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(3)法学研究科
c.将来の改善・改革に向けての方策 修士課程志願者数を増やすための改善策として,「学部修士 5 年一貫制」が考案されているに もかかわらず,その検討が学部教授会で進まない理由を考える必要があろう。そのひとつに,国 立大学法人の大学や一部私立大学では当然のこととされている,学部長が大学院研究科長でもあ るという制度が,本学で実施されていないがゆえに,大学院研究科執行部と学部執行部との間で コミュニケーションが必ずしもうまくなされていないという理由があるかもしれない。 学部運営や大学院運営の日常的業務に当る者が,過度の負担を抱え込まず,しかも学部と大学 院の両方を統一的に見通す運営を可能にするような新しい制度作りが必要かもしれない。その際 には,単に教授会としての一体性だけでなく,学部学生と院生との連携をも可能にするような制 度と物的条件が必要である。 その一方で,大学院進学者の数を増やし,しかもその質を向上させるための方策が何か,とい う問題を考えなければならない。こうした議論を教授会構成員全員で行うことは,大学院教授会 構成員が 46 人に達し,学部教授会構成員が 70 人に達するという規模の組織では,非常に難しい。 教授会構成員一人一人の知恵を誘発しつつ,スピーディで実行力のある意思決定と実行能力を発 揮できるような新しい組織形態が必要である。その際には,意思決定を行う者が少数になること によって,構成員一人一人のモラルと実行力を阻害するかもしれないという恐れを克服できる仕 組みを考案することが必要である。 (3)法学研究科 1)学生募集及び入学者選抜の方法と他大学に対する門戸開放状況・定員管理の適切性 (学生募集方法,入学者選抜方法・学内推薦制度・門戸開放・飛び入学・社会人の受け入れ・外 国人留学生の受け入れ・定員管理) a.現状の説明 法律学専攻では,入学生,卒業生ともに,入学定員数(修士 20 名,博士 5 名)の関係もあって, 大学院生の数はそれほど多くはない。修士課程の入学者数は 2001 年度 18 名(うち法曹コース 12 名),2002 年度 12 名(うち法曹コース 2 名),2003 年度 9 名,2004 年度 8 名,2005 年度 4 名と 減少傾向である。また,博士課程の入学者数は 2001 年度 3 名(うち自校出身者 2 名),2002 年 度 2 名(すべて自校出身者),2003 年度 0 名,2004 年度 1 名(すべて自校出身者),2005 年度 1 名(すべて自校出身者)と,小規模でほとんどが自校出身者という現状である。 なお,入学に際して成績優秀者等に対する学内推薦制度は採用していない。 入学者選抜については,本学出身者のみならず,様々な大学の卒業生から志願されており,そ の中から審査を経て入学を許可している。 審査内容は,修士課程研究コースが外国語・専門科目試験と口述試験により,博士課程後期課 程が受験論文審査と外国語試験・口述試験によることになっている。2005 年度入試結果では,志 願者 16 名(うち自校出身者 9 名),受験者 14 名(うち自校出身者 9 名),合格者 6 名(うち自 校出身者 5 名),入学者 4 名(すべて自校出身者)であった。 法律学専攻では,「飛び入学」制度による受け入れは行っていない。かつて社会科学研究科法 5-123 律学専攻法曹コースで,1998 年度∼2001 年度まで本学法学部 3 年次在学生を対象とする「飛び入 学」による受け入れを実施したが,法科大学院の開設に合わせて法曹コースは 2002 年度から募集 停止となった。また,社会人学生用の特別募集枠は設置していない。 海外からの留学生や研修生の構成比率は高いとは言えず,修士課程では過去 5 年間において 2002 度に 12 人中 2 名が入学しただけである。一方,博士課程では入学者数が少ない現状に比す ると高くなっている(2001 年度 3 名中 1 名,2004 年度 1 名中 1 名)。他大学・大学院学生への門 戸開放も行っていないのが現状である。 収容定員比率は修士課程で 0.70(入学定員 20 名,収容定員 40 名,学生数 28 名),博士課程 で 0.60(入学定員 5 名,収容定員 15 名,学生数 9 名)である。2003 年度の法曹コースの募集停 止,2004 年度の法科大学院開設に伴い,修士課程の志願者数並びに入学者数が減少し,収容定員 比率も低下傾向にある。 b.点検評価,長所と問題点 専攻分野における研究能力の涵養を目指した教育を行うという点では,入学定員に固執するこ となく,一定の基礎知識と質を前提とした現在の選抜方法に大きな問題点は見当たらない。また, 収容定員並びに現状の在籍学生数も,少人数教育による丁寧な教育指導が必要な大学院教育とし ては,概ね適切であると認識している。 ただし,入学者の多くが本学出身者であり,海外からの留学生や研修生も少ない。法律学とい う学問分野の特性から,多数の留学生が在籍することや,他大学との交流を主要な特色にするこ とは考え難いが,ある程度の充実を模索することが今後の課題である。社会人の受け入れにも積 極的な対応をとっておらず,実務経験者の視点からの発想・考察が活かされる機会もない。総じ て,多様なバックグラウンドをもった学生の交流による刺激が少ないのが現状である。 また,法科大学院開設に伴う,法律学専攻の収容定員比率の低下傾向そのものは,今後も続く ものと予測される。修士課程における法曹教育の役割が法科大学院に移行した結果とは言え,志 願者・定員比率の低下に一定の歯止めをかけるためには,現代社会における研究コースとしての 特徴・役割をより明確に示し,かつ,上記のようにより広く学生を集める工夫が求められよう。 c.将来の改善・改革に向けての方策 募集方法については今後一層の充実と新たな取組みが必要であり,現在少ない海外からの留学 生や研修生もターゲットとして工夫すべきである。アジアを中心に海外の企業人が日本の法律学 を研修する機会を提供するために,海外企業との提携なども考慮されてよいだろう。 今後,法科大学院修了者の中からも,博士課程進学を希望する者が出てくることが予想され, 一定の学生数レベルを確保するためにも,その受入れを積極的に検討しなければならない。前述 の通り,現行の選抜方法では,従来の修士課程修了者を想定して専攻科目に関する主題を学術的 に探求した受験論文の提出と 2 ヶ国語の外国語試験が要求されているが,法曹教育を旨とする法 科大学院の教育システムの性質上,論文作成や外国語習得の機会を十分にもつことのできない同 修了者に対しては,別途に,適正な選抜条件を設定することが早急に求められる。 5-124