...

スライド 1 - 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

スライド 1 - 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
IEEJ:2009年9月掲載
「世界の石炭市場の現況と
市場の変化がアジア太平洋市場に
与える影響」
佐川 篤男
財団法人 日本エネルギー経済研究所
戦略・産業ユニット 電力・ガス・石炭グループ 研究主幹
なお、本資料は(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構が開催した平成20年度事業報告会において報告し
た資料を一部再構成したものである。公表の許可を頂いた(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構のご理解、
ご協力に感謝する。
IEEJ:2009年9月掲載
報告内容
1.コールフローの現状と展望
- 石炭貿易とコールフローの現状
- 石炭需要・貿易見通しとコールフローの展望
2.石炭デリバティブ市場の現状
- 石炭デリバティブ市場の拡大
- 欧州における石炭デリバティブ取引
- 豪州における石炭デリバティブ取引
3.アジア市場における石炭デリバティブ取引の普及
- アジア市場における一般炭の取引状況
- アジア太平洋市場における石炭取引の変化
- 今後のアジア太平洋市場における石炭デリバティブ取引
2
IEEJ:2009年9月掲載
1.コールフローの現況と今後の動向
3
IEEJ:2009年9月掲載
石炭貿易の現状
756
595
559
515
468
465
866
917
670
35
643
657
40
545
418
359
548
361
541
342
492
514
319
296
450
253
439
253
482
488
296
391
209
306
390
212
349
193
348
196
345
187
162
45
30
25
20
15
0
247
223
216
197
199
189
201
190
186
186
199
196
195
197
186
193
192
198
182
178
156
152
158
10
146
137 275
143 268
126
100
137
200
133 273
300
125 263
400
308
500
289
504
600
50
石炭輸出率(%)
608
700
666
800
714
900
811
1,000
139

139

石炭の貿易量は一般炭を中心に増加し、2007年の見込みでは9.2億トンに達して
いる。
石炭は、生産量に比べて貿易に供される数量が少なく、世界の全生産量に占める
輸出量の比率(輸出率)は、2007年で16.5%と低い。
石炭貿易量は原料炭よりも一般炭の方が多いが、輸出率については原料炭が
32.1%、一般炭が14.0%と、原料炭の方が一般炭に比べ高い。
石炭貿易量(百万トン)

5
0
'80
原料炭
'82
'84
'86
一般炭
'88
'90
'92
'94
輸出率(石炭全体)
注: 2007年は見込み
出所: IEA, “Coal Information 2008”より作成
'96
'98
'00
'02
輸出率(原料炭)
'04
'06
輸出率(一般炭)
4
IEEJ:2009年9月掲載
コールフローの現状(2007年見込み)



アジア市場(日本+その他アジア)は、欧州市場(OECD欧州)の1.7倍の規模。
アジア市場への供給国は、豪州、インドネシアを中心に中国、ロシア、カナダ等。
欧州市場への供給国は、南アフリカ、ロシア、コロンビアを中心に豪州、米国、イン
ドネシア等。
ロシア
100.2Mt
ポーランド
11.8Mt
その他欧州
58.1Mt
26.9Mt
OECD欧州
221.6Mt
3.2Mt
22.5Mt
11.5Mt
8.2Mt
10.6Mt
6.9Mt
52.9Mt
OECD欧州
221.6Mt
中国
53.7Mt
カザフスタン
22.6Mt
15.6Mt
35.0Mt
29.9Mt
その他アジア
291.1Mt
19.5Mt
カナダ
30.4Mt
10.5Mt
30.5Mt
日本
182.1Mt
米国
53.4Mt
108.2Mt
34.3Mt
134.6Mt
77.6Mt
4.6Mt
北米
61.5Mt
24.6Mt
南アフリカ
66.7Mt
7.6Mt
11.1Mt
ベトナム
29.6Mt
インドネシア
202.2Mt
4.1Mt
17.1Mt
6.6Mt
アフリカ・中東
18.5Mt
44.2Mt
21.2Mt
コロンビア
67.2Mt
4.5Mt
26.5Mt
4.7Mt
10.6Mt
豪州
243.6Mt
4.9Mt
南米
21.9Mt
注:
300万トン未満のフローは記載しておらず、青字は対前年比増、赤字は対前年比減を示す。
輸入側の「北米」には、メキシコを含める。
出所: IEA, “Coal Information 2008”より作成
5
IEEJ:2009年9月掲載
石炭需要見通し
(百万トン)
実 績 予 測
10,000




石炭需要は、2030年
に向けて、アジアを中
心に主に電力分野で
拡大する。
2006年から2030年ま
で年率1.8%で増加し、
2006年の61.3億トンか
ら2030年には93.6億ト
ンまで約1.5倍の規模
に増加する。
石炭増加量32,3億トン
のうち一般炭の増加
量は29.6億トンで、約9
割を占める。
アジアの増加量は、世
界全体の増加量の約
8割を占める。
27.7
中南米、中東
32.3億t
8,000
8%
オセアニア
7%
7,000
2.4
0.8
1.4
北米
欧州
その他
アフリカ
14%
6,000
アジア
OECD欧州
5,000
13%
その他欧州
8%
4,000
北米
17%
3,000
27%
2,000
23%
1,000
19%
65%
アジア
54%
25%
0
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
(単位:百万トン)
実績
1980
予測
2006
2010
年平均伸び率(%)
2020
2030
06/80 10/06 20/10 30/20 30/06
アジア
897
3,337
3,946
5,150
6,106
北米
675
1,066
1,076
1,166
その他欧州
846
505
581
636
OECD欧州
5.2
4.3
2.7
1.7
2.6
1,303
1.8
0.2
0.8
1.1
0.8
656
-2.0
3.5
0.9
0.3
1.1
1,158
820
807
761
754
-1.3
-0.4
-0.6
-0.1
-0.3
アフリカ
98
195
197
234
260
2.7
0.3
1.7
1.1
1.2
オセアニア
69
146
148
160
166
2.9
0.4
0.8
0.4
0.5
中南米、中東
22
66
73
96
117
4.4
2.9
2.7
2.0
2.5
3,764
6,135
6,828
8,202
9,362
1.9
2.7
1.9
1.3
1.8
計
(単位:百万トン)
実績
1980
出所: 実績はIEAデータ
予測はIEEJ 電力・ガス・石炭G
(億t)
2006-2030年の増加量
9,000
予測
2006
2010
2020
年平均伸び率(%)
2030
06/80 10/06 20/10 30/20 30/06
原料炭
531
694
786
910
926
1.0
3.1
1.5
0.2
1.2
一般炭
2,252
4,531
5,124
6,372
7,490
2.7
3.1
2.2
1.6
2.1
褐 炭
計
981
910
919
921
946
-0.3
0.2
0.0
0.3
0.2
3,764
6,135
6,828
8,202
9,362
1.9
2.7
1.9
1.3
1.8
6
IEEJ:2009年9月掲載
石炭貿易見通し(輸入)




需要の拡大に伴い、石炭貿
易は、2030年に向けて、アジ
アを中心に主に一般炭貿易
が拡大する。
輸入量は2006年から2030年
まで年率1.6%で増加し、2006
年の8.6億トンから2030年には
12.6億トンまで約1.5倍の規模
に拡大する。
アジアの輸入量の増加量は、
世界全体の8割を占める。
炭種別の輸入量
2006年 2030年
一般炭: 6.6 ⇒ 9.7 億トン
原料炭: 2.0 ⇒ 2.9 億トン
1,400
その他
1,200
南 米
1,000
北 米
800
アフリカ・中東
600
その他欧州
400
「北米」には、メキシコを含める。「そ
の他欧州」には、旧ソ連を含める。
出所: 実績はIEAデータ
予測はIEEJ 電力・ガス・石炭G
OECD欧州
200
アジア
0
2000
2006
2010
2020
2030
(単位:百万トン)
実績
2000
アジア
年平均伸び率(%)
予測
2006
2010
2020
2030
10/06
20/10
30/20
30/06
304.9
453.8
511.8
648.7
769.9
3.1
2.4
1.7
2.2
日 本
150.3
179.1
174.6
174.8
172.8
-0.6
0.0
-0.1
-0.1
韓 国
63.7
79.7
98.6
103.9
108.8
5.5
0.5
0.5
1.3
台 湾
45.4
62.3
64.2
81.5
97.0
0.8
2.4
1.8
1.9
インド
20.9
43.1
67.7
125.3
169.5
12.0
6.4
3.1
5.9
中 国
2.2
38.1
49.2
72.5
92.5
6.6
3.9
2.5
3.8
その他アジア
OECD欧州
注:
地域別の輸入量推移
(百万トン)
22.4
51.5
57.5
90.7
129.3
2.8
4.7
3.6
3.9
195.2
257.5
267.3
269.7
285.5
0.9
0.1
0.6
0.4
その他欧州
41.5
46.2
46.9
46.9
47.2
0.4
0.0
0.1
0.1
アフリカ・中東
18.8
24.5
26.1
32.3
39.9
1.7
2.2
2.1
2.1
北 米
32.5
51.6
53.9
57.0
67.0
1.1
0.6
1.6
1.1
南 米
19.9
21.5
25.5
39.3
48.7
4.4
4.4
2.2
3.5
その他
0.0
1.2
1.1
0.7
1.6
-2.4
-4.9
8.7
1.0
612.8
856.2
932.7
1,094.6
1,259.8
2.2
1.6
1.4
1.6
計
7
IEEJ:2009年9月掲載
石炭貿易見通し(輸出)



輸出国は現状と同様に、豪
州、インドネシア、ロシア(旧
ソ連に含まれる)、南アフリ
カ、コロンビア、ベネズエラ
(表では南米)等である。
豪州は今後も世界最大の輸
出国であり続け、インドネシ
アの輸出が頭打ちになる。
2020年以降、豪州のシェア
は、さらに拡大する。
南アフリカ、南米、ロシアの
輸出量増加が見込まれ、南
アフリカは、アジア向けの輸
出が拡大する。
注: 「南米」は、コロンビア、ベネズエラ。
出所: 実績はIEAデータ
予測はIEEJ 電力・ガス・石炭G
主要輸出国・地域別の輸出量推移
(百万トン)
1,400
その他
1,200
南 米
1,000
カナダ
米 国
800
南アフリカ
600
旧ソ連
400
中 国
インドネシア
200
豪 州
0
2000
2006
2010
2020
2030
(単位:百万トン)
実績
2000
豪 州
予測
2006
2010
2020
年平均伸び率(%)
2030
10/06
20/10
30/20
30/06
187.0
231.3
236.5
311.1
409.9
0.6
2.8
2.8
2.4
インドネシア
57.4
171.6
208.7
231.8
232.0
5.0
1.1
0.0
1.3
中 国
55.1
63.2
48.1
47.1
53.0
-6.6
-0.2
1.2
-0.7
旧ソ連
64.5
123.0
139.0
157.1
170.6
3.1
1.2
0.8
1.4
南アフリカ
69.9
69.3
77.2
94.4
117.6
2.8
2.0
2.2
2.2
米 国
53.0
44.9
41.6
34.0
32.0
-1.9
-2.0
-0.6
-1.4
カナダ
32.1
27.4
28.5
30.0
33.3
0.9
0.5
1.1
0.8
南 米
43.3
69.4
83.6
91.7
115.1
4.8
0.9
2.3
2.1
その他
46.1
65.7
69.6
97.5
96.3
1.4
3.4
-0.1
1.6
計
608.4
865.7
932.7
1,094.6
1,259.8
1.9
1.6
1.4
1.6
8
IEEJ:2009年9月掲載
コールフローの展望(2030年)


アジア市場(日本+その他アジア)は、欧州市場(OECD欧州)の2.7倍の規模に拡大。
アジア市場への供給は、豪州、インドネシア、ロシアで増加し、南アフリカからその他
アジア(主にインド、東南アジア)への供給が2006年の4倍の規模に拡大する。
旧ソ連
170.6Mt
42.5Mt
OECD欧州
285.5Mt
その他欧州
47.2Mt
8.5Mt
14.6Mt
78.6Mt
OECD欧州
285.5Mt
32.4Mt
11.3Mt
アフリカ・中東
39.9Mt
中国
53.0Mt
12.1Mt
29.6Mt
日本
172.8Mt
39.8M
その他アジア
597.0Mt
6.2Mt
29.0Mt
53.9Mt
40.7Mt
11.9Mt
55.2M
9.7Mt
247.3Mt
11.7Mt
21.5Mt
6.6Mt
米国
32.0Mt
103.1Mt
184.9Mt
カナダ
33.3Mt
9.0Mt
北米
67.0Mt
7.7Mt
南米
115.1Mt
11.1M
38.6Mt
9.8Mt
インドネシア
232.0Mt
4.1Mt
豪州
409.9Mt
11.1Mt
南米
48.7Mt
南アフリカ
117.6Mt
注:
輸入側の「北米」にはメキシコを含め、「その他欧州」には旧ソ連を含める。
輸出側の「南米」は、コロンビア、ベネズエラ。輸入側の「南米」は、ブラジルが主でチリなども含む。な
お、300万トン未満のフローは記載していない。
出所: 現状からIEEJ 電力・ガス・石炭Gが試算
9
IEEJ:2009年9月掲載
2. 石炭デリバティブ市場の現状
10
IEEJ:2009年9月掲載
石炭デリバティブ取引の拡大
2000年以降、石炭デリバティブ取引はOTC取引により増加し、2004年以降で急速に
拡大 - - - 2006年の取引量は13.4億トン、海上貿易量の2.3倍。
現地ヒアリング調査によれば、2007年には20億トン前後に達し、2008年は22億トンを
見込んでいるとのことであった。
欧州市場で、石炭デリバティブ取引は拡大。
2006年の取引量は API#2が9億トン、API#4が4億トン
API#2:CIF ARA (Amsterdam, Rotterdam, Antwerp)、API#4:FOB Richards Bay
アジア市場では、globalCOALを中心に拡大中 - - - 2006年の取引量は4,000万トン。




(百万トン)
2,000
海上貿易量
デリバティブ取引量
1,500
(単位:百万トン)
2000
1,000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2004
2005
2006
165
160
175
189
186
206
一般炭海上貿易量(世界)
357
385
408
445
489
532
571
25
50
150
200
400
550
900
10
15
20
50
220
400
1
4
20
40
FOB Newcastle
2000
2003
142
API#4
0
2002
一般炭輸入量(ヨーロッパ)
API#2
500
2001
2007*
注: 2007年のデリバティブ取引量はヒアリングに基づく。
出所: 貿易量 = “Coal Information 2008”
デリバティブ取引量の2006年まで=Guillaume Perret, “The International Coal Trading Market 2007”
デリバティブ取引量の2007年=現地ヒアリング調査
11
IEEJ:2009年9月掲載
欧州における石炭デリバティブ取引
<石炭デリバティブ取引成立の背景>
【電気事業の自由化による影響】
 2000年以前、欧州市場は現物の相対取引のみで成立。
 電気事業の自由化により、卸電力市場において発電事業者間の価格競争が始まる。



このため、発電事業者は燃料価格をそのまま小売/卸売価格に転嫁することが出来
なくなった。
燃料価格と卸電力価格のボラティリティが増し、また両価格は異なる値動きをするこ
とから、発電事業者は利益を確保するために値差(スプレッド)を管理する必要に迫
られた。
このため、ダークスプレッド(石炭と卸電力の価格差)やスパークスプレッド(天然ガ
スと卸電力の価格差)を管理することで将来の利益を確定するようになった。
【 CIF市場発達が発達する石炭取引体系】
 内陸部の発電所は河川沿いにあり、ARA地域のコールセンターを経由したバージ輸
送が発達していた。
【発電所における利用炭種の拡大】
 厳しい競争から石炭調達において、品質よりも価格を重視するようになり、発電所が
多炭種(幅広い炭種)を利用するようになった。
12
IEEJ:2009年9月掲載
欧州における石炭デリバティブ取引
<石炭デリバティブ取引の経緯>

1999年にTFS(Tradition Financial Services)社がOTCブローカー業務を開始。

2001年頃からBHP BillitonやGlencore等の現物取引を行う大手企業の参入。

また、GFI等の純粋な金融ブローカーも石炭デリバティブ市場でシェアを伸ばした。

globalCOALも2001年に活動を開始。

2003年、①海上輸送費の高騰、②フランスの原子力発電所の出力低下による石炭
需要の高まり、の2点から石炭デリバティブ取引よるヘッジニーズが高まる。

2006年にEEX(ドイツ)とICE Futures Europe(英国)の各取引所が石炭先物を上場。
* EEXは、2006年5月にARA Coal Futures(CIF ARA)とRB Coal Futures(FOB
Richards Bay)を上場。
* ICE Futures Europeは、2006年7月にRotterdam Coal Futures(CIF
Rotterdam)とRichards Bay Coal Futures( FOB Richards Bay)を上場、2008年
12月にはNewcastle Coal Futures(FOB Newcastle)を上場。
* EEXでの取引量は2006年後半以降減少。
* ICE Futures Europeでの取引量は、2008年に入り増加。
13
出所: ICEホームページより
09/2/2
09/1/2
08/12/2
08/11/2
08/10/2
08/9/2
08/8/2
08/7/2
08/6/2
08/5/2
08/4/2
08/3/2
08/2/2
08/1/2
07/12/2
07/11/2
07/10/2
07/9/2
07/8/2
07/7/2
07/6/2
07/5/2
07/4/2
07/3/2
07/2/2
07/1/2
06/12/2
06/11/2
06/10/2
06/9/2
06/8/2
06/7/2
出所: EEXホームページより
06/6/2
06/5/2
EEXでの
石炭取引量の推移
2006年7月
2006年8月
2006年9月
2006年10月
2006年11月
2006年12月
2007年1月
2007年2月
2007年3月
2007年4月
2007年5月
2007年6月
2007年7月
2007年8月
2007年9月
2007年10月
2007年11月
2007年12月
2008年1月
2008年2月
2008年3月
2008年4月
2008年5月
2008年6月
2008年7月
2008年8月
2008年9月
2008年10月
2008年11月
2008年12月
2009年1月
2009年2月
ICE Futures Europe
での
石炭取引量の推移
取引量(ロット)
IEEJ:2009年9月掲載
欧州における石炭デリバティブ取引
300,000
(トン)
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
14
IEEJ:2009年9月掲載
欧州における石炭デリバティブ取引
EEXの石炭取引の概要
ARA Coal Futures
RB Coal Futures
(CIF ARA)
(FOB Richards Bay)
現金決済先物取引
現金決済先物取引
上場年月日
2006年5月2日
2006年5月2日
最終決済価格
各月最終金曜日にArgas/McCloskeyの
Coal Price Index Reportにおいて公表され
るAPI2のMonthly Indexの月間平均
各月最終金曜日にArgas/McCloskeyの
Coal Price Index Reportにおいて公表され
るAPI2のMonthly Indexの月間平均
1,000トン/ロット (月契約)
1,000トン/ロット (月契約)
3,000トン/ロット(四半期契約)
3,000トン/ロット(四半期契約)
12,000トン/ロット(年間契約)
12,000トン/ロット(年間契約)
取引時間
8:30-16:00(フランクフルト時間)
8:30-16:00(フランクフルト時間)
呼値及び呼値の単位
ドル(小数点以下2桁目(1セント)まで)/1
トンあたり
ドル(小数点以下2桁目(1セント)まで) /1
トンあたり
最小刻み値
0.01ドル(1セント)
0.01ドル(1セント)
限月構成
当限月+翌連続6限月
当限月+翌連続6限月
当四半期+翌連続7四半期
当四半期+翌連続7四半期
当年+翌連続6暦年(1-12月)
当年+翌連続6暦年(1-12月)
納会日
当限月最終取引日
当限月最終取引日
決済機関
ECC AG
ECC AG
取引単位
出所: EEXホームページより
15
IEEJ:2009年9月掲載
欧州における石炭デリバティブ取引
ICE Futures Europeの石炭取引の概要
Rotterdam Coal Futures
Richards Bay Coal Futures
Newcastle Coal Futures
(CIF Rotterdam)
(FOB Richards Bay)
(FOB Newcastle)
現金決済先物取引
現金決済先物取引
現金決済先物取引
上場年月日
2006年7月17日
2006年7月17日
2008年12月5日
最終決済価格
Argas/McCloskeyのCoal
Price Index Reportで公表さ
れるAPI2 Indexの月間平均
Argas/McCloskeyのCoal
Price Index Reportで公表さ
れるAPI4 Indexの月間平均
globalCOALより毎月公表さ
れるMonthly Index(Weekly
Indexの月間平均)
1,000トン/ロット
1,000トン/ロット
1,000トン/ロット
(最低約定単位:5ロット)
(最低約定単位:5ロット)
(最低約定単位:5ロット)
取引時間
7:00-17:00(ロンドン時間)
7:00-17:00(ロンドン時間)
1:00-17:00(ロンドン時間)
呼値及び呼値の単位
ドル・セント/1トンあたり
ドル・セント/1トンあたり
ドル・セント/1トンあたり
最小刻み値
5セント
5セント
5セント
連続72限月
連続72限月
連続72限月
連続18四半期(1-3月期、
4-6月期、7-9月期、10-12
月期)
連続18四半期(1-3月期、
4-6月期、7-9月期、10-12
月期)
連続18四半期(1-3月期、
4-6月期、7-9月期、10-12
月期)
連続6暦年(1-12月)
連続6暦年(1-12月)
連続6暦年(1-12月)
納会日
当限月最終金曜日
当限月最終金曜日
当限月最終金曜日
値幅制限・建玉制限
なし
なし
なし
決済機関
ICE Clear Europe
ICE Clear Europe
ICE Clear Europe
その他
EFP(Exchange of Futures for Physicals)、EFS(Exchange of Futures for Swaps)、Block
取引(場外取引)が可能
取引単位
限月構成
出所: ICEホームページより
16
IEEJ:2009年9月掲載
豪州における石炭デリバティブ取引
<石炭デリバティブ取引の経緯>





1996年にBarlow Jonkerが石炭取引をインターネット上の電子プラットフォームで行
うWorld Coal Exchangeを開設したが、生産者の直接取引指向が強く失敗。
なお、Barlow Jonkerは同様の試みを過去2回行っている。
また、1996年頃にシドニー先物取引所が一般炭とPCI炭の上場を検討したが、上場
には至らなかった。
石炭取引の進展
2001年に globalCOALが取引
を開始。
5
*2001年5月: 現物取引
Coal
Futures
*2002年11月: スワップ取引
Contracts
4
globalCOALを利用したスワッ
Futures
Clearing
プ取引量が次第に増加。
House
3
2008年12月にICE Futures
OTC
2
Financial
EuropeにおいてgC Newcastle
1
OTC
Swap
BenchMark
Forward
Pricing
Coal Futuresが開設される。
Delivery
2009年7月にASXが石炭先物、
2008+
<2001
2001+
2003+
TIME
石炭デリバティブを上場。
Liqu idity

出所: 豪州証券取引所資料
17
IEEJ:2009年9月掲載
豪州における石炭デリバティブ取引
<globalCOALの取引量の推移>
(千トン)
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
出所:globalCOAL資料
Phys NEWC
SWAP NEWC
Q4'08
Q3'08
Q2'08
Q1'08
Q4'07
Q3'07
Q2'07
Q1'07
Q4'06
Q3'06
Q2'06
Q1'06
Q4'05
Q3'05
Q2'05
Q1'05
Q4'04
Q3'04
Q2'04
Q1'04
Q4'03
Q3'03
Q2'03
Q1'03
Q4'02
Q3'02
Q2'02
Q1'02
Q4'01
0
Q3'01

現物取引は、2003年に増加後、低調な時期が続き、2007年以降に増加。
2007年:800万トン、2008年:1,080万トン
スワップ取引は、2005年以降拡大。
2007年:4,180万トン、2008年:5,110万トン
これは欧州市場のプレーヤーの参入が大きい(欧州市場との裁定取引、現物石炭
のヘッジを目的としたスワップ取引)と言われている。
Q2'01

18


'08/12/05
'08/12/07
'08/12/09
'08/12/11
'08/12/13
'08/12/15
'08/12/17
'08/12/19
'08/12/21
'08/12/23
'08/12/25
'08/12/27
'08/12/29
'08/12/31
'09/01/02
'09/01/04
'09/01/06
'09/01/08
'09/01/10
'09/01/12
'09/01/14
'09/01/16
'09/01/18
'09/01/20
'09/01/22
'09/01/24
'09/01/26
'09/01/28
'09/01/30
'09/02/01
'09/02/03
'09/02/05
'09/02/07
'09/02/09
'09/02/11
'09/02/13
'09/02/15
'09/02/17
'09/02/19
'09/02/21
'09/02/23
'09/02/25
'09/02/27
IEEJ:2009年9月掲載
豪州における石炭デリバティブ取引
<gC Newcastle Coal Futuresの開設と取引量の推移>
2008年12月5日に、 globalCOALとICEは、ICE Futures Europeにおいて、
globalCOAL NEWC Indexの現金決済先物取引であるgC Newcastle Coal Futures
を開設。
取引量は、12月が1,965枚(196.5万トン)、1月が4,170枚(417万トン)、2月が4,210
枚(421万トン)となっている。
(枚)
1,200
1,000
800
600
400
200
0
出所:ICE Futures Europeホームページより作成
19
IEEJ:2009年9月掲載
豪州における石炭デリバティブ取引
<ASXでの石炭先物取引の上場>


オーストラリア証券取引所(ASX)は、2009年4月21日に現物先物取引とオプション
取引の上場を予定していたが、遅れている。
なお、 5月26日付けで7月7日の上場決定がアナウンスされた。
一般炭先物取引の概要
商品
6,000kcal(真発熱量ベース)、灰分最大13%(到着ベース)、硫黄分最大
0.6%(到着ベース)を基準に値付けされる一般炭(FOB Newcastle)
契約単位
一般炭1,000トン(±10%のShipping Tolerance付き)
呼値及び呼値の単位
最小刻み値
ドル・セント/1トンあたり
5セント
最終取引日
受渡日
限月の前月の第一取引日
オーストラリア東部標準時の午後5時14分~午前7時、午前8時34分~午
後4時30分(合衆国が夏時間中)
オーストラリア東部標準時の午後5時14分~午前7時30分、午前8時34分
~午後4時30分(合衆国が夏時間でない期間)
受渡は限月内の買主が決めた日(FOBベース)
決済価格
最終取引日のDaily Settle Price
調整後最終決済価格
決済価格に真発熱量、灰分、硫黄分、滞船料、早出料等の調整を加えた
最終決済価格
決済金額
調整後最終決済価格×数量
EFP/EFS/ADP注
市場参加者はオプションをクローズするのに使用可能
オプション
期間は4年、8四半期、半年あり
取引時間
出所:オーストラリア証券取引所資料より作成
20
IEEJ:2009年9月掲載
3. アジア市場における
石炭デリバティブ取引の普及
21
IEEJ:2009年9月掲載
アジア市場における一般炭の取引状況
アジア市場の主要なユーザーである日本、韓国、台湾の電力の状況
<契約形態>
 アジア太平洋市場(既存輸入国である日本、韓国、台湾)では、安定供給
確保の観点から長期契約(年間価格固定)による石炭調達が主流。
━ 1990年代後半の価格低迷(スポット価格<長期契約価格)と供給不安が
ないことからスポット量が増加。
━ しかし、2003年後半の需給逼迫を機に、再び長期契約の比率が高まる。
━ 韓国の電力では、長期契約(3年以上)の比率は70~80%、年契約を含め
ると80%以上。
━ 台湾電力では、複数年契約(長期、5年物、3年物(5年物が多い))と年契
約の数量の合計を、全体の60~80%を原則としている。
━ 日本の電力では、年契約を含めると90%に達する電力もある。
 日本では、長期契約・年契約の価格交渉をずらした期ずれ契約により価格
リスクへの対応が行われている。

韓国では、テンダー方式での調達を行っており、価格リスクへの対応を
行っている。
22
IEEJ:2009年9月掲載
アジア市場における一般炭の取引状況
<品位に対する要求>

石炭品位への要求は、日本は厳しく、韓国・台湾は日本と比較してゆるい。
━ 我が国の電力は発電所の仕様にあった石炭を安定的に調達しており、品
位に厳しい。
━ 韓国・台湾の電力は日本より柔軟な対応をしており、燃料コスト低減策とし
てインドネシア炭など亜瀝青炭も積極的に利用。
<石炭価格の電気料金への転嫁>

日本の電力には、燃料費調整制度により燃料費が電気料金へ転嫁される
仕組みがあり、原則として燃料価格変動に対するヘッジ・ニーズがない。

韓国、台湾には、日本のような燃料費調整制度はなく、燃料価格の変動に
合わせて電気料金改定案を政府に申請し、認可を受ける必要がある。
以上のように、アジア市場の一般炭取引状況は、欧州市場の状況と大きく
異なる。
23
IEEJ:2009年9月掲載
アジア太平洋市場における石炭取引の変化
① シッパー側のインデックス指向
価格ボラティリティの増大により、シッパーはインデックスリンクによる価
格決定を指向している。
② アジア太平洋のOTC市場への欧州プレーヤーの参入
globalCOALのスワップ取引に欧州プレーヤーが参入し、欧州市場との裁
定取引などを行っている。
③ アジア・インデックスによるデリバティブ市場の開設
上記①、②の状況を受けて、ICE Futures EuropeにおいてgC Newcastle
Futuresが上場され、ASXにおいて現物先物取引とオプション取引が開設
される。
④ 決定形態の変化(固定価格⇒インデックスリンク価格)
シッパー側のインデックス指向により、これまで長期契約(年契約)の値
決めにおいて主流であった年間固定価格からインデックスリンクによる変
動価格への変化が、起こり始めている。
24
IEEJ:2009年9月掲載
今後のアジア太平洋市場における石炭デリバティブ取引
今後のアジア太平洋市場の石炭デリバティブ取引については、以下のことが
予想される。






欧州プレーヤーによる取引が活発になり、欧州大西洋市場との裁定取引
が拡大する。
英国のICE Futures Europeと豪州のASXにおける石炭先物取引の上場に
伴い、これら取引所における既存プレーヤーが一般炭取引に参入する。
特に、ICE Futures Europeにおける欧州大西洋市場とアジア太平洋市場の
裁定取引が活発化する。
このように欧州プレーヤーによる欧州市場との裁定取引が増加すれば、ア
ジア市場の価格形成は、欧州市場の影響を強く受けることになる。
長期契約(年契約)では、年間固定価格からインデックスリンクによる変動
価格への移行が進み、インデックスリンクでの契約が増える。
また、一方では、欧州市場でOTC取引の仲介をしているブローカーの仲介
が本格化すれば、アジアのプレーヤーによる取引量のある程度の増加が
見込まれる。
25
IEEJ:2009年9月掲載
まとめ




アジア太平洋市場では、以下の点から、まだ、デリバティブ市場が普及・拡
大する環境は、まだ整っていないと判断される。
━ アジア地域では石炭火力がベースロードであり、東南アジアやインドなどで
はIPPの拡大が見込まれることから、今後も石炭の安定供給を重視した長
期契約や年契約が主流であり続ける可能性が高い。
━ また、我が国の電力を始めとする石炭ユーザーは、長期契約、年契約の価
格決定時の参照価格として、石炭市場に対し価格指標を求めているが、価
格変動に対するヘッジ・ニーズがなく、自ら市場に参入するという動機付け
が少ない。
一方、欧州プレーヤーのデリバティブ市場への関心は強く、今後欧州プレー
ヤーを中心にアジア太平洋地域のデリバティブ市場での取引は増加してい
くことが見込まれる。
このような状況において、アジアの石炭需給を反映した価格形成を行うに
は、アジアの当業者がデリバティブ市場に積極的に参入し、アジアの石炭
需給を反映した市場作りを行う必要がある。
また、我が国における石炭市場の創設も一つの方法であると考えられる。
潜在的な市場創設に対するニーズはあると思われるが、その環境が整うに
はいくつものハードルがあり、市場創設に時間を要する。
26
Fly UP