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施設だより - 分子科学研究所
共同利用・共同研究 施設だより 計算科学研究センター 高性能分子シミュレータの更新(2013 年 2 月) 計算科学研究センター長 斉藤 真司 5年ぶりに高性能分子シミュレー 過ぎていた冷却設備の更新と汎用コン Peta flops、全体では 0.33 Peta Flops) タ( 通 称、 汎 用 コ ン ) を 更 新 し、 今 システムの更新が同時期であったため、 である。CPU が必要な際には是非ご利 年 3 月 か ら 運 用 を 開 始 し た。 今 回 導 計算性能だけでなく冷却設備や電気料 用頂きたい。 入 し た シ ス テ ム は、 演 算 サ ー バ( 富 金も含めたものが最適となるように調 なお、ユーザーの計算処理に対する 士 通 製 PRIMERGY CX250 S1 5888 達を行った。その結果、空調パッケー 欲求はとどまるところを知らない。最 コア) 、 外 部 磁 気 デ ィ ス ク( 富 士 通 ジの台数を減らすことも可能となった。 高速の計算機でも 4 年 5 年も経てば、研 製 ETERNUS DX80 S2 実 効 容 量 さらに、昨年 2 月に更新した超高速 究室にある普通のマシンよりも遅くな 1.8PB)、運用管理クラスタ(富士通製 分子シミュレータ(通称、スパコン) りユーザー離れが見られる。そこで、 PRIMERGY RX200 S7 16 ノード)な の一部更新も行った。高速 I/O 演算サー 2014 年 9 月 に は、 演 算 サ ー バ の CPU どから構成されている。外部磁気ディ バを UV1000 から UV 2000 というモデ の更新を行い、処理能力のさらなる向 スクは、ホームディレクトリーだけで ルに更新し、CPU が Sandy Bridge 系へ 上を進める予定である。 なく、短期保存ディスク等にも運用さ の更新を行うとともに、コア数も 576 れている。ファイルシステムは「京コ から 1024 に増強した。また、クラス ンピューター」にも使われているもの タ演算サーバは、全てのノードを 8 GB/ であるが、計算科学研究センターの運 コアへと搭載メモリーの増強を行った。 用ではファイルアクセスが遅いことが 汎用コンとスパコンのクラスタマシン 顕在化しており、現在、その対策を行っ は CPU が同一で速度差がないために、 ている。運用管理クラスタは仮想化の 全 体 と し て 11360 コ ア の 大 き な シ ス ホストサーバで、計算科学研究センター テムとして同一キューによるシームレ のウェブサーバなどのセンター用途の スな運用を行っている。導入当初は空 サーバだけでなく、共同利用申請シス いているノードも見られたが、月を追 テムや研究会ユーザー登録システムな うごとに利用率・同時利用者数が上が ど分子科学研究所向けのサービスを行 り、CPU待ちの状態のジョブも多くなっ うためのサーバも稼働させている。 てきた。比較的使いやすく演算性能の また、今回の調達では、耐用年数が 高いシステム(クラスタだけでも 0.26 Primergy CX250 50 分子研レターズ 68 September 2013 UV2000 高磁場NMR装置の増強について 施設だより 機器センター長 大島 康裕 分子科学の発展・深化を使命とする 倍以上向上した。そのため、分子研の 装置により維持される。また、溶液お 研究拠点である分子研の役割を体現す 従来設備では計測困難であった低溶解 よび固体 NMR での測定温度は、各々、 る上で、先端的研究施設群を整備して 性の生体分子複合体をはじめ、不安定 -50 ∼ 80 ℃、 お よ び -30 ∼ 80 ℃ の 範 広く国内研究者との(今後は国外とも) 化合物あるいは貴重な微量試料に対し 囲で制御可能である。ソフトウェアは、 協力・連携を強力に推進することは不 ても高分解能測定を実現することが期 800 MHz NMR 同様に TopSpin2.1 であ 可欠である。比較的汎用性の高い装置 待できる。測定には一般的な直径 5 mm る。 群の管理は、機器センターが集中的か のサンプルチューブを使用する。また、 つ経常的に担当することとなった。現 測定温度は 5℃∼ 75℃の範囲で制御可 コイルを採用しているため、各核種で 在、JEOL JNM-ECA920 型 超 高 磁 場 能である。ソフトウェアは TopSpin2 .1 高出力ラジオ波照射が可能である。ま NMR や Bruker E 680 型 ESR を始めと である。 た、15 l 程度の少ない試料で、35 kHz 特に本固体 NMR プローブでは、小径 する磁気共鳴装置群の充実に力を注い までの高速試料回転が可能である。こ でいる。その取り組みの一環として、 のため、分子研の従来設備では不可能 理化学研究所と協定を結んで、同研究 であった高速試料回転、高出力ラジオ 所横浜キャンパスに設置されていた高 波照射を必須とする先端的な固体 NMR 磁場 NMR 装置 2 台を本年度より分子研 実験が可能となり、高感度、高分解能 に移設して、共同利用に供することと の計測を実現できると期待される。 した。以下に本装置の概要を説明する。 このたび山手 4 号館 1 階 102 室に設置 された Bruker AVANCE800 型 NMR 装 置は、18.79 T のシールド型マグネッ トに、1 H- 13 C- 15 N 三重共鳴インバース プローブである TCI 型クライオプロー ブを実装している。これにより、1 H の 共鳴周波数 800 MHz での超高感度溶液 NMR 計測を行うことができる。 クライオプローブを実装した Bruker AVANCE800 型 NMR 装置 超伝導コイルの周囲は、液体ヘリウ 一方、明大寺実験棟 1 階 119 室に設置 ムを真空ポンプで減圧することで約 2 された Bruker AVANCE 600 型 NMR 装置 K に保たれている。通常運転時および は、14.1 T のシールド型マグネットを有 液体ヘリウム充填時に生じるヘリウム し、周辺機器の切り替えにより、1 H 共 ガスは回収ラインを通して回収される。 鳴周波数 600 MHz での溶液・固体 NMR また、液体窒素は再凝縮装置により維 の双方の測定が可能である。溶液 NMR 持される。 で は 試 料 管 外 径 5 mm の 1 H- 13 C- 15 N 上記の 2 つの NMR 装置は、ナノテク の 三 重 共 鳴 イ ン バ ー ス プ ロ ー ブ、 一 ノロジープラットフォーム事業の一環 C プリアンプを搭載 方、固体 NMR では試料管外径 2 . 5 mm として、施設利用または共同研究に供 し、1 H、13 C の高感度測定に最適化さ の 1 H- 13 C- 15 N 三 重 共 鳴 magic angle される予定である(詳細はホームペー れている。実測した感度(S/N)は、そ spinning(MAS)プローブを、各々実装 ジ http://nanoims.ims.ac.jp/ims/ に記載 している。また、800 MHz NMR 同様、 予定) 。多くの所外研究者の方々にご利 通常運転時、および液体ヘリウム充填 用頂き、分子科学の発展・深化に貢献 であり、特に H の感度は通常プローブ 時に生じるヘリウムガスは回収ライン できれば幸いである。 を使用した場合(2,100)と比較して 4 を通して回収され、液体窒素は再凝縮 TCI型クライオプローブは低温下に保 たれた 1 H および 13 1 れぞれおよそ 8,800( H, 0.1% エチル 13 ベンゼン)および 1,900( C, ASTM) 1 Bruker AVANCE 600 型溶液・固体 NMR 装置 分子研レターズ 68 September 2013 51