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TV-Anytime Forumの最新動向
グローバルスタンダード最前線 TV-Anytime Forumの最新動向 かわもり まさひと 川森 雅仁 NTTサイバーソリューション研究所 TV-Anytime Forumは「見たい番 Demand)で見るのか,蓄積させて見 Thomson,Motorolaなどのメーカ 組を好きな時に,いつでも,どこで るのか,といった違いには,ほとんど 企 業 , そしてM i c r o s o f t , N T T , も」視聴可能な,放送と通信が連携 意味がなくなり,「いつでもTV」が視 FranceTelecomなどのIT・通信企 した総合的なコンテンツ流通のため 聴可能になるといえます. 業などで,一時200社を超える企業が の標準を規格化しています.ここで このようなブロードバンドと大容量 は,今回,欧州通信標準化機構 蓄 積 の時 代 にあったT V の規 格 を決 (ETSI)の技術仕様になったその規 (1) 格について紹介します. めてきたのがTV-Anytime Forum 参加していましたが,現在の会員企業 は,約60社です.その標準仕様には, ストレージシステムだけでなく,コンテ ンツ制作から伝送・流通ネットワーク, です. 統合型受信端末までを含むトータルな はじめに TV-Anytime Forumとは モデルの提案が含まれています.「見た い番組を好きな時に,いつでも,どこ ハードディスクドライブ(HDD)の TV-Anytime Forumは , EBU でも」視聴可能な,放送と通信を連携 容量は,近年ますます大きくなり,そ (European Broadcasting Union: し蓄積を利用した総合的なコンテンツ れに対して,その値段は,ますます安 ヨーロッパ放送連合),BBC(British くなりつつあります. 2 0 0 0 年 に, Broadcasting Corporation:英国放 10,GBのHDD(6Mbit/s程度のコ 送 協 会 ), P h i l i p s , M i c r o s o f t , は,業界において水平的なオープン規 ンテンツを4時間蓄積可能な容量)が Disneyなどが中心となって構成され 格であることを標準化ポリシーとして 約1万円で販売されていたのに対し, た,通信との連携と蓄積型TVを特徴 います.そのためにできるだけほかのさ 昨年には,同じ値段で250,GBのもの とした新しいTV放送サービスのための まざまな分野の標準との相互運用性 が販売されており,これは6Mbit/sの 標準化を行っている国際的業界団体で (Interoperability)を重視しており, コンテンツが5年前の25倍の100時間, す.VODなどのマルチメディア・イン さまざまな団体と連携関係を結んでい 蓄積可能になったことを意味します. タラクティブ用のプロトコルやインタ ます. これは,10カ月にほぼ2倍の速さで容 フェース仕様の標準化を図る業界標準 量が増えていることになり,単純に考 化 組 織 であったD A V I C ( D i g i t a l (Moving Picture Experts Group), えると,2010年には,約16,TBとな Audio Visual Council)の後継とし, SMPTE(Society of Motion Picture り,これは,7チャネル分の番組を, 1999年9月に活動を開始しました.蓄 and Television Engineers),ARIB 24時間,1カ月間蓄積可能にする容 積利用とインターネット利用をベース (Association of Radio Industries 量といえます. に放送と通信におけるマルチメディア and Businesses:電波産業会)な 同時にこのような大容量のHDDを コンテンツの相互流通システムを目標 どの映像・放送関係標準化団体だけ 有効に利用するには,それにコンテン に標準化を行ってきました.現在の主 で な く , W3C( World Wide Web ツを伝送する速度も十分なものである だった参 加 企 業 ・ 団 体 は,E B U , Consortium),OASIS(Organization ことが要求されますが,ブロードバン B B C ,N H K ,N T V ,T B S ,フジT V , for the Advancement of Structured ドの普及やディジタルTVにより,それ B S k y B な ど の放 送 局 ,D i s n e y , Information Standards), Liberty が可能となってきています.こういっ Nielsen,電通,博報堂などのメディ Allianceなどの団体も含まれています. た状況では,番組をリアルタイムに放 ア企業,ソニー,松下,東芝,シャー 送 で 見 る の か , VOD( Video On プ, L G , S a m s u n g , P h i l i p s , 流通標準を標榜しています. TV-Anytime Forumの標準化活動 連携を結んでいる団体には,MPEG NTT技術ジャーナル 2006.1 85 グローバルスタンダード最前線 られました. TV-Anytime Forumの活動 1999年の活動開始以降,TV-Any- いう仕様として提案しており,現在そ 昨年8月にPhase 2仕様の最終版 のTechnical Standardとして採用さ が発行され,現在,次のPhaseへの移 れています.現在この技術標準に含ま 行が行われつつあります. れている仕様を表に示します. time Forumは,会員規定や知的財産 に関する協定を設定した後,2001年 TV-Anytimeの 仕様と他の規格 TV-Anytimeの仕様 12月に,米国デラウェア州のNPO法 TV-Anytime Forumでは,ブロー 前 述 のように, T V - A n y t i m e Forumの活動母体が明確になりまし ドバンドと大容量蓄積の時代「見たい Forumの仕様は,現在ETSIに採用 た.仕様化自体は,Forum全体の意 番組を好きな時に」視聴可能とする技 されヨーロッパの標準規格名となって 思決定を行う理事会(Board),要求 術として,特に3つの分野に注力して います. 条 件 やサービスモデルを策 定 する 仕様を策定しています. 人 格 を取 得 しました. これにより, Business Model Working Group, *1 ① 放送コンテンツとインターネッ そのほかに,やはりヨーロッパでは, DVB(Digital Video Broadcasting) の参照モデル トコンテンツに対する統一的なメ が, さまざまなプロファイルで や運 用 ガイドラインを策 定 するS y s - タデータ表現(意味・構造)の TV-Anytime仕様を採用しています. tem-Transport Working Group, 仕様. TV-Anytimeシステム 放送コンテンツとインターネッ バ型放送方式に関する規格として平成 Working Group,そしてコンテンツ トコンテンツに対する統一的な識 1 5 年 2 月 6 日 に策 定 されたA R I B - の権 利 保 護 方 式 を検 討 するR i g h t s 別子管理・アドレス解決を可能に STD-B38「サーバー型放送における Management and Protection Work- するコンテンツ参照の仕様. 符号化,伝送及び蓄積制御方式」は, メタデータ仕様を策定するMetadata ing Groupによって作業が進められて ② また日本においては,ARIBのサー ③ コンテンツの権利を管理・保護 TV-Anytime仕様を採用しています. います.このほかにTV-Anytimeの仕 するためのコンテンツの保護機構. TV-Anytime Forumは, IETFに 様をインターネットの世界で一般に通 これらはネットワークに透過的に, 対しても働きかける活動を行い,現 用する枠組みに登録するためのRegis- 相互運用性を図るというポリシーに 在 tvaという接頭辞は,IETFの名前 tration Task Forceが,IETFと連携 とっても重要な技術です. 空間*2として登録されています(3) .ま して作業を行っています. Phase 1では,特に片方向伝送の放 たコンテンツ参照を表すcridという文 2002年には,仕様を早く世に問う 送モデルを中心とした仕様が策定され 字 列 は, U R I スキームの1 つとして 必要性から,それまでの放送中心の仕 ています.Phase 2では,双方向通信 httpやftpと並んでIETFに登録され 様をPhase 1として凍結し,2002年 や携帯端末向けのコンテンツ配信など ています(4) . 11月に,Phase 1の仕様化を終了し も視野に入れた仕様化がなされてい ました. 並 行 して2 0 0 2 年 3 月 から ます. 実サービスへ向けた動き Phase 2仕様要求条件募集が,また TV-Anytime Forum自体は,任意 2003年8月には,技術寄与募集が開 の団体であるため仕様を恒久的に保守 英国を中心としたヨーロッパのいく 始され,Phase 2の仕様化検討が進め することができません.それゆえTV- つかの国は,DVBで採用されたTV- Anytime Forumは,その策定してき Anytime仕様を使った実サービスに向 た仕様を,ETSI(欧州通信標準化機 けた,“TV-Anytime Test bed”と *1 *2 86 TV-Anytimeシステム:本稿では,標準化団 体をTV-Anytime Forumと呼び,TV-Anytime という言葉で,TV-Anytime Forumで規定し ている概念ならびにその仕様を表すことと します. 名前空間:名前定義などが衝突することの ないように整理された名前の集合(空間) . NTT技術ジャーナル 2006.1 (2) 構 ) に “ Broadcast and On-line いう実験的取り組みを 2004年から開 Services: Search, select, and right- 始しています.これは,2007年の本 ful use of content on personal stor- サービス開始を目標としたものとされ age systems(“TV-Anytime”)”と ています.これらの活動を受けて,ド 表 標準化名 仕 様 1 ETSI TS 102 822-1 Benchmark Features 2 ETSI TS 102 822-2 System Description 3 ETSI TS 102 822-3-1 Metadata: Metadata Schemas 4 ETSI TS 102 822-3-2 Metadata: System Aspects in a Uni-directional Environment 5 ETSI TS 102 822-3-3 Metadata: Phase 2 Extended Metadata Schemas 6 ETSI TS 102 822-3-4 Metadata: Interstitial Metadata 7 ETSI TS 102 822-4 Content Referencing 8 ETSI TS 102 822-5-1 Rights Management and Protection (RMP): RMP Information for Broadcast Applications 9 ETSI TS 102 822-5-2 Rights Management and Protection (RMP): Binding of Rights Management and Protection Information 10 ETSI TS 102 822-6-1 Delivery of Metadata over a Bi-directional Network: Service and Transport 11 ETSI TS 102 822-6-2 Delivery of Metadata over a Bi-directional Network: Service discovery 12 ETSI TS 102 822-6-3 Delivery of Metadata over a Bi-directional Network: Exchange of Personal Profile 13 ETSI TS 102 822-7 Bi-directional Metadata Delivery Protection 14 ETSI TS 102 822-8 Interchange Data Format 15 ETSI TS 102 822-9 Remote Programming イツおよび北欧でも実サービスに向け 用性という観点からも重要な標準とい time Asian-Pacificが結成されること た実験活動が始まっています.日本で えます.またPhase2の仕様化全体に になっており,その準備会合が昨年10 は,放送局が中心となって,サーバ型 わたってNT Tは大きな貢献をし,その 月に東京で開催されました.ここでは, 放送に向けて運用規定策定が開始さ 結 果 TV-Anytime Forum Awardを 他地域との連携を図りながら,アジア れ, 2 0 0 7 年 の実 サービスを目 標 に 受賞しています. 太平洋地域に特に重要な問題(例と して,文字や言語の問題や多文化への TV-Anytimeの仕様実装のための規格 化を進めています. 今後の展開 対応等)の相互運用性を図ることが予 定されています.さらに,携帯電話や Phase 1およびPhase 2の仕様化が ブロードバンドに即応できる仕様のプ 完了し,現在Forumは,全体として ロファイル化などもこの地域で特に重 NT Tは TV-Anytime Forumの 活 の活動よりも,各地域における実装と 要な項目としてあがっています. 動の初期から積極的に参加し,影響力 ビジネスに向けた活動が活発化してい ■参考文献 NTTの働き を持 ってきました (5) . Phase 1, ます.ヨーロッパでは,TV-Anytime Phase 2を通じて,いくつかの仕様を European Users Groupが正式に発 NTTが中心になってまとめてきました. 足し,活発な活動を開始しています. 特 に Phase 2で 規 定 さ れ た この中には,仕様の運用規定への絞込 “ Exchange of Personal Profile” みや保守・改定だけでなく,TV-Any- は,NT TがLiberty Alliance (6) との time Forumで仕様化された技術のラ 連 携 を通 じて提 案 したL i b e r t y イセンスに関する議論も含まれていま Alliance仕様を中心に策定され,Lib- す(この議論には他地域からも参加し erty Allianceの仕様にも準拠した仕 ています).また他の地域でも,日本 様となっており,放送と通信の相互運 と韓国の企業が中心となってTV-Any- (1) (2) (3) (4) (5) http://www.tv-anytime.org http://www.etsi.org/ http://www.ietf.org/rfc/rfc4195.txt http://www.ietf.org/rfc/rfc4078.txt 川 添 ・ 山 口 ・ 川 森 ・ 岸 上 : “ TV Anytime Forumの最新標準化動向とNTTによる通信・ 放送融合への取り組み,”NT T技術ジャーナ ル,Vol.13,No.8,pp.66-71,2001. (6) http://www.project liberty.org (7) “特集 新しいTVの見方を実現する放送通信 連携技術,”NT T技術ジャーナル,Vol.16, No.5,pp.6-30,2004. NTT技術ジャーナル 2006.1 87