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China: Energy-Climate Policy
地球環境関西フォーラム October 3, 2012 アジア部会 東アジアの環境・エネル ギー政策:到達点と展望 Dr. Akihisa MORI, Kyoto University [email protected] 1 本日の報告の問題意識 • 日本経済の「六重苦」 • • • • • • 円高(韓国ウォン・中国元の通貨安?) 高い法人税 自由貿易地域交渉への出遅れ 日本の製造 業の空洞化? 労働規制 気候変動政策・2020年 年25%排出削減目標 排出削減目標 気候変動政策・ 電力不足・電力料金値上げ • 東アジアは,気候変動政策・エネルギー政 策上のリスクは存在しないのか? • 東アジアが環境・エネルギー政策を持続可 能な方向に改革する推進力は何か? 2 検討の視角 • これまでの環境政策手段を振り返る • なぜ各国で異なる種類の環境政策手段が導入さ れてきたのか? • 今後の環境政策の展開を展望する • 環境・エネルギー政策の収斂・調和? • 分析視角 • • • • • 政治体制 財政規律(徴税に対する受容性) 経路依存性 エネルギー安全保障・気候変動 (外国の)政策の調和と学習 3 東アジアの環境政策の展開 1990: Air and 1991-3: Air, Water, Water Pollution Waste Pollution charges Act South Korea 1982: Pollution Levy China 1996: Total Pollutant Load Control 1992: MOSTE NEQA Revision 2003: Extended Producer Responsibility 2001: Env Spending Target 1997: New Constitution and Admin court Pricing reform 2008: Env Disclosure Act 2002: MONRE and DADE Thailand Indon esia 1989: Clean Water Program 1990 1995: PROPER PROKASIH 2004: PROPER 2000 Laws and Regulation Admin Order 2008: Env Disclosure Act 2010 Env Info Disclosure Tax and Charges 4 政治的制約 • 税・課徴金・料金導入への不賛成 • 選挙での敗北の懸念 財政収入拡大による政府の 裁量の拡大 • 補助金・政府支出拡大への賛同 • 利益団体・市民からの支持を得やすい • 財政持続性への懸念は危機に直面して始め て優先課題に アジア経済危機の経験 5 政治体制と税・課徴金の政治的受容性 権威主義 China Indonesia Vietnam 迎合 主義 税・課徴金 の受容性高 South Korea Thailand Taiwan Philippines Japan 民主主義 6 Govt Env. Expend Ratio to GDP 2.0 % of GDP China Japan (incl Local govt) 1.5 1.0 South Korea Taiwan Japan 0.5 Thailand Indonesia Philippines 0.0 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 Source: Mori, 2012.7 Env. Expend Ratio to Govt Spending % of Govt Spending 9.0 8.0 7.0 6.0 Japan (incl Local govt) China 5.0 Japan 4.0 3.0 Indonesia South Korea Taiwan 2.0 1.0 0.0 Thailand Philippines 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 8 Govt Revenue Ratio 60 Japan (inc Special Account) % of GDP 50 40 Taiwan Japan 30 Indonesia Vietnam South Korea 20 Thailand 10 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 China 2009 9 South Korea: Economic Instruments and Participation • 経済的手段の多用 • 環境庁の財源調達手段として20種類以上の課徴 金(賦課金)を導入,特別会計に編入 • 首都圏大気環境改善特別法 • 4大江水系法 東江ダム 計画白紙化 • 大統領直属委員会の設置 • 持続可能な発展戦略(2000-08年):多数の環 境NGOが民間委員として参加 • 低炭素グリーン成長戦略(2009年-):関係閣 僚及び専門家のみの参加 10 China: Increase Env Expenditure for Stringent Regulation • 目標達成のための規制・執行強化 • 5ヶ年計画で環境目標を設定 • SO2, COD,単位GDP当たりエネルギー消費量 • NOx, 全リン・全窒素・アンモニア性窒素 • 環境目標達成のため,政府部門環境保護投資目 標を設定 • 国有企業の環境汚染防止,都市環境インフラ整 備,植林・森林保護 • 法規制違反企業の生産設備の淘汰+奨励金 • 因果関係の立証責任の転換 • 退耕還林+農民への補償 11 Energy-Environmental China: Energy -Environmental Policy and Program • 発電所の大気汚染政策 • • • • • • 規制・行政 既存の老朽小規模発電所廃止 命令 新規建設の石炭火力発電所の大型化と排煙脱硫 装置設置の義務化 自動連続モニタリング設備の設置 硫黄酸化物を対象とした汚染課徴金の導入 非脱硫発電所よりも高い価格での売電 経済的誘導 排煙脱硫装置の国産化による低価格化 措置 • エネルギー転換 • 天然ガスや地域集中熱供給設備の設置 政府投資 • 西汽東輸・西気東送 12 China: Effective Enforcement • 地方政府の執行の強化 • 地域及び流域での開発許可制限措置の法制化 • 地方政府環境保護局の下に環境監察支隊を配置 • 一票否決制の導入 • 省エネ目標や汚染物質排出総量の目標の達成と地方 政府の指導者の人事評価を結びつける • 環境情報公開による市民の環境監視機能の強 化 • 環境情報公開条例(2009年) • Green Choice AllianceなどのNGOによる圧力 13 China: Environmental Tax • 環境税導入の議論 • 国務院が環境税改革の推進を明記(2011年) • 法案化作業を開始(2012年) 独立の炭素税 • 環境税導入実験 の可能性少 • 湖北省黄石市:排汚費の環境税徴収(2008年) • 新疆・山西省:新資源税改革(2010年) • 湖北省武漢市及び周辺(2012年予定) • 課題 • 環境税徴収の正確さと収入の分配:地方政府の 環境部門vs中央政府の徴税部門 • 地方政府の排汚費減免措置 14 Thailand: (Un)change of Tariff and Institutions • 厳しい規制も価格政策も実施せず • • • • 下水道・埋立処分場の建設 下水処理料金導入の困難 サムトプラカーン汚水処理事業の失敗 工業団地公社による工場廃水監視・PRTRの取 り組み • 憲法では民主主義的権利の強化 • 1997年憲法で行政裁判所を設立 • 2007年憲法第67条でコミュニティの環境保全 手続きへの参加を規定,第2項で健康・環境影 15 響の事前調査と公聴会の実施を義務づけ Thailand: Map Ta Phut Case and Aftermath • 汚染管理地域指定の不指定を職務怠慢として 国家環境委員会と工業大臣を相手に訴訟 • 中央行政裁判所は進行中の76の投資事業の実施 を一時凍結の判決 • 最高行政裁判所は65事業停止の判決(2009 年) • 政府の対応 • 9つのVOCの排出基準の設定,オンライン連続 モニタリングシステムの設置義務化 • 環境影響評価と健康影響評価を行う義務を負う 11業種を指定 16 Thailand: Environmental Tax Proposal • 環境税導入への動き • 「環境管理の経済的手段法案」と「水汚染税 創設の国王布告」 • 環境税基金と環境追徴金(surcharge) • 遅い進捗 • • • • ADB・経済学者主導 環境省と財務省の対立 既存の環境基金と新設の環境税基金 地方政府への配分方式? 17 Indonesia: Weak Env Policy and Confusion • スハルト政権が容認できる範囲での環境政策 • 河川浄化プログラム(PROKASIH) • 企業の環境対策の評価・格付け・公表プログラ ム(PROPER) • 民主化・分権化(1998-99年) • 環境管理権限の地方政府(市・県)への移管 • 上下水道の民営化 • 環境保護と管理法(2009年) • 環境大臣・州知事に企業の開発許可取り消し権 限(義務) 18 Indonesia: PROPER PROPER PROKASHI Gold Gree n Blue BlueRed PROPER May Dec Oct Jan 2002 2003 2004 2006 2008 1995 1995 1996 1997 /03 /04 /05 /07 /09 0 0 0 0 0 0 0 1 1 5 61 5 88 6 121 14 135 8 51 9 112 23 221 46 41 188 170 156 229 46 82 38 48 115 115 80 116 22 87 150 Black 6 5 6 5 4 43 72 45 56 Total 187 213 213 270 85 251 466 516 627 Red- 出所:小島・イヴォンヌ(2012: 149) 19 政治体制・税・課徴金の政治的受容性 と政策手段選択の模式図 権威主義 迎合 主義 規制・命令 +補助金 計画+財 政支出 税・課徴金 の受容性高 情報 公開 自発的な取り組 みを促す手段 経済的 手段 参加・討論 民主主義 20 低炭素・エネルギー政策 Net Energy Imports % of Energy use 100 50 South Korea Japan Philippines Thailand China Vietnam 0 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 -50 -100 Malaysia Indonesia -150 22 GHG Emissions Reduction Targets Nation Target 25% reduction by 2020 compared with Japan the year 1990 30% reduction by 2020 compared with South BAU scenario (4% decrease from the Korea 2005 level) 40-45% reduction per unit of GDP by China 2020 compared to the 2005 level (8.5% reduction compared to BAU in 2020) 0% increase in 2025 compared with the Taiwan year 2000 level 40% reduction per unit of GDP in 2020 Malaysia compared with the level 26% of GHG reduction target by 2020 Indonesia when compared with BAU scenario Obligation Conditional NAMA NAMA NAMA NAMA 23 Energy-Climate South Korea: Energy -Climate Policy (1) • 再生可能エネルギー普及政策 • 固定価格買取制度(2002年) • 再生可能エネルギー割合目標設定(2007年 2.8%から2030年11%) • 義務量・証書取引(RPS)制度(2012年) 500MW以上の発電事業者に10% 以上の新再エネ発電義務化 • 省エネ・効率化政策 低価格・低品質の 海外機器の使用 の制限 • エネルギー集約度改善目標 • エネルギー効率改善目標 • スマートグリッドロードマップ(2010年)及び スマートグリッド法(2011年) 24 Energy-Climate South Korea: Energy -Climate Policy (2)• 気候変動政策 • グリーン成長国家戦略及び5ヵ年計画(2009 年) • 低炭素グリーン成長枠組法(2010年) • 排出枠取引導入の関連法案可決, 2015年開始 を決定(2012年) • 電力政策 インフレ抑制のために 総括原価割れで供給 • 電力料金の低価格 <石油価格 • 韓国電力公社の赤字拡大 • 電力需給の逼迫・首都圏停電 石炭・原子力 (2011年9月) 発電への依存 25 China: Energy-Climate Energy-Climate Policy (1) • 気候変動政策 • CDMによる温室効果ガス排出削減 • 単位GDP当たり二酸化炭素排出量削減目標設定 • 12・5計画に排出枠取引市場の整備を盛り込む • 2013年末までに北京・天津・上海・重慶・広東省・ 湖北省・深センで排出枠取引の実証実験開始 • 2015年中国全体の排出枠取引への移行計画 • 省エネ政策 • 単位GDP当たりエネルギー消費量削減目標設定 • 改正省エネルギー法(2007年)で省エネ責任制 度の明確化 • 一票否決制導入 26 China: Energy-Climate Energy-Climate Policy (2) • 運輸部門 • 自動車購入税のグリーン化(2009年) • 自動車購入時の増値税のグリーン化 • 交通燃料税引き上げ+道路維持管理費の内の6 種類の通行料金・燃料物品税の廃止(2008年) • ガソリン1.0元/l,ディーゼル0.8元/l • 北京の交通渋滞対策 • ナンバープレート番号による走行規制(2008 年) • ナンバープレートオークション(2011年) 27 China: Energy-Climate Energy-Climate Policy (2) • 再生可能エネルギー政策 • 送電網会社に補助金加算価格での買い取りの義 務づけ(2005年) • 再生可能エネルギー中長期発展計画(2007年) • 2020年15%,2050年30% • 送電網会社に全量購入の義務づけ,再生可能エ ネルギー開発基金から差額補填(2009年) • 機器製造企業への政府低利融資 • 課題 • 太陽光パネル製造企業の赤字拡大 • 風力発電の系統接続?? 政府の電力 料金管理 28 Energy-Climate Thailand: Energy -Climate Policy (1) • 省エネ政策 • 1992年省エネ促進法,省エネ基金設立 • 家電製品の省エネ基準・ラベリング • 再生可能エネルギー普及政策 • エネルギー省に代替エネルギー開発局設立 • 小規模の再生可能エネルギー発電(90MW以 下)のプレミアム価格での買い取りの義務づけ (2007年) • 再生可能エネルギー15ヶ年開発計画策定(2008 年):代替エネルギー2022年20%目標 • バイオ燃料生産への税優遇措置 29 Thailand: Power Development Plan 2010 Revision 3 Energy-Climate Thailand: Energy -Climate Policy (2) PDP2010 revision 3で • 電力開発計画2010-2030 解消? • エネルギー効率化計画2011-2030 • 代替エネルギー開発計画2012-2021 • 政策・計画上の整合性 • ディーゼル価格補助 • 石油・ディーゼル価格自由化の動き • ディーゼル価格をTHB30/l に抑制するために, 石油基金を活用して価格補助を供与 • ディーゼル燃料に対する物品税の免税 • 政府負担と「過剰」消費 31 Indonesia: 電源開発計画 第1次クラッシュプ ログラム 2006-09年 計画年 PLN 100% 開発方式 電源開発量 10,000MW 電源種別 中小規模石炭火力 100% 第2次クラッシュプロ グラム 2010-14年 PLN 50.4%, IPP 49.6% 10,000MW 再生可能エネルギー 計51% 地熱発電 39% 水力発電 12% 化石燃料 計49% 石炭火力 33% ガス火力 16% 32 Indonesia: Fuel Subsidy Cut • 燃料補助金の削減 • • • • 2005年:平均125%の価格引き上げ 2008年:平均28.7%の価格引き上げ 2012年:平均33%の価格引き上げ… 2013年:電力料金引き上げ… 貧困層への 補助増大 • 政府支出に占める割合 環境支出 石油補助 2005 2006 2007 2008 2009 2010 0.61 0.66 0.72 0.68 0.69 0.74 18.8 9.6 15.4 22.6 9.2 13.1 33 タイとインドネシアの気候変動政策 • タイ • タイ温室効果ガス管理機構設立(2009年) • 国内炭素市場(T-VER)の2013年創設計画 • インドネシア • REDD,REDD+の主導,パイロット事業実施 • 国家気候変動協議会設立(2011年) • 国内炭素市場(ヌサンタラ炭素スキーム)の設 立計画 34 まとめと今後の展望 (1):韓国 (1):韓国 • 経済的手段を中心とする環境政策手段により,環 境汚染対策や流域環境保護に一定の効果 • エネルギー・気候変動問題は,参加型からトップ ダウン型の政策決定への変容をもたらす? • 再生可能エネルギーは産業政策として促進してい るものの,国内に普及させる意志は弱い • ウォン安(とそれによる日系企業の誘致)は,政 府が電力料金の引き上げに転じない限り,電力公 社の赤字を増やし,原子力依存を高める • 米韓原子力協定の改訂(2014年期限)?? • 2016年以降の見通し 35 まとめと今後の展望 (2):中国 (2):中国 • 規制・行政命令+政府支出・補償方式で環境汚染 削減・森林回復に一定の効果 • エネルギー・気候変動問題は経済的手段導入の議 論の契機となる • 再生可能エネルギーは産業政策として促進 • 政府が電力料金の引き上げを容認しない限り,石 炭火力発電への投資も,再生可能エネルギーの有 効活用も進まず,電力不足は解消せず • 強制的な省エネは自家発電とそのための原油輸入 を増やし,温室効果ガス排出を増大 • 電力不足を解消しつつ2020年以降の気候変動国際 枠組みに積極的に関与するには,原子力依存を高 めるという選択が有望に 36 まとめと今後の展望 (3) • タイ • 効果的な環境政策手段を導入できず,環境汚染 問題の解決を長引かせる • 問題解決の困難のため,発電所や工場の立地に 対する住民の合意が得られず,国外立地を促す • T-Verの導入:日系大企業は対象に? • インドネシア • 政府にとっては環境汚染よりもエネルギー補助 による需要拡大と財政赤字拡大が喫緊の課題 • 気候変動政策は,REDD+による国外資金の呼 び込みが重点? 37 まとめと今後の展望 (4) • 低炭素グリーン成長戦略の再評価・再検討の 必要性 • 気候変動政策・産業政策・エネルギー政策・ (交通政策)・税財政政策の統合 • REDD+:気候変動政策と地域煙害防止政策の 実効性の強化 • 政策の中核の変更?:電力料金・システム改革 • 気候変動政策と原子力発電推進の統合 • 核不拡散 • 東アジアエネルギー安全保障 38 まとめと今後の展望 (5) • 気候変動政策は,東南アジアの環境問題対処 能力の向上をもたらすのか? • 政府機構内に担当部署は設置 • 計画・政策執行の誘因 • 対外資金依存 • 国際競争,特に中国との競争の激化 • 外国企業の誘致方針の変化? 39 本日のプレゼンの詳細 • 森 晶寿(編)『東アジア の環境政策』昭和堂, 2012年10月刊行,227p. 40