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モバイルビジネスソリューション向け SOA 統合ツールキットの開発
モバイルビジネスソリューション向け SOA 統合ツールキットの開発 ― 携帯電話用自動ソフトウェア生成ツール ― 1.背景 国内キャリア合計契約数がおよそ9千万にも達し、完全に飽和したかに見える携帯電 話市場において、法人契約はその1割程度にとどまっている。 その大きな理由のひとつに、音声通話以外の法人向けアプリケーションが十分に普及し ていないことが挙げられる。携帯電話を利用した法人向けアプリケーション市場で KDDI 株式会社が採用している CDMA 通信機器向けのアプリケーションプラットフォーム BREW®は、アプリケーションの開発を主に C 言語で行い、携帯電話の CPU 上で動作す るため非常に高速で、メモリやファイルシステムをはじめとする携帯電話の機能をフルに 活用することができるが、NTT ドコモ社やボーダフォン社の携帯電話アプリケーションプ ラットフォームである Java よりも開発が難しいと言われている。 KDDI 社は、BREW 環境下でのアプリケーション開発が難しいとの要求に答え、 BREW 用ビジネスミドルウェア『お役立ちツールセット』を提供している。『お役立ちツー ルセット』は、携帯電話としては世界で初めて、高機能でオープンな国際標準プロトコル である SOAP(注1)に対応しており、既存の業務システムとの連携コストを飛躍的に低 減させた。また最新の設計思想 SOA(注2)に対応するビジネスアプリケーション向け開 発基盤機能も用意している。KDDI 社はこれらミドルウェア群を同社の MSP 制度の(注 3)中で無償配布しており、MSP の登録企業は現在約 1000 社にのぼる。 ただし、『お役立ちツールセット』によって SOAP 環境及び SOA に対応する開発基盤 機能は用意されたが、SOA のインターフェイス記述仕様書である WSDL(注4)への対 応など、その開発環境までは整備が不完全となっているのが現状であり、早急な整備が 望まれている。 2.目的 本プロジェクトは、『お役立ちツールセット』の不整備部(WSDL への対応と、その開発 環境)の補完により BREW 環境下の開発効率を上げることを目的とし、携帯電話上で動 く業務アプリケーションと、Web サービス(注 5)間の連携プログラムを WSDL の定義情 報より解析し、Web サービス連携部ソースコードとして自動生成するツールを開発し、 BREW アプリケーションの開発ベンダ向け製品として事業化を目指す。 3.開発の内容 (開発したソフトウェアの動作環境、構成、機能等を図等を使用して記述) BREW 環境における Web サービスに連携する法人向け携帯電話アプリケーションは、 業務アプリケーションと、Web サービス連携部(Web サービスとの通信連携プログラム)と BREW 用ビジネスミドルウェア「お役立ちツールセット」で成り立つ。 1/4 従来は、開発者自身が WSDL を解析して Web サービス・サーバ上で動くアプリケーシ ョンとの間の Web サービス連携部プログラムを開発する必要があったが、本プロジェクト では WSDL の解析から Web サービス連携部の生成までを自動化する「SOA 統合ツール キット(製品名:CopperTank for BREW®)」を開発した。 ソースコード 自動生成 Web サービスサーバ 開発したソフトウェアは、以下の環境で動作する。 ・ハードウェア CPU:Pentium III 600MHz 相当以上 HDD: 5.0GB 以上の空き容量 メモリ:256MB 以上 ・OS Windows XP Professional 以降 ・実行環境ソフトウェア VisualStudio.NET 2003 Qualcomm 社提供(フリー):BREW SDK3.1 KDDI 社製:お役立ちツールセット 本ソフトウェアは、WSDL の解析から Web サービス連携部ソースコードの生成までを 自動化する BREW 用 Web サービス連携部ソースコード自動生成ツールであり,以下の パートから構成されている。 (1) WSDL 処理部 Web サービス・サーバ上で稼動しているアプリケーションとのインターフェイス(以下 Web サービス・インターフェイス)を定義する WSDL(XML 形式)から WSDL 解析情 報(C++言語構造体)に変換し、ソースコード自動生成部に渡す。 2/4 (2)ソースコード自動生成部 WSDL 処理部で生成された WSDL 解析情報(C++言語構造体)から Web サービ ス・サーバ上で稼動しているアプリケーションとのインターフェイスのプログラム関数 である Web サービス連携部ソースコードを生成する。 (3)ユーザインターフェイス部(インストーラを含む) VisualStudio.NET に統合され,WSDL の取得からソースコード生成までをウィザ ード形式でユーザにガイドする。 SOA 統合ツールキット((3)ユーザインターフェイス部,インストーラ) Types マネージャ WSDL WSDL 解 析 エ ンジン XML 形式 PF マネージャ WSDL 解析情報 API マネージャ ソースコードジ ャネレータ C++ 言 語 構 造 (1)WSDL 処理部 (2)ソースコード自動生成部 ソフトウェア構成図 Web サービス 連携部ソース コード C++言語 新規開発 4.従来の技術(または機能)との相違 (開発したソフトウェアの新規性、類似のソフトウェアと比較した場合の優位性等を記述) WSDL からプログラムインターフェイスを自動生成する技術は、Windows や 企業向け Java プラットフォームでは既に実現されているが、携帯電話プラット フォーム向けのものは非常に少ない。また、開発者が自由に改変できるオープ ンなソースコードとして出力するため、他の製品と比較して開発者にとって利便 性の高いツールとなっている。 5.期待される効果 (開発されたソフトウェアにより、波及的に活性化される技術分野・産業分野等の範囲やその効果を可能な かぎり具体的、定量的に記載) SaaS や SOA など、Web サービス技術が核となる先進 IT 分野において、これまで基盤 技術が遅れていたために連携できなかった、携帯電話プラットフォームの活用が活発化 することが期待される。Web サービス市場は 2008 年までに世界で 110 億ドル規模にまで 急 成 長 す る こ と が 予 想 さ れ て お り ( http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro /USNEWS/20040602 /145288/)、日本では一般消費者向けに完全に普及が完了した 携帯電話市場との相乗効果により、携帯電話によるビジネスソリューション市場の活性が 促進されることが期待される。 3/4 6.普及(または活用)の見通し (開発成果に関する利用者の具体的なイメージ[例えば、利用者数など]を可能な限り定量的に記載) 直接のターゲットとなるユーザ、つまり BREW 携帯電話アプリ開発ベンダは、MSP 登録 企業 1000 社である。KDDI 社はこのうち 300 社への「お役立ちツールセット」の利用促進 を当面の目標としており、本ツールキットにおいてもこれらベンダへの普及を図る。 ただし、本ツールキットのライセンス形態は、開発ライセンスを無償とし、作成された携帯 アプリケーションそれぞれの実行ライセンスを有償としている。つまり、アプリ開発ベンダに は本ソフトウェアを無償提供し、各ベンダが携帯アプリケーションを提供する顧客企業が 本ソフトウェアの最終的な顧客となる。このため、潜在的には、携帯電話によって IT を活 用しようとするすべての企業が本ソフトウェアの市場である。 前節のとおり Web サービス技術が今後加速度的に普及すれば、本ソフトウェアの需要 も必然的に高まることを期待している。 7.開発者名(所属) (*○○太郎(情報処理推進機構 戦略企画部)) 株式会社テクノフェイス 研究開発部 (参考:製品ページ) http://www.technoface.co.jp/coppertank/ 注1) SOAP:「Simple Object Access Protocol」インターネット上にある Web サービスを利用する方 法を定めた XML ベースの標準通信プロトコル。 注2) SOA:「Servuce Oriented Architecure」サービス指向アークテクチャ システム全体を「サービス」と呼ぶ部品の集合体とみなし、関連性のある複数のプログラムや コンポーネントを「サービス」として部品化する設計思想。 注3) MSP 制度:「モバイルソリューションパートーナ制度」KDDI 社が BREW アプリを用いたモバイ ル・ソリューション事業を展開する企業を支援する制度。 注4) WSDL:「Web Service Description Language」SOAP・Web サービスを記述するための、XML を ベースとしたデジタル的な仕様書。Web サービスの機能やそれに対する要求の記述方法が 定義されている。 注5) Web サービス:インターネット上のコンピュータのアプリケーションが持つ一単位の業務処理 機能。 注6) SaaS:「Software as a Service」ソフトウェアはパッケージやシステムとして保有したり構築する ものではなく、インターネット等を通じてサービスとして機能の提供を受けるという考え方。ユ ーザは必要機能以上のコストを支払う必要はなく、メンテナンスからも解放される。 4/4