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確定拠出年金の基礎知識

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確定拠出年金の基礎知識
確定拠出年金の基礎知識
(2)公的年金の仕組み
1階部分は、国民年金または基礎年金といい、20 歳
1.私達の「老後」は大丈夫?
平成 6 年の法改正によって、年金の受給開始年齢が
60 歳から 65 歳に段階的に引き上げられることになり
ました。これは、日本の少子高齢化が他の国に比べて
非常に早いスピードで進んでいることが原因として挙
げられています。
では、なぜ少子高齢化が進むと年金の受給開始年齢
が遅くなってしまうのでしょうか?
また、この受給開始年齢の引き上げという対応だけ
で、私達の年金は将来十分に支払われるのでしょう
以上のすべての国民が加入することとなっており、2
階部分は企業に勤務している従業員が加入する厚生年
金や、公務員が加入する共済年金などがあります。
この公的年金というものは、国が運営している制度
で、「賦課方式」という方法をとっています。
賦課方式とは、現在働いている現役世代が、現在年
金を受取っている老後世代の年金を負担する仕組みと
なっています。つまり、現在、現役世代が支払ってい
る社会保険料は、自分の老後のための積立ではないと
いうことです。
か?
(3)公的年金の課題
このような将来的な不安に対応するための1つの方
この賦課方式という方法は、年金資産の管理コスト
法として、「確定拠出年金」という新しい制度は期待さ
が低く、物価の上昇にも対応できる非常に優れた制度
れています。
で、世界各国の年金制度も概ねこの方式が採用されて
本稿では、確定拠出年金制度の仕組みについて解説
いたしますが、まず始めに「なぜ、確定拠出年金とい
う制度が議論されるようになったのか」という点を考
えてみたいと思います。
います。しかし、日本の少子高齢化が急激に進んでい
るという問題があります。
年金の原資を支払う現役世代は減り続け、逆に年金
を受取る世代が多くなるということは、それだけ現役
世代の負担が増加するということです。
現在は、1 人の老後世代を 4 人が支えているといっ
た状況ですが、
25 年後くらいには 2 人で 1 人を支えな
年 金 ?
退 職 金 ?
老 後 ?
ければならなくなるといった予測もあります。
つまり、このままだと、年金の受給開始時期を引き
上げるだけでは対応しきれず、現役世代が支払う社会
保険料を引き上げるか、老後世代が受け取る年金の受
2.現在の年金制度の課題
日本の年金制度は、大きく「公的年金」と「私的年
金(企業年金等)」に分けられます。
給額を引き下げる、といった方法を取らなければなら
なくなるという可能性があります。
これが、公的年金の大きな課題といえます。
この2つの年金制度は、まったく違う仕組みである
ことから、それぞれの問題点・課題も違ってきます。
では、まず制度ごとの仕組みを理解するとともに、
その課題を考えてみましょう。
(4)私的年金(企業年金)の仕組み
公的年金に対し私的年金とは、個人や企業が、公的
年金の上乗せとして実施する年金制度で、税制上の優
遇などが認められています。
(1)年金制度全体の仕組み
この制度のうち、最大のものが、企業が実施する「厚
日本の年金制度は、図1のとおり、1階から4階ま
生年金基金」と「適格退職年金」という企業年金です。
での部分で構成されており、このうち1・2階部分を
企業年金制度は、公的年金が世代間負担をベースと
公的年金、3階部分を私的年金(企業年金等)といい
する賦課方式であるのに対し、基本的に「積立方式」
ます。
となっています。
つまり、現在、企業や従業員が拠出している資金は、
基本的に今働いている人の分を積み立てているという
ことになります。
では、今後どのような企業年金が求められてくるよ
(5)企業年金の課題
うになるのでしょうか。
この企業年金には、公的年金とは違った課題がでて
きています。
(1)自分の退職金・年金はいくら?
その最も大きな原因が「新会計基準」の導入です。
労働基準法では、従業員 10 名以上の企業はすべて
新聞などでよく目にする「○○企業の積立不足が□億
就業規則を定めなければならないとしており、その中
円」とか「△△企業が積立不足を一括処理した」とい
に退職金規定(この中には年金の規約も定められてい
った記事は、この制度に対応するためのものです。
ます)が定められています。つまり、日本のほとんど
新会計基準の対象となるのは、上場企業や公開企業
の企業に退職金規定があり、退職金・年金に係る規約
のようなある程度規模の大きな企業となりますが、基
が定められている、ということになります。
本的な考え方として、「退職金・年金を給与の後払いと
考えた場合、将来従業員に支払う退職金・年金は企業
しかし、この規約での退職金・年金の定め方は、「退
の(従業員に対しての)債務として認識しなさい」と
職時の給料(退職金算定給与)の○○倍」としている
いう新会計基準の主旨は、今後、中小企業にも求めら
ケースが大半で、具体的に従業員個人ごとの「持ち分」
れてくると予想されます。
を明確にしている規約はほとんどありません。
このように、自社の従業員のための積立が、企業の
つまり、従業員にとっては「自分が退職時に(また
収益に影響するような状況になり、企業の年金に対す
は老後に)いくらもらえるか分からない」=「不安で
る負担が増えた、ということが企業年金の課題といえ
ある」ということになります。
ます。
(2)キーワードは「わかりやすさ」
3.新しい企業年金の考え方
これらの不安を解消するためには、企業は「あなた
前述した公的年金や企業年金の課題に対して、どの
のために、毎月○○円拠出していますよ」「あなたの退
ように対応していくかが、今後の年金の問題を考えて
職金・年金の積立額は○○円になっていますよ」とい
いく上で重要になってきます。
うことを明確にしてあげる方法が考えられます。
従業員の観点から見れば、「公的年金に不安がある
しかし、厚生年金基金や適格退職年金は、年金数理
からこそ、自分が勤務している会社の企業年金が重要
計算という複雑な計算方法を介して、企業全体として
ではないか」ということがいえます。
の年金を管理しているため、個人の持分というものは
図1:日本の年金制度の仕組み
個
人
年
4階部分
金
適格退職年金
国民年金基金
厚生年金基金
3階部分
(職域部分)
共済年金
厚生年金保険
(公的年金)
(公 的 部 分)
国
民
年
金
(
基
礎
年
2階部分
1階部分
金)
明確になっていないので、従業員に対しても「あなた
自営業者
第1号被保険者
公務員等
サラリーマン
第2号被保険者
サラリーマンの妻
第3号被保険者
の分はいくら」ということがいえません。
今回の主題である「確定拠出年金」では、個人の持
広く普及しています。
ち分が明確になっているので、このような観点からも
日本では、確定拠出年金制度を検討するにあたっ
導入を検討する価値がある、ということがいえます。
て、当初、米国の401kプランをモデルとして検
討を行っていたことから、「日本版401k」と呼ば
では、「確定拠出年金」とはどのような制度なのでし
れることもあります。
ょうか。
5.確定拠出年金の仕組み
4.確定拠出年金とは
確定拠出年金(日本版401k)とは、一言でいえ
確定拠出年金の仕組みは、図2のとおりですが、こ
こではポイントのみ取り上げてみましょう。
ば「今まで企業が運用していた年金資産を、従業員が
自己責任の原則に基づいて自ら運用する制度」といえ
ます。
(1)制度の分類
確定拠出年金は、企業が拠出する「企業型年金」と、
このように表現すると、企業側からは「自社の従業
員が、年金資産の運用などできるわけがない」という
個人が拠出する「個人型年金」の2つに大きく分けら
れます。
意見があり、従業員側からは「なぜ企業の運用リスク
を、我々が負わなければならないのか」といった不満
(2)加入できる人
が多く出されます。
○企業型年金…企業の従業員(第2号被保険者)のみ。
しかし、公的年金や企業年金に様々な問題がでてきて
○個人型年金…個人事業主(第1号被保険者)と、企
おり、将来の退職金・年金の支払い(従業員にとって
業年金のない企業に勤務している従業員(第2号被
は受取り)に不安がある状況を考えれば、1つの解決
保険者)。
策として検討する価値がある制度であるといえます。
※公務員およびサラリーマンの妻(第3号被保険者)
は加入することができません。
(注)401kプラントは、米国の内国歳入法という
法律の401k条の(k)項に記載されている税金
(3)拠出
の優遇に関する条文を適用した年金制度で、米国で
○企業型年金…企業のみ年金資産を拠出することがで
図2:確定拠出年金制度の概要
実施者
実
施 実施方法
対象者
加入
加 加入資格
入
拠出主体
拠出限度
(月単位)
拠
出
運
用
給
付
拠出額の決定
拠出限度額管理
拠出先
運用指図
運用方法の種類
運用指図の機会
給付形態
裁定
企業型年金
個人型年金
事業主(複数の事業主による共同実施可)
国民年金基金連合会
確定拠出年金規約の制定
確定拠出年金規約の制定
条件→①労使合意、②厚生労働大臣の承認
条件→厚生労働大臣の承認
従業員(第2号被保険者)
第1号被保険者
第2号被保険者
強制加入
任意加入(国民年金基金連合会に申請)
規約にて規定
①国民年金未加入者は不可
①厚年基金・適年加入者は
新規採用の従業員等、特定の者に加入資格を限定
②国民年金保険料延滞中は
不可
することも可能
拠出不可
②企業型年金加入者は不可
条件→①労使合意、②厚生労働大臣の承認
事業主
加入者
厚年基金・適年を実施していない場合
月間36千円(年間432千円)
月間68千円
月間15千円
(年間816千円)
(年間180千円)
厚年基金・適年を実施している場合
月間18千円(年間216千円)
規約にて規定
任意
事業主
国民年金基金連合会
原則事業主
資産管理機関
国民年金基金連合会
加入者(企業型年金において、個々の加入者の意思に反して一括して運用指図を行うことは不可)
規約にて規定(3方法以上、うち元本相当額が確保されている運用方法が1以上)
規約にて規定(少なくとも3ヶ月に1回以上)
①老齢給付金、②障害給付金、③死亡一時金、④脱退一時金(加入年数3年以下)
資産管理機関
き、従業員(個人)が拠出することはできません。
○個人型年金…個人のみ年金資産を拠出することがで
き、企業が拠出することはできません。
の生活設計が容易になります。
②万一のときでも年金資産は保護される
自分の持ち分として管理している年金資産は、企業
の資産とは別管理になっているので、万一のときでも
(4)運用
企業型・個人型ともに、従業員個人が運用すること
になります。
自分の持ち分は確保されます。
③年金資産を持ち運ぶことができる
中途退職した場合でも、転職先に確定拠出年金制度
があれば転職先に、無い場合でも個人型の口座に資産
(5)給付
を移すことができます。
一時金または年金として受取ることができますが、
死亡・高度障害以外の理由で、60 歳前に自分の持ち分
を払出すことはできません。
7.導入にあたっての準備
新たに確定拠出年金制度を導入する場合、以下のよ
うな準備を行う必要があります。
6.確定拠出年金のメリット(企業型年金)
まず、企業型年金に焦点を絞って考えてみましょう。
確定拠出年金は一見難しそうな制度ですが、企業・
従業員双方に次のようなメリットがある制度です。
①現在の年金制度をどうするかの検討
現在、厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金
を実施している場合、
・その制度を廃止するのか
・一部を残して確定拠出年金を導入するのか
(1)企業(事業主)にとってのメリット
①税制の優遇
企業が拠出する掛金は、すべて損金として計上する
ことができます(ただし、法律で認められている拠出
・既存制度はそのままにして確定拠出年金を上乗せ
するのか
ということを検討する必要があります。
②拠出額の検討
限度額までです。詳細は図2を参照)。
確定拠出年金の拠出金は、
②コスト削減
・定額
現時点では、確定拠出年金に係るコストがどの程度
かかるかが明確になっていないので一概には言えませ
んが、今まで外部の信託銀行や生保会社で、数 10 万
円∼数 100 万円支払っていた年金数理計算が不要にな
・給与比例
・定額と給与比例の合算
のいずれかとなります。
現在の年金制度を勘案しながら、どのように拠出額
ります。
を決定するか検討する必要があります。
③福利厚生のアピール
③労使合意
従業員ごとの持ち分が明確になるので、「会社が従
業員のために、これだけ退職金・年金の資金を拠出し
確定拠出年金の導入にあたっては、労使合意が必要
です。労使合意にあたっては、
てあげている」ということがアピールでき、従業員の
・運用商品をどのように選ぶか
帰属意識を高めることができます。
・運用に必要な知識を習得するためにどのような手
④優秀な人材の獲得
同業他社で確定拠出年金を導入している場合、その
立て(加入者教育)を行うか
などを決める必要があります。
従業員の年金資産をそのまま持ってくることができる
しかし、これらをすべて企業が準備するとなると、
ので、優秀な人材の中途採用などで有利になります。
大変な労力がかかります。このような導入までのコン
サルティングは、取引先の金融機関に相談するのが最
(2)従業員にとってのメリット
も良いでしょう。
①自分の持ち分が明確になる
④運営管理機関の選定
自分の持ち分がはっきりしているので、将来の老後
確定拠出年金では、制度を円滑に運営するための中
立的な機関として「運営管理機関」というものを選定
ている金融機関に相談することをお勧めします。
しなければならないことになっています。
この運営管理機関は、
また、個人事業主の方であれば、国民年金基金との
・制度導入にあたっての相談業務
合算ではありますが、最も大きな拠出限度額(税制上
・運用商品の選定
の優遇額)が認められています。
・従業員への情報提供
個人事業主の方は、企業に勤務している方と違い、
・加入者教育の実施
老後の備えは1階部分の国民年金しかありません。そ
などを行います。
の国民年金も、少子高齢化が進む中で、将来的に現在
つまり、この運営管理機関を選定し、制度導入まで
期待しているだけの年金受給ができなくなる可能性が
のサポートを受けることが、実施までの近道といえま
あることを考えれば、自助努力による老後資金を蓄え
す。
るため、加入を検討するべきであるといえます。
もし、取引先のメインバンクが運営管理機関の業務
を行っているならば、企業の財務状況や体力にあわせ
た制度の構築に協力してくれるはずです。
8.さいごに
確定拠出年金のことについて考える場合、制度の内
私ども常陽銀行におきましても、企業の皆様からの
容だけ検討するよりも、「なぜ、このような制度が必要
ご要望にお応えできるよう、運営管理機関としての準
になってきたのか」という背景をまず考えてみる必要
備を進めております。
があります。
少子高齢化という現象は、数 10 年後の話ではなく、
まずは
運営管理機関に
ご相談を
すでに身近な問題として現れています。私立高校や私
立大学が定員割れして、合格率が1倍を下回っていた
り、廃校に追い込まれているケースも散見されるよう
になってきています。これは数年後に企業が直面する
課題であると考えられます。
このような環境になる前に、「従業員にとって働き
甲斐のある職場とは何か」ということを、企業が真剣
に考えることが、その企業の発展に繋がってくるもの
だと考えられます。
7.個人型年金について
企業によっては、「従業員の老後のために拠出をし
てあげたいが、現時点で新たに資金を拠出をするのは
確定拠出年金を導入することによって、これらの問
題がすべて解決するわけではありませんが、1つの選
択肢として、一度検討すべき課題ではないでしょうか。
なかなか難しい」と考える企業も多いと思われます。
このような場合、個人型年金を従業員に推奨するこ
とが考えられます。
問い合わせ先
個人型年金は、拠出をするのは個人、つまり従業員
ですので、企業の金銭的な負担はありません。企業は、
従業員の拠出希望額を給与天引きでとりまとめ、資産
管理機関と呼ばれる先に送金する事務が発生すること
になります。
従業員にとっては、所得税控除の恩恵を受けながら、
自分の老後の資金を積み立てていくことができるメリ
ットがあります。
この制度の導入にあたっても、運営管理機関となっ
常陽銀行
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業務開発室 甲斐・篠原
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029−300−2842
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