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【マーケットコメント】 ユーロ圏9ヵ国の格下げなどの直近の欧州債務問題

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【マーケットコメント】 ユーロ圏9ヵ国の格下げなどの直近の欧州債務問題
2012 年 1 月 16 日
野村アセットマネジメント株式会社
【ご参考資料】
ユーロ圏 9 ヵ国の格下げなどの直近の欧州債務問題の動向について
2011 年 12 月 5 日、格付会社 S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は、ドイツやフランスを含むユーロ圏 15 ヵ国の格
付を「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定しました。「クレジットウォッチ」とは 90 日以内に格付を変更する確率が少
なくとも 50%あると判断した場合の措置であるとされています。
このため、金融市場においては、「AAA」の格付とされていたフランスがこの最上位格付を失うのではないかなどと
いう懸念が高まり、為替相場などの変動要因となってきました。
そして 2012 年 1 月 13 日、S&P は昨年 12 月以前に既に「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定していたキプロスを
含むユーロ圏 16 ヵ国の格付について発表を行ないました。同社は、フィンランド、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダの
「AAA」格付の維持などを確認した一方で、フランスの長期債務格付を「AAA」から「AA+」に 1 段階引き下げるなど 9
ヵ国の格下げを決定しました。
また、民間債権者との債務交換協議が難航していると見られるギリシャに関しても、金融市場参加者のデフォルト
(債務不履行)懸念を高めるような状況となってきているようです。
<S&P 発表のユーロ圏の格付>
S&Pによるユーロ圏16ヵ国の長期債務格付(2012年1月13日現在)
オーストリア
ベルギー
キプロス
エストニア
フィンランド
フランス
ドイツ
アイルランド
イタリア
ルクセンブルグ
マルタ
オランダ
ポルトガル
スロバキア
スロベニア
スペイン
1月13日発表の
長期債務格付注1
AA+
AA
BB+
AA-
AAA
AA+
AAA
BBB+
BBB+
AAA
A-
AAA
BB
A
A+
A
1月13日発表の
アウトルック注2
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
安定的
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
ネガティブ
安定的
ネガティブ
ネガティブ
1月13日の発表以前の
長期債務格付
AAA
AA
BBB
AA-
AAA
AAA
AAA
BBB+
A
AAA
A
AAA
BBB-
A+
AA-
AA-
(参考)ムーディーズの
1月13日現在の長期債務格付
Aaa
Aa3
Baa3
A1注3
Aaa
Aaa
Aaa
Ba1
A2
Aaa
A2
Aaa
Ba2
A1
A1
A1
(注1)水色でハイライトした格付は、格下げとなったことを示す。
(注2)アウトルックは、長期格付が中期的(通常6ヵ月間から2年間)にどの方向に動きそうかを示す。
(注3)エストニアの格付は発行体格付を記載している。
(出所)S&P、ムーディーズ、Bloomberg データより野村アセットマネジメント作成
S&P は 1 月 13 日、ユーロ圏各国の長期債務格付について、「AAA」であったオーストリアとフランスを「AA+」に 1
段階、「AA-」であったスペインを「A」に 2 段階、「A」であったイタリアを「BBB+」に 2 段階、「BBB-」であったポルト
当資料は、投資環境に関する参考情報の提供を目的として野村アセットマネジメントが作成したご参考資料です。投資勧誘を目的とした資料ではあり
ません。当資料は市場全般の推奨や証券市場等の動向の上昇または下落を示唆するものではありません。当資料は信頼できると考えられる情報に基
づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に示された意見等は、当資料作成日現在の当社の見解で
あり、事前の連絡なしに変更される事があります。なお、当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。投資に
関する決定は、お客様ご自身でご判断なさるようお願いいたします。投資信託のお申込みにあたっては、販売会社よりお渡しします投資信託説明書
1/3
(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
【ご参考資料】
ガルを「BB」に 2 段階、それぞれ引き下げるなど、9 ヵ国の格下げを発表しました。今回、フィンランド、ドイツ、ルクセン
ブルグ、オランダの「AAA」格付は維持されたものの、ドイツ以外の3ヵ国のアウトルック(格付見通し)は「ネガティブ」と
されるなど格付に対する下向きの見方は継続されています。
S&P は「ここ数週間に欧州の政策担当者によってとられた政策のイニシアチブは、ユーロ圏で続いているシステミッ
クなストレスに対応するのに不十分であるというのが当社の見解だ」とし、この見解が今回の格付アクションの主因とな
ったとしています。システミックなストレスとしては、信用状況の逼迫やユーロ圏債券発行体に対する金利コスト上昇、
経済成長の弱まりなどが挙げられています。
IMF(国際通貨基金)に EU(欧州連合)諸国が出資し、債務問題を抱える国に対する救済資金を確保することや、
ESM(欧州安定メカニズム)の設立前倒し、財政規律の強化などを打ち出した昨年 12 月 9 日の EU 首脳会議の結果と
それ以降の政策担当者からの声明などについて、S&P は欧州の合意がユーロ圏の財政問題に十分に対処できるよう
な突破口をもたらさなかったと判断したとしています。
このように S&P は欧州の政治に関する信頼感が低下したことを示唆した一方で、「当社はユーロ圏の金融当局は市
場の信頼感が崩壊するのを回避するため尽力してきたと見ている」とし、ECB(欧州中央銀行)による銀行への資金供
給策や政策金利を 1%まで引き下げたことが銀行の短期的な資金調達環境を大きく改善させたと評価しました。
今回の 9 ヵ国の格下げの中で金融市場の注目度が高いのがフランスです。フランスの財政問題に対する懸念を反
映して、格下げ前でも同じ「AAA」の格付でありながら、ドイツとフランスの 10 年国債利回りの差は 2011 年10 月半ば頃
から直近まで、概ね 1%を超えて推移していました。今回のフランスの格下げは金融市場でも広く予想されており、1
段階の格下げにとどまったため、即座にフランス国債の入札などに急激な変化が生じるとの見方は多くないようです。
しかし一方で、債務危機が生じた国の救済基金である EFSF(欧州金融安定基金)による資金調達が困難となる可能
性が指摘されています。EFSF 債の格付は、保証を提供する国の格付に大きく左右されるため、フランスなどが「AAA」
格付を失ったことで、「AAA」格付の EFSF 債の発行額が減少したり、EFSF が「AAA」格付以外の債券発行を試みる可
能性もあると考えられます。ユーロ圏財務相は声明を発表し、ユーロ圏として財政規律強化に向けた新条約の合意に
近付きつつあり、救済基金の格付を「AAA」に維持するべく全力を尽くすとの見方を示しており、今後の EFSF に関す
る戦略が注目されます。
ドイツとフランス の1 0年国債利回りの推移
(%)
4.0
期間:2010年12月31日~2012年1月13日(日次)
3.5
3.0
2.5
スプレッド*
ドイツ10年国債利回り
フランス10年国債利回り
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
10/12
11/1
11/2
11/3
11/4
11/5
*(フランス10年国債利回り-ドイツ10年国債利回り)で算出
11/6
11/7
11/8
11/9
11/10
11/11
11/12
(年/月末)
(出所)Bloomberg より野村アセットマネジメント作成
当資料は、投資環境に関する参考情報の提供を目的として野村アセットマネジメントが作成したご参考資料です。投資勧誘を目的とした資料ではあり
ません。当資料は市場全般の推奨や証券市場等の動向の上昇または下落を示唆するものではありません。当資料は信頼できると考えられる情報に基
づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に示された意見等は、当資料作成日現在の当社の見解で
あり、事前の連絡なしに変更される事があります。なお、当資料中のいかなる内容も将来の投資収益を示唆ないし保証するものではありません。投資に
関する決定は、お客様ご自身でご判断なさるようお願いいたします。投資信託のお申込みにあたっては、販売会社よりお渡しします投資信託説明書
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(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
【ご参考資料】
<ギリシャの債務に関する協議>
1 月 13 日、ギリシャに対して債権を保有する銀行団を代表してギリシャ政府と債務交換の交渉をしている IIF(国際金
融協会)は、提案に対して「全ての当事者による建設的で集約された反応が得られなかった」として、「こうした状況下、
ギリシャおよび当局との協議は、自発的なアプローチという点を鑑みて休止する」と発表しました。債務交換に伴なう損
失規模を巡り、合意が難航している模様です。
また、同日、ギリシャ高官は、集団行動条項の適用、つまり合意を拒む民間債権者を強制的に債務交換に応じさせる
ための法案を近く議会に提出する計画はないとの考えを示したとされています。ギリシャは、EU、IMF からの金融支援
を得るには、民間債権者との間で債務削減を行なう必要がありますが、集団行動条項を適用しない場合、民間債権者
の参加率が必要とされる水準に達しない可能性があるとされています。
ギリシャ政府関係者は1 月18 日から交渉が再開される公算が大きいとしているものの、金融市場においてはギリシャ
のデフォルト懸念が一部で高まっているようです。
<為替市場動向とインデックスへの影響>
欧州債務問題の先行き不透明感の高まりを受けて、1 月 13 日の外国為替市場では対米ドル、対円でユーロ安が進
みました。ユーロは対米ドルで前日比▲1.05%、対円で同▲0.96%(ニューヨーク時間 17 時の値で比較)となりました。
週明け 1 月 16 日の 12 時現在(東京時間)、1 ユーロ=1.264 米ドル台、1 ユーロ=97.1 円台の推移となっています。
(円/
ユーロ)
140
ユーロ相場の推移
期間:2008年12月31日~2012年1月13日(日次)
対円相場(左軸)
対米ドル相場(右軸)
135
130
(米ドル/
ユーロ)
1.60
ユーロ高
1.55
1.45
120
1.40
115
1.35
110
1.30
105
1.25
100
1.20
95
08/12
09/6
09/12
10/6
10/12
11/6
(出所)Bloomberg より野村アセットマネジメント作成
1.15
11/12
ユーロ相場の推移(短期)
(米ドル/
ユーロ)
1.50
ユーロ高
期間:2011年6月30日~2012年1月13日(日次)
対円相場(左軸)
対米ドル相場(右軸)
115
1.50
125
(円/
ユーロ)
120
1.45
110
1.40
105
1.35
100
1.30
ユーロ安
(年/月末)
ユーロ安
95
11/6
1.25
11/7
11/8
11/9
11/10
11/11
11/12
(年/月末)
(出所)Bloomberg より野村アセットマネジメント作成
なお、今回の格下げによりポルトガルの長期債務格付が S&P およびムーディーズにおいて投機的水準となったこと
を受けて、シティグループは、1 月24 日までに両社の格付が双方とも投資適格に満たない場合、1 月末をもってシティ
グループ世界国債インデックスからポルトガルを除外すると発表しました。
<今後の注目点>
S&P によるユーロ圏9 ヵ国の格下げを受け、ドイツのメルケル首相は「断固として、内容を柔軟にせずに、財政改善を
一層急がなければならない状況になった」と述べるなどしており、欧州の首脳や関係当局が債務問題の収束を加速さ
せられるかどうかが重要となってくると思われます。1 月30 日には EU 首脳会議が予定されており、その議論の行方が
注目されます。このため、当社は引き続き、欧州の政治経済動向やそれを受けた金融市場動向を注視して参ります。
以
上
当資料は、投資環境に関する参考情報の提供を目的として野村アセットマネジメントが作成したご参考資料です。投資勧誘を目的とした資料ではあり
ません。当資料は市場全般の推奨や証券市場等の動向の上昇または下落を示唆するものではありません。当資料は信頼できると考えられる情報に基
づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に示された意見等は、当資料作成日現在の当社の見解で
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