▶各市町村の住民、施設、専門職等からの一次相談窓口は各市町村におき、センターは二次的な相談窓口と して成年後見を実施することを中心に専門相談を実施している。また、センターで法人後見を行うことを 前提としているため、センター名称にも「支援」という単語は入れていない。 4 社協におけるセンターの位置づけ ▶伊那市社協の総務課内に設置している。 ▶伊那市社協では介護保険事業等の収益事業も行っており、被後見人がサービス利用者の場合、利益相反の 可能性が考えられるため、担当課を分けて利益相反に配慮している。 5 センターで実施している事業 ⑴ 広報・啓発 ▶一次相談窓口としての市町村窓口の担当者の後見ニーズへの感度が最も重要であるため、市町村職員に 成年後見制度の理解を広めることに注力している。 ▶具体的には、平成24年度に各市町村に出向き、行政の高齢、障害、税務、市民課の窓口担当者、保健師 に対する職員研修キャラバンを実施した。ここでは、成年後見ニーズがあるか、判断能力があるか判断 しづらいケースは、まずは二次相談窓口であるセンターに相談してほしいとPRし、その市町村で困っ ている実際のケースについて、ケース検討を行った。 ▶お互いに顔の見える地域で、小規模な市町村内で虐待対応を単独で行うのが難しい場合に、センターが 第三者の専門職の立場から側面支援することきわめて有効であり、このキャラバン後、虐待ケースを中 心にさまざまな多くの相談が持ち込まれるようになってきた。 ▶このほか、市民のニーズに触れる人への普及啓発として、ケアマネ、障害福祉サービス事業所等向けの 研修会を開催している。 ▶年1回は、住民、民生委員向けのセミナーを開催している。 ▶パンフレット、チラシを作成して、市町村や社協の窓口で配布したり、ケーブルテレビ番組で寸劇をし たりしている。 ⑵ 成年後見・権利擁護に関する二次的な相談窓口としての専門相談 ▶圏域内に駒ケ根市西駒郷があり、地域移行の取り組みが進んでいるため、障害者からの相談が多い(平 成23、24年度の相談実績:認知症高齢者682件、知的障害者174件、精神障害者220件) 。日常生活自立支 援事業についても障害者の利用が多い。 第5章 ヒアリング調査結果 93 ⑶ 成年後見申立ての支援 ▶首長申立てについてノウハウがない市町村を支援するが、実際の書類作成等は市町村行政が実施する。 ▶また、親族後見の申立てについても助言は行うが、手続きの代行はしない。司法書士等が業として行っ ている事務について社協が無料で実施するのは望ましくないと考えたためである。 ⑷ 法人後見 ▶身寄りのない人等、適切な後見人がいない場合に法人後見業務を行う。 ▶要綱上、法人後見を受任する際に財産の多寡は問わない。 ▶平成26年1月現在の法人後見受任件数は後見23件、保佐2件で、半数は虐待対応を含んでいる。知的障 害者が5人、精神障害者が6人、残りが認知症高齢者である。日常生活自立支援事業からの移行ケース は5件である。 ▶施設入所者と在宅生活者の比率は3:1で、在宅のほうが業務量が多い。 ▶受任の際に、センターは24時間対応はできないため、土日・夜間に被後見人が死亡した等の場合は市町 村が緊急連絡を受けること等を丁寧に説明し、行政責任で実施する事業であることをつねに発信してい る。また、家族に対しても、受任の際に手紙を出してセンターの業務と限界を説明し、緊急時の対応等 についてはあらかじめ依頼している。 ⑸ 市民後見人の養成 ▶平成26年度から取り組む方向で、予算を確保している。 ▶ただ、小規模市町村では近隣の人に後見人になってもらうことや、ボランティアで後見人活動をするこ とはなじみにくいので、社協職員として雇用し活動してもらうことを想定している。 ▶公募形式で募集し、養成講座を終えた人の中から適性のありそうな人に声をかけることを想定している。 活動拠点が同じ日常生活自立支援事業の生活支援員と一緒に動くことも視野に入れている。 6 センター運営のバックアップ体制 ▶センター運営委員会:センターの事業を監督し、クレームを審議する会議で、8市町村の課長で構成され ており、年3回程度開催している。 ▶法人後見受任審査会:法人後見の希望者について、センターでの契約が適切かどうか審議する会議で、2 か月に1回開催している。弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士の団体が参加し、適切な受け手が見 つからない場合に社協が受任する。審査会まで上がってくるケースは社協が受ける場合が多いが、報酬が 少なくても経験を積むために受任したいというケースや、土地建物取引があるので司法専門職にというケ ースもある。いずれかの専門職団体に委ねる場合、個人の選定は団体に任せている。 ▶従来からの定例会等を通じて専門職団体とのネットワークができており、書類の確認等、気軽に相談でき る体制がある。 7 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶一次相談窓口として日常的に連携している。 ⑵ 社協の他部所 ▶地域福祉課の日常生活自立支援事業担当係も同じ場所で執務しているため、ケースが持ち込まれたらど ちらが担当すべきか協議して振り分けている。成年後見センターのセンター長が日常生活自立支援事業 担当係の係長を兼務しており、連携はスムーズである。 94 第5章 ヒアリング調査結果 ▶センター職員は後見制度へ移行する見込みのある日常生活自立支援事業の利用者への対応も福祉活動専 門員として兼務で行っているため、利用者への支援もやりやすい。 ⑶ その他関係機関 ▶センターができてから、金融機関からの相談が増えてきた(銀行から「何度も通帳を作り直すおじいさ んが来ているので心配」という相談が持ち込まれ、対応する等) 。法人後見対応マニュアル等を作成し てくれた銀行もあるが、金融機関によってばらつきが多い。 ▶警察とは、権利侵害のケースで連携したり、物盗られ妄想のある認知症高齢者が繰り返し相談に出向く ことに対応してもらう等の連携をしている。 ⑷ 県、県社協 ▶長野県は、この3年で各圏域にセンターが立ち上がったので、お互いに情報交換をしながら一緒に進ん でいる。県社協主催で圏域担当者の連絡会議が開催されており、センター未設置圏域(10圏域中4圏 域)の担当者も、この場でセンター開設に向けた動機づけができている。 ▶県社協は運営要綱の比較表や家庭裁判所のデータ等の情報面のサポートを行っている。また、現在はセ ンター立ち上げについて財政支援がある(上伊那成年後見センターの設立年度はなし) 。 8 センターの運営体制 ▶伊那市社会福祉協議会にセンターを設置し、1か所で圏域全体をカバーしている。将来的には市町村単位 にブランチを出す構想もあるが、現在、センターは二次相談窓口であり、一次相談窓口は各市町村の行政 や地域包括支援センターと位置付けられており、アウトリーチが必要なケース等は一次相談窓口で受け付 けた上でセンターに持ち込まれるので、1か所でも大きな問題にはなっていない(ただし、二次相談窓口 として訪問が必要な場合は、センターから各市町村に出向くこともある) 。 ▶職員は、要綱上、社会福祉士を配置すると明記し、専門職を確保できる体制を取っている。 ▶現在、所長1人、業務担当2人の3人体制で、いずれも社会福祉士であり、2人は精神保健福祉士資格も 有している。 ▶予算上は2人分の人件費が配分されており、3人とも兼務体制である。 ▶職員の資質向上のために、ぱあとなあ、社会福祉士会の研修に参加している。 ▶社協内で異動はあるが、内部に社会福祉士は多数いるので、業務の質の維持について大きな課題にはなら ないと思われる。日常生活自立支援事業の担当者が異動すると、それまでの業務経験に+αの活動ができ るので、良い効果が出ている。 9 センターの運営財源 ▶センターの運営費は年間1,000万円程度で、行政からの補助事業ではなく、委託事業として位置付けてい る。委託であることによって、本来市町村が実施する業務であるという意識付けがしやすく、行政が対応 しきれない専門的な支援を強みとしてアピールしやすい。市町村の按分割合は、圏域の広域連合で行って いる各種事業の割合を踏襲したので大きな問題にはならなかった(平均割16%、人口割84%) 。センター 運営3年間の実績を踏まえて、利用割の要否について検討する予定である。 ▶法人後見報酬が予想より伸びており(平成24年度は72万円) 、今後パートの後見支援員を雇用できる規模 になればよいと考えている。 10 センターを社協が運営していることの意義 ▶地方では、成年後見を担うNPO法人やボランティア団体はなく、社協しかない地域も多い。専門職を擁 第5章 ヒアリング調査結果 95 する社会福祉法人としての強みを生かしてセンター事業に取り組むべきである。 ▶虐待や権利侵害案件は、小規模市町村で顔の見える地域では対応しづらく、第三者だからこそ冷静な判断 ができるケースがある。小規模市町村では、広域対応、複数市町村の共同設置が望ましい。 ▶行政や施設がやむを得ず通帳を管理しており、身元引受人が勝手に預金を下ろしてしまうようなケースで、 センターの法人後見が入ることで財産保全ができるようになった。また、遺産手続きができず無一文とな り措置入院していた精神障害者が、保健師と一緒に関わることで遺産相続し、暮らしを立て直したケース もある。 11 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶金銭出し入れ時のチェックは、担当者、係長、事務局長の三重体制としている。 ▶妄想のある被後見人については、複数職員で対応し、誰か一人が妄想の標的にならないよう配慮している。 ▶担当者の独りよがりの支援にならないよう、後見プランを作成し、この人にはどのような方向で支援して いくのがよいか、確認しながら進めている(年1回見直し) 。複数体制で対応する際に、対応方針がぶれ ないように、主担当者が不在でも円滑に対応できるようになっている。後見プランの内容はケアマネや支 援事業者にも伝え、個別の事業者の支援計画と連動させている。 12 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶来年度モデル事業を受けたいと考えているが、エリア等の詳細は未定である。 ▶長野県下でも生活福祉資金の貸付率が人口割で1位であり、製造業を中心とする土地柄もあって、生活 保護に至らない中間層が多いため、生活支援は極めて重要である。 ⑵ その他 ▶来年度は、全社協方針を受けて組織を改編し、地域福祉係の中にボランティア・地域福祉チーム、権利 擁護・生活支援チームの2チームを置く予定である。個別支援に特化し、個別支援事例を通じて地域づ くりを行うサイクルを作りたい。 ▶センターの活動を通じて、虐待対応における市町村の対応の限界を感じている。将来的には虐待対応に も第三者の立場で対応できる権利擁護センターに発展させていきたい。成年後見が必要な人はどのよう な人か、成年後見は権利擁護の手段の一つであるということをより強く意識して活動していきたい。 ▶今後は、触法者への支援も大きな課題になると考えている。 ▶長野県内はこの3年でセンターが立ち上がってきたため、県内では先進地の情報を入手しにくい。全国 レベルの権利擁護に関する情報発信に期待したい。 ▶市民後見人のルールやあり方に関する冊子作成や後見に関する保険の充実等も全国レベルで対応しても らいたい。 96 第5章 ヒアリング調査結果 上伊那成年後見センター設置要綱 (設置) 第1条 伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村及び宮田村(以下「関係市町 村」という。 )は、上伊那成年後見センター(以下「センター」という。 )を設置する。 (目的) 第2条 センターは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等の人権を尊重し、一人ひとりがその人ら しく地域で安心して生活できるよう、関係機関との連携及び協働により、成年後見制度等の普及及び相 談、後見人等の受任その他各種の権利擁護のための事業を行うことを目的とする。 (事業内容) 第3条 センターは、前条の目的を達成するために次に掲げる事業を行う。 ⑴ 成年後見制度、権利擁護等の研修及び啓発 ア 行政及び福祉関係者への成年後見制度等の研修 イ 住民に対して、成年後見制度等の周知及びPR並びにシンポジウム開催等の啓発 ⑵ 成年後見・権利擁護相談(関係市町村、市町村社会福祉協議会、地域包括支援センター、障害者総 合支援センター等からの相談対応) ⑶ 成年後見申立ての支援 ア 関係市町村長が行う成年後見申立ての支援 イ 本人又は親族が行う成年後見申立ての支援 ⑷ 専門職の第三者後見人の紹介、斡旋 ⑸ 関係市町村から依頼のあった案件に係る法人後見の受任 ⑹ 親族後見人等に対する後見監督の受任 ⑺ 親族後見人への支援 ア 後見業務の相談及び助言 イ 後見業務の研修 ⑻ 権利擁護に係る調査及び研究 ⑼ 市民後見人の育成 ⑽ その他運営委員会で必要と認めた事業 (事業所の位置) 第4条 センターの事務所は、長野県伊那市山寺298番地1に置く。 2 利用者の利便性を図るため、センターに支所を置くことができる。 (利用者) 第5条 センターの利用者は、関係市町村の住民とする。ただし、関係市町村の住民であった者で、措置 等により地域外に入院入所したものは、可能な限り事業の対象とする。 (職員) 第6条 センターに次の職員を置く。 ⑴ 所長 ⑵ 業務担当 ⑶ その他センター業務遂行に当たって必要とされる職員 第5章 ヒアリング調査結果 97 (開設日及び開設時間) 第7条 センターの開設日及び開設時間は、次の各号に定めるところによる。 ⑴ 開 設 日 月 曜日から金曜日とする。ただし、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号) に規定する休日及び12月29日から翌年1月3日までを除く。 ⑵ 開設時間 午前8時30分から午後5時15分までとする。 (経費の負担) 第8条 センターの経費は、後見報酬、市町村委託料・負担金その他の収入を充てる。 2 市町村委託料・負担金は、平均割、人口割及び利用割とし、その額は、別に定める。 (運営委員会) 第9条 第3条各号に掲げる事業の適正な運営及び苦情の解決のため、センターに運営委員会を置く。 2 委員会の任務は、次のとおりとする。 ⑴ 第3条各号に掲げる事業の運営方針の検討に関する事項 ⑵ 援助困難ケースの処遇に関する事項 ⑶ 事業に関する苦情解決に関する事項 ⑷ 設置要綱等の変更に関する事項 ⑸ その他センター運営に関する必要な事項 3 運営委員会の委員は、次に掲げる者とする。 ⑴ 関係市町村担当課長 ⑵ センター運営団体の担当責任者 ⑶ 運営委員長が必要と認める者 4 委員の任期は、1年とし、再任を妨げない。 5 運営委員会に委員長及び副委員長を置き、委員が互選する。 (法人後見受任審査会) 第10条 センターが行う法人後見業務について、その受任が適切であるかの審議を行うため、法人後見受 任審査会を置く。法人後見受任審査会の委員は、運営委員会が必要と認める者を任命する。 (補則) 第11条 この要綱に定めるもののほか必要な事項は、運営委員会が別に定める。 附 則 この要綱は、平成23年4月1日から施行する。 この要綱は、平成24年12月1日から施行する。 この要綱は、平成25年11月1日から施行する。 98 第5章 ヒアリング調査結果 社会福祉法人 伊那市社会福祉協議会 上伊那成年後見センター運営要綱 (目的) 第1条 この要綱は、社会福祉法人伊那市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )が、上伊那成年後見 センター設置要綱(以下「要綱」という。 )に基づき設置する上伊那成年後見センター(以下「センタ ー」という。 )を運営するため必要な事項を定めるものとする。 (相談・申立て支援対象団体) 第2条 要綱第3条⑵及び⑶の対象団体は、次のとおりとする。 ⑴ 市町村 ⑵ 市町村社会福祉協議会 ⑶ 地域包括支援センター ⑷ 障害者総合支援センター ⑸ その他権利擁護等に関する相談機関 (相談・申立ての支援事業) 第3条 本会は、前条における対象団体からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の必要な支援 を行うものとして、次に掲げる業務を行う。 ⑴ 市町村長による成年後見申立てに関する支援業務 ⑵ 本人又は親族が行う成年後見申立てに関する支援業務 ⑶ 職能団体との連携 ⑷ 市町村に出向いての出張相談 ⑸ その他、社協会長が必要と認めた業務 (利用料金) 第4条 前条に定める業務にかかる利用料金は、無料とする。 (後見人等受任対象者) 第5条 本会が後見人等を受任する対象者は、親族等他に適切な後見人等がいない者とする。 (後見人候補者受任の決定) 第6条 本会が後見人等候補者を受任する場合には、センター法人後見受任審査会の審議を経て、会長が 決定する。 (後見人等選任の承諾) 第7条 本会は、所管する家庭裁判所から第5条に規定する対象者の後見人等として選任された場合は、 特段の事情がない限りこれを承諾するものとする。 (後見人等の業務) 第8条 本会が後見人等を受任したときは、補助及び保佐にあっては、家庭裁判所の審判により付与され た同意権及び代理権の業務を行い、後見にあっては、被後見人の福祉サービスの利用契約、財産管理、 その他本人支援に必要と認めた業務を行うものとする。 2 会長は、センターに配属された職員を後見人等の業務の履行補助者として、その任務にあたらせる。 3 被後見人等に対し毎月定期的な訪問を行い、心身や生活状況等を把握するものとする。 4 被後見人等の金銭及び預金通帳等は、センターの耐火金庫及び本会が契約する金融機関の貸し金庫に おいて保管するものとする。 第5章 ヒアリング調査結果 99 5 被後見人等の台帳を整備し業務を記録するものとする。 6 必要に応じて家庭裁判所、関係行政機関等と連携して業務を行うものとする。 (報酬付与の審判申し立て) 第9条 後見人等業務の報酬は、後見人等を受任した時から1年ごとに、所轄の家庭裁判所に報酬付与の 審判を申し立てるものとする。 (被後見人等の費用負担) 第10条 本会が第8条に規定する業務を行う際にかかる交通費(センター職員の被後見人等の居所までの 交通費は除く。 ) 、不動産の売買、訴訟、その他専門的な事項を処理する際に必要な事業者への委託費等、 後見報酬の対象外の費用については、被後見人等の負担とする。 (死後の事務) 第11条 被後見人等の埋葬又は火葬の実施及び相続人の存在が明らかにならない場合の扱いは、関係行政 機関と協議を行うこととする。 (守秘義務) 第12条 後見人等業務の実施に際して知り得た個人情報については、被後見人等の支援に必要がある場合 を除いては、他に漏らしてはならない。 (補則) 第13条 この要綱に定めるもののほか必要な事項は、社協会長が別に定める。 附 則 この要綱は、平成23年4月1日から施行する。 この要綱は、平成24年12月1日から施行する。 100 第5章 ヒアリング調査結果 Ⅳ 静岡市地域福祉権利擁護センター (静岡県静岡市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶静岡市の総人口は709,147人で、3つの行政区に分かれており、葵区254,143人、駿河区212,799人、清水区 242,205人である(平成26年1月1日推計人口) 。 ▶静岡市社会福祉協議会は3行政区それぞれに事業実施の拠点としての推進センターを設置している。地域 福祉権利擁護センターは市社協の本部機能がある静岡市中央福祉センターに設置されている(静岡市中央 福祉センターは市社協が指定管理として受託している会館。各種福祉団体事務局等が入居) 。 ▶高齢化率は26.5%である(平成26年1月1日) 。 ▶静岡市は、静岡県中部地方駿河湾の西側に位置する。JR静岡駅を中心とした地域では商業を、清水港を 中心とした地域では貿易港として工業都市を形成している。また、山間地域ではお茶の生産が盛んであり、 駿河湾沿いに続く海岸線(国道150号線)はイチゴ狩りで有名である。 ▶平成15年4月1日に旧静岡市と旧清水市が合併し、 「静岡市」が誕生し、平成17年4月1日には全国で14 番目の政令指定都市に移行した。また平成18年3月31日に庵原郡蒲原町を、平成20年11月1日に庵原郡由 比町を、それぞれ清水区に編入合併した。 ( 静岡市の福祉行政の現状) ▶静岡市には地域包括支援センターが24圏域23か所設置されており、高齢者相談窓口となっている。高齢者 の虐待対応に関しては各行政区福祉事務所の高齢介護課が対応している。 ▶障害者施策に関しては、障害者福祉課が中心となって行っている。障害者の虐待対応は障害者福祉課、精 神保健福祉課と各区の生活支援課、さらに11か所の委託相談支援事業所等で実施している。 ( 社会資源の状況) ▶介護保険制度が導入される前は、高齢者の総合相談センターを基幹的在宅介護支援センターとして市が設 置しており、その下に7か所の保健センターを保健福祉センターとして設置して、保健師を高齢者の総合 相談の担当として置き、さらにその下の中学校区に1か所在宅介護支援センターを設置していた。相談体 制が確立していたことから、介護保険制度が開始され、高齢者の相談窓口として地域包括支援センターが 設置された後も、高齢者に関する相談受付、地域ニーズの把握、社会資源へのコーディネートは比較的円 滑に進められている。 ▶障害者については、権利擁護ニーズは極めて高いものの、全国的な状況と同様に社会資源全般について基 盤整備の途上である。また、全国的に触法ケースの相談が増えている中、静岡県においては地域生活定着 支援センターが他市に指定されているため、地域生活定着支援センターを経由せず刑務所内で相談支援を 行っている社会福祉士や弁護士経由で直接相談が持ち込まれることもある。今後もこのようなケースがさ らに増加することが見込まれる。 2 センター設置のきっかけ・経緯、センターの運営方針 ▶日常生活自立支援事業発足後、静岡市社協は実施主体である県社協の基幹的社協として事業を実施してき たが、平成17年に静岡市が政令指定都市になったことに伴い、独自の予算要求ができるようになり、財源 確保につながった。同時に本事業の利用者数が大幅に増加したことで、人員体制を強化する必要に迫られ た。 ▶それまでは、地域福祉部門の担当係として事業実施にあたっていたが、運営体制の強化と成年後見制度の 第5章 ヒアリング調査結果 101 今後を見据える中で地域福祉権利擁護センターを立ち上げた。職員の人材育成と組織の運営機能の強化の ために、他業務との兼任ではない、本事業専任職員をセンターに配置した。 ▶センターの立ち上げについては、行政職員とともに先駆的に取り組んでいる他市社協を視察する等、行政 とのパートナーシップが大きく関与している。 ▶当初は、日常生活自立支援事業を実施しながら、若手の人材育成に注力し、平成21年度から法人後見事業 にも取り組むようになった。 3 社協におけるセンターの位置づけ ▶3区の推進センターが法人格を有していないこともあり、日常生活自立支援事業は本部にて直営方式によ り運営している。そのため、権利擁護センターは本部1か所のみで市内全域をカバーしており、区単位の 拠点はない。 4 センターで実施している事業 ⑴ 日常生活自立支援事業 ▶平成26年1月時点で累計922件、うち現在実働は515件である。1か月あたり新規ケースが10件程度、解 約(解約理由としては死亡の他、成年後見制度への移行等があげられる)が5件程度と、全体としての 件数は伸びているが、解約ケースも増加傾向にある。 ▶人口10万人あたり本事業の契約者数が政令指定都市社協の中で大阪市に次いで2番目に多い。 ▶実利用者のうち、50%以上が生活保護受給者、70%以上が何らかの権利侵害(経済・身体的虐待、消費 者被害、ネグレクト等)を受けていることが判明している。 ▶利用者は認知症高齢者、知的障害者、精神障害者、その他に区分しており、認知症高齢者が実利用者の 約半数を占めている。また、知的・精神障害者の割合が増えてきている。 ▶制度の周知を図るため、年3回の権利擁護センターニュースの発行、制度説明のためのパンフレットの 作成をしたり、市役所職員や地域住民など様々な関係機関の会議・研修の場で事業周知を実施している。 ⑵ 法人後見 ▶平成21年10月から法人後見事業を実施しており、平成26年1月時点で総受任件数は17件、現在の受任件 数は12件である。 ▶センターでは、申立て支援は現在実施していないが、法人後見を受任する中で職員の実務能力も向上し たことで、実施に関しては今後の検討課題となっている。 ▶法人後見の受任要件として、日常生活自立支援事業利用者であること、首長申立てであること、著しい 権利侵害にあっており、保護の必要性・緊急性が高いこと、他に適切な後見人が得られなかったこと等 をあげているが、現在受任しているケースは日常生活自立支援事業から移行するものが多い。社協で定 めた要件は柔軟に解釈できる余地があるので、今後は受任要件の拡大も視野に入れている。 ▶利益相反が問題になるようなケースはない。 ▶首長申立てケースがこの数年増えている(平成24年度で25件の実績) 。 ▶報酬に関しては、年に一度報酬付与の申立てを行っている。静岡市としては自主事業であることから報 酬が予算(運営費)となっている。 ▶市内においてはリーガルサポートが法人後見実施機関として活動している。さらに県内他市町社協でも 法人後見事業の実施に向けた動きが見られ、平成25年度に2社協が受任実績を有している。 102 第5章 ヒアリング調査結果 ⑶ 市民後見人の育成・活動支援 ▶市民後見人の養成事業開始に向けて、内部で検討を始めている。センターでは平成25年8月から9月に かけ政令指定都市社協に対してアンケート調査を実施し、回答の分析結果を市に提言し、現在はその回 答待ちである。 ▶市民後見人の養成事業開始に向けて整理すべき課題として、以下のような点があがっている。 ・財源の確保 ・バックアップ体制の仕組みづくり ・センターが後見監督を受ける体制の整備 ・報酬の取り扱いについて(市民後見人の雇用体系も含む) ・日常生活自立支援事業の生活支援員と市民後見人の活用方法 ▶後見活動においては、専門家(弁護士・司法書士等)による財産管理に関連した法律行為が重要視され る傾向にある。しかし、センター職員は日常生活自立支援事業の利用者、法人後見事業の被後見人等に 対して支援活動を行う中で、日常的金銭管理や日々の見守り等の地道な身上監護の活動が、本人らしい 生活の援助・自立支援にどれだけ寄与しているかを日々の業務で実感している。市民後見人については、 この身上監護を主な業務とした活動の展開が期待される。 5 センター運営のバックアップ体制 ▶契約締結審査会に日常生活自立支援事業の全ケースを提出している。契約締結審査会は、弁護士、医師、 専門職等6人で構成されており、必要に応じて、会議以外でも相談できる関係にある。 ▶市民後見人養成事業を実施するにあたり、体制強化のために運営委員会の設置を検討している(委員会の 構成メンバーとして、弁護士、司法書士、医師、社会福祉士等を検討) 。 ▶センター発足当初、社協の現顧問弁護士が権利擁護センターの所長でもあったため、日々の業務の困りご とも相談できる体制が整備されている。 6 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶権利擁護の予算確保・施策立案は静岡市の福祉総務課が所管である。高齢者・障害者の個別ケースの対 応については対象別の課が所管している。 ▶日常生活自立支援事業の調査時に生活支援課ケースワーカーをはじめ、ケースと関わりのある行政職員 に同席を依頼する。行政と協議した上で、保護台帳の開示請求の書式や住民票等交付請求用の委任状等 のツールを作成することで、様々な手続が迅速に行えるようになった。 ▶行政主体の虐待防止ネットワーク委員会や障害者の連絡調整会議、保健福祉審議会等に積極的に参加し て意見を出し、行政とのパートナーシップの強化を図っている。 ▶権利擁護事業については、市民後見人の育成まで含めて市の地域福祉計画(計画期間:平成22年度~平 成26年度)に盛り込まれており、市と事業のあり方について協議しやすい環境が作られているため、今 後とも行政との関係強化を図っていく。 ⑵ その他関係機関 ▶静岡県社協が実施主体となって、年1回全県の金融機関と連絡会議を実施している。金融機関において も事業周知が進んできており、書式の簡素化・事務の効率化を検討してくれる金融機関も出てきており、 円滑な事業実施が可能となってきている。 ▶家庭裁判所はセンターと隣接した位置にあるため、裁判所の後見係と後見事務等について相談をしやす い。なお、センター主催の関係機関連絡会議において、金融機関・家庭裁判所の方から出席してもらっ 第5章 ヒアリング調査結果 103 ており、事業の動向についての情報共有や事例検討会を行っている。 ▶都道府県社協には運営適正化委員会(運営監視合議体)が設置されており、年4回の委員会への事業報 告が義務付けられているとともに、年1回の訪問調査により適正な事業実施が図られているかのチェッ クを受けている。 7 センターの運営体制 ▶センターは、中央福祉センター(社協)の一角にある。 ▶センターは直営方式で運営し、職員体制は所長が1名、専門員(常勤・専従)が12名、事務職員が5名で ある。本センターの特徴として生活支援員の雇用体制を二層として、常駐常勤の生活支援員4名と登録 (非常勤)の生活支援員30名という体制で運営している。 ▶本事業の職務上、厳格な倫理性と高い専門性が要求されるため、社会福祉士や精神保健福祉士等の有資格 者であることを採用条件としている。 ▶センターではチーム運営方式を採用しており、調査時には担当がいるものの、契約後は担当を固定せずに 全専門員でケース対応をしている。この運営方式においても、有資格者の専門性が発揮されている。 ▶職員の資質向上のために、以下のような研修を実施または参加している。 ・センター独自の現任研修(年2回) :月1回のセンター運営会議で研修ニーズを出しあい、職員持ち回 りで企画運営を行う。直近では、生活保護制度についての座学、日々の業務での困りごとを共有するグ ループワークを実施した。 ・センター主催の関係機関連絡会議での事例検討(年2回) ・センター主催の権利擁護に関するセミナーの企画運営(2年に1回程度) ・市の生活保護ケースワーカー、地域包括支援センター職員に対する勉強会の開催 ・全社協、県社協の研修への参加 ・リーガルサポート、ぱあとなあの研修への参加 ・その他、市社協としての組織研修(権利擁護に限定しない経理、接遇等)への参加 ▶日常的にチームで業務を進めているため、相互に能力を高めあう効果が出ているが、スーパーバイザーの 確保は課題である。 8 センターの運営財源 ▶平成24年度の収入は、日常生活自立支援事業受託金87,116千円、法人後見報酬3,117千円、日常生活自立支 援事業利用料5,614千円である。 9 センターを社協が運営していることの意義 ▶公益性・中立性のある団体である社協は、判断能力の有無、身寄りや財産の有無に関わらず、どんな人で もサポートすることができる。 ▶新たな社会資源を創出し、また、人や組織を様々な社会資源へとつなげる役割を持つ社協は、これまでに 形成してきたネットワークを活かし、支援を必要とする方に対して積極的な権利擁護が担える唯一の団体 である。 ▶判断能力の有無にかかわらず、だれもが安心・安全に人生を全うすることができる地域づくりを推進する 団体として、社協が判断能力が不十分な方々の支援をしていくことは役割の一つであると考えられる。そ こにセンターを運営している意義がある。 ▶権利擁護事業は社協活動の根幹を成すものであり、こうした地域における個別支援の展開により今日の社 協組織が形作られてきたという経緯もある。社協がセンターを運営し、権利擁護を積極的に推進していく ことは、社協活動の原点に立ち返ることにもつながる。 104 第5章 ヒアリング調査結果 ▶今後、センターとしては本人らしい生活とその変化を支える積極的な権利擁護機能を果たしていきたい。 10 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶職員の業務負荷軽減、リスク軽減のため、チーム運営方式(調査担当は専任だが、契約後のケース対応は どの職員でも可能)を取っている。 ▶チーム運営方式で円滑に業務を進めるため、業務管理ソフトを導入し、ケース記録はすべて電子データで 確認できるようにしている。リスク管理のため、電話一本であっても確実に記録を残すようにしている。 ▶業務管理ソフトの導入は、大量の個人情報の取り扱いにおけるリスクマネジメント及び事務の簡素化・効 率化に有効である。 ▶個別ケースの対応について全職員の情報共有の場として、毎朝朝礼を行っている。 ▶書類等のチェック、通帳の持ち出し記録の管理、通帳現物と通帳管理簿の突き合せ等については、事務職 員を5人配置し、専門員・支援員とは別の目で毎日チェックを行うことにより遺漏がないように対応して いる。 ▶「金銭管理なら日常生活自立支援事業」という単純な認識で、過度な業務を振られないように関係機関 (行政、地域包括支援センター、障害福祉サービス事業所等)に働きかけている。具体的には、社会福祉 法の3つの基本理念(個人の尊厳の保持、自立支援、個人が選択していく福祉)を具現化していく事業で あるため、事業の趣旨・内容について周知を図っている。たとえば、生活保護ケースでは、調査(3回実 施が基本)のうち最低1回はケースワーカーに同席してもらい、生活指導はケースワーカーが実施するこ とを確認するとともに、センターからケースワーカーの学習会に出向き、この点を繰り返し伝えている。 現在、生活支援課と契約終了時の対応についての協議書の作成を検討中である。 11 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶生活困窮者自立支援制度の施行を見据え、現在総合相談センターの設置について地域福祉部門において プロジェクトチームを立ち上げ、検討している段階である。平成26年度はモデル実施する予定である。 ▶総合相談の窓口が設置された場合は、権利擁護センターと新しい総合相談センターとの社協内での内部 連携について更なる強化が必要になる。 ⑵ その他 ▶日常生活自立支援事業は利用者に寄り添った生活支援や見守りの役割の機能を有しているため、住民に 一番身近な各区単位で事業展開したい。このため、3年前から、各区で中心となりうる生活支援員を二 層の雇用(常勤と非常勤)にして、常勤の生活支援員をリーダーとして育成中である。今後は専門員と 生活支援員の役割分担の仕組みづくりを一層強化していく。 ▶平成の合併後、市域が広がったため、移動に多くの時間がとられることになったことが課題である。移 動手段の検討が必要とされる。 (一番遠いところでは片道1時間ほど) ▶法人後見事業担当職員がいるものの、日常生活自立支援事業の専門員と兼務しているのが現状である。 職員を法人後見事業に専任できるよう、法人後見事業の財源確保が課題である。 第5章 ヒアリング調査結果 105 社会福祉法人静岡市社会福祉協議会 地域福祉権利擁護センター 設置運営規程 平成17年3月24日 制 定 平成21年3月25日 全文改正 平成23年4月1日 一部改正 (設置) 第1条 社会福祉法人静岡市社会福祉協議会は、権利擁護事業(日常生活自立支援事業を含む。以下「事 業」という。 )を実施することにより、高齢者や障害者の権利を擁護し、福祉サービス利用者の利益を 保護するとともに、福祉サービスの向上を図る事を目的として、地域福祉権利擁護センター(以下「セ ンター」という。 )を設置する。 (名称及び位置) 第2条 センターの名称及び位置は次のとおりとする。 名 称 位 置 地域福祉権利擁護センター 静岡市葵区城内町1番1号 (事業) 第3条 センターは、次の事業を行うものとする。 ⑴ 日常生活自立支援事業に関すること ⑵ 法人後見事業に関すること ⑶ 事業の広報・啓発、研修および調査研究に関すること ⑷ その他、目的達成に必要な事業に関すること 2 事業の運営に関し必要な事項は、会長が別に定める。 (職員) 第4条 センターに所長及び他の職員を置く。 (その他) 第5条 この規程に定めるもののほか、必要な事項は会長が別に定める。 附 則 この規程は、平成17年4月1日から施行する。 附 則 この規程は、平成21年4月1日から施行する。 附 則 この規程は、平成23年4月1日から施行する。 106 第5章 ヒアリング調査結果 静岡市社会福祉協議会 「地域福祉権利擁護センター」事業実施要綱 平成17年4月1日 制 定 平成23年3月15日 全文改正 平成25年4月1日 一部改正 第1章 総 則 (趣旨) 第1条 この要綱は、社会福祉法人静岡市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )地域福祉権利擁護セ ンター(以下「センター」という。 )が実施する日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業) 及び法人後見事業等について必要な事項を定めるものとする。 第2章 日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業) 第2条 日常生活自立支援事業(福祉サービス利用支援事業) (以下「本事業」という。 )は次のとおりと する。 ⑴ 福祉サービス利用援助サービス ⑵ 日常的金銭管理サービス ⑶ 書類等預かりサービス ⑷ 広報・啓発・研修事業 ⑸ その他調査研究事業 2 前項の第1号から第3号に掲げるサービスの内容は、別表1のとおりとする。 (対象者) 第3条 本事業の利用対象者は、静岡市在住で、次のいずれの要件にも該当する者とする。 ⑴ 判断能力が不十分な者で、福祉サービスの利用や利用料の支払い等、本人が日常生活を営む上で必 要であることについて、自己の判断で適切に行うことが困難と認められる者 ⑵ 本事業の契約内容及び支援計画の内容について、認識し得る能力を有していると認められる者、ま たは、当該能力が不十分であっても、成年後見人、保佐人、補助人(以下「後見人等」という。 )と の間で本人に対する援助の開始に必要な契約を締結することができる者 ⑶ センターが特に必要であると認めた者 (利用の申込) 第4条 本事業のサービス利用申込は、別紙様式による申請書によりセンターに対して行うものとする。 (判断能力の評価判定等) 第5条 センターは前条の申込があったときは、速やかに必要な調査を行い、本事業の実施にあたり契約 締結能力の評価判定に疑義のある場合は、センターに設置される契約締結審査会に諮るものとし、その 意見を踏まえて対応するものとする。 2 センターは、前項の決定結果を申込者に通知するものとする。 (支援計画の策定) 第6条 センターは、申込者が本事業の対象者の要件に該当すると判断した場合には、本人の意向を十分 に確認し、援助等の具体的内容や実施頻度等を記入した支援計画を策定するものとする。 第5章 ヒアリング調査結果 107 2 支援計画の策定にあたっては、必要により関係機関の連携協力を得るものとする。 (契約の締結等) 第7条 センターは、策定した支援計画を本人に説明し、これらの内容等について理解を得た上で契約を 締結するものとする。 2 契約は、本人とセンターとの間で締結するものとする。 3 センターは、契約締結後、定期的に対象者の状況を確認し、支援計画の再評価を行うものとする。 (契約の終了) 第8条 センターは、本人が次の各号に該当したときは、サービスを終了するものとする。 ⑴ 本人から契約解除の申し出があったとき ⑵ 本人が死亡したとき ⑶ 本事業についての代理権を有する後見人等が選任されたとき ⑷ センターが契約の終了を適当と認めたとき 2 センターがサービスを終了する場合には、成年後見制度その他、本人の生活にふさわしい援助が利用 できるように努めなければならない。 (預かり物の返還) 第9条 書類等を預かる場合は、あらかじめ同意を得た保管物引受人を指定するものとする。 2 契約を終了した場合は、前項によって預かった書類等を本人に返還するものとする。 3 本人が判断能力喪失の場合は後見人等、ただし、後見人等が選任されていない場合は、あらかじめ指 定した者に返還するものとする。 4 本人が死亡した場合は遺言執行者または相続人に返還するものとする。 5 契約終了後、預かり物を返還するまでの間に要した金融機関の貸金庫の利用料や相続人調査等に要し た経費が生じたときは、預かり物の返還を受ける者は、これを負担しなければならない。 (運営の監視、苦情の処理) 第10条 本事業の適正な運営のための運営監視及び本事業に対する苦情の対応は、静岡県福祉サービス運 営適正化委員会及びセンターの苦情受付担当者が行うものとする。 (事業の連携及び推進) 第11条 センターは、本事業の実施にあたっては、全社協、都道府県社協、他市区町村社協、行政機関、 民生委員児童委員等各種関係機関と連携を密にし、事業の推進に努めるものとする。 2 センターは、本事業の円滑な運営を図るため、関係機関連絡会議を定期的に開催するものとする。 (利用料) 第12条 利用者は、別表2に定める料金を負担するものとする。 第3章 法人後見事業 (目的) 第13条 法人後見事業は、判断能力が不十分なために意思決定が困難な人の判断能力を補うため、本会が 成年後見人、保佐人、補助人(以下「後見人等」という。)になることにより、本人の権利擁護を図る ことを目的とする。 (事業の対象者の要件) 第14条 法人後見事業の対象者は、静岡市在住者で、次の各号のいずれかの要件を満たす者とする。 ⑴ 日常生活自立支援事業の利用者 ⑵ 市長申し立てであること 108 第5章 ヒアリング調査結果 ⑶ 著しい権利侵害を受けており、保護の必要性、緊急性が高い者 ⑷ 他に適切な法定後見人等を得られない者 2 前項に規定する者のほか、センターが特に必要と認めた者 (後見業務) 第15条 本会は、法人後見事業にかかわる業務として、補助及び保佐にあっては、家庭裁判所の審判によ り付与された同意権及び代理権にかかわる事務を、後見にあっては、被後見人の心身の状態及び生活の 状況に応じて必要と認めるものを行う。 (財産目録の作成等) 第16条 本会は後見人等に就任したときは、すみやかに財産調査を行い、財産目録を作成するとともに、 財産管理計画及び身上監護計画を策定する。 (財産の保管) 第17条 本会が後見人等を受任した場合、被後見人等の財産のうち、次に掲げるものは本会が契約する金 融機関の貸金庫に保管する。 ⑴ 預貯金通帳(日常的に使用する預貯金通帳を除く。 ) ⑵ 定期預金証書 ⑶ 保険証書 ⑷ 登記済権利証 ⑸ 実印 ⑹ 印鑑登録証 ⑺ その他、前各号に準ずると本会が認めるもの 2 被後見人等の財産のうち、次の各号に掲げるものは本会に備える耐火性金庫に保管する。 ⑴ 現金 ⑵ 預貯金通帳(日常的に使用する預貯金通帳に限る。 ) ⑶ 印鑑(実印を除く。 ) ⑷ その他、前各号に準ずると本会が認めるもの (定期訪問) 第18条 本会は、後見業務を行うため、定期的に被後見人等の居所を訪問し、その安否の確認を行うとと もに、心身の状態及び生活状況の把握に努めなければならない。 (財産管理の考慮事項) 第19条 本会は、被後見人等の財産を管理するにあたっては、専ら被後見人の利益を考慮してその内容を 決定しなければならない。 (報酬付与の審判の申立て) 第20条 本会は、法人後見事業にかかわる後見事務の報酬について、家庭裁判所に報酬付与の審判を申立 てるものとする。 2 被後見人等の収入の状況に応じて、成年後見利用支援事業の申請を市に対して行うものとする。 (身上配慮義務) 第21条 後見事業を行うにあたっては、被後見人等の意思を尊重し、心身の状態及び生活の状況に配慮す るものとする。 (辞任) 第22条 本会は、被後見人等が、市外に転出したとき、又はその他の特別な事情により後見事業を継続し て行うことが困難になったときは、家庭裁判所に後見人等の辞任及び新たな後見人等の選任を申し出る 第5章 ヒアリング調査結果 109 ものとする。 第4章 雑 則 (情報の保護) 第23条 本会は、利用者に関する個人情報を適正に管理しなければならない。 2 職員は、利用者のプライバシーの保護に十分に配慮し、業務を行うにあたって知り得た個人情報を漏 らしてはならない。また、その職を退いた後も同様とする。 (その他) 第24条 本会は、事業を行うために必要な帳簿を整備するものとする。 2 この要綱に定める事項のほか、事業実施に関する重要事項は会長が別に定めるものとする。 附 則 この要綱は、平成17年4月1日から施行する。 附 則 この要綱は、平成23年4月1日から施行する。 附 則 この要綱は、平成25年4月1日から施行する。 110 第5章 ヒアリング調査結果 Ⅴ かさおか権利擁護センター (岡山県笠岡市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶笠岡市は人口53,000人、高齢化率31.8%である(平成25年10月1日現在) 。高齢者のいる世帯が全世帯の半 数を超えており、そのうち半数は高齢者夫婦世帯、高齢者単身世帯である。また、島嶼部(7島)は高齢 化率が50%以上となっている。こうした状況で、日常生活自立支援事業では対応できないケースが増加し たり、核家族化が進行し、近くに家族や親類等がいない要援護者が増加してきている。 ▶一方、知的障害者や精神障害者の親亡き後の支援体制が不十分であり、精神科病院の地域移行と退院後の 支援体制の構築も課題となっている。 ▶高齢者の社会資源は民間ベースで整備が進んでおり、社協は島嶼部のみ介護保険サービスを提供している。 ▶知的障害者の社会資源は、市内の大規模な社会福祉法人が入所施設、日中活動、在宅支援(グループホー ム等)まで幅広いサービスを提供している。また、精神障害については、精神科病院やNPO法人の活動 がある。 ▶市内の専門職は、弁護士事務所1か所(2010年4月に開設) 、司法書士事務所10か所(うちリーガルサポ ート登録は5人) 、社会福祉士事務所0か所であり、人数が不足している。 ▶平成24年度に、弁護士、行政書士、介護支援専門員等が集まって、井笠圏域(笠岡市を含む3市2町)で 法人後見を受任するNPO法人を立ち上げている。 2 センター設置のきっかけ・経緯、運営方針 ▶岡山家庭裁判所は親族よりも第三者による後見人を選任する傾向が強いが、専門職は不足している。 ▶市内で後見人を引き受けてくれる専門職を確保するのが難しいため、遠方の専門職に依頼せざるを得ず、 頻繁に本人に会うことが難しかったり、緊急時の迅速性に欠けるといった課題があった。 ▶後見が必要な人の中には、生活保護受給者等の低所得者もいるが、市の「成年後見制度利用支援事業」は、 対象者が「市長申立て」をした者に限定されており活動に見合った報酬を支払えない場合もある。報酬を 十分支払えない人の場合、専門職に受任依頼しにくい面もあった。 ▶平 成21年8月、市が設置している高齢者虐待防止支援チームにおいて、弁護士(岡山市で開業)から、 「虐待防止の観点からも後見制度は重要である。専門職が少ない地域なので、高額な財産がなく身上監護 が中心のケースは市民後見人が対応できないか」という提案があった。 ▶そこで、笠岡市、笠岡市社協、その他関係者が集まり、3か月に1回の頻度で「笠岡市市民後見準備懇談 会」を開催し、市民後見人の養成・活動支援のあり方の検討を始めた。 ▶その結果、市内には成年後見制度を専門的に取り扱っている機関がなく、市民後見人が実際に受任した後、 活動中に遭遇する様々な問題について適切にアドバイス等することができないという課題が明らかになっ た。 ▶市民後見人の養成・活動支援は、本来市が行うべき事業であるが、市には専門職がいないため、住民の生 活をトータルにサポートできる社協が、平成23年4月にセンターを立ち上げ、まずは成年後見を受けて実 務を理解し、市民後見人のサポート人材を養成することと、市民後見人の養成を同時並行で進めることと なった。 ▶今後の成年後見ニーズの伸びをふまえ、社協のいずれかの部所の一事業としてではなく、センターとして 組織的にも明確に位置づけることとした。 ▶社協としても権利擁護体制の構築の重要性は従来から感じていたが、財源、人材の制約から具体化してい なかったところ、弁護士からの要望があったことでセンター立ち上げに向けた流れを作ることができた。 第5章 ヒアリング調査結果 111 ▶市社協は地域包括支援センター(市内で1か所のみ)を受託しており、市と密接に連携できていたこと、 当時は井笠圏域で法人後見を行うNPO法人(先述)の立ち上げ前であり、市内でセンターを受けられる 法人は社協以外にはない状況であった。 ▶最初は、笠岡市単独でセンターを運営することを前提にしていたが、財政負担が過大となるため、隣町の 里庄町(人口1.1千人)に声をかけた。笠岡市と里庄町は、圏域内で特に関係が強かったわけではないが、 町長がセンターの必要性を感じつつも単独での設置は難しいと考えていたので、笠岡市社協から里庄町社 協に協議を申し入れた。里庄町では、町長と社協の会長が同一であり、役場の中に社協がある等、町と町 社協は一体的に動いているので、町社協に申し入れると町行政とも円滑に協議ができた。 ▶その結果、人口割(笠岡市83%、里庄町17%)で財源確保することとなり、笠岡市からは成年後見市長申 立事務委託料、里庄町からは里庄町社会協議会を経由した負担金を出してもらうこととなった。 ▶センターは、笠岡市社協と里庄町社協が共同で独自設置し、笠岡市から運営費は受け取っていない形であ るので、広域共同設置について、特に支障はなかった。 3 社協におけるセンターの位置づけ ▶社協のいずれかの部所の一事業ではなく、センターとして独立した部所を設けている。 ▶社協では、地域包括支援センター、島嶼部の介護保険事業を実施しているが、障害福祉サービスは実施し ていない。 ▶高齢者虐待は地域包括支援センターで対応しているが、障害者虐待防止センターは市に窓口があり、必要 に応じて、センターに相談がある。 4 センターで実施している事業 ⑴ 成年後見制度に関する相談の受付と親族申立ての支援 ▶社協内に総合相談窓口がある。そこで受け付けた相談や地域包括への相談のうち権利擁護に関するもの がセンターにリファーされることが多い。センター独自でニーズの掘り起し、アウトリーチは実施して いないが、センター職員が地域包括職員を兼務しているため、連携上大きな支障はない。 ▶相談は、年間100件程度で、ケアマネをはじめとした関係機関からの相談が多い。また、最近は、銀行 で預金を引き出せなくなり、銀行から制度利用の案内を受けてきたという親族からの相談が増えている。 障害者からの相談も増加傾向にある。 ▶相談100件のうち、受任に至らないものを見極めるのは、親族から相談があった場合である。制度の紹 介はするが親族申立てできる人は限られるので、親族が申立しないと言えば、それ以上介入できずスト ップしているケースもある。 ⑵ 首長申立ての調整・事務 ▶首長申立ての事務はすべてセンターで実施している。 ▶首長申立て支援をすることとそのケースの法人後見を受任することは別建てで考えており、必ずしも社 協が受任するとは限らない。 ▶センター開設前の首長申立て件数は1、2件/年であったが、平成23年度7件、 24年度3件、 25年度(1 月末現在)7件と、センター開設以降件数が伸びており、ニーズの掘り起こしが進んでいることがうか がえる。 ⑶ 法人後見 ▶平成26年1月末現在の法人後見の受任ケースは以下のとおりで、合計8件である。 ①認知症高齢者、後見類型:2件 112 第5章 ヒアリング調査結果 ②認知症高齢者、保佐類型:1件 ③知的障害者、後見類型:2件 ④精神障害者、後見類型:1件 ⑤精神障害者、保佐類型:1件 ⑥その他、後見類型:1件 ▶現在はすべて笠岡市のケースだが、現在里庄町の最初のケースを受任の方向で調整を始めている。 ▶在宅ケースは1件だが、24時間365日の対応が求められるので負担が大きい。センターだけで地域での 生活を支えるのは難しいため、地域住民や民生委員、福祉委員に見守り等の依頼をしている。これは社 協としての地域づくりの視点からではなく、後見人であれば社協でなくても対応すべき業務と認識して いる。 ▶現在特に受任件数の限度は設定していない。施設入所ケースであれば、身上監護の業務負担が小さいの で職員1人あたり20ケース程度担当できるのではないか。 ▶低所得者でも後見制度を利用できるようにという運営方針は持っているが、財産のある人でも適切な後 見人がおらず、財産管理とともに身上監護の支援が必要な場合はセンターで受任する。 ▶また、後見報酬がもらえるケースは、必ず申立てを行っている。 ▶センターとしての受任要件は以下のとおりである。 ・首長申立てのケース ・日常生活自立支援事業から成年後見制度へ移行するケース ・生活保護受給者及びそれに準ずる低所得者のケース ・他に適切な後見人等が得られないもので社協会長が特に認めたケース ⑷ 成年後見制度の普及・啓発 ▶平成24年度は、出前講座2件、講演依頼2件、シンポジウム、セミナーの開催2件の実績がある。 ▶出前講座は、センター開設当初は、民生委員や社協支部からの依頼に対応していたが、最近では、老人 クラブから直接センターに申し込みもあった。地域の高齢者の中で老後の備え、終活への関心が高まっ ており、今後は地域福祉の部所からも紹介があるかもしれない。 ⑸ 市民後見人養成及び活動支援 ▶市民後見人は2年コースで養成している。 【基礎課程(養成1年目) 】 ①市民後見人養成課程説明会 ・成年後見制度の基本的な理解(講義) 、養成課程の概要、募集要項の説明を行う。 ②受講申し込み ・受講希望申込書、エントリーシート(履歴書) 、レポートを提出する。 ③書類審査、面接審査 ④岡山県社協主催の「市民後見人養成研修/地域福祉・権利擁護セミナー」 (30時間)を笠岡市推薦と して受講 ・県社協主催のため、一般にも受講者募集があり、市民が参加することは妨げないが、市民後見人と して活動してもらうのは笠岡市推薦枠での受講者のみである。 ⑤自治体開催「福祉研修会」 (6時間)の受講 ・笠岡市、里庄町の福祉制度、サービスについて学習する。 第5章 ヒアリング調査結果 113 【応用課程(養成2年目) 】 ①センター開催「応用研修会」 (14時間)の受講 ・主に初動事務、後見人として受任した直後に行う事務に関連した研修を行う。 ②「福祉施設等実践研修」の実施 ・成年後見制度の対象となりうる認知症高齢者、知的障害者、精神障害者と実際にふれあい、現場の 中でコミュニケーション技法等を学習する(3施設で半日ずつ) 。 ③市民後見人バンク登録時面接 ・基礎課程、応用課程の研修を修了した者に対して面接を実施し、市民後見人として適切に活動でき るかどうかの判断を行う。 ④市民後見人養成課程修了証の交付 ・修了者に対して、笠岡市長及び里庄町長名で修了証を交付する。 ▶市民後見人の養成も笠岡市、里庄町の広域で実施しているが、予算等の関係上、現時点では、笠岡市民 は笠岡市のケース、里庄町民は里庄町のケースを担当することを想定している。ただし、将来的には、 笠岡市民、里庄町民が相互に受任しあえる環境を整えたいと考えている。 ▶市民後見人は、受任1年目はセンターと複数後見を行い、主に身上監護を中心とした活動を行う。また、 受任2年目以降は、原則としてセンターは後見人を辞任し、市民後見人が単独で財産管理、身上監護を 行っていく。なお、センターは2年目以降は後見人を辞任し、新たに後見監督人に就任し、引き続き市 民後見人の活動支援を行っていく。初年度から後見監督人としてかかわる方法もあるが、初年度を複数 後見の形式とすることで、市民後見人の不安や精神的負担を軽減することができる。 ▶市民後見人は社会貢献型のボランティア要素が強い側面があるが、後見活動そのものの責任が非常に重 いことから、家裁に対する報酬付与の申立てについてセンターは妨げないものとしており、市民後見人 自身に報酬付与の申立てを行うかどうかを決めてもらう。ただし、あくまでも市民後見人は社会貢献型 活動と位置付けているため、報酬額が多額にならない事案(高額な財産がない事案)を受任してもらう よう受任調整している。なお、岡山家裁所管内では、市民後見人の報酬額について明確な基準はないが、 月額1~2万円程度の審判が出る場合が多い。 ▶これまでの市民後見人の養成状況は以下のとおりで、地域のニーズに応えられる一定人数が確保できた ので、来年度は養成講座を休み、今後は2年に1回ペースで開講する予定である。 養成課程修了者 バンク登録者 第1期生 (23年度~受講) 第2期生 (24年度~受講) 第3期生 (25年度~受講) 笠岡市 7 8 5 里庄町 − 2 2 笠岡市 4 − − 里庄町 − − − ▶今年度から2人の市民後見人(民生委員、社会福祉施設長OB)が後見類型の施設入所者の後見活動を 開始しており、来年度にはセンターは後見監督人に移行する予定である。 ▶修了者で受任ケースがない人も出てくると思うが、そこへのフォローは、修了者への研修、年7回、交 流会の開催等をしている。 ⑹ その他 ▶日常生活自立支援事業については、センターの業務と位置付けていない。センター立ち上げ時に日常生 114 第5章 ヒアリング調査結果 活自立支援事業もセンター業務とすることを検討したが、後見業務は初めての業務であるため、これが 軌道に乗った段階で統合するか否かを検討することとしている。 ▶日常生活自立支援事業は、以前は笠岡市社協が基幹的社協として井笠圏域を所管していたが、現在は岡 山県下のすべての市町村社協が対応する形になっている。 ▶現在、笠岡市での日常生活自立支援事業の契約件数は25件であり、専門員は1人である。 5 センター運営のバックアップ体制 ▶法人後見業務検討会を3か月に1回定例で開催している。 ▶会議の委員構成は、弁護士2人、行政書士1人、行政関係者である。 ▶全てのケースを検討会で検討するわけではないが、法的課題の大きいケースについて法律関係者のNPO 法人(井笠いきいきネット)に受任を依頼したい等の調整もこの場で行っている。 6 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶福祉事務所から紹介されるケースについては、必要に応じて担当ケースワーカーと相談しながら対応で きており、特に丸投げをされるようなことはない。地域包括支援センターを受託していることで、市と 社協の個別ケースにおける連携体制が構築済みであることが、センター運営にも好影響を与えている。 ▶現在の地域福祉計画策定時にはセンター構想はなかったので、計画には権利擁護については盛り込まれ ていない。 ▶岡山県は全国的に見て首長申立ての多い県だが、市町村によって温度差がある。 ▶最近は、県内市町村から「センターを立ち上げたいが、社協が受けてくれない」という相談が入ること があり、行政側の意識は少しずつ変わってきているかもしれない。 ▶なお、笠岡市のセンター設置については、行政から積極的な働きかけがあったわけではない。 ⑵ 社協の他部所 ▶地域包括支援センターと権利擁護センターは職員が兼務で、同じ事務所なので、日常的に連携できてい る。 ▶地域包括支援センターはもともと行政直営だったが、地域ケア会議や関係機関の調整があるので、社協 が受託することとなった。 ▶社協は地域福祉推進組織として、地域の見守り体制構築、支援が必要になった場合のサービス調整、権 利擁護の一連の流れに、各部署が連携して円滑に対応できている。 ▶同一法人内なので、個別ケースの情報共有について、個人情報保護の観点から支障が生じることはない。 ⑶ その他関係機関 ▶センターは、里庄町社協と共同設置の形態をとっているが、里庄町は地域包括支援センターが町直営の ため、主として町の地域包括支援センターと連携することが多い。障害者についても、町の健康福祉課 で一元的に対応しているため、円滑に連携できている。センター運営にあたって、社協間の連絡会議等 は開催しておらず、日常的にケースをもとに連携できている。 ▶権利擁護センター職員は、地域包括支援センターを兼務しており、従来から介護保険事業所や病院等と 連携していたので、もともとのネットワークを活かして連携できている。 ▶金融機関については、センターから積極的な働きかけはしていないものの、ケースを紹介してくれる関 係になっている。 第5章 ヒアリング調査結果 115 ⑷ 県社協 ▶県社協のバックアップとしては、市民後見人養成研修の開催がある。 7 センターの運営体制 ▶センターの場所は笠岡市保健福祉センター内で、同じ事務所に市社協が受託している地域包括支援センタ ーがある。社協本体は、隣接の老人福祉センターにある。 ▶職員体制は、センター長(社協事務局次長、地域包括支援センター所長兼務)と、相談支援員として社会 福祉士3人である(いずれも地域包括支援センターとの兼務となっているが、主担当はほぼセンター専従 の勤務実態である) 。 ▶職員の資質向上のための取り組みとして、外部のNPO法人の研修に参加している。 ▶一つは、NPO法人岡山高齢者・障害者支援ネットワーク(岡山市で後見制度ができた当初から活動して いる、弁護士、税理士、司法書士等の団体)が開催する毎月第1土曜日の勉強会である。 ▶もう一つは、NPO法人井笠いきいきネット(井笠圏域で法人後見を受任している専門職団体)が笠岡市 で毎月1回開催する勉強会である。 8 センターの運営財源 ▶立ち上げ初年度の平成23年度の運営財源は、合計7,094千円である。その内訳は、法人後見事業(笠岡市 委託料:市長申立事務委託業務、里庄町社協負担金、後見報酬)1,908千円、権利擁護センター事業(笠 岡市委託料:緊急雇用事業)2,934千円、市民後見推進事業(笠岡市委託料:国のモデル事業)1,952千円、 先駆的福祉助成事業(岡山県共同募金会)300千円である。 ▶24年度の運営財源は、5,078千円である。その内訳は、法人後見事業(笠岡市委託料:市長申立事務委託 業務、里庄町社協負担金、後見報酬)2,815千円、市民後見推進事業(笠岡市委託料:国のモデル事業) 2,263千円である。 ▶市からの委託料については、活動実績を踏まえてセンターから予算書を提出したものがそのまま認められ ている。 ▶今後法人後見ケースが増え後見報酬が増えれば、市の財政負担は減る見込みである。 ▶また、低所得者の後見等、本来的に市が対応すべき業務を受託するに当たっては、フォローに入る市社協 として、赤字分の補てんはきちんと求めていく予定である。 ▶センター職員人件費のうち、センター会計で負担しているのは主担当の人件費の7割のみである。それ以 外の兼務職員分、主担当職員の残り3割分は、業務実態をふまえて、地域包括支援センターが負担してい る。 9 センターを社協が運営していることの意義 ▶社協は利益追求を求められないので、個人の専門職等が受けにくい低所得者や困難ケースでも受任できる ことが最大のメリットである。 10 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶年1回内部監査を受けている。外部監査は実施していない。 ▶預金引き出しは担当者とセンター長の決済で行っている。 ▶現在は受任件数が少ないため、現金を扱う際は原則として複数体制で動くようにしている。 ▶センター組織と市民後見人それぞれについて、全社協の保険に加入している。 116 第5章 ヒアリング調査結果 11 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶現時点では具体的な動きはない。 ⑵ その他 ▶岡山県は高齢者虐待防止に先進的に取り組んでいる地域であり、首長申立ての件数も多い。その意味で、 特に、弁護士、司法書士等の法律関係者の権利擁護に対する意識は高い。 ▶今後の課題として、将来的に受任件数が増えた場合に、これに見合った人員をセンターに配置できるか 不安がある。市民後見人の養成を進めているが、市民後見人の監督をするにも人員が必要である。 ▶死後処理について、親族がいないケース、親族がいても関係が壊れているケースでは、センターが対応 せざるを得ない場合がある。家庭裁判所に相談して進めているが、業務負荷が大きい。 ▶後見人が選任されると何でもできるというイメージが強いが、本来職務でない事実行為まで行わざるを 得ない状況があり、業務負荷が大きい。自費ヘルパー等を使うと料金が高いので、つい後見人が対応し てしまうが、できれば地域でもう少し安価で気軽に利用できるサービスがあるとよい。 かさおか権利擁護センター運営規程 平成22年12月16日 規程第1号 (目的) 第1条 この規程は、社会福祉法人笠岡市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )が実施する かさお か権利擁護センター(以下「権利擁護センター」という。 )の事業運営を円滑に行うため必要な事項を 定めるもので、認知症高齢者、知的障害者又は精神障害者(以下「認知症高齢者等」という。 )の意思 能力や生活状況に応じて、成年後見制度等の権利擁護制度を活用し、身上監護や財産管理を中心とする 権利擁護サービスを提供することにより、地域福祉の推進に寄与することを目的とする。 (事業内容) 第2条 前条の目的を達成するため、次の各号に掲げる事業を行う。 ⑴ 成年後見制度の利用に関する相談及び申立て支援 ⑵ 法定後見の事務 ⑶ 成年後見制度の普及及び啓発 ⑷ 虐待の予防啓発及び救済 ⑸ 入所施設、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、障害者相談支援センター、社会福祉事務 所、その他必要な事業所への支援 (名称及び位置) 第3条 権利擁護センターの名称及び位置は、次のとおりとする。 名 称 位 置 かさおか権利擁護センター 笠岡市十一番町1−3 (事業の対象者) 第4条 対象者は、笠岡市及び浅口郡里庄町に住所を有する者で判断能力が不十分な認知症高齢者等とする。 第5章 ヒアリング調査結果 117 (利用料金) 第5条 権利擁護センターの利用料は、原則として利用者負担とし別に定める。 2 権利擁護センターの利用料のほか、専門家への依頼にかかる費用等については利用者負担とする。 (職員) 第6条 権利擁護センター事業遂行のため、次の職員を置くものとする。 ⑴ センター長 ⑵ 次長又は主任 ⑶ 相談員 (秘密の保持) 第7条 権利擁護センターの職員又は職員であった者は、後見業務を行うにあたって、知り得た個人情報 を正当な理由なく他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。 (その他) 第8条 この規程の定めるもののほか、必要な事項は本会会長が別に定める。 附 則 この規程は、平成23年4月1日から施行する。 かさおか権利擁護センター実施要綱 平成22年12月16日 要綱第1号 (趣旨) 第1条 この要綱は、社会福祉法人笠岡市社会福祉協議会かさおか権利擁護センター運営規程(平成23年 社会福祉法人笠岡市社会福祉協議会規程第1号)の施行について必要な事項を定めるものとする。 (財産目録の作成) 第2条 法定後見人に就任した時には、速やかに財産調査を行い、財産目録を作成するとともに、身上監 護及び財産管理の計画を策定する。 (財産の保管) 第3条 被後見人等の財産のうち、次の各号に掲げるものは、本会が契約する金融機関の貸金庫において 保管することができるものとする。 ⑴ 預貯金通帳 ⑵ 有価証券 ⑶ 保険証書 ⑷ 登記済権利証等 ⑸ 実印 ⑹ その他前各号に準ずると本会が認めるもの (財産管理の考慮事項) 第4条 被後見人等の財産を管理するにあたっては、専ら被後見人等の利益のみを考慮して、その方法を 118 第5章 ヒアリング調査結果 決定するものとし、当該被後見人等の親族の同意を求めないものとする。 ただし、意見を求めることを妨げない。 2 財産の管理は、複数の職員で管理する。 (定期訪問) 第5条 後見業務を行うために、原則として月1回以上、被後見人等の居所を訪問し、本人の意向把握、 心身状態及び生活状況の確認に努めるものとする。 (費用) 第6条 後見業務を行うために被後見人等の財産から支出する費用は、次に掲げる費用を含むものとする。 ⑴ 後見業務を行うためにする本会の職員の移動に係る交通費等実費相当額 ⑵ 後見業務のうち税金の申告、不動産の登記、訴訟の遂行その他専門的な事項を処理するために行う 事業者への委託等に係る費用 (後見業務検討会) 第7条 社会福祉法人笠岡市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )は、かさおか権利擁護センターの 業務について、後見業務検討会を設置する。 2 後見業務検討会は、事業の重要事項等の協議・検討をする。 3 後見業務検討会は、笠岡市顧問弁護士等3名の委員をもって組織する。 4 後見業務検討会は、原則として非公開とする。 (法定後見事業) 第8条 事業のうち、本会が法定後見となることに係わるものを法定後見事業という。 (法定後見事業の対象者の要件) 第9条 法定後見事業の対象者は、社会福祉法人笠岡市社会福祉協議会かさおか権利擁護センター運営規 程第4条に定めるもののほか、認知症高齢者等により判断能力が不十分な者で、次の各号に掲げる要件 のいずれかに該当する者とする。 ⑴ 笠岡市長及び里庄町長が老人福祉法(昭和38年法律第133号)第32条、知的障害者福祉法(昭和35 年法律第37号)第27条の3又は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号) 第51条11の2に規定する審判(以下「市長等申立」という。 )の請求を行おうとする者で他に適切な 後見人が得られない者 ⑵ 本会及び社会福祉法人里庄町社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業の契約者(以下「日常生 活自立支援事業契約者」という。 )で他に適切な後見人が得られない者 ⑶ 生活保護世帯及び生活保護世帯に準ずる世帯(低所得者等世帯)で他に適切な後見人が得られない者 ⑷ 他に適切な後見人が得られない者で、本会会長が特に認めた者 (法定後見人候補者となることの承諾) 第10条 本会は、申立人が前条の要件に該当する者について、法定後見開始の審判の申立てを行おうとす るに際し、本会を法定後見人候補者としようとする旨の申し出があったときは、特段の事情がない限り これを承諾するものとする。 (法定後見人の選任の承諾) 第11条 本会は、家庭裁判所が第9条の要件に該当する者について、法定後見人として選任しようとする ときは、特段の事情がない限りこれを承諾するものとする。 (審判開始前の措置的支援) 第12条 本会は、市長等申立をした者に対し申立てから審判開始までの間、笠岡市及び浅口郡里庄町(以 下「笠岡市等」という。 )の要請を受けて笠岡市等による緊急事務管理を補完する措置的支援を行うこ 第5章 ヒアリング調査結果 119 とができる。 (法定後見業務) 第13条 法定後見事業に係る後見業務として、補助及び保佐にあっては、家庭裁判所の審判により付与さ れた同意権及び代理権に係る事務を、後見にあっては、取消権及び代理権に基づく事務のうち、被後見 人等の心身の状態及び生活状況に応じて必要と認める次の各号の業務を行う。 ⑴ 福祉サービス利用契約 ⑵ 病院の受診・入院手続き ⑶ 医療保護入院の同意(精神障害者の場合) ⑷ 施設入所者・病院入院者への定期訪問と状況把握 ⑸ 日常的な金銭管理(確定申告含む) ⑹ 重要書類の保全 ⑺ 不動産を所有する場合、その管理や運用及び必要に応じた売却等 ⑻ その他、本会会長が必要と認める事務 (報酬付与の審判の申立て) 第14条 法定後見事業に係る後見業務の報酬について、1年毎に家庭裁判所に報酬付与の審判を申立てる ことができるものとする。 2 前項の申立てに関する添付資料として、財産目録、活動記録、収支記録、事務経費記録、その他必要 な証拠資料を合わせて提出する。 (類型の移行申請) 第15条 被後見人等について、意思能力の程度に変化があったと認める場合において必要あるときは、被 後見人である場合にあっては補助開始又は保佐開始の審判を、被保佐人である場合にあっては後見開始 又は補助開始の審判を、被補助人である場合にあっては後見開始又は保佐開始の審判を、それぞれ家庭 裁判所に申立てるものとする。 (法定後見事業の辞任) 第16条 法人後見事業に係る被後見人等が笠岡市等外に転出し、又はその他の特別な事情により後見業務 を継続して行うことが困難になったときは、家庭裁判所に法定後見人の辞任を申し出るものとする。こ の場合において、当該被後見人等について必要があると認めるときは、当該被後見人の住所を管轄する 家庭裁判所に法定後見人の選任を申立てるものとする。 (死後の事務処理) 第17条 被後見人等が死亡した場合において特に必要があると認めるときは、被後見人等であった者につ いて、次の各号に掲げる事務を行うことができるものとする。 ⑴ 後見事務に係る債務の弁済及び債権の回収 ⑵ 葬送に関する手続き ⑶ 相続財産管理人の選任に関する手続き (台帳の整備) 第18条 後見業務の処理の状況を記録するため、被後見人等について個人ごとに台帳を整備しなければな らない。 (従事職員の指定) 第19条 本会は、財産管理又は社会福祉について専門の知識又は経験を有する職員の中から、後見業務に 従事する職員を指定する。 120 第5章 ヒアリング調査結果 (委任) 第20条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、本会会長が別に定める。 附 則 この要綱は、平成23年4月1日から施行する。 第5章 ヒアリング調査結果 121 Ⅵ 高知市成年後見サポートセンター (高知県高知市) 1 センターが圏域とする地域の概況 ▶高知市は、人口338,909人、世帯数161,878世帯(平成25年12月末現在)で、県民人口の4割以上が暮らす 地方中核市である。 ▶平成10年に四国初の中核市となり、平成17年に2村と、平成20年に1町と合併した。 ▶四国南部のほぼ中央に位置し、北方は四国山地、南方は土佐湾に面し、自然に囲まれている。 ▶少子高齢化は深刻で、高齢化率は25%程度、男女とも65歳以上の独居率が全国に比べて高い。 2 センター設置のきっかけ・経緯 ▶平成11年から日常生活自立支援事業、平成18年から法人後見受任事業を開始したが、社協の中の一事業と いう形では、相談者から窓口として見えにくいことを実感していた。具体的には、色々な関係機関に相談 したが、明確な方向性を示してもらえず社協にたどり着いたというケースが多くあったので、センターと して対外的に窓口を明示し、ここで権利擁護に関する相談を集約すれば、課題解決が早まると考えた。 ▶一方で、平成13年から、弁護士、司法書士、社会福祉士、社協で成年後見・日常生活自立支援事業調査研 究会(通称:四者会。関係機関との連携状況で詳述)を月1回開催しており、関係機関からも社協にセン ターを立ち上げるべきという意見、後押しがあった。 ▶上記のようにかねてからセンター立ち上げ構想があったところ、平成23年度に高知県地域支え合い体制づ くり事業費(補助金)500万円を利用できることになったため、開所準備(相談室等ハード面の整備、車 両購入等)を行い、平成24年4月に高知市成年後見サポートセンターを開所した。 3 センターの運営方針 ▶センターの人員体制にも限りがあるため、市行政や地域包括支援センターから権利擁護に関する相談がす べてセンターに集約されるといったことがないよう、行政が権利擁護の最終的な責任主体であることを確 認し、主体的に権利擁護に関わる体制づくりに留意した。具体的には、センター立ち上げ時に、それぞれ の窓口で受付した相談は各窓口で対応し、それぞれのケースで必要時はお互いが協力し合う体制づくりに 留意した。 4 社協におけるセンターの位置づけ ▶平成24年度は福祉課地域福祉係の事業の一つとして位置付けた。地域福祉係では、このほかに福祉のまち づくり事業の推進、生活福祉資金貸付等事業、地域福祉推進事業(ふくしのまちづくり事業・地区担当制 の実施) 、ボランティア推進事業、共同募金運動の推進を所管している。 ▶平成25年度からは、地域福祉課を自立支援グループ、地域福祉グループの2グループに分け、日常生活自 立支援事業、生活福祉資金貸付事業、障害者相談支援事業等の相談機能・権利擁護機能、及び、地域福祉 活動による生活困窮者のニーズの早期発見や見守り等のアウトリーチ機能・地域との連携機能を複合的に 提供できる組織体制に変更した。11月18日から新たに生活困窮者自立促進支援モデル事業を実施するため に、高知市と連携し、運営協議会方式で実施することとなり社協の地域福祉課と同一フロアに「高知市生 活支援相談センター」を設置した。 122 第5章 ヒアリング調査結果 5 センターで実施している事業 ⑴ 権利擁護に関する相談受付・調整・利用支援 ▶専門相談を開設し、権利擁護に関するニーズ把握や後見申立てに向けた関係者との調整を実施している。 ▶行政や福祉関係職員等が把握したケースの相談・助言を実施し、必要に応じて専門職や関係機関との連 携・調整を実施している。 ▶後見人等が困った時に、相談・助言を実施し、必要に応じて専門職や関係機関との連携・調整を実施し ている。 ▶相談件数は毎月30~40件程度で推移しており、特に、地域包括支援センターや介護支援専門員、病院か らの相談が多い。病院からの相談では、長期入院している精神障害患者の後見相談、救急病院で意識不 明で運ばれ支援者がいないケースの相談が増えている。 ▶センターがかかわって後見人等へつながったケースは、平成24年度の開設以降の累計51件、平成25年度 は18件である(平成24年については高知家裁への申立ての12〜13%を占める) 。 ⑵ 日常生活自立支援事業 ▶平成11年10月の制度創設当初から基幹型社協として活動している。 ▶平 成25年12月末日時点の実契約者数は188人(認知症高齢者82人・44%、知的障害者74人・39%、精神 障害者25人・13%、その他7人・4%)である。このうち、生活保護受給者は47人で契約者数の25%を 占めている。 ⑶ 法人後見 ▶平成17年6月に高知県社協が「社会福祉協議会における法人成年後見に関する検討委員会」を設置し、 弁護士、司法書士、大学教授、社会福祉士、行政関係者、社協職員10人で検討を重ね、社協が法人後見 事業を担っていくべきとの答申が出た。 ▶これを受けて、平成18年4月から法人後見事業を開始し、平成25年12月末日時点の利用者数は7人(後 見類型6人: (高齢者5人・知的障害者1人) 、保佐類型1: (知的障害者)である。後見ケースのほと んどは施設・病院で生活しているので業務負荷は高くない一方、保佐ケースは在宅で生活しているので 支援時間が多い。 ▶日常生活自立支援事業から引き継いだケースは1人であるが、後見受任で初めてかかわったケースもあ れば、申立て前から関わったケースもある。 ▶日常生活自立支援事業を開始した段階から専門職団体と密に連携しているので、日常生活自立支援事業 による支援から後見による支援が必要になった場合でも、ほとんどは専門職団体に後見を依頼している。 ▶地域には専門職団体で後見の担い手が十分ではないが、人数が不足しても積極的に受任してくれている。 社協が後見受任しているケースは個人の専門職では受任しにくい複合的な問題を抱えたケース、福祉的 な配慮の支援が必要なケースを基本としている。なお、社協としての受任要件は下記のいずれかを満た すものとしている。 ・首長申立てがされたケース ・権利侵害の危険性や急迫性が高いケース ・身上監護に福祉的な配慮が必要なケース ・その他適切な後見人が見つからないケース ⑷ 首長申立て支援 ▶センターが関わっているケースでは、申立て書や収支状況表、財産目録、首長申立て相談表などはセン ターで作成し、戸籍謄本や親族調査については行政が対応している。 第5章 ヒアリング調査結果 123 ⑸ 市民後見人の養成 ▶親族・専門職団体だけでは将来的な後見の担い手不足が予想されることから、平成25年7月に初めて市 民後見人養成講座を実施した。 ▶受講者は新聞等で募集し、42人が受講し、39人が修了した。このうち後見支援員希望者が8人、具体的 な説明会参加者が5人であり、今後、後見支援員として活動予定である。後見支援員も日常生活自立支 援事業の生活支援員も、求められる役割は同じであり利用者の視点になった活動を行ってもらうために 日常生活自立支援事業の生活支援員の役割も担ってもらうことも想定している。 ▶講座は平日(9時~17時)に延べ6日間かけて実施した。初回の開催ということもあり、できるだけ一 般市民にも参加してもらうために平日実施とした。 ▶講座の講師は、これまでセンターの運営で連携している専門職団体や行政関係者の協力が得られた。 ⑹ 広報・啓発活動 ▶成年後見制度の周知を行うためのパンフレットを作成したり、後見人を養成するための研修会や出前講 座を実施している。 ▶平成25年度は地域福祉課を地域福祉を推進する地域福祉グループと、主として個別支援を行う自立支援 グループにそれぞれ役割分担をし、地域福祉グループに配属されている地域福祉コーディネーターとの 連携も図れていることから地域の出前講座(一般住民向け)の開催希望の件数が増えてきている(平成 24年度開設以降の累計45件) 。 6 センター運営のバックアップ体制 ▶学識経験者、法律、医療、福祉、行政、金融機関等関係者で構成された運営委員会を設置しており、2~ 3か月に1回のペースで成年後見サポートセンター運営委員会を開催している。 ▶メンバーに金融機関関係者を入れたのが特徴である。このねらいは、以下の2点である。 ・金融機関は後見支援を必要とする利用者のニーズに直結する窓口なので、生の声を把握したかった。 ・センターの活動について金融機関側に知ってもらい広報活動につなげたかった。 ▶現場ニーズを把握するために、社協メインバンクの銀行の支店長に参加してもらっている。なお、多忙で も必ず参加してもらえるよう、社協から近い支店の支店長に依頼するという工夫をしている。 7 センター運営に当たっての関係機関との連携状況 ⑴ 市町村行政 ▶首長申立てのうち、センターで相談を受けた事例については、親族に関する調査以外の書類作成に係る 業務をセンターで担当している。また、センターが、専門職団体への候補者推薦依頼やケースに関わる 関係機関と後見人のコーディネーターとなる役割を担っている。 ▶個別ケースについては、依頼があれば行政の担当職員と訪問に同行し、情報共有などを行い、担当職員 への支援を行っている。 ▶高知市の成年後見に関わる主に行政職員と首長申立て案件や連携等について協議し、情報共有する場と して、成年後見サポートセンター支援会議を月一回開催している。この会議には行政関係者以外に高知 弁護士会、法テラスの弁護士も毎回参加しており、緊急案件や困難事例などもこの場で協議している。 ⑵ 社協の他部所 ▶介護保険部所とは、日常生活自立支援事業で共有しているケースについて連携した支援ができている。 ▶地域福祉課内では、地域の中で出前講座の要望があった場合、地域福祉コーディネーターが仲介し、セ ンターにつないだり、センターでの支援が必要な新規ケースがあれば訪問するなど連携を行っている。 124 第5章 ヒアリング調査結果 ▶社協の拠点が7か所に分かれているため物理的に連携が難しい環境がある。また、近年組織が急速に拡 大しているため、組織変更に応じた社協内の連携は継続的な課題である。 ⑶ その他関係機関 (高知市地域高齢者支援センター(地域包括支援センター) ) ▶成年後見相談事例については、原則初回相談を受け付けた機関が対応し、要望があれば、その都度連携 して支援することにしている。 ▶依頼があれば、高齢者支援センター(地域包括支援センター)の勉強会等へ出向いて事業説明を行って いる。 (専門職団体) ▶平成13年度から、高知県社協の声かけで弁護士、司法書士、社会福祉士、社協で成年後見・日常生活自 立支援事業調査研究会(通称:四者会)を月1回開催している。会では事例検討を行い、専門職による 多面的な視点に立った支援方法を検討している。当初は参加人数が10名程度で始まった会議であったが、 現在の参加人数は毎回、30~35名程に増加し、当初参加していなかった行政職員、行政書士、税理士、 その他関係者が多く集まるようになり、高知市以外からも多数の参加がある。 ▶四者会の開催は120回を超えており、ここでの人的ネットワークが基盤にあるので、首長申立て書類作 成時の支援依頼、後見候補者の推薦依頼、個別ケースでの連携等を円滑に行うことができる。 ▶参加者は経験年数も専門分野も違うため、それぞれの立場での視点に立った事例検討が可能になってお り、後見人としての悩みを共有したり、職種を越えた顔つなぎができている。 (金融機関等) ▶運営委員会に、社協がメインバンクとする銀行の支店長が参画している。 ▶センターができたことで、銀行から「こういうお客さんがいるがつないだほうがよいか」といった相談 や「銀行から紹介された」とセンターに来所される人が増えている。窓口が一本化されたことで相談が つながりやすくなった印象はある。 ⑷ 県・市町村社協 ▶県社協は、四者会立ち上げの際に事務局的に動いてくれたことの意義が大きい。現在は、高知市以外の 市町村の広域支援に注力している。 ▶各市町村社協とは情報交換・共有を行って日頃から連携している。 8 センターの運営体制 ▶高知市中心街のビルの1フロアに、高知市生活支援相談センター(生活困窮者自立促進支援モデル事業) が11月18日に開設され、そのフロアで、社協の地域福祉課と一体的に事業を行っていることで総合相談窓 口としての活動が可能になった。 ▶成年後見サポートセンターとして成年後見を担当する職員が2人(正規、臨時) 、日常生活自立支援事業 の専門員が4人(うち正規2人) 、生活支援員の役割も果たす事務職員等が2人いる。 ▶生活困窮者自立促進支援モデル事業の立ち上げのために、これまで成年後見と日常生活自立支援事業を担 当していた職員が異動したため、次の職員の育成が喫緊の課題となっている。 ▶職員の資質向上のため、県社協や全社協の研修にはできるだけ参加している。 ▶また、係会や支援会議で誰でも司会ができるよう担当制で運営したり、ケース担当を定めず誰でも相談を 受けられるように窓口対応に積極的に取り組んだり、出前講座に出かけることでプレゼン能力を高めるな 第5章 ヒアリング調査結果 125 ど、OJTでも人材育成に努めている。 ▶高知市社協では、昨年度から、正職員、契約職員、パート職員に対する職階別、職種別の研修会の開催に 取り組んだ。 ▶後見業務は、必要とされる知識が多岐にわたるため、人材育成に時間がかかる。ただ、個人に依存した体 制では事業の継続性が担保できないので、今後は業務標準化を図るためにマニュアル化等も必要と考えて いる。 9 センターの運営財源 ▶平成25年度は予算は収入合計は24,111千円、うち日常生活自立支援事業受託金13,474千円、日常生活自立 支援事業利用料等2,747千円、成年後見事業運営に係る市単独補助金7,490千円、法人後見報酬400千円であ る。 10 センターを社協が運営していることの意義 ▶今まで病院や施設関係団体や行政(地域包括支援センター)などで相談を受けていたケースについて、セ ンターの開設により、申立てから利用に至るまでの窓口を一本化して体系的な支援ができるようになった。 ▶首長申立てについて、行政だけではなくセンターと行政が同じ会議で内容を整理し支援方法を明確化する ことで申立てがスムーズに行えるようになり、首長申立て件数が前年度に比べて倍増した。 ▶これまで、弁護士会から後見候補者の紹介は行われておらず、利用者は個別に弁護士に相談しなければな らなかったが、センターが弁護士が必要と判断した事例は、センターから弁護士会に相談すると直接候補 者を紹介してくれるようになった。 ▶行政にない、地域に根付いたネットワークと迅速な対応が社協独自の支援を構築できるきっかけとなった。 ▶社協単独でこの事業を進めることは難しい。多様な関係機関、職種と関係を作り、社協が主役になるので はなく、本来的な「つなぐ」仕事を果たしていき、関係機関に様々な形で助けられながら事業を展開して いくことに大きな意義がある。単に相談を受け付けるのではなく、地域と一緒に基盤を築いていけるよう な連携会議を開催することが重要である。 ▶行政に言われたから取り組む事業ではなく、社協自身が提案型で動かなければならない。相談を受けた際 にも、その時点の判断で構わないので何らかの方向性を示す「思い切り」も重要である。方向性を示し、 一定の判断をしなければ、相談者はまた次の窓口へとたらい回しされていくことになる。そうならないた めにも窓口を一本化して対応するセンターを社協が運営する意義は大きい。 11 センター運営にかかるリスク軽減のための取り組み ▶運営委員会でリスクに対する助言などを受ける機会を設けている。 ▶現在は保険加入していないので、来年度は全国権利擁護支援ネットワークの会員向けの法人後見人賠償責 任保険の加入を検討している。 12 今後の展望 ⑴ 生活困窮者自立支援制度との関連 ▶ビルの1フロアに、生活困窮者自立促進支援モデル事業を実施する高知市生活支援相談センターと成年 後見サポートセンターが同居しているので、日常的に連携は取りやすい。 ▶高知市生活支援相談センターは平成25年11月から活動を始めており、日常生活支援事業や後見の相談に つながるケースも出てきている。今後は、高知市生活支援相談センターとの連携は必須であり、個々に 開催している各種会議のあり方も重要な課題である。 ▶日常生活自立支援事業で培ってきたノウハウを生活困窮者の家計再建支援に活かすことができるし、ま 126 第5章 ヒアリング調査結果 た、現在センターが持っている権利擁護機能を生活困窮者支援に役立てることも可能である。 ▶後見支援だけでなく生活困窮が認められたら高知市生活支援相談センターへつなぐなど包括的な相談に 対応できるような支援システムの構築も喫緊の課題である。 ⑵ その他 ▶中核市として、県内の他の市町村の先導役として研修会等の開催や連携を強め、市町村社協に成年後見 制度に対応できる窓口を設置する支援ができればと考えている。 社会福祉法人高知市社会福祉協議会 高知市成年後見サポートセンター運営規程 (趣旨) 第1条 この規程は、社会福祉法人高知市社会福祉協議会(以下「本会」という。 )に成年後見サポート センター(以下「センター」という。 )を設置するとともに、センターの成年後見事業の適正な実施に 関し必要な事項について定めるものとする。 (センターの目的) 第2条 センターは、認知症高齢者及び障害者等の判断能力の不十分な方の意思能力や生活状況に応じて、 成年後見制度及び福祉サービス利用援助事業を活用し、財産管理及び身上監護を中心とする権利擁護サ ービスを提供することにより、地域住民の生活と権利を擁護し、もって福祉の推進に寄与するものとす る。 (センターの名称及び位置) 第3条 センターの名称及び位置は、次のとおりとする。 名 称 位 置 高知市成年後見サポートセンター 高知市塩田町18番10号 (開設日及び開設時間) 第4条 センターの開設日及び開設時間は、次のとおりとする。 ⑴ 開設日は、月曜日から金曜日までとする。ただし、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178 号)に規定する休日及び12月29日から翌年の1月3日までの日を除く。 ⑵ 開設時間は、午前8時30分から午後5時30分までとする。 ⑶ センターの運営管理において、本会会長(以下「会長」という。 )が、必要と認めるときは、第1 号ただし書の規定にかかわらず臨時に開設することができる。 (事業) 第5条 センターは、第2条の目的を達成するため次の事業(以下「センター事業」という。 )を行うも のとする。 ⑴ 法人後見受任に関すること。 ⑵ 成年後見制度利用相談及び申立支援に関すること。 ⑶ 成年後見制度の人材育成及び普及啓発に関すること。 ⑷ 成年後見人等の支援 ⑸ その他会長が第2条の目的を達成するために必要と認める事業 第5章 ヒアリング調査結果 127 2 センター事業の実施に当たっては、関係行政機関等と十分に連携を図り、円滑な運営に努めなければ ならない。 (成年後見センター事業運営委員会の設置) 第6条 センター事業の適正な運営の確保、透明性及び公平性を図るために、成年後見センター事業運営 委員会(以下「委員会」という。 )を設置する。 2 この規程に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、会長が別に定める。 (個人情報の保護) 第7条 センター事業の実施に当たって取得したすべての個人情報については、本会個人情報保護規則及 び関係法令等に基づき、適正に管理保護しなければならない。 (苦情の申立て) 第8条 センター事業に関する苦情の申立てがあったときは、本会福祉サービス向上実施要領に定めると ころによるほか、必要があるときは第三者委員に諮り、その解決を図るものとする。 (成年後見受任事業) 第9条 センター事業のうち、成年後見受任事業は、判断能力が不十分なために、意思決定が困難な方の ため、本会が成年後見人、保佐人又は補助人となって判断能力を補いこれらの方が安心して日常生活が できるよう支援するものとする。 (事業の対象者) 第10条 成年後見受任事業の対象者は、高知市内に在住する者で、後見開始、保佐開始、補助開始の審判 があった者のうち、他に適当な成年後見人等が得られないと判断され、本会が後見受任業務を行うこと が適当と認めたものとする。 (成年後見人等選任の承認) 第11条 本会は、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人として本会を選任しようとする場合で前条の 要件に該当するときは、原則としてこれを承認するものとする。 (後見業務の委託) 第12条 本会は、後見業務を実施するに当たり、専門的な業務等が必要な場合は、その業務を委託するこ とができる。 (財産目録の調製等) 第13条 本会は、成年後見人等に就任したときは、速やかに財産調査を行い、財産目録を調製し、財産管 理計画及び身上監護計画を作成する。 (居所の訪問) 第14条 本会は、前条の規定により作成した計画に基づいて後見業務を行い、必要に応じ成年被後見人等 の居所を訪問し、安否の確認、心身の状態、生活状況の把握に努めるものとする。 (財産の保管) 第15条 成年被後見人等の財産のうち動産類や権利証等の重要書類は、原則として、本会が契約する金融 機関の貸金庫において保管する。ただし、次の各号に掲げるものは、本会の事務所に備える耐火性の金 庫に保管することができる。 ⑴ 預貯金通帳(ただし、日常的に使用するものに限る。 ) ⑵ 銀行印 ⑶ その他前各号に準ずると本会が認めるもの (費用) 第16条 後見業務に要する費用は、成年被後見人等の負担とする。やむを得ない事由により本会が立て替 128 第5章 ヒアリング調査結果 えて支出した場合は、これを求償することができる。 2 本会が第12条の規定により専門家等に業務を委託した場合は、その経費は成年被後見人等の負担とす る。 (台帳の整備) 第17条 本会は、成年被後見人等について個人ごとにケース記録、金銭管理台帳を整備し、後見業務の処 理状況を記録しなければならない。 (報酬付与の申立て) 第18条 本会は、成年後見事業に係る後見業務の報酬については、家庭裁判所に報酬付与の申立てをする。 (類型の移行) 第19条 本会は、成年被後見人等の意思能力に変化があったため、後見類型の変更が必要と認められる場 合は、後見類型の変更についての審判を家庭裁判所に申し立てるものとする。 (辞任) 第20条 本会は、特別な事情により後見業務の継続が困難になったときは、成年後見人等の辞任を家庭裁 判所に申し出るものとする。 (後見業務の終了) 第21条 本会は、次の各号に掲げるいずれかの事由に該当するときは、後見業務を終了する。 ⑴ 成年被後見人等の死亡 ⑵ 後見開始審判の取消し ⑶ 家庭裁判所により辞任許可の審判があったとき。 ⑷ 本会が本事業を廃止又は解散したとき。 (財産の引渡し) 第22条 本会は、後見業務に係る保管財産の引渡しについては、民法及び関係法令並びに家庭裁判所の指 示に従う。 (その他) 第23条 この規程に定めるもののほか、この規程の実施に関し必要な事項は、会長が別に定める。 附 則 この規程は、平成24年4月1日から施行する。 社会福祉法人 高知市社会福祉協議会成年後見事業実施要綱 (目的) 第1条 この要綱は、社会福祉法人高知市社会福祉協議会(以下「高知市社協」という。 )が実施する成 年後見事業に関し、必要な事項を定める。 (業務の趣旨) 第2条 成年後見事業は、判断能力が不十分なために、意思決定が困難な方のため、高知市社協が成年後 見人、保佐人または補助人となって判断能力を補いこれらの方が安心して日常生活ができるよう支援す るものとする。 第5章 ヒアリング調査結果 129 (事業の対象者) 第3条 成年後見事業の対象者は、高知市内に在住する者で、後見開始、保佐開始、補助開始の審判があ ったもののうち、他に適当な成年後見人等が得られないと判断され、高知市社協が後見業務を行うこと が適当と認めたもの。 (成年後見人等選任の承認) 第4条 高知市社協は、家庭裁判所が成年後見人、補佐人、補助人として高知市社協を選任しようとする 場合で前条の要件に該当するときは、原則としてこれを承認する。 (後見業務の委託) 第5条 高知市社協は、後見業務を実施するに当たり専門的な業務等、必要な場合はその業務を委託する ことができる。 (財産目録の調製等) 第6条 高知市社協は、成年後見人等に就任したときは、速やかに財産調査を行い、財産目録を調製し、 財産管理計画及び身上監護計画を作成する。 (居所の訪問) 第7条 高知市社協は、前条の規定により作成した計画に基づいて後見業務を行い、必要に応じ被後見人 の居所を訪問し、安否確認、心身の状態、生活状況の把握に努めるものとする。 (財産の保管) 第8条 被後見人等の財産のうち動産類や権利証等の重要書類は、原則として、高知市社協が契約する金 融機関の貸金庫において保管する。ただし、次の各号に掲げるものは高知市社協の事務所に備える耐火 性の金庫に保管することができる。 ⑴ 現金 ⑵ 預貯金通帳(日常的に使用するもの) ⑶ 銀行印 ⑷ その他前各号に準ずると高知市社協が認めるもの (費用) 第9条 後見業務に要する費用は、被後見人等の負担とする。やむを得ない事由により高知市社協が立て 替えて支出した場合は、これを求償することができる。 2 高知市社協が第5条の規定により専門家等に業務を委託した場合は、その経費は被後見人等の負担と する。 (台帳の整備) 第10条 高知市社協は、被後見人等について個人ごとにケース記録、金銭管理台帳を整備し後見業務の処 理状況を記録しなければならない。 (報酬付与の申し立て) 第11条 高知市社協は、成年後見事業に係る後見業務の報酬については、家庭裁判所に報酬付与の申し立 てをする。 ただし、被後見人等の事情により報酬の付与が困難であると高知市社協が判断したときは、この限り ではない。 (類型の移行) 第12条 高知市社協は、被後見人等の意思能力に変化があったため、後見類型の変更が必要と認められる 場合は、後見類型の変更についての審判を家庭裁判所に申し立てるものとする。 130 第5章 ヒアリング調査結果 (辞任) 第13条 高知市社協は、特別な事情により後見業務の継続が困難になったときは、成年後見人等の辞任を 家庭裁判所に申し出るものとする。 (後見業務の終了) 第14条 高知市社協は、次の事由により後見業務を終了する。 ①被後見人等の死亡 ②後見開始審判の取消 ③家庭裁判所により辞任許可の審判があったとき ④高知市社協が本事業を廃止又は解散したとき (財産の引渡し) 第15条 高知市社協は、後見業務に係る保管財産の引き渡しについては、民法の規定、家庭裁判所の指示 に従う。 (運営委員会の設置等) 第16条 高知市社協は、成年後見事業の適正な運営のため、成年後見事業運営委員会を設置する。 2 事業運営委員会の設置に関し必要な事項は、別に定める。 (その他) 第17条 この要綱に定めるもののほか、この要綱の実施に関し必要な事項は別に定める。 附 則 (施行期日) 1 この要綱は、平成21年4月1日から施行する。 第5章 ヒアリング調査結果 131