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大学生の異文化適応と心理的不安の変化に関する研究

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大学生の異文化適応と心理的不安の変化に関する研究
青 森 保 健 大 雑 誌 7(1),37-44,2006
〔
原著 論文〕
大学生 の異 文化 適応 と心理 的不 安 の変化 に関す る研 究
川 内 規 会1)
Change
in Intercultural
Adaptation
and
Japanese
University
Students.
Anxiety
of
Kie Kawauchi 1)
Abstract
The purpose of this paper is to clarify the anxiety students feel with regard to intercultural
communication before and after intercultural contact during study abroad and to evaluate the
timeframe of intercultural adaptation.
The research presented here shows the anxiety felt over intercultural communication is quite different
before and after intercultural contact has been experienced.
The main anxiety among university students that the research revealed was with interpersonal
communication with the host family, the main concern being that the students felt that comprehending
is not as important as communicating in the target language and this leads to anxiety.
As students tend to depend on their mother language even while staying abroad, their communication
skills in the target language cannot develop by spending their time within their Japanese group.
Nevertheless as far as language usage is concerned students feel that all of their language skills develop
during their overseas experience. In addition to this, their anxiety with using the language is gradually
reduced and 80% of students adjust to using English within 2 weeks. The main reason for this
adjustment is not their level of English, but in the reduction of their anxiety.
This study attempts to makes clear what problems need to be overcome for the adjustment into
intercultural interaction and through this we can grasp the characteristics of the youth of today.
(J. Aomori Univ. Health Welf. 7 (1): 37 —44 , 2006)
キ ー ワ ー ド:異 文 化 適 応 、 心 理 的 不 安 、 海 外 語 学 研 修
Key words
I.は
: intercultural
adaptation,
communication
anxiety,
study
abroad.
立 され る転 換 期 と言 え るで あ ろ う。 ま た 、 こ の 時 期 に お
じめ に
文 部 科 学 省 は2005年 の 国 際 交 流 促 進 に 向 け た 施 策 の動
け る もの の見 方 の 変 化 や 新 鮮 な 感 動 は 、 将 来 の 方 向 性 を
向 と展 開 と して 、留 学 生 交 流 の 推 進 を挙 げ て い る。 そ の
決 め る大 きな き っ か け に もな り得 る。
中 で 日本 人 学 生 の 海 外 留 学 の 現 状 を 紹 介 して い るが 、統
青 森 県 立 保 健 大 学 は 「English Communication」
計 注1)に よ る と海 外 に 留 学 した 日本 人 は 主 要33力 国 で 約
ば れ る海 外 語 学 研 修 を2単 位 の 選 択 科 目 と して 設 け て お
7万9千
人 で あ り、 年 々増 加 して い る傾 向 が 見 られ て い
と呼
り、2000年 か らオ ー ス トラ リ アで 実 施 して お り、2004年
る 。 国 際 交 流 が 盛 ん に な りグ ロ ーバ ル な視 点 が 問 わ れ る
か ら イ ギ リス が 追 加 さ れ 、 そ れ ぞ れ3週
よ う に な っ て 以 来 、 授 業 の 一 環 と して 短 期 海 外 語 学 研 修
され て い る 。 そ の 目的 は 、 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ス キ ル
を 設 け て い る大 学 も少 な くな い 。 若 い 世 代 で あ る学 生 た
の 向 上 、 異 文 化 理 解 と異 文 化 接 触 を通 して 国 際 的 な視 野
ち に と っ て異 文 化 を体 験 す る こ と は、 価 値 観 の再 認 識 、
を養 う 、自信 と 自立 」 な どが あ げ ら れ 、語 学 力 の上 達 の
文 化 的 同 一 性 の 発 見 、 自他 意 識 の 高 揚 、 心 理 的 自立 が 確
み が 目的 で は な くコ ミュ ニ ケ ー シ ョン手 段 と して英 語 を
1)青 森県 立保 健大学 健康科学 部人 間総 合科学科 目
Division
of Human
Sciences
, Faculty
of Health
Sciences,
−37−
Aomori
University
of Health
and Welfare.
間 の研 修 が 実 施
Ⅱ
使 用 しな が ら、 自文 化 ・異 文 化 を認 識 し異 文 化 適 応 を試
人 が 情 緒 的 、 精 神 的 支 援 を願 っ て い る 可 能 性 は否 定 で き
み る貴 重 な 経 験 をす る こ と に あ る。
ない 。 異 文 化 に お け る葛 藤 、 不 安 を解 決 す る 方 法 や 、 不
多 くの学 生 が 日常 の 生 活 か ら離 れ 異 文 化 環 境 に 入 り込
安 要 素 の 認 識 度 に よ っ て 異 文 化 適 応 の 成 功 ・不 成 功 が 決
ん だ と きの 心 理 的 反 応 と し て 少 な か らず コ ミ ュ ニ ケ ー
ま る と考 え る な ら、 初 期 段 階 と して 異 文 化 接 触 す る前 の
シ ョ ン不 安 をい だ く。 特 に ホ ー ム ス テ イ とい う 日常 生 活
不 安 と、 異 文 化 接 触 後 の不 安 を正 確 に 受 け止 め 、解 決 策
の 経 験 は 、母 国 語 を介 在 す る余 地 が な い た め 学 生 が 一 番
を検 討 す る こ とは 異 文 化 適 応 が 柔 軟 に行 わ れ る た め の 大
不 安 に思 う と こ ろで あ る 。 大 半 の 学 生 は不 安 を抱 え な が
切 な プ ロ セ ス で あ る と考 え る 。
ら少 しず つ 異 文 化 認 識 し受 容 す る が 、 最 後 ま で異 文 化 適
応 で きず に悩 み なが ら過 ご し続 け る学 生 もい る 。 しか し
Ⅲ
.研 究 目 的
そ の 現 象 は特 異 で は な く、 異 文 化 適 応 で きず に帰 国 す る
本 調 査 は 異 文 化 適応 が 柔 軟 に 行 わ れ る た め の解 決 策 を
例 は 珍 しい こ とで は な い 。 そ こ に は 現 代 の 学 生 の 感 性 の
導 き 出す 初 期 段 階 と して、 大 学 生 の 短 期 海 外 研 修 に お け
問題 と耐 性 の 弱 さが 現 れ て くる 。 現 代 の学 生 の精 神 面 を
る 不 安 感 の 変 化 と実 態 を把 握 す る こ と を 目的 と し て い
よ り理 解 す る た め に、 適 応 状 況 や 心 理 的不 安 原 因 を把 握
る 。 心 理 的 不 安 原 因 を追 求 しな が ら 、 い か に学 生 が 異 文
す る こ とが 、効 果 的 な海 外 研 修 が 行 わ れ る た め に 必 要 で
化 に適 応 して い く もの か コ ミュ ニ ケ ー シ ョン行 為 の 実 状
あ る と考 え る 。
か ら調 査 す る もの で あ る。 即 ち 学 生 が 初 め て 経 験 す る 異
本 調 査 は本 学 の 「English Communication」
年 度 で5年
授 業 が2004
目を 迎 え た事 を き っ か け と し、 過 去5年
間の
大 学 生 の 海 外 語 学 研 修 を 通 して異 文 化 接 触 時 に お け る心
文 化 相 互 作 用 に お け る適 応 状 態 を把 握 し、 学 生 の心 理 的
不 安 の 原 因 や 問 題 点 を明 らか に した 上 で 、 現 代 の学 生 の
特 徴 を把 握 す る こ と を 目指 して い る。
理 的不 安 と異 文 化 適 応 の 実 態 調 査 を実 施 した 。 ま た 、 他
大 学 の 学 生 の異 文 化 適 応 状 況 を把 握 す べ く、 青 森 市 内 の
Ⅳ
.研 究 方 法
大 学 お よ び短 期 大 学 主 催 の 海 外 語 学 研 修 に 参 加 した 学 生
ア ン ケ ー ト調 査 に よ る異 文 化 接 触 時 の 意 識 調 査 と、 聞
か ら聞 き取 り調 査 を実 施 し、 現 代 の 学 生 の コ ミュ ニ ケ ー
き取 り調 査 に よ る異 文 化 接 触 前 ・後 の心 理 的 変 化 お よび
シ ョ ンの あ り方 に 関 す る特 徴 を考 察 した 。
適 応 状 況 を 調 査 した 。
1.ア
.異 文 化 適 応 の 要 因
ンケ ー ト調 査
ア ンケ ー ト調 査 は2000年 か ら2004年 の 過 去5年
マ ツ モ トは 「日本 人 の 国 際 適 応 力(1999)」1)の 中 で 、サ
間 に毎
年 行 わ れ 、 青 森 県 立 保 健 大 学 の 海 外 研 修 終 了 後1週
間以
ン フ ラ ン シス コ州 立 大 学 に あ る異 文 化 感 情 研 究 所 が 過 去
内 に 実 施 さ れ た 。 調 査 用 紙 は海 外 研 修 を経 験 した 同大 学
30年 間 の 心 理 学 の 文 献 に現 れ た 異 文 化 適 応 に 影 響 の あ る
の 学 生195名 に 配 布 し138名 か ら 回 答 が あ り、 回 収 率 は
主 要 要 素 を調 べ た結 果 、 事 前 の 異 文 化 体 験 、 異 文 化 に対
70.8%で
す る態 度 、社 会 的支 援 、 柔 軟 性 な ど、 文 化 の違 い を い か
科 、 社 会 福 祉 学 科 の3学 科 で 、 社 会 人 入 学 の 学 生6名
に捉 え る か に 焦 点 を あ て た もの が 挙 げ られ て い る こ と を
含 むす べ て2年
示 し て い る 。 さ ら に マ ツ モ トは 、 異 文 化 適 応 に お け る成
び イ ギ リス で3週
功 ・不 成 功 を 決 定 す る最 も重 要 な プ ロ セ ス の 一 つ は 、 自
生 と持 続 的 に 接 触 して い る 点 か ら、 主 に ホ ス トフ ァ ミ
分 お よ び相 手 の 感 情 の処 理 の 仕 方 で あ る と して い る 。 異
リー との接 触 を調 査 対 象 と した 。
調 査 内容 は 、異 文化 適
文 化 にお け る葛 藤 、 不 安 が 避 け られ な い 以 上 、 こ の葛 藤
応 が 可 能 と な っ た 時 期 、 不 適 応 状 況 とそ の 詳 細 、 コ ミュ
を解 決 す る方 法 に よ っ て 、 成 功 ・不 成 功 が 決 ま る とい う
ニ ケ ー シ ョ ン ・ス キ ル の認 知 、 母 国語 依 存 度 な どで あ る。
の である。
2.聞
ま た 、 海 外 生 活 に 適 応 す る に は 、 生 き て い くう え で の
聞 き取 り調 査 は2004年 に実 施 され 、 調 査 方 法 は1対1
サ ポ ー トネ ッ トワ ー ク が 大 切 で あ る こ と を 宗 像
の イ ン タ ビ ュ ー 形 式 で行 わ れ た。 対 象 者 は青 森 市 内 の4
(1994)2)は 強 調 して い る。在 外 邦 人1,099名 か ら得 た メ
あ っ た 。対 象 者 の専 攻 は看 護 学 科 、 理 学 療 法 学
を
生 で あ る 。研 修 先 は オ ー ス トラ リア お よ
間 の ホ ー ム ス テ イ を経 験 して い る 。 学
き取 り調 査
年 制 大 学4大 学 お よ び 短期 大 学1大
学 か ら大 学 主 催 の 海
ン タル ヘ ル ス 実 態 調 査 の 結 果 か ら、日常 の生 活 に お い て 、
外 研 修 参 加 学 生13名 で あ る 。 専 攻 は 、 経 営 法 学科 、 現 代
手 段 的 な面 で 支 援 して くれ る 人 や 情 緒 的 な面 で 支 援 して
コ ミュ ニ ケ ー シ ョン学 科 、 看 護 学 科 、 経 営 学 科 、 医 療 薬
くれ る人 が い る こ とで ス トレス が 乗 り越 え られ る とい わ
学 科 、経 営 経 済 学 科 とさ ま ざ まで 、 学 年 も1年 生 か ら4
れ て い る。
年 生 ま で 幅 広 い 。対 象 者 の研 修 先 は 、 ア メ リカ 、 イ ギ リ
短期 間 異 文 化 接 触 を す る人 の精 神 的不 安 感 の 質 は 、 長
ス 、 中 国 、 オ ー ス トラ リア で 、 期 間 は2週
期 滞 在 者 の そ れ と は異 な る こ とは 推 測 され るが 、根 本 的
1ヶ 月 と短 期 研 修 が 大 半 で あ るが 、 中 国 の 対 象 者 は1年
な 意 識 と して 長 期 ・短 期 に こ だ わ らず 、 異 文 化 接 触 した
間 の 研 修 で あ る。 カ リ キ ュ ラ ム 内 容 は 、 午 前 は各 大 学 ・
−38−
間 、3週 間 、
語 学 学 校 で 授 業 を受 け て い るが 、午 後 は13名 中5名 が2
時 間程 度 の 授 業 を受 け て お り、 他8名
は自由行動 また は
自主 研 修 注2)とな って い る 。ク ラ ス編 成 は 日本 人 だ け の ク
ラス が7名
、 他 の 国 の 人 と混 合 の ク ラス が6名
で ある。
対 象 者 の研 修 先 、期 間 、 カ リキ ュ ラ ム 内 容 は異 な るが 、
は じめ て の 異 文 化 接 触 とい う点 で は共 通 して い る と判 断
し同 じ調 査 を行 っ て い る。 調 査 内 容 は 、 そ れ ぞ れ の 大 学
の 事 前 研 修 の 有 無 とそ の 詳 細 、 異 文 化 接 触 前 ・後 の 心 理
的 不 安 内容 とそ の 原 因 、 異 文 化 適 応 が 困 難 で あ っ た 事 例
な どが 中心 で あ る 。
図2 Ⅴ
.結 果
1.ア
ホ ー ムス テ イ先 で コミ ュニ ケー シ ョンが とれ な
かった状況
ンケ ー ト調 査 の 結 果
は じめ に、 異 文 化 接 触 前 の 心 理 的 な不 安 と して挙 げ ら
次 に 、 ホ ー ム ス テ イ先 で コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが と れ な
れ て い た 項 目に 関 して は 、「食 生 活 」、「生 活 習 慣 の違 い 」、
か った と思 わ れ る状 況 の調 査 で は 、 図2の
「交 通 機 関 」、 「事 故 」注3)、「授 業(大
学 ・語 学 学 校 に よ
よ うな 結 果 と
な った 。「発 信 で きな か っ た と き」と 回答 した 学 生 が83名 、
る)」 な ど多 様 で あ っ た が 、こ れ らの 項 目の 上 位 に 「ホ ス
以 下 「受 信 で きな か っ た と き」70名 、「受 信 した が 発 信 で
トフ ァ ミ リー との対 応 」が 挙 げ られ て い た 。 言 語 の 不 安 、
きな か っ た と き」25名 、「発 信 したが 受 信 され な か っ た と
考 え方 の 違 い 、 共 同 生 活 の不 安 な ど さ ま ざ ま な 要 因 が 含
き」15名 の順 と な っ た 。 一 見 、 言 語 運 用 の 問 題 の み が 上
まれ て お り、 対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 難 し さが 異 文 化
位 を 占 め た よ う に感 じ られ る が 、「受 信 した が 発 信 で き な
にお い て 一 層 際 立 った と思 わ れ る。
か っ た 」 と い う回 答 は 、 相 手 の 言 っ て い る内 容 は理 解 し
学 生 が ホ ス トフ ァ ミ リ ー との 対 応 に不 安 を抱 い て い た
た が 返 答 で きな か っ た状 況 で あ り、 必 ず し も言 語 運 用 能
こ と に 関連 して 、 ホ ス トフ ァ ミ リ ー と緊 張 が ほ ぐれ た状
力 の み が 原 因 で は な い と考 え られ る。 同様 に、「発 信 した
態 で コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を は か る こ とが で きた 時 期 を調
が 受 信 され な か っ た 」 とい う 回答 も、 伝 え た つ も りだ っ
べ た 。 結 果 は 図1を
た が 誤 解 され た 例 や 、伝 え た 内 容 が 受 け入 れ られ な か っ
「1週 間 後 」27%、
後 」は 同 数 の14%と
参 照 さ れ た い 。 「2、3日
後 」29%、
「会 っ た そ の 時 点 か ら」 と 「2週 間
の 学 生 が 、2週 間 後 まで に は84%の
る。 また 、 「考 え方 の 違 い が 感 じ られ た と き」12名 、 「文
学生 が、緊張せず に
自然 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョン が で きた と感 じて い た 。一 方 、
「3週 間後 」7%、
合 計16%の
た 例 もあ り、 原 因 と な る 要 因 は 広 域 に わ た っ て 考 え られ
な っ た 。つ ま り、1週 間 後 ま で に70%
「最 期 まで 対 応 で き な か っ た」9%、
化 の違 い が 感 じ られ た と き」10名 の よ う に言 語 運 用 以 外
の 問 題 をあ らか じめ 指 摘 した学 生 もい た 。
続 い て 、 研 修 前 に学 ぶ べ きで あ っ た項 目 に対 す る 回 答
学 生 は 自分 の満 足 す る コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが
で きず に帰 国 して い る こ とが わ か る。
で は 、 図3を 参 照 さ れ た い 。 半 数 の 学 生 が 「単 語 力 の 増
加 」76名 、 「日常 の 英 会 話 」69名 、 と 回答 し、3分 の1の
学 生 が 「リ ス ニ ン グ の練 習 」43名 、 と回答 して い る こ と
か ら、英 語 運 用 能 力 の 乏 し さ を感 じた よ うで あ る 。 ま た 、
「自国 の 歴 史 や 文 化 」39名 や 、「訪 問 国 の 歴 史 や 文 化 」25
会 った そ の時 点
名 、 に 関 して は 、 学 生 が 異 文 化 に接 触 す る前 に さ ほ ど重
2,3日 後
要 視 して い な か っ た項 目で あ り、 そ の答 え ら れ な か っ た
1週 間 後
2週 間 後
項 目の 内 訳 は 、「過 去 の 歴 史 的事 実 、日本 の 経 済 的 立 場 、義
3週 間 後(帰 るころ)
務 教 育 の 詳 細 、 現 在 の 医 療 の あ り方 、 福 祉 の 現 状 、 定 年
最 期 までで きな か った
制 度 、 国(地 域)の
政 策 な ど」 で あ っ た 。 これ らは 後 述
の 聞 き取 り調 査 に も関係 して お り、興 味 深 い 回答 で あ る 。
図1 緊 張 せ ず に ホ ス トフ ァ ミ リー と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ
ン が とれ た 時 期
− 39−
な ど、 人 間 関係 に不 安 を抱 い て い た 。
異 文 化 接 触 前 の 事 前 研 修 を受 け て い る学 生 と、 受 け て
い な い 学 生 を比 較 した と こ ろ、 事 前 研 修 を 受 け 、 研 修 先
の 情 報 を与 え られ た 学 生 は 、 多 くの 情 報 か ら 自分 に 関 わ
る問 題 点 や 不 安 原 因 を把 握 して お り、 不 安 内容 が 限 定 さ
れ て い た 。例 え ば 、生 活 環 境 の 違 い 、 生 活 習 慣 の 違 い
(公 衆 トイ レ、公 衆 電 話 の 使 用)、ホ ー ム ス テ イの マ ナ ー 、
税 関 の手 続 き、 文 化 的 背 景 な ど を挙 げ て お り、 情 報 提 供
を受 け た う え で 自分 の 中 の 不 安 な 材 料 を明 確 に して い
た。
一 方 、 異 文 化 接 触 前 の 事 前 研 修 を受 け て い な い学 生 は
図3 研 修 前 に 学 ぶ べ きで あ った 項 目
ま っ た く不 安 が な い と答 え て い た り、 比 較 的 漠 然 と した
内 容 、 例 え ば飛 行 機 事 故 、 多 発 テ ロ の 影 響 注4)な ど を 不
安 と答 え て い た 。
1時 間未 満
1時 間 以 上一2時 間未 満
また 、 事 前 研 修 を受 け て い る学 生 は、 受 け て い な い 学
生 よ り不 安 感 は 少 な い と考 えが ち で あ るが 、 む しろ事 前
2時 間 以上 一3時 間未 満
研 修 を受 け て い る学 生 の ほ うが 不 安 感 は 多 か った 。 各 自
3時 間 以上 一4時 間未 満
が 研 修 国 の 生 活 をあ らか じめ イ メ ー ジ した結 果 、 具 体 的
4時 間 以上 一5時 間未 満
な疑 問 点 が 沸 き不 安 材 料 が 増 え た た め と思 わ れ る。
5時 間 以上 一6時 間未 満
異 文 化 接 触 後 の不 安 内 容 に関 す る 比 較 で は 、事 前 研 修
を受 け た 学 生 は 、研 修 以 前 に持 っ て い た不 安 感 を現 地 で
6時 間 以上
即 座 に解 決 し、 簡 単 に 日常 生 活 に 溶 け 込 ん で い た 。 こ れ
図4 日本 語 の 使 用 時 間
は、 あ る 程 度 予 測 を して い た 基 本 的不 安 要 因 で あ っ た た
め 、 異 文 化 受 容 しや す く、 す ぐに解 決 で きた もの と思 わ
次 に、 ホ ー ム ス テ イ期 間 中 の1日 の 母 国 語 使 用 頻 度 を
れ る。 しか し、 こ れ らの 学 生 は 現 地 で さ ら な る新 しい 不
調 べ た 。 結 果 は 図4を
安 要 因 が 別 の 角 度 か ら で て き て い る 。 例 え ば 、健 康 面
時 間 が1時
ご 覧 い た だ きた い。 日本 語 の使 用
間未 満 は2%と
満 が15%、2時
少 な く、1時
間 以 上3時
答 で あ っ た 。 ま た3時 間 以 上4時
以 上5時
68%と
間 未 満 が20%と
間 以 上2時
間 未 満 で は31%と
間未
(風 邪 で病 院 に行 く こ と に な っ た 、 ホ ー ム ス テ イ先 で 子
最 も多 い 回
供 が と び か か り首 を捻 挫 した)や 、 語 学 の 進 歩(日 本 語
間 未 満 が17%、4時
な り、2時
間
間 か ら5時 間 未 満 で
半 数 以 上 を しめ て い る こ と に な る 。この 結 果 か ら、
を頻 繁 に使 用 して い た が 英 語 力 は つ くの か 、3週
間 で英
語 は話 せ る よ うに な る の か 、 中 国 語 を学 ん で い た が 自分
の 学 力 が 平 均 的 で あ るか ど うか 、 中 国 語 を生 か した 仕 事
語 学研 修 先 の授 業 で は 英 語 が 使 用 さ れ て い て も、 自由 な
に就 け る レベ ル に 達 して い る か ど うか)や
時 間 に な る と 日本 人 は 集 ま り母 国 語 を使 用 して い る様 子
ミ リ ー との 関 係(地
が うか が わ れ る 。 この 結 果 に 関 して は、 日本 人 学 生 同 士
勧 誘 が あ り困 っ た 、 ホ ス トフ ァ ミ リー が 自分 の英 語 を理
の 行 動 が 多 い こ とは 、 他 の ア ンケ ー ト項 目の 回 答 に もあ
解 で き な い と無 視 す る よ う に な っ た 、 プ ラ イ バ シ ー を
り合 致 して い る と こ ろ で あ る 。
守 っ て くれ な い 、 感 情 が う ま く表 現 で きな い)な
2.聞
化 接 触 後 の 不 安 内 容 は か な り異 な る もの とな った 。一 方 、
き取 り調 査 の 結 果
、 ホ ス トフ ァ
方 な ま りが あ り苦 労 した、 宗 教 的 な
ど異 文
聞 き取 り調 査 で は 、 異 文 化 接 触 前 と異 文 化 接 触 後 で は
事 前 研 修 を受 け て い な い学 生 の 異 文 化 接 触 後 の不 安 内容
不 安 内 容 が 異 な る結 果 が 現 れ た 。 ま た 、事 前 研 修 を受 け
は、事 前 研 修 を受 け た学 生 の 得 た 情 報 の レベ ル か ら現 れ 、
た 学 生 と受 け て い な い 学 生 との 間 に も異 文 化 適 応 状 況 に
解 決 に 時 間 が か か っ て い る 。 例 え ば 、気 候 や 生 活 環 境 の
違 い が 現 れ た。
違 い 、 生 活 習 慣 の違 い(チ
は じめ に、 異 文 化 接 触 前 の 心 理 的 不 安 内容 に 関 して 、
の 両 替)、交 通 機 関 等 の よ う に基 本 的 な もの が 大 半 を 占め
聞 き取 り調 査 の対 象 で あ っ た13名 中9名 が 「英 語 が 通 じ
た 。 僅 か な が ら、「他 の外 国 人 留 学 生 と接 触 が な く孤 立 し
る か ど うか 」、「英 語 で 自分 の考 え が 伝 え られ る か ど うか 」
た」、 「ホ ス トフ ァ ミ リー か ら注 意 を受 け る こ とが 多 く何
を心 配 で あ った と答 え て い る 。 ま た5名
も言 え な くな っ た 」 とい う例 も見 られ た 。 以 上 の 結 果 か
の学 生 は英 語 と
ップ 、 公 衆 電 話 の 使 用 、 紙 幣
い う言 語 の 心 配 で は な く 「ホ ス トフ ァ ミ リー と仲 良 くで
ら、 異 文 化 接 触 前 と接 触 後 の 心 理 的 不 安 内容 が 異 な る上
き るか 」、「性 格 が 合 うか 」、「自分 を受 け入 れ て くれ る か 」
に、 事 前 研 修 の 有 無 に よ り、 そ の不 安 内 容 は さ ら に大 き
一40一
く変 化 す る こ とが 明 らか に な っ た 。
意伝 達能 力、
b.価
最 後 に、 言 語 運 用 能 力 以 外 の 点 で 異 文 化 接 触 時 の 適 応
力、
f.相
値 判断抑制 能力、
d,感
情移入 能
過 程 に 焦 点 を 当 て て い た と こ ろ 、13名 中5名 が 、 ホ ス ト
語 を理 解 で き る上 に 、様 々 な状 況 に お け る適 切 な 言 語 表
フ ァ ミ リー との会 話 や 語 学 研 修 の授 業 中 に 自国 の 現 状 や
現 を理 解 で き る能 力 を意 味 す る こ とに な る とい わ れ て い
互 交 流 管 理 能 力 、に は相 手 と の 間 の 共 通 の言
歴 史等 を聞 か れ 説 明 で きな か っ た こ と を挙 げ て お り、 語
る 。 こ の た め に 日本 人 学 生 が 日本 語 を使 用 した場 合 と、
学 とは 異 な る基 礎 知 識 の学 習 が 必 要 で あ っ た こ と を感 じ
英 語 を使 用 した 場 合 とで は 能力 に大 きな 違 い が 出 る こ と
て い た 。 これ は、 前 述Ⅴ-1の
が 指 摘 さ れ て い る。 そ こで 本 調 査 で は 、 比 較 的使 用 言 語
図3の 項 目に も合 致 して
い る。
に大 き な違 い が 見 られ な い と推 測 さ れ る c.知
ま た 、2名 の 学 生 は、 日本 で は ほ とん ど積 極 的 に話 す
能 力 と、
g.状
こ とが で きな い 性 格 で あ っ た の に、 異 文 化 に触 れ た 途 端
使 用 の 能 力 の差 を考 慮 に 入 れ な が ら も、 異 文 化 接 触 時 に
に 自分 か ら積 極 的 に 話 す よ う に な っ た と述 べ て お り、 明
学 生 が確 実 に重 要 とな る と考 え られ る d.感
識運用
況 即 応 能 力 に焦 点 を当 て 、さ ら に、言 語
情移 入能
るい 性 格 に な った よ う な気 が した と表 現 して い た 。 少 数
力 に つ い て の3つ の 能 力 に 焦 点 を当 て て考 察 して い くこ
回 答 で は あ る が 性 格 が 変 わ っ た よ う な言 動 が 現 れ る こ と
と とす る 。
に 関 して は 、 異 文 化 接 触 時 に お け る特 記 す べ き傾 向 で あ
「知 識 運 用 能 力 」は 、 もの の 見 方 、 知 識 ・感 情 の表 現 の
る。
仕 方 は文 化 に よ っ て 異 な る こ と を 理 解 で きる 能 力 の こ と
で あ り、基 礎 知 識 を表 現 で き な い場 合 は異 文化 に適 応 す
Ⅳ
.考 察
る 十 分 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンが とれ な い とい う結 果 が あ
母 国 語 使 用 頻 度 か ら学 生 の不 安 感 を考 察 す る と 、 か つ
らわ れ て い る。 つ ま り、Ⅴ-1の
図2お
よび 図3か
ら異
て か ら批 判 の 対 象 と な っ て い た 「日本 人 学 生 が 集 団 で 海
文 化 間 で 行 わ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンで は そ の 背 景 とな
外 研 修 に行 っ た場 合 に 日本 人 同士 が 集 ま っ て 日本 語 使 用
る 文 化 や 歴 史 、 現 状 を 表 現 で き な い こ とが 原 因 で 、 相 互
して い る傾 向 」(鳥 飼,1996)3)は
、今 回 の 調 査 にお い て
の 意 見 交 換 が で き な か った こ と を学 生 は 認 知 して い る 。
は現 代 で も変 わ っ て い な い こ とが わ か る。 ま た 、 聞 き取
ま た 、 感 情 の 表 現 方 法 が わ か らず 、 十 分 に意 思 を伝 え ら
り調 査 で は 、 「ホ ス トフ ァ ミ リ ー と少 し英 語 を使 う だ け
れ ず に あ き らめ て しま うケ ー ス も あ る 。 前 述 の 聞 き取 り
で 、 そ れ 以外 は 日本 人 と共 に 週 末 の ツ ア ー に参 加 し独 力
調 査 で も 同様 の 結 果 が あ ら わ れ て お り、 語 学 とは 異 な る
で 公 共 の機 関 を利 用 す る こ と は な か っ た 」 と回答 して い
感 情 表 現 の違 い や もの の 捉 え方 の 違 い を認 識 し対 応 で き
る学 生 が7割
近 く存 在 して い た 。 日本 語 を頼 り、 日本 人
る こ とが 大 切 で あ る。 また 、 「感 情 移 入 能 力 」は 、相 手 の
に頼 っ て生 活 して い る学 生 の 環 境 か らは 、 不 安 感 や 自 立
立 場 に 立 っ て考 え る こ とが で き る能 力 で あ るが 、 日本 人
心 とい う もの は 、依 存 に よ って 芽 生 え な か っ た もの と考
学 生 の 言 動 を ま と め て み る と、 自分 た ち の 行 動 で 精 一 杯
え る。 異 文化 体 験 を 名 目に 、 自己 責 任 の な い旅 行 気 分 の
で あ り、 ホ ス トフ ァ ミ リー や 他 国 の 隣 人 、 身近 な 人 々 を
楽 しみ は 達 成 さ れ る で あ ろ うが 、 自立 、 独 立 、 責 任 、不
気 遣 った り配 慮 が で き る心 の ゆ と りは な か っ た よ う に思
安 とい う一 連 の つ な が りが 、 集 団 とい う枠 に制 限 さ れ 発
わ れ る。 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 基 本 で あ る相 手 を理 解 し
展 が 見 られ なか っ た よ うに 思 われ る 。
よ う とす る行 為 が 行 わ れ て お らず 、 近所 の 人 や ク ラス の
さ ら に 今 回 の 調 査 か ら、 学 生 の 異 文 化 コ ミ ュ ニ ケ ー
人 に は 、 聞 き流 して 済 ませ た とい う 回 答 もあ り、 自分 に
シ ョ ンに お け る心 理 的 な不 安 の 原 因 を分 析 す る と、 英 語
関 わ る 一 人 一 人 の 立 場 や 気 持 ち を考 え る行 動 が で き て い
そ の もの の 語 学 レベ ル は必 然 的 に 問 わ れ るが 、 語 学 の レ
た よ う に は捉 え ら れ な い 。 ま た 、 理 解 しよ う とす る気 持
ベ ル の み な らず 、 異 文 化 適 応 に 関 係 す る コ ミ ュ ニ ケ ー
ち を 持 っ て い た と して も、 そ れ を上 手 に表 現 で き る能 力
シ ョ ン能力注5)が 重 要 な要 因 で あ る こ とが わ か る 。
が磨 か れ て い ない 可 能 性 が 高 い こ とが 考 え られ る。 さ ら
ル ー ベ ン(Ruben,1976)4)は
、 コミュニケ ー シ ョン
に 、「状 況 即 応 能 力 」 に 関 して は 、未 知 の 状 況 に神 経 質 に
能 力 に 関 し て、異 文 化 適 応 に関 係 す る7つ の 能 力 注6)を抽
な っ た り、 不 安 を抱 い た りせ ず にす ば や く適 応 で き る 能
出 して い る。 そ れ ら はa.敬
力 で あ り、 ま さ に現 代 の 学 生 に兼 ね備 え て ほ しい 柔 軟 性
抑 制 能力 、c.知
意 伝 達 能 力 、b.価
識運用 能力、
d.感
役 割 行 動 能 力 、f.相
値判 断
の あ る能 力 とい え る 。 心 理 的 な 不 安 感 を引 きず り過 ぎた
情移入 能力、
e.
互交 流管理 能力、
g.状
況即応 能
り、 異 文 化 適応 が で きず に帰 国 す る 学 生 の傾 向 は、 他 の
力 で あ る。 しか し、 ニ シ ダ(Nishida,1985)`)は
、米 国
学 生 に比 べ 多 くの 項 目 に対 して 不 安 感 を示 して い た こ と
に短 期 滞 在 した 日本 人 学 生 を対 象 に 調 査 した結 果 か ら、
か ら、状 況 即 応 能力 が 低 い 傾 向 が あ る こ とが 考 え られ る。
ル ー ベ ン の 提 唱 した7つ
こ れ らの 不 足 傾 向 の あ る諸 能 力 を 身 に つ け る に は 、 学 生
の 能 力 は適 切 に 機 能 し て い な
か っ た と指 摘 して い る。 そ の 理 由 と して 、 滞 在 期 間(短
の心 理 的 な不 安 原 因 を確 認 し把 握 しな が ら、 多 くの 可 能
期 滞 在)や 能 力 そ の もの の 問 題 を指 摘 して お り、a.敬
性 に 対 処 で き る能 力 を 日 ご ろ か ら養 い つ つ 、異 文 化 適 応
一41一
能 力 の基 本 的知 識 を積 み 上 げ て い くこ とが 必 要 で あ る と
理 的 不 安 内 容 が 異 な る とい う事 実 と詳細 が 明 らか に な っ
考 える。
た 。 ま た 、事 前 研 修 の 有 無 に よ りこ れ らの 不 安 内 容 が さ
ま た 、 異 文 化 適 応 時 の 変 化 と して 、 前 項 の 聞 き取 り調
査 の 結 果 で2名
ら に大 き く変 化 す る とい う側 面 も 明確 に な った が 、 事 前
の 学 生 が 、 日本 で は積 極 的 に 話 す こ とが
研 修 は 自力 で 訪 問 国 や 異 文 化 を理 解 し よ う とす る動 機 付
で き な い 性 格 で あ っ た の に 、 異 文 化 に触 れ た 途 端 に コ
け に な っ て い る た め 、 心 理 的不 安 原 因 を探 る 上 で も重 要
ミ ュニ ケ ー シ ョ ンが と れ る よ う に な り自分 か ら話 す よ う
な役 割 を果 た して い る こ とが 分 か る。 学 生 の不 安 内 容 が
に な っ た と述 べ て お り、 明 る い 性 格 に な っ た よ う な気 が
どの 範 疇 で あ る か を 自覚 させ 、 い か に対 応 すべ きか を学
した と回答 して い る 。 今 回 の 調 査 で は 少 数 で あ るが 、 大
生 本 人 に考 え さ せ る時 間 を設 け る こ とが 研 修 に対 す る大
変 興 味 深 い変 化 で あ り、 ま た 、 一 般 的 に は しば し ば見 ら
きな モ チ ベ ー シ ョ ン に な っ て い る とい え る。 ま た 、 調 査
れ る 傾 向 と もい え る 。 日本 人 は 英 語 を使 用 して話 をす る
結 果 か ら鑑 み て今 後 は事 前 研 修 の あ り方 を ホ ー ム ス テ イ
と き、 日本 人 同 士 ま た は 、 外 国 人 と話 す 場 合 で も周 りに
の 情 報 や 出 入 国 方 法 の 情 報 提 供 に執 着 せ ず 、 目的 意 識 を
日本 人 が 数 人 い る ケ ー ス で は 、 英 語 の 間 違 い を恐 れ 、 発
明 確 に させ る た め の 問 題 提 起 を しつ つ 、 自 国 と訪 問 国 の
音 を気 に し、話 し出 そ う と し な くな る 傾 向 が あ る。 ま た 、
基 礎 知 識 を各 自 に再 認 識 させ る時 間 を与 え ら れ る よ う な
外 国 人 の 中 に1人
で も 日本 人 の知 り合 い が い る と感 じる
方 向 に 進 む よ う検 討 し続 け る こ とが 望 ま しい と思 わ れ
と、 自己 開 示 もで きな くな る傾 向 が あ る 。 これ は 間 違 え
る 。 特 に学 生 が 海 外 の 団体 旅 行 と同等 に捉 え、 疑 問 や不
る行 為 を恥 ず か しい と感 じ、 沈 黙 は金 とい う思 想 を持 ち
安 を持 たず に大 学 の 海 外 研 修 に加 わ る こ と は避 け られ る
(金 田 一,1975)6)、
構 造 が な りた ち(成
周 囲 に 対 して 「甘 え 、 察 し」の 心 理
毛,1989)7)、
英 語 と い う言 語 を 運
用 で きな い と劣 等 感 を持 つ(鳥 飼,1996)8)と
い うさま
べ きで あ り、 短 い期 間 で 得 られ る情 報 量 は 各 個 人 の 問 題
意 識 に大 き く左 右 さ れ る こ と を学 生 自身 が把 握 す る必 要
が あ る と考 え る。
ざ ま な 日本 人 特 有 な現 象 を裏 付 け て い る。 しか し外 国 人
の 中 に 日本 人 が1人
で入 る と、 恥 ず か しさ は 消 え 、 自分
Ⅶ
.ま と め
な りの説 明 を し よ う と努 力 す る傾 向 が あ る 。 また 、 必 要
現 代 の 学 生 は 英 語 に触 れ る機 会 が 多 く情 報 量 が 豊 富 な
以 上 に テ ン シ ョ ンが あ が り普 段 と異 な る 自分 を出 して い
上 に 、 長 年 の英 語 教 育 も実 践 が重 視 さ れ る よ う に な っ た
る場 合 も多 い 。 日常 生 活 か ら離 れ た異 文 化 に 自分 は溶 け
た め 、 か つ て の よ う に対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンに お い て
込 ん だ と感 じ、 異 文 化 適 応 した 普 段 と異 な る 自分 を発 見
消 極 的 な者 注7)は少 な い と思 わ れ が ち で あ る。 しか し、
し た よ う に 感 じ る 人 も い る。 こ れ ら は 、 バ ー ガ ー
今 回 の調 査 結 果 を見 る と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 の基 盤
(Berger,1979)9)が
中心 とな って 提 唱 した 不 確 実 性 減
少 理 論(Anxiety Uncertainty Management Theory)が
と な る基 礎 知 識 や常 識 が 欠 け て い た こ とが 原 因 とな り、
学 生 が 思 う よ う に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を とれ ない で い る
関係 して い る と思 わ れ る 。 人 間 関 係 の 親 密 度 か らみ た 諸
傾 向 が み られ た 。 必 ず し も、 現 代 の学 生 が コ ミ ュ ニ ケ ー
段 階 、 つ ま りエ ン ト リー ・フ ェ イ ズ(人
段 階)、 パ ー ソナ ル ・フ ェ イ ズ(個 人 化 す る段 階)、 エ キ
シ ョン に積 極 的 で 十 分 に実 践 が 伴 っ て い る とは い え な い
一 面 で あ る。 学 生 は異 文 化 に 適応 す る た め に 、 英 語 運 用
シ ッ ト ・フ ェ イズ(人
能 力 だ け で は な い 状 況 把 握 の 能 力 や 感 情 を伝 え る 力 、 基
間 関係 の 始 ま る
間 関係 の 壊 れ る段 階)の
現 象 を解
明 す る た め に 、 第 一段 階 で あ るエ ン トリー の 段 階 にお い
礎 知 識 な どが 必 要 で あ る こ と を感 じ と っ て い た 。 「察 し」
て 、不 確 実 性 とい う概 念 を 中心 に構 築 され た もの で あ る。
の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンか ら 「語 る 」 こ と に重 きを お く国
知 ら ない 人 同 士 が 会 っ た と きに不 確 実 な 部 分 を減 少 させ
際 社 会(北
る行 為 、つ ま り知 らな い 部 分 を埋 め て い く とい う過 程 で 、
養 う必 要 が あ る の か を知 る 手 が か り とな った の で は な い
不 確 実 性 を減 少 させ る ス トラ テ ジ ー が あ り、 受 動 的 、 活
か と思 わ れ る 。
動 的 、相 互 作 用 的 の3つ が あ る とバ ー ガ ー9)は 説 明 して
また 、 事 前 研 修 の あ り方 が 学 生 の 心 理 的不 安 内 容 を変
い る。 こ の不 確 実 性 を減 少 させ る要 素 は 、 日本 人 同士 や
え る とい う結 果 か ら 、 そ れ ぞ れ の 大 学 で事 前 研 修 の 見 直
知 り合 い で あ る場 合 の 要 素 と、 全 く知 ら な い土 地 で 知 ら
しが 十 分 に行 わ れ る事 を 願 う の と同 時 に 、研 修 の 動 機 付
な い 人 と接 す る異 文 化 の 状 況 で は要 素 が 異 な る 。 前 述 の
け で あ る 第 一 歩 が 国 内 で 始 ま っ て い る こ とを再 認 識 し な
学 生 が 積 極 的 に話 し明 る い性 格 に な っ た と感 じた の は 、
け れ ば な ら ない と考 え る 。 学 生 の 実 態 調 査 を 通 して 、 現
出,1997)10)に
対 応 す る に は 、 ど ん な 能力 を
エ ン ト リー ・フ ェ イ ズ にお い て 、 活 動 的 ・相 互 作 用 的 ス
行 の 海 外 研 修 の あ り方 を見 直 す きっ か け に な る こ と を期
トラ テ ジ ーが 施 さ れ た もの と思 わ れ る。 一 方 、 母 国 の 生
待 して い る 。
活 で は 受 動 的 ス トラ テ ジ ー が 強 か った の で は な い か と考
え られ る 。
謝 辞
最 後 に 、 本 調 査 で は異 文 化 接 触 前 と異 文 化 接 触 後 で 心
本研 究 は平 成16年度 青森県 立保健大学健康科 学特別研
一42一
究 費 の助 成 を受 けた研 究 結 果 の一 部 であ る こ とを付 記
tional Journal of Intercultural
Relations,
し、 調 査 に ご協 力 くだ さ っ た 学 生 の 皆 様 お よび 海 外 研 修
6)金
田 一 春 彦:日
担 当 の 先 生 方 に深 く感 謝 申 し上 げ ます 。
7)成
毛 信 男:Human Communication Studies.桜
(受 理 日:平 成18年5月25日)
注1)IIE「OPEN DOORS」
各2002年
教 育 ビ ュ ー ロ ー)2001年
注2)自
飼 玖 美 子:異
せ な い か.丸
注
9 ) Berger,
、中 国 教 育 部 及 びOECD「Edu-
cation at a Glance」
版 、
CBIE(カ
1985.
談 社,1975.
門
書 房,1989。
8)鳥
本 人 の 言 語 表 現.講
9,
ナダ国際
主研 修 の 中 に は 、 ク ラ ス単 位 で 時 間 は 設 け られ
て い な い が 、 課 題 を 受 け て 各 自 が 取 り組 む 形 態 も含
善 ラ イ ブ ラ リ ー,1996.
C. R. : Beyond initial interactions. In
H. Giles & R. St. Clair (Eds. ) , Language and Social
Psychology.
版 に よ る。
文 化 を こ え る英 語 − 日本 人 は なぜ 話
10)北
出 亮:日
Oxford, UK : Basil Blackwell, 1979.
本 人 の 国 際 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン.近
代文
芸 社,1997.
ん で い る。
注3)多
発 テ ロ 事 件 が 起 き た1年
ま た は2年
参 考文献
後の研修 と
な っ た 学 生 か ら、 飛 行 機 事 故 や 現 地 の トラ ブ ル を心
Ruben, B. D. & Kealey, D. J.: Behavioral assessment
配 して い る 回 答 が あ っ た 。
of communication
注4)学
cross-cultural
生 は多 発 テ ロ を漠 然 と した恐 怖 とい う意 味 で答
え て お り、 自分 な り の 考 え や 具 体 的 な 地 域 を 挙 げ た
回 答 で は な か っ た 。
注5)本
調 査 にお け る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン 能 力 と は 、 自
分 と相 手 の 間 で 意 思 疎 通 が で き会 話 が 続 く状 態 を 表
し 、一 方 的 な 情 報 伝 達 に な ら な い 状 況 を 示 し て い る 。
注6)Ruben, B. D.(1976). Assessing cornmunication
competency for intercultural adaptation.の
中 で、
コ ミュ ニ ケ ー シ ョン能 力 に関 す る 調 査 ・
研 究 と して 、
異 文 化 適 応 に 関 係 す る7つ
の 能 力a.Display of Re-
spect, b. Interaction Posture, c. Orientation Knowledge, d. Empathy, action Management, e. Role Behavior,f. to
Inter-
g. Tolerance of Ambiguityを
抽 出 して い る 。
注7)バ
ー ン ラ ン ド(1975)は
日本 人 の 学 生 に 対 す る 意
識 調 査 を行 い 、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンか ら見 た 日本 人
の プ ロ フ ィ ー ル を 「遠 慮 す る ・改 ま っ て い る ・黙 り
が ち ・用 心 深 い ・つ か み ど こ ろ が な い ・真 面 目 」 の
順 で 報 告 して い る 。
引用文 献
1)マ
ツ モ ト ・デ ー ヴ ィ ッ ド:日
本 人 の 国 際 適 応 力.本
の 友 社,1999.
2)宗
像 恒 次:海
外 生 活 者 の メ ン タ ル ヘ ル ス.法
研,
1994.
3)鳥
飼 玖 美 子:異
せ な い か.丸
4) Ruben,
文 化 を こ え る 英 語 − 日本 人 は な ぜ 話
善 ラ イ ブ ラ リ ー,1996.
B. D. : Assessing communication
tency for intercultural
zation Studies,
1(3)
adaptation.
Group and Organi-
, 334 —345, 1976.
5 ) Nishida, H. : Japanese intercultural
competence
compe-
and cross-cultural
communication
adjustment.
Interna-
一43一
competency
adaptation.
cultural Relations,
3,
and the prediction
of
In terna tional Journal of Inter21—22, 1979.
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